「…っくそ、最悪だ」
この目覚め方はいつになっても慣れない。
夢、それとも、これは現実? ---2--
運がいいことに今日は一日非番だ。
外は雨。
行き場のないこの感情。
コントロールできるほど大人になんてなりきれていない。
は起きあがり洗面台へ向かう。
何だ、この目は?
真実を映すこのガラスが憎らしくなった。
真実なんて、苦しいだけじゃないか。
この夢を見るたびにこうやって拳で破壊する。
当然のことだが自分の目と同じ色をした液体が流れ落ちた。
辺りに積み上げられた本の山をを手当たり次第に崩していく。
本には自分の嫌いな色が付着してシミを広げていった。
痛みを感じないというのは危険だ。
命を脅かす危険を知らせる警鐘が痛み。
この手の傷もじきに熱を持ち始め、全身に広がる。
は気が済んだのか、ベッドが赤く染まるのも気にせずに再び眠りに落ちた。
眠るのも辛いが起きている方がずっと辛かった。
起きたときに手当をしなかったことを後悔するのも毎度のこと。
歪みの元凶である自分が歪んでいないわけがない。
自分は、大きく、大きく、大きく、歪んでいる。
どうして俺なんだ。
俺じゃなくてもよかっただろう?
今度の目覚めはさほど悪くなかった。
電話が鳴る音がして目が覚めた。
雨は、止んだようだ。
「はい、フです」
ただし傷から発生した熱は全身に広がっていた。
『非番に悪いな、今から時間はあるか?』
「何事?」
電話の相手は東方司令部の上司、ロイ・マスタングだった。
やはりロイは自分のことをよくわかっている。
『どうかしたか?』
「ちょっと…風邪ひいちゃったかもね」
軍人たるもの健康管理に気を付けて…なんて言われるだろうか?
『…そうか』
「大丈夫。ちゃんと寝てるから」
予想外にもロイは何も言わなかった。
一瞬視界が揺らいだ。
どうやら自分が感じる以上に熱が高いようだ。
『一人で大丈夫か?』
「うん、これからまた寝ることにするよ」
『明日、出てこられそうもなければ早めに連絡しろ』
「うん」
挨拶をして電話を切った。
そういえば要件は何だったんだろうか?
また視界が揺らいではベッドにダイブした。
もう、呼ぶなよ…。
俺のこと、呼ばないでくれ。
その声は、もう聞きたくないんだ。
「!」
「呼ぶ、なって」
その声は現実のものだった。
しかしには夢の延長としか認識できていなかった。
「しっかりしろ!」
声が遠くなったり近くなったりして気分が悪い。
本当ならばあまりの不快さにすぐさま殺してやるところだった。
しかし思うように体が動かなかない。
「!」
「…ロイ」
体が動かなくて本当に良かったと思う。
このどうしようもない苛立ちに任せて手を出してしまうところだった。
「全く…、勝手に家を漁らせてもらうぞ?」
呆れていたのか、怒っていたのか。
ロイは方向転換をしてどこかへ行ってしまった。
足音が遠ざかっていくのを朦朧とした意識の中で感じ取っていた。
俯せのまま何も考えずにロイが帰ってくるのを待つ。
今度は近づいてくる足音に顔を少しだけ上げた。
「動くな」
「何しに来たんだよ」
濡らされたタオルが手荒く額ではなくて後頭部に置かれる。
「少し痛むぞ」
「痛い?何それ?」
熱を持った傷を手際よく治療していくロイ。
戦場でもよくロイに手当てしてもらったっけ。
あり得ないと思っていたが少しだけ痛いような気がした。
「…痛いんだけど」
「そうか、それは気のせいだろう」
「痛い」
何を言っても無視だ。
「何かあったようだな」
「肯定?」
「そうだ」
痛みが消えて再び眠気が襲ってくる。
「寝ていい?」
「あぁ」
返事さえ待たずに眠ってしまったのかもしれない。
もう何も見ることがないように…。
夢でも、現実に起こったことを繰り返されるのは嫌なのに。
【おまえはこの世界を歪ませる。破滅を導くだけの最悪な存在だ】
…うるさい。
---続---
あとがきという名のいいわけ
第二回目です。
だんだん壊れてきました、主人公氏(汗)
さらに暗い展開になる予定ですがおつき合いくださると嬉しいです。