欠ける月、沈む太陽
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 自分の中で、抑えられない何かが、日増しに大きくなっていく。


 あの日が近い。
 あいつが死んだ日が、日に日に、迫ってくる。
 一夜、月が欠ける度に。
 毎朝、太陽が昇る度に。
 気分に思い鉄の塊が圧し掛かってくるような気になる。


「先生」
 ふと、呼ばれて目を開けると、すぐ隣でハリーが自分を見ていた。
 シーツから出た肩や、少し寝癖のついた髪。それが情事の後だということを思い出させ、思わず目を背けてしまう。
「何、考えてるの、先生」
 自分の内面深くまでを見透かすような目が、一身に見つめてくる。
 いつもかけている眼鏡を外している所為で、あいつの面影ばかりその表情の中に見つけてしまう。
「なんでもない」
 ハリーの中にジェームズの影を追っていることをもしハリーが気付いたら。
 どう思うだろう。
 ジェームズの代わりにしていると知ったら。
 怒るだろうか。
 悲しむだろうか。
 私を、憎むだろうか。
 そんな事を考えると決まって嫌な気分になる。
 罪悪感に似た気持ちの悪さに悩まされ、寝返りをうってハリーに背を向けた。
「どうしたのさ、先生」
「なんでもないと言っているだろうが」
「そうは見えないから、訊いてるんだよ」
 言いながらハリーが肩に手をかけてきて、無理矢理ハリーのほうを向かされる。
 そのまだ幼さの残る身体のどこにそんな力があるのか。いつも驚かされる。
「さっきからずっと、何考えてるの」
 両手を捕まれ、真上から見下ろされる。
 日増しに父親に似てくる顔が、強い眼差しで見下ろしてくる。
 さっきから、何を考えてるかだって。
 決まってる。
 ずっとお前の父親のことを考えていたんだ。
 そう言ったら、どうなるだろう。
 多分もう、この関係は消えてなくなるだろう。
「ずっと上の空で。どうかした?」
 この関係。
 ハリーと夜を共にする関係。
 いつから始まって、どちらから先に誘ったのか。朧げでよく覚えていない。
 ただ、自分はいつもこの少年の中に別の男の影を追っていた。
「先生?」
 遠い昔の記憶を追っていた。
 心も身体も幼かった日々を、追っていた。
 もう、戻らない日々を。
 あいつが、いつも笑いながら、私の名を呼んでいた日々を。
「セブルス?」
「―――――!!?」
 不意に呼ばれ、一瞬、心臓が凍りつきそうになった。
 心臓が、高く早鐘を打っている。
 押さえていた気持ちが溢れ出す。
「……どうして」
「え?」
 見上げると、ハリーが怪訝そうな顔をしていた。
 日増しにジェームズに似てくるハリー。
 けれど、ジェームズとは違う、別の人間が。
「どうしてあいつの声で私を呼ぶんだ!」
 思わずハリーの胸を力いっぱい押していた。
 突然のことで驚いたのか、ハリーが目を見開いて、尻餅をつくような格好でこっちを見ている。
 その目に、確かな怒りの色が浮かぶのに時間はかからなくて。
 我を忘れて口走った言葉に、血の気が引いた。
「どういうこと?」
 言いながらハリーが起き上がる。
 冷たい声が絞り出される。
 思わず逃げを打とうとした私の腕を勢いよく掴み、引き倒す。
「いっ」
 強い力に腕が軋んだ。
 仰向けにシーツの上に押し倒され、肩を押さえつけると、ハリーが上から怒鳴るように言ってきた。
「どういうことだ!」
 乾いた音が、室内に響いた。
 目の前がチカチカして、頬に熱い痛みが走る。ハリーに平手を食らったのだと、少し時間がたって気付く。
「どういう事かって訊いてるんだ!」
 怒りに満ちた声が頭の中で響き渡る。
「なんでもない……」
 ハリーの怒声に気圧されて、搾り出すようにそう言ったが、ハリーは私を睨みつけるだけだった。
「なんでも、ないだって?」
 両手を掴んでいたハリーの手に、新たに力が加わった。
 ギリギリと、骨が砕けそうなほどの痛みが、両手にかかった。
「はなっせ、ハリー!」
「あんたは……なんでもないって言うのか……」
 腕にかかる力とは対照的に、その声は次第に落ちついて、静かになっていく。
 いや、どこか冷たい物に、変わっていく。
「僕の事を、父さんの代わりにしていたのに……」
「っ!」
「なんでもないって、言うのか」
 もう一度、頬を叩かれて、目の前が白く霞んだ。
 口の端が切れて、鉄臭さが口の中に広がり。
 それを、ハリーが舐め取る。
「っ……」
 怒りに任せた、強引な口付けだった。
 無理矢理口を開かされ、強く舌を吸われる。
「んぅ……やめ、ハリー……」
「黙れよ」
 ハリーが吐き捨てるように言った。
 その声にもう、感情はなくて。
 どうしてあんなことを口走ってしまったのか。
 どうしてずっと隠し通せなかったのか。
 後悔ばかりが駆け巡った。
「あんたが僕を父さんの代わりにするなら、それなりに扱ってやるよ」
 後悔と。
 ハリーに対する罪悪感が。
 逃げるタイミングを遅らせた。


「っ、あぁぁぁぁぁっ!!」
 どれだけ、自分の悲鳴を聞いているだろうか。
 縛られ、頭上で固定された腕では、耳を塞ぐことも、口を覆うこともできず。
 深く突かれる度に、止めどなく声が漏れた。
「イァッ……やめっ……ク、ああああっ」
 罰だと言わんばかりに酷く攻められた。
 首筋にも、胸にも、赤い痕が点々と付いていて、陵辱の証を刻み付けていた。
 なのに、行動とは裏腹に、ハリーは何一つ、言葉を漏らさなかった。
 ただ、無言で。
 それが余計に、つらかった。
「うっ……っ、もう……やめ……はっ、ああっ、あああ」
 揺すぶられる度に、喘ぎ声が漏れる。
 起ち上がった自身から、ダラダラと精が吐き出される。
 足には力が入らず、体中が熱くて。
「あ……っ、はぁっ…ああ…」
 もう駄目だと。
 死んでしまうと。
 うわ言のように漏らしながら。
 意識を失っていた。


 力なくシーツに沈み込んだ身体から自身を抜きながら、ハリーは泣いていた。
 悲しいという感情も、ツライという感情もなく、ただ空っぽで。後から後から涙が頬を伝った。
 どうして、と。
 知らずに呟いていた。
 どうして、口にしたんだと。
 ただ、スネイプへ当てた攻めは、それだけだった。
 自分が父親の代わりだとか。
 そんな事はどうでも良かったのだ。
 そんなことには、もう、ずっと前から気付いていた。
 けれど、スネイプが口に出さなければ、受け入れていたのだ。
「先生が、好きだから」
 代わりでもよかったのに。
「どうして……隠し通せなかったんだ」
 父親の代わりでも、誰の代わりでも。
 ただ貴方に触れて、愛を紡ぐことができたなら。
 道化にだってなれたのに。
「もう、それすらも」
 許されない。


 月が欠けて。
 太陽が沈んで。
 彼が死んだ日は日増しに近づくのに。


 二人は、遠く。




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はまなすさんの14000ヒットリク!!
えっと………ハリスネ……です(書いてないと分からないよ)
ごめんなさい。ジェームズ色強くて。
しかも、ヒットリクで感謝の気持ちでいっぱいなのに、内容はこんなで。
平に。平に謝ります(苦笑)
ハリーが可哀想で。不憫な子だ。
スネイプもなんだか……こんなの教授じゃないし!
もう……逃げ出したいです。あああああ(涙

りがとうございましたv