毒物劇物取扱者試験、受けました。


毒劇・・・!?
 2学期が始まってしばらくしてから、生物生産科3年の教室で授業をしていて、ふと黒板に貼ってあった「毒物劇物取扱者試験の要項」に目がいった。学校での仕事以外に「何かに挑戦してみたい」というのが心のどこかにいつもあったので、この要項を読んでいくうちに「受けてみようかな」という思いが漠然と浮かんできた。試験内容がどんなものなのか全然知らないが、化学の内容であるというのは想像できた。この時点ではほんとに漠然としたものだったので、担当のO先生にどんな試験内容か尋ねてみたところ、毒物及び劇物取締法等の「法規」と「基礎化学」、それにそれぞれの毒物や劇物がどんな性質を持っているか、その廃棄方法、保存方法などについての「品目」の大きく分けて3分野があるということだった。ほんとは「実地」というのも試験の内容であるが、これはほぼ「品目」と同じように考えてよいとのことだった。毒物劇物取扱者試験は国家資格試験(公的資格と書いてあるものもあるが・・・どっちかよくわからない)ではあるものの、試験は県が出題するので、県によっては、その名の通り毒物や劇物の実物を見て、解答する「実地」のところもあるそうだ。
勉強開始!
 受験申込みの締め切りまでまだ日にちがあったので、とりあえずテキストを貸してもらって、やれそうかどうか考えることにした。自分でも本屋さんに行って参考書&問題集を1冊買って読んでみた。まずは、「毒物及び劇物取締法」「毒物及び劇物取締施行令」。法律は家庭科でも、家庭に関する憲法や民法について読んだりしていたので、法律用語などへの「拒否反応」は特になかった。毒物劇物取締法については未知の世界であったので、「へ〜」とか「ほ〜」とか思いながら、読んでみた。それから、「基礎化学」。高校以来ひさしぶりに化学に触れてみて、なんだか懐かしかった。高校時代は担任の先生が化学の先生で、化学についてはすごく「鍛えられた」という印象が強く、そのお陰で化学が好きになった。だから高校時代(ずいぶん昔…!)に習ったことでも、多少は頭に残っている。それから「品目」。これに関しては、ほんとに受験するなら、これからコツコツと学んでいかなければならないだろう。とりあえず、受験するという方向で9月の間は暇を見つけてはテキストや参考書を広げて目を通した。夜、家に帰ってからは毒劇の勉強をするぞ、と決めておけば、授業の準備等は学校にいる間にすべて済ませることができる。時間を上手に使うということを心がけた。
 そうこうしているうちに、受験申込みの締め切りが迫ってきた。手続きは生徒分と一緒にO先生がしてくださるということなので、いちかばちかで受験することに決め、手続きをお願いした。去年は文書処理能力検定2級を受験し、その前には漢字検定2級を受験、どちらも自分にとって少しは関係ある内容だったが、今回の「毒劇」に関しては全くと言っていいほど自分に関係のない資格である。きっとO先生は「なんてモノ好きな奴なんだ」って思われただろう…。周りの人に「毒物劇物取扱者試験を受けることにした」と言うと、必ずといっていいほど次に返ってくる言葉は「その資格取ったら何になれるの?」である。わたしは「化学工場に就職できるよ」って答えた。 
 中間試験もこれまでになく早く作り上げ、毎日ちょっとずつ毒劇の勉強をしていった。若い頃なら、一旦、覚えたことはそうそう忘れるものではないが、この歳になると、そのときは覚えていても、数日経つとすっかり忘れてしまっている。

生徒に戻って・・・朝の課外
 中間試験が終わってからは、O先生に無理を言って朝の課外に参加させてもらった。久しぶりに生徒の立場になって、本物の生徒と肩を並べ、毒劇の勉強をした。気合いを入れるために、いつも使うシャーペンや筆入れなどの文房具を新しくし(もう相当ボロだったし…)、課外用にトトロの絵の入ったノートも買った。ホントに生徒に戻った気分だった。課外で使われたテキストは分厚くて、見ただけで気が遠くなるほどたくさんの毒物劇物の名前が並んでいる。あと約ひと月でこれを全部やるのは絶対無理である。
 どうするんだろうと思っていたら、先生はこれまで良く出題されているところを中心にポイントを押さえながら課外を進められた。半月ほど自分で自主学習をしていたが、ひとりで勉強していたときは、法規の中の細かい内容(例えばある毒物を運搬する時の容器は鋼板の厚さが何mmで注入口の厚さは何mmで何kPaの水圧試験で変形しない物…)まで覚えなければならないのかと、胃が悪くなりそうだった。
 しかし、課外で先生の解説を聞いたり過去の試験問題をやったりしていくうちに、そんな「重箱の隅をつつくような」内容は試験を受ける上では必要なさそうな気がしてきた。それよりもっと大事な、例えば「○○という毒物の中毒症状は●●で、解毒剤は△△」というような内容を覚える必要があった。また、化学の内容では、案外常識の範囲内のことを知らない自分に気が付いた。例えば、「ドライアイスは何から出来ているか?」とか「空気の組成は何と何でそれは何%ずつか?」とか。もしかしたら高校時代に習ったのかも知れないが、習ったとしてもすっかり忘れているのである。
 しかし、自分でいうのも何だが課外を受けているときは結構「まじめな生徒」で、先生の話される内容をひとことひとこと逃さないようにしっかり聞いた。

試験の日がやってきた!
 ついに試験の日、11月10日(土)がやってきた。周りは高校生ばかりと勝手に想像していたが、試験会場に行ってみると、高校生ばかりでなく、年輩の方や主婦のような集団、会社のロゴ入り作業服を着た人、我が校の卒業生など幅広い層の人達が試験の時間を待っていた。試験は10時スタート。10時30分を過ぎれば、自由に退出してよいということだったが、制限時間は12時までだったので、じっくり問題を読みながら、進めていった。解答はすべて記号で答えるようになっていたので、書き間違えをしないように慎重に解答欄に記入していった。見たこともないようなことが出ていたらどうしようと思いながら、恐る恐るページをめくっては問題を解いていった。問題用紙は全部で18ページ。とは言っても、中には1ページに3〜4問しかないページもある(「紙がもったいない」なんて余計なことを考えたりした…)。問題を数えてみると90問あった。途中、知らない毒物劇物などがいくつか登場したりして、焦った場面もあったが、一般的に言われている合格ラインには到達しているだろうという感じがした。一生懸命覚えて、絶対出ると思っていた”解毒剤”がひとつも出なかったのがすごく残念だった。(得意だったのに!)
 一通りやり終えた後、もう一度最初から読み返し、記号を書き間違っていないか、はやとちり、勘違いがないか確かめていった。1時間くらい過ぎて、周りの席の人たちが少しずつ退席し始めた。私もわからないところが何か所かあったが、もう充分だと思って、名前と受験番号を間違えずに書いているかどうか確認して解答用紙を裏返し、席を立った。

終わったぁ・・・。
 この約2か月の間、久しぶりにたくさんのことを暗記しなければならないという状況の中で、「老い」を感じ、覚えきれないことに不安を感じた。途中「何でこんなこと始めてしまったんだろう」とほんとに胃が悪くなった時もあった。その上、生徒と一緒だと自分が不合格になったら恥ずかしいという見栄もあった。そして試験を受けるという緊張感も味わったが、去年の文書処理能力検定のときのように、制限時間内で文章を入力しなければならないというような実技があるわけではないので、去年ほどの緊張はなかった。文書処理検定の時は実技試験中に指は震えるし、心臓の鼓動は早くなるし…。
 しかし、未知の世界のことを学ぶ楽しさも同時に味わえた。「途中でやめず、最後までやり遂げてよかった」と今思う。

どきどき・・・合格?不合格?
 文化祭が終わった後の代休(11月26日)、県庁エントランスホールへ合否の確認に行った。発表は11月22日だったが、結果を知らずに過ごしていたので、気になってしょうがなかった。こんな風に合格発表を見に行くのは初めてだったので、かなりどきどきモノだった。試験後、自己採点というかO先生に採点をしてもらったら、大丈夫そうだったが、「もしかして、解答欄を一個ずつ全部ずらして書いてしまったのでは?」とか、試験の注意事項に書いてあった「名前と受験番号が書いてない解答用紙は採点しません」とか、そういうことが気になって(十分確認はしたつもりだが)、「大丈夫!絶対合格!」とは言い切れなかった。
 掲示板に自分の受験番号を見つけたときは、ほっと一安心した。受験票を持っていけば、「情報公開条例」に基づき、本人にのみ試験の点数を教えてくれるということだったので、情報公開センターに受験票を提出して、顔写真確認の上、点数を書いた用紙をもらった。お代は20円也。
 毒劇の試験は、O先生の課外に休まず参加して、ちゃんと授業を聞き、「大事だからアンダーラインを引きなさい」と言われたら、テキストに線を引き、習ったことはその日のうちに復習して暗記しておく、これを自分でこなすことが出来れば、合格できるのである。
 数日後、「合格証」をいただいたが、何ともこれが(良く言えば)シンプルな合格証で、普通、試験の合格証というと、賞状みたいに周りが金か銀の光り物の模様でも入っているのを想像するが、この毒劇の合格証はA4サイズの、コピー用紙よりやや厚めの紙に小さめの字で「合格証」とか「名前」とか「生年月日」とか「県知事の印鑑」とかがあるだけ。何か味気ない。う〜ん、頑張って合格したんだから、もうちょっと派手な合格証にして欲しかったなぁというのが実感であった。



☆★Special thanks to Mr.O.M. and Mrs.H.M. ★☆
PS:山口県は他の都道府県に比べると、どうやら試験が易しいらしい・・・!?