倉庫だ。
ただし倉庫は十二もある。
「これを見つけるのか…」
薄い冊子に書かれた昔の証拠品。
「それで、何処の倉庫にあるんだ?」
「わからん」
やはりな、とはほくそ笑んだ。
わかっているのに一応聞いてみるのが最近の日課のようだ。
「わかったよ。誰か付けてくれるんだろ?」
「そうだな、フュリー曹長をつれていけ」
「了解」
形だけの敬礼をして部屋を出る。
正直、面倒くさいこと限りないが。
「フュリー曹長、一緒に来てくれ」
「あ、はい」
お気に入りの彼を従えて倉庫へ向かう。
恐らく十番までを探す間くらいには見つかるはずだ。
「地道に一番から探そうな」
「そうですね」
とは言ったものの、この倉庫の状態は捜し物を拒んでいるようにしか見えない。
要するに汚いのだ。
「と、とりあえず俺はこっちから攻めるから。フュリー曹長はそこからよろしく」
「はい」
今度掃除しないと。
は何もせず立っている場合ではないと手当たり次第に証拠品の入っている黒い箱を探すことにした。
「見あたらないな」
「ありませんね」
あれから3番倉庫まで探したが結局見つからない。
事前に何処にあるかを調べておくか、もしくは片付けるときにちゃんと書いて置いて欲しかった。
「よし、次は4番倉庫だな」
「がんばりましょう!」
「ああ」
本当にフュリー曹長といると和む。
疲れを感じない。
「あぁ!中佐、あれじゃないですか?」
「本当だ。…これはまた、えらく高いところに」
二人で適当な台を下に置き、が箱に手を伸ばす。
「くっそ…、もうちょっと身長が…」
「あ!中佐!」
ヤバイと思ったその時、『こんなところに物を積むな!』と叫びたくなった。
上から大きな段ボール箱が落ちてきたのだ。
「うわぁ!」
「わー!」
ここぞとばかりにいろいろな物が上から落ちてきて、机や段ボールや椅子などが上に降り注ぐ。
全ての物が落ちてきたらしい後に自分たちが身動きできないことが判明した。
「んー、これじゃあちょっと無理があるねぇ」
「そんな呑気な…」
ギリギリお互いの顔が見える辺りに二人は埋まっていた。
「誰かが助けに来るまではどうしようもないね」
「そんなぁ」
「まぁ夕方くらいには助けに来てくれるだろう」
俯せの状態で呑気に笑っている。
フュリー曹長は仰向けでその言動に一抹の不安を感じていた。
「まぁ、戦場なら助けが3日以上来ないことはよくあるわけで」
「うわぁ、そんなこと言わないでくださいよ」
明らかに怯えた様子。
「そう言えば倉庫の怪談があったなぁ」
「や、やめてください!」
「夜になると…」
「わぁぁぁ!」
本当にフュリー曹長はおもしろい。
「夜になるまでにはさすがに助けに来てくれるだろうけど」
「そう、ですよね」
そうは言うものの明らかに怯えていた。
確かにこのまま助けが来なかったら自分も困る。
今日の分の書類は終わらせたが、どうせロイからさらにまわってくるに違いない。
書類だけは早く終わらせてしまいたい性分だ。
「残念ながら片手が埋まってるからなぁ」
錬成しようにも手を合わせてしまえば錬金術が使えるため、普段から描く物を持ち合わせていない。
「大丈夫ですか!?お、折れたりしてないですよね!?」
「大丈夫だ。ただ挟まってるだけ」
血の巡りが悪そうだ。
「仕方がない。暇だから寝ることにしようか」
「こんな状況で寝られませんよ。ぐぇ!」
なんて言ってたら上から残留物が降ってきて見事にフュリー曹長の頭にヒット。
「ナイス。さて、俺も寝るとするか」
する事がなさ過ぎる時は寝るに限る。
こういうときは神経が図太い。
「…さ、中佐!」
誰かが俺を呼んでいる。
まだ眠たいのに顔を上げるとフュリー曹長がいた。
「どうかしたか?」
「どうかしたか?、じゃないですよ!」
「あぁ、物が落ちてきたみたいだけど怪我してないか?」
にへ、と笑うと子供にも見える。
以前見た『光の獅子』とは大違いだ。
これでは猫だ。
「大丈夫だ」
「へ?」
「そろそろロイが来る頃だ」
自信に満ちた声で笑う。
「、埋まってるのか?」
外から叫ぶ声がした。
ロイだ。
「ロイ!フュリー曹長と一緒にすーっかり埋まってる」
「今掘り返してやる」
どうせ自分はしないくせに、と中佐は呆れ顔だった。
この二人は仲がいいのか悪いのか本当にわからない。
しばらくして光が見えてきた。
「やあ、ロイ。久しぶり」
「やあ、ではないだろう。」
「とにかくフュリー曹長を」
「それならハボック少尉がもう助け出している」
後はお前だけだ、とロイは自ら上に積もっていた机を退けた。
「助かったよ」
挟まっていた腕を引き抜くとは立ち上がって背伸びをした。
「いやぁ、よく寝たよ」
「お前は本当に暇があると寝ているからな」
「エネルギーの温存と言って欲しいな」
「それで、証拠品は?」
は段ボール箱の下敷きになっていた黒い箱を取り出す。
「これでいいだろう?」
「あぁ」
箱を開けると何枚もの写真と鏡が入っている。
「とりあえず、腹減った…」
「中佐!」
入り口から書けてきたのはホークアイ中尉だった。
「足下の悪い中よくぞお越しで…」
「倉庫の中で遭難していたらしいですね?」
そうなんですー、なんて言ったらきっとホークアイ中尉に殺されていた。
「あぁ、もう夕方か…」
寝ていてもエネルギーは消耗するらしい。
「中尉、俺とフュリー曹長に紅茶を入れてくれるかな?」
「わかりました」
軽く微笑むとホークアイ中尉は先にオフィスに戻っていった。
「曹長、ホークアイ中尉の紅茶でお菓子でも食べようか」
「はい!」
こうして、六時間近く眠り続けたと強制的に眠っていたフュリー曹長は昼飯代わりのお菓子で代用することになった。
翌日、は書類を終わらせるとすぐさま倉庫に向かった。
もう二度と埋まってたまるか。
昨日埋まっていた五番倉庫を一日で片付け、翌日は四番倉庫を掃除した。
次々に倉庫を片付けていったは自然と倉庫の管理人となってしまった。
「結局、ロイは俺にこうしてほしかったんだろ?」
「さすが、見事な洞察力だ」
「俺にわからないことは基本的にはないからな」
ロイがやりそうなことだ、とは紅茶の香りを楽しんでいた。
「遭難の体験は久しぶりだったよ」
やっぱり埋まるのはもう嫌だ。
こうしてすべての倉庫はロイの思惑通りにの管轄となった。