第二十五回 スラバヤ殿下

蔵松観賞記第二十五回目の今回は、『スラバヤ殿下』(昭和30年・日活)です。
前回の『夫婦善哉』につづいて、森繁久彌作品でございます。
では、例によって粗筋からお読みください。



長宗我部久太郎(森繁久彌)は世界的な科学者である。
目下、核を無力化する物質の研究開発を行っていた。

一方、日本よりはるか遠く離れたビキニ海上には、
密入国で日本に強制送還される男の姿があった。
その男の名は長宗我部永二(森繁・二役)、久太郎博士の実の弟である。
兄は立派な学者だが、こちらは実のところは名うてのペテン師であった。

日本に着いた永二は薬品会社を起こす。
ビキニ海で降る放射能混じりの雨を蒸留して作った、「原始万能薬」を売り出したのである。
とはいえこれは、まったくのニセ薬。たちまち工場の資金繰りが滞ってしまった。

仕方なく、兄・久太郎に借りに行くも兄自身やばあやのおきん(飯田蝶子)叱られ、
おきんの孫・なほえ(馬淵晴子)にも大いに文句を言われてしまう。
本人は知らないが、なほえは実はおきんの娘と永二との間の子だったのだ。
実の娘のまで文句を言われた永二は引き下がる。

その頃、裏側では久太郎博士の極秘資料を手に入れんとスパイが暗躍していた。
とにかく博士に接触しようとしたが、その相手は永二であった。
「これは金になる」、と感じた永二はスパイを得意のペテンにかけ、金を巻き上げる。
しかし、そのペテンは程なくばれてしまい、永二は命を狙われ、姿を消してしまう。

永二が消息を絶って幾日か後、或る浜で事件が起こった。
南方の土人が漂流してきたのだ。
言葉は通じないが、試行錯誤した結果、
その土人は東南アジアはスラバヤ国の殿下、スラバヤ殿下(森繁・三役)であるというのだ。



前回の文学的な『夫婦善哉』とは打って変わって、本作品は、B級無国籍喜劇の代表格であります。
とりあえず内容のから見てまいりましょう。

まずは前半、殿下が日本に漂流してくるその前までを見ていきましょう。
結論から先に申し上げますと、ちょっと冗長かしら、といったところです。
二役でやっているのですが、いかんせんメリハリが見られない。
なんとなく惰性でやっているような、間延びした感じで話が続いていきます。

劇場の二階、スパイと博士、永二らの追いかけっこシーンがあります。
いわゆる、どたばたシーンですね。
これも、前半のひとつの見せ場ではあるのですが、
やはり、キレが感じられないそんな作りでしたね。

では後半、遂にスラバヤ殿下が漂流せられてから後でございます。
浜に打ち上げられた、真っ黒な土人、

そういえば、この「土人」という言葉、差別的な意味合いも含むのですが、
作品上この言葉が使われておりますのでここでもあえて使用いたします。

その土人が話すのはでたらめな外国語、よくタモリなんかがやっているやつです。
このでたらめ語をを森繁久彌がやっているわけですね。
その姿なんですが、体中真っ黒に塗って、
てかてか光るくらい塗って、いかにもB級喜劇といった感じなんですよ。
まぁ、それが面白いわけですが…。

でね、ここまで喜劇喜劇言ってきましたけれども、
終盤にもなると、これが何故か感動的になってきたりもします。
これは私だけかもしれませんが、
ラストのショーの場面のちょっと前から、涙がこぼれおり候だったんですね。
うん、泣きました。

この作品、続編が作られるという話があったとか無かったとか言うことなのですが、
結局作られませんでした。
邪推なんですけれども、
もしかしたらちょっとした国際問題化しかけたのではないかと思うのですよ。
というのも、スラバヤ殿下が、インドネシアのスカルノ大統領似よく似ているんですね。
スカルノ氏はスラバヤの出身でもありますし。
まぁ、ほんの思いつきですが。


とにもかくにも、機会が合ったら是非ご覧ください。
笑って泣けて、大いに満足できる出来でございます。

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