活動報告

<2013年>
2013年全国被爆二世交流会
 2月16日(土)〜17日(日)に長崎市ホテルニュータンダにおいて全国交流会を開催しました。
 主催者を代表して、山崎会長が挨拶を行いました。山崎会長は、「政治的な状況も大きく変わる中で一から取り組みを議論していこう。」「私たち二世がフクシマとどう向き合うのかを話し合おう。」とこの交流会の持ち方について方向を示しました。
 続いて原水禁川野議長より核と人類は共存できない。なかなか核を巡る状況は厳しいがわたしたちは、核廃絶の日が来ることを信じて取り組みを続ける。という力強い挨拶がありました。
 1日目は、2本の講演を行いました。
 まず始めに、「フクシマからの報告」=現状と課題=という演題で福島在住の佐藤龍彦さんにお話をしていただきました。佐藤さんは、現在の福島第一原発について収束に向かっているという状況ではない。収束に向けた作業はほとんど進んでいない。これから大変な時間かかるだろう。除染についても、最優先だと言っているがすすんでいない。福島は今も常に深刻な状況に置かれている。3.11を境に、うつくしふくしまからフクシマに一変した。失われたものは、自然だけではない。人間の尊厳さえも失われた。国は、フクシマを風化させようとしているとしか思えない。放射線で体がむしばまれているのに、精神的なストレスという風にすり替えている。国と東京電力の責任を明らかにして、反原発に向けて闘わなければならない。と話された。
 続いて、二世協前会長である平野伸人さんに「全国二世協 これまでのあゆみと私たちの使命」という演題でお話をしていただきました。平野伸人さんは、自分の母の被爆体験や友人の二世が急性白血病で亡くなったこと、そして、二世に対する差別について話されました。これらのことは、原爆が人の命を奪っていき生き残った人たちの人生をも変えていくものであるかということを痛感しました。そして二世問題とは、放射線の遺伝的影響による健康問題であり、病気と貧困の悪循環である。さらには差別や偏見にさらされるということであると話されました。また、被爆二世運動の歴史では、差別の現状を克服し政府交渉を始めたことなど、様々な取り組みの経過を報告していただきました。厚労省交渉や放影研に対する取り組みなど、私たちの先輩の大変な努力の中で現在があることがよく理解できました。私たちに勇気を与えていただきました。
 2日目は、厚労省交渉や国会議員に対する取り組みなど今後の取り組みと各地の取り組みの交流を行いました。
鹿児島からは、二世検診等について県知事要請をしたことや、慰霊碑の清掃などの日常活動などのこと。長崎からは、2〜3ヶ月に一度二世のことを知ってもらうために街頭署名に取り組み、マイクで訴えていることなどのこと。東京では二世検診の受診者が増えていることなど、多くの参加者から発言がありました。
 最後に山崎会長が、これからも長く厳しい取り組みが続くが、しっかりと取り組みたいと力強いまとめがありました。
 参加者は80名で、当初の目的を達成出来た交流会になりました。


スティーブウイング博士を迎えての意見交換会
4月25日に放影研で行われた「被爆二世臨床調査第3回科学倫理委員会」への参加のためスティーブウイング博士(米カリフォルニア大学准教授)が来日されました。前回の「健康影響調査」の時も多くの示唆をいただき大変参考になりました。今回もウイング博士の「当事者の話を聞きたい」との意向がありこの会が実現しました。
 ウイング博士はこの調査について次のような問題点を指摘されました。
 @親(被爆者)の被曝線量が聞き取り調査のため、正確に把握できていないのではない  か。
A黒い雨の情報がなく、対象者に影響を及ぼしている可能性がある。
 B調査に参加していない人の中には、入院したり死亡したりしている人たちもいるので  はないか。つまり、健康な被爆二世の調査になっているのではないか。
 参加者の二世からは、調査自体に問題があるとすれば、この調査で影響がないという結果が出されると非常に困る。なぜなら、この結果をもとに政府は二世対策をとらない理由にしていたからだという意見も出されました。
 今回は、兵庫医科大学の振津かつみさんの尽力により来日されました。振津さんは今回の「臨床調査」からウイング博士とともに科学倫理委員会の推薦委員に加わっていただきました。そして、この会にも通訳として同席していただきました。
 お二人は、この後福井原発や福島も訪問されました。
参加者は長崎・広島から12名でした。


「被爆二世臨床調査」について
 前回の放影研が行った「被爆二世健康影響調査」について、わたしたち全国二世協は科学倫理委員会の傍聴や推薦委員を通しての意見反映、そして放影研との直接交渉など継続した取り組みを続けてきました。

 「被爆二世臨床調査」についての概要
1 目的
 (1)親の放射線被爆が子どもの健康に及ぼす影響を疫学的に調査する。
 (2)将来の調査研究のために生物学的試料(血液や尿)を収集し、保存する。

2 調査期間
  ・2010〜未定
  ・第1回科学倫理委員会 2010年7月7日
  ・第4回科学倫理委員会 2014年5月15日 14:00〜(予定)

3 対象者
  放影研がこれまで被爆二世に対して調査を行ってきた人の中から了解を得た1245  1人でスタートした。

4 方法
  ・基本的には放影研での検診による4年に一度の臨床調査。
  ・前回実施された一度限りの横断調査から、今回は長期に継続する縦断調査で実施。

5 対象疾患
  前回(2000年から2007年)の「被爆二世健康影響調査」では、高血圧・高コ  レステロール疾患・狭心症などの6の成人病に限って調査したが、今回は疾病につい  ては特定しない。

6 放影研との確認事項
  (1)前回交わした確認書については継続する。
  1. この調査が被爆二世問題の解決に役立つ調査であることを念頭に置き、調査計画の立案に当たること。
  2. 被爆二世の人権を守る配慮や調査に当たってのプライバシーの保護などについての対策について明確な処置を取ること
  3. 調査方法、調査事項については、問題点について双方の十分な話し合いの結果に基づいて放影研が具体的な調査計画を立案していくこと。
  4. 適宜、全国二世協と話し合いをおこない、計画を進めるにあたっては、「被爆二世団体」の指摘、要望を最大限配慮すること。
  5. 以上を文書で双方確認すること。
     1999年5月19日

(2)全国二世協推薦の委員が科学倫理委員会(放影研の調査結果を検討する第三者委員会) に参加する。(今回は全委員9名中5名が推薦委員)  
     ・川本隆史さん  東京大学大学院 教授
     ・木村晋介さん  木村晋介法律事務所 弁護士
     ・スティーブウイングさん ノースカロライナ大学 疫学科 准教授
     ・野村大成さん  大阪大学 名誉教授
     ・振津かつみさん 兵庫医科大学 助教 医師 
  
(3)引き続き全国二世協がオブザーバー参加する。


「労働者と住民の安全と健康を守り、生じた被害は補償することを求める要請書」に基づく政府交渉

ア 第7回政府交渉
 2012年6月24日第7回目の政府交渉が約30名の参加で行われました。今回から全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)も加わり、8団体の呼びかけとなりました。運動の輪が拡がっています。交渉には福島現地を始め宮城、広島、大阪、兵庫、東京から参加しました。今回の交渉をもつにあたって事前質問(6/4)を行い、その回答を得た上で質問事項を設定し交渉に臨みました。全国被爆二世協から今回交渉には参加できませんでしたが、送付した要請文が読み上げられ、交渉は開始されました。交渉の主な主張点は「国は浪江町、双葉郡町村会の医療費無料化、手当支給の法整備等を求める要求を認めること」「国の責任ですべての原発事故被災者・被曝労働者に『手帳』を交付し、健康と生活の保障、被害補償を行うこと」でした。政府が「原発再稼働」に舵を切るなど、原発の延命を図り、原発依存をやめ脱原発を求めることに対して後退傾向が出てきている中での交渉でした。参加者は終始、各省庁、委員会の担当者に国の責任を求め、怒りを持って追及しました。成果として具体的な措置は獲得できませんでしたが、あくまで国の責任で諸施策を行うよう、徹底した追及を行い、再回答を約束させることが出来ました。
交渉の後、参加者による今後の取り組みについての討論が行われ、政府への要求を実現するには全国民的な運動、全国署名に取り組む必要性等の討論が行われました。

イ 第8回政府交渉
 2012年9月24日第8回目の政府交渉が行われました。交渉当日は、事故発生以来県内外に避難を余儀なくされている被災者を含む、福島県の浜通り・中通り・会津の住民、また福島県と同じレベルの放射線量にさらされている栃木県の那須塩原の住民が参加されました。
交渉では、被災住民が自分の置かれた状況から基本方針案の問題点を指摘し意見を述べられたのに対し、回答は一般説明に終始し、議論がかみ合わず、とても参加者が納得できる状況ではありませんでした。また、あらかじめ提出した質問書の質問についても、質問内容に即した回答が行われませんでした。このような対応によって、被災者支援のための子ども被災者支援法の基本方針の議論が深まらなかったことはまことに残念でした。
(全国被爆二世協からは長崎県被爆二世の会の丸尾会長が参加しました。)
今回は、@原発労働者の被曝実態と援護の必要性、A除染作業に関して、大手ゼネコン発注後、7次下請けくらいまでの会社の関わりで、労働者には賃金が少ないか、回らない状況に対し、企業一括払いから、個人支払いへ変えるべきとの申し入れ、B放射線管理の問題点、C子ども被災者支援法の基本方針案の抜本的見直し要請、D医療費無料化と手帳交付について、E損害賠償の時効撤廃、F個人情報、線量登録と国の一元管理を、など要求は多岐にわたっていました。
 交渉相手の国の省庁ごとにバラバラで、統一対応ができていないので、発言内容を整理すべきと思います。
 支援法の矛盾点をキチット出すこと。「被曝線量に応じて」というのであれば線量把握が必要です。しかし、個人が測った線量は、「不確実」だから認めない、しかも行政は測定しない、線量登録は「指導」という名の企業まかせの実態です。自然線量に強制的に追加された線量であって、影響が全くなしと言えるのか、立証責任は国が負うべきものです。その上に立って、国の責任で手帳交付を行う事、被曝線量については、ホットスポットを含め福島県外を網羅したマップ作成と、個人線量確定のため、国の責任において自治体への指導を早急にさせるべきと思います。


被爆68周年原水禁世界大会広島大会 ひろば「被爆二世・三世問題について」
 2013年8月5日、広島市のホテルチューリッヒ東方2001において、原水禁ひろば「被爆二世・三世問題について」を広島県被爆二世団体連絡協議会を中心に開催しました。
 今回は、シンポジウム形式でパネルディスカッションを行いました。
 パネリストには広島二世協会長の政平智春さん、広島市被団協代表の中谷悦子さん、山口被爆二世の会代表の寺中正樹さん、全国二世協事務局長の平野克博さんにお願いしました。
 それぞれのパネラーから自ら運動に取り組むきっかけとなった思いやこれまでの取り組みの経過が話されました。さらに、これからの被爆二世運動に求められていることについて今後の運動に対する提案などの問題提起がありました。
 今後は、被爆二世運動をどう国民的な課題にしていくのか、なかなか厳しい情勢にあるが、粘り強く運動を進めていく必要があるなど語られました。
 原水禁関係以外の被爆二世の参加もあり、意義深い取り組みになりました。 


被爆68周年原水禁世界大会長崎大会「被爆二世・三世分科会」
 2013年8月8日、今年も長崎市の勤労福祉会館において「被爆二世・三世分科会」を開催することが出来ました。長崎県被爆二世の会が運営にあたりました。 シンポジウム形式で、まず全国二世協前会長の平野伸人さんが「全国二世協 これまでのあゆみとわたしたちの使命」と言う演題で講演を行いました。平野伸人さんは、自らの生い立ちや家族・友人のことを語りながら被爆二世問題の本質(健康不安や差別の問題)にふれられました。そして、全国二世協のこれまでの厚労省交渉や放影研に対する取りみの経過の中でこれまで果たしてきた役割についても話されました。
 お話を聞く中で、わたしたち全国二世協が取り組んできた意義や責任の大きさを実感しました。
 次に、事務局長の平野克博が「今後の取り組み」について問題提起を行いました。厚労省交渉の粘り強い継続や、新たに始まっている放影研の「臨床調査」に対する取り組みなど話しました。また、昨年の総会よりフクシマとの連帯を方針に掲げました。何度か訪問団を組織し訪問したり、政府交渉参加の取り組みをしてきましたが、「フクシマもこれから二世の時代が来る。原爆被爆二世に対して何も援護しないのに、フクシマの二世の援護はあり得ない。わたしたちの運動を進めることがフクシマと連帯することだ」とも話しました。
 参加者からも、放射線の影響というものは50年・60年経ったときに出てくるものと放射線に携わっていた父が話していた。と二世から自分の健康不安についての発言がありました。また熊本からは、昨年11月に二世の会を結成した。会員も増え三世と一緒に活動している。等の報告もありました。
 最後に、広島県被爆二世団体連絡協議会の政平会長がまとめを行いました。「被爆二世・三世が社会的に自覚をする必要がある。課題はたくさんあるが、国に対して粘り強く働きかけをしていく必要がある。今後も核廃絶に向けて組織を広げていくことが大切である」とまとめ、会を閉じました。
 40名の参加がありました。


被爆二世シンポジウム2013
 11月30日、被爆二世運動をより多くの人たちに理解してもらうことと、運動に多くの組織が関わってもらうことを目的に、今回初めて全国被爆二世団体連絡協議会がシンポジウムを広島市の平和公園内の資料館で開催しました。
 パネルディスカッション形式でそれぞれの立場から、被爆二世運動の歴史や今後のすすむべき方向性を示していただきました。
 パネラーは、広島大学名誉教授・倉掛のぞみ園園長の鎌田七男さん、日本被団協常任理事・広島被団協代表の坪井直さん、兵庫医科大学助教・医師の振津かつみさん、そして、全国被爆二世団体連絡協議会前会長の平野伸人さんにお願いしました。
 鎌田さんからは被爆二世の概数や親の被爆状況と白血病の発症数など、衝撃的なお話がありました。坪井さんからは、自らの子どもの話をされながら親としての被爆二世の子どもに対する思いと二世運動に対する期待について話していただきました。振津さんらからは、被爆二世への放射線の遺伝的影響についてや、長期にわたり被爆二世運動に関わってこられた事とも含め、政府は疑わしきは救済すべきだと言うことも訴えられました。平野さんからは、自らの被爆二世の体験を通して二世問題を浮き彫りにしていただくとともに、全国二世協の運動の歴史や意義について話していただきました。
 今回のシンポジウムは、マスコミにも大きく取り上げられ、多くの人たちに二世問題を発信することが出来ました。参加者は70名でしたが、今後ともこのような活動を続けていく必要があります。


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