雄呂血


第二回は坂東妻三郎主演「雄呂血」(大正14年・坂妻プロ)
人間の「善」と「悪」を見た思いがしました。凄まじい映画です。
まずは粗筋から。


 
主人公の久利富平三郎は酒宴の席で家老の息子の嫌がらせに耐えかねてけんかをしてしまう。
仕掛けてきたのは向こうなのだ、と弁明する平三郎であったが、家老の権威の前に誰も真実を言わない。
悪いのは平三郎ということで座が決着してしまい、
その上、密かに想いを寄せていた奈美江にまでも誤解されてしまった。
誤解を解こうと浪江の家に意を決して忍び込むが、捕まり、藩を追放される。

行き着いた町では、ある勘違いにより捕縛され、町のすべての人間から「無頼漢」「ならず者」と蔑まれてしまう。
町で善良だといわれている顔役に助けてもらったがその人物も実は大悪人だった。
自分は何を信じ誰を信じればよいのか。
本当のことなどこの世には存在しないのだ。苦悩に苛まれる平三郎。



世の中の不条理を考えさせられます。
悪人と思われている善人。善人と思われている悪人。
この映画で日本の時代劇が変わったといわれていますが、それも納得できます。
見所はクライマックスのフィルム二巻分にも及ぶ剣戟です。
坂妻特有の悲壮感漂う殺陣がなんともいえぬ出来映えです。
機会があったらぜひ一度ご覧になられるとよろしいかと存じます。


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