2000.6 麦秋と骨董麦こぎ機

 鶏の餌にするため大正生まれの親父が畑に小麦を植えた。  初夏の6月、いわゆる麦秋の季節となり、鳩や雀やカラスが群がってその麦穂を突っつき始めて立ったままの麦をあちこち倒し始めた。そこで、麦の穂が充分乾いた晴天続きの日に、麦を鎌で切り取った。
  この小麦の穂をこぎ取るため、親父が引っ張りだしてきたのが、なんと、昭和初期に活躍していたらしい手動ならぬ足動の稲(麦)こぎ機である。これまで、我が家の廃屋の納屋にほっぽらかしてあったもので、この機械化時代に、まさか、この骨董品が動くとは夢にも思わなかったシロモノである。

                      

 この骨董こぎ機は、回転する木製の円筒と踏み板からなっており、円筒の表面には 逆U字型の太い針金がたくさん埋め込んであり、踏み板は、足下についている。この踏み板を踏むと円筒が回転する仕組みになっている。

 経験者である親父の指導のもとに、機械(といえるほどのものではないが)を据え付け、回転する円筒の軸に油をさし、足で踏むとこれがたいへんスムーズに回転を始め、相当な高速回転となる。この高速回転をする円筒部に麦の穂や稲の穂を引っかけてこぐわけである。早速試してみると、小気味よく小麦の実や籾殻が前方に飛び跳ねていく。はじめのうちは面白がってやっていたが、だんだん疲れてくるわ、のどはイガイガするわ、鼻の中は真っ黒になるわ、と大変な目にあったが、その日はおかげで爆睡となった。

 休みの日を2回使って何とか麦こぎをやり終えたが、まだこれから小麦の実と籾殻をより分ける作業が残っている。

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