賽の目大勝負


今回は、時代劇各方面でおなじみの「丁半博打」についてお話いたします。


本文の前に申し上げますが、
今回の記事は時代劇を見る上での資料として書いたものです。
蔵松敷兵ヱに賭博を推奨する意思は毛筋ほどもありません。
賭博は犯罪です。絶対にやってはいけません


さて、丁半博打は古来よりわが国に伝わる、伝統的遊戯でございます。
英語で言えば、 “Japanese traditional gamble” ですね。


まずは簡単なルール説明を。
1.ツボ振り(いわゆるディーラー)のお兄さんが、ツボの中にサイコロをいれて振ります。
2.他の人に中が見えないように、素早くツボの口を下に伏せます(この場所を盆という)。
3.お客さんが中の賽の目の合計が丁(偶数)か半(奇数)かを予想し、コマ(チップに当たる)を賭けます。
4.サイコロを隠していたツボが取られて、当否がわかります。
こんなところでしょうか。


賭場が開かれる場所は、各所のやくざの親分の家や寺院、大名の下屋敷など様々です。
サイコロとツボ(茶碗でも可)があれば出来ますので、場所を選びません。


さて、少し詳しい話に入りましょう。
大まかなルールは上記の通りなのですが、コマの賭け方については二種類があります。
1.通し盆胡座
 これは、丁に賭けられたコマと半に賭けられたコマの数を同数にする方式です。
 他の人間が多く賭けなければ自分も多く賭けられません。
 賭けた人間同士の勝負になるわけです。
 負けた人のコマが勝った人に回されるわけですね。
 この場合、胴元である親分は盆の上でコマがやり取りされるだけなので、
 あまりリスクを背負わなくて済みます。

2.喰い廻り丁半
 これは上記のものと違って、胴元との勝負になります。
 今の競馬なんかと同じように考えていいでしょう。
 ですから一度にいくら賭けてもいいわけですね。
 この場合、大勝ちされるとそれだけ持っていかれるので、
 結構なリスクも背負います。


最後に、禁断のイカサマについてもお話を。
1.床下から
 一番わかりやすい方法です。
 下準備としては、ツボを伏せる盆のところだけ、畳に穴を開けておきます。
 穴があるとわかりそうなものですが、盆の上には白い布が引いてあるので結構大丈夫です。
 盆が開きますと、床下の丁度ツボが伏せられるところに誰かが入ります。
 持って行くものは「線香」と「針」。
 
 勝負が始まりまして、ポンとツボが伏せられますと、そこへ線香を近づけます。
 すると、間の布は薄いので出目が透けて見えるわけです。
 で、針を使って目を調節するわけです。

2.サイコロへの細工
 (1)なまり詰め
  細工物としては最もポピュラーな方法です。
  サイコロを半分に割りまして、上手いこと鉛を入れるわけですね。
  それでもって、丁なり半なりが出やすいようにする方法です。
  時代劇でよく、サイコロを噛んで割ってみるとなまり玉がポロリ、というやつです。

 (2)粉入り
  半または丁の目すべてに小さく穴を開けておきます。
  そこからサイコロの中に黒い粉を入れます。
  壷を下ろした後、少し壷をずらします。
  そこで、粉が出ているかいないかで出目を判別します。

 (3)豆腐の上に
  仕掛けとしては簡単なものです。
  サイコロを一晩豆腐の上においておくのです。
  そうしておくと昔のサイコロは木製ですから、下のほうから豆腐の水分を吸います。
  すると、その面が重くなるので、目が予想しやすくなるわけです。

3.ツボへの細工
 これは、ツボの中に髪の毛のような細い線を張っておきまして、
 それでもって、ツボを上げるときにサイコロを転がすという方法です。


最後にもう一度書いておきますが、
賭博は犯罪です。絶対にやってはいけません


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