被爆二世集団訴訟

原爆被爆二世の援護を求める集団訴訟について
1 これまでの経過
 2017年2月17日に広島地裁へ原告22名(現在は上告人27名)が、2月20日に長崎地裁へ原告25名(現在は上告人28名)が集団で提訴しました。
 これまで、6年の長きにわたり、5名の弁護団(在間秀和弁護団長・足立修一弁護士・中鋪美香弁護士・向山知弁護士・村角明彦弁護士)の献身的な取り組みや原告の意見陳述、そして支援者のみなさんと共に、被爆二世を5号被爆者として被爆者援護法の対象とするために、裁判所に対して被爆二世の援護の必要性を訴えてきました。

2 訴訟の目的
 裁判を通して私たちが求めている立法的措置
  • @被爆二世を5号被爆者として被爆者援護法の対象とすること。
  • A仮に@の立法措置を執らなくとも、被爆二世を被爆者援護法に定める健康診断の対象者とし、その健康診断の結果、「健康管理手当」の支給対象とされている疾病(造血機能障害・肝臓機能障害その他厚生労働省令で定める障害を伴う疾病)に該当すると診断された場合は、申請により被爆者健康手帳を交付し、被爆者援護法に基づく援護措置を執ること。(みなし被爆者=第一種健康診断受診者と同様の扱い)
  • B仮にAの立法措置が困難としても、最低限以下の措置が執られなければならない。被爆二世にも被爆者援護法上の健康診断を実施することを定め、その結果原子爆弾の傷害作用に起因する疾病として定められた疾病に罹患しているとの認定を受けた者は、被爆者援護法上の被爆者として被爆者健康手帳を交付し、援護措置を執ること。(参議院で2回可決された法案と同様の内容)


3 長崎・広島地裁判決と福岡・広島高裁判決
<長崎地裁判決 2022年12月12日>
  放射線の遺伝的影響に関する専門的知見は、原告らが主張の根拠とする文献や振津証人の意見を前提としても、原爆放射線の遺伝的影響については未だ確立しておらず、その可能性を否定できないというにとどまる。(抜粋) 
  ・・・被爆者援護法1条3号の「被爆者」は、その身体に直接被爆した原爆の放射能により健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者をいうと解されるのに対し、被爆二世については、その身体に直接原爆の放射能を被曝したという事情は認められず、原爆の放射線による遺伝的(継世代)影響については、その可能性を否定できないというにとどまる。
 ・・・被爆二世を援護の対象に加えるか否かや、その場合の援護の在り方等については、・・・立法府の総合的政策的判断を要する合理的な裁量的判断に委ねられているというべきであり、・・・

<広島地裁判決 2023年2月7日>   
 被爆二世についてはその身体に直接原爆の放射能を被曝したと言う事情は認められず、原爆の放射線による遺伝的(継世代)影響については、その可能性を否定できないにとどまる。
 被爆二世は、原爆による放射線の影響を直接受けた者からの遺伝的影響による健康被害の可能性が否定できない者であるが、ここでの「可能性」の実質は、「放射線の遺伝的影響による健康被害の発生が科学的に承認も否定もされていないという意味での可能性」といえる。

<長崎訴訟 福岡高裁判決 2024年2月29日>
 被爆者援護法1条3号の「被爆者」は、その身体に直接被曝した原爆の放射能により健康被害を生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者をいうと解されるのに対し、被爆二世については、その身体に直接原爆の放射能を被曝したという事情は認められず、原爆の放射線による遺伝的影響は(継世代)影響については、医学的、科学的に証明されておらず、・・・被爆二世を援護の対象に加えるか否かや、その場合の援護の在り方等については、・・・立法府の総合的政策的判断を要する合理的な裁量的判断に委ねられているというべきであり、・・・

<広島高裁判決 2024年12月13日>
  被爆者援護法の被爆者及びみなし被爆者は、原爆投下時に所在した場所が違うものの、いずれも原爆投下時点において生存し、あるいは胎児であった者であって、直接放射線に被曝した可能性がある者を対象とするのに対し、被爆二世は、原爆投下時に存在しておらず、直接被爆した可能性がないという点で、大きな差異がある。
・・・被爆二世を援護の対象に加えるか否か、その援護の在り方については、総合的・政策的判断を要する立法府の合理的な裁量的判断に委ねられているというべきであり、・・・

<最高裁>
 残念ながら、長崎訴訟は2025年1月22日に、広島訴訟は2026年1月22日に最高裁が上告棄却・上告受理申立て不受理を決定しました。

*参考 <黒い雨 広島高裁判決 2021年7月14日> 
 争点の一つであった、被爆者援護法1条3項の「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」の意義について、「被爆者援護法が、原爆の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊な被害であることに鑑みて制定されたものであることからすれば、被爆者援護法は、このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済を図るという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮が制度の根底にあることを否定することはできない。」とした上で、「原爆の放射能により健康被害が生ずる可能性がある事情の下にあった者」と解するのが相当であり、ここでいう「可能性がある」という趣旨をより明確にして換言すれば、「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができない事情の下に置かれていた者」と解され、これに該当すると認められるには、その者が特定の放射線の暴露態様の下にあったこと、そして当該暴露態様が「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったこと」を立証することで足りると解される。」と判示した。
 その上で、「広島原爆の投下後の黒い雨に遭った」という暴露対応は、黒い雨に打たれた者は無論のこと、たとえ黒い雨に打たれていなくても、放射性微粒子を体内に取り込むことで、内部被曝による健康被害を受ける可能性があるものであったこと(ただし、被曝線量を推定することは非常に困難である。)、すなわち「原爆の放射能により健康被害を生ずることを否定することができないものであったこと」が認められると、原告らが被爆者援護法1条3号に該当すると認定した。

4 判決の問題点
  1. 遺伝のメカニズム(親の生殖細胞が傷つきその子どもに影響する)を理解せず、原爆投下時に生を受けていないので認められないと言うこと。
  2. 遺伝的影響について多くの証拠(動物実験や遺伝学者の証言)を提出しているのにそのことにほとんど触れられていない。
  3. 「黒い雨広島高裁判決」の疑わしきは救済をも否定するかのような判決。
  4. 国の方針を忖度した結論ありきで、その結論に向けて論理を組み立てているとしか思えない、きわめて不当な判決(弁護団)

5 裁判闘争の意義
  1. 私たち被爆二世の健康不安や人権状況について日本政府に訴え、施策を講じさせる。
  2. 放射線の影響が次世代にもあるということが争点になる裁判はかつてない。
    ・世界の核被害者の二世の闘いに影響を与える。将来世代をTPNW第6条の「被害者に対する援助」の対象とすることになり、将来世代を含む核被害者の人権確立につながる。
    ・東電福島第1原発事故の日本政府の対応など日本政府の核政策について、影響を与える。
  3. これまで、被爆二世問題が国民の意識の中にあまりなかったが、被爆二世問題を国民的課題に押し上げることになり、被爆者問題議員懇談会結成につながった。
  4. 裁判闘争を闘うことで、組織内の二世運動の活性化や組織されていない二世の自覚的立ち上がりを後押しする。

6 二世訴訟の評価
 両高裁判決とも、「被爆二世を援護の対象に加えるか否かや、援護の在り方等については、立法府の裁量的判断に委ねられている」という判断を示しています。今後は、「被爆者問題議員懇談会」の皆さんと連携して被爆二世問題の政治的な解決をめざしていこうとしています。
→ 二世訴訟の評価を踏まえ、議員懇と連携し、立法化へ向けて取り組む。


声明PDFはこちら   最高裁決定PDFはこちら
              
 トップページに戻る
二世集団訴訟の目次