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条件付きでディーノは雲雀と一緒にイタリアで住まうことを許可された。 その条件とは、これまで通りディーノは雲雀の家庭教師として鍛えろということだった。 『お付き合いに関しましては…おふたりの意思を尊重します。ですが、結婚となると色々とボンゴレ側に障害がありますので、すぐにとはいきません。ヒバリさんが十八歳になるまでは時期尚早かと。ですから、現段階では婚約中というかたちで、あまり外には触れまわらないようお願いできませんか?』 綱吉の意見は最もだったので、今は納得するほかなかった。 ディーノは綱吉の寛大なはからいに感謝し、同盟ファミリーとしてより一層の忠誠を誓った。 そして僅かばかりの荷物を鞄に詰め、雲雀は長年住み暮らしたボンゴレ邸を離れ、ディーノが滞在しているホテルへと向かった。 ホテルに戻るとどっと疲労感が押し寄せてきた。 それは雲雀も同様だった。 リビングの長椅子にぐったりと腰かけ、背中同士を預け合う。 「これでやっとイタリアに帰れるぜ…」 ディーノは感慨深く呟き、大きな体を伸ばした。 一方の雲雀は眠気で漆黒の眼を蕩けさせている。 ディーノは小さな体を抱き上げ寝室のベッドまで運んだ。 ベッドの上に下ろすと、両手、両膝を付いてその小さな体を上から覆うと、額にキスを一つ贈った。 「これからは、ずっと一緒だぜ」 「そのようだね…」 「そのようだねって、お前、他人ごとみたいに言うなよな…」 ここまで話しを持ってくるまで、どれだけ俺が苦労したことかとディーノは項垂れた。 それでも幸せだった。 満ち足りた微笑みで男は愛を紡ぐ。 「おやすみ、恭弥。良い夢を」 恋人を寝かしつけたあと、ディーノはフルーツとシャンパンを部下に部屋まで運ばせた。 ボンゴレ邸での予期せぬ出来事で、胸がいっぱいになったディーノと雲雀は夕飯をとってはいなかった。 ディーノはベッドの背凭れに上肢を預けると、サイドテーブルに積んである急務を要する書類に目を通し始めた。 「こんな時間まで仕事かよ。明日は帰国だろう。あんたもいい加減、休んだらどうだ?」 今日は色々とあって疲れただろうと気遣うロマーリオにディーノは返した。 「この書類だけは早くイタリアに送らねえとリコの奴がな…」 財務担当の男の名を聞いて、ロマーリオは妙に納得した。 小柄で目つきの鋭い、でもディーノを敬愛している氷のような男。 彼がイタリアにいるからこそ、ディーノも安心して世界中を飛び回っていられるのだ。 「あいつに日本の寿司を土産に持って帰ってやらねぇとな」 「そうだな。リコの奴、毎回ボスが日本に行って寿司をたらふく喰ってるんじゃねぇのかって、羨ましがっているからな」 クリスタルガラスに盛られた皿から苺を一つ摘まみ、口の中に放るとディーノはシャンパンで流し込んだ。 ロマーリオはまだその場に立ち留まっており、物言いだけに主を見ていた。 「なんだ?」 「いや。あんたも尽々、色んな奴に慕われているよな。厄介事を自ら背負い込むのも好きときた」 そう呟いて、ディーノの隣で寝息をたてているやんちゃ坊主の寝顔をみやった。 「まさか、野生ライオンの子供にまで好かれちまうなんて…な」 含みのある最後との一言にディーノは聞き捨てならねぇなと右の眉尻を上げた。 「調教師になれって言ったのは、どこのどいつだよっ」 今更、リセットはきかない。 雲雀と出会わなかった頃には戻れない。 これからは雲雀を守る。 雲の守護者として立派に鍛えてみせると覚悟を決めて生きて行くだけだと、はしばみに強い決意を灯した。 「結果的に、これからもお前には苦労をかけることになっちまったな」 「後生だぜボース。俺たちは何があろうと、あんたについて行く。ただ、それだけのことだ」 「ロマーリオ…」 感謝は敢えて口にはしなかった。 それこそ、後生というものだから。 仕事を終わらせたのは日付が変わって間もなくだった。 出来上がった書類を部下に渡した後、ディーノは大きく伸びをしながら雲雀の眠るベッドのなかに潜り込んだ。 (並盛から離れて…、恭弥の奴、大丈夫なのか?) ホームシックになりはしないかと懸念するディーノを余所に雲雀は気持ちよさそうに眠っている。 考えれば杞憂などあとからあとから湯水のように湧いてくる。 (今から考えてもしゃーねぇか…) ホームシックになったらそのときだと、ディーノはぐるぐると回る思考をピシャリと寸断させて、眠ることに専念することにした。 そして、抱き心地の良い小さな身体をそっと抱き寄せた。 「ディ…」 「ん。わりぃ。今ので目が覚めたか?」 そっとしておくべきだったと反省する男に雲雀は少し前から起きていたと返す。 丸く滑らかな甲で目を擦る姿に愛おしさを募らせ、「寂しくて眠れなかったのか」とからかい、頬に唇を落とした。 「なぁ、恭弥」 猫のように背を丸めている雲雀は何と言葉を返す。 「イタリアに渡ることの意味、本当にわかってんのか?」 「どういうこと」 「住み慣れた並盛から遠く離れることになるんだぞ。寂しくねぇのか?」 真剣に問いかける男に雲雀はあふと欠伸をひとつする。 「…あなたを噛み殺すまで並盛に帰るつもりはない」 「恭弥?」 「僕は強くなるためにイタリアへ行くんだ。勘違いしないで」 あなたのためじゃないと、強調して言う傍から眼の端が赤い。 イタリアへ渡る理由なんて、どうでもいいことだった。 この子さえ傍に置けるのならば。 「恭弥…」 「ん…。ディ…」 唇にキスされながら、パジャマの上から乳首を摘ままれた。 「あ…」 巧みな手腕に胸を戦慄かせ、爪先をビクビクとさせた。 散々、胸を弄られて唇を解放された。 「安心した。向こうに着いた途端、並盛に帰るなんて言い出されたら堪ったもんじゃねぇからな」 「僕がホームシックになるとでも思っていたの? 子供扱いしないで」 盛大に不機嫌さを露わにさせる子供に「悪かった」と詫びて、体にまわしていた二の腕に力を込めた。 「子供扱いしてねぇ。その証拠に子供にはこんなエロいことしねぇだろ?」 的を突かれて、雲雀は知らないとそっぽを向く。 「これからは大人の時間だ――」 「あぅ…」 パジャマの胸元を左右に割られ露わになった乳首を吸われた。 ちゅぷちゅぷと音を立てながら尖る双方を等しく愛され、雲雀はひっきりなしに鳴いた。 小さなひな鳥が腕の中にいる。 それを押し潰さないよう細心の注意を払って男は抱きしめた。 「ディーノっ」 少年の身体は大人の煮えたぎる欲望を受け止められるまでに開発された。 ヒクヒクと内壁の襞が艶めかしく蠢き、突き入れた男を卑猥に誘う。 子供はどこまでも潔癖で純粋そのものなのに、ひとたびなかを味わえば、内に隠れる魔性を見出すことができる。 ディーノはその魔性の虜となった。 毎夜彼を愛して、己の刻印を内に刻みこむため腰を打ちつけた。 プライドの塊である雲雀はディーノの前でだけ高貴なその面に涙を滲ませた。 細腰を荒れ狂う嵐のうねりのように大きく揺す振られ、男の欲望の丈を思い知らされる。 大人の手にかかれば雲雀もただの子供だ。 本気で逆らえるわけがない。 何度も精を最奥で叩きつけられ、男の深い愛情を身体の隅々まで思い知らされる。 「…愛していなかったら、あなたは僕をボンゴレから引き取ってはくれなかった?」 「あれはリボーンのうった芝居だろう?」 まだ根に持っていたのかと行為を一旦止め、ディーノは汗ばむ雲雀の肢体を撫でた。 「ばかだな。ほっとくワケねぇだろう。恭弥は俺の可愛い大事な教え子だ。記憶喪失のお前を拾ったときだって、ボンゴレの関係者だったなんて知らなかった。打算無しに俺はお前を助けたよ」 不安に揺れている漆黒の瞳を真正面から覗き込み、ディーノはやわらかに笑んだ。 「恭弥は俺の気持ちを疑っているのか?」 「違う…っ。あなたの心は僕しか見ていない。だけど…」 「だけど?」 「ただ、確かめてみたくなっただけ」 「そっか。それならいい」 小さくそれだけを呟くと雲雀は男の首に腕をまわし、ギュとしがみついた。 「早くシテ…」 それが合図となって、ディーノは再び腰を前後に動かしはじめ悦を貪る。 相変わらず恋人は疑い深く、人の言葉を素直に聞き入れてはくれない。 普段は横着で不遜な態度の癖にこんなところは謙虚で怯えてばかりで、思わず笑ってしまいたくなる。 「可愛い。全部食べちまいたいくらい」 「ふぁ…っ」 勃ちあがった幼い性がふたりの腹の間で擦れ、愛液を迸らせる。 「やんちゃだな。ココはもう少し…慎みを覚えなくては」 射精感に恍惚としている雲雀を追い立てるように、トロンと蕩けきった性器を手にした。 「いじわる…しないで……」 緩々と再び扱かれながら雲雀は透明な涙を流した。 上で、もっと愛してやるよと、太陽の人が輝いていた。 「ディーノ……」 「ん?」 「好き――」 聞き取れぬくらい小さく愛を囁く。 ディーノは気まぐれな囁きを取りこぼすことなく聞き取っていた。 「俺もだよ。恭弥」 そして、ふたりは深く愛し合った。 国籍や歳の差、互いの立場などもう、そんなものは何の妨げにならない。 「ア……、ンっ」 体位を変えて何度でも、愛のかたちを模索する。 震える性器を上から下まで隅々愛され、緊張する筋を指先でなぞられた。 堪らないと黒髪を振り乱しながら、仔犬のように甲高く鳴いて男を夢中にさせた。 吐精し過ぎて性器の感覚がおかしくなり、ぬるぬるでぐちゃぐちゃだ。 たくさんなかを擦らせ、吐きだされても尚、男に愛され続ける。 「も…、無理…。お願い……」 「ごめん恭弥…」 お前を愛したいんだ。 底の見えない貪欲さに圧倒され、雲雀は泣きじゃくりながら肉棒を感じる。 大きく太く膨れあがる一物に征服され、言うがままに腹を見せ脚を開く。 毎日毎晩、イタリアへ渡ってからも、ずっとディーノと一緒にいるという裏に隠された意味に初めて気づいて雲雀はうろたえた。 ただでさえ体の規格が違うというのに、蚊帳の相手がどこまて務まるのか、雲雀には自信がなかった。 雲雀の異変に気づき、ディーノは「これで終わりだから」と腰を軽く揺すった。 「あ――……」 最後に熱く思いの丈を迸らせ、雲雀はやっと終わってくれたと全身から強張りを解かした。 空港からはキャバッローネが所有する自家用機で飛び立った。 十三時間という長時間のフライトをディーノは新婚旅行に出発する花婿のように満喫していた。 「きょーや、こっちだ。こっち!」 「うるさい。今、行く」 トイレに行って来た雲雀が少し遅れてタラップを上る。 日本を発つ日も雲雀は並盛中の旧制服に身を包んでおり、強い横風に制服の裾を棚引かせていた。 飛行機に乗り込む際、雲雀は一度立ち止まると振り返り、日本の空を見上げた。 これから当分の間は見ることが叶わないであろう故郷の空を。 大きな希望と小さな不安が大波小波に押し寄せる。 (またね。僕の並盛…) 別れを告げた雲雀は迷うことなく飛行機に乗り込み、陽気な金髪イタリア男の待つ座席へと向かう。 「おせーぞ、恭弥。なにしてたんだ?」 「…情緒のないあなたには一生かかったってわからないことだよ」 窓際のシートに勧められるまま落ち着き、雲雀はフゥと息をついて窓の外を見やった。 間もなく自家用機は離陸し、雲雀は生れて初めて雲の上に出た。 今日は天気が良く、白くモコモコとした雲が視界一杯に広がり、パステルブルーの青空が天国のように映った。 機内では前方にディーノと雲雀が座り、かなり離れた後方に黒服たちが陣取って座っていた。 ディーノは機内での過ごし方も慣れた様子で、ロマーリオが持ってきたイタリアの新聞に目を通している。 一方の雲雀もいつまでも窓の外ばかり見ているわけにもいかず、前に座りなおすとタイミングを見計らって黒服が紙コップに注いだ紅茶を雲雀に手渡した。 「飲み物はココに置くんだぜ」 フライトは決して安定したものではないから、何かの拍子に熱い紅茶が膝の上に引っ繰り返ってはいけないとディーノはシートのサイドにある丸い窪みの穴に紙コップを嵌め込ませた。 持参した文庫本を読む傍ら、ディーノが用意してくれた好物のピンクシャンパン・トリュフを摘まみ、紅茶を啜る。 「イタリアでの生活が落ち着いたら、トリノに連れて行ってやるよ」 「トリノ?」 聞いた事のない地名だ。 開いた本のページから視線を上げる雲雀にディーノは微笑みかけ、トリノはチョコレート発祥の地なのだと教えてやった。 トリノは嘗てサヴォイア王家のお膝元、数多くの菓子職人が保護された歴史があった。 チョコレートはこの町から広まったという所以を簡単に説明して、雲雀は「ふぅん」と少なからず関心を示した。 「トリノだけじゃないぜ。フランスにベルギー、ちょっと遠出をすればイギリスの…恭弥が今食べているそれ、ピンクシャンパンのトリュフを扱っているショコラトリーにも連れて行ってやるぜ。あそこは王室御用達の老舗だ」 「あなた、僕を虫歯にするつもり?」 呆れ顔で笑う雲雀に「やっと笑ってくれた」と男は安堵の笑みを零した。 「並盛もいいところだったけど、俺が生まれ育った港町も空気が美味くて自然が多くていいところだぜ?」 きっと恭弥も気に入るはずだと、その不安な心を見透かすようにディーノは小さな肩を撫でてくれた。 チョコレートよりも甘ったるい微笑みにクラつきながら悪態をつく。 「もう僕がホームシックにでもかかったような言い方、しないでくれる?」 と強がる子供に詫びながら、紅茶のお代わりとワインを部下に頼む。 それから、運んで来たワインを片手に雲雀と映画を鑑賞した。 日本土産として買った邦画のDVDだったので、雲雀も不自由なく見て楽しむことができた。 映画の内容はハードボイルドに大人の恋愛要素が絡んだもの。 集中して見るわけでもなく、流すように暇を潰した。 どんなときだって、ディーノは隣に座っている幼い恋人のことが気になって仕方なかった。 「どうした?」 やたらと長いラブシーンに息が詰まる雲雀の手を握って機嫌を量る。 「ビデオ、飽きてきたか?」 「…別に」 ディーノはワインのつまみとなるチーズを少し齧っただけで、その後は恋人を膝の上に手を乗せて甘いひと時を過ごす。 「場所をわきまえなよ」 部下たちは婚約したばかりの主たちを気遣って距離を置き、後方で賑やかに酒盛りをしていた。 背後から首筋に口接けられながら雲雀は身を捩った。 「俺が呼ばない限り、部下は誰もこっちには来ねぇよ」 そう告げて、雲雀の両脇に手を差し込み抱え上げると、自らの膝の上にストンと座らせた。 「だから、安心しろって」 「噛み殺す…」 焦りをおびはじめた声に「素直じゃねぇな」とほくそ笑む。 「テレビでも見るか?」 ディーノはモニター画面を切り替える。 スピーカーから流れてくる異国の言葉。 英語だということはわかったが、キャスターが喋っている半分以上の単語を雲雀は理解することができなかった。 ディーノは十三歳という異例の若さで跡目を継ぎ、二十歳を迎える頃には語学が万能だったという。 (真面目に授業に出ていればよかった…) このときばかりは、ほんの少しだけ授業をサボったことに後悔を覚えた。 大きく節張った手が己の甲に重ねられている。 温かで優しく包み込んでくれる手。 上手くやっていけるのだろうか。 らくしもなく、ほんの少しだけ雲雀は不安を覚えた。 言葉の壁や文化、生活習慣の違い。 考えれば幾らでも杞憂は浮かんでは消える。 雲雀は無言のまま男の胸に頭を擦り寄せた。 彼なりに精一杯、甘えている。 最後にディーノは口接けをして、そっと唇を離した。 「おやすみ」 次に目覚めたとき、お前の新たな生活が待っていると頬を優しく撫でてくれた。
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