1993年年賀状

謹んで新年のお慶びを申し上げます
我輩は犬である。旦那と山に行く。
車での移動は辛いが、 1日自由に走りまわれるので嬉しい。
旦那はザックに砂袋を入れて、 フウ々あえぎながら登る。
年寄りの冷や水と陰口を言われているのを 知ってか、
知らずか、「あぁ、山はいい」とつぶやいている。 女将さんは
我輩が車に乗るのを、臭いと言って嫌う。 尻から臭い
空気を出した時は、力一杯鼻で突き上げてやる。
毎週土曜日に帰ってきていた女の子の姿を見なくなった。
一人暮らしに慣れたのだろう。女将さんは膝の手術をした。
ボーリングが出来ないと、機嫌が悪い。我輩も大いに迷惑した。 ボーリングは出来るようになったらしいが、
人間に振り回されるのは沢山だ。 ひょっとしたら、
旦那も同じ思いかもしれない 有田家に来て2年、
付き合えば付き合うほど、解らなくなる。
人間は変な生き物だ。
本年も宜しくお願いいたします。    
                                      犬のファティーより
1993年 元旦

1993年暑中見舞い

暑中お見舞い申し上げます。 あれは4月だった。
旦那と女将さんが、くたびれたファミリアで、 ;
出かけたまま、帰ってこない。我輩は捨てられたと思った。
犬の直感だ。 毎日、餌をくれる隣のおばさんに、
しっぽを振って精一杯の愛嬌を ふりまく日々が1週間続いた。
夜中にファミリアが止まり、 旦那と女将さんが飛び降りてきて、
我輩を抱き上げてくれた。
我輩は「ウォー、犬に心配かけるな」と言ってやった。
暗くて定かではないが、2人の目が潤んでいたように見えた。 嬉しかったウォォォ〜!新婚旅行以来の旅で、ユースホステルに泊まり、 信州を巡ったらしい。白骨温泉で、20cmの雪が降り半日足止めを くったり、楽しかったらしい。
女将さんはボーリング。 旦那は登山とジョギング。
女将さんはボーリングで、賞状をもらってくる。
旦那は参加賞しか貰った事がない。
我輩は食えない物に興味はない。
先日、小さくて、柔らかくて美味しそうな兎が来た。
食べようとすると、女将さんが顔色を変え怒る。
もっと、大きくして食べるのかな? でも、何か雰囲気が違う。
世の中だいぶ不景気らしい。 我輩の餌にも影響が出てきた。
今年は一段と夏痩せしそうだ。
皆様のご健康を、お祈りいたします。      犬のファティーより  1993年 盛夏