被爆二世集団訴訟

想定した判決の中で最悪の不当判決
原爆被爆二世の援護に道拓こう
− 長崎における被爆二世集団訴訟 福岡高裁控訴審判決 −

 2024年2月29日14時30分から福岡高裁で長崎における被爆二世集団訴訟の控訴審判決が言い渡されました。言い渡しはわずか1分、高瀬順久裁判長が「本件各控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」と読み上げ、裁判官ら(野々垣隆樹、古川大吾)は法廷を立ち去りました。弁護団長の在間秀和弁護士は16時から福岡県教育会館で行われた報告集会で「想定した判決の中で最悪の判決である」と述べました。

(判決要旨・骨子)裁判所の判断
1 憲法13条違反について
 原爆の放射線による遺伝的(継世代的)影響が否定できない健康不安に対する国の援護を求めることは、憲法13条に包摂される権利として抽象的であり、そもそも同条から国に対して立法措置を求める権利を導き出すことはできない。
2 憲法14条違反について
 被爆二世については、原爆による放射線の遺伝的影響は証明されていない。これを肯定する研究結果もあるものの、これまでの調査研究では、ヒトに対する症例的調査研究、DNA調査、全ゲノム解析による研究において、否定的な研究結果が複数発表されている。また、被爆者の子供に死亡率、がん発症率の増加は認められない。控訴人ら主張に係る被爆二世に対する原爆被爆の放射能により健康被害が生じる可能性について、その健康被害の可能性の前提となるべき原爆被爆による放射線の影響(被爆二世については遺伝的影響)は、被爆者援護法所定の「被爆者」又は被爆者援護法附則17条の「みなし被爆者」のそれらとを比較した場合、その基礎となる医学的、科学的知見の現状(現時点における到達点)等において顕著な差異がある。
 そうすると、被爆二世について、被爆者援護法所定の「被爆者」又は被爆者援護法附則17条の「みなし被爆者」に含め、同等の措置を講じるか否かについては、国会の総合的政策的判断を要する合理的な裁量的判断に委ねられているところ、そうしないことが、合理的理由のない差別的な扱いとはいえず、憲法14条1項に違反しない。
3 以上によれば、控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がない。

 今回の控訴審判決は、長崎地裁判決よりも更に後退した判決となりました。国が上告しなかった「黒い雨 広島高裁判決」(以下「黒い雨判決」)は、「原爆の放射能により健康被害を生ずることを否定できないものであったこと」が認められると、被爆者援護法1条3号(3号被爆者:身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者)に該当すると認定しました。私たちは、その判決を踏まえて、被爆二世も原爆放射線の遺伝的影響の可能性を否定できないことを立証し、国会が、被爆二世を第五の被爆者として、被爆者援護法と同等の援護措置を行う立法をすべきことや「みなし被爆者」と同等の措置を行うべきことを主張してきました。長崎地裁判決は、「原爆の放射線による遺伝的(継世代)影響については、その可能性を否定できないというにとどまる」と「可能性を否定できない」と認めながらも、私たちの請求は棄却しました。しかし、福岡高裁判決は「遺伝的影響は証明されていない」として私たちの請求を棄却しました。国は、上告しなかったにもかかわらず「黒い雨判決」に従わず、未だに1980年の基本懇報告に基づく科学的・合理的根拠による被爆者援護行政を続けています。今回の判決は、私たちに科学的・合理的根拠、遺伝的影響があることの証明を求める国の立場に立った判決でした。そして、広く原爆の被爆者を救済しようとする被爆者援護法の立法趣旨に沿った「黒い雨判決」を否定し、なかったことにしようとする判決だったと言えます。
 私たちは、判決後の報告集会で、上告し、引き続き原爆被爆二世の援護に道を拓くために頑張っていく決意を新たにしました。そして、3月11日に上告・上告受理申立を行いました。

  (全国被爆二世団体連絡協議会会長、被爆二世集団訴訟原告団長 崎山昇)

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