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散々泣かせた所為か、痛々しいくらい瞼が赤く腫れていた。 冷タオルで顔を冷まさなければと思いながら、ディーノはよく寝ていると上掛けをかけ直し、サイドボードの上の置時計を見た。 午後の出社時間は遠の昔に過ぎている。 「やっべ…」 自然とディーノの頭には眼鏡の腹心の顔が浮かんだ。 下の階で今でも主の出勤を待っている部下に連絡を入れることさえ失念するほど舞い上がっていた。 (仕方ねぇだろ。状況が状況なだけに…) 聡いあの男のことだ。 もしかしたら、朝の一報ですべてを掌握しているかも知れないが。 それよりも、一向に目を覚まさない彼のことの方が仕事より気になって仕方ない。 「手酷くやっちまったからな…」 セーブがきかなかった。 一生の思い出にできるくらい良い思いをさせてやるつもりが、ディーノ自身が雲雀に夢中になりすぎて痛みしか与えられなかった。 いつから自分は雲雀のこと肉欲の対象として見るようになったのか。 雲雀からくれたキス一つでたかが外れ、恋愛感情すら飛び越し性行為に及んでしまった。 まるで無垢な雲雀はキスだけで熟れたトマトのように真っ赤になり、丸裸にひん剥れたときには今にも死んでしまいそうな顔をしていた。 「っか、やりすぎだろ?」 ひとりで虚しく突っ込みを入れ、小さく項垂れた。 まだ両想いであることも確認していない。 それなのに一方的な欲望を雲雀にぶつけてしまった。 「やりきれねぇよな…」 雲雀の正直な気持ちが知りたい。 ディーノの胸は許容量いっぱいに膨れ上がり、定時に届けられた昼食も喉を通らなかった。 「はぁ…」 広々としたベッドの端に腰掛けたまま深く溜息をつく。 彼に目覚めてほしいと思う反面、起きたらどう接していいのかわからない。 ディーノは手持ちぶたさに両手を膝の上に置き、視線を逡巡させた。 (最悪だ、俺) ものには順序というものがある。 下手をすれば、雲雀の方から別れ話を切り出されても十分おかしくない状況に益々気分は沈んだ。 「やっちまったもんは仕方ねぇだろ。どーしろっていうんだよっ!」 三十も過ぎて見苦しいと笑われてもいい。 最早、ディーノには雲雀のいない日常など考えられなかった。 なのに自分は性行為に怯える雲雀に無理強いをし、脚を広げさせ熱くたぎる欲望を突き入れた。 涙する頬に唇をあて、何度も「愛してる」と褥の上で囁き抱いた。 雲雀もその言葉に対して微かに反応を示してくれていたが、まだ真意は深い闇の中だ。 この思いが一方通行でないことを切に願いたい。 「こんなことになって…、期待していいのかよ?」 わっかんねーと荒々しく髪を掻き、ディーノは空いたベッドのスペースに手足を投げ大の字になった。 当人はいまだ夢の中だというのに、ぐたぐた考えても限がない。 仕舞いにはこんな自分が馬鹿らしく思えてきて、ディーノは考えることをやめた。 こんなことで時間を無駄にするな。 もっとほかにすべきことがあるだろう。 「恭弥のために…」 今、できることを。 そう思い直すと、頭の中がクリアになった。 皺くちゃに投げ出された雲雀のワイシャツとズボンが視界に入る。 「俺がしたんだよな」 これはもう使い物にならないので、クリーニングに出そう。 それからディーノはバスルームへ向かいバスタブに湯を貯め始め、ワゴンの上の冷えた昼食を部下に下げさせ、いつでも温かなものを用意できるよう指示を出す。 考えれば結構やることがあるなとディーノはワイシャツの袖を捲りあげ、朝食の後片付けを始めた。 滝水が近くで落ちている。 ドウドウと勢い良く流れ落ちる水音に眠っていた雲雀の意識がゆっくりと覚醒する。 「……」 どれくらい眠っていたのか、時間が気になった雲雀は首を巡らせてサイドボードの上の置時計を見つけた。 午後一時三十八分。 もうこんな時間と、盤面を見た途端、今日のスケジュールが脳裏を過ぎり蒼褪めた。 上体を半分に起こしたところで下肢――股関節のあたりに鈍い痛みが走った。 「…っ」 慣れない痛みに肩を強張らせ、その場でじっと亀のように固まった。 じっとしていると次第に痛みは沈静してゆき、雲雀は変な汗をかいたと細く息を吐いた。 起き上がることにここまで手間取った経験はなかった。 一糸纏わぬ姿でいることはまずいなと雲雀はとりあえず手元にあった上掛けで身体を包み込む。 (ディーノ…?) 心細く寝室一帯を見渡した。 肝心の彼の姿はない。 もしかして、ひとりでオフィスに行ったのかと思ったが、風呂の湯を出し放しにして出掛けるほど無責任ではないだろう。 いてほしいときにいてくれないなんて。 (なんで、いないの…) 喉はガラガラで、肌はディーノがいじったエアコンの温度設定のお陰でパサついていた。 乾いた体が水を欲している。 だが、起き上がるときに伴う鈍い痛みを思い出すと躊躇してしまう。 モスグリーンで統一されたカーテンで覆われた寝室は薄暗く、バスルームから聞こえる水音以外は何もしなかった。 ガタンと鉄の扉が閉まる音がして、雲雀は寝室のドアの方を見やった。 ディーノが戻ってきたのだと雲雀は顔を上げて、彼の名を呼んだ。 「ディーノ!」 滅多なことでは口にしない彼の名前。 その名を呼ぶときはいつも特別なときで、鼻にかかる声のせいで酷く甘えたものに聞こえた。 「ボスなら、ちょっと野暮用で下のオフィスにいるぜ」 「!?」 ディーノのものではない声に雲雀は慌てて上掛けを体に巻きつけ、ドアの方を凝視した。 主に部下達が寝泊りする下の階には、雲雀の知らない多くの仕事機材や簡易オフィスの部屋があった。 どうしても外出が難しい時、ディーノはよく下の階に行って仕事をこなしていたことを雲雀は思い出した。 ロマーリオは寝室に入って来る気はないらしい。 あくまでも寝室のドアの外から用件を伝えることに徹していた。 「すぐに戻ってくるから安心しろ。俺は温め直した食事を届けに来ただけだ。休んでいたところを邪魔したな」 「……」 主と何をしていたのか、追及するつもりはないらしい。 否、抜かりのない彼の性格だ、恐らくはすでに事の状況を把握しているのだろう。 これ以上、介入するつもりはないロマーリオの態度は雲雀にとってありがたいことだった。 彼は食事の乗ったワゴンをリビングに届けるとすぐに部屋から出て行った。 そして交代するようにディーノが部屋に戻ってきた。 「恭弥、もう起きていいのか?」 去り際に何を言い含められたのか、ディーノはいつになく慌てふためいた声で雲雀の名を口にした。 ノックもせず、けたたましい音を立てて侵入してきた彼に雲雀は鋭い視線を向けた。 「あなた、あの眼鏡に話したの?」 情事のあとの余韻は微塵にも感じられない、いつもと変わらぬ毅然とした雲雀がベッドの上にいた。 多少、ディーノは肩を落としたが、それでも嬉しそうに口元を綻ばせ、躊躇うことなくベッド側まで近づいて来る。 「まだ何も話してねぇよ。でも、あの様子だともう気づいちまっているかもな。俺はちょっと恭弥の体調が優れないと言っただけだ」 「ふぅん。僕に仮病を演じろとでもいうの?」 「仮病じゃねぇだろ。実際、動くのも辛いくせに…」 「そうさせた本人がよく言うよ」 的を突かれ、雲雀は不機嫌極まりなかった。 数時間前、雲雀はどう考えても物理的に無理なディーノを受け入れていたのだ。 そのときのことをフラッシュバックさせ、雲雀は赤い目尻できつく男を睨みつける。 「…ごめん。無茶させて悪かった。でも、お前を抱いたことに関して謝るつもりはないぜ」 折角、一つに結ばれたというのに。 これ以上不毛な言い合いはしたくはなかった。 「さっき恭弥が俺の名前を呼んでいたって、ロマーリオが。俺がいなくて淋しかった?」 眼鏡め、干渉しないんじゃなかったのかと、雲雀はここにはいない黒服のことを酷く恨んだ。 「別に。そんなんじゃない」 フイと横を向き、雲雀はいまだに不安定な体をなんとか悟られまいと両手で抱き締めた。 「寒いのか?」 ちょっとした変化も男は見逃さなかった。 表情を一変させ、すぐさま雲雀の手を取る。 「触らないで」 「どうして?」 薙ぎ払おうとしても、性行為の後、放心してしまった身には何の力も入らない。 ただ、猫のように毛を逆立て牙をちらつけることしかできない。 いとも簡単に手首を掴まれると、もう片方の手で上掛けを捲りあげた。 「あ…っ」 露わになった半裸のあちこちには赤く吸われた痕が浮かび上がっており、胸部や腹部のあたりには飛び散った精のあとが生々しくこびりついていた。 「風呂に入って温まろう。ひとりじゃ立てねぇだろ。俺がバスルームまで運んでやる」 「いらないっ」 「遠慮すんなって。恭弥らしくないぜ?」 「遠慮なんて……、ばかっ!」 誰のせいでこんな風になってしまったのか。 抗議する声もディーノには届かず、両脇と両膝に腕を差し込まれたかと思うとあっと言う間に軽々と抱き上げられた。 「おー。軽い軽い」 ちょっとは太れよと皮肉を言われながら、抱き上げられた拍子にスルリと上掛けが落ち、あられもない姿が眼前に晒された。 「見るな」 「どうして。男同士だぜ?」 ハハと、軽く笑う男にいつか目に物見せてやると心に誓う。 それから雲雀は軽い眩暈を覚え、目蓋を閉ざす。 「あとで噛み殺すから」 「穏やかじゃねぇな」 目を閉じていれば、彼の視線を感じなくてよい。 大人しく抱かれたまま雲雀は広々とした大理石のバスルームへと運ばれ、いきなり湯船に浸からされるのかと思えば、一段高くなった風呂の縁へと座らされた。 バスルームは湯を張ったせいか、すっかり湯気で温もっていたので寒さは感じられない。 「あとはひとりでやる」 ワイシャツを脱ぎはじめたディーノに雲雀は慌てて声をかけた。 「さっき仕事先の相手から電話がかかってきてな。夜にどうしても外せない会食が入ったんだ。だから俺も風呂に入ってさっぱりしようかと思って」 「ふざけないで」 子供じゃあるまいし、僕はあなたと一緒にお風呂に入るなんて御免だと言い切る前に、ディーノは豪快にワイシャツを脱ぎ捨て脱衣籠に放り投げた。 「ほら、これで恭弥と同じだ」 日本で言う裸の付き合いと、唇の端を持ち上げる男に恥も外聞もないのかと、また眩暈を覚えた。 そして、嫌味なほどに逞しく鍛え上げられた肉体に目を奪われた。 抱かれているときは無我夢中で気づかなかったが、広い肩幅に割れた腹筋。 外国人特有の隆々とした筋肉と肉感。 背筋は薄く、程よく鍛えられた体の隅々までもが裸体像のような造りをしていて、開いた口がそのままになった。 彼は着痩せする性質なのだ。 (そういえばこの人、国にいるときは早朝マラソンとジムへ通う時間をスケジュールに組み入れていたっけ…) 雲雀は秘書就任時、ロマーリオから手渡された分厚い手帳の中身を思い出す。 捲った一ページ、一ページにディーノの日々のスケジュールが記されてあった。 走り書きされたイタリア語を雲雀は仕事の片手間に翻訳した。 彼の秘書として知っておいて損はないと思ったからだ。 日本滞在時は時間に余裕がない限り、ディーノはホテル内のジムに足を運ばなかった。 イタリアの彼が住んでいる屋敷は優にマラソンができるほどの敷地があり、部下が目を光らせることも容易だった。 だが、日本ではそうもいかず警備上難しいからと諦めていた。 「日本では、男は風呂で腹を割った話をするって聞いたことがあるぜ」 「なに言ってんの」 僕は御免だと抗議する合間に、ディーノは最後の一枚まで脱ぎ去ってしまった。 目の端に映った下半身はすでに静まっており、思わずほっとした。 視線を逸らしたまま頑なにこちらを見ようとはしない雲雀にディーノはヒタヒタと近づき、その名を呼んだ。 「恭弥…」 「やだ。来るな」 やんわりと引き寄せられ、一旦は止んだ震えが再発した。 「やっぱり、寒いのか?」 「違うっ」 「だったら、怯えて…いるのか?」 俺に。 無自覚な男が憎くて堪らなかった。 もう一度、抱きあげられて雲雀はギュときつく目を瞑った。 こんな状況下でまともに彼の顔なんて見られやしない。 この体が自由なら今すぐここで噛み殺したいという衝動に駆られつつ、熱くもなく温くもない適温の湯船にふたりして浸かった。 湯船に入ることで抱きあげるディーノの負荷も減り、漸く落ち着けると彼は深く息を吐いた。 「ふー。落ち着くな」 これでもかと密着する体と体。 抱きかかえるようにして浸かっているためか、雲雀の柔らかな尻は彼の膝の上で、時々そこをかすめるように掌が行き来する。 今朝の性行為の序奏をくすぐる動きに似ていた。 ああ、目覚めの朝は今とは比べ物にならないくらい激しい嵐であったと思いだし、雲雀は漸く息つく場所を見つけた気がした。 鼓動の高鳴りを悟られぬよう雲雀は極力平静さを装った。 「順番がぐちゃぐちゃになっちまったが、俺の話を聞いてくれるか?」 急にシンと水を打ったように静まり返った。 雲雀は真摯な眼差しの彼に逃げ場を奪われ、最後に一つ頷く。 「なに?」 背を向けて雲雀が座っているため、様子を窺い見ることのできなかった。 ディーノは襟足の長い金髪を掻き上げて、目の前にある白くなまめかしい項を見下ろした。 「お前を愛してるよ。恭弥」 その一言に雲雀の心臓は鷲掴みされた。 震える唇で「いつから?」と小さく訊ねてみる。 すると彼は「出会ったときから」と、照れ臭そうに、でも正直に彼は答えてくれた。 悪くない答えに「ふぅん」と雲雀は目を猫のように細める。 「だったら、あなたは下心有々で僕に救いの手を差し伸べてくれたんだ?」 あわよくばこの子と親しくなり、もっと深い間柄になれたらと。 「それは、ねぇよ。あのときは困っている恭弥を助けたいって思っただけだ」 確かに親しくなりたいという気持ちはあったが、それは雲雀のように美しい東洋人が珍しかったからだと付け加えた。 「正直、恋愛対象としてはあまり意識していなかった。っか、無自覚に好きだったって言った方が納得できる」 「そう」 「今朝、恭弥からキスされて、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃が走ったぜ」 欲情の仕方があんまりだったので怒る気にもなれなかった。 「じゃあさ、恭弥は俺のこと好き?」 足の付け根あたりを撫でられて、ブルリと雲雀は震えた。 好きじゃなきゃ、こうして同じときを過ごしてはいない。 ましてや肌を同性に許すなんてこと。 「俺の一人勝手な思い込みじゃないよな? いつから俺のこと、好きになってくれたんだ?」 ディーノの声は余裕がないものにすり替わっていた。 「昨日だよ」 ポツリと雲雀は呟いた。 「あなたに恋人がいるって知ってから、かな…」 「は?」 パシャと水面が揺れた。 あまりにも間が抜けた声だったので雲雀はなにかおかしなこと言ったと怪訝そうな顔をする。 「お、俺がいつ、恋人がいるって言った?」 「昨日、ツリーを見ながら言ったじゃないか。クリスマスは予定があるって」 今更、誤魔化しはきかないよと表情を研ぎ澄まさせる雲雀にディーノは「誤解だ」と声を大にして否定した。 「予定があるって言ったのは恭弥とクリスマスを過ごすって意味で言ったんだよ。誰が他の奴と――。あ、それで今朝、キスしてくれたのか?」 「ワォ。そういうことだったのかい」 なんて素晴らしい勘違い。 それは気づかなかったよと、雲雀はさも愉快そうに声を立てて笑った。 「なにがそんなに可笑しいんだ? 俺は恭弥一筋だぜ。誰が浮気なんかするものか!」 「無自覚で僕のことが好きだったのにかい?」 「あー、それ、言うなよっ」 三十も過ぎて恋に気づけなかったなんて情けない。 「へなちょこディーノ」 「そうやって言われんの久しぶりだ。懐かしい」 貶してやっているのに男は嬉しそうに笑っていた。 子供のように顔をくしゅくしゅにさせて。 そんな顔を見ていると、雲雀もつられて笑うしかなかった。 歌うように声を立て、心からこの人が愛しいと雲雀はこの恋を自覚した。 いつの間にか機嫌を直している気まぐれ猫にディーノは今度こそ目的を持って尻の溝を探りあてる。 「あなた、なにして…」 食むように引き篭もっていた蜜口に雄が擦れて、パシャンとお湯が跳ねた。 まだ掻き出してもいない壺口のことを考慮しても、今はことに及ぶべきではなかった。 だが、たちまちディーノのそれは硬さをおびはじめ、ふたりの言葉数は次第に減っていく。 「あー、たまんねぇ…」 どうしたらいいのかと考える前に手が雲雀の乳首を摘み上げ、クリクリと先端を弄っていた。 「やだ。ディー…」 さっきしたばかりなのにと非難の声があがる。 忙しく息を上げながら、雲雀はひくひくと身体をひくつかせ彼の胸に後頭部を擦りつけた。 「両想いなら、もう犯罪じゃないよな?」 「なに…いって…」 「気持ちいいか。なぁ恭弥?」 「あ…、い…」 きゅうと強く乳首を引っ張られ、下半身に直結した快楽は素直に悦びをかたちに表した。 湯船の中で勃ちあがった性器を見てディーノはゆるゆると抜きはじめる。 「恭弥がまだ疲れてるって、わかってるのにとまんねぇ…」 「あぁ…ん。あなた…夜の会食が――」 こんなときまで秘書稼業を忘れない雲雀の生真面目さにディーノは可愛い奴と薄っすら笑みをかたどる。 「安心しろ。夜からだから、今から一眠りしても十分に間に合うぜ」 性器を優しく扱かれながら雲雀は「ひぃん」と啼いて涙を目尻に滲ませた。 自覚してそうしているのか、まるで縋りつくように必死になって股間に尻を擦りつけている。 「やべぇって…」 足の間から勃起したディーノの雄を見て、どうしても今朝方交わった激しさを思い出さずにはいられない。 雲雀は「やだ…」と弱々しくかぶりを振りながら身を捩り、脚の間に挟まったディーノをゆるゆると擦った。 「ちょ…、恭弥。それ、反則だって」 「な…に?」 気持ちいいじゃねぇかと、低く呻く。 「頼む恭弥。このまま、続けて?」 ほっそりと伸びた脚に擦られながらディーノは恍惚とする。 それだけでは飽き足らず、更なる刺激を求めて雲雀の手を取り、白魚のような指を性器に絡ませた。 「ディーノ…っ」 なにをさせるつもりかと手を引っ込めようとしたが、ディーノの声があまりにも必死だったので堪えた。 それから求められるままに手を動かし、彼の昂ぶりを擦りあげ形状を確固たるものに仕立て上げた。 「恭弥…もう一回、したい」 耳元で囁かれ、雲雀は性器に指を絡めたままコクコクと頷く。 こめかみにキスをして、震える雲雀の手を解き放つ。 一度解きほぐされているのだからと、ディーノはこれ以上我慢せずに腰を少しずつ進めた。 「あー…」 思ったよりも雲雀は痛がっていない様子に安堵感を覚えた。 「俺がなかにいるの、わかるか?」 密着しているせいか、ドクドクとディーノの心臓の高鳴りが肌から伝わってくる。 「全部、はいった」 「ふぅ、ぅ…」 結合した箇所から雄の逞しさを感じて雲雀は打ち震えた。 離れたくないと、密口が絞られる。 その締め付けを了承だと受け取ったディーノは水音をたてながら、腰を本能のまま揺すりはじめる。 「好きだ恭弥…」 「ん…」 雲雀は甘く喘ぎながら、自らも腰を動かす。 「ディーノ、ディーノ…」 「あ…、きょうや」 止められそうにないと切なげに囁くディーノに「いい」と、どうとでもとれる言葉を紡ぎすすり泣く。 「お前が欲しくてたまらない。愛してるよ」 「ひぁ…、あふ…ぁっ、やぁ――」 気が狂いそうになるほど突き動かされ、内壁がぐちゃぐちゃになるまで掻き乱される。 知らないこんなの。 知らなくて良かったのに。 張り詰めた胸が苦しい。 苦しくて、切なくて、愛してほしくて。 「ディ…ノ…っ」 舌足らずに名を呼ぶ。 「恭弥」 赤く熟れた二粒の果実が美味そうに男の瞳に映った。 「あ…ん…っ」 突き上げられながら、乳首を指の腹で転がされて雲雀は両脚を戦慄かせた。 くすぐったさはすぐに切なさへ変わり、もったいぶるように弄られる胸飾りを見つめながら「意地悪しないで」と懇願する。 それからはもったいぶらずに触れてくれて、雲雀はあられもなく泣きじゃくった。 「イイ。も…、イイ…っ」 「恭弥――」 はしたない水音のなか一際声高く啼いて、ぶつけられた男のすべてを雲雀はその身一つで受け止めた。
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