どういうわけだか俺はここにいる。
いや、本当に理由がわからないのだ。
衝撃
「おー、エド!アル!久しぶり!」
完全無欠、二代目の豆であるエドワード・エルリックが久しぶりに東部へやってきた。
「おう!」
「お久しぶりです!お元気でしたか?」
しかもいつも一緒の弟だけじゃなかった。
「もちろん…って、もしかして彼女?」
「違いますよー」
即刻否定した金髪の可愛い女の子が顔を赤らめていた。
「ウィンリィ・ロックベルです。あなたが中佐ですね!エドから聞きました!」
「うん、・だよ。初めまして、よろしくね」
が手を差し出すと一瞬戸惑ったようだがウィンリィも手を差し出した。
「、初対面の人間にそれはやめたほうがいいのではないか?」
あきれ顔のロイ・マスタングがドアを開けた状態で立っていた。
「それ?それってどれ?」
自覚症状がないから困る。
「万国びっくりスマイルだ」
「ぷっ…、それってまさか大佐が考えたのかよ?」
「兄さん!」
「ヒューズだ、あいつくらいしかいないだろう?」
そんな二人を気にする事無くはウィンリィと話を続行する。
「あの!」
「ん?」
真っすぐにを見ることが出来ないウィンリィ。
「えーと、綺麗ですねその目…」
その声に部屋が静まり返った。
「え?え?」
「…そう?ありがとう」
万国びっくりスマイルが炸裂。
思わず赤面してしまったエドは頭を高速で回転させる。
ロイはの様子に変化がないのを確認して椅子に座った。
「あ!俺、中尉に呼び出されてるんだった!」
本気で慌てた様子で手を合わせる。
「ごめん!ちょっと行ってくる!」
誰の返事も聞かずに走りだした。
おそらく、緊急時以外に廊下を走るなと言われたのも聞こえてはいないだろう。
「中尉、遅くなってごめん!」
がその俊足を披露しながらこちらに走ってきた。
もちろんさわやかな笑顔付きで。
「いえ、私も今来たところですから」
「えーと、倉庫の資料だっけ?」
「ええ。勝手にかき回してせっかく中佐がきれいにされた倉庫を台無しにしてはいけませんので」
「そんなこと、別に気にしなくてもよかったのに」
二人並んで歩くとあまり身長差がないのに今更気づいたように、はちょっとだけ背伸びをしているようだった。
「中佐」
「うぇ?は、はい?」
悪戯がバレた子供のようだ。
その様子に思わず笑みがこぼれる。
「別に身長なんて気にしなくてもいいのではないでしょうか?」
「いや…、その…」
「私は身長が低かろうが高かろうがその人に魅力があればいいと思いますよ」
「…そう、なの?」
「ええ」
ここで万国(以下略)は反則だと思う。
無意識に逸らした顔が熱を持っていたことに気付かれただろうか?
倉庫は彼が数日を費やして掃除、整理したため以前誰かが遭難したとは思えない様子だった。
は少しだけ背伸びをして箱を取り出す。
「はい、これだよ。一応中身の確認をしてね」
渡された箱の中も倉庫同様きれいだった。
「はい、間違いありません」
「よかった、じゃあ戻ろう。エドとアル、それからウィンリィちゃんが来てるんだよ」
また騒がしくなる、とリザは苦笑した。
部屋の前に立っただけなのに物凄い音量の声が聞こえてくる。
リザがドアを全開にした瞬間青い軍服が視界をいっぱいにした。
倒れかかった青にそのまま押し倒されて床に座り込んでしまう。
「!」
ロイが慌ててこちらに駆け寄ってくる。
何があったのか状況が全く飲み込めない。
ただ一つだけわかったことは自分に向かって倒れこんだのが中佐であるということ。
「中佐、中佐!?」
少しの間だったが、ぴくりともしないの様子にリザは心底冷える気がした。
「うー、痛…」
が後頭部をさすりながら起き上がる。
「うわ!すみません!」
顔を赤らめて飛び起きた。
その振動で痛みが倍増したのか、少し涙目になっている。
「あ…、ご、ごめんなさい!」
今にも泣きだしてしまいそうな女の子に気づいたは笑顔で何かを拾い上げ、手渡す。
「はい、このスパナは君の?次から気を付けてね」
「おい、大丈夫か!?」
エドが声をかけるとは目線を下げた。
はあまりの事態に声を張り上げる。
「俺より小さい奴がいるー!!」
「誰がミジンコだー!」
「…て、いうか何で俺がこんなにでかいんだぁぁぁ!」
その一言が引っかかったため、リザはロイの方に視線を向けるとロイも同様にリザへ視線を移していた。
は物凄い勢いで時計を見上げた。
「それは置いといて…、ヤバい!早く帰らなきゃ!」
「ちょっと待て、どこに行くつもりだ!」
「まだ仕事中ですよ」
そう言うと彼は不思議そうな顔をしていた。
「は?仕事?…ちょっと待ってくれる?ここどこ?」
何だか嫌な予感がする。
リザがそんなことはありえないと自分に言い聞かせるが次の瞬間、それは現実のものとなった。
「あのさ、君たち誰?」
自分に鈍器が当たったわけでないのに、リザにはそれと同様の衝撃が来た。
「あのさ、早く帰りたいんだけど」
「待ちたまえ、一体どこに帰るというんだ?」
「あん?俺の家に決まってんだろ?あいつに頼まれた買い物がまだ終わってないんだ」
出された紅茶にも手を付けずにソファーで脚を組んだは大佐を睨んでいた。
「あいつ…?」
言ってから後悔したのは言うまでもない。
「俺の家族が家で待ってんの。っていうんだ」
一瞬だけ見せた微笑みに胸が痛んだ。
彼だけがまだ幸せだったあの時間に戻ってしまった。
「あの…」
「ん?なんだよ、まだ気にしてたの?単に手が滑ったからスパナが飛んできたってだけじゃん」
立ち上がってよしよし、とウィンリィの頭を撫でる。
「ちょっと痛かっただけだよ」
まだ少ししか痛みを知らない彼の笑顔は子供らしい。
もしかしたら、このまま記憶が戻らない方が良いのかもしれない。
"痛み"を強く感じた経験のないまま…。
「おい…、どーすんだよ」
「全く見当も付かないな…」
散々豆だとチビだの言われたエド。
まだ少しだけ頭にきていたががこのままの状態では仕事ができないのではないかと心配になる。
ロイはロイで何とか元に戻せないかと考えるが、さすがに今回ばかりは錬金術の恩恵にあずかるのは適当ではないと判断した。
「中佐、…っと、さんは今おいくつですか?」
ハボックがそう尋ねるとは胸を張ってこう答えた。
「いくつだ?10歳だよ!おじさんたちと違って若いんだ」
「…これが中佐じゃなかったら殴ってますよ」
振り返ったハボックがさわやかな笑顔で告げる。
「あのさ、何で俺がこんなにでかくなってんの?しかも何で軍服コスプレしてんだ?」
「コ、コスプレ…」
その年齢で一体どこからそんな言葉を仕入れてきたのか。
この性格のまま成長しなくて良かった、とハボックは心からそう思った。
リザがしゃがんでの目線より下から見上げる。
「本当に、私たちのことを忘れてしまったのですか?」
愛しい人からその存在を末梢されることは、こんなにも、痛い。
「おねーさん、何でそんな悲しい顔するんだよ」
次第にの深紅の瞳に光の粒が溜まり、やがてそれは筋を作った。
「何でこんなに痛いの?どうしてこんなに苦しいんだよ…」
「…」
「違う!苦しくなんて、ない!苦しくなんてない!」
いきなり立ち上がったは開いていた窓から飛び降りる。
「待て!!」
ロイの制止の言葉など聞かない。
地面に着地し、そのまま走ってその場から去っていった。
「探してきます!」
「中尉!仕方ない、行くぞ!」
ロイの声に一足先に走りだしたリザに次いでハボックも走りだす。
「俺とアルも行く!ウィンリィは待ってろ」
「嫌!私のせいであんなことになっちゃったんだもん。私も行く!」
「…俺たちから離れるなよ」
強く頷いたのを確認して三人は走りだした。
は無意識にいつも行く公園に来ていた。
泣きたくなんてないのに涙があふれてる。
「何なんだよ…」
「どうしたのかしら?」
その声に振り向くと全身真っ黒の服を着た女性がやさしく微笑んでた。
「誰?」
「そうね、あなたのことが大切だと思う者の一人よ」
その女性の手招きに一瞬戸惑ったがは後を歩くことにした。
やがて比較的人通りの少ないベンチにその女性が腰掛ける。
「いらっしゃい」
は恐る恐る距離を縮めた。
そしてぽんぽんと女性が叩いたベンチに腰掛ける。
どこかに似ている気がする。
女性がこちらを向いた時にはようやく長いこと注視していたことに気付いた。
「あ…、ごめんなさい」
「いいのよ」
その右手に後頭部を捕まえられる。
「痛…」
「あら、ごめんなさい。まだ痛むのかしら?」
そのまま横に寝かされたは少し顔を赤く染めて女性を見上げる。
まさか膝枕をされるとは思ってもみなかった。
「あの…!」
「嫌かしら?」
「そんなことは……、ないです」
恥ずかしいけど何だか懐かしい。
いつだっただろうか、お母さんがやってくれた記憶がある。
やさしく髪をかき分ける手が心地よく、の瞳は次第に隠されていった。
「あなたのことが大切よ、。あなた血が大切なの」
後頭部の痛みで目を覚まさないようにそっとベンチに頭を降ろす。
「もっと苦痛に歪む顔を見せて欲しいわ…」
優しいキスを落としてその女性は去っていく。
最後に振り返った瞳は心から愛おしいものを見る目だった。
「一体どこに…」
リザは公園中を探し回る。
いつもいるベンチに姿は、ない。
「!」
何度呼んでも返事がないためリザの不安はその回数に比例して大きくなっていく。
しかし薄い金色をした髪が風に揺れているのに気づいたときにはそれは半減していた。
「こんなところに、いたのね」
その髪がさらさらと音を立てているような気がした。
優しくその髪に触れると指からすぐに逃げる。
「、風邪をひくわよ?」
リザの声に少しだけ顔をしかめる。
「あと5分…」
それが彼の癖だったのだろう。
寝起きの第一声はまだ寝かせてくれというものだった。
「だめよ、風邪をひくわ」
「んー、もうちょっとだけ…」
「ほら起きて」
ゆっくりと光を集め始めるその真紅の瞳。
「軍の…おねーさん?」
少し残念に思ったが彼が見つかったその安心感でいっぱいだった。
は何かにとまどっているようだったが。
「よかった、あなたが見つかって」
「え、と、俺のこと探してたの?」
ゆっくりと起きあがるがどうやらまだ後頭部が痛むらしい。
「もちろんよ、心配だったわ…」
その瞳を見て嘘だとは思えなかった。
驚きに見開かれたの瞳に涙が溜まっていく。
いきなり抱きしめられたリザはバランスを崩さないようににすがった。
子供が親に飛びつくようだった。
「ごめんなさい!」
本当はいつもこんな風に泣きたいはずなのに…。
リザはの背中をさすりながらそう思った。
「大丈夫、あなたが見つかったんだからもういいの」
「俺が大人だったらよかったのに」
「あら、どうして?」
なかなか返事が返ってこなかった。
どう表現したらいいかを迷っているようだった。
「俺には守らなきゃいけない家族がいるしおねーさんは大人で、俺は子供で…」
リザを抱きしめる力が強くなる。
「けど、でも俺のこと本気で心配してくれたおねーさんのことが」
本当に本当に好きなんだ、と何度も繰り返す。
「…ありがとう。でも別に子供だろうと大人だろうと関係ないじゃない?」
「本当?」
「ええ」
額と額をくっつける。
自分がどれほどのことが大切で、大好きかこれで伝わればいいのに。
「さぁ、とりあえず司令部に戻りましょう」
「…うん」
二人並んで歩く。
ふとこちらを見たは背伸びをしているようだった。
「?」
「うっ…、何でもないよ」
大人であろうと、子供であろうと考えることは同じらしい。
「別に身長なんて気にしなくてもいいんじゃないかしら?」
「だっておねーさんと俺の身長ってそんなに変わらないし…」
子供らしい表情ですねていた。
そんなに思わず笑みがこぼれる。
「私は身長が低かろうが高かろうがその人に魅力があればいいと思うわ」
「…本当?」
「ええ」
表情が一転してぱっと明るくなった。
「そうだ!おねーさんの名前は?」
「リザよ。リザ・ホークアイ」
「あ…れ?俺、その名前を聞いたことがあるような気がす…」
誰かの悲鳴が聞こえた次の瞬間、先ほどのように視界が青でいっぱいになる。
「!」
今度こそ本当に最悪の事態が頭を過ぎる。
「!!」
「中尉!!」
大佐たちが駆け寄るのにも全く気づかなかった。
リザは必死での名前を呼び続けた。
「ん…、大丈夫…」
頭をさするついでに出血がないか確認する。
「ちょっと痛い、かな…」
後頭部に本日二回目の強打。
それで少しだけ痛いというのは本当ならあり得ないところだ。
小さいとはいえ植木鉢は植木鉢だ。
上から落ちてくればそれなりの破壊力がある。
「あ、俺なら大丈夫!これ、ここに置いておくよ」
上の階から動揺している様子の女性に声をかけた。
に当たったおかげで鉢は割れることはなかった。
「、本当に大丈夫なの!?」
「頭がぼーっとするけど大丈夫だよ」
は何かを思いだしたように手を叩いた。
「しまった、早く帰らないと!」
「、悪いが帰すわけには…」
そう言うとはロイの頭に手刀を振り下ろす。
「何をするんだ!」
「まーたサボる気か?早く帰って仕事だ、仕事!」
ロイの手を引っ張って司令部の方向へ歩き出した。
「さん、記憶が…?」
「へ?何のこと?」
ずんずか歩みを進めていたがウィンリィの言葉におかしな顔をした。
全く何のことをきいているのかわからないようだ。
「…そういえば何で俺たちここにいるんだ?」
は辺りを見回してみる。
何だか日が落ちてきているような気がするが…?
慌てて銀時計で時間を確認する。
「あ!お茶の時間を過ぎてるじゃないか!戻るぞ、みんな!」
「待って!あまり走らない方が…」
リザが忠告をしたが走り出そうとする。
しかしいくら丈夫にできているからと言っても、ほぼ続けての頭部強打は厳しかったようだ。
ぐらりと傾いた体は重力のままに地面に吸い寄せられていった。
間一髪でハボックがそれを阻止する。
「ふぃー、セーフ…」
「よくやった、ハボック。…は医務室行きだな」
全く目を覚ます気配はない。
「大佐、は…」
「大丈夫だ。恐らくただの脳震盪だ」
眠っているの顔は子供の彼のそれと同じ。
しかし頭部に2度も衝撃を受けてただで済むとは思えない。
毎度毎度の救護室。
今度は一体何をやらかしてここへ来たのだろうか?
「、大丈夫か?」
色の濃い金髪が低い位置から自分を覗き込んでいた。
「あぁ、エド。なんだか後頭部が妙に痛むんだけど?」
「 ごめんなさい!手から滑った私のスパナが…」
「そうなの?エドのためにいつもスパナを持ち歩いているんだね」
さすが専属整備士だ、とは感心しているようだった。
本当はエドがウィンリィといつものように喧嘩をしていたのが原因だ。
さすがに軍の施設でスパナを飛ばす予定はなかった。
しかし手が滑ってスパナはそのままドアを開けたリザのもとに飛んでいったのだ。
そしての見事な反射神経でリザの顔面に当たるはずだったスパナはの後頭部へ。
「あれ?アルは?」
「が気がついたら教えてくれって言われてて。アルが呼びに行った」
「ありゃ、悪いことしたなぁ」
あまり間のないうちに走る足音が聞こえてきた。
重たい鎧の音と、それから…。
廊下は走っちゃいけないはずだが?
とりあえず自分のことは棚に上げておく。
「!」
「リザさん!?」
走るなといつも注意するリザが息を切らせて走ってきた。
「どうかしたの?」
「よかった…」
エド達三人がごそごそと部屋を出ようとしていた。
「んじゃ、お邪魔虫は退散」
何かを企んでいるような悪い笑顔になり抜き足差し足ポーズで入り口へ向かう。
「また会いましょうね」
兄貴の方は余計なことを言って逃げていった。
今度会ったら技でもかけてやろう。
アルは…いつもいい子だなぁ。
ちょっと涙で前が見えなくなっちゃうよ。
「さん、本当にごめんなさい!」
「わざとじゃないんだから。次に会うときに気にしてたら怒るからね」
ウィンクは絶大な破壊力。
「はい!」
エド同様、医務室からダッシュで逃げていった。
「元気がいいねぇ」
「ええ」
リザはベッドの傍に置かれた椅子に腰掛ける。
「まだ痛むのかしら?」
「少しだけね」
先程からリザの様子がおかしい。
それきり俯いて黙り込んでしまった。
「…何かあった?」
「ごめんなさい、私のせいで…」
「何言ってるんだか」
リザ顔を上げるとはいつものように微笑んでいた。
「俺は前に言ったはずだよ。大切な人を守るためなら、何だってする」
たとえそれが自分を滅ぼす結果となっても。
その言葉の裏に隠されていただろう聞こえるはずのない声が伝わってくる。
リザはいつまでも消えない不安に押し潰されそうだった。
こんなにもという存在は自分の中で大きくなっている。
「あなたがいなくなることが恐い…。また、どこかに行ってしまうのではないかといつも不安なの」
「リザさん…」
は手を伸ばし、リザの手をとる。
「俺は、歪みを生み出す者だ。この世界にとっては俺は不必要なんだ」
リザは弾かれたように顔を上げた。
まただ。
真紅の瞳は自分をとらえているはずなのに、何かが違う。
この瞬間が何よりもぞっとする。
「どんなに、どんなに私があなたを想っていても無駄なのですね…」
は意を決したように口を開いた。
「…俺はもしかしたら自分は人間じゃないかもしれないって最近思うんだ」
リザの手を握る力がほんの少しだけ強くなる。
「もしそうなら、俺はリザさんとは…」
「あなたは間違いなく人間よ!もしそうでなくてもかまわない!」
今度はリザが手を強く握った。
「私はあなたのことが…」
「君まで歪んでしまう」
ついにはリザから目を離してしまう。
「根拠はないけれど、私はあなたがいれば歪んだりしないと思うわ」
本当は心から大切な人だと思っている。
しかし自分はヤツと切っても切り離せない。
またいつ呼ばれるかわからない。
「リザさん、俺は君を悲しませることしかできない」
「いいえ、あなたがいてくれるだけでいい。必ず帰ってきてくれればいいの」
「…保障は、できない」
リザの両手がそらしたの顔をホールドする。
「少しは抗ってみたらどうなの!」
いつも冷静なリザが声を張り上げる。
いつもビリビリと伝わってくる痛みとは、違う。
「あーあ、気付かないほうがよかったのに…」
あてがわれた手に自らの手を重ねた。
「もう少しだけ、もう少しだけ待ってほしい…」
もうじきわかるはずだ。
自分はこれからどうなるのか。
「わかったわ、でもあまり時間がかかると」
「ロイが君を狙うかもね。そうはさせないよ」
「それはないわよ」
ようやくいつもの笑顔に戻ったリザに、は不意打ちをかけた。
触れるようなキスにリザが驚いて口元を押さえる。
顔を赤く染めたリザは何かを言いたそうにしていたがあまりの不意打ちにただただ驚いているばかりだった。
「ロイみたいにうまくはいかないみたいだね」
悪戯好きの子供が笑う。
「!」
「リザさん、今の君すっごく可愛いよ」
リザはますます顔を染めて俯いた。
「ホントだよ」
はリザと額を合わせる。
こうやって、自分がいかに君のことを大切に想っているかが伝わればいいのにね。
「リザさん、大好きだよ」
言葉ならいつでも言える。
でも、本当に伝えたいことは言葉になんてできない。
「私も、」
こうやって強い光を抱く瞳に見つめられるのが好き。
でも彼はそれを恐れる。
こんなにもやさしい色をしているというのに…。
「うわ!俺、仕事どうしたんだ!?」
いきなり素っ頓狂な声を上げる。
あまりにギャップの激しい表情に思わず吹き出した。
「、あなたって…」
「隙あり」
今度は頬にキス。
身を翻したが部屋の外に走って逃げる。
公私混同はよくないけれど、オフィスでどんな顔して彼に会えばいいのか。
リザはしばらく医務室で悩んでいた。
「《また》ね」
そう言って彼は消えた。
「フェル!!」
しかし彼を呼ぶ声は届くと信じていた。
彼は帰ってきた。
「たっだいま〜」
部下たちからの手痛い歓迎には悲鳴をあげていた。
本当はリザ自身もそれに混ざりたかった。
しかしそれだけで表現できる喜びなんてものではなかった。
公園で休憩していたにブラックハヤテ号が突進していったのは全くの偶然。
そこでが必死で辺りを見回していたことや。
そのすぐ後にリザは何かが恥ずかしかったようで、ブラックハヤテ号でごまかしていたことは。
当の本人たちと、ブラックハヤテ号のみ知る事実があるということ。
あとがきという名のいいわけ
あや様、まずはじめに謝っておきます。
本気ですみません!心からすみません!
甘いのは一部分のみでした…(汗)
困ったことに某芸人のように「甘〜い!甘すぎるよ!」なんて文が書けませんでした。
うーん、もし書くことができたらあや様に捧げます。
ご期待に添うことができなくて本当に申し訳ないです…。
ちょっとずつ加糖していけるように頑張ります。