9−2−5 その他の典型金属元素 Zn, Hg, Sn, Pb
 第12族と第14族の金属元素の電子配置による分類は、典型元素であるが、化学反応は遷移元素と共通していることが多い。金属の中では比較的融点が低い。
 
9−2−5−1 第12族 亜鉛と水銀
亜鉛 Zn zinc 原子価 +2
 銅との合金はローマ時代から用いられてきた。単体の金属としては1500年前後であるらしい。元素名zincのもととなったラテン語zincumの名称は、亜鉛の鉱石の1種からつけられた。
性質 ・両性元素である。
   ・希酸と反応して、水素を発生する。
    Zn + H2SO4 → ZnSO4 + H2   硫酸亜鉛 水に可溶
用途 電池、合金(シンチュウCu-Zn)
 
水酸化亜鉛 Zn(OH)2
 Zn2+を含む溶液に塩基を加えると生成する。
   Zn2+ + 2OH- →Zn(OH)2
性質 ・白色の粉末 ・水に不溶
 酸との反応 Zn(OH)2+ 2H+ → Zn2+ + 2H2O
 塩基との反応 Zn(OH)2+ 2OH- → [Zn(OH)4]2- テトラヒドロキソ亜鉛(U)酸イオン
 NH3 との反応  Zn(OH)2+ 4NH3 → [Zn(NH3)4]2+ + 2OH-
                  テトラ アンミン 亜鉛(U)イオン
          名称は遷移元素の項を見て下さい。
 
硫化亜鉛 ZnS
 中性または塩基性で、硫化水素により白色沈殿を生じる。(重要)
 Zn2+ + S2- → ZnS
 
水銀 Hg mercury 原子価 +1, +2
水星Murcury からとった名であるが、関係は明らかでない。元素記号は「液体の銀」を意味するラテン語hydrargyrumからきている。古代中国、あるいは1500B.C.のエジプトですでに知られていた。
常温で唯一の液体金属である。
亜鉛やカドミウムと同族元素であるが、性質はそれほど似ていない。
水銀蒸気や塩化水銀(U)HgCl2は極めて毒性が強い。
鉄・ニッケル以外の金属と合金をつくりやすく、水銀の合金をアマルガムという。
 
9−2−5−2 第14族 スズと鉛 原子価 +2, +4
スズ Sn ラテン語のstannumが4世紀以後用いられるようになった。銅との合金(青銅)は有史以前から用いられており、1850〜1350B.C.のエジプトの墓から見いだされている。
性質 ・室温で比較的安定。 ・展性延性に富み、加工しやすい。
  ・Sn2+ → Sn4+ と変化しやすく、還元剤として用いられる。
用途 合金 ハンダ(Sn-Pb)、青銅(Cu-Sn)
 
主な化合物 塩化スズ(U) SnCl2  塩化スズ(W) SnCl4
 
鉛 Pb lead
元素名はラテン語plumbumからとられている。有史以前から人類によって用いられている金属で、エジプトの遺跡には、貨幣やメダルが見いだされる。
性質 ・軟らかく、密度が大きい。 ・空気中、水中で安定。
   ・Pb2+ は有毒。 ・塩酸、硫酸に不溶。
用途 ・鉛蓄電池の電極 ・合金 ハンダ(Sn-Pb) ヒューズ ・放射線の遮蔽剤
主な化合物 酢酸鉛Pb(CH3COO)2 硝酸鉛Pb(NO3)2 は水に可溶
 酸化鉛(W) PbO2 鉛蓄電池の正電極
 クロム酸鉛(U) PbCrO4 黄色の顔料
 塩化鉛(U)PbCl2(白色)、 硫酸鉛(U)PbSO4(白色)、 硫化鉛(U)PbS(黒色) は水に不溶
ただし 塩化鉛(U)は熱湯に溶ける
 
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