「やっと治ってきたな」

手の甲と裏を見ては微笑んだ。

















06. 家族


















「この前の火事の怪我ですか?」

のお気に入り、フュリー曹長がその様子を見て言った。

「そうそう。やっと回復。おめでとう、俺」

「結構かかったな」

ロイがの手をとる。

「君よりは早く治るよ」

若さが違う、若さがね。

むっとしたロイは放っておいてはのびをした。

「さて、今日は昼から休ませてもらうことになってるからさっさと終わらせてしまおう」

両手にペンを持っていつもの通り二枚の書類を一度に取りかかる。

「両利きとは便利なものだな」

は手を止めて書類から目を離した。

「まあね。…ってロイ、邪魔してるだろ?」

「知らんな」

別の場所に視線を泳がせるところを見ると、明らかに邪魔をしているのがわかる。

昔から全く変わらない。

「一度に二枚の書類を扱ってるときは話しかけるなって言ったよね?」

「そうなんですか?」

ロイのサボり具合にいい加減何か言ってやろうかと思った中尉だったが、の知られざる特性に耳を傾けていた。

「うん。全集中力を使うからこれが出来るんだよ」

結構大変なんだよ、と笑う様子からは全く想像がつかない。

「中尉、とにかく彼をどうにかしてくれないかな?邪魔されたら予定が狂っちゃうよ」

「わかりました」

椅子から立ち上がると、ロイは慌てて自分の席についてペンをとる。

「ありがとう。一時間で片付けるから」

「一時間ッスか?!」

少尉が驚くのも無理はない。

机には無能大佐から回ってきた書類が山積みになっている。

これだけを一時間で終わらせるなんて、いくら両手を使っても不可能に近い。



































書類を処理しているときの中佐は、手以外のどこも動きませんでした。

普段は全く違うから想像できない真面目な顔でひたすらペンを走らせていた。

無能と有能、この違い…。

















































「ん〜、終わった終わった〜」

背伸びをするからはゴキゴキと音がした。

「本当に終わらせてしまいましたね…」

「…そうね」

満足そうにその様子を見て笑う。

「俺は『有能』だからね」

「…イヤミかね?」

「さぁ?」

は黒のコートに袖を通した。

「軍服のままで帰るんッスか?」

「そう。今日だけ、ね」

サングラスをかけてからドアを開く。

「では、今日はこれで失礼するよ。明日の昼には帰ってくる予定だ」

お先、と手を振るの背中を見つめるロイは複雑そうな表情だった。


























「『歩いて』行くのか?」




























動きを止め、ロイを見つめる。

「…あぁ」

一瞬だけ見せた表情はロイ以外知らない。

じゃあ、と手を軽く挙げて外へ消えていった。

「そうか…」

その声に、部屋にいた三人が振り向く。












「今日は彼の家族の誕生日だったな」














































































































































「歩いてくるの、大変だったんだよ」

もちろん汽車は使ったけどね。

花束を墓石の前に置く。

「これ、花屋のお兄ちゃんがおまけしてくれたからこんなに豪華になってるんだ」

墓石に手を置いてみる。

冷たい。

君はこんな冷たいものの下にいるんだね。













…俺も、人体錬成すればよかったかもしれない。













そうしたら今、後悔していないのかもしれない。























「君にもらったコレ、最近は本当に俺の目の色に似てきたよ」

前はそんなことなかったと思うんだけど。

「…話してると寂しくなっちゃうな。あぁ、そうだった」

はゆっくりとその墓石に目線を合わせた。

「俺、ちょっと気になる人がいるんだ」




俺なんかには手が届きそうもないんだけど。




でも。

「まだよくわからないんだけどね」







目の前にあるのは君の顔じゃないから。

君がどんな顔をしてるのかわからないけど。







「君は僕の家族だから、こんなこと言うんだよ」







他の人には話せない。

…だって恥ずかしいだろ?







「君は喜んでくれているだろうか、それとも怒っている?」

いつまで経ってもキツイ、この気持ち。

身体の力が抜けていくみたいだ。

「でも、俺は君を愛してるから。大切な家族だから愛してる」

目を閉じて、そして薄い紫色の目をゆっくりと開く。

「また、来るね」




立ち上がって墓石に背を向けた。

もう日は山の向こうに沈みかけていた。





































































































と入れ違いか」

中央の軍法会議所からわざわざ東方司令部に来たマース・ヒューズ中佐は困ったな、と頭に手をやる。

「今日は誕生日だ」

その言葉に目を細める。

「…そうだったな」

がいなくなったため、忙しくなったオフィスでは先ほどのメンバーに加えてブレダ少尉、ファルマン准尉が仕事にかかっていた。

心配そうな表情を見せるホークアイ中尉。

「そうだな、少しだけ昔話をしようか」

























聞いて後悔するなら、この部屋から出ていった方がいい。