「しぶといな…」
は上空でひたすら弾を避け、攻撃の機会を窺っていた。
08. 勝ち戦
「!」
自分の名を呼ぶ声がしたと思った瞬間、地上で爆発が起こった。
さっきの軍人だろう。
「…なるほど」
はその煙の中に突っ込んでいった。
戦場とは不思議なところだ。
先ほどまで全く知らなかった相手に背中を任せることが出来るのだから。
二人は背中合わせになり自分を、そしてお互いを守り、敵を攻撃する。
「小さいと、頭の高さが不安だよ」
「ミジンコ言うな!」
そんなことは言っていないのだが…?
のシールドは弾丸はおろか、熱風さえ通さない。
「右30°だ!」
全ての方向で何が起こっているのか分かっているようだった。
発火布で発生した炎で辺りを包む。
しばらく二人は動かなかった。
「…そこかっ!」
が振り向き様に氷のナイフを投げる。
再び爆発音がして辺りは今度こそ本当に静寂を取り戻していた。
「…というわけだ」
「話はわかったが、どうしてその『光の獅子』がここにいるんだ?」
ロイの肩に手を置き、白く輝く翼で地上1m付近に静止している。
「ついてきてしまってな」
「猫みたいに言うなよ…」
『光の獅子』はゆっくりと地面に降り、その翼を消す。
「俺は・。呼び捨てで。君は?」
「マース・ヒューズだ」
はヒューズを凝視していたが、すぐに視線を戻して言った。
「髪が黒い奴に悪い奴はいないからね」
俺は黒くないから悪い奴かもね、と笑う。
冗談と、本気と、わかりやすいヤツだと思った。
「とりあえず、この暴動の鎮圧中はよろしく」
手を差し出したは極上の笑顔で挨拶をした。
翌日からは二人から離れずひたすら防護壁を作り続けていた。
気が向けば銃を抜き、または光を錬成してナイフを作って投げている。
「マース、左10°!ロイ、右30°だ!」
砂煙と爆煙で視界は最悪だった。
しかし、この的確なナビゲーターはかなりこちら有利だ。
しかも悪い奴ではなさそうだ。
小さいが、いくつなのだろうか?
戦闘中でこんな事を考えていられるのだから、の力はかなり大きなものだ。
「よくやった」
上官からのどうでもいい誉め言葉を敬礼をしてやり過ごす。
と出会って今日で10日目だった。
この暴動の鎮圧までもう時間の問題だろう。
部屋に戻った俺達+は最近日課となった地面に座ってのコーヒー(は紅茶)で話をしていた。
「この暴動が終わったら、もしかしたら聞く機会がないかもしれないから教えてくれ」
「何?」
「どうして初日に私を助けた?」
は少しばかり恥ずかしそうな顔をして見せた。
この表情は…、子供だ。
「あの、さ。俺の家族が黒髪で、その…、似てたから。ロイに」
ごそごそと軍服の内ポケットを探る。
「雰囲気がロイとマースそっくりでさ。ちょうど足して二で割った感じなんだ」
写真を取りだして二人に見せた。
「、っていうんだ。俺の家族」
「まさか、嫁さんか?!」
紅茶を吹き出しそうな勢いでが笑う。
「んなわけないだろ?血のつながりはないけど、俺の両親が死んでからずっと一緒に暮らしてた」
戦場には似合わない少年の笑顔。
「でも、は病気がちだから少しでもいい環境においてやりたかった。だから軍にも入ったし国家錬金術師にもなった」
紅茶に映る自分の顔を見つめる。
やはり一番美味しいのはダージリンだ。
「この暴動を鎮圧したら一時帰還が許されてるんだ。だから早く終わらせて、セントラルでの好きなクッキーを買って帰るんだ」
心からの笑顔。
「綺麗な黒髪でさ、すっげー可愛いんだ。あ、でもとは恋愛感情はお互いにないんだけど」
「家族、か」
「そうそう」
こんな少年が戦場にいることが痛ましく感じてならない。
こんな無邪気な笑顔をする少年が…。
「明日、最終作戦を決行する!」
三人のいる部屋に一人の軍人が駆け込んできた。
相変わらずはマイペースに微笑んでいる。
ようやく帰ることができる。
家族が、が待っている。