ほら、やっぱりここが一番落ち着く。

俺に居場所があって良いなら…。


















夢、それとも、これは現実? --5--



















窓の外を遠い目をして眺めている人がいた。

その顔はどこか悲しそうで、声をかけるのが躊躇われた。

自分の視線に気づいたのかその女性と目が合う。

!」

一瞬誰だかわからなかったがそれは自分の愛する人。

「おはよう、リザさん」

「目が覚めたようだな」

ドアが開く音がしてロイが顔を出す。

近づいてきたロイが急に手を出すものだから反射的にその手を遮ってしまった。

「…ごめん」

「少しは落ち着いたようだな、馬鹿者」

再度手をの額に持っていく。

「熱は下がったな」

「うん、そうみたい」

何だか嫌な予感がする。

今すぐじゃない、明日でもない、明後日でもない。

でも、近い将来とっても良くないことが起こる。

「…伸ばすな」

「またよからぬことでも考えていたのかと思ったよ」

皺が出来るからやめろと言ったのにまたも頬を引っ張られた。

「やっぱり俺がしなきゃいけないことは一つだけってことだな」

上体を起こしながら背伸びをする。

「あまり無理をしない方が…」

「大丈夫、リザさん。もう大丈夫だから」

手に残る違和感は変化なし。

神経は、切れていないようなので大丈夫だろう。

「はー、もう!俺には何が何だかわからないよ」

「私たちにも何が何だかわからないが?」

「リザさんの言うように抗ってみるのも悪くない」

「…勝手に話を飛ばすな」

リザはずっとこちらのことを伺っているようだった。

視線に今気づいたというようには笑顔を向けた。

「結局ここ、この場所に落ち着いちゃうってわけさ、この俺は」

は半ば諦めたように肩を竦めていた。

「夢を見ていた。でもそれは今まで実際に起こった出来事ばかりだった」

「昔の記憶を見ていたということですか?」

「そのとおり。で、危うくまた自分の歪みに取り込まれそうになったんだけどなんとか正すことができたよ」

呼ばないで欲しいと思ったときには本当は誰かに呼んで欲しい。

わがままな自分だ。

「二人があんまり呼ぶもんだから戻らずにはいられなかったんだよね」

「感謝して欲しいな」

「お礼はこれで」

お返しにロイの頬を引っ張ってやる。

そしてすぐに手を離す。

リザには軽く頬にキスを。

「扱いが酷いな…」

「キスしてほしかった?」

「…寒気がする」

「あ、そうだ。ロイ、夕食は?」

ロイが額に浮き上がらせたのは美形であると賞賛された顔には似つかわしくない怒りのマーク。

「…覚えておきたまえよ?」

「あー怖い怖い。リザさんの分もよろしくー」

「おまえの分はいらない、と解釈していいか?」

抗議の声を漏らすと鼻で笑われてしまった。

「中尉、こいつが大人しくしているように見張って置いてくれないか?」

「わかりました」

キッチンから器用に野菜を切る音がし始める。

それを聞いたリザが驚いた顔をしていた。

「ロイが料理できるって知らなかった?」

「あまりに意外すぎて…」

だろうなぁ、とは腕を組んで頷いた。

「それはいいけど、なんだか情けないところを見せてしまったねぇ」

「いえ…。大佐から事情は聞いていたわ」

はリザから視線を外して気まずそうにしていた。

「でもこれでわかったわね。私たちが呼べばあなたは帰ってくるってことが」

「…そう解釈してくれて嬉しいよ」

、成長を急ぐ必要はないの。あなたの時間は動き出したばかりなのだから」

「リザさんがそれで良いって言ってくれるなら」

少し怯えたような表情でリザに視線を戻した。

「ええ。大佐が野望を達成されるまでまだ時間がかかりそうだもの」

「ちゃんと中身も大人になれるといいけど…」

「内面が大人になろうとすれば私は気にしないけれど身長もまだ伸びるかもしれないわよ?」

その言葉を聞いては俄然やる気を出したようだ。

「こればかりは本人のやる気の問題ではないわよ」

リザの苦笑には少し落ち込んだ顔をしていた。

「やっぱり?」

「偏った食生活は成長を妨げるらしいわ」

「ものぐさ生活はやめます」

それはいいこと、とリザが微笑む。

キッチンからおいしそうな匂いがしてきた。

ロイはスープ類を得意としている。

「いつもの姿を見ていると料理ができるなんて想像できなくて…」

「うん。みんなそう言うよ」

普段、彼の生活状況を想像する者たちに見せてやりたいくらいだ。

「そろそろ手伝いに行こうか」

「大丈夫なの?」

「もちろん。さ、行こっか」

部屋に流れ込み始めたスープのにおいの元に二人で吸い寄せられていく。

その夜のスープは牛乳をベースにしていた。

何かの嫌がらせかと思ったがこれもロイの好意だとして受け取っておくことにする。

この二人に囲まれている俺は恵まれた人間なのだと思った。

俺は、これが続くことを願っていいのだろうか?



































あとがきという名のいいわけ。

小規模連載第一弾終了です。

おつき合いくださいましてありがとうございました!

次回の連載のタイトルは『大型犬』です。

オリキャラが出てくるのですが、名前変換があった方がいいか否かを拍手で教えてください。

ちなみにさわりをリンクしておきます。

是非ご覧ください。

『大型犬 0』