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暗雲立ち込める 夢のようだと綱吉は思った。 「ツナ君。次は駅前の雑貨屋さんだよ」 「あ、うん!」 京子のほっそりとした指には白茶色のメモ用紙。 暇を持て余していた綱吉はクラスの女子たちから荷物持ち言い渡された。 「忙しいときにつき合わせちゃって本当にごめんね。ツナ君」 「ううん。いいんだ。俺のする仕事なんて、獄寺君が率先して片付けちゃうし。それよりも、京子ちゃんの役に立てて俺は嬉しい…なーんちゃって」 漸く紡げた自分の気持ちだったが、一方の京子は掛かってきた携帯電話に出たところで、綱吉の話しなんて聞いてはいなかった。 相変わらずの要領悪さにもめげず、綱吉は電話を終えた京子に「どうしたの?」と努めて明るく問うた。 「うん。買出しの追加を頼まれたの」 「そっか。だったら、日の暮れないうちに買い物済ませて、学校に帰らないと」 「そうだね。急ごう。ツナ君」 傍から見れば仲睦まじい中学生カップルに見えるのだろうか。 見知らぬ不良たちが因縁をつけ、金を出せと脅しをかけている。 (これって、いま並盛で問題になっている例のカツアゲかよ? どうすればいいんだよ。リボーン!) 怯える京子をしんがりに置き、綱吉は小さな体を盾にして不良たちの魔の手から必死に守っていた。 壮絶を極めたザンザスとの死闘と比べれば、他愛もない相手だということは頭では理解していても彼のなかに根付いたダメツナが弱腰にさせていた。 (なんとかしなくちゃ…) 震える拳を握り締め、自らに言い聞かせる。 「おい。人の話しを聞いてんのか!」 「わっ」 「ツナ君!」 痺れを切らした不良のひとりに胸倉を掴まれ、綱吉の足は宙に浮いた。中学生にしては大した腕力だ。 「くる…し……っ」 「やめて。お願いだから、ツナ君を放して!」 嘆願する京子の声にもう一人の不良が振り向く。 「誰か、京子ちゃんをっ」 助けを求めようと必死に辺りを見まわしたが、細い路を往来する者の姿はなかった。 (くっ…そぉ) もがけばもがく程、首元は締まっていく。皺くちゃに乱された綱吉の襟元から、指輪が繋がれた鎖がこぼれ落ちる。 「ん。なんだ? お前、中学生にしては、洒落たモン付けてんじゃねーか」 ちょっと見せてみろと、不良が綱吉の指輪――ボンゴレリングに触れようとしたその時だった。 「最近、並盛の風紀を乱しているという輩は君たち?」 不良と綱吉の間を目掛けて飛んできたのは磨き込まれたトンファー。 パラパラと屑音をさせ、壁にめり込んだソレを見つつ、綱吉はもしやと期待感を込めて飛んできた方向を見やった。 「ヒバリさんっ!」 彼の姿を目にした途端、全身に鳥肌が立った。 裏地に鳳凰の刺繍が刻まれた学ランが風にたなびく。 綱吉の存在などまるで興味を示さず、雲雀の鋭い眼はただ一点、並盛の風紀を乱す輩たちへと注がれていた。 「お前が…雲雀恭弥か?」 不良たちの間で恐れられている存在。誰が呼び始めたのか、畏怖の念を込めて彼は――黒い妖精と言われていた。 「質問に質問で返すなんて、無礼な輩だね」 不機嫌さを増して、雲雀は睨みつけた。たったそれだけで、場の空気が一度下がった気がした。 「雑魚に用はないんだ。君たちの…山猿の大将は誰? さっさと答えないと痛い目に遭うよ」 「誰がそんな脅しにのるかよ!」 犬のようにがなり、拳を構える。乱暴に解放された綱吉は勢い余ってアスファルトに叩きつけられた。 「大丈夫、ツナ君?」 すぐさま京子が駆け寄り、蹲っている綱吉の肩に触れる。 「うん。なんとか。それよりもヒバリさんが…」 今更、彼の強さを疑う綱吉ではなかった。 「あのヒバリさんを怒らせたんだ。ただじゃ済まないよね。あの人たち…」 どちらかといえば、これから捕食される者たちの安否を気に病む口振りだ。 「ふぅん。そんなに噛み殺されたいの。君たち」 どう揺さぶりをかけても動じない雲雀に対し、精神的に追い詰められていく。 「待て。相手は百人斬りをした雲雀恭弥だぞ。ここは当初の計画通りに…」 幾分、頭が切れそうな不良の一人が口にすると、雲雀はフンと鼻で笑う。 「計画…。何だか陰謀めいた臭いがするね」 それはもう嬉しそうになめずりをした。 |