「たまにはいいね、肉体労働」
「…いつもやってるもんで」
28,アンダーウェア
先日、のいないところでそれは起きた。
天気がよく、空気はやや乾燥していた。
そこであの無能大佐がやってくれたのだ。
「まさかここまで破壊してくれるとはね」
ある程度瓦礫を集めて手早く元のように錬成していく。
「あ〜、もう!日に焼ける位なんだ!」
そう言って上着を脱ぎ、腰に巻いた。
黒のTシャツのしわを伸ばす。細いがそれなりに筋肉はついている。
ただし、かなり傷跡が目立つが。
「お〜い、つるはしある〜?」
「はい、どうぞ」
同じくさっさと上着を脱いでしまったハボックからつるはしが手渡される。
「少尉も大変だねぇ」
「…慣れてますから」
その一言が涙を誘う。
「がんばろうな…」
「はい…」
しかしもそう気が長い方ではない。
つるはし→錬成の繰り返しにイライラし始めた頃だった。
「やぁ、調子はどうかな?」
「お疲れさまです」
諸悪の根元が現れた。恐らくロイ単品だったら迷うことなく戦闘開始。
さらに仕事を増やしてしまったことだろう。
「お疲れさまです中尉、…帰れ無能」
その笑顔に明らかな殺気を感じる。ようやく作業も残りわずかとなったのに。
市街破壊させるわけにはいかない。
「…最近冷たいな」
「君が無能だからだ!」
後ろでハボックが煽っている気がするのは気のせいだろうか。
イライラしているのにはもう一つ理由がある。
「さっさと帰ってくれないかな?忙しいんだけど?」
「現場監督に来た」
「要するに気分転換と称したサボりだな?」
その言葉に中尉が頷く。
ここのところ少しだけまじめに仕事をしていたのが評価されたようだ。
「君が上着を脱ぐのは珍しいな」
「そう?」
あんまり素肌を見せるのは好きじゃない。
でも暑いものは暑いのだ。
「腕を上げにくいからね。つるはし、どう?」
似合うでしょ、と肩に担いでみせるがハボックと違って筋肉質な体ではない。
どう見ても無理矢理作業させられている者にしか見えない。
「日焼けに気を付けてくださいね」
「ありがとう」
極上の笑顔に思わずうつむいてしまう。
「とりあえずロイ、帰った方がいい」
「なぜだね?」
失敗した。
思ったより早かったようだ。
「あ〜、もう!!」
派手な錬成反応で弾を跳ね返す。
「ロイ、伏せてろ!」
大事な部下たちを守るためにハボックに部下の移動を命じる。
「、君も隠れ…」
「狙われてるのはロイだ!」
両手で銃をホルダーから引き抜いて瞬時に対応する。
銃撃戦になる、そう思われた次の瞬間。
何もかも吹っ飛ばすような爆音。
そう、何も吹っ飛ばすような…。
「ロイ!!」
恐れていたことが起きてしまった。
「大佐ぁ〜」
今までの作業を完全に無駄にされてしまった。
発砲してきた男数人は取り押さえた。
ただ…。
「また瓦礫の山だな…」
「…そうッスね」
騒がしく犯人を連行する周辺などどうでもよくなっていた。
「ふふふふふ…」
「中佐?」
リザもハボックも肩で笑うの異常に顔を見合わせた。
「どうした?」
その声にがものすごい形相で振り返る。
「…?」
「後で覚悟しとけよ?」
胸の前で手を合わせる。
「『天才』の証明だー!!!」
最大出力で無能大佐が破壊した街を修復する。
みるみるうちに壊れる前の街が現れる。
「中佐ぁ〜、一人で何とかなるじゃないですかぁ」
情けない声を出しているのはハボック。
完全に元通り。
「中佐!」
ただし、精神力&体力は完全に切れてしまった。
「だからやりたくなかったんだよ、これ」
疲労しきった表情で壁にもたれかかる。
「だ、大丈夫ッスか!?」
「何とか…。でも連れて帰って欲しいな…」
毎度毎度ロイのせいで大迷惑だ。
気がつくと東方司令部の仮眠室にいた。
「あれ?」
「おはようございます」
声のした方に顔を向けると彼女がいた。
「あ〜おはようございます、リザさん」
情けないところを見せてしまった、と頭に手をやりばつが悪そうにしていた。
「始末書はすべて大佐に回してあります」
「さすがリザさん!どこぞの無能とは大違い」
上半身を起こす。
眠ったおかげで疲労はかなり回復したようだ。
「さ、仕事に戻りましょう。すみませんでした、勝手に眠っちゃって」
「いえ、大丈夫ですか?」
「はい」
イライラもすっかり消えていた。
睡眠ってすばらしい。
「ロイも少しは反省してる?」
「はい、あなたが倒れて心から後悔されていました」
「ロイが…、後悔してた??」
あいつが?
思わず吹き出してしまった。
「あはははは、ロイが、ロイが!?」
笑い始めてしまっては止まらない。
「いてて、前の傷が…」
「中佐!」
リザは思った以上にに接近してしまったことを後悔していた。
「あ…」
「ありがとう、リザさん」
動悸が収まらない。
どうか聞こえないで欲しい。
「おっと、ハボック少尉が…」
その言葉にすぐさま飛び退く。
「失礼しますよ〜っと」
「やぁ少尉。いきなり寝ちゃって悪かったね」
「中佐の爆笑が聞こえてきたから復活したってわかりましたよ」
ハボックはの上着を渡す。
「あぁ、ありがとう」
手早くそれを着てからは一度咳払いをする。
「さて、行きましょうか」
まだ仕事が残っている。
無能大佐が回してきた書類の確認等々。
「そうッスね」
「はい」
廊下を進んでいくともう沈み始めた太陽が暖かく輝いていた。
…夕方?
「…俺、もしかして、いやもしかしなくても結構寝てた?」
「それなりに…」
今日は残業だな。
「無能な上司を持つと大変だよね」
その言葉に二人は強く頷いた。