天気がいいし、今日は何も事件が起こっていない。



ま、こういう日があっても良いだろう。













25. 平和

























昼時。

今日は天気も良く暖かい。

は昼休みを利用して木の下で寝そべっていた。

日が顔にあまり当たらないように木の陰を有効に活用している。





脇腹の傷も大体治った。





これでいつもの通りにゴロゴロと光合成をしても大丈夫そうだ。




これだけ暖かいし適度な光があるのだから葉緑体が欲しいものだ。




このまま寝てしまおうか。




どうせ今日の分は後からロイが回してくる書類の処理しかない。





少し考えた後、はやはり昼寝をすることにした。

いざとなればすぐに行動できるように感覚だけは休ませることはない。











































ガクガクと揺さぶられて目が覚めた。

「あ?ロイか…」

お昼寝の邪魔をされて機嫌がいいわけがない。

あからさまに不機嫌な顔で起きあがる。

ロイとマースだけは気配のセンサーに引っかからないため、接近に気づかなかったようだ。

「お前がこんなところで寝ていると心臓に悪い」

「俺が何処で寝ようと…、心臓に悪い?」

少し照れたようなロイの顔に思わず吹き出してしまった。

「ロイ、まさか俺が死んでると思って心配したとか?」

「…悪いか」

笑いが止まらない。

「ちょっ…、折角治った傷が…」

いてて、と脇腹を抱えながらものひひひ、という不気味な笑い声は止まることはなかった。

「ひ、開いたら、き、君のせいだからな!」

その間も爆笑する声が庭に響いていた。

「笑いすぎだ!」

頭を叩かれても笑いは止まらない。

まさかこんなにも自分のことを心配してくれていたとは。

「へ、変な奴。でもやっぱりロイだな」

まぁ座れ、とは隣の芝生をポンポンと叩いた。

言われるままにその場に腰を下ろす。

確かロイは書類が溜まっていて休みなどないはずだ。

「サボり、か」

「サボりではなく休憩だ。君のは何だ?」

いや、その休憩は与えられていないのだからサボりで間違いない。

「中尉、怒るだろうなぁ」

一瞬何かを思いだしたようにロイが眉間に皺を寄せた。

「だ、大丈夫だ。恐らく…」

「ま、その時は助けてあげてもいいけど?」

そう言うとものすごく目を輝かせた。

ほーら、やっぱりサボりだ。

「…頼む」

「了解」

それだけ答えるとは青が広がる空を見上げていた。

やはり寝転がった方が気持ちがいい。

再び芝生に寝転がるとさっきよりも広い空が目に入った。













錬金術師なんだからこんな事考えるのもおかしな話だが。

母親が指さしたこの空のどこかに天国なんてものがあるらしい。

禁忌を犯してしまった両親はやはり天国には行けなかったのだろうか?



俺は…。



いや、こんなにもたくさんの人間を殺して置いて天国なんて行けるわけがない。

そもそも、天国なんてないことは分かっている。

この罪の瞳は血の朱さ。

地上でも、天でも受け入れてもらえないんだろうな。







、また何かよからぬ事を考えているな?」

ドキッとして口を開けたまま止まる。

すっかりお見通し。

最近ロイには何もかもが見透かされている気がする。

「いや?別に何も…」

「君は、君はいつもどこを見ている?」

悲しそうに歪められた顔が胸に刺さる。

「見えるものも、見えないものも全てだよ」

真紅の瞳を細めて笑う。

いつもと同じ解答にロイは少し苛立った表情をした。

「頼む、もう…」

「わかってる。わかってはいるんだけどねぇ」

もう一度空を見上げると一つだけ雲が浮かんでいた。

いや、水蒸気の塊なんだから一つって言うのはおかしいかな。

「見えちゃうものは仕方がないでしょ?」

「私は」

「ロイはひたすら上に登ることを考えていればいい。後は俺に任せろ」

「それが一番心配なんだ」

まるっきり信用無し。

「酷いなぁ」

このまま寝転がっていたら話の途中でも眠ってしまいそうだ。

真剣な話、ではない場合はすぐに集中力が切れてしまう。

「ま、死んだらお前の背後霊でもやってるさ」

「霊とはまた非科学的だな」

「…錬金術師にあるまじき発言だ」

片方の眉を少しだけ上げてみせる。

「でもお前のためなら背後霊にでも悪霊にでもなるよ」

「どうして霊になるのが前提なんだ…」

「非科学的でいいじゃないか」






そろそろ集中力の限界だ。

ほーら、睡魔が襲ってきた。

自分、寝付きがいいねぇ…。






「だが、生身のお前がいて初めて…、?」

既に夢の中のは風が揺らすままに髪を漂わせていた。

寝付きはいい方だ。

「大…」

静かに、とロイが口元に手をやる。

「ここでサボっておられたのですね」

小声だが睨みつける目は本気で怒っている。

「中尉、もう少しだけここにいてもいいだろうか?」

ホークアイ中尉がロイの横で眠っているを見て思わず頬が緩んだのを見逃さなかったのだ。

「もしよかったら中尉もどうかな?」

再びの方に視線を戻してしばし考える。

「す、少しだけでしたら」

「君は反対側がいいだろう。さあ、を挟んで昼寝だ」

ロイも寝転がり、暖かい太陽の光を全身で受けた。

どうしたものかと困っていたホークアイ中尉も寝転がることにした。

今日は本当に暖かい。





















































「珍しいですね」

「サボり×3」

「写真、撮っておくか?」

「まさか中尉まで…」

四人の視線の先には昼寝中の三人。

じきに日が傾いてくる。

「あぁ、おはよう。ハボック少尉、ブレダ少尉、ファルマン准尉、フュリー曹長」

一番初めに目を覚ましたのは

実は接近してきたとき以前から気配を感じて目を覚ましていたのだが。

「ロイ、リザさん、後二時間くらいで夕方ですよ〜」

その声に真っ先に反応したのはやはりリザさんだった。

「ちゅ、中佐!」

「俺もさっきまで寝てたから起こせなかったんだよね」

慌てて起き上がる。

「仕事が…!」

「今日くらい良いんじゃない?」

相変わらず眠ったままのロイをちらっと見てリザはため息をついた。

「しかし…」

「いいから、いいから」

そのやりとりを見ていた四人もが芝を叩いて合図するとそこに座った。

たまにはこういうのもありだろう。

「後一時間くらいはこのまま日向ぼっこでもしておかない?」

の笑顔に諦めざるを得ない中尉は、再び芝生の上に腰を下ろした。











今日みたいな日がずっと続けばいいのになぁ。














空は次第に朱く染まり始めていた。