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幸せへの約束 雲雀は白く小さな足をゆっくりと降ろした。 ぴったりと吸い付くようにはまったガラスの靴。 ロマーリオは止まっていた馬車に向かって手を上げ合図を送った。 すると、それまで沈黙を守っていた馬車の戸が開いた。 雲雀は我が目を疑った。 馬車から出て来たのはディーノだった。 「恭弥…」 ディーノは足早に雲雀の元へ駆けつけ、その痩せた体を抱き寄せた。 「やっと見つけた…」 「どうして……」 止まらない雲雀の涙をディーノは唇で吸った。 そして躊躇うことなく継母たちの前で熱い口接けを交わした。 「ちょっと、ディーノ…っ」 片足にガラスの靴を履いたままの雲雀をディーノは抱き上げて歩き出す。 「ロマーリオ、後のことは頼んだぞ」 「イエス、ボス」 抗議の声を漏らす雲雀抱いたまま、ディーノは大股で馬車に乗った。 「待って。僕…これから朝ご飯の支度をしなくちゃ…」 身を振り絞ってディーノの腕から逃げ出そうとする。 立派な黒塗りの馬車に座らされ雲雀は困惑した。 「今日からその必要はねぇ」 「ない…って」 あなたと、聞き返した雲雀の耳元へキスを一つ。 「お前はこれから城で暮らすんだ。そんなことはしなくていい」 「お城って?」 ディーノは御者に馬車を出発させるよう命令し、雲雀の目尻にキスを一つ贈る。 「待ってよ。僕、こんな恰好でお城には行けない…」 「ドレスに着替えるか?」 「!」 傍らには雲雀のためにあつらえたのか、何着ものドレスが積み重ねられていた。 「あ…。待って…」 「待てない」 身につけていた衣服を脱がせて行く横暴な手に雲雀は壮大に頬を染めた。 「あっ」 首筋に一つ跡をつけられ鳴いた。 馬車がガタガタと揺れるのを御者とお供の兵士たちは極力気にしないようにした。 一体、中で何が行なわれているのか…そんなのは愚問だった。 「だめ…ディ…ノ…」 硬く立ち上がった胸を弄られながら雲雀は右手にしっかりと握っていたハシバミの枝を覆い被さる彼に見せた。 「恭弥…」 ディーノは穏やかに優しく微笑みかけ、枝を握る雲雀の指にキスを贈った。 そして、細い指からハシバミの枝を抜き取ると、落ちないようにテーブルの上に置いた。 「あん…あ…んっ」 二本の指で中を解きほぐされ雲雀は啼いた。 ディーノの性器は既に反り勃ち、挿入を待ち侘びている。 膝の上に向き合うようにして座らされ、下から久々に貫かれた。 「あああっ」 やっぱりディーノは熱いと雲雀は感じた。 尻の肉を両手で掴まれて、めいいっぱいに中を拡げられた。 馬車の振動だけでも相当なものだったが、それにディーノからも揺さぶりも相乗して雲雀は思いの他、深く彼を感じることが出来た。 「ふぁ……」 小刻みに揺れる腰使いに雲雀は繋がったまま後ろだけでいった。 ドクドクと熱い精液を注ぎ込まれ、クンと甘く鼻で鳴いた。 狭い馬車の中では、膝乗りの体位が一番楽だったのでそのまま行為は続行される。 前しか寛げていないディーノに対して、雲雀は何も身に纏っていない状態で羞恥を呷った。 繋がったまま啄ばむキスを繰り返し、耳元で「愛している」と囁く。 雲雀は腹部まで到達する逞しさを感じながら目尻に涙を浮かべ「僕も」と答えた。 ディーノを締め上げて何度でもイかせてあげたかった。 謝りたいことも山ほどあったが、今はこうしてディーノと繋がることで気持ちを伝えたい。 「きょうや」 ディーノも気持ち良いらしく、恍惚とした表情で向き合う雲雀を見つめていた。 「ん…あっ」 再び熱い迸りを受け止めて雲雀はディーノにしがみ付いた。 ディーノと熱い塊と雲雀の肉壁が絡み合い、まるで一つの生き物のように蠢いている。 「ひ…ぁ」 二度の射精で収まりきれなくなった精液がアナルからどろりと溢れた。 ディーノは満足そうに雲雀にキスをして中から抜き出した。 「はぁ…」 容積が減り雲雀は息を吐き出す。 一方のディーノは感無量といった表情を浮かべていた。
「―――――こうして、王子様と男の子はお城で末永く幸せに暮らすのでした。おしまい」 中庭に青々と茂った芝生。 大きなハシバミの樹木の、木陰の下に黒髪の青年と金髪の小さな男の子が座っていた。 午後の暖かな春の陽だまりの下、本を読み終えた雲雀はゆっくりとページを閉じた。 「ねぇ、お母様。それから、その男の子はどうなったの?」 父親譲りの艶やかな金髪が微風になびく。 雲雀は幼い子供を見つめて「どうしたんだろうね」と悪戯ぽく微笑んだ。 「きっと、この世界のどこかで幸せに暮らしているよ」 「ホント?」 はしばみの瞳をキラキラとさせて、雲雀を見上げた。 「そろそろ、部屋に戻ろう。お茶の時間だよ」 あの人も仕事を一段落させてこちらに向かっている時間だと、雲雀は告げて居心地の良かった芝生から立ち上がった。 すると城内から黄色い鳥が飛んできて子供の肩に止まった。 「ヒバード!」 雲雀譲りの薔薇色の唇を綻ばせて、少年は小さな友達を指先で撫でてやった。 「彼も小腹を空かせているみたいだね。ビスケットとスコーンがあるから、お部屋に連れて行っておやり」 「はーい。……でも、父上はまだ俺のこと怒ってる?」 少年は不安そうに雲雀を見上げた。 「心から謝れば、あの人はきっと許すよ」 「…わかった」 小さな両手から友達を落とさないよう、子供は慎重に歩き始める。 そんな我が子の後ろ姿を見守りながら、やれやれと息をつく。 「前を見て歩くんだよ」 「はーい」 「足元に気をつけるんだよ? あの人に似て君はそそっかしいからね」 「はーい」 「それと、お茶が終わったら、ヒゲ眼鏡の所に行って悪戯したことを謝るように。わかったディノ?」 今度は我が子の代わりに腕の中の友達が「ピー」と返事をした。 城内に我が子が入っていくのを確認すると、不意に強い風を感じた。 雲雀は足を止め、もう一度中庭を振り返った。 誰もいない中庭の中央に青々と葉が覆い茂るハシバミの樹木。 それを懐かしむように雲雀は見つめた。 「お母様、僕は今とても幸せです…」 そんな雲雀の言葉に応えるようにハシバミの葉がざわざわと大きく揺れた。 それは母と交わした約束。 約束を結んでくれたのは一足のガラスの靴と一本の小枝。 今、雲雀は確かに幸福をその手に掴んでいた。 〔完〕 |