目の前で繰り広げられたことを嘘だと信じたかった。
「嘘…」
上着一枚のみを残してその主は消えてしまった。
錬成陣は効果を失い形を無くした。
「だからバカだと言ったんだ」
血に濡れた上着。
幾度となく見てきたこの光景。
「馬鹿者…」
ただ、今回ばかりは何もわからない。
闇の中を歩くようだった。
セントラルへの移動の前日。
「は必ず帰ってくる」
ロイは部下たちを前にこう言った。
もちろん何の根拠もないことだった。
しかし誰もそこ言葉を疑うことはなかった。
「ま〜た重役出勤すぎッスよ」
今は主のいない段ボールを抱えて笑う。
「将棋盤、持っていかないと。まだ勝負ついてないですからねぇ」
トントンと折り畳んだ将棋盤で肩を叩く。
「どうしよう…。店の店主が紅茶の缶をくれたんですけど全部持っていけるかなぁ?」
東部で一番最初に寄った店の店主。
セントラルに移動すると聞いて彼に紅茶の葉を渡した。
「保存方法さえ間違えなければ恐らくは」
その缶を手に保存方法を説く。
彼が戻ってきたときのために持てる知識を総動員する。
「帰ってきたら毎日両手にペンを持って仕事をしていただかないと」
主が不在の机には限界まで減らされた書類が置かれていた。
それも段ボールに詰める。
「引継も終わった。行くぞ」
その声に一人、また一人と部屋を後にする。
「セントラルで待っているぞ」
最後に誰もいなくなった部屋に声をかけた。
そして、扉が閉められる…。
最後にロイは再びドアの方向を振り返った。
あとがきという名のいいわけ
短いですが2本UPなのでご勘弁を…。
こればかりは一緒にUPしようと思っていました。
さて、次こそはラスト!
もう少々おつき合いください。