被爆二世集団訴訟

国の主張「遺伝的影響を原告の二世が立証すべき」は間違い
─被爆二世集団訴訟 長崎 第5回口頭弁論ー
 
 10月16日(火)「原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟」の長崎における第5回口頭弁論が長崎地方裁判所で行われた。今までの裁判ではいつも書面のやりとりだけで次回の裁判の日程を決めてあっという間に終了だったが,今回は在間弁護団長から国の弁護団に対して「原爆被爆者対策基本問題懇談会」議事録の委員の氏名は公開してもよいとなっているのに,提出された議事録の氏名がマスキング(黒塗り)されていることを指摘する発言があった。議論があるかと期待したが,すぐに終わってしまった。裁判終了後,地区労大会議室で報告集会が行われた。主に在間弁護士が10月9日提出の「原告ら準備書面2」にそって説明した。次回裁判は2月4日13時30分から。(以下説明の要旨)

 1)被爆二世の遺伝的影響を原告が立証すべきと国が主張していることは大きな間違い。原告は二世に健康被害が生じるから援護の対象にすべきと言っていない。遺伝的影響が否定できないから援護の対象にすべきと主張している。だから被告の国こそが遺伝的影響を否定する根拠を示さなければならない。

 2)国の反論にある「原爆被爆者対策基本問題懇談会」は,1978年「被爆者援護法は社会保障法としての性格をもつが,国家補償的性格を有する」とする最高裁判決を受けて,翌年厚生大臣の諮問機関として設置されたが,被爆者援護をこれ以上拡大したくない(例えば被爆地域拡大など),さらに空襲などによる一般戦争被害者に波及しないようにしたいという意図により,「広い意味における国家補償」を打ち出して国家補償の意味合いを薄め,援護施策には「科学的・合理的な根拠」や「必要の原則」を持ち出した。つまり「公平の原則」より「必要の原則」を主張し,被曝線量の多いところでの援護を重点的にすべきだとしている。これは科学的態度ではない。放射線の健康影響には未知の部分があるのだから,そのことに配慮して施策を進めるべきだ。

 3)国は,「被爆二世に放射線による健康への影響について科学的証明がなされていない」から援護の対象とはならないとしている。しかし原爆の遺伝的影響について,国は「有意な影響は認められていないものの,さらに研究を重ねる必要がある」としているにも関わらず,現在まで自ら科学的な研究を実行していないのはおかしい。

 4)2017年の最高裁判決では再び「被爆者援護法 は特殊の戦争被害について国が救済を図るという一面を有するものであり,国家補償的配慮が制度の根底にある」としており,最高裁の理解は一貫している。このような最高裁判決の趣旨からも国がその責任を回避することは許されない。  (文責 門 更月:原告の1人)
入廷する原告団

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