「呼んだか?」

私服姿の中佐を久しぶりに見た。
















大型犬-1-





















折角非番だったというのにまたアホなやつらから犯行予告が届いたらしい。

軍人が考えることではないが予告よりも事後通達で十分だと思う。

「で、文字通り飛んできたわけだけど今の状況は?」

「トレインジャックだ。すでに動き出しているだろう」

「うはー、面倒だな…。で、今の時間帯はどのあたりに列車は?」

「ちょうど東部に入ったところです」

ホークアイ中尉から地図と時刻表を受け取りどうしたものかと考えあぐねる。

しかし途中から何かよそ事を考えているようでもあった。

「…今度は誰が乗ってるわけ?」

「ハクロしょ…」

「またかー!!!!!」

絶対アホだー、とは書類が置かれた机を叩く。

「俺がまだ中央にいたときも東部でトレインジャック。そしてまた!」

「ふむ、今回ばかりは尊い犠牲になってもらうとしようか」

ロイもも顔を見合わせて頷く。二度目ともなるとある意味で運がいいと言える。

「二人とも、サボってないでどうにかしてくださいよ」

ハボック少尉が情けない声を上げていた。彼も今日は非番だったようだ。

「しかたない、かわいい部下のためにちゃっちゃか解決しましょうかねぇ」

少々音程のずれた鼻歌を歌いながら装備の確認をする。

「どうするつもりだ?」

「こことの中間地点で叩く」

サーベル2本、いつもの拳銃を確認してさらに足にも拳銃を装備。

「軍支給のサーベルじゃ不安があるなぁ」

「重量は大丈夫か?」

「もちろん。俺を誰だと思ってるんだ?」

手を窓の縁にかけながら振り返る。

「ちゃんと駅で待っててよ?」

「わかっている」

そしては窓から出るなと言う言葉を背に、もうじき日が真上に昇る空へ飛び出していった。



































列車の音がする。

「これだな」

直上から列車の上に降り立つ。風で吹き飛ばされそうになったが何とか踏みとどまった。

光を消した時にあまりの眩しさに目を閉じる。

「さぁ、いってみようか」

は列車の最後尾にあるデッキに降り立った。銃を手にドアを蹴り開ける。

の動きに反応できずに、声を出せないまま拳銃を弾かれて床へ倒される大男。

そのまま動かなくなってしまった。

「困ったな…」

縛るための紐はない。錬成するしかなさそうだ。

空いていた席のシートから鉄の部分を針金に錬成。紐では簡単に引きちぎられてしまいそうだった。

「これで、よし」

かなり不器用な出来だがにしてみれば上出来だ。

「あー、乗客のみなさん、申し訳ないんですがもうちょっと我慢しててください」

「君は…」

「軍人なんですが、そうは見えないでしょうねぇ」

そう言いながらは次の車両へ向かった。

早いところケリを付けないと先頭車両にいるであろう主犯格に気づかれてしまう。

まじめにトレインジャック犯を捕まえていたがこうもワンパターンな攻撃をされるともはやため息しか出てこない。

何両目だろうか。そろそろ疲れてきてしまった。正確にはそろそろ飽きてきてしまったのだ。

「ほーい、多分ラストー」

またもドアを蹴り開けて進入する。とりあえずはどうでもいい将軍のところへ瞬時に移動。

得意のシールドを張り巡らせる。がいきなり人質の前に現れたことに驚いた犯人側はとりあえず銃を乱射した。

「やぁ、初めまして。東方司令部所属、中佐だ」

サーベルを抜いて銃弾をたたき落とす。しかし数回それをやっただけでサーベルの先が折れて吹き飛んだ。

「うわ!どんな強度だよ!」

仕方なしには手を合わせる。

「目つぶしー」

後ろにいるハクロ将軍などお構いなしに思い切り強烈なフラッシュ。

何とも形容しがたい悲鳴をあげて床をのたうち回る男たち。はっきり言って滑稽だ。

「どうしよっかな、とりあえずお休み?」

は得意の手刀で首を狙った。面倒なので手加減なし。

「将軍、大丈夫ですか?」

「…あぁ」

さすがに家族連れではない。そうだった、東方の視察に来るのはハクロ将軍だった。

そういえば中尉がそのようなことを言っていたような気がする。

「護衛はどうされました?」

「わからない。どこかに連れて行かれた」

これは恐らくどこかに捨てられたな。生きていると良いが。

「もうすぐ駅です。そのままここにいてください」

頷く気配を確認してシールドを解除する。少し考えてからこれまでの車両同様、適当な鉄を針金に換えて縛り上げた。

…変な趣味だと思われなきゃいいが。

先頭車両の最前に数人の軍人が倒れていた。脈を確認すると生きていることだけは確認できた。

「…治療系の錬金術だからって呼ばれたりしないよな」

少し嫌な予感もするが見殺しになんて出来ない。手を合わせて意識を集中する。

錬成反応の淡い光が広がった。一瞬背が冷えるような感覚がしたがそれは気のせいだったのだろう。

錬成反応の光が消えて傷は止血程度に塞がった。

そこにいた全ての軍人の手当を終えたとき、列車が止まり無事に駅に到着したというアナウンスが流れる。

乗客たちの歓声も聞こえてきた。

これでとりあえずは解決ということにしておこう。

安心しているところにいきなりドアが開いて東方の軍人がなだれ込んできた。

「手を挙げろ!」

「うわ!」

反射的に手を挙げてしまった。

「あ、中佐、すんません」

ハボック少尉が部下たちに銃を下げるよう命じる。

「あー、びっくりした」

「中佐が真っ黒な服を着てるからッスよ…というか何で手を挙げるんです?」

「俺が悪いのかよ…」

ちょっとだけ肩をすくめてからは二両目に移動した。

「うわー!!」

「中佐!?」

先ほどと同じように手を挙げている

これだけの人数を一人で制圧したとは思えない顔で振り返った。

中佐!すみません!」

ファルマン准尉もハボック少尉同様に銃を向けてしまったようだ。

「…もう外に出るよ」

「それがいいでしょうねぇ」

はロイの姿を確認してそちらへ向かう。

「終了」

「ご苦労だった」

へいへい、とは地面に座り込む。

「お怪我はありませんか?」

「大丈夫。全然手応えなし」

自分のことを心配してくれる言葉が嬉しい。

「あ、ハクロ将軍の部下なんだけどもしかしたら列車から落とされたかも」

「…また面倒を」

彼らには罪はない。

出来れば早急に回収してやりたいものだ。

「俺が…行った方がよさそうだな。レールに沿って飛んでみるよ」

「見えていないのに回収できるのか?部下たちを向かわせた方がよかろう?」

「確かに…」

事後処理は部下たちに任せることにして二人はさっさと現場を後にした。




























あとがきという名のいいわけ

一時更新停滞前の更新です。

ついに地獄を見るときが来ました。大したこと無い地獄ですが(笑)

ちゃんと仕事はするけれど投げやりな主人公氏。

未だタイトルの大型犬は出てきていません。次回までお待ちください。