「俺達がと出会ったのは戦場だった」
07. 戦友
あちこちで煙が空に向かっている。
銃声。
悲鳴。
爆発音。
ここは戦場で。
一瞬間違えば足下に転がる物体と同じ運命を辿る場所。
・は無表情でその場に立ち尽くしていた。
「…脆いよ」
人間の頭だった場所を眺める。
「俺、まだ錬金術使ってないんだけどね」
十代前半であろうその少年は笑う。
「怪我したくなかったらさっさとどこかに行ってくれ!」
パン、と言う音を立てて手を胸の前に合わせ背中に触れ、糸を引く光を都合のいい長さまで引っ張った。
「ちょっと長すぎたな…」
微妙な調整が最近いい加減になってきたような気がする。
翼を広げ、地面を蹴った。
「『光の獅子』の話を聞いたか?」
イシュヴァールの内乱が始まってもうかなり経つ。
別の場所で起きていた暴動の鎮圧にロイ・マスタングと、マース・ヒューズの両方が偶然にも同じ場所に招集されていた。
「『光の獅子』?」
「あぁ、お前と同じ国家錬金術師で輝く真紅の目を持つらしい」
真紅の目。
真紅の瞳なんて見たことがない。
「会ってみたいな」
「珍しいな」
ヒューズはニヤニヤしながら顔をのぞき込む。
「何がだ?」
「お前がいきなり他人に興味を持つなんて初めてのことだろ?」
…そう言えばそうかもしれない。
人と比べるような余裕なんてないからな。
俺には…。
その時、二人のいた食堂にざわめきが起こる。
「『光の獅子』だぞ」
その声に二人は立ち上がる。
しかしその姿は見あたらない。
「……?」
この場に似合わない少年が入ってきたところだった。
しかし瞳は赤。
後ろには上官がいる。
「刀二本だけで敵陣に単身飛び込んでいった時はどうなることかと思ったが、誠に見事だった」
「ありがとうございます」
上官の前を歩いているなんて…。
「一人で例の一区画を全部鎮圧らしいぜ」
「あぁ、この辺りで一番広いところだろ?」
まさかこの少年が?
上官からの誉め言葉も無表情に受け取っている。
「別の人間だろ?」
「あぁ」
人違い、なのか?
しかしどこか雰囲気が違う。
真実は戦闘で明らかとなった。
「俺に銃は利かねぇよ!」
光を錬成してシールドを作る。
白く輝く翼で縦横無尽に飛び回り敵に攻撃を仕掛けた。
その目の色は真紅。
「なるほどな」
ヒューズがそれを見て笑う。
ロイは炎で応戦しつつ空を見上げた。
「危ない!!」
手榴弾が飛んでくるのが見えた。
間に合わない!
「マスタング!」
ヒューズの声が妙に遠く聞こえた。
「大丈夫か?」
目の前には彼がいた。
「あ…、あぁ」
ロイと自分を守っていたシールドを解除する。
彼は目を細めると、一瞬悲しげな表情を見せた。
「…名前は?」
「ロイ、ロイ・マスタングだ」
「そっか。俺は・」
気をつけろよ、とは再び空へ向かった。
「マスタング!怪我はないか?!」
「あぁ…」
なぜ助けてくれたのだろう?
そんなことを考えている余裕はなかった。
すぐに身を隠して攻撃する体勢を整え、二人はそれぞれ飛び出していった。
彼は『似てるな』と言った。
一体誰に似ているのだろうか。