先の戦いでの記憶が曖昧になっていく
それでも忘れることの許されない言葉
それにさえ背を向けようとする自分を消してしまいたかった
暁霧-5-
「大佐!!」
「黙っていてもらおう、中尉。これは命令だ」
冷たい声にリザは首を振って聞こえた言葉を消し去ろうとした。
二人はずいぶんと長いこと見つめ合っていたような気がした。
しかし、リザが感じたよりも実際には短い時間だったのかもしれない。
「どうしたのロイ?いつもみたいにやってよ」
は放たれる焔を全身で受け止めようとしていた。
「…できると思うか?」
ロイの手は小刻みに震えていた。
「私がお前に焔を放つことが本当にできると思うのか…?」
手だけではなく、いつもの自信に満ちた声までも震えていた。はただ鮮やかな瞳を大きく見開く。
「私の大切な者を自ら傷つけろと、そう言うのか?」
「違う!!俺は…」
こんなことが言いたかったわけじゃない。
最後の言葉は口にされることはなかった。
「!」
逃げることしか知らない、最低な自分に嫌気が差す。
しかしそれを止められるほど大人ではなく、これ以上彼らを傷つけるような言葉を放つほど子供ではなかった。
気づかない。
気づいていないと言い張った。
彼がいかに"痛い"のか。
気づいてしまえば、痛くて痛くて仕方がないというのに。
窓から飛び出したは綺麗に手入れされた芝の上に降り立った。
そのままどこかに走り去ろうとしたが運悪く下にいたハボックに鉢合わせてしまう。
「っと」
普段のならば捕まることはなかったが一瞬躊躇したことに後悔することになってしまった。
「放せ!」
ガタイのいい体に比例した握力で手首をがっちり掴まれた。
抵抗を試みるがそれは無駄であることがすぐに判明した。
「どういうわけだかわかりませんが今解放することは恐らく命令に反しますので」
「ハボック、そのまま放すな!」
「ほらね」
窓からロイたちが消えた。こちらに移動する気らしい。
「放せと言っているんだ!」
「すいませんね。大佐の命令の方が優先ですので」
今日は、本当に後悔することしかない。
振り上げた手で自分は一体何をしようとしたのだろうか?
はハボックに手を上げかけたことに自分で驚いているようだった。
行き場を失った手がかすかに震えている。
「俺は…一体何をしたいんだ」
手を掴まれたまま日差しを受けて柔らかく育った芝の上に膝をついた。
「あんた…」
「ハボック!」
背を駆け上がる寒気にの鮮やかな瞳が見開かれる。
今彼らに捕まるわけにはいかない。
手首を締め付けるハボックの手が少しだけ緩んだ。掴まれた手を振り払うためにハボックの手を思い切り捻る。
一度放してしまったらもう二度と触れることなど叶わないかもしれない。
言いしれぬ恐怖に襲われ、ハボックは声を張り上げた。
「中佐!」
あれだけ目が痛いほど綺麗だった足下の芝生はもうこんなに茶色くて…。
ほら、
あの得体の知れない暗く、冷たい、そして喉元に刃物を突きつけられるような恐怖がここにある。
あとがきという名のいいわけ
久しぶりの更新で短い…。
こんばんわ、長瀬です。
さくさく更新したまへ、と追い打ちをかけてくださって結構です;;
ネトゲしてないで更新しろー、とでも。
書き起こすの、遅すぎですみません。
未だ暴走中の主人公氏。や、爆走中ともいえますが。
早く何とかしてやってくれー、長瀬。
拍手で感想をくださる方、いつもありがとうございます。
次の更新こそはさくさくいけるようにがんばります!