06

 

 

 

 

 

 たった一晩限りの契りだった。

 翌朝、雲雀は体調を崩し発熱に見舞われた。

 綱吉に急かされ、ディーノは花を摘んで部屋を訪れた。

お見舞いを兼ね、昨晩の非礼の数々を謝った。

 気の迷いだったと、昨晩のことは忘れて欲しいと。

 草壁がディーノの届けた花を花瓶に活ける為、席を外した間、雲雀は一人で泣き入っていた。

 彼の言葉があまりにも素っ気無かったのが哀しくて哀しくて。

侮蔑の言葉すら思いつかず言えなかったのだ。

 午後になると残りの守護者士たちが並盛谷の館へ到着をした。

 それからの並盛谷はウルグ・ハイの残党狩りの為、軍会議や武装準備に大忙しだった。

 そのざわめきも雲雀の部屋までは届かない。

 蚊帳の外で男たちが騒いでいるだけで、女の雲雀には余計な伝達はしないのだ。

 ベッドのなかで大人しく過ごしていた雲雀は夕暮れには熱が下がり楽になっていた。

 外は夕闇だというのに松明の明かりが赤々と至る所で点在していた。

 もうすぐ戦が始まる。

 緊張し殺気立った気配に、雲雀は僅かに痛む腹を撫でる。

(僕には関係のないことだ…)

 騎士は戦いに赴く時、白銀の甲冑に青のマントを纏って出陣する。

 人々は勇敢に立ち向かう騎士たちの為に摘んだ花を降らせ見送るのだ。

 夕餉を食卓の間で守護者を迎える夕食会があると、草壁が雲雀に話し、同席するかと訊ねると、雲雀は首を横に振った。

 大陸の英雄であるボンゴレの騎士たちが一同に会するのだ。

 昨日の雲雀だったら飛び跳ねて喜んでいただろう。

「食欲がないんだ」

 ディーノに抱かれ、拒絶をされた昨日の今日だ。

 草壁は雲雀の心を汲み取り、食事は部屋に運びますからと静かに退出した。

 

 

 

 

 

 コンコンコンと三度のノックがしたので、雲雀は草壁が食事を持ってきてくれたのだと思い返事をした。

「入るよ」

「!」

 予想を反して食事を運んで来たのは、雲雀よりも一回り小さな少年だった。

 どことなくその印象がディーノと似ている。

「君は誰?」

 警戒心を解かないまま、距離を保ち訊ねた雲雀に少年は綱吉と名を述べた。

「ヒバリさんを哀しみの淵へと追いやった張本人の弟です。ちなみにリボーンは今、俺の家庭教師を務めています」

「え…」

 いけしゃあしゃあと言い、綱吉は食事ののった盆を適当なテーブルの上へと置いた。

「俺は大空の守護者です。まだ、見習いですが」

 そう言って雲雀に太陽の称号が刺繍されたグローブを見せた。

「明日から、オーク狩りが始まります。その前にヒバリさんへ兄上からの伝言」

 懐の中から綱吉は跳ね馬の彫刻が掘られたペンダントを取り出した。

「これがキャバッローネ…じゃなくて、ボンゴレの騎士の証」

 簡単な説明を付けて、綱吉はそのペンダントを雲雀に向かって放り投げた。

 ペンダントは空中に綺麗なアーチを描き、ストンと雲雀の掌に納まる。

「それ、ヒバリさんにあげるって。あなた、騎士に憧れているんですよね? 女の癖に変わってるけど」

「余計なお世話だよ」

 伝言も済ませ立ち去る綱吉に雲雀は気後れがちに声をかける。

「受け取れない。こんな大切な物…」

 大切そうにペンダントを握り締めて言う雲雀に、綱吉はニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。

「ああ、余計な心配しなくてもいいです。事務方に紛失届けを出したら直ぐに新しい物を支給してくれますから」

「え?」

 戦闘や帰省の時に良く無くす者がいるんですと、適当な説明をして綱吉は立ち去って行った。