被爆二世集団訴訟

原爆放射線の影響を身体に受けている可能性は否定できない
− 被爆二世集団訴訟 長崎 専門家の証人尋問 −
全国被爆二世団体連絡協議会会長         
被爆二世集団訴訟原告団長   崎山 昇 
 2月28日、被爆二世集団訴訟における放射線の遺伝的影響に関する専門家の証人尋問が長崎地裁で行われました。
 まず、原告側の振津かつみ証人(兵庫医科大学・遺伝学、非常勤講師)が代理人弁護士の質問に答える形でわかりやすく主に以下のとおり証言しました。@「電離放射線に被ばくしたヒト集団では、放射線誘発遺伝的(遺伝性)疾患はこれまでのところ証明されていない。しかしながら、電離放射線は普遍的な突然変異誘発原であり、植物や動物を用いた実験的研究では、放射線は遺伝的影響を誘発できることが明確に証明されている。従って、ヒトはこの点に関して例外でないであろう。[原子放射線の影響に関する国連科学委員会・2001年報告]」は、世界の放射線遺伝学の専門家の共通認識である。Aヒト集団の調査研究には限界があり、マウス実験が重要である。B野村大成のマウス実験の結果から、ヒトでも継世代影響が誘発される可能性は否定できない。C野村のマウス実験の報告などから、国連科学委員会が2001年にヒトの放射線被曝による遺伝リスクの推定値を報告した。Dヒトにおいて、親の放射線被曝が生殖細胞を介して次世代の身体に影響を及ぼす可能性があることは明らかである。被爆二世についても、親である被爆者の生殖細胞を介して原爆放射線の影響を身体に受けている可能性を否定できない。
 続いて、被告側の中島裕夫証人(大阪大学准教授・医学博士)が主に以下のとおり証言しました。@動物実験は、使い方によっては有用だが、ヒトの影響を見るにはヒトが最適である(ヒトに勝る研究対象はなし)。A放射線の遺伝性影響について、これまで様々な調査研究が実施されてきたが、原爆被爆者をはじめとしたヒトでは放射線の遺伝的影響は認められていない。ヒトに対する表現型による疫学的調査研究及びゲノムレベルでの研究、いずれのアプローチでも遺伝性影響は認められなかった。したがって、ヒトについても放射線被曝の継世代的な影響が生じるという考えを支持しない(可能性があるという考えも支持しない)。
 その後、今後の進行について協議が行われ、7月11日(月)までに双方が最終準備書面を提出すること、7月19日(火)14時から最終弁論を開くことが確認されました。
広島地裁では、3月29日(火)に第15回口頭弁論が予定され、そこで最終弁論の日程が決まることになると思われます。弁論が終結すれば、いよいよ判決ということになります。今後は、判決を見据えて、被爆二世に対する法的援護へ向けて、政治的解決をめざす取り組みが求められることになります。引き続き、ご支援とご協力をお願いします。



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