トントントンと小耳に良い音がリズムよく聞こえる。

 いつも決まって目が覚めるのは午前六時。

 長年染みついた習慣からか、どんなに夜遅く就寝したとしてもディーノのなかの体内時計がきっかりと朝の目覚めを知らせるのだ。

 毎朝の定番として定着している音の正体は味噌汁の具材である長ネギを包丁で刻んでいる音だ。

 雲雀の朝は決まって和食から始まる。

 これだけは譲れないという確固たる拘りがあるものだから、自分も日本人である彼の習慣に付き合っている。

 極たまに珈琲と焼菓子が恋しくなる時もあったが、雲雀と向き合って食事を楽しむ時間の方が何倍も価値あるものに思えたからディーノは毎朝二人分の和食を作ってくれる彼に感謝をしていた。

(結局、あれからずっと様子が変だったな)

 まるで機嫌を損ねた子供のように片意地を張り続け、就寝時まで口をきいてはくれなかった。

(昨日は、おやすみなさいしか聞いてねぇ…)

 それはそれで気分が塞ぎこむ。

 一体何が気に入らなかったのだと、一晩中ディーノを悩ませた。

 頭はすっかり冴えていたが起き上がるわけにはいかなかった。

 七時きっかりに彼が起こしに来るまではと、我ながらに必死な癖に悠長だなと相反する心に笑った。

 ジューと卵が焼ける音。

 白い湯気にのって運ばれてきたのは仄かな甘さ。

 ディーノは雲雀の作る玉子焼きが好きだった。

 特に甘く作ってくれると、彼の優しさを感じて幸せな気分になれた。

(今朝の付け合わせは何かな…)

 今日の朝の献立を退屈なベッドのなかで考える。

 雲雀と出会う前までは思いもつかない穏やかで家庭的な日常。

(家庭の味を恋しく思うなんてな…。俺もそろそろ身を固めろってことか)

 自然と苦笑いが浮かんだ。

 すでに三十を超えているというのに特定の恋人もいないという身分は問題ありだろうと思いながら寝返りを打つ。

 パタパタとスリッパの足音がこちらに近づいて来て、ディーノはいけねぇと上掛けを被りなおして目を閉じた。

「朝だよ。ディーノ」

 もう機嫌は直ったのだろうか、雲雀はいつもの調子で起こしに来てくれた。

「もうちょっとだけ…」

「駄目だよ」

 一刀両断する物言いに、もう少し優しく起こしてはくれないかとディーノは眉尻を下げた。

 そして、ダメもとでお決まりの台詞を口にする。

「きょーやー、キスー」

「……」

 バサっと上掛けが容赦なく捲られた。

 ツキンと身を引き締める寒さにディーノは思わず身を竦ませる。

 僕はあなたのマンマじゃないと、却下される展開を予測していたディーノの唇に小さく温かなものが触れた。

「きょ――」

 ゆっくりと離れてゆく雲雀の顔。

 恭弥と音もなく唇だけが動いた。

「キスしてあげたんだから。早く、起きなよ…」

 素っ気なく背を向け、スタスタとリビングへと消えて行く。

「え…。ちょ…」

 いまのはどういうつもりでと、男は呆然と後ろ姿を見送った。

 朝食の献立はご飯と味噌汁に出し巻き卵、付け合わせはこしジャガイモだった。

 いつもと変わらない朝の風景だったが、食卓に会話はなかった。

 カチャカチャと食事にかかる必要最低限度の食器音だけが響くだけ。

 元々、雲雀は静かに食事をする方だったのでこの静寂をどう受け止めているのかは定かではない。

「ごちそうさま」

もう終わりかと顔を上げると、雲雀の皿は半分も食事が残っていた。

無言のまま食器を水場に運び、一足先に後片付けを始める。

(恭弥…)

 こういう時、どう言葉をかけていいのか。

 昨晩の件もあり、ディーノの頭はやや混乱ぎみだった。

 何事も機敏な雲雀にしてはのろのろとした動作で食器を水洗いしている。

 これは悠長に食事をしている場合ではないと判断したディーノは急いで皿の上にある料理を口に放り込み片づけた。

「恭弥っ」

 席を立ち話があるからと彼の背後に近づいて声をかけると「僕はない」とあえなく交わされ、ディーノは伸ばしかけた手を引っ込めた。

 だが、ここで引いては男が廃る。

 この未曽有の危機を千載一遇のチャンスに変える。

いや、変えてみせる。

気を取り直し、ディーノは目の前の華奢な身体を思い切って抱き締めた。

「な…」

 突然のことに雲雀の体は硬直し、手に持っていた皿を一枚滑らせる。

 しかし、皿は幸いにして厚みのある絨毯がクッションとなり一命を取り留めた。

「ちょっと、危ないよ。洗い物してるんだけど…」

 その手を退けてと言う声音は心なしか、いつもより弱々しいものに聞こえた。

「キス、しよう」

「え…」

 わけがわからないと戸惑っている耳元にもう一度囁き、雲雀は我が耳を疑った。

「さっきしてくれたのは、マンマのキス?」

「…僕にキスされて後悔していたんじゃなかったの?」

「とんでもねぇ。すっげー嬉しかった。恭弥がキスしてくれて!」

 年甲斐もなくディーノの胸は躍っていた。

 まるで初恋に胸をときめかせる少年のように。

「だから、またキスしてぇ」

 雲雀が許す限界まで鼻筋を寄せて懇願する。

 見つめあえば自然と吐息が触れ合い、互いの心臓はトクトクと血流を早くさせた。

「僕を…からかってるの?」

「からかってなんかねぇ。俺は至って本気だ」

 蜂蜜色の目尻の際まで豊かな睫毛が眼前に迫り、その圧倒的な存在感にどう対処すればいいのかと雲雀は頬を赤らめうろたえる。

「目ぇ閉じて。恭弥」

 年上の彼に言われるままそう従った。

 実際のところ、これ以上ディーノを直視することは不可能だった。

 唇と唇が目的と意識を持って触れ合う。

 少しカサついていたがディーノの唇は思った以上に肉厚で弾力性があった。

 吸っては離れ、また吸われる。

 小鳥が啄ばむようなキスが瞬く間に続き、雲雀はただただ目を瞑ったまま終わりが来ることを待ちわびる。

 息継ぎのタイミングさえもわからずそのまま立ち尽くしていると膝から徐々に力が失われ、軽い酸欠状態になった。

「恭弥…」

 また名を呼ばれ、なにと薄眼を開ける。

「俺とキスして…嫌悪感とか、あるか?」

 彼は何が知りたいのだろう。

雲雀は心のままにかぶりを振るった。

「別に」

「じゃあ、俺以外の奴とキスしたことは?」

「…記憶のない僕にそれを訊くの?」

 馬鹿じゃないと声を震わせ、雲雀はめいいっぱいに強がった。

 なんて愛らしい。なんと意地らしいのか。

 その様にディーノの胸はキュンと締め付けられた。

「どうしたの…?」

腕を強く引っ張られ連れて行かれた先は寝室のベッド。

その上にボスンと音がするほど強引に身を押し倒されスプリングが弾んだ。

「なに…」

ディーノの行動に呆然としていると、彼はサイドボードの上に置いていた内線電話の子機を取って部下に連絡をとった。

「ロマ、俺だ。午前中の仕事、出られそうにねぇ。ああ、恭弥も一緒だ」

 早口に用件を告げる。

 今日のスケジュールはオフィスでの執務だけだったことを確認してディーノは一方的に電話を切った。

「待たせたな」

「別に…待ってない」

 逃げようと思えば逃げられたはずだ。

 だが、そうせずに大人しく待っていてくれた雲雀の律義さというか、据わった度胸にさえも愛しさが募る。

「もし、俺と同じ気持ちなら、ずっと我慢していたことをこれから恭弥にしたい…」

 甘い蜜の囁きと共に再び唇が降りてくる。

Ti amo」

 ビクンと大きく肩が揺れた。

「いま…」

「愛してるって言った」

「なんで?」

 問うその声は知らずと震えていた。

「昨日、どうして急に機嫌が悪くなったんだ?」

 質問に質問で返され雲雀は都合悪そうに口を噤んだ。

「――知らない」

 雲雀はそれきりだんまりを決め込む。

 そんな様を上から見下ろしていたディーノは穏やかに微笑んだ。

「俺は初めて恭弥に出会ったときから惹かれていたよ」

「!」

 恭弥はと逆に訊ね返され、胸がざわついた。

「恭弥は俺のこと、どう思ってる?」

衣服の上から胸を撫でられ「どうって…」と身じろぐ。

 声をくぐもらせる雲雀にこれまでにないくらい慎重に優しく声をかけた。

「大丈夫だよ恭弥。ここには俺とお前しかいない。だから、俺にだけこっそりと教えて?」

 好きか、そうでないのか。

 友人としてではなく、恋愛感情からみてどう思ってくれているのかを。

 これまで溜まりに溜まった思いがすべてぶつけられていた。

 雲雀はこれまでにない緊張感に体を戦慄かせながらも、視線を彼から反らせずにいた。

「……じゃない」

「恭弥?」

「嫌いじゃないって言ってるんだ…!」

 声を大きく立てて言い切ると、それ以上の追及の声は飛ばなかった。

 目をきつく瞑り、胸の鼓動の高まりが鎮まるのを待つ。

Grazie

 ありがとう。自分を選んでくれて。

 本当に嬉しそうにディーノは感謝の意を述べた。

 それでも緊張感を払拭できない相手にディーノは言葉を一つ一つ大切に重ねていった。

「酷くはしないから、怖がらないで」

「別に怖がってなんかないっ」

 そう強がる割には語尾が荒れていた。

「そっか? それなら、いいが…」

 にんまりと笑うその顔は意地悪いもので癇に障った。

 それから彼の節張った長い人差し指が近づいてきて、雲雀の鼻筋にムニュと軽く押し当てられた。

「服、脱がせてもいい?」

「僕を裸にしてどうするつもり?」

 発せられた声には明らかに動揺の色が激しく見え隠れしていた。

この歳でまだ経験がないのか。

まさかという考えが脳裏を掠めたが、奥手な日本人ならばありえる話しだと狼狽しているいたわしい姿を見てディーノは追及することをやめた。

 性行為における無言は了承だと経験上捉えているディーノはまず割烹着を脱がせ、それから彼のタイを解き、そして襟元を大きく開いた。

 シルク百パーセントのシャツの合わせ目から露わになったのは、上質のきめ細やかな肌だった。

 浮き上がった鎖骨のイランがやけに色っぽい。

(やらしいな…)

 視覚的に訴えるものは鎖骨以外にもあった。

 ツンと尖りをおびはじめた乳首は綺麗な色をしていた。

「…っぅ」

 予告もなく乳首に指先が落とされ、それからすぐに離れた。

「ここにキスしていい?」

「な…」

 なに言ってるのと戸惑う視線とかち合う。

「キスする場所はなにも唇だけじゃねぇんだよ」

 知っていたかと意地悪く問われ、恥じ入るように横を向く。

 ふっと緩く笑うと胸に顔を添わせている所為か、生暖かい吐息が胸をくすぐる。

 それだけで緊張していた胸を更に震わせ、黒髪を無意識にパサつかせた。

「じゃあ、キスするな」

 無言は了承の意。

 不本意ながらも雲雀は胸を舐めとられていった。

「あ…」

 舐めては吸われ、舌先で突起物を転がされる。

 それだけで雲雀の下半身に熱が集中した。

 ズキズキと疼きを増して、苦しいと啼いた。

 ディーノが胸にキスしたかったのはどうやら本当のようだった。

 ベトベトに唾で照らされるまで舐めとられキスされて、息つく間もなく今度は「触っていいか」と問われた。

「触るって、どこを?」

 一々詳細に訊ね返され、ディーノは困惑の笑みを口許に浮かべ、精神的に幼い雲雀をどうフォローしようかと見下ろす。

「胸とか、肌を触って確かめてみてぇ」

 どう上手く繕ったとしても、雲雀の心は誤魔化せない。

 ならば本心をぶつけるのみだとディーノは取り繕うことをやめた。

「恭弥に触れて、言葉では伝えきれない気持ちを感じてほしい」

「気持ちを?」

 かっちりと嵌めらたボタンをディーノは脅えさせぬよう、ゆっくりと丁寧に一つ一つ外していった。

 結果、ワイシャツはすべて寛げられて、冷たい空気が肌を撫でた。

「いいか、恭弥?」

 両手をシーツの上に縫い止められたまま問われ、これでは他に選択の余地はないではないかと仕方なく雲雀は頷いた。

 触るのは少しだけだと曖昧な妥協案を提示し、ディーノは母国語で感謝を唇にのせた。

 了承後、すぐに両手で勃った乳首を摘ままれて驚きの声をあげた。

「いやだった? 気持ちよくなかったか?」

「…わかんな…い」

 くりくりと軽く捩じられ、指の腹で先端を捏ねられた。

「あぁ」

 そぐっと身体が震え、やだそれと黒髪を散らした。

「これは? 気持ちいい? なぁ、恭弥?」

 伊達に色男と呼ばれているわけではない。

 方やディーノは下にいる愛しい人を気持ちよくさせることに必死だった。

 そんな彼に対して雲雀は零れ落ちそうになる喘ぎ声を噛み殺し、コクコクと素直に感情をあらわした。

「あなたに触られると……変になる」

 まるで自分が自分でなくなるみたいだと不安がる雲雀に「好きだからな」と、言葉を伝えて更に行為をエスカレートさせていく。

 撫でるように、霞めるようにして触れていた胸の愛撫を確かなものへと変化させてゆく。

「俺だから感じてくれているんだろう? 恭弥、またここにキスしていい?」

「は、あ…」

 切ない吐息が零れた。

 右胸は摘ままれたまま、反対側の左胸に吸いつかれる。

 どうしてまたこんなことをするのかと訊ねれば、ディーノは鼻で笑った。

 男は本能的に胸が好きなのだと言って、果たして彼は信じてくれるのか。

「恭弥が好きだ。ほかの場所もキスしたり、触ってもいい?」

はぁはぁと息を上げる雲雀に更なる願いを口にする。

酷かとも思ったが乞わずにはいられない。

「…ぅ」

またしても雲雀は無言だったのでディーノは了承と見なし、首筋やあばら、耳の付け根にも丁寧にキスを施した。

「少し、腰を浮かせて」

 ベルトを外されズボンを引き抜かれると、それらをベッドの端へと放り投げる。

 いよいよ切なくなって震える中心をディーノは下着の上から撫でてやり、恥じ入る雲雀の反応を窺った。

「食べていい?」

 今度はどこをとは訊いてこなかった。

 これから食まれる場所である中心はすでに染みをつくっている。

 男としても辛いところだろうと察したディーノは返事を待たずに下着を脱がした。

 勿論、抗議の声は上がらない。

 果実の皮のように剥かれる間、雲雀は大人しくじっと息を凝らして羞恥に耐えていた。

 ここまで段階を踏むと、次はどこにキスされるのか、どこに触れられるのか自ずとわかってしまうものだ。

 期待に膨れる中心は痛々しいくらいで、蜜を先端の窪みから溢れさせていた。

 ぐっと目を閉じていると、先端にチュと優しくキスされた。

「ふあぁっ」

 熱い吐息が、ふやけた女々しい声が脳髄を振動させた。

 啄ばむように吸われ、細腰が自然と浮いた。

 不安定に揺れる腰をディーノは両腕でしっかりと抑え、今度は深く貪る。

「あー」

 ビクンと跳ねる幹をスライドし、たっぷりと口内で堪能したあと唇を外して遊戯に移る。

「ディーノ、ディーノ…っ」

 中途半端な優しさなんてほしくはなかった。

 執拗に親身になって掌で扱かれる快感は例えようもなく、雲雀はすすり泣きながら浅ましく腰を揺らし続けた。

「あ…、う。ん…っ。ふあぁ――」

 容赦なく扱かれていくうちに胸も切なく尖り、男に触れてほしいと張りつめ始める。

 それはディーノの目にも美味しく映り、つい欲が出てしまう。

「恭弥、まずはこっちな。ここを抜いてやったら、すぐに胸も愛してやるから」

 両足を左右に開いたまま、コクンと頷く。

 あばら骨に覆われていない柔らかな下腹の部分がビクンビクンと震え、それから呆気なく果てていった。

「たくさん出たな」

 それは気持ち良かった証しでもあり、腹部や胸にまで飛び散った白濁を見て「やだ」と幼く駄々をこねた。

 それからすぐに胸を愛されて、雲雀ははしたないと思いつつも淫らな声を紡いでいった。

 淋しかったのだと主張する乳首をあやすように舐め、やはり最後は両手でたくさんたくさん弄られて泣き入った。

 ディーノに可愛がられてゆくうちに再び中心が熱くなってゆく。

「気持ちよくなっているところをごめんな。今度はこっちに集中して…」

 お尻の奥に潜まった小さな穴の入口をディーノは指先でなぞった。

「ここに挿入れたい…。可愛い恭弥を見ていたら、もう我慢できそうにねぇ」

 ガウンを留める腰紐をディーノは解いた。

 音もなく合わせ目は左右に割れて、彼の逞しい肢体が眼前に広がる。

 何よりも目を引いたのは威きり勃つ雄々しい棹だった。

 国や人種が異なるとスケールが違うというのは本当だった。

「恭弥が欲しい。挿入れていいか?」

 怒張する想像以上に大きさに泣きたくなった。

 恐らくこれから彼が及ぼうとする行為が最上級の愛情表現なのだろう。

 こんな小さな壺に収まる筈がないと思いながらも、それを実現させようとする男に雲雀は大人しく従った。

「待ってろ」

 ディーノはサイドボードの引き出しからローションの入ったチューブを取り出す。

 左右に大きく足を開かされ、指にのせたローションを慎重に内部へと塗りこんでゆく作業は根気と長い時間を要した。

「あっ、あっ」

 ぐちゅぐちゅと挿入を繰り返す水音。

 内壁をディーノ長く節張った指が後ろの口を出入りするだけで、きつく男の指を締めつけてゆく。

 これはまだ本番ではないというのに自制が利かず、雲雀は早くしてと無実な彼を責め立てる。

「もう、いいか…」

 頃合いだと見極め、十分に解きほぐしたあとは男を受け入れるのみだった。

「っく」

 ローションで痛みを緩和されたといっても、挿入するときの圧迫感はすんなり堪えることができなかった。

身を押す圧力が加わりながら、少しずつ雄が侵入していく。

「あ…、くぅ。恭弥のなか…熱くて、気持ちいい……」

 締めつけ具合も最高だと、嬉しそうにだが額に汗掻きながら言う男に「ばか」と悪態をついてみせた。

「ゆっくり動くから」

「ん…」

 行き場のない両脚をディーノの腰に絡ませる。

 しっとりと汗ばんだ体と体は引き合うように下半身が密着し、ドクドクと脈打つディーノの存在を雲雀は間近で感じていた。

「やっぱり、無理。ディーノ…」

 すべて収まったところで、それはない台詞だった。

 壊れると不安に細い身体をぶるぶると震わせていた。

 可哀そうだと思ったが、もう後には退けない状況にまで持ち込んでしまっていた。

「恭弥、好きだよ」

「…ディ…ノ」

 最中に何度も紡いだ台詞だと雲雀は頬を薔薇色にして涙を滲ませた。

 ほんとうに僕のことを?

「あ…っ」

 ズンと重くディーノの腰が動いた。

「あぁっ」

 今度は立て続けに二度突かれ、それから三秒ほど間を置いて小刻みに揺すり始める。

「あ――…。ディーノっ」

 動かさないでと苦しげに顔を歪ませる。

 だが、一度走り出した車と男は止められない。

それは不可能な願いであった。

「ん、ん、ん…」

 ローションの滑りを利用して蜜口が泡立つ。

「はぁ…、やぁ…」

 角度を鋭利に、より深くして悦楽を貪る。

 呑みこみきれなかった唾液が唇の端から伝わり落ち、完全に力を取り戻した雲雀の幹がひとりぼっちで揺れていた。

「あん…。ディーノ」

 蜜を溢れさせる先端がディーノの腹で擦れ、気持ちいいと雲雀は小鳥のように啼いた。

 啼きながら何度も何度も突き上げられ、思考もぐちゃぐちゃになっていく。

 たくさんディーノに泣き顔を見られ、もう生きてはいけないと顔を伏せた。

「ひっ…、あ…あ…、そこ……らぁめ…」

 ついには呂律がうまくまわらなくなり、可愛いと喜ばれてしまった。

 もうなかはディーノでいっぱいで、左右前後、どこを突き上げられてもばかみたいに声が出た。

「恭弥、好きだ…」

「あ……、も……っ、あっ」

 頭が真っ白になっていくなか、雲雀は意味もよく吟味せぬまま突いて出た台詞を彼に伝えた。

 すると、ディーノはとても幸せそうな顔をしてくれた。

 それだけで、雲雀の心も体も満たされていく。

「あっ、あ…、変…っ。もう、ヘンになる…ディーノっ」

 ディーノと自分の間で擦れ涙をトロトロと零すソレを堪らずに掴み、自らの手で扱き始めた。

「もっと腰を落として。手はもっと下、わかるか? その付け根のあたりを交互に触ってみて…」

 ポンプの役目を果たしている袋を言われるように揉みしだいてみた。

 もう、我慢の限界だった。

「動きをあわせて」

「むり…」

 あなたがして。

 泣きじゃくりながらも身体はディーノを感じ、いいとか、だめだとか、散々ディーノを困らせながら吐精を果たした。

「たくさん出たな」

「…やだ」

 消え去りたいと願う雲雀に「俺もそろそろ…」と、顔を歪めてグラインドを深くする。

「――ん、あ…っ」

 お腹が苦しいと切迫感に顔を歪ませる。

 薄く張った膜の下、本来ならば受け入れる器官ではないそこに侵入を果たし、ディーノは有らん限りの情熱を降り注ぐ。

 顎先から滴る汗がシーツに落ちては染みを残す。

 ありったけの思いをのせ、喘ぎ啼く雲雀を掻き抱いた。

「愛してる」

 お前は。

 お前はどうなんだ、恭弥?

 息衝く彼に熱く絡みつき収縮する器官。

 それを答えとして受け取って良いのだろうか。

 間もなくして、ドクンとお尻の奥で熱い彼の思いの丈が放たれて、雲雀はあまりの熱さに目が眩みベッドへと沈んでいった。

 

 

 

 

 



 ようやく一つの鞘におさまったふたり。
 年上としてこれからも雲雀をリードしてほしいものです。へたれんようにね。