俺の住んでいた町は田舎だった。
そして何もなく、平和な街だった。
「…葬式、か」
軍の病院から見える通りを見ると見慣れない棺を持った列が目に入った。
「…そうか、ここは火葬じゃないんだな」
立ち上る煙はどこへ行ってしまうのかと、母親に尋ねたことがある。
天国なんてありはしないことはよくわかっていたけれど。
母親の微笑みに言い返すことなど出来なかった。
おかしな話だ。
自分も錬金術師なんだから非科学的な事なんて信じていないのに。
「煙みたいに飛んでいけたらな…」
「私がビニール袋に入れて捕まえます」
その声に振り向くと、花束を持ったホークアイ中尉が立っていた。
「こんにちは、中佐」
「久しぶり、中尉」
傷ついた笑顔で笑って、見ているこちらが痛いとマスタング大佐が言っていたが…。
「明日から復帰だそうですね」
「仕事、溜まってるでしょう?」
「もちろんです」
参ったなぁ、と笑ってみせるがわざとらしい。
痛い…。
その痛みが伝わってくるほど、彼は痛みを抱えている。
「あなたが。殺されそうになっていた時、本当に心臓が止まりかけました」
「心配をおかけしました」
「そうではありません!」
怒ったホークアイ中尉の顔に驚いた。
「私は本気で心配したんです!」
「…中尉」
今にも泣き出してしまいそうな瞳は既に潤んでいる。
「俺…」
こんなに悲しませてしまった。
「ごめん…、なさい」
申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。
謝るくらいしか思いつかない。
「中尉、俺の手は…」
慌てて引っ込めようとしたが強い力で引かれた。
「とても温かい手です」
「だめだ…」
はなされるがまま、彼女の手を見つめるしかできなかった。
「私も人殺しです。何人もこの手で撃った」
真剣な眼差しでリザはを見つめる。
「あなたの手が汚れていようと私の手も汚れているんです。今さらでしょう?」
つい目を逸らしてしまう。
どうしてこんなに君は強いのだろうか?
「そんなに一人で抱え込まないで」
「中尉…」
「あなたが煙になったら私が必ずビニール袋を振り回して全て捕まえます」
だから。
「もう、無茶しないで!」
「あ…」
『無茶しちゃダメだよ、!』
…、俺…。
俺は人に迷惑ばかりかけちゃってるよ。
フラッシュバックに頭が痛い。
体勢を崩しそうになり、温かい手に支えられる。
「!」
自分の罪に染めるわけにはいけない。
「リザ、ありがとう…」
「」
どうか彼らには自分と同じ『痛み』が訪れませんように。
俺が君たちの『世界』を歪まないように守るから。
「明日、遅刻しないでくださいね」
「うん」
の方を一度確認して、中尉は部屋を出た。
傷ついた心は完全には癒せないことはわかっている。
それでも、彼が好きなのだ。
リザは一度立ち止まり、病室を振り返る。
「また明日」
日はじきに落ち始める頃だった。