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 秋も気配も差し迫ったある日、ディーノは久しぶりに乗馬がしたいと雲雀を誘った。

 献身的な雲雀の介護の末、ディーノの脇腹の傷は癒え、今はまだ鞭を振るうことは出来ないが、普通の生活は送れるまでに回復していた。

 昨日、キャバッローネ国から使者が並盛谷を訪れた。

 手紙に目を落とし、一瞬に変わったディーノの様子を雲雀は見逃さなかった。

 養生の為とは言え、いつまでも一国の王をこのような辺境の地へ置いておくわけにはいかない。

届けられた手紙には恐らく、この穏やかな生活の終わりを告げる文がしたためられていたのだ。

「谷まで行かないか?」

 少年のように無邪気に言うディーノに雲雀は何よりも彼の傷口のことを気にかけていた。

「無理をしたら、また……」

 決り文句となりつつある恋人の言葉に、ディーノは「心配性だな」と笑ってみせる。

 もし、そう見えるのならば、それはあなたの所為だと、雲雀は恨めしそうにディーノを見やる。

 恋人の心配も他所に、ディーノは馬を走らせた。

 乗馬の腕は鈍っていないと、空を切る風に金髪を揺らして微笑む。

 この並盛谷に来てからというもの、ディーノはとても表情豊かになった。

 遅れずにと、雲雀も馬を走らせ谷までの道を着いて行く。

 関所を越え、吊り橋を渡り、ふたりは懐かしい滝の音を耳にする。

「ここで俺は恭弥と出会った」

 馬から降り、ディーノは過去の記憶を手探りに、一歩一歩と岩場を歩き出す。

 暫く歩くと、前方には小高い岩肌が聳えていた。

「あそこだ」

 懐かしそうにはにかんで、ディーノは後を着いてきた雲雀に指差した。

「美しい歌声に導かれ、俺はあの岩に登った。そう、恭弥が水浴びをしている一部始終を見ていた」

「え…」

 少年の神秘的な裸体に夢中になっていたと、ディーノは悪びれる様子もなく告白をすると、雲雀は面食らった様子で呆けていた。

「あなた…。そんなこと一言も話してくれなかった」

 信じられないと、雲雀は頬を壮大に染め上げて俯く。

「あの時、恭弥がオークに襲撃されなければ、出会うこともなかったんだろうな」

 絹を裂く少年の悲鳴で我に返り、咄嗟に助けようとオークの群れの前に飛び出したのだ。

「ずっと僕に黙っていたなんて…、ずるいよ」

 オーク相手に得物を振り回し、恥かしい恰好さえ強いられていたのだ。

 本気で逆鱗に触れたわけではなかったが、真実を今まで語ってくれなかった恋人に雲雀は赤くなりながら抗議をする。

「許してくれ。王となるためリボーンのもとで修行を積んできた俺にとって、子供の裸を盗み見するなど、名誉が問われる一大事だったんだ」

「あなたはいつも二の句には名誉なの?」

 父もそうだと、雲雀ははぶてた仕草で言い捨てる。

「名誉で戦争に行って、名誉で死ぬ。そんなの、僕は嫌だね」

 耐えらないと涙を浮かべ、雲雀は今度こそ騎士が嫌いだと罵った。

「そんな、見えない名誉の為にディーノ、あなたが死んだらと想像する度に…。僕は……」

 昔はあんなに憧れていた騎士だというのにと、雲雀は思いの丈を吐露した。

 ディーノを愛するようになってからというもの、いつ訪れるかわからない死の影に雲雀は怯え続けていた。

 それは今も変わらない。

 ディーノは「すまなかった」と詫び、ここに生きていることを感謝すべく、雲雀の細い体を抱き締めた。

「ん…。ディー…」

 幼子のように泣きじゃくる雲雀の泣き面を両手で支え、その鼻、頬、睫毛、唇にキスを落とす。

「もう限界だ…。恭弥、お前を抱きたい」

「あ…」

 欲しいのだと耳元で囁かれ、頬を赤らめて返答に戸惑う雲雀のふっくらとした唇を強く吸った。

 傷口が開いてしまうという雲雀の制止も聞かずに、ディーノは恋人を掻き抱いた。

「あなたに…噛み殺されるのは苦手だよ…」

 こんなところでと嫌々をする雲雀の胸元を肌けさせ、脚に纏わりつくドレスをたくし上げた。

「やぁ」

 すぐに露となった乳房は相変わらず小さな膨らみのままだったが、それでもディーノを誘って止まない。

 野苺のように赤く熟れた乳首は期待に震え、硬くすでに勃ちあがっていた。

「ドレス姿もそそるけど、俺はズボンを履いているところの恭弥も見てみたいな」

「………」

 幾重にも結ばれている帯紐を解き、ペチコートを脱がせ、下着姿となった雲雀を平らな岩肌に縫いとめ一望する。

 これが最後になってしまうかもしれない。

 哀しい思いが雲雀の脳裏を横切り、今まで頑なに閉ざしていた膝から力を抜き去った。

 それを合意と汲み取って、ディーノは自らの前を寛げて、露となった欲望を雲雀に握らせた。

 羞恥の涙を浮かべながら、雲雀は従順に揉みしだき、硬く汁が零れだした肉棒をしゃぶる。

 盛りのついた獣のように腰を奮い、その愛しい体を串刺しにした。

「あっ、あっ、あぁっ」

忘れようとしても忘れられなかった形状に啜り泣き、女の悦びを思い出す。

「も…だめ……」

 舌足らずに懇願すると恋人は「もう暫く味わいたい」と息を荒くして囁いた。

 最奥まで貫かれ、揺す振られ、大きな波が訪れたかと思えば、器用に小刻みに擦られ、波が泡立った。

 

 あん。

 あんっ。

 イイ…っ、そこ…。

 

 珊瑚食の唇を唾液で艶光させ、歓喜の声をあげる。

 挿入された蕾の入り口はディーノの滴りと雲雀の蜜に塗れ、クプクプと音を立てていた。

「あん…、ひゃぁ……」

「恭弥、キャバッローネで俺の子を産んでくれ」

「あぁん。そ……な……」

 絶頂を目前に告げられた言葉に雲雀は取り乱す。

 気持ちよくなって、吐き出すだけで満足していたのに。

 今は無性にこの娘のすべてが欲しいのだ。

 いつも自分は気持ちに気づくのが遅すぎて、後悔ばかりが山積みだった。

 だが、もうそんなヘマはしないとディーノは誓う。

 欲しいものは欲しいと、手を伸ばそう。

「俺と結婚してくれ」

「……ん…ぁ…、あぁっ」

 内壁で摩擦運動を繰り返すディーノの質量がドクンと増した。

 先端は鋭く尖り、ドクドクとその時を待つ。

 

 だめ。

 そんなに簡単に決めないで。

 あなたはキャバッローネの王なのだから。

 もっと相応しい女性がいるはずだ。

 辺境の地の子供が欲しいなんて、簡単に決めないで。

 

 心とは反し、熟れた蕾は肉棒を呑み込み、至高の瞬間を待ち侘びている。

「ほら、恭弥」

 

 んんっ。

 そ…な…大きく…しないで。

 

「恭弥…。騎士とは確かに名誉の為に殉職もする。恭弥が嫌う理由もよくわかった。だが、騎士とは己の剣で愛する者たちを守り戦う役割がある。俺も愛する人や祖国の為に戦った。騎士の最高の名誉とは、愛する者を守り抜いた時に授かる証だ。わかってほしい。俺にはお前が必要だ。いつも傍にいてほしい。愛する者がいなければ、騎士とはその存在理由すら見失われてしまうのだから…」

「僕でいいの? 本当に…僕で」

 考える隙も与えず、至ってディーノに有利な提案に雲雀は涙し、肉棒の一際強く締め付けた。

「――――あ…ん……。ディー…」

 仔犬のように一つ鳴いて、それが返事だとばかりに熱い祝福が注がれた。