第二十九回 郡上一揆


今回取り上げるのは、緒方直人主演『郡上一揆』(平成12年)です。
「百姓」を主体とした、新しい形の時代劇です。
では、まずは粗筋から。



江戸時代は宝暦の頃、所は美濃国郡上藩でのことである。
藩主・金森頼錦(河原崎健三)は年貢の徴収方式を
それまでの「定面」から「検見取り」へ変更する、という触れを出した。
「検見取り」が実現すれば、取られる年貢が多くなると見た、
定次郎(緒方直人)ら郡上の百姓は、反対のために行動を起こす。

これが後の世で、江戸三大一揆のひとつとされる「郡上一揆」の始まりであった。



この作品は実際に江戸時代にあった一揆を元にしておりまして、史実ものですね。
どちらかというと、時代劇というよりは歴史劇といったほうがいいかも知れません。
見たところ、時代考証の類については文句をつけるところはありません。
しっかりやってくれているようです。

さて、内容に入る前に用語解説をしておきましょう。
この作品は「定面」と「検見取り」が分からないと、面白さに差がでると思いますので。
学校で日本史を勉強した人はご存知でしょうが、とりあえず大雑把に説明いたします。

まず「定面」ですが、毎年同じ量の年貢を納める方式です。
もし100石なら、毎年100石を納めるわけです。その年が豊作でも不作でも100石ですね。
ですから理論上は毎年同じだけのお米が上にあがるようになります。
実際はそうでもなかったようですが。

では問題の「検見取り」です。
これは、その年の出来高に応じて年貢高を決める方法です。
今でいう累進課税のようなものですね。
豊作の時はたくさん納めますし、不作の時は年貢も少しでいいという方法です。
全国的に検見取りに移行したのは、
吉宗の時代だそうです…、と暴れん坊将軍でやっていました。

で、総合的に見ると「検見取り」のほうが多く年貢を取れるわけです。
その時々に応じて年貢高を決めるので、不正もやりやすいですし。

では、内容に入りましょうか。
全体的に見て、よくできていると思いますよ。平成作りにしては良い出来です。
その要因として前述したように、歴史劇としての要素が強いというのもあると思われます。
私は明朗快活、勧善懲悪な時代劇も好きなわけですが、今の役者さんでこういうのをやると、
やはりこう、貫禄不足が見えたりして変に見えてしまったりするのですよ。
ですから、こういった歴史劇路線を行くというのは当たりなのかもしれません。

そうそう、歴史考証の点で一つ。悪い点じゃありませんよ。
最後の、一揆衆が斬首される場面がありましたね。
あそこで、ちゃんと穴、というか囲みが作ってありました。
あまりいい話でもないので、何のための囲みかとかはこれ以上書きませんが、
こういうところをちゃんとしてくれるのは嬉しいところですね。

とにもかくにも、成功作品だと思います。
同じ平成の作品でも、前に紹介した、K監督の盲目の按摩さんのお話よりは
よっぽどいい出来だと思いますよ。

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