「俺の趣味、もう一つあるんだよねぇ」
そう言って中佐は出て行かれました。
03. 三時のおやつ
ものの一時間ぐらいだろうか。
はいつも以上の笑顔で帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい、中佐」
「いい匂いッスね」
はその包みを開けると部屋中に甘い匂いが立ちこめる。
「全員分あるよ。俺はロイを呼んでくるから、ハボック少尉は無線室に行ってブレダ少尉と准尉と曹長を呼んできてくれる?」
「了解」
ハボックはいつもよりも機敏に敬礼をして部屋から走って出ていった。
「悪いけど、中尉は紅茶をお願いできるかな?」
「わかりました」
三人はそれぞれ散らばった。
こういう時ほどみんな行動力がある。
「ロイ、いる?」
「あぁ」
ドアを開けると山積みになった書類の向こうから声がした。
「すごいね。新記録じゃないのか?」
「…中尉に殺されそうになったよ」
だろうね、とは苦笑。
山を見上げながらどうしたものか、と自分の髪を撫でてみる。
「いいもの買ってきたんだけど。来ないか?」
「…中尉に殺される」
サボりすぎだ。
「何も言わなかったぞ、その中尉は」
そう言うとロイは軽快な足取りでやってきた。
「なるほど、それなら大丈夫だな」
普段の中尉からは想像できないのだが。
どうやらロイのサボり癖は昔から同じということか。
ならば納得が出来る。
「そろったみたいだな」
は先ほどの包みからケーキを取り出す。
「町はずれの行列が出来る店No.1『フォルテ』の限定10個のケーキだ!」
「うわ!一回食べてみたかったんですよ!」
フュリー曹長はに目を輝かせる。
「そうだろ?俺もこっちに来たら一回は食べてみたくてさ」
「これって、一つが大きい割にたった250センズなんですよね!しかも味は最高!」
「そうそう!フュリー曹長は話がわかるなぁ」
まるでどこぞのOL状態だ。
皿に乗せられたケーキを配って歩く。
「それでは皆さん、手を合わせて」
「いただきます」
ちょっとした幼稚園の先生気分だ。
本当はロイの専売特許なのだが。
「美味しいですね!」
「思ったより甘くなくてよかった」
「ラム酒の加減が何とも…」
みんな気に入ってくれて良かった。
「俺、ダージリンが一番好きなんだよね。ありがとう、中尉」
「偶然ですよ」
「いやいや、偶然でも嬉しいよ」
こんな優しい笑顔をする人は見たことがない、と常々思っていたが。
「、中尉が困っているだろう。その『悩殺!万国ビックリスマイル』はやめたまえ」
ロイはその様子にすっかり呆れかえって口を挟まずにはいられなかった。
「何だそれ?」
「ヒューズがそんなことを言っていた」
「ま〜たアイツか〜」
やってくれるなぁ。
は中央司令部のある方を見て額を押さえた。
ちょっぴり念を送ってみる。
「アイツ、錬金術師がみんな万国ビックリショーだと思ってるからなぁ」
「全く迷惑な話だ」
「お前は万国『ビックリ』じゃなくて『迷惑』だよな」
万国迷惑ショー。
「迷惑など…」
「ストップ!一体誰がいつもその後の処理してると思ってるんだ」
少しは部下の苦労を知れ。
は両手を上げて降参のポーズを取りながらも反抗する気は満々だった。
早くも戦闘態勢の2人。
「しっかり言いくるめられてますね」
「本当。さすが同じ戦場をくぐり抜けて来ただけはあるわね」
それどころじゃなかった。
あぁ、紅茶が冷めてしまう。