活動報告

<2015年>
2015全国被爆二世交流会
 2月14日(土)〜15日(日)に長崎市の長崎県教育文化会館において全国交流会を開催しました。
まず、主催者を代表して、崎山副会長が挨拶を行いました。崎山副会長は挨拶の中で被爆70年に向け取り組みを強化していく必要を強調しました。
 1日目は、2本の講演を行いました。
 まず始めに、「被爆体験をどう継承するか」という演題で山川剛さん(長崎の証言の会)にお話をしていただきました。山川さんは、私たちの原点である被爆体験の継承について
戦後70年の今,被爆二世がしっかりと担っていき履きだと言うことを訴えられました。
 続いて、振津かつみさん(兵庫医科大学)に「被爆二世運動とフクシマとの連帯」という演題でお話をしていただきました。振津さんは,自らフクシマと連帯する中で福島の人々の願いや思いを語られる中で,被爆二世運動とフクシマの運動がどう連携すべきかを具体的に示唆をしていただきました。
 2日目は、全国二世協の平野事務局長から「被爆70年に向けた取り組みの方向性」を提起しました。国連の人権理事会への取り組みやそれの伴う「新署名活動」そして,超党派の国会議員懇談会結成に向けた取り組みなど参加者に訴えました。
 取り組みの具体化を参加者全員で確認し会を終えました。

 

放射線影響研究所(被爆二世臨床調査)に対する取り組み
@ 被爆二世臨床調査」についての概要
1 目的 原爆放射線被爆が子どもの健康に及ぼす影響を疫学的に調査する
2 調査期間 2010〜未定 (1サイクル4年)
3 対象者 放影研がこれまで被爆二世に対して行ってきた人の中から了解を得た12451人でスタート。
4 方法 基本的には放影研での検診による4年に一度の臨床調査。個人の疾病を継続的に追う縦断調査。
5 対象疾患
  前回(2000年から2007年)の「被爆二世健康影響調査」では,高血圧・高コレステロール疾患・狭心症などの6の成人病に限って調査したが,今回は疾病については特定しない。
6 放影研との確認事項
  (1)前回交わした確認者については(第5の被爆者参考)継続する。
  (2)全国二世協推薦の委員を科学倫理委員会(放影研の調査結果を検討する第三者委員会)に参加する。
    (今回は全委員9名中5名が推薦委員)
     ・川本隆史  東京大学大学院 教授
     ・木村晋介  木村晋介法律事務所 弁護士
     ・スティーブウイング ノースカロライナ大学 疫学科 准教授
     ・野村大成  大阪大学 名誉教授
     ・振津かつみ 兵庫医科大学 助教 医師
     ・田島和雄 三重大学医学部附属病院 病院長顧問
 (3)引き続き全国二世協よりオブザーバー参加を認める。
 2014年5月15日(木)第4回科学倫理委員会が開催されました。12日放影研より事前の説明を受け,今回も10名の参加で傍聴行動を行いました
 また前回に続き,振津かつみさんの協力により,ノースカロライナ大学よりスティーブウイング博士に来日していただくことができました。委員会前日の14日(水)広島市のエコード広島において意見交換会を持つことができました。ウイング博士は,当事者の意見を聞いて委員会に臨みたいと希望され,意識統一をして科学倫理委員会に臨むことができました。また,その内容は,「被爆二世臨床調査に関する申し入れ」や「交渉事項」に大きく反映されました。
 2015年に入り,臨床調査も1サイクルが終了し5月14日(木)には第5回科学倫理委員会が開かれました。この会の中でも,推薦委員の振津かつみさんを中心に血液と尿の保存と将来の活用について議論がすすめられました。
 全国二世協からは放影研に対して,「被爆二世の血液や尿の試料を二世の調査以外には使用しないよう」強く申し入れ,「放影研としてもそのように考えている。」との回答を得ました。
 さらに,2015年2月17日に下のような申し入れをし,5月11日に回答を受けました。被爆70年ということもあり,マスコミにも大きく取り上げられました。

床調査に対する申し入れと回答

                                             2015年5月11日

全国被爆二世団体連絡協議会
 会長 山崎 幸治様

                                   公益財団法人 放射線影響研究所
                                     理事長 大久保 利晃

「被爆二世臨床調査に関する申し入れ」に対する回答について

2015年2月17日付け「被爆二世臨床調査に関する申し入れ」につきましては、項目ごとに、下記のとおり回答いたします。
なお、被爆二世臨床調査の実施に当たっては、被爆二世臨床調査科学倫理委員会において研究計画の科学的および倫理的妥当性を検証し、調査の透明性を確保することとしておりますことを申し添えます。

                記

1.(申し入れ)2007年2月27日に発表された「被爆二世健康影響調査」の解析結果において、「被爆二世が男性で、父親の線量と有病率に負の関連が示唆された」が、このことについて解明していただきたい。

(回答)この結果が生物学的立場から意味のあるものか、あるいは受診に至る段階での自己選択に関わるバイアスによるものかを解明するために、今後も可能な限り高い受診率を保った追跡調査を行い、父親および母親の線量と子供の疾患発生率との関連について解析するよう検討してまいります。

2.(申し入れ)被爆二世の出生時期を1946〜50年と原爆投下に近い時期に絞った集計結果を、今後解析していただきたい(母被爆、父被爆、父母被爆毎、二世男女別など)。

(回答)親の放射線被曝と子供における疾患発生の関連を解析する際には、その子供の出生時期を考慮に入れたいと考えております。また、両親の被爆状況及び被爆二世の性別による解析につきましても、併せて検討してまいります。

3.(申し入れ)被爆二世の死亡率調査も、親の被爆線量毎にやっていただきたい。とりわけ親の被爆線量が高い場合の死亡率を解析していただきたい。

(回答)被爆二世の死亡率調査は、被爆二世臨床調査とは別の枠組みで行われているものです。申し入れの内容を伝えたところ、親の被爆線量毎の解析を行う予定であるとのことです。

4.(申し入れ)福島原発事故のこともあり、放射線の人体への影響について関心が高まっている。科学的な調査の意義や目的が受診者の健康と福祉に貢献するという二世へのメリットも出して、調査への協力要請を行っていただきたい。

(回答)被爆二世の健康調査については、健診をお願いする送付文書の中で、受診者の健康管理と福祉に貢献するという意義を盛り込み、引き続き、調査への協力要請を行ってまいります。

5.(申し入れ)健診の結果に応じて、引き続き丁寧な健康指導などアドバイスをしていただきたい。

(回答)今後も、健診の結果に応じた適切な指導(経過観察、精密検査、医療機関への紹介など)を行ってまいります。さらに、健康指導及び健康管理に関するアドバイスにつきましては、健診後、保健師が電話連絡等により丁寧に対応してまいります。

6.(申し入れ)入院中で健診に来られない人のデータの把握もすべきではないか。前回健診に来て、今回入院中で健診に来られずに亡くなった場合、その人のデータが調査に反映されないことになる。より正確な調査にするために、そのようなデータが可能な限り反映できるようにしていただきたい。

(回答)年1回、受診者の方に行っている郵便連絡の中で、健康状態や病歴などを伺うなどの方法などを含めることを考えておりますが、他にもどのような方法があるか検討してまいります。

7.(申し入れ)マスコミ報道については丁寧に対応していただきたい。

(回答)マスコミ報道に対しては、これまでどおり、真摯にかつ丁寧に対応してまいります。

8.(申し入れ)調査結果を公表する場合は、わたしたち全国二世協と事前に協議をしていただきたい。

(回答)被爆二世臨床調査の結果を公表するにあたっては、これまでどおり、貴協会に事前に説明し、話し合ってまいります。


 

国連人権理事会訪問団派遣
 2015年6月29日(月)から7月5日(日)にかけて国連人権理事会訪問団を派遣しました。被爆二世の人権保障を求める国連人権理事会への意見書(声明)提出に向けた第一歩とすることを目的に、6月30日(火)には、国連人権理事会に対する理解を深めるために、国連人権理事会を傍聴し、サイドイベントにも参加しました。また、7月1日(水)には、連携するNGOとの交流を深めるために、NGO総括会議に参加するとともに、国連人権理事会で活動するNGO、IPB(国際平和ビューロー)、WILPF(平和と自由のための国際女性連盟)と交流・意見交換を行いました。NGOとの交流の中で被爆二世問題が国連人権理事会で取り上げるべき課題であることが確認でき、協力関係も構築できたことは大きな成果となりました。

 

被爆70周年原水禁世界大会広島大会 ひろば「被爆二世・三世問題について」
 2015年8月5日,ひろば「被爆二世・三世問題について」を広島市のホテルチューリッヒ東方2001で開催しました。今年も運営には広島県二世協があたりました。
 まず,政平会長のあいさつがあり,今年は被爆70年の節目の年であるが世界の核を巡る情勢は厳しいままである。私たち被爆二世が先頭に立ち,核廃絶に向け粘り強く取り組んでいく必要があるというものでした。
 続いて,広島二世協の西岡由紀夫さんから「NPT再検討会議に参加して」と題して報告がありました。NPT再検討会議について「NPTそのものの成果は,核保有国と非保有国の主張に大きな隔たりがありあまりなかったが,各国の代表者の発言やNGOの報告を聞く中で国際世論は核廃絶に向けて確実に高まってきている。」そのことに展望を持ちたいというものでした。
 続いて,全国二世協の平野事務局長より「今後の取り組み」について問題提起を行いました。初めてこの広場に参加した人も多く,二世問題とは何かということを中心にこれまでの取り組みや今後の方向性について話しました。厚生労働省交渉や放影研に対する取り組みなどに加え,今後二世問題を人権の視点から国連人権理事会に対して取り組む必要があることや,国内世論をさらに喚起する必要があることなど訴えました。
 会場からも質問や意見が出され,全国二世協の活動に対して興味を持った二世の参加者もいて有意義な会となりました。

 

被爆70周年原水禁世界大会長崎大会 「被爆二世・三世分科会」 
 2015年8月8日,原水禁世界大会「被爆二世・三世分科会」を長崎市の長崎県教育文化会館において開催しました。今年も長崎県二世協が運営に当たりました。
 丸尾会長のあいさつに続き,オランダの被爆二世ショルラ・ロブさんの報告がありました。父が21歳の時に捕虜となり、長崎収容所で被爆。父は,オランダに帰ってからも精神的にも苦しんだし,ガンにもおかされてしまった。日本の被爆者は援護してもらえることや外国人にも適応できることがあることを知り長崎市役所に連絡を取った。父が亡くなる1年前に手帳を取得した。被爆者として認めてもらうことが重要だった。日本に来て,被爆二世が30年も自分たちの生活を守るために努力していることを知ることができて本当によかった,などの報告があった。在外被爆者問題とその二世の課題について改めて考えさせられました。ショルラ・ロブさんの来日に関しては,原水禁や多くの被爆二世の長年にわたる取り組みがあったことは言うまでもありません。
 その後,多くの参加者から二世問題について意見が出されました。大阪の参加者からは,原爆の投下責任をアメリカ政府に問うべきだ。サンフランシスコ講和条約の内容から責任は問えないかもしれないが,個人の請求権までは放棄してはいないはずだ。また,他の参加者からは,自らの病気にもふれ大変な健康不安があると訴えた二世からの発言もありました。各地の二世団体からは,被爆二世健康診断の手続きを充実させた取り組みや二世の会の運営についての悩みなども報告されました。
 多くの二世からの意見や報告もあり,わたしたちの運動の責任の重さや重要性を深く感じることのできた分科会となりました。

 

厚生労働省交渉
 厚労省側からは健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室山本室長補佐ほか3名、全国二世協から11名の参加で行いました。
 今回の厚労省交渉の主な目的は、8月6日に塩崎厚労大臣が広島で明らかにした被爆二世健康診断に新たな検診項目を追加すること(多発性骨髄腫・財務省に対する予算要求額は3500万円)について詳細を確かめ、2016年度実施できるよう要請することと、各県が行っている被爆二世健康診断の充実についての要請の2点でした。


                                            2015年12月4日
厚生労働大臣 塩崎 恭久様
                   要 請 書

                                     全国被爆二世団体連絡協議会
                                       会  長  山 崎  幸 治
                                       公印略
1945年8月6日、9日広島・長崎に投下された原爆は20万人以上の人々を殺傷したばかりか、生き残った被爆者にも放射線による後遺症という苦しみを背負わすことになりました。しかも、原爆の恐怖は被爆者のみにとどまらず、それらの被爆者を父や母・祖父母として生まれた「被爆者の子ども・孫」、すなわち「被爆二世・三世」の問題としても引き継がれていきました。
 原爆被爆二世は、今、全国に30万人とも50万人とも存在するといわれています。被爆者と同じような苦しみ、悩みはそのまま未来世代へと引き継がれてきています。
 これまで、政府・厚生労働省は被爆二世・三世の健康実態調査を拒み、その対策をおろそかにしてきました。被爆二世に対する国の施策もわずかに年に1度の「被爆二世健康診断」がなされているにすぎません。
 わたしたちは、爆被爆二世の援護を進めるために、以下のことを求めます。



1 「被爆者援護法」を国家補償と被爆二世への適用を明記した「被爆者援護法」に改正すること。
 @ 被爆二世健康診断に、ガン検診を加え、充実させること。
 A 健診の結果に応じた医療措置をおこなうこと。
 B 被爆二世の実態調査を行い、被爆二世へ「被爆二世健康手帳」を発行すること。

2「被爆二世健康診断」の検査項目を充実させ、すべての自治体で希望者全員が受診できるよう予算措置を講ずるとともに、自治体を指導すること。

3 放射線影響研究所の「被爆二世臨床調査」について国として責任ある対応を行い、被爆二世の援護対策にいかすこと。 

4 在外被爆二世に対する「被爆二世検診」については、居住国の医療機関で受診できるような措置を講じること。

5 在外被爆者に被爆者援護法を適用し、被爆者の平等な援護をおこなうこと。
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