03.8 百舌の巣立ち
 夏の暑い朝、雀より体が大きく長めの尾っぽをした灰色っぽい鳥が、我が家の庭で大騒ぎをして
「ギチギチギチギチ」、「ギチギチギチ」と甲高い声で鳴き叫んでいた。

 よく見ると、梅の木のてっぺん近くで、雛が3羽ほどそれぞれ思い思いの枝にやっとこさ乗っかって
じっとしている。その近くの枝の間にいろんな草木や紐まで混じったきれいなお椀形の巣が乗っかって
いた。野鳥が、密集した葉や枝をつけた梅の木に巣をかけて、その雛がちょうど巣立ちの時期を迎え
たと思われる。ヒヨドリが、我が家の天井裏に、ワラをふんだんにかき集めた巣を作ったことがあり、
雛の巣立ちの時期に、天井裏から外に出ればいいものを、どう間違ったか天井裏の中を駆け回って
大騒ぎをしたり、外に出ても、家の中に飛び込んできたりしたことはある。野鳥が庭の木に巣を掛けて
いたのは初めてである。
                      下から見上げた巣

 そのうち、雛の1羽が、下に落っこちてツツジの枝にひっかかった。今度はそこで一所懸命にその枝
につかまって動こうとしない。なんとか手助けをしてやりたいが、親鳥もいることだし、自然のままにして
おくことにした。

 ツツジの枝につかまっている雛に、ほんの数十センチまで顔を近づけて見た。親鳥の灰色ぽい色と
違って、全体に茶色ぽく、目のまわりは黒、胸や腹の辺りは白い色をしてころころしてかわいらしい。
親鳥は、気をそらせようとするのか、盛んにあちこちの木に飛び移って例の甲高い警戒音を発したり、
直立した背の高い草に真横にとまってその幹をかじったりして興奮している。

 「何ちゅう鳥じゃろうか」とすぐ子どもと一緒に図鑑を見たがどうもそれらしい色をしたのが見あたらない。
でも、何となく形や特徴からして百舌の種類と思われる。 午後にもう一度見ると、落っこちた1羽がまた
梅の木に戻っており、少しは飛べるのがわかった。親鳥はせっせと虫らしきものを運んで食べさせている。
そのうち、葉っぱがより密集しているもみじの木に3羽とも飛び移っていた。

 2〜3日してもみじの木を見たが、雛がいる気配はない。既に元気に飛び立ったのだろう。5日後、家族が
見たところによると、庭に2羽親子で来ていたらしく、しっぽの長さと鳴き方で区別がついたとのことである。
それ以来、巣のかかった梅の木のすぐ近くにある電線に、見覚えのある鳥が1羽、空っぽの巣がある方向を
向きながら余裕ありげにじっととまっているのを何回か見かけた。「ジジジジジ」と優しく鳴くこともある。
親鳥である。思わず、なつかしそうに「チョッ、チョッ、チョッ」と舌打ちして呼んで見たら、首を傾けて黒い
縁取りの目を一瞬こちらに向けた気もするが、毛づくろいをしながら平然ととまっていた。

 なお、巣から出たばかりの雛や電線にとまっている親鳥の姿をデジカメに撮ったが、ホームページ作成
作業中に、デジカメの記憶媒体が壊れたため巣のみの写真となった。この巣は、百舌が、また使えるよう
梅の木から取り外さないこととした。
                                                  
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