生まれてはみたけれど


第四回は小津安二郎作品「大人の見る絵本 生まれてはみたけれど」(昭和7年・松竹)です。
まずは粗筋から。



斎藤達雄扮する父親はある会社の課長である。
この度、郊外に引越したが、そこは常務の家のそばだった。

子供たちは近所のガキ大将になったが、ある日、誰の父親が一番偉いかという話になった。
皆、自分の父親が一番偉いと言う。
主人公の息子も自分の父親こそが偉いというが、その父親が常務へ頭を下げているところを目撃する。
しかし子供ゆえになぜ自分の父親が頭を下げなければならないのか理解できない。

またある日くだんの常務の家で活動写真の上映会が開かれた。
子供も常務の子供に誘われ、見に行った。活写は会社内を映したものであったが、
そこには三枚目を演じる父親の姿があった。
尊敬する父親の情けない姿に子供たちは我慢ならなかった。



子供の目線から見た大人の世界をユーモラスに描いた作品です。
無声映画でありますがそれだけに、想像力を働かせて楽しめるものであります。
無声映画を見たことのない人でも非常に入りやすいものだと存じます。
機会があったら是非ご覧になられることをお勧めします。
 

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