望んでも手に入らないものは絶対に手に入らないのに
望んでもいないものばかりが押し寄せる
暁霧-2-
「放て!」
爆音が響き渡る。
合図のあった場所からは耳をつんざく音がし大きな穴が出来ていた。
その時反対側から何かが転げるように飛び出してきた。小さな女の子が何か叫びながら廃墟の窓から現れる。
涙で前が見えていなかったのかもしれない。
「中尉!」
リザはその声に頷くと姿勢を低くして少女の元に走り寄る。
何かを必死で訴えているようだった。
「とりあえず移動するわよ」
頷いたのを確認すると少女を抱え上げてロイの元に走る。
「あの中から出てきたのか?」
必死で頷く少女が声を絞り出した。
「お、お兄…さん、が…」
「お兄さん…?」
ロイとリザの心臓の鼓動がだんだん早くなっていく。
「金髪で…、赤い目の…?」
ぼろぼろと涙を流し続ける少女がそれを拭いながら頷いた。ロイの顔がどんどん引きつっていく。
「あいつがそんなヘマをするわけ…」
「だって!だって!」
信じてもらえていないと感じたのか、少女は声を張り上げた。
「 」
リザが口元を押さえるのと、ロイがハボックたちを呼んだのは同時だった。
「大丈夫だよ。そんなに心配すんなって」
どこから湧いてくるのかわからないその自信。
いつかは、いつかはこうなるのではないかとわかっていたはずなのに。
彼の言うとおり、もっとちゃんと毎日走っておけばよかった。
息が上がるのを何とか押さえてロイとリザは階段を駆け上がる。
後ろでは自分たちが真っ直ぐに進めるよう部下たちが応戦していた。
「!」
ドアが開かれた音だけがその部屋に響いた。
広く、暗い部屋の中心には横たわっていた。二人は駆け出す。
しかし近づくにつれてリザの足が止まっていった。
そしてロイの足も辿り着く前に完全に動きを止める。
青い軍服が暗い色に見えたのは部屋が暗いからであると、そう思っていた。
を中心に広がる液体は紛れもない、
赤。
二人はの軍服の一部が破れて背が赤く染まっていることに気づき血の気が引いていった。
「…?」
ロイは震える体をなんとか前進させた。片足がその液体に浸かる。
戦場ではこの光景を毎日見てきたはずなのに。
「冗談は、よせ…」
の傍に辿り着いたロイが肩を揺するが反応は返ってこない。
震える手がに触れる。肩をつかんだ手がゆっくりとの体を引き寄せた。
「おい…」
なされるがままにの体が仰向けになる。
何も映さなくなってしまった瞳は変わらず優しい。
心臓を真っすぐ捕らえたのであろう凶器がすぐ近くに放置されていた。
「おまえなら…、これくらい何ともないだろう?」
この急所を貫かれて生きていられるわけはない。空虚を見つめ続ける瞳はロイを映すことはなかった。
「…!」
ようやく辿り着いたの頬にリザが触れると指先が赤く染まった。
「ねぇ…、早く起きて?」
その言葉が終わらないうちにリザからは堪え切れなくなった涙がこぼれ落ちた。
「…!」
ロイが真紅の瞳を手で覆い隠す。自らの目蓋がその瞳を隠すことができるように。
その顔は眠っているようにしか見えなかった。
ついにリザは嗚咽を止めることができなくなった。
自らの軍服が赤く染まるのも気に掛けず、の上半身を抱き締める。
銃を構えたまま二人は駆け込んできた。
「大佐!中…尉?」
どんどん大きくなる自らの心臓の音のやかましさにハボックは眉をひそめる。
「…中、佐?」
構えていた銃を下ろしたハボックがおぼつかない足取りで近づく。その後をブレダが続いた。
赤い水溜まりはロイとリザ、そしてを赤く染め上げていた。
「う…、嘘、だろ?」
驚愕に見開かれた四つの目。今まで何があっても命を落とすことはなかったのに。
急にドアが一斉に閉まった。
「動くなよ!」
彼らを取り囲むようにして近づきながら銃を構える。
「悪かったなぁ。殺すつもりはなかったんだが」
「…一度で急所をついたヤツが、何を!!」
普段見せないロイの表情。リザはやさしくを地に寝かせた。
さらさらと音を立てるような金の髪は自らの血で染まってしまった。
怒りに支配された目が男たちを捉える。ハボックはに一瞬だけ視線をやった。
やはり間違いはない。傷からはすでに溢れだすものはなかった。
これが意味することはたった一つ。
守れなかった…。
ハボックは強く拳を握りしめた。
自分達が窮地に陥っていることより自らの失態が頭にくる。
「安心しろ、すぐにお前らも送ってやる」
ロイたちを取り囲んでいる銃口が定められた。
引き金が引かれる前にロイの発火布がこすられる音が響く。爆音と煙が辺りに立ちこめた。
リザの銃は煙をものともせず確実に相手を被弾させた。
その後方からハボックとブレダが、ロイの後方からはファルマンとフュリーが援護射撃を繰り返す。
「何をやってる!早く仕留めろ!」
その声も虚しく、次々と銃の一発も打つ事無く倒れていく仲間。
「くそぉ!」
「大佐!伏せ…」
凶弾は真っすぐにロイに向かっていった。
もう、いつも自分を守ってくれたあの光はないというのに。
あとがきという名のいいわけ
主人公氏逝きましたw
今回はこれ以上コメントすることはないので次回に持ち越しですw
やー、さすがにものっすごいシリアスとものっすごいギャグを書いているとこんな感じの中間が生まれることがわかりました。
もうすぐ拍手お礼の続編がUPできると思います。
セーフかアウトか気になるところですがw
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。