壊された生活

 

 

 

 

 

継母が来てからというもの雲雀の生活はすっかり変わってしまった。

良家の子息として不自由なく生活していた雲雀は、屋敷中で一番狭くて日当たりの悪い部屋に追いやられた。

雲雀のものだった部屋は、継母が連れてきた上の義理の姉たちに奪りあげられたのだ。

もともと雲雀は自分の部屋でひとり静かに過ごすことが好きだった。

静かに本を読んだり、絵を書いたり、刺繍をしたりなど。

一人子だった雲雀はひとりで過ごすことに慣れていた。

外に出掛け、友達と泥んこになるまで遊ぶような子供でもなかった。

どちらかというと大人達の顔色を気にせず、自由勝手に生きる賢い子供だった。

勝手気ままだが内面には強かな強さがあった。

心の濃やかな子で、心の中は深く静かに成長していた。

同じ年頃のどの子よりも物事がよくわかっていし、深い洞察力もあった。

そんな雲雀の心も秘めた天の才も周囲の者は理解ができなかった。

ただ、ちょっと変わった子だと思っていた。

しかし、亡くなった母は雲雀のすべてを理解できないまでも決して馬鹿にせず、そっとしておいてくれた。

『恭弥はほんとうに変わった子ね。そんなに毎日部屋の中で本を読んでいたら体が悪くなりますよ?』

そう言っては部屋に閉じ篭りぎみだった雲雀を外へ連れ、近くの森へと散歩に出掛けていたのだ。

『このお花はねサンザシの花、そしてこちらがハシバミの花……』

雲雀の母は花の名前を良く知っていた。

道端で可憐な野花を見つけては立ち止まり、いつまでもうっとりと花の香りを嗅いでいるような人だった。

情が厚く表情が豊かで常に笑顔を絶やさない、しとやかさの中にも強い芯のあるそんな母だった。

雲雀もそんな母を見ながら育っていき、いつしか誰にも負けない気丈夫さを持ち合わせるまでとなった。

しかし、そんな母がある日のこと、母が重い病に掛かって死んでしまったのである。

唯一の理解者であった母が亡くなり、雲雀はますます孤独になってしまった。

雲雀の顔から笑顔が薄れ、母譲りの美しい顔はみるみるうちに沈んでいった。

皆、やはり雲雀は変わった子だと思ったが、何の害もなかったのでそっとしておいた。

しかし、継母が来てからは一変してしまった。

継母は二人の義姉を連れて来た。

二人ともがさつで無神経な娘たちだった。

継母の前の夫は新興の成金で、継母も義姉たちも贅沢三昧の生活に慣れていた。

お金はあっても教養とは無縁の家庭で、下品で荒々しい生活の空気が雲雀の住む屋敷に充満していくのだった。