第三回 天下騒乱


テレビ見聞話第三回は、正月恒例十時間時代劇「天下騒乱 徳川三代の陰謀」です。
尚、この作品はシリーズ物ではないので、観賞記と同じような形式で書いていきます。
どうぞご了承ください。では粗筋から。


世は二代将軍秀忠(山下真司)、まだ家康(山崎努)が大御所として駿府に君臨していた頃の話である。

鷹狩に出かけた家康は体調を崩し、そのまま寝込んでしまった。
いまだ病床にある家康が、ある時、秀忠と土井利勝(西田敏行)のみを傍に呼び寄せ、重大事を語る。
なんと、利勝は家康の隠し子だったというのだ。

時はたち、家康は他界する。遺言は利勝にのみ伝えられたが、それは無言の遺言であった。
すなわち、何か事が起こったときは「権現様の遺言にござる。」で片付けられるようにしたのであった。

一方、大奥では三大将軍をめぐる争いが起きていた。
つまり、長子家光(池内博之)を立てるお福(片平なぎさ)と
次子忠長(海東健)を擁するお江与(かたせ梨乃)らの争いである。
忠長派のお江与は家光、忠長二人の実母であった。
 
また、剣術指南役柳生宗矩(柄本明)の息十兵衛(中村獅童)も
柳生新陰流を受け継ぐものとして、すくすくと育っていた。

その廻りで、荒木又右衛門の助太刀など色々な事が起こる。



粗筋をえらく省略してしまいました。
なにぶんにも十時間もありましたので、まとめる自身が無く、とりあえずこういう形です。

冒頭にも書いていますように、この作品は十時間時代劇ですが、私も久しぶりにこの長丁場に付き合いました。
前に見たのは、まだ十二時間時代劇だった頃の「次郎長三国志」(杉良太郎主演)でしたので、
もう何年になるでしょうか。

全体的な印象としてちょっと暗うございましたね。
全体の流れが勢力争い、権謀術数、謀の嵐というものでしたから、そういうものなのでしょう。

これは番組の構成になるのでしょうが、10時間を3部構成にするというのは無理がありました。
1部につき3時間余ですからね。CMも短かったですし。
現状ではこういうのを見る主な人はやはりお年寄りですから、
用足しの時間はとらないといかんように思います。そういう配慮は必要ですよ。
そういうことを考え合わせて、2時間×5部構成くらいのほうが良かったのではないでしょうか。

今度は配役、演技についてです。
まずは柳生十兵衛役の中村獅童。
驕っていて、ふてぶてしい十兵衛を演じたわけですが、元々の人相があまりよろしくないという点で
外見はそれなりによかったように思います。殺陣については後述します。とりあえずは凡庸といったところです。

次は片平なぎさと、かたせ梨乃のご両人。
これは、両人とも好演といって良いのではないでしょうか。
片平なぎさの発声もいいですし、お江与の忠長を思うあまりの
どろどろした部分もうまいこと出ていたように見えます。
欲を言えば、「家光も我が子なり」という葛藤めいたものもほしかったですが・・・。

忠長、和子の兄弟、これはひどかった。
まず忠長ですが、描き方が阿呆丸出しのようでさすがにいかんですよ。
和子も何を意図したのか分かりませんがひどい。
将軍家の姫君にしては教養のかけらも感じられず、その辺の町娘風情といった感じでした。
もう少しほかにやりようがあるだろう、とこう思いましたな。
二人とも、それ相応の教養などある役ですから言葉の端々にでも、
高貴な身分をにじませるような、そういう演技をしてほしいところでした。

この作品で、最も良かったのが、柄本明です。
独特の底知れる不気味な雰囲気が、策士柳生宗矩と見事に調和しており、名演技でした。
文句のつけようが無いわけではありませんが、この作品中ではよかったかと思います。

さて、肝心のチャンバラ、立ち回りについて見ていきましょう。
まずは準主役中村獅童の殺陣です。彼は中村錦之助の甥で、
また私は見ておりませんが丹下左膳もやった俳優です。
そういうわけで期待はしておりましたが、それほどでもありませんでした。
確かに下手ではないのですが、まぁそんなものかと。

物語終盤、鍵屋の辻の仇討での立ち回りです。
村上弘明と榎木孝明の殺陣です。
この中でちょっと見ておきたいのが、最後に村上の刀が立ててある藁越しに相手を刺すところです。
お互いの間に藁が立ててあって見えないのですね。
で、その陰からブスッといくというシーンです。これは、戦いのリアリズムとしては正解です、
ですが時代劇としては豪快に正面から切り結んでほしいところでした。
リアリズムと娯楽性、どちらが良いかというと難しいところです。

殺陣の三点目、同じく鍵屋の辻での数馬と又五郎の立ち回りです。ちなみにこちらもリアリズムの殺陣です。
このシーンはこの作品で最も秀逸なシーンであったと思います。
この立ち回りは確かに芸が無く、実にへたくそな殺陣なのですが、
それだけに彼らの若さ、未熟さが引き立って、大変よいものでした。
ただ力任せに破れかぶれに剣を振るっていく様なんてのはなかなかリアルでよろしかったですよ。

以上で殺陣の項を終わりますが、最後にひとつ。
擬音を使いすぎです。刀が噛合う音や人を斬る音などめったやたらに音をつけていましたが、
ちょっとつけすぎかな、と。
これは本作品に限らず最近のものにはほとんど当てはまることですが。

最後にもうひとつ。
それは、CGに関してのことです。
時代劇でCGを使うと、私はどうも安っぽく見えてしまうように思うのですが、皆さんどう思われますか?
この作品でも飛んでくる矢や宇都宮釣天井のシーンにCGを使っていたのですが、
こう緊迫した場面にCGが出てくると どうしても迫力が損なわれるように感じます。

こうして書いて文句が多くなりましたが、評価としては可も無く不可も無くといったところです。
まだ書くことが無いわけではありませんが、あまり長くなってもあれですので今回はこの辺で。


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