赤の瞳は罪の証。
死ぬまで永遠に消えない、罪の証。
「『光の獅子』は死ぬまで『光の獅子』だ」
ベッドの上で上半身だけを起こしては笑う。
結局俺も奪う側に回ってしまった。
「また、ということは中央でも何かしたのか?」
『…確かに一度、捕まえようとして殺しかけたことがある』
電話の相手はどうやら軍法会議所のヒューズ中佐らしい。
「その時、お前が狙われただろう?」
『そうだ。しかもが自らを『光の獅子』と言った』
「そうか…」
傷は癒えていない。
痛みを抱えたままここまで来てしまった。
一体どうしたものか。
『大丈夫なのか?』
「今のところは、な」
十三年前のように暴れたりはしないと思うが。
『手があいたら俺もそっちに行く』
「そうしてくれ」
電話を切るとロイは周りの者を見渡す。
「の様子を見てくる」
「大佐、私も…」
ホークアイ中尉が席を立ち、ロイを見つめた。
しかし今回ばかりは…。
「特に君は来ない方がいい」
「どうして…?」
「彼は酷い姿の自分を君に見せたくないだろうからな」
そう言ってドアを閉めた。
「すまない、中尉…」
微かに聞こえた声にホークアイ中尉は背を向けた。
「、肩の傷はどうだ?」
「大丈夫だよ」
イシュヴァールの時と同じだ。
「そうか…」
傍にあった椅子に腰掛ける。
こちらが見ていられないほど傷ついた笑顔。
「みんな、生きてる?」
「ああ。覚えていないのか?」
「……」
どこか遠くを見つめる瞳。
その目はいつまも『死』を見つめているのではないかと不安になる。
すぐそこにある暗い場所が来るのを待っているように。
「、お前は泣かないな」
「13年前に充分泣いたよ」
傷ついた笑顔に胸が痛む。
「今でも、泣いても構わない」
「…うん」
一人で痛みを抱えるのはやめて欲しいのに。
いつも一人で抱え込んでしまう。
君はまだ子供なんだ。
あの時止まってしまった彼の時間。
体は大きくなった。
体だけが大きくなったんだ。
「中尉に、ありがとうって伝えて」
「あぁ」
流れる涙は外の雨のように止まることがなかった。
かなりの時間がたったように思えた。
だが、実際には数分だったようだ。
「あのさ、ロイ」
ひとしきり泣いた後、は顔を上げる。
「俺、お前…、いや、君にまだ言ってないことがあるんだ」
必死であのころの自分を押さえている様子だった。
「俺の目、珍しい色だろ?」
「あぁ」
「こんな色、珍しいどころか誰もこんな色じゃないってこと気づいてたよね?」
「…あぁ」
寄りかかっているの体温が伝わってくる。
「…等価交換なんだ。見ちゃいけないものを見た」
はさらに続ける。
「両親が人体錬成をしてた」
目の前に広がる光と飛び散る朱。
「両親は死んだ。錬成されたのは人じゃなくて」
化け物だった。
「鋼のもそうだった」
彼の目に焔がついた時。
「それを覗いた俺は巻き込まれて、両親と等価交換とこの罪の色を抱えることでこの錬成法を手に入れた」
この目は生きている限り罪の証として存在する。
自分の姿を見る時必ずこの罪を思い出させてくれる。
「光の錬成は対価が大きい。だけど、誰にもまねが出来ない」
「そうだな」
「だから、自分の視力も対価対象に入れたんだ」
支えを失ってが倒れかける。
ロイは驚いた顔でを見ていた。
「光を錬成しているときは俺の目は飾り」
何も見えていない。
ただ黒い空間が広がるだけ。自分の光を代償に限界を実現する。
「でもね、俺は目的のためには何だってできるよ」
笑わないでくれ。
「マースに教えてもらったけど、その時の俺の目は金色がかっているらしいね」
そんな顔で笑わないでくれ。
「『光の獅子』って…」
「お前は!」
ロイは急に立ち上がり、声を荒げる。
「お前は『光の獅子』ではない。『東方司令部でロイ・マスタングの部下、・』だろう?」
「…君は、どうしてそんな……」
「出会ったからには最後まで付き合ってやると決めたものでね」
まともに顔を見ることなんて出来ない。
「…ありがとう」
「等価交換だ。お前も私に最後までついてこい」
もちろんだ。
どこまでもついていくよ。
地獄はもう見たからね。