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この世の果てで 闇夜に目が慣れてきた頃、少年は湖が広がる深い森の奥底を歩いていた。 (僕はいったい…) ここで何をしている。 誰がこんなふざけた余興を? 進めと、本能がそう言うのだ。 それまでは湖の外周を歩くばかりだったので、試しにと蔦の上に足を置いてみた。 「僕、ひとりくらいなら平気そうだね」 湖の上を歩くなんて、滅多にできない体験だ。 少年の瞳に好奇心の光りが燈り、綺麗に引き結ばれていた唇の端がつりあがる。 タン。 走る姿はまるで水辺を飛ぶ水鳥のよう。 『それで、並盛一だって?』 井の中の蛙だなと、彼はやゆる。 『全く追いつけてないじゃねぇか』 「………っ」 癇に障る嫌な声だった。 あのときの屈辱も、彼の顔すら思い出したくない。 (――ろ。消え失せろ…) かぶりを軽く振るって、きつく前を見据えた。刹那、ガクンと左足の反応が遅れた。 「なっ」 少年は我に返り、後ろへと引きずられていく左足をまるでコマ送りを見ているかのように見届けた。 (あいつの所為だ…) 低く呪ったのと同時にバシャンと勢い良く水面が弾けた。 体勢を崩した体は盛大に転んだ。 (最悪だ) 少年はうつ伏せになったまま拳を地に突きつけた。 (一体、ここはどこ?) 思い出すのは、あの男の言葉ばかり。 薄い目蓋一枚を通して、感じる光りの存在感。 花だ。水辺に浮かぶ一輪の太陽。 少年は言葉もなくただ魅入っていた。 ―――その花を何と呼ぶのか知っているか? 不意に胸がチリと熱くなった。 「こんなときに…」 長い歴史と伝統を受け継ぐ血塗られた指輪。 「知らないよ。そんなこと」 嘘だ。本当は知っている太陽の花の名前。 しかし、少年は頑なにその花を拒む。 そう、この花はとてもあの男に似ていたから―――― |