活動報告

二世運動と行政の対応についての証人尋問、原告4人の本人尋問が行われる
− 被爆二世集団訴訟 広島 証拠調べ −
2021年12月7日、広島地裁で、被爆二世集団訴訟の証拠調べが行われました。始めに、全国被爆二世団体連絡協議会(全国被爆二世協)の崎山昇会長が、二世運動と行政の対応について証言し、その後、原告4人の本人尋問が行われました。
 崎山会長は、2021年9月1日に提出した意見書(1)(2)(3)に基づいて、主に以下の内容について証言しました。
原爆医療法成立目前、1957年3月の二世問題に関わる重要な国会でのやりとりやその後の政府答弁のこと。1979年から実施されている「被爆二世健診」はあくまでも調査・研究の一環であり、全く不十分な施策だと評価していること。1988年12月結成の全国被爆二世協が、援護法制定運動に参加し、二世・三世への原爆二法の適用を求めたこと。1989年には「被爆二世・三世条項」を含む援護法が参議院で可決されたが、衆議院で廃案になったこと。1992年にも再度法案が提出され同様の結果だったこと。1994年村山内閣の時に援護法が制定されたが、「被爆二世・三世条項」は盛り込まれず、「附帯決議」がされたこと。1997年に放射線影響研究所が「被爆二世健康影響調査計画」を発表し、国の二世対策につながるよう交渉を重ね、厚生省が「態度表明」を行ったこと。2001年から2004年にかけて、全国被爆二世協では、「附帯決議」と「態度表明」に基づいて、厚労省に対して、被爆二世への適用を明記した援護法の改正を求め続けたが、遺伝的影響があるとの「科学的知見」が得られていないことを理由に切実な要求を拒み続けたこと。2001年から国会議員に働きかけ、立法による解決をめざそうとしたこと。2006年から「原爆被爆二世の援護を求める署名」を全国的に取り組み、累計378,129筆を厚労省に提出したが全く動かなかったこと。2007年に放影研の解析結果が公表されたが、全国被爆二世協では、「二世に対して原爆放射線の遺伝的影響がない」ということを示すものではないことなど声明を発表したこと。2009年民主党政権が誕生しても、2012年に自民党公明党連立政権に戻っても厚労省の態度は全く変わっていないこと。1979年から調査・研究の一環として、被爆二世健康診断事業を行っているが、当事者の長年の要求にもかかわらず、対策については全く行われてこなかったこと。意見書(3)では、本来であれば、国がどこの自治体に住んでいても同じ二世として、同じ施策が受けられるような立法的措置を行うべきところ、それを自治体に押し付けてきた実態を明らかにしようとしたこと。今年度から被爆二世健康診断事業の一環で各自治体が「被爆二世健康記録簿」を発行できるようになったが、二世に対する援護対策といえるものではないこと、国として立法的措置を行わないために、居住する自治体によって二世に対する対応に差が生じること。専門家から、放射線の遺伝的影響は否定できない、可能性があるとの指摘がなされてきた中、苦しんでいる被爆二世を放置してきたことは決して許されることではないこと。裁判所には、二世が置かれた状況を理解していただき、二世の法的援護、立法的措置につながるような判断をお願いしたいこと。
この尋問調書は、長崎地裁へも証拠として提出されます。そして、被爆二世集団訴訟も2022年2月28日(月)に長崎地裁で予定されている遺伝的影響に関する専門家証人の尋問で最大の山場を迎え、最終弁論・結審へと向かうことになります。
(全国被爆二世団体連絡協議会会長、被爆二世集団訴訟原告団長 崎山昇)

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