書かれた内容は、99.9%が団塊爺の妄想です。本気にしないでくださいませ。念のため

<”と思った”団塊の効用>

「センセ、Pさんの抗生剤。前回、大丈夫だったから・・・今回も」
「アホ言え、2度目がチョー恐い抗生剤。深夜がチョー恐い、スッピンあんた」
「な、なんてことを言っちゃってくれちゃって。しかも、アホなんて」

「そこで、キレないコツを伝授しようじゃないの」
「センセにだけは、教わりたくないコツですけど。んで?」
「美貌に文句を付けられて、ムカッとした時。ムカッとしたに、”と思った”を付ける」

「それだけですかア、ホントにイ。と、不審と思った・・・。あら!ホント」
「そうなんよ、それを付け加えただけで肩から力がふぬけて。ポヤーンと」
「アホクサ・・・”と思った”。あら!ホント。これって、センセがあみ出した?」

「情報番組で、どっかのセンセが言うとった。くよくよしたり、腹が立ったり。
はけ口が何処にもなくて、どうしようもない時にしなさいって」
「んで、最近ちょっとだけキレなくなったMIHIセンセなんですね」

「おうよ。ムカーッ、おどりゃアホかッ!千枚通しを鼻の穴に突っ込むド!と思った。
あんたの目はイボ蛙のイボかッ!ニッパーでこじ開けたろかッ!と思った、みたいな」
「おうおう、やれるモンならやってみんかいッ!と思った、でエエんですね?」

「3段腹隠したって隠し切れんぞッ!諦めて、お縄を頂戴しなさいッ!と思った」
「バカ言っちゃイケナイわ、5段だわさ。センセにだけは言われたくないッ!と思った」
「ナンか、だんだんムカムカしてきたけど。後に引けないな、と思った」

「あたしも、青筋3本だわさッ。命がけよ、ムカッ!と思った」
「ナンか疲れん?と思った」
「夜勤の疲れがどっと出て、帰って酒飲んで充電しなくちゃと思った」

”と思った”は効果はあるけど疲れると思った、午前。

<団塊はpalliative care 特に高齢者>
人の生き死にに関わって、40年以上過ぎた。
黄泉の国へお送りする時に、もし立場が逆だったら?とぼんやり思う。
特に還暦を過ぎた頃から、それが鮮明になって来た。

何時から「終末期」とするかは、悩むが。
「JABCの日常生活自立度区分で、リハビリを行ってもレベルCからBにならないと予想
される時」と言うのもあるし。「自分で水も食事も取れない時」と言うのもあるらしい。

高齢者の終末ケアに穏やかに向き合い、オーダーメイドでそつの無いケア。
型にはまったケアではない、程良い医療と人生の先輩を見送るための心配り?

以前から何故か私を気に入っていて、勝手気ままに自分の都合で通院する患者さん。
いきなりの時間外午後、半年ぶりにご指名で受診はいつもと違う雰囲気。

不安的中の末期癌を発見し3日後に入院、超高齢者で癌末期を併せ持つ方に関わった。
その時に錯綜した色んな悩みを、何かのカタチに出来ないかと図書室へ。

背景は違っていても、何処の施設でも悩みは共通なようで。
それなりの特集号をコピーして、先ずは形から入るべく得意の製本。
マーカー片手に読み進み参考文献もチェックしつつ、臨床研究のプロット模索。

療養病床としての終末ケアを考えているうちに発見したのは、
「palliative care:symptom management and end-of-life care」。
WHOが事細かく、しかも具体的に出来上がった小冊子。

こいつをパクリ、20ほどの文献でMIHI風味で味付け。
我が社独自のパスを行っちゃうかな?と、朧気な脳みそ動く。

終末期を悩む団塊の、午後。

<女子会病棟の団塊>

「ラウンドしたら。ナンで男性バッカ、女性ベッドはもぬけの殻」
悩みつつプチラウンド2を終えて、トイレへ入った途端に後頭部へガヤガヤ音。
すっきりして音の出所の探りを入れれば、嗅ぎ慣れない臭いが流れ出る食堂。

「キャハ、べっぴんじゃん」
「化けモンじゃろ?」のバッちゃま。
「イエイエ、ほれ。鏡。ねー、ねー」

いつもの3倍の人口密度、それだけ車いすも3倍。
「な、ナンやの。この騒ぎ」息を止て突っ込む首。
「あ、センセ。ダメですウ、女子会ですから。んじゃ、次はアイシャドウね」

「ゲホゲホ、咽せるね。この臭い」
「ヤダ、臭いじゃなくて。熟女の香りって、言えません?」
「男はアカンの?」

「女子会って、書いてるでしょッ。センセがそう言う趣味なら、なんとかしますけど」
「キャー、小指立っちゃう−。キャー」
「何がキャーですか。気色の悪い声、出さないで下さいッ」

「しかしナンじゃねー。心なしか、皆さんコーフンしてんじゃん」
「そーなんですよ、大興奮」
「おろ?何事ですか」は、背後霊PTのR君。

「女子会なんて」
「んじゃ、次は男子会ですね。でも男は、あんまり群れるのは好みじゃ無いし。
宴会ですかね−、男子会は」

「柿ピーとかスルメとか、クサヤの乾物とか。臭いを思っただけで、咽せん?
R君の靴下の臭いに負けんぐらいの加齢臭も混じったら、失神するかもな」
「ボクの靴下は、3日目が最高ナンっすけど」

男の加齢臭は女子会の臭いに勝てない、団塊の午後。

<Mg来襲と団塊脳回転>

「センセ、急変ですッ!」「ラジャッ!」が、夜明け前3時過ぎ。
3日前から心不全が悪化して、とっても不安定になった93歳のバッちゃま。
治療の甲斐もなく突然現れた心房細動が、幕を引いてしまった人生。

ご家族は「歳ですから、覚悟してます」ではあったけど。
安らかな表情に子供さんやお孫さんも、「大往生やね」でお帰りになった3時半過ぎ。
寝付けずにiPad2を立ち上げて、確か東北大学医学部の教授小酒井不木。

彼の推理小説ツーツー(パラパラじゃないから)すれば、ますます冴える目。。
文庫本なら蛍光スタンドが必要だが、バックライトで文字サイズも大きくできて。
それよりなにより「無料」ってのが有り難く、読み進む。

ふと脳みそを過ぎる「高マグネシウム血症と徐脈」に、「その頻度?」。
推理小説を10分で読み終えると医局へすっ飛び、顔を洗う前にPCスイッチオン。
Pubmedに教えて貰ったら、それほど多くはなくて。

ネットで調べても、重篤な副作用ならおよそ1億人に15人!
症例報告出来るかもオ、暇つぶしに書いちゃうかもオ、文献検索するかもオ。
ますます冴える目だけど、それについて行けない脳みその回転。冷える足下。
かじかんだ手をストーブにかざし、「今朝はこのくらいにしちゃう?」。

そんな時の「脳回転チェック」は、お決まりのテーブルゲーム。
「あ、やっぱね!今の脳みそは回ってないわ。んじゃ、薄めのコーヒー啜って。
大音量で、カントリーウエスタンなんかぶっ飛ばすぜイみたいな。

訛り米語であることだけワシでも分かる横文字が医局の空気を攪拌する、早朝。

<団塊医者のサスペンス>
江戸川乱歩、横溝正史、松本清張、西村京太郎、山村美沙、夏樹静子、
横山秀夫、東野圭吾と羅列したのを個人的趣味で自己勝手な評価すれば。

乱歩はトリックに凝るか、グロテスクさか、荒唐無稽か。馴染みも深い。
そこへ、おどろおどろしいインネンを加えたのが横溝。
複数のトリックと因縁に、時代背景を味付けした清張。
旅行案内と因縁は内田康夫で、パターン化した刑事局長弟の浅見光彦。
さらに時刻表を絡めた西村、京都の風物詩と言うか京案内みたいな山村。
細かな心のあやを繋げていって、気付けば1本の色鮮やかな糸に仕上げる夏樹。
スピード感が溢れ、本を置かせず一気に読ませる横山は読み終えて疲労感。
サイエンスのトリックじゃモノ足りず、ぶつ切りの糸をちょっと強引に繋げる東野。
(敬称略)

これが、団塊のサスペンス歴に登場した作家の皆さんで。
いずれも映像化されて、どれも視聴率が高い。

ガリレオシリーズ以外は、映像化される前に文字を追っている。
「作品を、どう映像化するか?」は、監督と脚本家の腕次第。
殆どの映像化されたモノは、見終わって失望することが多い。

人それぞれ想像力も感性も違うし、映像化するには色々な制約がある。
俳優・時間・スケール・費用だけでも限界があるから、そこが勝負所。
それで生まれたギャップの大きさで、観客は失望するのだろう。

私がサスペンスを読む時は、2つの勝負で作家と戦う。
半ばまでに犯人を特定するか、トリックを見破るかの2つ。
映像化したモノを見る時は、監督との想像力の勝負だけ。

サスペンスで勝負する、団塊医。

<例えて言う団塊>

「センセ、Pさんなんですけど。吸引の時、ヘンな音が」
「ま、まさか。ピイピイー、ヒャララとか?」
「ナンでそんな楽しい。んなわけ無いでしょッ、例えて言えば・・・」

「ペロペリとか、グッチョッチョとか?」
「ナンの例えですかッ、んじゃなくて。んーと、なんと申しましょうか、んーと。
コップに水入れて、ストローで吹き込んだ。その5倍大きい、みたいな」

「んじゃ、例えて言えば・・・。風呂桶にバキューム管突っ込んで吸い上げた?」
「それほど大きくはなく」
「んじゃ。あんたが風呂の中で5連発の放屁をした、みたいな」

「せめて3連発で押さえて頂ければ、宜しいかと。んでも、違うような・・・」
「んじゃ、生を聴かせてもらってエエ?」
「それしかないですね、んじゃそう言うことで。30秒後に」

病室にすっ飛んで行けば、吸引準備万端状態。
「んじゃ、行きますわよ」
「どらどら」

「あらー、オカシイわア」
「このチューチューは、違うやろ。あとは、あんたの鼻息しか聞こえんで」
「あらー、オカシイわア」

「さっき胸の音聞いて、ミョーな音せんじゃったしイ。んでも、喉の辺りは違った。
乾燥気味の唾液が絡んで、ピーみたいな音。例えて言うなら、スペリオパイプのラ」
「ラよりは、シでしょ?」

「例えて言うなら、調子の悪い聴力検査のピーイの音から3音下がった。みたいな」
「聞けば聞くほど、よーワカラン音ですね」
「例えて言うなら・・・あんたの耳に、千枚通しを3本差し込んだ時の悲鳴。みたいな」

「例えて言うなら、キャーみたいな」
「やってみなきゃ、ワカラン。ハイ、耳」
「例えて言うなら、蹴り一発みたいな」

吸引の音で色々例える団塊の、午後。

団塊の療養病床:手スーリスリの部屋

ここは3人部屋、女性優位長寿がそのまま表れているようにバッちゃま達。
何故か全員担当だから奥からゆっくり攻めて行くのは、いつものラウンド。
何故か全員脳梗塞を患い、何故か全員軽い認知症、何故か物を言うことがない。

「Kさん、ワシ。回診や。今朝はサブかったでー、やたら」に、Kさんの静寂。
「んじゃ、診察な。あ、聴診器引っ張ったらアカンよー」
左手の指で皮膚を摘みつつ、右手の聴診器は呼吸音探索。

「昨日お見舞いに来てたんは、息子さんね?」
ブツブツ言っても返事を期待していない(返事ができない)ので、手首スーリスリ。
少しずつ眉間の皺が浅くなり始め、フッと小さな息が口からこぼれて静寂。

「んじゃ、次はHさんね。今日は熱下がったみたいやね、エかったねー。
点滴したから、皮膚の乾燥具合もマアマアじゃね。あ、聴診器引っ張ったら・・・。
んで、胸の音もエエし。今年もあとちょっとじゃもんなー、速いなー」手首スリスリ。

タレ気味の目が益々タレて、口元が緩んで睡魔が訪れたらしい寝息。
「んで、Zさん。昨日の心電図、マアマアじゃね。年相応かな。
ナンでみんな、聴診器を引っ張るかなー。こんなモン、大したモンやないでー」

聴診器のチューブを持つ指をゆっくり外し、右手首をスーリスリ。
いきなり大きなため息「ハあーッ」1つが、私を驚かせてこの部屋のラウンド終了。

五感の中では活躍することが多い、団塊医の触感担当の手。

<裁判員裁判と団塊「てのひらのメモ」>

裁判員裁判なんて、遙か遠くにある存在と思っていた。
ところが最近、医局の先生が抽選結果でその任に当たる可能性が出て。
一気に身近になった裁判員裁判、本屋で手に取った1冊の文庫本。

幾つかの偶然(?)が重なって、我が子を死なせてしまった母親。
背景に小児喘息と聞けば他人事とは思えず、そのままのめり込む。
通常のサスペンスなら300ページ程度は、2−3時間で読み終えるのに。
夏樹静子作品「てのひらのメモ」は、その倍を必要とした。

主人公と自分を置き換えて読み進み、陳述内容や刻々と変わる状況と背景に立ち止まり。
もし自分ならどう考え、どんな疑問がわき起こるか?を模索した。

男には気付かない女性らしい感性に胸が熱くなったが、それは本質ではない。
常に「これは犯罪なのか?」や、「有罪になったらこの人の人生は?」が錯綜する。
この作品では被害者意識で対立する家族感情は薄いのが、せめてもの幸いで。

裁判員達それぞれの「生を受けてから築いてきた人生観」が交錯する中での、自分。
心情的に「無罪」だが、裁判員と裁判官の判断の違いをどう詰めて行くか?の葛藤。
1分でも早く結論を知りたいと言う欲望と、「まだ!じっくり攻めろ」がせめぎ合う。
結論を述べる訳には行かないが、全てを読み終えて納得より安堵の気持ちが強かった。

最後で語られた主人公の夫の一言を、「もしも」の時のために心に刻んだ。
丁寧で細やかな夏樹作品が健在の上に、資料を緻密なネットで絡ませたのは圧巻。
読み終えた時に開放感でため息が出るのは、私だけではないと思う団塊。

<団塊のスキンヘッド> しかし、スポンサーのない日本フィルを維持するのは大変らしい。
平日の夜だったから、病院の玄関で奥様に拾って貰ってコンサート会場へ。
通路から2列目だから、前列の頭が気にならなくて良かったと思ったのに。

カタチは卵形で野生の夏みかん程度に多少ごつごつしたスキンヘッドが、視野に入る。
「ネネエ、あのジジイかっこエエと思わん?ワシより10は上?」右横の奥様を突っつく。
「あら、ホント」

開演時間も演奏も殆ど気にならなくて、私の視線釘付けのスキンヘッド。
サイドベンツの背広、レジメンタルの紺色ベースに白の斜め線装着のスキンヘッド。
ハイカラーはただ者じゃないし、剃り込んだばかりのスキンヘッド。

休憩時間に通路を通る客は、気付くなと言う方が無理なスキンヘッド。
立ち止まって客と一言ご挨拶をして名刺交換したりの、スキンヘッド。
剃らなければてっぺん以外は結構ある風な、スキンヘッド。

ナンか潔すぎて「ジジイ、惚れちゃったぜイ!」の、スキンヘッド。
「ボレロ」の単調なリズムにちょっとだけ船をこいだ、スキンヘッド。
外国の男性映画俳優を彷彿とさせ「さぞかし名のある方とお見受けした」、スキンヘッド。

今のところ大丈夫だけど万が一の時はお手本にさせて頂いた、スキンヘッド。

<団塊のペンVSプリンター>

「おろ?出来ましたか、やっっちゃいましたか。残念なお知らせ」
「そうなんよ、ちょい古助っ人でやっちゃいました。快感のお知らせ、グフッ」
「ホウホウ、お嬢が学生時代に使っていたヤツ。10年モノ!」

「んだな、いわゆるクロマニヨン人かネアンデルタール人用みたいな」
「んで、猪八戒用なワケですね」
「最新のヤツの5倍はじっくり考えてから打ち出すんよ、遅いのなんのって」

「センセの徒競走みたいな」
「それよか、まだ速いかも」
「んで、試し書きっつーか。試し書かせ(語尾上げで)」

「う、嬉しい。ちゃんと書いてる」
「書いてフツーでしょ、プリンターなんだから。逆立ちで牛乳飲んだら、大笑い」
「ホレ、こんな具合さ」

「あらまッ、お薬が多いと反比例して字が米粒」
「行間調整がめんどくさくて、1文字最低6ポイント。反動で薬が少ないと、48ポイント」
「文字サイズ8倍の差は如何なものかと」

「4種類を1列にすれば、あーら不思議の10.5ポイント。んで、9種類はあららのサイズ」
「虫眼鏡が・・・」
「んでも、ナンとか読めればエエんじゃろ?」

「ペン習字の成果が発揮できなくてセンセ残念、あたしら一安心みたいな」
「なんなら、半分手書きとか?/4は、足で書いたりして?」
「要らんことしなくて、宜しい」

「事務方と薬局方から責められて、怒りを込めてこうなった」
「やっぱねー、これにはちょいイヤミが混入してるんだ。タダじゃ済ませないワケね」
「ナンなら、ペン習字前の字で?」

「あれは拷問、あれは猿以下、あれはお笑いぐさ、あれは・・・」
「もうエエッ!」
「どっちにしても、プリンターはペン習字よりマシ。その前は、最悪ウ」
「ワシのペン8本、あんたの鼻に差し込んだろか?耳に筆ペンも、2本サービスッ」

プリンター処方箋デビュー団塊ハイの、朝。

<団塊のウイルス鳥白日夢>

渡り鳥に混じって移動させるのも、ぼちぼち限界かも知れんなー。
ミュータントの出来はマアマアで、未だ鳥人造鳥とは気付かれていないし。
ほ乳類の手始めに作戦変更して、イタチを採用したけど。ま、ぼつぼつやねー。

しかも、ウイルスのタイプを同定する作業時間が、今までは6時間かかったけど。
40分で同定できる技をあみ出しちゃって、がっつりDNAを変えんとイカンなー。
研究しすぎやで、ホント困ったモンダ。ま、鳥人界じゃ幼稚園レベルじゃけど。

研究と言えば、ウイルスに関係する論文を出されちゃ困るから手は打った。
A国の国会議員を拉致して、脳みそにチップを埋め込んだワケ。
んで詳しい論文を発表したらテロに使われるから、大統領に発表禁止宣言させた。

そしたらN国の教授が「んなアホな、逆じゃアー」なんて、ネットに書いたワケ。
大英帝国の有名な雑誌のネット版じゃから、みんなが放っておくワケにイカンやろ。
こんな意見が広がる前に、N国で2,3人とっ捕まえてチップ植え込むしかないな。

F総理に植え込んでもエエけど、N国の政治家っちゃ信用されてないモンなー。
どうせマニフェストと同じや、書いて無いことをするだけ!なんて不支持率50パーや。
芸人に銀行が融資せんのは収入不安定が理由らしいけど、信用不安定な政治家はどうよ。

地球攻略担当鳥人は、ケータイでブツブツ言うのが聞こえる。
「ウオールストリートで実行したサブプライム国際不況作戦も、ばれなかったし。
次は、新種ウイルステロを仕掛けるか?」

昼休み筋トレあとの団塊の、白日夢。

<団塊医は素直で丁度良い>/

「んで、インシデントレポート用紙1枚ネ」
「おひさじゃないですか、何故?」
「こないだの監査で、インシデントやアクシデントレポートがヘンだって」

「お笑い系でまとめてるとか?」
「それならワシも興味があるけど、医者から1枚も出ていないのはヘンって。
センセが居て、1枚もないなんて。あり得ないッ、つー事でしょ?」

「君、何かミョーなモン食うた?」
「んで、インシデントはナニをやらかしたワケですウ?」
「ヂガジンSとメヂゴバルを、書き間違えただけ」

「1文字も、かぶってないッ」
「それが謎なのよ、謎だらけ」
「アホクサだらけ」

「んで、薬剤師さんが顔を真っ青にしてカンカンになって来た。大人げなく」
「その薬剤師さん、ナンか悪いビョーキですウ?」
「コーモンを患ってたかも」

「んで、ホントに来月からパソコンで処方箋を書くんですか?」
「パソコンじゃなくて、プリンターが書くのよね」
「んもー、素直じゃないんだから。あーその伏線で、わざとインシデント!」

「ウルウル、やっと分かって貰えて涙が溢れて・・・ウウウ」
「ちょ、ちょっと。んじゃナンですか、それを理解させるためにムダな事を?」
「ま、誠に。も、申し訳ござりませぬと。超素直に謝罪する、医師の鏡のボク」
その後、定期無変更処方はプリントして手元へ届けられるようになった。

団塊医は素直で丁度良い、朝。

<団塊は泣かしたか?>

「センセがQさんを泣かしたんですかッ!酷いじゃないですか、この女泣かせッ」
「ちょ、ちょっと待てエ。幼少のみぎり、女に泣かされても泣かしたことはないッ!
ワシは自慢じゃないけど、女は苦手ッ」

「ちょ、ちょとお待ちくださいませ。あたしも一応女、センセが切れて、何度枕を・・。
 まさか、あたしのことを女と思っていないとか」
「ちょ、ちょっと。そのまさかじゃ、イカンか?」

88歳Qさん。
心房細動を患って、脳塞栓予防のためにワーファリンを投与されていた。
効果は非常に不安定で、何処かにぶつけた訳でもないのに青アザが消えるときがない。

最近ずーっと歩行不安定で、ある時転倒して意識レベル低下の状態で発見され。
卵かニワトリが先か分からない、意識レベル低下と硬膜下血腫。
保存的に治療を受け、ワーファリンは主治医の判断で持続。

効果は相変わらず不安定で、DOACのPが良いと思うのだが腎不全。
Pの大規模調査によれば、80歳を超えると年齢を重ねる毎に出血性リスクが増える。
元々ワーファリンも80歳を超えると、出血性リスクが高まることが知られており。
Pの副作用としての大出血の半数が、80歳以上である事が判明。

そのことは家族も本人も知らされて居らず、主治医が変わって初めて知る。
講演会でえらい専門医のセンセに主治医が質問したら、「後は人生観」と言われ。
主治医は可能な限り家族と本人に説明をし、今後の治療方針を家族会議で決めることに。
せっかち主治医は貰える返事のタイムリミットを1週間して、本人に確認しようと。

「んで、ご家族の方は何て?」に、「あんたのことやから、自分で決めろ」の丸投げ。
「んじゃ、どうしようか?」に「分からんとしか言えん」が返って、見れば涙ぐむ。
「泣く問題じゃないけど、知ってることをゼンブ聞いて。あとは人生観らしい」

「申し訳ありません、我が儘ばかりで」に、「我が儘の問題じゃないんよ」。
「そう言うのは我が儘とはちゃう」に、「婆さんの居るところがない」で言葉を濁す。
「退院しても、長くは居候できないし。独りで生きて行かなくちゃならん」ウルウル。
「あー。センセ、患者さんを泣かしてるウ」に、「ワシじゃない、ワシじゃ」の抵抗。

いっそのこと、何も知らなかったら良かったのか?
何が起こっても、たまたまとか偶然とか運が悪いで片付けられてしまって良かったのか?
結局、この方を泣かしたのは何だろう?と思う。
「説明と同意」、「家族関係」、「世の中の流れ」、「医療制度」、「人生観の差」?

どれも正解とは言えず介護士D君の「センセが泣かした」が正解かも?の、午後。

<団塊医もミョー>

ナンとか門をこじ開けて入学して3ヶ月、全国的には学生運動が火花を散らしていた。
「よお。ワシ、よー分からん様になってきたで。あいつだけが、ヘンなんか。
 ワシらがヘンなんか、どっちやろ?」

「そらお前、ワシらがフツーに決まっとるやろ。あいつは、大学1年にもなって。
資本論じゃ、エンゲルスじゃ。終いに組合運動がどうたらこうたら、ナンのこっちゃ」
「そうやろ、フツーの医学生は。今しか出来ん社会勉強に、いそしむべきよなー」

「麻雀も、酒飲むんも、代返するんも。ゼンブ、社会勉強よなー」
「世知辛い世の中を生き抜くには、甘いもスイもじっくり味わってな」
「んで、ワシ思ったんよ。フツーの医学生に、資本論は要らんやろって」

「当たり前じゃけど、あいつだけはなー・・・」
「おうよ、お前らは国を憂うことを知らんのかって言うたで」
「真夏のポットン・トイレの臭いなら、憂う気持ちは有るけどナー」

「あれはイカン、目に染みる」
「んで、あいつは退学して組合運動に全勢力を注ぐって言うてた」
「んで、最近見んワケね」

「最近気になるんよ。ワシらのクラスのあいつだけかと思ったら、ちゃうな。
先輩でまともなヤツが居るか?ウロのTさん、ギネのHさん、メス系のSさん。
すっごいミョーやろ。あれが医者としてはフツーなんか?」

「ワシの親父が言うとった、医者はフツーの会社じゃ勤まらんって」
「つー事は、どう言うこと?医者のフツーは社会じゃ異常か」
「そう言う事やね。ワシらも、それがフツーになって行くんやろなー」

それから40年。
「センセ、センセッ!ダメでしょ、そう言うのは」ナースM。
「青筋3本、喉元に皺5本立てて。とうとう地球滅亡?それとも氷河期?ナウマン象?
ノストラダムスを信じちゃイケナイよ。ウブなおいらが悪いのさ、なんてな」

「ホント、センセらってミョーな方が多い」
「ミョーなヤツが多いとか言う問題とは、ちゃうで」
「んじゃ、センセだけですかア」

「それもちゃう」
「んじゃ?」
「トリプルナインがミョーなんじゃ」

「ト、トリプルナインって?」
「99.9%がミョーっちゅーこと」
「んじゃ、残りの0.1%は?」

そいつはホントに危ないヤツとは言えなかった、午後。

<都合で信じる団塊の占いとおみくじ>

「あのね、今日はB型が上昇機運で。Aは、どど下がりなんて。血液型占い」
「んじゃ、あたしのABは?」
「そら、最悪の世紀末ブタ止まりじゃろ」で参戦する私。

「あー、そう言うセンセはCでしたっけ?血液型」
「アホ言え、ドMのSや」
「やっぱねー、ドMのSの末路は猪八戒と」

「血液型だけでエエんか?んじゃ、MNは?Rhはどうしてくれるんや?
 責任者出てこいッ!」
「出てこないのが分かってる時だけ強がるのが、Bの典型」

「そら、ちょっと違うわ。誰かに注意されたら、知らんフリするか惚けるのがBやで」
「んで、言った後で直ぐ忘れて。違うことを、平気で言うのもBみたいな」
「んでも何億も人間が居って、4つにしか分類できないのはヘンやろ?」

「AB型に、MN型に、Rhを混ぜても大して増えませんねー」
「アホかアホでないかの2種類も混ぜると。んーと。計算出来んくらい、増えるなー」
「増やして、ナンかエエことあるんです」

「選択肢が増えれば、混乱させられる」
「オミクジでも、あるでしょ。大吉・末吉・どうでもエエ吉・丸吉・三角吉とか。
史上最大凶や大中小の凶と色々取り混ぜ、やたら凶が多いのがウリって神社」

 そんなことを思いだしながら、先日は学問の神様が祭ってある天満宮に行った。
この時に引いたおみくじ、もしかして私だけのオーダーメード?
「学問・・雑念多し、勉学せよ。病・・あんた以外の医者を選べ。治る」?
オミクジ箱の中に、小さな神主さんが入っていて。私用を待ち構えてる?

占いもおみくじも都合の良いところだけ信じる、団塊。

<2024年、明けましてお目出度うございます。>

ホントは、1/5から始めようと思っておりましたが。
トイレにぶら下がっている週めくり暦に、仏滅とあって。
いくらナンでも、新年早々仏滅とは!で、本日になりました。
今年もお付き合いいただければ幸いです。
ではでは。

<団塊の新年用入手先は仏具店>

 「金襴緞子の帯締めながら、花嫁御寮は何故泣くのだろー」
この歌をご存じの方は、前期高齢者以降でしょうね。

「んー、クリスマス用のボウタイは2本あるけど。お正月用って無いね」
「お正月の文化は、洋風じゃないから」で、ネット検索。

「ナンか、和柄で。お目出たい感じのがないやろか?」タブレット画面スリスリ。
「ピンクとかはちょっと・・・正装用帯の切れ端で作ったようなのばっか。
結婚式で、お婆ちゃんが付けてる帯みたいな」

「金ランって言う生地らしい。ツータイプじゃ無くて、ピアネスだけど」
「滅多に付けないし、タブン仕事始めの時だけでしょ」
「だねー」で、年末に注文して1週間後に届きました。間に合った!

病棟回診で交わされた会話。
「センセ、全身がお目出度い!」
「ウッセ」

和柄新年用ボウタイの入手先は仏具店の、朝。


注:金ランとは、日本古来より神仏に用いられる縁起の良い格式高い生地(織物)。
雛人形、袈裟、行司の服などに使われる。また、七宝柄や亀甲柄…”。
金ランとは、日本古来より神仏に用いられる縁起の良い格式高い生地(織物)。
雛人形、袈裟、行司の服などに使われる。七宝柄や亀甲柄は、さらに目出度い。

添付は、新年用ボウタイ。

<ホントは、団塊医はサンタクロース>

「そんで?あ、これがワシのネ」
「ホント。真っ赤な色が、馴染んでますわア」
「そうかなー。そんなに誉められちゃ、てれるなー」

「んじゃ、お早めにお着替えを」
「上はエエとして、下はいくら何でもステーションでっちゅーワケにも」
「隅っこでどうぞ、どうせ誰も見ませんから。気にしないで下さい」

「ワシが気にするけどオ」
「あと5分で出番ですよ」
「しゃーないなー。見るなよ」

「お金いただいても見ませんッ!」
「ナンか視線を感じるけどオ」
「ゴジャゴジャ言わずにッ」

「それでは、フィンランドの湯田温泉からやって来たサンタでエーす」
「ただ今ご紹介にあずかりました、本業サンタ。時々医者やってます。
3日に1回医者で、1年のうち325日はサンタやってまーす」

「ヲイヲイ、計算が合ってないんとちゃうか。ブツブツ・・・」
「んでは、パアーっと陽気にジングルベルから。張り切って、どオぞオー」
「なんか、場末のキャバレー支配人風やね。あっちが本業でもエエんじゃないの?」

「メリークリスマスう。ワシ。分かる?」
「センセ、よー似合おうとるワ」
「やっぱ、分かったかね。何でやろ?」

「あの体型、あの声。分かるなっちゅー方が、無理」
「ふぃー、あぢぢ。汗グッチョやもんなー、んでも楽しいな。ルンルンっと」
「一番楽しんでんは、MIHIセンセちゃうか?」

一汗かいて赤から白へ変身している最中に、アイディアが浮かぶ。
「婦長さん。これ明日1日、借りてもエエ?」
「どうぞ、愛おしくて今晩パジャマ代わりみたいな?」

これで玄関開けて「ただいまー」偶然家に居た孫。
「お帰りー」すっ飛んできた目の前に現れたら、固まって号泣。
奥様と娘にきつく怒られた団塊医は、ホントはサンタクロースなんだぞ!。

<お荷物団塊医>

「ハア、あたしゃ何もできません。みーんな、家のモンに世話になってますから」
と言いつつ、ゲートボールではしゃいでいるらしいバッちゃま。
「じゃあ、ご飯の用意はどなたが?」には、「好きなものを自分で」。
「そら、悠々自適、老後青春。エエねー、んじゃ薬。出しとくね。お大事に」私。
「今日は忙しい、今からゲート」で消えるバッちゃま。

そう言う家族は、市役所調査員さんが来る前にバッちゃまと打ち合わせをしている。
大抵途中でボロが出て、「結構お元気なんですね」で締めくくる事があるらしい。

「わしゃ。何もかんも、ぜーんぶ出来とる。誰の世話にもナランッ!」
後ろでお嫁さんが苦笑い、頭ガリガリかきむしるジッちゃま。
「じゃあ、ご飯は?トイレは?」には、「そんなことは嫁の仕事じゃ、全部やって貰う」。

そう言う家族は、玄関から出たところで市役所調査員を捕まえて現状報告。
「爺さまには内緒でお願いします」忘れない気配りで、ジッちゃまのプライドを保つ。
相反するようなお年寄りと家族を見ていると、どっちがどうなんだろと思う。

これが施設に居て調査員が来ると、自分だけ見栄を張りウソを並べても直ぐばれるから。
本人もスタッフも正直に言うが、介護度が軽くなると施設にいられないので家族は必死。
誤魔化せず施設入所中に要介護度1より軽くなると、「おめでとう!退所です」となる。

家族のスタッフへの風当たりはかなりなもので、法律を楯にお家へ帰されるしかなく。
退所時に、「元気になって、お家へ帰れてスイマセンねー」がスタッフのせめてもの抵抗。
一度軽くなった判定は余程のことがない限り6ヶ月はそのまま、介護施設入所は難しい。

経験的に、こうなると大騒ぎするのが目の上のたんこぶが帰ってきた嫁だ。
次が、勝ち取った自分の部屋を明け渡さなければならなくなった孫だ。
大抵は一番良い部屋を独占し、口は良く動くが体がついて行かないから世話が焼ける。

連れ合いでもいれば、相乗効果で小さな騒ぎは簡単に嵐に変わる。
そう言う場合の解決策は、土地があれば温度コントロール不良の小屋が離れて立つ。
その費用はお年寄りの年金目当てにされ、出来てみれば工事現場の掘っ立て小屋並の代物。
お年寄りが亡くなるか長の入院にでもなれば、これは孫の住み家に変身。

20年も在宅支援に関わっていると、入院患者さんでは見られない色んなものが見えて。
心穏やかでないことが多いがあと5年は関わりそうで、嬉しいような悲しいような。

家族のお荷物にはなりたくない、団塊医。

第1080話 擬態語診療

<あららー、そんな境地に!自分のことを、カリスマって呼んじゃってエエんか
しかしなー、呼吸音が足で感じるなんて凄すぎ?あ、ケータイバイブじゃん>
「誰や、人が機嫌良く聴診してんのに。ええい、プチッと」

「外来中に電源入れるからですよ、端から切っときゃエエのに」ナースF。
「ハイハイ、ブチッと」
「いちいち擬態語を入れなきゃ、動けないんですか」

「バシッで、宜しかったでしょうか」
「その心は、あたしをぶっ飛ばしてしまった訳ですね」
「ペコリ、ポリポリ。はーあッと」

「意味分かりませんけど。余計なことしなくて結構、処方箋書いてくださいませネ」
「ヘロヘロ」
「ハイハイ、疲れたワケですね。あと1人で外来終了ですから、ギュギュッ」

「それって、ワシのエネルギー源を絞ったワケね」
「フンッ、Pさーん。どうぞオ」苛つくFさん。
「どうね、元気じゃった?」

「元気なら、こんな所へ来ん」右胸心のQさん。
「確かに。んで、胸の音はフツーじゃ。心臓が右側、弁膜症の音がザービュー。
いつもと変わりなし、脈の飛びも変わらんね。んじゃ、お薬」

外来から撤収しようとした時、「センセ、病棟からお電話ア」。
「居らんって、言うてエエよ」
「こらあ聞こえてる!って、言ってます」

「耳だけはエエじゃから」
「んで伝言入れたのにその後から、ケータイが繋がらないって」
「伝言っちゃ見方が分からん、消し方は知ってるけど」

「んもー、信じられないワ。どれどれ、あららー、着信歴もゼンブ消えてる」
「ワシは、怪しい電話には出たくない人だかんね」
「どういう人かなんて知りたくありませんけど、この番号は怪しくないでしょ」

「他人のケータイに伝言を入れるなんて、不埒な悪行三昧。どーせ、出会わない系」
「それも、意味分かりませんけど。ガツッ」
「タッタッタッタ・・・コンコン、コンコン」
「ちょ、ちょっと。それは?3つだわ」

今時の若いナースに丑の刻参りをどう説明して良いか悩む、昼前。

<団塊はHbA1Cが恐い>

「あ、この間の採血。どうじゃた?Hb(ヘモグロビン)A1Cは?」
「あたしギリの5.7%。んで、貧血は相変わらずで」
「んじゃ、貧血が治ったらA1Cは上がるやろなー」

「恐いこと言わんで下さいよ。空腹時血糖もギリの149で、踏ん張ってんのに」
「検査が終わってからの食生活を聞くと、何だかナー」
「んだから、HbA1Cが検診項目になったら恐いわー」

「あ、平成23年4月1日からじゃけど。国際標準採用で、日本のHbA1Cに0.4足すらしいで」
「んじゃ、0.4%の分だけ余計に食べてもエエんだ。ラッキー、HbA1Cは恐くないわー」
「そう言う考えの方が、よっぽど恐いわ。我腹引飯じゃね」

「何ですか、それ?」
「我田引水って知っとる?」
「あたし、四文字熟語は苦手なんですよー。んで、ナニ?おでん飲水って」

「ナンで食い物に行くかなー、田んぼの話が」
「ヘッ、それって田んぼの話だったんですか」
「んじゃ、話を変えて。糖毒性って知ってる?」

「何ですか、それ?」
「多すぎる糖は、毒っちゅーこと」
「確かに、ケーキが30個は毒よねー。5個までなら何とか、美味しくいただけるけど。
次の日の体重計が恐い、それ以上は自信ないわア。10個は恐すぎる」
「”饅頭恐い”という落語、あんたにも当てはまるかも知れん」

HbA1Cが怖い団塊。

(注)血糖値が高値であるほどヘモグロビンと結合しやすく、
HbA1cの量はヘモグロビンの寿命と血糖値に依存する。
赤血球の寿命から、HbA1cの値は通常は過去1、2ヶ月の平均血糖値を反映する。
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血・腎性貧血など赤血球の寿命が短縮する場合は、
HbA1cがその分蓄積されず減って実際の値よりも低くなる

<気管カニューラ抜去の春>

春は色んな事の始まりが多く、可愛いところでは保育園ニューカマーの検診。
ニューカマーと言えば、研修医教育プログラム委員会と現場打ち合わせ。
団塊医師が研修医にたたき込むのは、診察の基本と人生の先輩に対する礼儀。

ナースは医者より一足早く定年を迎え、送別会のお別れ。
お別れと言えば、気管切開をされて喉元にプラスチック製カニューラ卒業を企てる。

邪魔なモンは無い方が良いと、ちょっと油断すると無意識で引っこ抜く方が居て。
ご家族と話し合った結果、ある程度のリスクを承知の上で患者さんのQOLを考える。
真夜中の手薄な時間帯に引っこ抜かれたら、穴が縮んで元の鞘に収まらない。

それならいっそ、見えるところで徐々に石橋を叩いて渡る?の結論に達し。
ミミズ速度でいつもと違うカニューラに変え、スケジュールをスタッフと検討。
ナニはなくとも安全第一、8ヶ月のカニューラ生活から3週間で無事に卒業を迎えた。

こうなってくると、常日頃99%抜管できそうだけど1%のリスクを排除できない方。
それとなくスタッフに抜管の話を振れば、抜く心配がないんだから。
挑戦する理由が弱いので、「そのまま」攻撃にタジタジ。

「今までは、切開部からタンの吸引しやすかったけど・・・」
「こんなとこに穴が空いてるから、ちりやほこりを入り口でブロックできんやろ。
つーと。タンでくるんで、出そうとする自然の摂理。だから痰が増えるワケやな。
んでチューチュー吸引するから、刺激されてまた痰が出る循環なワケ」

「んでもー・・・」
「卒業の春やろ、気管カニューラ卒業してもらおうや」
「んで、どうやって?」でやっと話を聞いてくれる雰囲気になったチャンス到来。
「ご家族にリスクを説明して、納得されたらの話やけど。このスケジュールで」

「既に、予定をパソコンで作ってんじゃん」
「多少のアレンジは応談。日当たり良好。お花見は、喉元気持ち良く卒業祝い」
「もうちょっと、みんなと検討させて下さい」までこぎ着けた、春の午後。

<団塊の脳みそ危険因子>

Medical  Tribune(vol.44,No.38)によれば。
アルツハイマー病発病に関連する危険因子には、7つの修正可能なモノがあるらしい。
「喫煙・低身体活動・低教育水準・中年期高血圧・糖尿病・中年期肥満・うつ」だそうで。
どれも修復可能というのが嬉しい。どれも達成しにくいが、それを応援する薬物はある。

米国では運動不足が最大の危険因子で、世界的には低教育水準が大きく影響している。
まだ研究段階であるが、ライフスタイルが関連している事を指摘している。

一方、別の研究でも指摘されているのは。
「中年の高血圧・糖尿病・喫煙・肥満は、脳萎縮と思考能力低下に関連している」
上記危険因子は脳みその体積減少をもたらし、血管損傷による二次的病変をもたらす。
手遅れになる前に、「ラフスタイルを変える」ことが重要らしい。

手直しできるモノは実行して、脳みその若さを保ちたい団塊!

<団塊医と不安>

高齢者は「いま帰ったら、不安で。帰られん」
退院が決まる頃に、しばしば口にするのがこの台詞。
色んな病気の後遺症で、今までの生活を自宅で続けられるか判断しにくい。

数度の試験外泊じゃ安心が得られるはずもなく、カンファレンスが持たれ。
最終的に本人とご家族を交えて、医師・ナース・リハ担当が退院前訪問を行う。
僅かな時間だが問題点を抽出し、解決案を提示する。

それで全てがOKと言う訳ではなく、本人だけが不安を募らせ。
退院前は寝られない日々が続き、益々不安が増大する。
ここで「じゃ、もう少しリハビリ?」なんて言おうモノなら、満面の笑み。

延長した入院生活は、患者さんには安心だがスタッフには戸惑い。
3ヶ月も経った頃、主治医に”お年寄りの帰る場所が無くなる不安”を生む。

最初は、「もうちょっとリハビリをしたら、もっと元気になる」はずだったけど。
住めば都、入院が長引けば根が生えて仲間が増え家を思う気持ちが薄れる。
それを感じた家族は、「早く帰っておいで」なんて口にしなくなり足も遠のく。

急速に核家族化して、家族総出で仕事を求める昨今。
稼ぎの内からお年寄りの年金に加えて、療養費を捻出する。
景気の悪化に雇用の減少は、家族に経済的精神的負担を増やし。

一体誰のセイで、お年寄りの安住の地が無くなってしまったのだろう。
「不安は、入院継続の理由にはならない」と口にしづらくなった。
しかし、マーケティング・リサーチ的には医業は不安の解消。

団塊医が不安を感じる、午後。

団塊の老化予防酵素(めしはまだか)

「今夜は食べ放題なんですよねー」
「明日はメタボなり放題だよねー」
「ウッセ。ヤなこと言うじゃないですか、極楽の明日を前にして」

「食えばエエってモンじゃナインよ、食えば」
「おかげでプリンプリンのもち肌、ツルッツルですからア」
「それを言うなら、ブリンブリンの脂肌。ベッタベタやろ」

「んでも年の割には、皮膚が張ってると思いません?」
「そらあんた、柿羊羹じゃったっけ。爪楊枝で刺すと、クルンとゴム皮が剥けて。
羊羹が出てきてこんにちわ!みたいな。人呼んで、背脂羊羹なんちゃって」

「んでも皺が・・・」
「Mikael Molinセンセは言うんよね。糖分とタンパク質を、徐々に減らすとエエんて。
猿の寿命を数年延ばしたって。これは、魚・ハエ・酵母菌でも効果は同じらしい」

「なぜ故に、長生き?んでもハエが3万年も生きたら、地球中ハエだらけみたいな」
「ちょっと、強引。それが凄いんよ、歳を取ると酵素の元気がなくなるんで。
カロリー制限で、その酵素がしっかり仕事をするようになるらしい」

「その”しっかり”って、ニュースで良く聞くけど。政治家のしっかりっちゃ、ねー。
いい加減とか、取りあえずみたいな感じイ。そう言う意味で、信用ナラン」
「んじゃ、ちゃんとも?一定のメドがつくまで長生きできるとかも?あ、ダメ!」

「食べたいモンを我慢して、ちょっと長生きしてもねー」
「そうやって脂身バッか育てて、脂が脳に回って脳みその皺も伸びきったりして」
「ご飯を食べたかどうかもワカランよーになるのを防ぐ酵素が、欲しいわア」

食後に「飯はまだかいね?」って言いそうな、ナースPの午後。

参考;MedicalTribune 2012年1月5日号、29ページ

<団塊ジジの服好み>

「もったいない」の後に、捨てる技術とか断捨離とかが流行ったからではないが。
模様替えで6ヶ月開かなかった、文献や切り取った雑誌の一部はホコリと一緒にゴミ箱へ。
整理整頓大好きとは言っても、捨てにくい(捨てがたい?)モノとそうでないモノがあり。

超メタボ時代にやっと見つけた衣類などは、体重20Kg減で殆どブカブカ。
泣く泣く捨てることになるが、未練がましく修理して着ることもある。
と言うことはおよそ30年物と言って良い代物で、生地も弱っているから持って更に1年。

これはJFK大統領お好みのブランドだから、捨てられないんよねーとか。
これなんか、今は滅多にお目にかかれないVAN。値段はユニクロと大して変わらんけど。
これって「Kent!]だけど・・・マニアックで、レアなんよねー。
ホントはポールスチュアートが欲しいんよねー、手エ出んけど。
これはサンフランシスコの学会で入手なんよ、サイズがSやでほらこのタグ、Sやろ!

いちいち言い訳をつけまくって、捨てられない理由にしてきた衣類。
2年間着なかったら死ぬまで着ないだろうと、思い切ったのが昨年の秋。
ワゴンセールの楽しみも失せると、色の感性が際立って明るい色にシフトして。

「エー、ちょっと派手じゃない?」と「ちょっと地味じゃった?」が、行ったり来たり。
風通しが良くなったタンスを引くと、陽気さが一斉に覚醒する色とりどり。
それを見るだけでもプチハイになる。着れば更に高揚し、還暦忘れるくらい過ぎだけど。

勝負服ならぬ「パワーアップ服」で巷を彷徨う団塊ジジの、休日。

<団塊は自画自賛でズルを楽しむ>

「ヘッ、そうか。勤めていた万年筆工場がつぶれて、給料の代わりにこの万年筆。
泣ける話や。こら、なかなか良い代物じゃないか。よっしゃ人助けと思って1本。
そら世の中捨てたもんじゃない、こんだけ人がおったら」ぐるり見渡す無精髭オヤジ。

「捨てる神あれば拾う神ありって言うやろ、ワタシも1本買お。人助けや、ウウウ」
「有り難うございます。一家5人、死なずにすみます。ウウウ・・・」
で4,5本売れて見物人がちりじりになる頃、店をたたんで消える。

勿論その万年筆は粗悪品で使い物にならないか、ごく安物であることは言うまでも無い。
これが子供の頃に縁日で見た”泣き売(確か)”と言うサクラのズルい売り方。
道具は違っても、ズルさじゃ大して変わらない「食べログ」やオリンパス事件。

ネット情報だけじゃなくて、人の噂も他人の評価もあてにする方がアホ。
ましてや、何にでもマヨネーズをかかけて「美味しいイー」なんてアホ舌の昨今。
食べ芸能人の「美味しいイー、柔らかいイー、とろけるー」も何だかアホくさ。

結局は自分を信じるしかなく、他人の意見は参考程度で抑えるに限る。眉に唾。
そうなると楽しみが1つ増えたのは、「高い評価にどれだけのズルを含むか?」の探求。
「割り込みし放題で行列できない赤い国じゃ、ドリンクバーは成立するか?」も気になる。

子供の頃、分かりやすいズルをした私に、おばちゃんが言うとった。、
「どんなに上手くズルしても、おてんとうさんが見てるんよ」
「夜も?」

「そらそう、何処からでも見とる」
「夜に、お月様しか出てなくても?」
「その時は、心の中のおてんとうさんが見てるんよ」

団塊は自画自賛でズルを楽しむ、午後。

<団塊の無音屁>

「センセ、検診でイエローカードが」
「やったー、とうとう気がついたか。ナムう」
「な、ナムうって。どう言うこと?」

「ホント、あんたには世話になった。ホンのお礼で、線香の1本」
「コラコラ、ナンであたしがアロマテラピーい?」
「十二単の下に、体臭隠しで線香を炊きこんだみたいな」

「ナンでこの美白、この芳しきホノかな香り。あたしって罪な人、ハア」
「重罪じゃから、獄門スッピンさらし首じゃね」
「ヒエー。スッピンだけは、お代官様ア。みたいな?」

「んで。何処に悪魔、怨霊?」
「違いますよ、貧血が。正常範囲に少し届かない程度、コンマ2ほど」
「そら、痔か腹の中に虫でも飼ってるんやろ。無視、無視。気にしない。
そんな数字、見ない、気の迷い、年齢相応」

「ちょ、ちょっと。最後が気になる、年齢相応。もし悪いモンじゃったら?
 どうしてくれるんですか?責任、取っていただけますウ」
「あんたは既に、全身最悪状態じゃけど。お詫びの印に、紅白饅頭?」

「んもー、ナンでお祝いするかなー」
「線香花火と提灯行列オマケしよか?」
「要りませんッ!」

「いくら近くに居たからって、聞く相手が違うでしょッ」
「遠くのDセンセより、近くのセンセはもっとアテにナランでしょッ」
「ビョーキのセンセに、ビョーキのこと聞いて。どうする、どうする。みたいな」

ナース3発連射攻撃を受け、撃沈しそうになりながらカルテを書き続ける。
「あらら、Bさん。大きい方が出た?」
「んにゃ、出ん」

「んでも、何か芳しき臭いが・・・。お部屋で、オムツを見ましょ。そうしましょ」
「んにゃ、もちっとセンセと居たい」
「臭いは無視してエエけど。ずーっと車いすじゃ、腰痛くない?

「大して痛くはない、無視できる」
「んでも、臭いがア・・・」
「んじゃ、Bさん。撤収じゃ。ナンでかワカランが。ワシが、車いす押してあげるから」

「そうか、そこまでされたら。部屋へ引っ込むか」
「やっぱ、臭いが付いてくるわ。オムツ換えようね」
「ちいとも、気がつかんけど。大きき方かも」
「んじゃ。ワシ、ラウンドの続きや」
車いすのBさんと私は、右の病室と左の廊下に泣き別れ。臭いが左側に着いて行く。

団塊の無音屁は無視できん、午後。

<団塊の意表>

脳トレ用に、昼食後はPC相手の将棋をすることがある。
平手じゃPCは圧倒的に強いので、ハンデを付けて勝負することになる。
教科書を忠実に守って挑めば、油断すると押されっぱなしになる。

先日名人と勝負した1秒間に何万手も読んじゃうソフトは、別格だけど。
フリーソフトだからと言う訳ではないが、先を読むのが苦手のようだ。
色々試してみると、フツーじゃやらない意表を突く手を打つと楽しめる。

「ちょ、ちょっとオ。それナニ?そんなん、プログラムに入ってないヨー」
更に意表を突けばパニックになって、タダ同然の「角」と「歩」交換だったりして。
「よっしゃ、かかったア」で、ディスプレイの前でほくそ笑むのは私。

数日前に定例の病院監査があって、当我が社は大して問題がなかったけど。
某病院のベッドチェックが終わったと見せかけて、再ラウンドでチェックしたらしい。
「かつて無い手法に、意表を突かれて焦った」と聞けば、笑い話で済むのは当事者以外。

如何にして「ズル」を見破るパンチを繰り出すか、病院監査には意表を突くのが一番。
将棋ソフトは「ズル」はしていないけど、意表を突くのも作戦勝ちかも知れない。
「意表を突く」技を磨いて、明日への糧にしようと思う、団塊。

(注)意表とは、「思いも及ばないこと。意外なこと。また、そのさま。」

<団塊は電話よりイラスト>

「んだから、幽門部が胃瘻ボタンのバルンで押さえられて。こう、こんな感じイ」
「それじゃ分かりません、ゼンゼン」
「んで、十二指腸15cm行ったところで、動脈を越えて」

「聞いてると、蛇がのたうち回ってるみたいな」
「んー、それに近いような。すんごい遠いような」
「どっちですか、言ってることがワケワカラン」

「どう説明したら、ワシの気持ちが伝わるんやろ?」
「無理無理、電話で説明じゃ」
「んじゃ、モールス信号なら分かってくれる?」

「余計分かりませんッ!」
「んじゃ、そう言うワケワカラン状態ってのは?」
「意味不明、諸行無常の響きあり。こっちへ、カモン」

「しゃーないなー」でステーション。
「どうなってる、このエコー」
「見たまんまやん」

「見ても、ちいともワカランから説明して欲しいワケ」
「んじゃ、白い紙と色鉛筆は赤・青・オレンジに黒サインペン」
「ナンか、本格的イ」

「これが膨隆した胃袋で、ここが幽門部やろ。んで、バルンがここで塞ぎ気味。
んで動脈を乗り越えるまで十二指腸が、こんな感じで膨れて。
その後はフツーじゃから、恐らく動脈で圧迫されて。んで、通りが悪い」

「あららー、センセの電話説明じゃ3万回聞いても分からんけど。これなら」
「そう、あんたでも便所コオロギでも理解じゃろ?」
「センセって、絵心が有ると言うか。逆に、口はエエ加減と言うか」

「ワシってイラストレーターで生きて行けそうな、気いセン?」
「お笑い系で、小銭を稼ぐ程度で。医者やってる方が、生活安定で無難かも」
「そらそうや。んじゃ、別な道を考えるわ」

イラストレーター医師では生きて行けそうにない、午後。

「あらセンセ、仕事してましたア」
「仕事って?エッセイスト、イラストレーターそれともダンサー?どれ」
「今してるのは、ナニ?まさかの徘徊」

「ま、そーとも言う」
「んじゃ。徘徊のような、あたしのストーカーのような?」
「ま、後の方はミミズの小走り。あり得ん」

「早朝迷惑回診に出くわしたんは、お久ざんしょ」
「あのね、場末の一杯飲み屋のババじゃあるまいし。ナニが、お久」
「あたしを避けてるとか?」

「嫌がってるとか、絶命したくないとか」
「んでも、ナンでやろ?メタボのセンセが、目に入らんワケないしイ」
「何なら、足から目に突っ込んでみる?ワシを」

「痛いでしょッ、汚れになるでしょッ」
「ふぁーあ、何か眠いわ」
「とっとと、迷惑ラウンドなさいませ」

で、既に6:30を過ぎて目覚めの放送と同時にラウンド開始。
「あら、センセ。久しぶりね」化粧がまだらになりかけナースP。
「肴は、炙ったイカにしてね」

「当直でした?昨夜は」
「ハイ、んでこの時間の回診なんよ」
「5:30頃、廊下をウロウロしてたでしょ?」

「んにゃ、それって当直室へワシを起こしに来た座敷童C君やろ」
「センセのとこも出る?、座敷童。そらまた、久しぶり」
「Pさんとこも出るんね、座敷童レクサーとか」

「名前が違うわ、そんなハイカラなんとは」
「権之助とか、大字彦左衛門?」
「今度その名前で呼んでみよ」

座敷童話で盛り上がる団塊医の、早朝。

<団塊の東京歩行>

全脈拍数と寿命が比例するらしいが、平均歩行速度と寿命も比例するのか。
ストレスに溢れる都会人と、エスカレーターで歩かない田舎人でも同じ事が言えるか。
都会人は何故に生き急ぐ(死に急ぐ?)のか分からないが、早足が耳に気ぜわしい。

突進されるような気がして、避けようとするとかえってぶつかりそうになる。
だから都会で人にぶつからないように歩くには、目をつぶってまっすぐ歩くのが安全?
いままではそれで切り抜けられたのに、それじゃ済まないことを知った。

まっすぐ歩いてくるヤツの手元を見ると、手鏡を見ながらなにやら作業中。
歩きながら鼻毛でも抜こうとしているのか?と思ったらそうではないようで。
まさか歩きモバゲじゃないだろうが、メール打ったりネットチェックらしい。

こう言うヤツにはやっとあみ出した雑踏咳払い歩きは、全く歯が立たない。
こうなると壁伝いにカニ歩きしかないと思った、久々の都会体験。
新しい遊びを覚えた相手は、ベビーカーに乗ってキョロキョロする子供。

接近するまで視線を送りかわすと、殆どの子は振り返るが親の視線は前方。
すれ違いざまにすかさず両手を広げてオーバーに振ると、幼児は負けじと手を振り返す。
それに気付いた親が立ち止まって振り返る瞬間に、手を下ろして何事もなかった風を装う。

親は「この子は一体誰に、何故手を振ってんだろ?」と、しばし辺りを見回して?2つ。
その顔を見てると意外に楽しめるのは、私だけだろうか?

金とヒマがあったら楽しいことも多いが、大地震を思うと心が騒がないのか?都会人。
阪神震災1週間後に傾いた高速道路の横をすり抜けた時から、頭の上の大きなモノが恐い。
見上げたビルの窓ガラスが地震で砕けて落ちてきたら、完全に串刺しにされちゃう。
背筋が凍り付いて目を降ろせば、頭の上にあるモノなんか気にせずせっかちに歩く人々。
都会のコンクリは固く膝や腰に良くないのに、何故あんなに急ぎ歩くのか?
田舎モンは都会の道路に馴染めず、膝と腰を痛めた都会ウオーキングの3日間であった。
田舎のあぜ道は足に優しく、病棟廊下はクッションが効いて田舎モンの足が癒された。

東京を歩くと寿命が縮まる、団塊。

<団塊の早朝徘徊靴が鳴る>

ニワトリが啼くより早く目が覚める、当直室の朝。
速攻で着替えて窓開け放し、雄叫びでニワトリ起こしちゃう?みたいな。
冷蔵庫から取り出したペットの緑茶は、五臓六腑に染み渡りキューッ。

理由はよく分からないが、歩く度にスニーカーがキュッっと鳴るようになった。
特にワックスが良く効いた病棟の廊下は、全館ウグイス張りかと思わせるほど。
更に早朝はキュッキュッと良く鳴って、「いま歩いてんのは、私ですよー」みたいな。

同じ型の2足のスニーカーだからか、同じようにキュッキュッ言い出した。
靴紐を締め直し足取り軽く、脳みそは半覚醒でちょい重く早朝迷惑回診。
医局のドアのギイとキュッキュッが入り交じって、鳴り物入りで出立。

ラウンドが半分過ぎる頃、患者さんはぼちぼち起き始める。
ざっとラウンドしたあとにステーションでカルテを書くので、計算上2ラウンドする。

「おろ、Dさん。顔を洗うんね。まだ寝ぼけとらん?」
「さっきセンセが回ってきた時に、靴音で目が覚めたで」
「こそ泥風に歩いたんじゃけど、気がついたかね?」

「直ぐ分かった、センセじゃって」
「んじゃ今度は、抜き足差し足か?」
「ナンでセンセの靴だけ、鳴るんね?」

「そら、丸虫とお手々繋いで野道を行くから」
「歌の文句じゃ有るまいし、丸虫の手ってどれ?」
「脇腹をコチョコチョしたら、キャー止めてエーなんて言いながら上げるのが手」

「んじゃ、脇腹は何処にあるんじゃ?」
「その手の付け根の辺りじゃろ、やっぱ」
「そこのお二人さん。Dさんは朝ご飯、白衣の風変わりオヤジは、ラウンドッ」

「風変わりっちゃ、どう言うこと?」
「良く言えば、ユニーク。はっきり言えば、変わりモン」
「世の中を、蛇のウンチみたいにまっすぐ生きて。形状記憶合金みたいに・・・」

「いくら直されても修整が効かず、元に戻っちゃう」
「そんな素直な、早起きのわ・た・しッ」
「ジイは、ただ目覚めが早いだけエ。人の迷惑顧みず。10年後が恐いイ」

「ワシって、カリスマイケジイかも」
「靴をキュッキュッ言わせながら、徘徊するイケナイジジイ。略してイケジイ」

高評価でラウンドする団塊ジイの靴がいつもより3倍キュッキュッの、早朝。

<団塊が始める時と止める時>

大抵の臨床試験は、先ずどうなれば終わるか?のエンドポイントを設定する。
ある高血圧の大規模調査では、設定した調査期間を待たずに終わったモノもある。
設定期間より短期間で明らかな結果を得て、それ以上研究を続ける意味を失った。

そんなたいそうなモンじゃないけど、何かを始める時にいつも考えるのは。
ナニをするにも「どうなったら止める?」、自分なりのエンドポイントを設定するのが常。
そんな時にある学会で、「さも凄いやろ?」と言わんばかりの学会発表。

救急車が到着してから処置を終えるまで*分で始まって、スライドはキラキラ飾られ。
救命率*%で入院期間*週間を、長々と5分オーバーで語り終えた。
救命したら「ハイ次の方がいらっしゃるので、素早く他の病院へ移ってね」だ。

「どなたか質問は?」に遅れて3秒で挙手すれば、早速「ハイそちらの方!」。
「救命された方のその後について、追跡調査されたことは?」に、「ハア?」と来た。
そんなツマランこと聞くより、活躍してるワシらをどう誉めるかでしょ?みたいな。

最近は減ったが、思いだす患者Gさんもそうやって救命された。
意識を失って息も不十分で30分後に救急車が到着して。
そこから30分かけてすっ飛んできたら、瞳孔散大してもちろん意識無し。

挿管するわ、血管にビニール管入れるわ、気管支に穴が空くわ、やたら薬入れるわ。
カルテ見たら98歳だわ、普段寝たきりだわ。で、戻ったのが血圧と脈だけだわ。
無口で何も出来ない超高齢者が、ベッド上で安静にしている景色で落ち着いた。

CT撮らなくても脳みそがどうなったか想像着くのに、念のためCTとはナンの念?
それから3週間で運良く人工呼吸器から離脱された途端に、「次は何処へ?」の不運。
突然の撤収勧告に焦る家族、やたら静かな患者さん、走り回るのはケースワーカーだけ。

そんな悲しい出来事は1度でたくさんなのに、2度3度と経験しちゃうと。
歳に不足はないとは言わないが、ちょっと先を見てあげるのも良いかも?と思っちゃう。

ここで救命したら患者さんの身体と人生に何が残るのか?何を残してあげたいのか?
救命で突っ走るのも良いけれど、それを考えるのも医者の務めじゃないのかな?
救急から離れて長い時が流れ、立ち止まって色んなことを考えるようになった。

「そこの研修医、心臓だけ動かしてどうするッ!オーベン、指導ッ!」の、団塊。

<団塊の脳筋トレ>

膝の痛みに大腿四頭筋の筋トレは、スロースクワット10分。
転ばないように、バランス維持で手で何処かにつかまるのは必須。
調子に乗って、痛みが出るほどやり過ぎないことがキモだそうで。

筋トレ・ハイになりかけて、気付けば1セット10回1日3セットで良いのに。
1度に12セットまで来て、「ちょっと調子に乗りすぎ?(語尾上げで)」。
筋トレ始めて3ヶ月、スキップこそしないが良い具合になってくれば。

元来のお銚子乗りだから、目指せ20セット!が脳みそを過ぎっても。
「何事もホドホド、中庸だよね!」を思いだしソファーに寝転び。
iPadスイッチ入れて、無料電子書籍をエンジョイする日々。

復刻版とは言え、ゼンブ買ったらiPadが幾つ買えるやら。
古き良き時代の推理モノや哲学書、果ては純文学まで。
1Kg足らずのマシンの中に、沢山詰まって選ぶにも一苦労。
ゼンブ読破するには、かなりの時間がかかりそうで嬉しい35分。

買った将棋アプリの気分転換は、軟弱な私には強すぎて。
「ちょっとオ、待ってッ!」が多いから、なかなか上達しない脳トレ。
小一時間の色んなトレーニングに精を出す、昼下がり。

脳筋トレする団塊の、午後。

<警察官と団塊医>

秋の交通安全週間を過ぎて、高齢者の交通事故が減らないから。
警察署と医師会がコラボして、高齢者に交通安全の啓蒙運動をするらしい。
そんな地域ニュースを聞き、おでんを突っつきながらとある夫婦の会話。

「どうなんじゃろねー、お年寄りが警官より医者の言うことを聞くやろか?」
「交通安全に医者が出張っても、まさか路上で聴診しながら交通安全ねー」
「統計とったこと無いけど、医者から貰った薬を自分で選ぶジッちゃんは結構居る」

「おまわりさんに、そこのジッちゃん止まれエって言われて。逃げるヤツは居ないしょ」
「んじゃ、おまわりさんに白衣を着せるとか?」
「警察のコスプレ大会みたいな?」

「んじゃ、警棒の代わりに聴診器振り回すとか」
「んじゃ、医者は注射器の代わりにピストル打つとか。助かるモンも絶命とか」
「点滴より機関銃、カテーテルよりバズーカみたいな」

「んじゃ。極道との銃撃戦で応戦は注射器、目くらましに消毒用アルコールバシャッ」
「死ぬのは、ばい菌だけじゃねー」

「ナンのニュースじゃったっけ?」
「さあ?交通安全でしょ」

咥えたガンモが火傷しそうに熱かった団塊医の、夜。

<団塊は紙かデジタルか>

小学校以前から文字中毒で、本が横にあると安心していた。
暫く前に「断捨離」で、1500冊を超す本を処分してすっきりした本棚。
風通しが良すぎるので、細かい楽器などを列べて空間を埋めた。

だからと言って文字離れをしたわけではなく、積ん読していたモノを引っ張り出し。
結局、読み終えた文庫本や新書は二度と開けられることはない消耗品になった。
詠み終えたモノはリサイクルで売り飛ばし、常に「断捨離」を心がけた。

何度となく言われて来た「電子書籍元年」も、そろそろ我が家にも訪れる?
重い腰を上げて情報収集してみると、個人的には「まだ夜明け前」としか思えない。
iPadやガラパゴス・タブレットや、スマートフォンみたいな簡易ツール。

バージョンアップはサイクルが短くて、何を選んだらいいのか。
どれも一長一短があり、著作権が壁になってる風だし。
便利なほどランニングコストは高いのは、仕方が無いとしても。

やっぱアラカンには紙の本か?みたいな気になってくるのは何故だろう。
色褪せた文庫本は引き取って貰えないから、ゴミにするか本棚のホコリ集めにするか。
1ヶ月悩んでエイヤッとゴミ箱へ突っ込んだ、団塊の午後。

<団塊のスタプ>

「あのさ、ナンで?」
「ナンでって。あたしが足長美白のワケを、聞きたいんでしょ?」
「妄想はイカン」

「んじゃ、ナニ?」
「マスクの上にあるモン」
「上って、すっきり通った鼻筋とか。潤んで引き込まれそうな、瞳イ」

「んにゃ。唇より後ろの鼻筋でもないし、ボケの花アレルギーの涙目でもない」
「んじゃ?」
「マスクからはみ出た、穴2つ。黒い毛がニュルーっと、んーと3本?あ、4本?」

「うっ、数えなくて結構ですッ。ハイハイ、そーです。その通り。
確かに顔で出てるのは、先から顎。んで唇、最後に鼻って言いたいんでしょ。
ウウ・・・呪ってやるウ」

「病棟のいろんなモン吸い取ってる穴2つ、隠しなさい。マスクで。
んで、あのさ。ナンで?」
「ナニがナンでなんですかッ!」
「予防衣」

「これが文句の矛先?何に」
「ナンで?」
「今週の始めに変えたバッかですけど、チューリップのアップリケでも?」

「んじゃなくてエ、ナンで?誰のために?」
「あ、そう言う意味じゃ・・・」
「クライアントのためと言うより、自分のためとちゃうか?体型隠しみたいな」

「朝晩、冷え込んだ冬。セーター重ね着しても、フワフワして気付かれないかも?」
「そら、自分はエエわい。んでも、バッチイモンが着いた予防着で世話されたら。
 綺麗なモンまで、バッチくなって。辺り構わず、汚れをまき散らしまくるだけやろ」

「確かに、予防着で冬は温い。夏は、医学的に冷えますね」
「昨日の講師のナースんとこは、予防衣禁止にしたんて。抵抗勢力凄かったって」
「17:20からの研修会?」

「そう、スタプの」
「コーヒーの?」
「そら、スタバ。スタンダード・プリコーション(標準予防策)、略してスタプ」
コロナ禍で、一気に患者毎の使い捨てエプロンがスタプになった。

感染の標準予防対策をスタプと呼ぶ団塊の、午後。

<団塊は幼鳥水虫>

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「センセ、心音は正常やな?」オーベン(指導医)。
「せ、正常と言うよりも。軽ーくですけど、収縮期雑音が・・・」
「ホントに聞こえたか?ゼッタイやな?聞こえたんやな?」

「聞こえたというか、ちょっと音がしてるというか・・・」
「ワシの耳には聞こえんが、正常とは違うんか?」
「白というより、グレーというか・・・。あれって、機能性雑音で」

「雑音が機能性かどうか、判断するのは20年早いッ!」と、師匠に言われた大学院生時代。
その甲斐あって、研修医センセを教える時は年輪のトラウマだけは避けようと思う。

「ンー、その場所でその聴診器の使い方で。僧帽弁逸脱を指摘するのは。
ワシ的に言わせりゃ、3万年早いかもオ」が出てしまう残念。
大学院時代は、1年坊主と4年生じゃ奴隷と神様の差があった。
卒後30年を軽く過ぎ、高齢者医療「チーム医療」にどっぷり浸かると年輪で立場は逆転。

「ほらほら、Pさん。タバコはイカンやろ、心臓に悪いじゃろ」
「87年のうち77年馴染んだタバコじゃ、体に悪かったらもう死んどるじゃろ」
「その点に関しては、22歳から8年しか馴染んでないタバコじゃから。コメント出来ん」

「タバコについては、センセはまだまだヒヨコじゃ。50年早い」
「へエー、センセもタバコを吸ってた時期があるんじゃ」外来ナースG。
「あんたは、吸わんの?」

「軽ーいヤツを1日1箱。3年前から、メンソール。細い指に、馴染んでるのよねー」
「あんたのそのの指、細いか?馴染むなんて、10年早い。まだまだ、ヒヨコじゃの」
「イヤイヤ、ヒヨコの水虫。それとも、ヒヨコの鼻毛?知らんけど」私。

ヒヨコの水虫も鼻毛も知らん団塊の、午後。

<団塊に善哉はイカン論理>

「リハレクで、ぜんざい作ったんね?」
「作った」
「んで?」

「んで?って言われてもなー」
「イヤ。味がどうだとか、添えモンに塩昆布?それとも刻み沢庵?」
「あ、なーんも無し」

「淡白やなー、えらくさっぱり系(語尾上げで)」
「甘さも、さっぱり系じゃけ」
「添えモンで、甘さが引き立つのを知らんのやろか?料理の、基本中の当たり前」

「当たり前って言われても・・・」
「んで?美味かったやろ。自分で作ると3倍美味い」
「鍋に、味付け無しの煮込んだ小豆。ナンか、サラサラの砂糖を入れて煮た」
「餅を入れたんかね?」

「餅は喉に詰めて、あの世に逝ったらイカンから。配る寸前に、おかきをパラパラ」
「ナンか入っときゃ、賑やかしでエエんよ。んで?」
「ナンか、んで?が多いなー。ナニが言いたいんや、センセは」

「ワシの分は、残っとるかどうか。知らんね」
「センセは糖尿か?」
「んにゃ。この体つきにしては、血糖はフツー」

「んでも、最近太ったか?」
「んにゃ、着太り」
「着ても太る人は、食えばなお太るじゃろ?そうすると、血糖が上がるわな?」

「それ、ちょっと違うと思うけど。糖尿が悪いと、着ても痩せるで」
「糖尿は奥が深いのー。んじゃ、取りあえずセンセはぜんざい食べたらイカンとしようや。
次行った時に、残りをワシがいただく。んじゃから、センセはぜんざいはイカン」

私のぜんざいがイカン団塊論理の、午後。

「Sちゃん。昨日のTVで韓流ドラマ見たんよ、みんなあんなんかね?」
「とうとう、Gちゃんに続いてあんたもね。はまっちゃって」
「んで、ピー・ヒョンドン」

「キャー、イケメンー。あたし、お正月休みにゼッタイ韓国ウ」
「ナンで?」
「韓国の若い男って、全員イケメンなんでしょ?あんな感じイ」

「それが、そうでもないって。韓国に行ったことがある、Qちゃんが」
「わざわざ、行ったの。韓国へ」
「わざわざ、確認しに。韓国へ」

「君たち、オカシイやろ?」
「顔以外にオカシイのは、脳みそだけですッ!」
「あんた、腕上げたなー」

「おかげさまで、センセに鍛えられて」
「韓流ドラマもやけど。病院モンのTVドラマっちゃ、ナイチンゲールばっかじゃろ?
女優かモデル風ばっか。それ見た男たちが、うちのナースは全員あんなんとは思わん」

「そらそうだ・・・あらッ、どう言うこと?うちって、この病院のナースのこと?」
「そらそうだ・・・あらッ、やっと気がついた?」
「バチスタのドクターは全員イケメンじゃけど、うちのドクターは確かに・・・」

TVギャップにやっと気づいたらしい、団塊医の午後。

<夢の一億総中流を期待する団塊>

大地震が襲った我が国は、直ぐさま他国の評価が低下し円安に振れ。
国債の評価もいきなり低下して、経済破綻の脅しで本を売る怪しい評論家。
株価が様子見で下がるのは想定内で、平均への回帰で騒ぐ必要がない。
1ドル=82円前後で殆ど変化無しは、戦後の復興のように単一民族の強みか?
と思っていたらアメリカの嵐を受けて、140円を超す円安のトホホ。

 「武士は相身互いとか隣組とか、大家と言えば親も同然」が蘇える。
ピンチをチャンスに変える勢いは残っていたようで、あれだけ悲惨な現状だけど。
とにかく自分らの手で助け合い、我慢もするし出来ることから何かの動きが始まる。

電力不足も「輪番停電」や、給水に列を乱さず列ぶことが出来る礼儀は健在。
だがエアコン無しじゃ、気候変動による激暑に命が脅かされるのは必定。
我先にと自分勝手を言う恥さらしなことは、わが国ではまず無いと思っていたが。

ある程度の民度を保っていた同胞も、背に腹はかえられない。他人まで手が回らない?
消防団員の方が身の危険を知りながら見回りをし、津波にのまれてしまった悲しさ。
会社の様子を見に行かなければ、不運に遭わずに済んだかも?の社員は悔しい。

生きていた「自分のことをさておいて、相身互い。お互い様」は日本独自のもの。
格差を生んだ「団塊の世代」がどうにかしなさい!と言われても、加齢弱体化。
全てを新自由主義のせいにしてきたけど、我が国のピンチに反省しなければ。

格差がウンヌンも、取りあえず横一列でスタートしようじゃないの。
オーストラリアのように、臨時の災害税で国民全員が痛みを分け合い。
島国で育んだ「相身互い、お互い様」精神を、ここで思い出そうじゃないか。

我が国の基本精神は自然と共生で自然は神であり、他国とは異なるスタンス。
他国の宗教観は自然とは闘って打ち勝つモノだけど、先ず受け入れから始まる日本。
鎖国のおかげと島国という立地が生んだ、殆ど単一民族の血は団結する力がある。
戦後焼け跡から著しい復興を見せ、新自由主義にかぶれたライオン総理が壊した日本。
目先の得より将来を見据え、冷静に足元を見つめる日本人にしかできない我慢。

この我慢は地続きで争いが絶えなかった他国とは異なり、真似の出来ないパワーがある。
新興国の安い労働という商品をひとまず置いて、コツコツ地道の物作り。
安物買いの稼ぎ失いに成らないように、幸せ度アップにはナニをすれば良いか?
それぞれがアダムスミスの「見えざる手」の役目を意識すれば、ナンのこれしき!

景気回復で一億総中流を期待しつつも、夢のまた夢だな!の団塊。

<団塊が寝かせる思考>

過去20年以上にわたり、平均年1編ほど書き散らしてきた臨床研究論文。
結果を得る実行速度は、いつもせっかちで汗をかきかき一気に仕上げるのだが。
構想・プロット・結果のまとめ・考案の4段階の間に、やってしまう癖。

各段階が一区切りつくと、すっかり忘れて全く違うことをする。
平均3週間がその「寝かせる」期間であり、私はそれを「熟成期間」と呼ぶ。
その期間に左右の脳みそを交互に使い、思考回路をシャッフルすると熟成効果絶大。

と勝手に思っていたら、あるじゃないですか。
「ipadでつくる究極の電子書斎」皆神龍太郎著、講談社α新書に。
外山滋比古「思考の整理学」を紹介してるんですけど。

「考えを自分なりにまとめるには、よく眠るなどして資料から遠ざかるのが効果的。
忘れていくと言う頭の中の整理が、理解を促進する」と。

確かにフツーの私でさえ、あさ目覚めたときにぱぱっと良いアイディアが浮かんだり。
悩んでいた霧の中の考案が、いきなり青空に変わりすっきりとしたオチになる。
そんな経験は3度や5度じゃない、7度?と言うことで納得した\838は、図書カード払い。

朝目覚めてちょっと試してみようと思ったのが、pdfファイルの合体作業。
これは大したことはねーべと、タカをくくっていたのは正解。
ネットでフリーソフト2ヶ(pdf作成と結合と分割)手に入れて。
15分で作成から結合まで、お気楽楽勝じゃないですか。
次にすることはxmlファイル作成だけど油断出来ない。
これにはいろいろ作法があるのは、書き慣れたhtml作法で想像は付く。

運良く出来上がったファイルを、iPad2に転送してi文庫HDで読み込む。
果たして、指でぺろっとめくれるか?猛暑の暑気払いには持ってこいか?
あ!寝かせすぎてカビが生えつつある、臨床研究のプロットが・・・。

寝かせ過ぎてカビが生えた、団塊の思考。

<団塊にエコ扇風機出現>

5月に入ると、爽やかな低湿度の空気で全身が包まれるのは快感。
流石に雨の前の湿度だけは嫌なモノで、ちょっと動いても汗が滲む。
窓からの風が湿気を含んでちゃタマランから、頼みは機械。

フツーの扇風機グルグルは大げさな時、活躍するのを1台持っている。
上下2連の小型卓上扇風機で元来PC用だけど、マシン用は下だけで余った上は自分用。
音はちょっと大きいけど、涼しさに免じて許しちゃう。

あと1ヶ月もするとフツーの扇風機、エアコンが作動していようがしていまいが活躍。
我がボディに向けてブイブイぶっ放す風は、物心が付いた頃よりお馴染みの風。
大学病院当直時代は、25度設定エアコン+扇風機グルグルが3畳部屋で作動しっぱなし。

おかげで2段ベッドは独占でき、「20分以上居ると凍死する」噂の当直室に早変わり。
「あいつの先祖は、シロクマかアザラシ?イヤ、神経が脂に埋もれて寒さを感じない?」
そんな誹謗中傷を無視すれば、何もなければ心地よい当直生活だったのも懐かしい。

卒業した頃の昭和51年下宿生活ではマイエアコンなど有り得ず、良くてマイ扇風機。
熱帯夜下宿は扇風機の送り出す高温風、朝方に温度が下がらなかったらどうなっていたか。
一夜干しなら軽く出来そうな夜だったから、極寒の当直が楽しみでもあった。

時代は変わってエアコンの温度設定を上げて、扇風機ペアを組むのを推奨?
扇風機とエアコンのコラボ、30年前から行っちゃってます!」けど。

合計諸費電力はどうなんだろ?と思う、団塊の午後。

<団塊の七色ピー>

「センセ、訪問診療してるZさんからお電話。咳き込んでヒューヒューですって」
「とうとう、Zさんも笛吹きババになったか?」
「んなワケネーでしょが」突然突っ込む事務のオニーさん。
「あの人は喘息無かったけど、気管支炎やろか?何時でもエエで、カモンって」

30分後に現れたZさんは笑顔で、車いすに座って現れた。
「んで。ま、こっちに入り。それほど咳をしてないやん」
「看護婦さんの声を聞いたら、咳が減った。んで、センセの声聞いたら、咳が止んだ」

「まさか、ヒューヒューも止まったんじゃ?」
「それそれ」
「確かに、プチプチ言う音はいつも通り聞こえるけど。それっちゃ、リウマチ関係で。
いつも以下やで、新しい音は聞こえんなー」

聴診器を通して、微かに聞こえるピー。
「おろ、今のなに?」
「聞こえたじゃろ、ヒューって」
「ヒューと言うより、ピーやろ。Zさんのヒューヒューは、いまの?」

「そうなんよ、一晩中ピーピー」
言い終わって息を吸おうとして、右の鼻からピー。
「ホレ、聞こえたじゃろ?」

「今のは鼻笛とちゃう?鼻くそが詰まりかけて、鼻が鳴るヤツ」
「オカシイ、不思議じゃ」
「原因は、エアコンにぶ厚いお布団、夜中のシッコを嫌がって寝る前に飲まないお茶」

で、息子さんに車いすを押して貰いながらZさんを見送って、カルテを書いて。
トイレで一息つけば緩む肛門、微かな音が小さくタイルの壁に響くピー。
学生時代の「七色の屁を放つ男」、肛門で演奏する技を思いだす団塊。私ではありません。

<団塊のターミナルツアー>

Qさんはアルツハイマーの末期で、色んなことが分からなくなってきた。
飲み込みも悪いので、食事時間も今までの3倍以上かかるから。
座っている時間も長くなり、スタッフが気をつけて体位を変えても小さな褥瘡。

更に進む嚥下障害で水分補給もままならなくなり、細胞内水分が減って。
その結果は体温上昇をもたらし、脱水が進む悪循環のスパイラルへ。
時々点滴で水分を補えば、なんとか細胞が潤って微熱程度で済むのはせいぜい1週間。

施設スタッフの本気が伝わって、Qさんは施設の居心地がよいらしく良い笑顔。
家族もそれを知っているから、何かがあっても「じゃ入院」とは直ぐに仰らない。
施設スタッフの本気度は熱を増し、家族と関わるスタッフでカンファレンスを持って。
「結局、施設で穏やかな看取りをする」ことに決まった。

それから時々発熱に短期間の点滴で、細々であっても緩やかに時は流れた。
だが時はいつまでも同じ速度を保つことは難しく、Qさんの体力低下を加速させた。
私をヒヤヒヤさせた夏を乗り切って秋を迎え、施設の1泊旅行が話題になり始めた。

来年の話は出来そうになくなったQさんだから、最後になるかも知れない今年の小旅行。
Qさんの参加を積極的に押すスタッフに、リスクを思いつつも誰も反対できない雰囲気。
外来受診の際に「センセ、ご相談が・・・」で、1泊旅行の話題になった。

単なる脱水じゃない感染症の除外で、診察の後で少し検査した結果はマアマア。
「んじゃ、行ってもエエですね?」に、「まだ日にちはあるし、色々準備は?」。
「着替えとか、補給する水分に嚥下食。薬も、バッチリですね。2週間前から」

「ナンかが起こった場合の準備は?」は、即答で「覚悟してます」と来たから。
「救急でかかるにしても、診療情報提供書はまだ書いてないで。主治医のワシが」
「ヘッ、それはまだ・・・。アルツハイマーのターミナルで、DNRは決まってますけど」

「んじゃ。処置すれば助かる場合の、家族へのリスク対応の説明は?」
「ヘッ、ある程度は。んでも、まだ完全には・・・」
「嚥下障害があるけど、誤嚥にはどう対応するんね?」

「ヘッ、ある程度は。んでも、まだ完全には・・・」
「車の中じゃったら、充電式小型掃除機で吸い取るとか。まさか、あんたの指で?」
「無理ですか?」

「入れた指で、窒息するかも」
「センセの指より、とっても安全でしょッ」
「突っ込んでも窒息しないように、鉛筆削りで指を細くしなさいッ!」
「ウッセッ!」

Qさんの小旅行の準備が粛々と進められた、午後。

<巨乳の団塊バイアス>

「センセ、忙しい?」
「んにゃ、ヒマあ」
「聞きましたわよ、ヒマなんですってエ。んじゃ、インフル20人」

「ふぁ?私は誰、ここは地の果てナイジェリアなんて歌」
「ハイ、存じてます。認知症の曾おばあちゃんが、歌ってました」
「んじゃ、そう言うことで1個目のカンファ。ぶちかましてくるかんね」

「んじゃ、その後でオネガイ」
「惜しいなー、残念やなー、嬉しいなー。その後は、2つめのカンファだかんね」
「ホントですかア、2つもカンファがあるなんて。2回、昼寝じゃ?」

「1つはアルツハイマーのWさんの、人生最後かも知れん小旅行について。
リスク管理と対応はどうなっとるんよ?みたいな」
「んじゃ、2つめは?」

「ワシと同じ歳のQさんの、今後の身の振り方について。ワシとスキップで老健か?
それとも、ワシと腕組んでオクラホマダンスしながら特養か?みたいな」
「んで、それが終わったら?」

「屁のジェット推進力で、帰宅ウ」
「んじゃ、盆と正月が一緒に来たように忙しいんだ」
「さてここで問題です、整体師Gさんはホントにカリスマでしょうか?」

「いきなりそう来ましたか。そうなんですよ、Gさんがねー。
お部屋に行くと、ここへ座れって椅子の上。マイ専用椅子ですよ、専用。
んで肩が凝ってるじゃろ?って、マッサージが始まるんです」

「患者さんにそんなことして貰っちゃ、イカンやないの」
「断っても、これが自分のリハビリやって」
「Mちゃんなんか、ベッドに上がれって。流石に、お断りしましたけど」

「んで、マッサージは上手いの?」
「あたしはさほど効かなかったけど、Bちゃんはすんごく効いたって。
でも黙ってると全身に手が伸びて、脇からググッと前へ。思わずキャー」

「あたしはそこまで・・・」
「んで、統計を取って分かったのは。メタボで巨乳の人は、疲れるから短時間らしい」
「タイプじゃないとか?足の臭いがキツイとか?根性がひん曲がってるとか?」

「案外、そう言うぽっちゃりのセンセがタイプだったりして。主治医だし、一度」
「ワシは、ジジイはタイプじゃないの。あっちもそうだから、短時間みたいな」
「あら、あたしは凄く長かったわよ。ターゲット外ッ。でも統計って、正しいわア」

その統計はバイアスがかかってるぞ!とブツブツの、午後。

<団塊の寿命競争>

医者を長くやってくると、「ワシはいつ死んでもエエんじゃ」は裏返しと聞く。
ましてや「センセ、もうダメじゃ。長くは持たん」は、元気いっぱいを感じる。
「マアマアじゃね」と言われりゃ、「そら、当分持つね」が答えになる。

断捨離が流行ったからではないが、ついこの間タンスの整理を断行した。
「まだ着ることが出来る」は、「2年着なかったら捨てなさい」に変わった。
この2年で減量に成功し(禁酒が一番応えたけど)、1.5サイズダウンして。

季節の変わり目に捨てざるを得ないモノが、やたらあるのに気がついていたが。
それでも、お気に入りや憧れが実現してやっと手に入れたモノは捨てがたく。
補修代を出しても気にならないモノも幾つかあって、寿命を延ばしてきた。

「あららー、とうとう来ちゃったワケね」は、10年物のお気に入り綿パン。
メタボ時代に、ぎりぎりサイズをちょい手直しして大事に履いてきた1本。
激やせ(でもないけど)でサイズダウンして、しつこく履こうと思っていた。

補正が終わって履いて筋トレ中に、「あららー、ここってネズミが囓った?」みたいな。
折り返し3.5cmのダブル裾が基本の団塊オヤジとしては、履き続けるにはシングル?
それも何だかナーと、太股に馴染んだ綿パンの命尽きるのを感じた。

医学生時代に巡り会った、濃淡緑で白ラインのタータンチェックは米国サイズでL。
昔はメンクラ(雑誌メンズクラブ)でもジャンパーがフツー、今風に言えばブルゾン。
ジッパーの入り口当たりが、メタボ腹に引っ張られ浮き出して前あきで着用しかなく。

奥様補修で生き返り、私の衣服の中じゃ最も長命なモノになって今朝の出勤のお伴に。
いまだに半袖でも寒さを感じさせず、ちょっと色あせたカーキ色綿パンにお似合いで。
大切に着れば定年を過ぎても使えそうだけど、65歳を過ぎて着られるかな?

本体とブルゾンの寿命競争じゃ、本体寿命を勝たせたい団塊。

<団塊が開けたらイカン鍵>

「んで、PさんのCT所見では肝臓に・・・」カンファレンス中。
「主治医の方針は?」
「経過観察でOKだそうです。次はMさんですけど、オムツいじりが」

「カンファ中ワリイけど、Zさんの血清鉄とフェリチン。オーダーしたかんね」
「ハイ、オーダー用紙はその辺りに置いて」
「ここでエエんか?忘れたらストローで、血イ吸うど」言い残して消える。

病室と廊下を隔てるぶ厚いドアを、引っ張り開ける私。
「うおーい、誰かオランかアー」の叫びを聞きながら病室侵入。
「あらら、Qさん。何かご用時?」にじり寄るベッド。

「あ、そこのあんた。これが動かんが」
「それはー、チャックに鍵があって。開かんみたいやねー、何故か」
「どうにかナランか?」

「ワシ、担当じゃないしイ。開けて逃げたら、みんなに怒られるしイ。困ったしイ」
「開けたら、ここから邪悪なモンが出るんか?」

邪悪なモンを押さえ込む団塊のイカン鍵は、午後。

<団塊の、だから>

「あのさ、*病院って。知っとる?」
「よーく知ってますよ、ウチの前にあるから」
「ナンでか、よーワカラン治療してんのよ。知らんけど」

「よーワカランのは、センセだけみたいな」
「基本中の基本外しみたいな、血圧と血糖コントロール。命がいくつあっても、足りん」
「あららー。*病院ですから、しゃーないでしょ。*だから」
「*の一文字で括るか?全部の医者が不思議なことは無いやろ?
そう言えば半年前もそうじゃった、センセは違うけど」

「*だから、知らんけど」
「しかしなー、悩むな−。使ってる薬は先発品じゃけど、使い方は後発品みたいな」
「*だから、ネー」

「ちょ、ちょっと待ってね。ナンか、*病院に恨みでもあるんとちゃう?」
「近所のモンは、あそこはあんまり行かんもんねー。市外ナンバーの車、良く見るし」
「あそこで1ヶ月入院治療した診療情報があるけど、ゼンブ一から出直しじゃね」

「*だから、それでエエんじゃないですか」
「*だからねー。ワシも気イつけよ」
「会議で、キレないように?」

「センセだからしゃないネーって、言われんようにな」
「熱でもあるんです?それとも、ゴキに噛まれた?」
「ご、ゴキって噛むんか?」

「あたし、この間スリッパにゴキが紛れ込んどって。履こうとして、噛まれた」
「そら噛んだんじゃのーて、踏み潰されるかと思って焦ったんじゃろ。
ギャー殺されるウーって叫んだら、歯が当たった」

「ゴキって、歯があるんですウ」
「歯が無い場合は、ゴキ専用入れ歯とか?」
「やっぱ、ゴキの歯医者が?」

「ワシ、ゴキ出身の人じゃないから。よー知らんけど、あんたは詳しいやろ」
「あたしも、ゴキ人じゃありませんッ!タブン、知らんけど」
「あんただから、その辺は詳しい(語尾上げで)」

「センセだから、そういうことを言うわけですね」
「あんただから。んーと・・・」
「しかし、”だから”で一纏めにされたくないですねー」

団塊は”だから”って言葉で括られたくない、午後。

<団塊の夜光虫>

「センセ、後泊はダメです。前泊なら」
「んでも学会の懇親会に出たら、その日のうちに帰って来れんやろ」
「それが、帰ってこられることが発覚しました」

「あんた、発覚っちゃ日本語ヘン。ワシは、なーんも隠しておらんで」
「分かっちゃったと、言うべきでしょうか?」
「そう言うべき」

「とにかく、帰れるんですから」
「んでも、昔は宇部から高松まで結構かかったで」
「昔って?」

「37,8年前」
「あたし、生まれてませんッ。トロッコ列車で?」
「んにゃ、フツーの鈍行列車で。今は走ってないけどなー、懐かしいなー」」

そう言って、思い出した悪友とのこと。
「んじゃ、今からぜーんぶ鈍行に乗って帰るか?」
「そうやの、ダメでもあと2ヶ月もすりゃお互い大学2回生やもんなー」
「16時の汽車で、高松が朝の5時じゃから。13時間少々の旅とは、余裕じゃね」

山陽本線を乗り継ぎ乗り継ぎで、宇高連絡船乗船待機にたどり着いたのが明け方。
暗闇の中で波だけが静寂を破る音で、受験の疲れがひげが伸び始めた二人を眠気を誘う。

「お前、今度アカンかったら?」
「銀行に就職して、公認会計士でもなろうかな?(身の程知らずにも)」
「ワシは、電気関係の会社で。研究室で、ナンか面白いモン作るか」

「んで、もし受かってたら。ナニ科?」
「ワシは、小児科。子供好きやし。んで、お前は?」
「整形。特に理由はないけど、トンカチとかノコギリとか使うんて。工作みたいやん」

「確固とした将来像が、あるわけではないけど。ワシら、このままでエエんやろか?
将来ナニをしたらエエかなんて、そんなに簡単に決められんじゃろ」

「んじゃ、他大学受験許可証もらえるし。一回だけ?留年せんようにしてな」
「そうやの、1回だけな」
その翌年から、その制度は終了した。

会話はブオーッと言う船の叫びでかき消され、二人は押し黙り虚ろな目で海を見つめた。
真っ暗な海に、天の川が転写されているような輝き。少し離れて、スポットの明かり。
「あれって、夜光虫の群れやろ?」ヤツの一言で、沈黙は破られた。
「港の灯りが映ってるわけじゃないよな、そうやろ」

無言のまま見つめていると、高松港の明かりに変わり全ての世界で眩しく夜が明けた。
神か仏の気まぐれか、県下ベストスリーの知能指数だったヤツの方がダメだった。
ヤツが就職した会社の上司と折り合いが悪かったのか、ヤツの出来に対するやっかみか?
自分で会社を立ち上げてしまったのだから、気に入らん上司のおかげかも知れない。

あの時は小児科志望と言ったけど、結局ボクは内科医になった。
ネットで調べたら、昨今は高松と新山口なら具合が良ければ2時間少々でたどり着ける。
青春からの40年は技術の進歩のおかげで移動速度を速め、時の流れを1/9にしたようだ。
再び宇高連絡船から夜光虫を見る事はないが、団塊の記憶の中で夜光虫は輝き続けている。

<団塊医呼医師い(このみじゃない)>

「センセ、予防接種」
「あいよっ。あ、2名ね」
「ドクター。Pセンセの患者さんは、ダメですよねー」

「その野ツボに落ちたドングリみたいな目で見つめられると、ノーとは言えん」
「3人ですよ」
「ワシの患者さんと足して、253人なら軽い軽い」

「どう言う計算してるんです?」
「電卓ポショポショで、253人にならん?カマイタチ印の高級品やで」
「そう言う胡散臭いのはアカンでしょ、ハリネズミ印の方が」

「んで、インフル5名ね。行くぞー、攻めるぞー、予防接種ぶちかますぞー。突撃イ」
「他のセンセに、頼もうかしら」
「イヤイヤ。お構い召されるな」で、ぐるり回ってステーション。

「んでドクター、個人的なオネガイが」
「ナンか婦長さんに、ドクターって呼ばれると背筋がサブくなるんじゃけど」
「背中に氷でも入れられた?」

「んで、個人的オネガイって言われても。妻も娘も、ワシに似た可愛い孫も居る」
「あたしにだって選ぶ権利が・・・」
「んで、お金と猫の婚活以外なら」

「犬ならエエんですか?」
「んじゃ、獣全般で。あんたも含めて」
「ガ、ガルッ。ウー。あ、パソコンが不調で」

「それをナンで早く言わないの、それは趣味範囲。時に守備範囲」
「1年ぶりに年賀状を作ろうとスイッチ入れたら、プリンターは?って。繋いでるのに」
「繋いでダメな場合って。コンセント刺しても、電気代未払いで電気差し止めとか」

「銀行落としですッ」
「プリンターと思ったら、実はトースターだったとか?」
「パンは焼けませんッ、やってみたけど」

「誰かがいじって、プリンターの設定を変えたかドライバを削除した?」
「それが可能性有りですね。何が何だか、フランス語はよー分からんけど」
「んじゃ、プリンターの説明書に付いてきたCD突っ込めば。ゼンブ日本語の」

「そんなCD付いてません。そんなことしなくても、去年は印刷できました」
「ま、まさか悪霊」
「悪霊って、まさか」

「そのまさか、真夜中にプリンターにスッピンを見せたとか?」
「プリンターって何処で見てるんですか?目は何処に?」
「悪魔払いじゃ」

「ドクター。取りあえず、オネガイします」
「ドクターって呼んで、バカにしてない?」
「あら、ドクターってバカなんですか?」

「ドクター」と呼ばれるほどバカじゃない団塊医の、午後。

<顎脱臼と元オペ室に悪霊を見る団塊>

「センセ、顎が」
「ナニッ、エラが張って顎とデコチンが区別が付かないってか」
「んなワケねーでしょ。Gさん」介護士H君。

「しょっちゅう顎が外れるんで、有名な。ラジャッ、サクッと戻して進ぜよう」
すっ飛んで行くと、病室前でガーゼとゴム手スタンバイナースに出くわす。
「んじゃ、行きますよー。とりゃあで、コリッと音がして納まったでしょ」

「いたあーい」で、再び脱臼。
「看護婦さんは、整復した後2,3分顎を押さえてね。Gさんが喋らないように」
「んで、センセ。今日4回目ですよー、外れたの」

「可哀想じゃね−、何とかナランの?」
「何とかして下さいませ、センセが」
「んじゃ、担当じゃないけど。情報収集してくるかんね」

「習慣性顎関節脱臼」をキーワードにして、サーフィンすれば生まれるアイディア。
元オペ室で今は中央材料室(中材)の倉庫に、抜き足差し足で侵入。
「こう言う場合は、ホッカムリで黒装束が似合うよなー」誰も居ないのを良いことに。

「ホウホウ。こんなモノまで、あんなモノまで。おろ、声が響いてエコーかかって。
んじゃ、失礼して。北原白秋作詞、月光とピエロより。お粗末ながら一節。
泣アき笑いしてエ、我アがピいエロおー。エエなー、上手いな−。自画自賛やなー」
で、色々見繕ってポッケへ詰め込む。

入り口のドアを開けたら、「センセ、今中材に誰か居ましたア?」。ナースD。
「ウワワット。顔で驚かせるなッ」
「ウッセ」
「んにゃ、中にはワシだけ」

「ナンか。悲鳴みたいな、雄叫びみたいな、遠吠えみたいなのが聞こえたでしょ?」
「んにゃ、静かなもんじゃった。あんまり静かなモンで、耳が痛かった」
「どう言う耳してるんですか?」

「こう、数字の3みたいな・・・」
「ホントに聞こえませんでしたア」
「悪霊かも知れん、今夜あたり出てくる予告編とか?」

「き、キャー。あたし、今夜は夜勤。キャー」
「ナニがキャーじゃ、ワシは今からGさんの顎矯正ギプスを工作せねばならん。
中材から悪霊出てきて、ワンバンコ。今夜は悪霊祭りだ、ドンドコドンっと」

「キャー、止めて下さい。ヤダー、ホントにヤダー。帰りたいイー」
「帰って鏡を見たら、映る悪霊。のけ反るメタボおなご」
「ナンか、寒くなってきたわ。プルプル」

悪霊より冷えるナースの4段腹プツプツ鳥肌の、団塊。

最近とみに腹が立つと言うより、呆れてものが言えないことが増えた。
ボキャブラリー欠如した、アンポン・タレントの食い物TVだ。
「柔らかアーい」とか「フワフワあ」が、「美味しい」の表現形と勘違いしている。

「んなモン見たら分かるッ!んで、味はどうなんよ?」の答がないまま、勝手に次へ進む。
噛みしめる食べ物を嫌い、噛まずに飲み込めるのが良いなら。
「流動食があるぞッ!そう言うヤツはふやけたお麩でも食べてなさい!」

ガシガシ噛んでるかりんとうをぽとりと落とし、思わず言いたくなる。
スルメは固いから食べものじゃなーい何て、顎が退化して顎と歯並びのミスマッチング。
顎周辺の筋肉が弱って益々噛む力が無くなり、軟弱なモノを好むようになる。

団塊の世代はガシガし系の食べ物が多く、顎が発達して最悪はエラが張った。
かく言う讃岐男の私は、煎餅と言えば「瓦煎餅」が代表で。
豆と言えば、乾燥した空豆をフライパンで煎った「煎り豆」しか思いつかない。

この2つは、口周りが軟弱なヤツは相手にしない硬派の相棒だ。
両者は、かみ始める時にある種の覚悟が必要だ。
油断したらこの2つの固さは、歯や顎を襲うからである。

噛んだ時に脳天に響くような衝撃波を生じ、直球で脳みそを刺激する。
一瞬だが歯が欠けたかこの2つが砕けたか、ワケワカランッ!状態に陥る。
これが固いモンを噛んだ快感的衝撃であり、味覚の大地震でもある。

その後で砕けた煎餅や豆の欠片が、歯に纏わり付いたり離れたりを始める。
噛む後30秒遅れて思いだしたように出現する唾液は、欠片に吸収され。
さらに25秒経過でようやくペースト化して、味わいの余震となる。

食のドラマチックな衝撃を楽しめる団塊は、けして言わないぞ。
美味しいモノを口にした時に、「柔らかアーい」とか「フワフワあ」なんて。

ひと味もふた味も違う団塊の、堅さ。

<団塊のハイブリッド体質>

「Pさん、おはよッ」
「あ、センセ。回診か」
「んじゃ、先ず挨拶代わりに。皮膚を摘んで、胸の音聞いて。おろ、心臓も絶好調やん」

「センセのおかげもあるけど、看護婦さんのおかげ。有り難いこと」
「これ、そこの・・・聞きたいことが」お隣のベッドから声がかかる。
「ヘッ。あ、ワシ?んーと、Qさんの担当じゃないんよ。スンマセンねー」

「ちょっと、聞くだけじゃ」
「んでも。お小遣いはいくらか?とか、いつからデブになったか?とかは意味ないし。
ゾウリムシと丸虫の違いとかは、ちょっとワカランのよ。ワシって、そう言う人」

「コラコラ、ナニ言ってんですか」カーテンの後から聞こえるナースD。
「んでも、Qさんが聞きたいなんて。珍しい。
主治医のセンセでも、遠慮してるのに。MIHIセンセは、聞きやすいんだ」

「ワシって、聞かれやすい体質なんだ」
「その分、会議でハゲシク言いたい放題。ハゲシク言いやすい、体質なんだ」

「ハゲのところを強調しなくて、エエんよ。言われやすくて、言いやすい体質っちゃ。
いわゆるハイブリッド体質(語尾上げで)」

「そんなエエモンじゃ、ないでしょッ!ハイブリッドに失礼でしょ」
「似合いもせんのにどっかの国で、ブランドもん買って。挙げ句の果てに、真っ赤な贋作。
悔しいから、捨てられずに押し入れっちゃ。金と体型の無駄のハイブリッド体質ウ」

「あ、その情報はKちゃんでしょ?口が軽いんじゃから、んもー」
「尻は重いけど、口は軽いハイブリッド体質ウ」
「もう止めて欲しいわ。自分に甘くて、他人の不幸を喜ぶ身勝手ハイブリッド体質ウ」

ハイブリッド体質団塊の、午後。

<団塊の死亡診断書>

死亡確定ライセンスをもらって既に40年を超し、今朝もその経歴に1枚を追加した。
アラカンを超した頃から頭を過ぎるのは、「自分のは、一体誰が書いてくれるんだろ?」。
自分で自分の死亡診断書は書けないから、何処かの医者が書いてくれるのは間違いないが。

真っ当な字で国際分類に存在する診断名が、診断書に書き込まれるのか気になるところ。
ペン習字を始めて6ヶ月も経つと、頻回に書く書類もやっと苦にはならなくなったが。
こと死亡診断書だけは、いつも緊張するにはワケがあって。

大学院時代に、1週間泊まり込んで迎えた受け持ち患者さんの最後の瞬間。
強烈な脱力感と、真っ暗闇の海へ引き潮と共に引き込まれるような錯覚に襲われ。
ナニを血迷ったか、患者氏名の欄に自分の名前を書き込んだ診断書を渡しかけたトラウマ。

30年を超してもいまだにそのトラウマが消えないので、心の鎮静を図る作業から始める。
手首の回転運動でウオーミングアップ、背筋を伸ばして腹式呼吸3回でスタンバイOK。

その方にとってはこの世で最後の種類だから、書き間違いは許されない。
緊張しながら先ず名前を書き始め、生年月日、性別、死亡時間へと進む。
想定内ではない時間での作業が多いだけに、うっかりミスをしないとは限らない。

この診断書は書き換えが効くのだが、診断書を待たれているご家族が目に入ると慌てる。
それでも1文字毎に手を止めて、チェックをしながら書き進む。
「センセ、書かれました?」なんて急かされても、動じることなく平然なのはワケがあり。

亡くなった方に思いを馳せる時間も必要で、違う世界に行かれたと判断した瞬間が蘇り。
触れた頸動脈も鼠径動脈もピクリとしないし、瞳孔は開いて光りに反応しない。
開き始めた口元を見て顎にそっと手をやり、昨日まで見てきた表情を取り戻そうとする。

赤みがさしていた皮膚は淡い土気色に変わり、皮膚温が室温に同化したのを確認する。
最終確認をしてナースに手渡し、ご家族に渡る1枚の封書。
その時に「静かに逝かれました、大往生ですね」は、手向けのリップサービスか。

亡くなった高齢患者さんと切れかけた糸が、その一言で繋がり家族に安堵が生まれる。
芝居じみたことは必要無いけど、悲しみの表情は自然に私にも現れているようで。
送り出したステーションの空気に、一筋の「お疲れ様でした」が吸い込まれて行く。

こんなことを何時までやるのだろうか?と思いつつ、後輩に委ねる団塊の死亡診断書。
そう言えば、子供の頃に「近所のお年寄りが寝付いた」大人の会話が交わされ。
それから時を待たずお葬式があり、静かに時が流れて行った団塊の記憶。

書くも書かれるも悩ましい、団塊の死亡診断書。

<団塊のパンツ長>

団塊トラッド・アイビーなら、パンツの裾は踝よりやや下が基本。
あえて踝まで上げて白いソックスを見せるのも、ちょっとした洒落心。
ダブルなら折り返しが3.5cmが定番で、長すぎても野暮ったいし。
短すぎりゃけち臭いし、折り返して小さなホック付きが当たり前。

だから腹囲を基本にパンツを選ぶと、切った裾でハンカチが2枚できそうな私。
最近はシングルが定番になり、ダブルはホコリや小石を蓄えるだけになった。
時は流れて踵が隠れる寸前の長さまで降りてきて、一息ついた。

踵とは言っても靴の踵を指すようになり、また切り取る端切れが減った。
これ以上裾が伸びたら眼帯しか作れないかな?と、耳に掛けるゴムを2本用意した。
こんなパンツの長さは若者だけだろうと、大して気にもとめてなかったのに。

先日学会で我が故郷へ行ったとき、前を行くジッチャンの裾を見て驚く。
裾だけ見ると10代としか思えないのに、次第に上にゆくに従って加齢が加速。
30年ぶりに訪れた我が故郷、ジッチャンファッションに異変か?狂乱か?

このジッチャンと店員さんと、パンツ購入を挟んだ会話が想像される。
「お客様、裾はいかがいたしましょう?」
「そうじゃのー、適当にしてつかさんせ」
「今風なら、このくらいで」

「そんなに長いんが、今風か?自分で自分の裾を、踏まんかのー」
「ハイ、お若い方は皆さんこのくらいで」
「若くもないけど、そうしよかいの。靴を脱いだら、松の廊下じゃ。靴下、要らんかも」
てっぺん見るとフツーのジッチャンで、平均したら45歳?みたいな統計処理。

いつもパンツを買うときに、「この長さでよろしかったでしょうか?」だから。
「ンーン、もうちょっと(短い方が)」と言いかけると、奥様の一声。
「そうね、もうちょっとだけ長くでしょ」だから、「まあそんなモンね」。

ダブルの裾とてっぺんの平均が40歳代半ばと自己評価する団塊。

療養病床握手の部屋

4人男性部屋の3人が担当で、直に血液透析になりそうなPさんは血圧が不安定。
「どうかね、元気か?」と言いつつ、先ず手を握り次いで手首の動脈で血圧チェック。
血圧測定とは言っても、私の指先加減での触診だから正確ではなく目安程度。

「センセの手は、冷たいのー」なんて言われて、「心は熱々じゃけど」と返す。
いきなり現れた主治医に驚いて血圧上昇しても、手の効用が血圧の安定をもたらす。
ぽっちゃりした手の温度が上が伝わって、気持ちと血管の緊張が取れる?

お隣のベッドは右麻痺のDさんだから、良い方の手を差し出す。
その手を両手で包んで固いおにぎりを作るほどに力を入れると、頬が緩む。
「んじゃ、今日もリハビリ頑張るぞー」で、シェイクした手を解放する。

更に奥へ進むと、盲目のMさんが出したい手を毛布の中でモゾモゾ待機中。
「Mさん、元気じゃったか?」「昨日も元気じゃったし、今日もな」は定番。
指先が触れた途端に、空気をかき分けるかのように手が泳ぎ始める。
一旦私の手を確保してしまえば、暗闇中視線の停止と安堵の吐息。

「んじゃ、お大事に」で退室しかけると、担当ではないAさんと目線が衝突。
「センセ、ちょっとエエかの?」「ワシでエエの?ナニ?」は、たまに有ること。
「いつも気になるんじゃけど、センセの手はどう言う手をしとるんじゃ?」

「こう、いちおう指が5本ずつ付いとって。ぽっちゃり、色白(語尾上げで)。
ちょっと見ると、キムタク似?あ、似てない」
「ちいとじっくり、センセの手を見せておくれ。ホウ、こうなっとるんか。」

「粉が出るとか、鳩が飛び出すかと思ったかね?お金はゼッタイ出んけど。ナンで?」
「ワシ以外はセンセの担当じゃろ。センセに手を握ってもらうと、気持ちエエって」
「フーン、そうなん。ナンボでも握ってあげる。なっ、フツーの手やろ」

この部屋を退室する時は気が抜けないのは、ビジネスの基本に通ずる。
「客は出口で振り返る」の鉄則は、「出口まで、患者は医者を見ている」だ。
振り返って握手の部屋を手を振りながら出ると、次は手スリスリの部屋だ。

退室時に振り返り、さっき握った手を振る団塊医。

<団塊の甘さ>

禁煙して30年、禁断症状がでるうちはスルメ・酢昆布・キャンデー・ガムに慰められ。
だからではないが、還暦を過ぎてもお勉強や論文執筆には後者2つは欠かせない。
ノンカロリーキャンデーを交ぜ1ヶ月で2袋は軽く、14粒42Kカロリーのガムなら1ボトル。

時折購入するのが、「不二家のミルキー」だが。
ダイエットが流行する昨今、叙情溢れる甘さは控え目になった。
2個頬張っても、強い甘みが唾液の流出を誘わないし舌の刺激も弱い。

その点、30年前から甘さを堅持しているのは「芋飴」なのだが。
3回に1回は虫歯治療後の金属を取られて、歯医者さんのお世話になるから。
この3年は、「芋飴」と戦いつつエンジョイする気力が失せてしまった。

しかし、甘さには硬派な定番が残っている。
その代表として「カンロ飴」を挙げていたが、最近味わって見ると。
軟弱な甘さになったような気もするが、固さだけは30年前から少しも違わず。

ガムと飴は噛むモノで、しゃぶったりするモノではなく。
ましてや、飲むモノでもない。ガリッの音と共に、甘さが口いっぱいに広がり。
かみ砕いた歯の頂上に砂糖の塊を残し、しばらくの間甘い存在感が持続するのも良い。

合成甘味料に舌を汚染された団塊は、本物の甘さに対するこだわりと郷愁がある。

<団塊耳の相棒>

10年も使っていると、どんな高価なものも何回かは修理をするモノで。
毎日使えば馴染んで体の1部になり、捨てることは身を削られるようで手放すのが辛く。
どうにかして使い続けたいと思うのが、人情だろう。

既に10年を超す聴診器、他に3本持っていても耳に馴染むのは1本。
外した時に首に纏わり付いても、違和感なくまるで皮膚の一部になったような。
そして何より、耳の穴にピッタリ来る感じは相性と言うよりDNAが決めていたような。

イヤピースの次に気にかかるのが、胸に当たる丸いメンブレン(膜)。
ベル型お使い方でマニアックなのは、第3音の確認。
ちょいと押さえつけた時に皮膚が膜代わりになって、第3音が聞こえるか聞こえないか。

そう思った時、研修医の指導に使っちゃおうかな?に至る。
ベルで聞こえて強く押しつけるか膜に変えたら消えれば、第3音の可能性がある。
心尖部で「おっかさん」のリズムで聞こえたら、  第3音である可能性が高いとも。

第3音と爪床を押さえて血液が帰ってくるのが遅く足の浮腫なら、心不全かも?
こうして奥様の次に長年馴染んできた耳の相棒は、活躍し続ける。

<脂質代謝久々の団塊>

「脂質代謝は、実は循環器疾患なんです」って言われても、ボク的には30年前から定説で。
大学院の時に、アメリカで発表する上司にひっついて参加した循環器学会。
演題の半分近くが脂質代謝、でも日本じゃ1,2割あれば良い方だったのを思いだす。

なかなか語りが速いけど関西なまりは良く馴染んで、耳に心地よくフンフン頷く。
それに気付いた(まあ、私は最前列だけど)演者は、「そうやろ、そうなんよ」風。
自分のメタボ解消過程を、各種検査や画像で提示して賑やかなことこの上もない。

むかし長寿の沖縄が今はメタボの沖縄に、それをファーストフードや過食で解き明かし。
勢い余ってコンビニ礼賛ロールケーキを見せながら、小さくても生クリームが良くないと。
古来の日本人は飢餓に耐えてきたから、ダイエット効果が出にくくリバウンドしやすい。

勢いがつきやすいセンセの様で、白く濁った血清を見せて。
「これが問題で」なんて言われても、経験的にはもっと凄かった大学院生時代。
「明日ラットの心臓取り出して、潅流実験するから。脂頼むよ」

「しかし、いつも思うんですけど。血清があんなに濁ってエエんですか?」
「あのくらい濁って貰うと、カイロミクロンたっぷりで。仕事がはかどるねー。
先週の血イはエかった、あれで行っちゃってエエよ」

「センセ。焼肉8人前に、牛乳1L。トーストに半ポンドバターでしたモン。
流石に、3日間は刺身しか口に入らんじゃったですよ」
「まだ君は若いからエエよ。ワシがあれやったら、血管詰まるじゃろ」

今考えれば無謀なことをしたモノだと、おぞましい会話を思いだた途端耳に届く講演。
「その点スポンサーの**は、日本人にオーダーメイドされた様な。
私もこれでメタボ解消しちゃって」なんて、交換会の会話を想像。

あらら提灯2、3個ぶら下げちゃって。**連呼すれば、スポンサースタッフ涙。
「んじゃ、せっかくですから。ご質問を」で、知り合いのセンセがウジャウジャ言い出す。
「それってどうなんよ、薬と関係あるんだか無いんだか」を飲み込んで。

「あのー、ちょっと良いですか?」で、ちょいマニアックな質問。
「うーん、論文見たことある様な・・・ちょっとわかりません」の答えに。
慌てて、「あ、スイマセン。後で、ゆっくり」とフォローしたりして。

団塊には、脂質代謝は奥が深く面白い。

団塊はいきなり萩

ちょっとお使いもので、「萩焼なんかエエんちゃう?長州と言えば」と。
1ヶ月ぶりの代休を利用して、ネット情報「近隣の萩焼窯元2軒」を探索。
お昼をいただいて、脳みその地図を頼りにブイブイ出発したのはいいけれど。

想定の先10Kmほど国道を進めど、「脳みそに刻んだ、あるはずのお店が無いッ!」
道路際の標識は「あと18Kmで萩市街」に、「まんま、萩?」には「みたいね」。
途中の道の駅でトイレ休憩の後は、ココアミックス・ソフトで見上げる秋の空。

久しぶりナビ設定に手こずりながら、目指すは萩城跡。
とは言っても80%は一本道で、すっ飛ぶ景色も朧気ながらデジャビュー状態。
観光シーズンとは言っても平日の昼下がり、広い駐車場に2,3台のトホホ。

接近した客を逃がすまいと、ガン飛ばして引き寄せる店員。
とりあえずジャブ「こんにちわ」に、出したお茶で手枷足枷にも「んじゃ、また後で」。
なぜかうろつく猫が多いけど、まさか地元の方が総出で猫の着ぐるみ着ているんじゃ?

2軒のお店でそれぞれ買ったけど、いかにも萩焼。模様無し、色づけ無し、愛想無し。
簡潔なところ潔いと思うのは私だけ?伝統より、アレンジしてモダンなものが目立つ。
古いタイプばっかじゃ売れんらしく、若い世代でも食指が湧かないとイカンらしい。
自宅用を含めて3種類の経済活動で、遊び歩きは正味4時間。

窓を開けて走れば、晴れの中に冷気だけは深まる秋を感じさせた山越えの道。

<出たり引っ込っこむ団塊>

「センセはダイエットした上に、初孫記念の禁酒で出てた腹が引っ込んだそうな。
だからと言ってあたしと比べてどうする?あたしゃ、脳幹部に梗塞貰って返事出来んし。
んで言うことがエエ。」
「Wさんは、最初は糖尿で落ち着いた思ったら。今度は腎臓。その上、血圧。
出るモンがあれば、引っ込むモンもあって。ワシの腹と同じやな」

冗談じゃないで、まったく。センセの腹とあたしの病気は、違うじゃろ。
んでも、ナンかちょっとだけ頭がはっきりしてきたような。気のせいじゃろか?
センセの声がうるさく聞こえて、偶然じゃけど鼻の頭が痒かったから。
効く手で鼻の頭をかいただけなのに、勘違いしてな。

「どっか痛いとこ無いか?ヘッ鼻が痛い。赤くもないし、腫れても居らん。
穴の中は見えんけど、汁も出て居らんし」

冗談じゃないで、まったく。んでも、看護婦さんが聞いた時の返事は本物じゃ。
「おなかすいた?」で、1週間以上ナンも口にして無くてペコペコじゃった。
口に入るモンと言えば、口腔ケアの時だけじゃから。腹が膨れるはずがないじゃろ。

思わず頭を下げたら「ナンか食べられんか、STに相談してみようねーって。
つばを飲み込んだときに、気管支に行く別れ際のフタが具合が良うのーて。
むせるし、咳で出すほどの力もないし、困ったモンじゃ。あの時はエライで。

そうそう、あたしのお隣の爺ちゃんが居らんようになったのは昨日の晩かいね。
ウーとかアーとか、時々聞こえて居ったけど。今朝からトンと聞こえんようになった。
元気で退院するワケがないと思ったら、さっきからばあちゃんの声がして分かった。

病院っちゅーとこは、患者さんが出たり引っ込んだりするとこじゃから。
あたしが出て次の人が引っ込むっちゅーか入院するのは、もうちょっと先じゃね。
いろんなモンが出たり引っ込んだりするとこで、も少し生きとこうかい。

<団塊医の自己格付け>

標準貧乏人社のCEOであるMIBIは、この度MIHIセンセの格付けを変更すると発表。
MIBIによれば昨日までトリプルbであったが、格下げを行った。
その理由は、国際どくとる格付けジャーナルに掲載された。以下、詳細は次の通り。

格下げの理由
1:お上と癒着しまくった電気会社の節電キャンペーンを、「欺瞞だ!」と一蹴し。
推奨設定温度28度を無視して、我慢のヘッタクレもなく夏は朝っぱらから25度。
しかもエコだぜ!サーキューレーターだかんねと、自分に向けっぱなしの扇風機。
冷えるからと言って、座布団を腹の上に乗せる厚顔無恥。
2:構想3ヶ月、デスクトップにファイルを置いて6ヶ月と3日放置するやる気なさ。
委員会では「やるぞ、やるぞ!ホントだかんね。ゼッタイ」言いまくり。
ファイルを開いて資料作りより、ボーッとしてる時間が27倍とはトホホじゃね。
3:「DTMで病院歌を作曲するんだぞ!」は聞き飽きた。グッズを揃えて3年以上。
ナニやってんだか、ケツが重いのにも程がある。ゾウでも、もっとサクサクや!
しかも手に入れたオモチャiPad2に、性懲りもなくDTMソフトをダウンロードして。
値段がソフトの4倍の教科書まで注文して、「形から入るのが得意」な団塊じゃね。

格下げを踏ん張った理由
1:いつまで続くかと思われていた禁酒も10年を超え、三日坊主にしては評価に値する。
2:色んなダイエットでブカブカになった、お気に入りのトラッドブレザー。
断捨離だけじゃなく、某デパートで縮めて貰って冬を待つエコ。
冬の人気モンは照れるじゃん!と、過大評価は評価を下げる。
3:「センセの字は読めない」に、6ヶ月前はヒンシュクを買った次の一言。
「ワシでも読めんのや、他人が読めるはずがないやろ。あんたの先祖は、アホか」
心機一転、始めたイエス・ウイキャンペン習字。週に四日は、書いてんだかんね」に。
「最近のセンセの字、ハネとかトメがあるけど。体壊しました?脳みそ溶けた?」
スタッフの絶賛の嵐は町内犬猫の間に広がり、疑い深いトラちゃんだけはブツブツ。
「そらあんた、アホでも毎日すれば多少は形になるやろ。ゴロ、ニャーオ」。

2023年春、MIHIセンセに対する標準貧乏人々社の格付けはbbcとなった。
しかし雰囲気覗き見社のCEOであるHEHは次の様に語り、トリプルbの格付けを変更せず。
「禁煙に続き禁酒もギブアップしていないのを評価し、一定のメドまで見守りたい」と。

団塊医の自己格付けは、甘い。

<言いすぎの団塊は葉隠れで反省>

地方学会は研修医の練習台だったり、総会で喋るにはちょっと・・・みたいな。
自分たちのグループの発表が終わると、次の発表スライド開始と共に撤収が常。
座席は準備した1/10もあれば事足りて、逆にデビュー戦を飾る研修医は安堵する。

極たまに抄録を読んでナンかイチャモンつけちゃうかんね!が最前列で睨んでる。
ありきたりの質問に立ち往生しても、「共同演者ですが・・・」オーベンの助け船。
「で、この組織病変は典型的な抗癌剤Dの心毒性と言えたので報告しました」
「どなたか、ご質問追加はございませんか?」定番の座長台詞。

終わったね!と、パラパラ帰りかけた時。
「あのー、1つ良いですか?」
「あ、そうですか。どうぞ、手短にオネガイします」
時間が押してんだから。んーもー、座長は困ったちゃんよ!風リアクション。

「典型的Dの心毒性の組織病変と仰いましたが、初の論文は米国のP.Dセンセで。
その後は英国とフランスで発表され、この10年間で30ほど論文が出てますけど。
Dによる組織病変は殆どが空砲変性で、それはDだけじゃないと最近の論文が」.
院生時代ウサギで心毒性研究して論文書いたから、黙っちゃ居ないのよね。

演者のつばを飲み込む音をマイクが拾い、視線の先のオーベン腰浮かす。
「その件につきましては、病理のセンセが典型的だと・・・」
「共同演者ですが、センセとは後ほど廊下でその点に関してゆっくりと」

「あ、H・・・センセ<あんたの子ベンか、スマン。突っ込み、きつかった?>」
学生時代にお互いやりたい放題だった悪友が、オーベンとはトホホ。
「そうですね、私のウサギの実験論文がありますので。お送りします」
「じゃあ、次のセッションに」で括った座長。

あの頃は勢い余って、鼻息荒く。ワシって凄いかもオ?状態の世間知らず。
「地方学会だからって、舐めてんじゃないだかんね。エエか、エエか。
泣くか失神するまで、突っ込みまくっちゃうんだぞッと」。
言い過ぎた、若気の至りの地方学会。

もうちょっと早く葉隠を知っていたら、こんな事にはならなかった。
葉隠曰く、「人を先に立て、争う心なく、礼儀を乱さず、へりくだりて・・・」
葉隠には珍しく激烈でない、常識的な教訓もある。(聞書1-163)

<団塊が想う療養病床のDNRとQOD>

医療人はクライアントのQOLが優先でされることは、言うまでもない。
だが時にQOLを考える時に、クライアントのニーズとディマンドにギャップがあって。
ことに家族が混じると、病気とは関係無い部分で思いも寄らない要求があったり。

スタッフだけが、クライアントと家族の中で葛藤するのではなく。
中庸でも良いから納得出来る処遇を、知恵を出し合って模索する必要がある。

急性期病床と療養病床で、クライアントに対応が変わる訳ではないが。
療養病床では平均年齢が高く、QOLだけではなく看取りの中でQODを意識せざるを得ない。
我が病院でも、数年前から「デス・カンファレンス」を行うようになった。

先輩が後輩に向かって、「んで。どうやって、大事な患者さんを殺したんや?」
血の気が多い先輩が多い医局会カンファは、これだけで研修医は涙目で声はうわずる。
ちょっと元気な研修医は「殺したなんて、不謹慎ッ!言葉を撤回してくださいッ!」。

「言葉の綾やけど、スマン。言い過ぎた。何処を失敗したか?に変えたるわ」の逆襲。
百戦錬磨の先輩の厳しい突っ込みに鍛えられ、若い医者は成長した。
最近じゃそれを噂に聞いただけで、入局者が激減するらしい。生ぬるいッ!甘えるなッ!

我々の場合、大学病院にいた頃のそんな「デス・カンファレンス」とは全く異なり。
可能ならご家族も交え、主治医の臨床経過を提示から始まって。
「まだ何か他に、させていただけたことはなかったか?」
「もっと違う対応はなかったか?本当にあれで悔いはないか?」
亡くなった患者さんへ行ってきたケアやキュアについて、真っ新な状態で見直す。

数年前の日本老年医学会総会でのテーマの1つに、QODが取り上げられた。
QOLほど馴染みはないが、死の質と言うか見方を変えると看取りの質としてのQOD。
QODと共にDNRが時に勘違いされるのだが、DNRだから何もせずに放っておくのではない。

DNRで匙を投げ全てを見てみない振りをして、クライアントの安楽を奪ってはいけない。
全知全能を傾けて精一杯の努力でQOLとQODを意識するワケで、僅かな手抜きも許されない。
さび付いた脳みそをフル回転させて、1分でも1秒でも長い安楽を維持するのが勝負所だ。

葉隠曰く「人はいずれ一度は死ぬものにて候」であり。
「武士道と云うは、死ぬことと見つけたり」だが。
武士ではない我々のクライアントも、葉隠精神の精髄に習い。
人生の大先輩方々が幕を引くまで、生への完全燃焼をしていただきたいものだ。

燃え残りとも言える心残りが、僅かなりとも無いようにお手伝いしたいと思う。

<団塊の挫折>DTM

指短い、楽譜は読めない、ピアノが弾けな三重苦だけど、7,8年前から作曲希望。
ソフト「らくらく作曲名人」もV1からV2へアップだけしても、一曲も出来ない。
不人気だったのかソフトのバージョンアップは止まり、OSは先へ先へ進んでwin7不対応。

ただ1台だけ生き残っているWinXpマシンだけが頼りで。
これが逝っちゃったら、ソフトは燃えないゴミになりますけどオの悩み。
ある日「初心者・楽譜読めない・直ぐに作曲」のキーワードに引っかかるソフト。

「ジャズ風」・「スローテンポ」・「明るい感じ」をクリックして作曲開始すると。
カップラーメンが出来るより速く、何かしらのメロディが出来て。
自分のホームページに貼り付けたけど、重くなるので直ぐ外し。

色んな要素をクリックしても、ある部分をベースに似たようなモンが出来るのに気付く。
んなん、10分前に聞いたような感じイ。これでエエんか、責任者出てこいッ!
それでは手を変えて、コードを打ち込んだら勝手に作曲してくれるのを試す。

学生時代にフォークギターで覚えたコード進行、「C-Am-Dm-G7-C」はお馴染み。
唯一覚えてるコードに、シャープとかフラットを付けると音痴風メロディでアワワ。
それじゃイカンと学会出張の時に、ビルエバンス師匠の楽譜集を銀座ヤマハで手に入れる。

さあこれでコード進行は純粋ジャズだし、なんせエバンスそのものだから一安心。
全く同じコード進行でソフトにやらせて、BGMにして読書すると。
なにやら胸騒ぎ?を感じ、いきなり不整脈が出まくりみたいで体に良くない。

iPad2のアプリを探索していたら、「お気軽作曲アプリ」\350とは目に涙ザーッザー。
立ち上げると目に飛び込んだのが、ピアノロールと五線紙にはじんま疹が出るでしょッ。
バーチャルピアノの鍵盤をポンと押せば、ポンと鳴るのはナンでやろ?でその日は暮れた。

マニュアル本を買いに走ればアプリが10個買えるお値段でも、背に腹は代えられない。
初心者に優しいはずが何処を開いてもワケ分からん状態で取りあえず休戦。
ネット情報で「初心者・DTM講座」をキーワードに、泳げないのにサーフィン。

どうやら最近の作曲方法は、かなり様変わりしているようで。
ループと呼ばれる「細切れメロディ」を、コピーして貼り付け。
後はソフトにお任せすると曲が出来ちゃって、超初心者でも曲の作り放題?

そのループ素材もフリーから有料まで、多岐にわたって。
10年越しのDTM再開のために、「超」初心者でも使える噂のソフト購入を思案。
そのソフトを使いこなすDVDも、ループ素材のおまけ付きであるらしい。
それに気づいた頃にはOSは進化してWin11、齢の退化が進化して頓挫した。

長州のモーツアルト?のはずがフツーの爺になった団塊の、午後。

<団塊の手回診>/H2R> 今までは聴診器を右手、左手は皮膚をつまんで乾燥具合のチェックだった。
どちらかと言えば一方通行なりがちな診察で、次への展開は無いものと思っていた。
ところが昨夜の健康TV番組で、認知症の問題行動に手をスリスリが効くらしいと。

患者さんの手首を中心に、広げた両手で挟むようにして5cm5秒で摩るのだと。
これを繰り返しているうちに、認知症の問題行動(粗暴な行動)が消えたらしい。
どこかの大学の先生も「案外いけるかも」との発言を聞いて、半信半疑のラウンド。

今までのラウンド診察を終える頃、「おろ、来たね。服や聴診器を引っ張らない」。
でポッチャリ両手を広げて、ゆっくり手首マッサージ開始するとあらら。
つかんだ服も聴診器もサクッと外し額のしわが伸び、ナンか良い感じ風。

「Pさん、ワシはあんたの見方やで」オーラを、ビュービュー伝搬させ5回繰り返す。
全身リラックス状態に入ったようで、手足の緊張は取れ表情も柔和に見えるから不思議。
これはナンかの偶然?それとも実験結果はバイアス?、はたまたワシってサイババ?
3人中女性の2人は有効残り男性は無効の結果は、予備研究としては上出来かも。

「ねえねえ、どうするウ?Gセンセが担当でしょ。電話してみたら、あたしらじゃ限界」
「ほえ、あんたらにも限界ってあるんだ。縦横無尽、視野狭窄、向かうところ敵無し。
そんな貴方に誰がした?みたいな」

「んでもオ。Dさんは認知症は軽いけど、やることが激しい」
「ベッドの枠を歯でガリガリとか。口から火を吐くとか、逆立ちして放尿とか」
「どれも見てみたいけど、違いますッ!粗暴な行為と発言が、目に余る。耳にタコ」

「んなん、ここじゃフツー。ワシなんか、枕の濡れない日はない。あんたらの虐めで」
「ナニ言ってんですか、あたしの方こそ」
「朝起きたら、布団が異臭を放たない日はないみたいな」

「下半身はしっかりしてます、まだ」
「逆に、その分だけ首から上の方が・・・」
「ナニか仰いました?」

「んで、閑話休題。薬ならプラマリール、無料でやるなら両手サンド・スリスリ療法」
「その、サンドイッチ・スリスリって?」
「んじゃ、実演。U君、腕を出す」

「ハア、こうですか?」
「んで、ここを5cm5秒でスリスリ。そん時はワシは悪魔やない、エンジェルやで。
そういうオーラを、手のひらからぶっ放すわけよ。オイルを使うとエエそうな」

「アロマオイルとか、エエんじゃないですか?」
「天ぷら油で、ころもサクサク。天つゆ濃いめ(語尾上げで)」
「手丼、作ってんじゃないんですから」

「それはさておき。婦長さん、やってみ」
「んじゃ、U君。腕を出して、あたしはBKA49のFちゃんよ」
「センセの腕で、スリスリをオネガイします」

「なんで、U君はキョヒるの?」
「そら、U君にも選ぶ権利があるよなー。あんたもしかして、ワシってタイプ?」
「そういうワケじゃ無いッすけど。んでも練習台がセンセじゃ、なんで?」

「そら、あたしだって選ぶ権利が」婦長さん。
「コラコラ、それをそのままご返杯ッ」
「んじゃ、患者さんにして来ようかなーっと」

「そら、Kさんにも選ぶ権利が・・・7倍暴れるかもオ、噛みつくかもオ。うーガルッ」
言い終わる前に出て行った、ラッキーな婦長さん。

手の回診がリニューアルした、午後。

<団塊の夏休みの宿題とパチンコ>

大阪大学の池田新介教授の調査から、次のように引用している。
1)タバコを吸う人は、ギャンブルもやるし酒もやる
2)タバコを吸う人はそうでない人より不幸であり、年収が200万円減ったのと同じ
なのだそうだ。

経済学では、分かっていても止められない財を「中毒財」と呼ぶ。
その特徴は、
「今それを消費する満足度は、過去にそれを多く消費しているほど大きくなる」と。
「ヘビースモーカーだった人ほど、明日以降のタバコが美味い」と言うことらしい。

もともと後回し行動を取るタイプは、中毒財から抜け出しにくいらしい。
「夏休みの宿題を休みの最後にやった」と答えた人は、
1)タバコを吸いやすく
2)ギャンブルをしていることが多く
3)借金を背負う確率も高い
なのだそうだ。

不幸になるのが分かっていても、中毒財から抜け出せないのが依存症の最大の不幸。
最近、韓国・台湾ではパチンコが法的に禁止されたそうだ。

結婚したときにタバコを止めた。初孫が生まれて酒を止めた。
大学院の時のオーベンに付き合ったパチンコは、オーベンから独立したのを機会に止めた。
先輩に連れて行かれたオートレースは、ビギナーズラックの1度で止められた。

私の小中学時代の夏休みの宿題は、休みが始まって1週間以内に全て終わっていた。
ギャンブルはしない、借金はない、ナイナイ尽くしのあたしの人生。
「金も要らなきゃ、女も要らぬ。あたしゃ、も少し背が欲しい」。

出典;競争と公平感(P114-P116)、大竹文雄著、中公新書、2010.中央公論社、東京

<日本人って凄いなと思う団塊>

ピンチにじっと耐えたり、コツコツ努力するところは日本人だけじゃないかも。
でも我慢と節度のある態度は、ピンチになって初めて試されるモノで。
この度の凄まじい至難に、助け合う心を持って痛みを分かち合うのは凄いと思う。

学校の先生が子供達を避難させてから、電気とガスの処理をして逃げたことを、
赤い国のネットでは絶賛していたけど、日本人ならフツーだと思うことが凄い?
地震が起こった時、子供達を放って置いて真っ先に逃げ出したあちらの先生とか?
「災害が起きた場合、中国の学校は地獄になるど日本の学校は避難所になる」だそうだ。

ただちょっといただけないのは、農耕民族の悲しさ。
ピンチが起きると、次のチャンスまでじっと耐える為に蓄えをするDNA。
このDNAが騒ぎ出すと買いだめ現象が起こり、お店から品物が消える。

でも狩猟民族じゃないところは、ちゃんとお金を払って蓄えること。
これが多くの国じゃ暴動や略奪に走り、店は壊され品物は盗まれ放題。
物心が付いてから災害後の略奪なんて、日本じゃ見たことも聞いた事もない。

ましてや被災地でのお互いの助け合いの報道に、胸が熱くなり涙腺が緩む。
ボクが先ず出来ること第2弾で、余ったり使わない衣類を寄付することに。
そして同僚の若い医師とナースが、原発事故が有った近くの病院へ明日出発する。
「腰がイテテじゃなかったら、ボクが」と、我が城を守る役目に徹する団塊。

<団塊にノストラ水星接近>
「婦長さん、来月の28日は早出にしてくださいません」の介護士P。
「エエけど」
「家に居られんワケって、ナンやのん」突っ込むナースW。

「水星が地球に近づいてきて、大変なことが起きるんて」
「あー、知ってる。ナンたらゴンのコンピューターが、言うたんでしょ」
「墓場にゴンとか、トイレにゴンみたいな?」

「ナンで墓場やトイレに、コンピューター」
「んで、ナンが起きるんね?んで、それって、ペンタゴンやろ?」
「あ、そのゴン。そらセンセ、色んなことが起きるって。占い師も言うてますウ」

「色んなおもろいことって。例えば、んーと。あんたの顔以上に、おもろいっつーと。
あんたの鼻の横のほくろに、金色の毛がウジャウジャみたいな」
「どこが面白いんですかッ、気色悪いだけでしょッ!」

「んで、何故に早出?」
「ネット情報によるとー。午前中に大接近するらしいんで、家で独りで居るのは怖い」
「どんな男でもエエから、かっさらって。そいつの後ろに隠れれば、エエんちゃう?」

「盾になりますかね?」
「独りで死ぬよりましやろ?」
「んでも、死ななかったら?」

「死んだ気になって、諦めるとか」
「ヤですよ。選ぶ権利は?」
「相手は水星やで、ドッカンドッカンくれば一網打尽。全員即死で、選んでるヒマなし」

「どっちにしても、絶体絶命かア。やっぱ、水星がググッと大接近するんでしょうねー」
「MIHIセンセは、どう思いますウ」
「どうって言われても。タブンそれって、トンデモ水星かノストラ水星やろ?」

「キャー、名前まで知ってたりして」
「不景気になったら、一儲けしようと。トンでもないこと言出すヤツが居るんよ」
「そうそう。んで、怪しい宗教が怪しいこと言い出して」

「全財産オフセした人だけ助かりまっせー、みたいな」
「Pちゃん、ミョーなこと言われてミョーなモンに着いていったらイカンよ」
「センセみたいな、ミョーな?」

「そうそう」
「ワシの予言も水星も当たるで。メシトラダムスって名前で、占いコーナーに出てます」
「アホくさ。それなら、水星は遠ざかるわね。ゼッタイ」
「水星がぶち当たる前に、定期処方と入院サマリー整理しなきゃ」

当たるモンなら当ててみろノストラ彗星!の、団塊。

<団塊だってズルしたい>

複雑なズルと、分かりやすいズル。
どっちが笑えて許せるか?聞くまでも無いけど。

「センセ。それって、ズルくない(語尾上げで)」
「それじゃ何か、ワシが見るからメタボなのに。ウエストが89cmじゃ、アカンの?」
「言うことなす事、全身が胡散臭いわア」

「あと1cm多いとメタボ健診に引っかかるんやけど、フィー危ねかった」
「そこまで強引にお腹を引っ込めたら、フツーと10cmが差が出るっしょ」
「んじゃ、何か?ワシのウエストが2cm増えると、デブ猫が激やせ犬になるワケ?」

「んなことはありませんけど、小細工しちゃズルいってことオ」
「そこまで言うなら、黙っちゃないよ。洗いざらい、あんたの秘密を言ってエエか」
「な、何をいきなり。あたしにだって、秘密の1つや2つはありますけど・・・」
「たった2つとは、すでに貴方は化けの皮がボロボロ剥がれて。スッピン状態」

「キャー、なんてことを」
「キャー、体型矯正ギブス。キャー、厚塗り仮面バケ化粧。キャー、んーと・・・」
「キャー、もうそこまでで結構ですッ!」

「もっと言いたい、言わんと寝られん」
「ハイハイ、2cm位なら許しましょう。でもホントに2cm?」
「巷の産地偽装に比べりゃ、あんた。蚊の飛ぶ音みたいな、すかしっ屁でしょ?」
「例えがワカランッ」
「もっと簡単に言うと。あんたが付き合ってる彼氏に、歳を3つ誤魔化しているような」

「キャー。ど、どうしてそれを?」
「キャー、知っとるでー。もっと言うたろか?」
キャー、止めてエ。センセのウエスト、50cmにしますからアー」
「キャー、そこまで言うと笑えるズルや」

世間並みにズルをしてしまった、団塊医。

<団塊の無料クラウド(エバーノート VS KDrive)> 昼休みに筋トレ読書で15分余らせて、駄文を書いているのですが。
家に帰って10分で推敲と追加のファイルは、今まではUSBで持ち帰っていたんです。
公用(患者さんのデータファイル)は、医局から持ち出しませんけど。

考え事をしているとついUSBに保存を忘れたり、持ち帰ることを忘れたり落としたり。
病棟のPCで仕上げをするために刺したUSB、きちゃないウイルスをもらったり削除したり。
で、話題のクラウドで駄文だけ「何処でも駄文」で行っちゃおうかと。

情報を収集すると、エバーノートが使い勝手が良いらしい。
んで4台のマシンにインストールすれば、「何処でも駄文」のドラえもん。
新しいノートにtxtファイルをロップして、サクッと貼り付けは便利。

エクセルファイルはどうかいな?あらら、OKとはコラまた便利なと思ったのもつかの間。
2回目にエクセルファイルをぶっ込むと、「それ以上はプレミアム無料金でっせ」と。
たいした額じゃ無いけれど使用頻度を考えると、USBでもエエんじゃない?

ネットで溺れながらサーフィンしていたら、あるんですね−。
キングソフトから「2GB]限定でなら、エクセルもワードも入れ放題の「KDrive」?。
再起動したら「書き込み禁止ファイルでっせ、イカンよ」サインが出っぱなし。
再インストールすると一回だけなら、何でもOKだけが再現され。困った!

早速メーカーに問い合わせたら、「仮想ドライブを削除して・・・云々」
なんや楽勝かと思いきや、再起動で「仮想ドライブがありませんけど、エかった?」。
そのまま再インストールで上書きすれば、ちゃんと使えるようになりました。

他にも色々あるらしいけど、2つ比べて見た結果は私的にはKDriveかな?
それもエかったけど、メーカーの対応がすこぶる結構でとってもエかった、午後。
安心しきっていたら翌日、「書き込み禁止ファイルでっせ、イカンよ」で悩む。
WinXPもWin7も快適で、もしかするとWinVistaと相性が悪い?Win8なら?Win10なら?

悩みまくってドロップボックスにしちゃった、団塊のクラウド。

<団塊の高齢者死亡率と地域住民結束>

ミネソタ大学のCariJo Clark先生によれば。
「高齢者の脳卒中死亡率は地域住民の結束性と関連する」と。
Stroke.:2011;42:1212-1217  に発表した。
糖尿病や高血圧などの心血管危険因子を除外して、研究を行ったところ。
地域的結束スコアが1ポイント増加すると、脳卒中死亡リスクが53%低下するらしい。
その理由の1つとして、
「地域住民の結束性が高い地域に住む高齢者は脳卒中を発症した場合、
近所の目配りがある。それによって、迅速な助けが得られるから」ことだと。

アメリカだけではなく、経験的にわが国でも当地も例外ではない。
特に昔の田舎は近所づきあいが強く、互助的慣習が多かった。
過疎化と共に地域住民の結束性が欠落し、孤独死を恐れて施設入所が増えた。

一昔前は認知症の方の在宅率は、沖縄がダントツで1位だったと記憶する。
収入も就職率も最下位かも知れないが、お年寄りが尊敬され大切にされる豊かさ1番。
ヤマトンチューは核家族化が加速し、「近所づきあい」は死語と化した。

その点ウチナンチューは、小さな島の中で「隣組」が生きているらしいけど。
景気の悪化や高まる人的流動性で、良き風習を失って欲しくないし。
CariJo Clark先生の研究を、改めて地域住民の結束性を考え直すきっかけにしたい。

出典:Medical Tribune 2011.7.21.7page

<団塊の円安>

災害後の一次産業も復興に向けて動き出したけど、風評被害が邪魔をしている。
製品の部品工場も在庫に助けられて、徐々に動きが加速しそうな勢いに邪魔する円安。

やっぱ日本の底力なんだろうか、以前の読みじゃ円安は持ち直す?
無策政府の評価低下でも、起死回生の軌道修正は無い?
最近じゃ150円前後をウロウロして、経済評論家はあれこれ言うけど。

結局は粘り強さが折り込まれても、ドル高に負けて超円安。
震災から2ヶ月経っても、チャリティコンサートが催され。
この田舎でも人が集まって、主催者が驚くほどの募金だった。

意外と日本人も捨てたモンじゃないと、思ったりして。
東南アジアのさほど裕福とは思えない方々が、募金してるのを見ると胸を熱くする。
同胞の為にもっと頑張らなきゃ!と思ってると、何やら胡散臭い政治家の動き。

やだねー、やだねー。
人の暖かい気持ちを利用して、強引な政策はイカンのやないの。
ミョーな税金を作ったり、ツマラン国債を発行しようとしたり。
はたまた、消費税を上げる為ミョーな理由をでっち上げるとか。
それなら、復興するまで色んなチャリティの催しを続けた方がまし?

諸物価値上がりに襲われる、団塊の円安。

<団塊医と半歩手前で生きる>

「Wさーん。分かるウ、ワシやでー」
そんなこと言われても、脳幹部って言うらしいけど3日前に梗塞を貰ろうて。
声を出そうにもなーも出んし、手も動かんし首も振れんから。
いくらセンセが「おーい、元気か」に、返事のしようがないんじゃ。

あれは10年は前じゃった、センセに初めて世話になったのは。
血圧の薬をもろうて3年目、転んで骨折って入院したら検査して言うたよな。。
最初は「糖尿一歩手前」じゃったが「半歩進んだ」って、食餌療法が始まって。

んで、嫁にナンか美味いモンをこっそり持ってこい言うたら。
「おばあちゃん、食餌療法中ですからなんて。優しい顔して、酷いこと言うんじゃ。
仕舞いにけんか腰で「そんなら、なーんも要らん。さっさとお帰り」って、言うたんじゃ。

それをセンセに言うたら、これまた腹の立つこと。
「Wさんは、93にもなってトゲを出したらイカン。もっと丸くならにゃイケン。
世話になってる嫁さんには、1歩も2歩も下がっとらんとナ。言えばエエってモンじゃない。
せめて半歩前で、言いたいことを押さえてナ」じゃと。
あたしが嫁に来た頃は、姑には5歩も10歩も下がっとった。

そんなこんなで、8年目。検査したら、腎臓が弱っとるって言われて。
どんだけ弱っとるんか?って聞いたら、「人工透析1歩手前じゃっ」って。
去年の春の検査じゃ、「透析、半歩手前」なんじゃと。ハアー。

んで言うたんよ、「93のばあさんに高い金使こうてどうするんじゃッ、無駄じゃ」って。
なんでも、シャントたら言う血管の手術してもエエこと無いことが多いって。
週3回1回4時間の透析は93には堪えるらしいし、透析の後半で不整脈も出やすいって。

嫁も「そうですわねー、止めましょう」なんて、優しいことを言うてくれるんじゃ。
ま、嫁の優しさと思うで。3年前に、息子に先立たれてしもうたからな。
しょっちゅう「早う息子の所へ行きたい」って、言うとったし。

それで、今度じゃろ。娘と嫁相手に、センセが説明するんが聞こえるんじゃ。
「脳梗塞にしては危なかったけど、なんとか半歩手前で踏ん張ったんですわ」って。
あたしゃ93じゃけど、苦しくなく安楽に最後までオネガイしようと思うんじゃけど。

これが困ったことに言えんのよ、薄目を開けて見とったら聞こえてきたんよ。
「いくら踏ん張っても、あと半歩。急にってことも、十分あります」じゃと。
前から言うておったけど「逝く時は楽に気持ち良うナ」じゃと、センセに。
歳も93で心残りはないけど、半歩手前でもうちょっとセンセと生きとくかの。

<27000円になる団塊>

35年読みあさってきた(一部は殆ど読みこなしていないけど)、我が蔵書群。
棚が歪む程になってとうとう焦り始め、処分することに決めた日。
背表紙を眺めるだけになった蔵書は、生きてる間にもう1度開けることはない。

自分のエッセイや論文が掲載された雑誌類は、自己満足の保存だから。
気持ちを切り替えれば直ちにヒモで括って、積み上げ再生紙に廻す手はずは整う。
気に入ったエッセイの文庫本は、破砕されるのは悲しく第2の人生へ向かわせよう。

やっとの事で半ばまで読み進めた哲学入門全集は、シミが付いて取引できず。
写真テクニック全集も度重なる引っ越しで、9巻の内の第7巻が欠番でお蔵入り。
本屋で探そうと思って居た本が、思いかけず発見したのもありその意味で成果有り。

しめて\5000だろうから、ファミレスくらいには行けると思って居たら。
「では、これで宜しいでしょうか」、明細書の\27000に驚くMIHI夫妻。
この\27000の内から端数を外食に使い、本を買う気をしばらくの間は押さえ込むのは容易。

ファイルケースに放り込む途端に、電子書籍端末に気持ちがなびくのは何故?
立つ鳥跡を濁さず身辺整理だが、捨てる技術なる本も読んだけど実行できないことも多い。
物を持ちすぎない努力も潔さも大切、懲りずに蔵書処分記念にかさばらない物を買おう。

<antique団塊医師のススメ(推敲版)>

>

高校生の頃から落語を聞くのを趣味としていた。
日曜日の夜7時過ぎ、ラジオから聞こえてくる落語を部屋を暗くしてよく聞いていた。
噺家が自分に向かっているような臨場感がたまらなく好きだった。下町ものが好きで、
中でも出来の悪い若旦那の噺によく出てくる”横町の熊さん”の大ファンであった。
いつも飾らず少しおっちょこちょいで、憎めなく、親しめて、僅かに頼れ、いつも正直
に生きている”熊さん”であった。
医者になったとき”熊さん”に憧れていた私は、”熊さん”みたいな医者を望んだ。
これは今の医療界では、antiqueな医師なのだろうか?

パターソンによると”医者の三つの権威”というものがあるそうだ。
 それは、
知的権威(SAPIENTIAL AUTHORITY)
道徳的権威(MORAL AUTHORITY)
カリスマ的権威(CHARISMATIC AUTHORITY)
だそうである。

”熊さん”医者に我が身を振り返って上の三つは当てはまるかと考えたとき、どうも
一つもないようである。さてどうしよう。
 先ず、知的権威。これは今後の努力次第ということで勘弁して頂こう。次いで、道徳
的権威。常識的で平均的であることには自信があるから(タブン)、これはなんとかい
けそうだ。
さて、問題はカリスマである。”熊さん”にはどう逆立ちをしてもカリスマの匂いが
しない。軽薄なマスコミならいざ知らず、現代の医者にパターソンのカリスマ的権威を
要求することに問題はないか?医者も患者も、大病院を好む風潮は否定できない。そう
してみると多くの人が、器である建物にカリスマ性を強く感じている?と思うのは全く
間違いとは言いきれぬ。F病院事件は記憶に新しい。建物も、機械も立派なF病院で、
医者を装った医者ではない人の診断?判断?(多分まやかしであろうが)によって多く
の女性が騙され手術をされて泣いた。経験もないのに心臓検査や肝臓手術をして、患者
を痛めつけたのは記憶に新しい。今の医療にはカリスマ的権威は必要としていないと結
論し、自分が目指すのは”熊さん”医者しかないだろうとなった次第。

「よう。熊さん。まんじゅう食い過ぎて腹こわしちまったよ。診ておくれよ。」
「あいよ。」
「こりゃあなんだな、八っつあん。恐らくまんじゅうの食い過ぎだ。しょうがねえ、
おめえのために残ったまんじゅうは俺が食っといてやる。おめえは独り占めしようと
した罰だ、反省して寝ときゃあいいよ。そのうち治らあ。」
(要を得た問診である)
「てやんでい。べらぼうめ。そっくりもってけ。」

 出るは出るは、八っつあんの布団の中からまんじゅう100個。
「かまうこたあねえ。おいらが全部持って帰って食ってやらあ」
「熊さん。おめえの腹は、どうするんだい?」
「心配するねい。おいらは医者でい。まんじゅうの中に薬を入れときゃあでーじょう
ぶってことよ。今度はおめえがまんじゅうを食うときは、おいらに一言いっとくれ。
おめえが腹こわす前に、医者のおいらがまんじゅうを食ってやらあ」

えー、おあとがよろしいようで。
(深々とおじぎ、座布団を返し下手へ。テン、テケツク、テケツク。太鼓の音が響く)

<AKBじゃ団塊は泣けないぜ!>

天皇陛下の被災地お見舞いビデオに胸を熱くし、涙腺緩めっぱなしの団塊。
はにかみゴルフプレーヤが、懸賞金の全てを被災地に!なんて。
これだけで、氷が欲しいほど胸の温度上昇の団塊。

ツイッターも破壊された電話網に代わり、フェイスブックも手伝った世界支援。
流言飛語を除いても、それだけ聞けば涙腺緩む団塊。

作家の綿矢りささんも、執筆を始めると根を詰めるタイプだそうで。
しかも音楽に言葉は不可欠と思っていたけど、歌詞のないものの良さを感じ。
夜中にラジオから流れるクラシック音楽を、楽しんでいるようだ。文藝春秋より

かくある私もかなりの間遠ざかっていたラジオが、最近突然に仲良くなった。
ながら族にとっては、再び捨てがたい存在になったBGM。
昨今のTVから流される音の刺激が、強すぎるのも理由である。

お笑いチープ番組のしゃべくり下手漫才師、直ぐ分かる挟み込んだ別録音笑い。
いとこい(いとしこいし師匠)もヤスキヨ(やすしきよし師匠)で勉強しろッ!
早口言葉・個人的すぎる表現・わびもサビもない今風の歌詞じゃ泣けないぜ!
だらけ気分がぶっ飛ぶといきなり元気になる団塊は、サビのないAKBじゃ泣けないぜ!

<団塊のデブ恐慌論>

バブルが弾けて以降の、この数年来の真綿で首を絞めるような不況は恐慌なのか?
経済学的に古くから言われてきた、30年周期の恐慌論ではカタが付かない不況。
団塊が過ごしてきた物心が付いて以後の世間は、別の見方をすることが出来る。

最近気がついたのだが、めちゃくちゃデブな子供が減ったような気がする。
私がデブな子供だった頃、周囲にはそれほどデブな子は多くなく。
1クラス60人のうちで、せいぜい2,3人だったから良く目だった。

センセが教壇から「そこのM君。答えは?」、指名回数は多かったような。
私は前後左右の友と授業中でも仲が良くディスカッションしたので、油断出来なかった。
指名するときに、流石に「そこのデブ」とは呼ばれなかったけど。

バブル華やかりし頃、ファーストフード・スイーツ・ポテチが氾濫し。
股ずれでズボンがすり切れる子供が目立つようになり、LLサイズも氾濫。
その上痩せた医者よりデブの医者の方が安心感があると、もてはやされ勘違い。

服サイズの選択肢が増え続けるのを良いことに、やせる努力は皆無に近い。
世の中にデブが増え続けてその中に隠れれば、この私でもウオーリーを探せ状態。
30年シフトした最近じゃ、買い物に出かけてやたらデブオヤジが目に入り出した。

ゆるゆるの上下衣服をまとい、メタボ腹をつきだして股ずれしながらのっそり歩く。
鏡の前のガマガエルよろしく、見ている方も脂汗タラタラで思わず腹をへこませる。
最近私がポロを買うときは、サイズが昔XLも今Lか場合によってはMのパラダイス。

デブの子供たちは30年後、デブのオヤジになりはてて。
30年周期は恐慌だけではなく、デブの氾濫ともリンクしているようだ。
デブ歴50年いまポッチャリ団塊が言うのだから、間違いはない。

<30数年ぶり団塊医の本気マークシート>

学会の専門医があり、私の所属学会は5年間の間に1度はパスしなきゃならないテスト。
30問で6割正解なら晴れて5単位いただいて、合計25単位で更新出来る専門医・指導医。
ダメなら追試4回のウチに通過しないと、「あんた、もうちょっと勉強せんとイカン」。

と言うことで問題入手して締め切りまで3週間あるのに、2日で仕上げて再度チェック。
しかし問題を作る人も、文章を何度も推敲して言葉の曖昧さをチェックせねばイカン。
症例提示で「先ずすることは?」の「先ず」は、優先順位か緊急性かでちょっと違うやろ。

ブツブツ文句言いながら、この提示症例がホンマもんの患者さんが目の前じゃったら?
そらあんた答の選択肢ゼンブを先ずするやろ、どれも後回しにしてエエはずがないシイ。
悠長にして「先ず」をいい加減にしていたら、この若さで無症候性脳梗塞じゃから。

さしあたって直ぐ出来る禁煙指導・減塩指導に血イをサラサラする薬を出しとかんと。
大きな梗塞がこの人にドッカーンと来たらイカンぞ、責任者出てこんかいッ!なんよね。
と同時に「怒るで、ワレ!」の、やす・きよ師匠の漫才を思いだす。

卒後30年以上経って、やっと解き放たれた試験の悪夢と言うかトラウマと言うか。
答えがここまで出てきてるのに、字にナラン・・・ウーあと3分っ!タラリ、タラタラ。
脂汗流してウンウン、試験終了のチャムが鳴って目が覚める。ヒエー夢か、エかったア。

そんな悪夢の時代を思いだしつつ、「ま、6割はあるやろ。タブン・・・ウウ・・」。
せっせと丸の中を鉛筆で塗りつぶし、袋詰めにしてiPad2をゴソゴソやって。
作曲ソフト買っちゃうかな―、Winのは持ってんじゃけどやっぱiPad2やろ。ウヒウヒ。

んで、あの「先ず」が蘇り。ウヒウヒぶっ飛ばす、タラリ、タラタラ。
「先ず」っちゃ、ナンやのん?ワシなら、ああ言うテキトー表現はせんで。

30数年ぶりの本気マークシートで、ウジウジ悩む団塊。

<団塊にとってギリシャと日本の危機に差>

久しぶりにのんびりした週末、独り留守番だからちょい音量を上げてエバンス。
これまた久しぶりにコーヒーじゃなく紅茶で、昨夜のTVニュースショーを反芻する。

わが国の国債評価を、民間調査機関が下げたとか。
与党の体たらくに嫌気をさした?イヤイヤ、もう少し冷静に考えるとそれだけじゃない。
インチキ株価操作みたいに、一部の金持ちが株を売りまくって値を下げさせるのは簡単。

一気に買いに走るとすぐさま反応して、株価急上昇すれば汗をかかずに濡れ手で粟。
その前に不安をまき散らして本でも書けば、印税でまた儲けちゃうワケね。
焦りまくって読み終わった頃には、金持ちは既に売り抜けて後の祭り?は言い過ぎか。

株を国債に置き換えれば、単純明快かも?
そんなカラクリに手を貸した調査機関が、どっかで金をせしめても責任は追求されず。
損をするのは小銭を失って泣く素人投資家、バクチは胴元が勝つ!を知る学習代なの?

小銭を稼ぐ素人はだしでも、四六時中バクチの作戦を煉ってる時間も知恵もない。
ごくたまに大きく勝ったパチンコの想い出に、我を忘れてはまり込む風に似て。
通算してみれば、将軍様のメロンやワインに化けるのがオチなのと大差なし。

相手は、あらゆるイカサマを知り尽くしたバクチのプロだから。
そんなヤツに勝てると思うのは、妄想か脳みそが傷んでハエがたかってる?
どうせやるなら持ち金はたいて金の延べ棒を買いあさり、庭に埋めておくのが安全確実。

マルクスさんの共産主義じゃない限り、プチ金本位制は巨人軍と同じ(?)永遠でしょ。
まだ「相対的余剰価値」がすっきりせずに、いっそ放り出しちゃおうかな?の弱気。
とはいうものの、やっぱ地道コツコツだな!を確信しても先の不安が消える訳ではない。

近代日本の3つのターニングポイントの1つと言われる、バブル崩壊。
それを学習して発展し続けようとする赤い国は、根底から違っているから参考にできる?
宗教みたいな主義が無理を通せば、まともが引っ込み国民を押さえつけるしかない。
国民の不満を外国へはき出させ、節操ない資源消費で調達はひたすら外国侵略の下品。

かと言って武士道の国は、あと2年で貯金より借金が多くなる予想。
そこまで行き着く前に、何とかナランじゃったの?自民党の皆さんでしょ?責任とるのは。
党利党略で喧嘩してる時じゃないのに、どっちもどっちの政党ばかりで成果無しとは。
既に政治が破綻してるんじゃないの?で、トホホじゃね。

国家破綻したギリシャとは、公務員の数も給料も違い年金給付率も違う(およそ倍?)。
国家破綻?の武士道の国は、ギリシャ危機を学習して自国の危機管理に役立てても良い。
穴あきバケツ風な垂れ流しの税金やワケワカランばらまきで、消費税アップは?!だぜ。
エバンスのピアノでスイングしながら、30年ぶりに近代経済を勉強しようと思った週末。

<団塊はぶっ放す>

意識があろうが無かろうが、意識ははっきりくっきりあるものと想定してるワケ。
患者さんに接する診療態度に、分け隔てや差別も区別もなく行ってるんですが。
声をかけた患者さんの思いがけないリアクションに、驚くことがありまして。

「Nさん、元気かネー。入院した昨日も暑かったねー、ワシ汗グッチョやモンなー」
「暑くない」
「おろ?無口な患者さんばっかの部屋じゃったハズなのに・・・」

片耳聴診器解放側で、ボソッと聞こえた声の主を捜せば。
いつも殆ど寝たきりで閉眼のNさんだけ、目が開いている。
「今なんか言いましたア?」思わず覗き込む。

「あ、センセ。Nさん、お喋り上手ですよ。昨日は緊張(語尾上げで)」
「ウソやろ?あんたの腹話術じゃないんか?」
「アホなことを。じゃあ行きますよオ、犬も歩けば・・・」に、「吠える」。
声は小さいけど、耳をすませばくっきり聞こえる。

「次は、棚から・・・」に「リンゴ」
Nさんとは、入院医の診察中は一方的な会話だっただけに驚く。

「じゃあ、ジュゲムジュゲムう。カイジャリスイギョでは?」の私には反応無し。
「そんなメチャクチャ言うたら、イケマセンッ!」
「・・・」

「そんじゃ、主任さんの根性とかけて?」
「・・・」
「ワシが代理で、DNAと解く。その心は、グルングルンひね曲がっている。なんてな」
「コラコラ」

「じゃあ、裏に囲いが出来たってね」
「Nさん、返事せんでエエよ」
「あ、イカン。腹が張ってきた。ここで屁をこけば、オチになるけど。エエ?」
「ダメですッ!」
「へーって、言って欲しかった」

廊下へ出ると辺りの人影をうかがいつつ、高らかに1発ぶっぱなっした答え。

<団塊の正義は達成されたか>

五月晴れとか新緑の季節は、赤い国から飛んできた黄色い砂が邪魔しまくって。
磨りガラス状の膜を通して、爽やかとはほど遠い景色が目に入る。
これって経済大国の一種のテロじゃないの?とまで思っちゃう。

;国が大きくなるほど世界の中心は自分らだと、大いなる勘違い。
自分は全て正しくて、行う行為は全て「正義」だと疑わない。
「テロ国家をやっつけろ!」と、進軍するのも「テロ国家」じゃないの?

アルカイダのカリスマ最高責任者が、アメリカと戦闘の末殺されたワケですが。
若者達は「USA」を連呼して大騒ぎ、私には分からない祝賀ムードで盛り上がり。
オバマさんは自国の軍を讃え、「正義が達成された」と言い放った。

9.11の遺族の皆さんが、「善が悪に勝った」と仰る気持ちは分かってあげたいけど。
誰が何時どんな理由で「善」と決めたのか?誰がどうやって「善」の立場に立たせたか?
悪を滅ぼす「正義の味方」は何処の誰で、ホントに「正義」の味方なのか。

アメリカの「正義って何?」。アルカイダをやっつけて滅ぼすこと?
パキスタンに軍事援助で仲良くなって(?)、情報収集した結果で急襲したらしい。
遺体の引き取り手が無いのは当然で、海に流しちゃったらしいけど。

一体、誰がそんなこと信じますウ?何処かへ土葬したとか?
本人確認は、DNAでチェックしたらしいけど。ホントかね?
何処かの将軍様みたいに、影武者だったりして。

それに水に入った人間の体は、先ずやたらめったら膨れあがって。
その後、腐敗して魚が突っついて骨が沈むワケで。
彼らの宗教じゃ、遺体を海に流すことは信じられない行為らしい。

このまま行けば、報復の繰り返ししか考えられない。
何処に「正義」があるのか、何が「正義」か分からなくなった午後。

<草食系研修医と団塊医>

昨今の研修医の中にも、草食系男子と肉食系女子が増えているようで。
戦後教育の問題?核家族化の問題?、はたまた柔な食べ物ばっか食べてるセイ?
男は愛嬌で女は度胸じゃないけれど、男子女子なんてどちらも子がつくガキだよね。

男と言えば昔なら武士の世界と、相場は決まっていると思ったらそうでもないらしい。
私の愛読書「葉隠」にあるんですねー。先輩武士も、憂いて居るんですねー。

「今時の若き者は、女風になりたがるなり」(聞書、二:111)と。
若者がはっきりものを言わなかったり、付き合いが良くて事を荒立てないのが多い。
これじゃすきっとしたことや、思い切った働きが出来ないと思うそうで。

んーもー「切腹ウーッ!」・・・あの、ギター侍は何処へ行ったんでしょ?
んで話を戻してと。「葉隠」に感動されている三島由紀夫センセは、言うんです。
若者が女性化することによって、戦うことを放棄していると檄を飛ばす。
医学生になった頃の学食のTVに映し出されたお姿、思いだすと胸が熱くなりますね。

バブル華やかりし頃、TVのCMにあったんですけど。覚えているのは団塊でしょ。
「貴方は、24時間戦えますか?」って、栄養ドリンクのCM。
サラリーマンが、それを飲んで時間外労働やサービス残業をこなそう!みたいな。

もし山本常朝さんが、今の世の中を見たらさぞ嘆き言うかも。
「どう生きるか?と、どう死ぬか?は同列であり。若者よ、覇気をもたんかいッ!
情けない草食系侍の君たちは、雑草でもモシャモシャ食べてなさいね」って。

でも私が強面の草食系研修医を見たら、ボソボソ言うかも?
「あ、聴診器。ちょっと曲がってるけど、直してよろしかったでしょうか?
それとも、肉食系女研修医侍に踏みつぶされちゃいますウ」と。

草食系研修医の指導を嫌う、団塊医。

<団塊はWINで料理,iPad2でいただく>

WINとMac系だと、時々文字化けするのを久々に経験して。
先ず共通と言えばPDFファイルと言うことになり、pdf作成ソフトと結合ソフト。
この2つのフリーソフトを、5分ネットで手に入れれば2つのテキストファイル。

なんや、案外大したことないで。楽勝やん。ヘッヘ。
作成した2つのpdfをあっという間に結合させて、アイスティー啜る。
仕上げのEvernote同期はわずか1分以下で、コップの中味はたっぷり。

いそいそ帰宅して、開いて見ればピカピカの文字がちゃんと読める。
他に同期した4つのファイルをチェックして、安心したのもつかの間。
縦にページをめくるんかいッ!不自然じゃないの?

やっぱXHTMLじゃないと、まるでページをめくる様にはならないワケね。
ちょいと失望しつつ、実験はまずまずと、殆どのファイルを削除してすっきり。
んじゃ次を考えねばと、何気なくEvernote同期をクリックしてしまった!

午後2時間の汗と涙の結晶は、雲の中から消えて行き。
手元に残ったのは消し忘れたゴミファイルだけ、「あんたは、ドジやのー」。
「WINで料理,iPad2でいただく」団塊のプチ自炊は、美味かった。

<団塊医が見た死に急ぐビール腹>

メイヨー・クリニック心血管疾患部門の、F.Lopez先生らは結論しました。
「ビール腹あるいはマフィントップと呼ばれる中心性肥満の冠動脈疾患(CAD)患者
の死亡リスクは、脂肪が他の部位に集積する患者の約2倍であり。この影響は、
BMIが標準の患者でもみられた」と。

これまでの「肥満パラドックス(CADなどの慢性疾患を有する患者では、
標準体重のものよりも肥満の方が予後が良好とするもの)」は、問題ありと。
BMIが体脂肪測定に適さないことが原因か?、とした。
BMIが正常でもWHR(ウエストヒップ比)が大きいCAD患者は減量を勧めることに。

一昔前の外国の映画じゃ、あごが首に埋まってる俳優がいたり。
バーガーに食いつく、信じられない程のメタボの3乗が笑っていたけど。
ポテトチップ症候群は我が国に輸入され、蔓延してるけどエエの?

かく言う私は10cmウエストが細くなったけど、まだまだ軽くノンアルコールビール腹。
メタボラインはクリアしたものの、油断せず細く長くまったりと生き。
ビール腹にリバウンドせずに死に急ぐまいと思う、団塊の午後。

引用;Medical  Tribune.2011.7.28.

<団塊のジPad>

時々「結構たまったポイントを使おうと思ったら会社がつぶれて」とか。
「オーナーが変わって、ポイントシールからポイントカードになっちゃって」とか。
棚ぼたでナニか凄いモンを貰おうなんてのは、イケマセン。

そうでなくても還暦を過ぎれば、ポイントは使えるうちが花。
アンケートでいただいたポイントは、すぐさま小刻みに図書券に化ける。
んじゃなければポイントは毎回使い切り、貯める喜びなんて有るはずもない日々。

ひょんなことから、ひょんな勉強会の講師を頼まれて。
読破した「7つの習慣」をぱくり、10cm以上縮んだ腹の中で暖めていたもの。
構想3日で制作は一気に20分ではき出し、パワポファイルをCDに焼き付け持参。

17分の講演予定を15分オーバーして、お弁当代わりにケーキをいただいて。
その上何某をいただいた途端に、宵越しの金を持たない讃岐っ子の物欲が沸々。
先日来より電子書籍のリーダーを買おうか?まだ早い待て!でも気になるiPadだった。

ネットで評判探ればipadのだめ出しは少ない、んじゃ団塊は教科書でしょ。
貰った図書券\500でテキストを買い求め、1日暮らせば募る思いはiPad。
電気量販店でネット価格と同じなら、連れて帰るしかネーべで休日。

「おろ、あそこやね。ナンかワシよりジジイが、ウロチョロしてるけど。
そこは電気按摩や足裏マッサージ器とはちゃいますよー。ゴメンね、ゴメンね。
おろ?んだからそれは,iPadじゃって。それじゃブルブル出来ないの・・・あ!」

どうやら筆談で係のモンと、コミュニケーション。
ヘッ、写真を取り込んで見せたい!んじゃ、ジジイもデジイチ派かッ!
孫の写真なんか入れちゃいたいなら、ワシと一緒やん。んじゃ、ワシのダチかッ!!

メモ帳片手に帰るジジイ、「んじゃ次のジジイ」の目線に「ハイ、次のジジイです」。
見栄を張って「あ、大丈夫イ。パソコン歴25年じゃから、Macも2つ潰したし」。
紺のカバーと汚れ防止シールで、お支払いは講師報酬の2倍弱でもエエんです。

ウヒウヒ気分で帰宅中、ずっしり重さでも心も軽い。
箱の中身はナンじゃろな?おろろ、名刺サイズのマニュアル1枚とは。どう言うこと?
赤ん坊でもすぐ使い始められる、そんなアホみたいなiPad2なワケね!で格闘開始。

先ずは節電中でも充電せねば、itunesはパソコンに入っとるからあと5分でサクサク?
おろ?PCは認識しても、itunesは30分繋いでも認識しないのは教科書に書いてない。
ネットブックにitunesをインストールして繋げば、即認識して教科書通りの絵図。

後は言われるままに30分もすれば、「ナンやこんなモン、ジジイでも使えるで!」
受け取った宣伝メールを見た時は、嬉しさ余ってやがて手を打つ足を擦るジジイ。
気づけば夜は更けて、これで明日は電子書籍アプリを\160で購入すれば読み放題?

ふと我に返って思い出す、もう1人のiPadジジイ。
ワシがこれだけ悩んだんじゃから、脳みそぐちょぐちょになるくらい悩んだやろなー。
どうせヒマじゃろうから、明日はお店に持参してSOSじゃろなー。ジジイ頑張れよ!

こうして団塊のジジイは、ipadとお友達になれたけど。
ワシよりちょっと人生の先輩ジジイのiPadは、開封後どうなったやろか?
2人のジジイのipad(略してジPad)の今後の活躍は、如何に?

<団塊が見た、とうとう生きた話>

ナンか今朝からぼーっとし出して、ワケ分からんようになってきた。
ぼーっとした合間に聞こえる看護婦さんの声は、「血圧が下がってきたわ」。
誰に言われなくても、ぼつぼつお別れの時が来たような気がする。

「Wさーん」って聞き馴染んだセンセの声が、やっとこさじゃ。
あれだけ耳元で大きい声で言われても、頭が痛くなくなったから。どうじゃろか?
娘の声なんかちいとも聞こえやせんし、ざわざわしていた廊下も気にならん。

あたしゃ思うんじゃけど、結局あたしの病気はいくつ有るんじゃろか。
癌告知された息子の病気のことは、本人からあたしに話してくれたが。
そう言う告知ってセンセから聞いたかい?ま、癌じゃないからエエんか?

何時だったか、あたしの最後はどうなるんか?ってセンセに聞いたら。
そんな先のことは分かるはず無かろうって、んで言うんじゃ。
「それが分かったら、フツーの神経じゃ生きておられんやろ」なんて。

娘と息子がまだ頭を悩ましてるのが、あたしの栄養とか水分管理なんじゃと。
ぼーっとなりにも意識があるんで、胃袋に穴を開けて管で栄養とか。
それって胃瘻っていうらしいが、他に細い管を血管に入れて点滴とかもあるらしい。

あたしゃゴメンだね、そうまでして生きてもツマラン。
前の病院じゃ血圧が200とかあったけど、ここへ来たらなーもせんで150じゃ。
流石はセンセじゃ、¥1も使わずに血圧を下げてくれた。

ま、気分が落ち着いたのが血圧が下がった原因じゃろけど。
ここの病院の時間の流れは、丁度あたしに似合ってるんじゃろ。
そう思って居ったら、血圧が90なんじゃと。

看護婦さんが血圧を上げる薬を注射したら?って、センセに言うたらしい。
そしたら言うたそうな、ちょっとの間だけ上げても薬が切れりゃすぐ下がるって。
もうエエ加減にして欲しいで、あたしの血圧はエレベーターじゃない。

センセちょっとためらった時に、ホントになーんも分からんようになって。
こんまいTVがピーって言い出して、お迎えじゃ!と思ったな。いや、正直な話。
お迎えが来る前にしとかんとイケンことがあったんじゃ、一言だけじゃけど。

「センセ、世話になったの。先に行って待っとるで、んでもセンセはマダじゃ。
センセのご両親に会うたら、あっちではいろいろセンセに世話になったって。
お礼の1つも言うて、せっかちで慌てモンのセンセの話でもしようかい。
時々センセの悪口を言うかも知れん、くしゃみが3回半出たらそれじゃ」

あー。みんなの声も聞こえんし、もうなーんも分からん、最後にもう一言だけ。
「センセ、さよならじゃ。禁酒は続けんさいよ、細う長ごう生きなさんせ」

とうとう来るモンが来るまで生きたWさんは、センセの前から見えなくなった。

第1009話 焼かれる夏

「センセ、あたしゃ何時死んでもエエんじゃ」往診でWさんの開口一番。
「そう簡単には死ねんで、多少なりとも金貯めとかんと。墓掃除用とか雑費。
それに、お宅は神さんか仏さんか知らんけど。信心しとるかネ?」

「信心しとるか言われると、悩むわのー。神さんと仏さんは、仲が悪いんか?」
「まあ、商売敵ほどじゃなかろうけど。仲がエエか悪いかは、ワシも知らん。
どっちかがおいでおいで言うたら、どっちかが引っ張って。マダマダやーとか?」

「仲良くしてもらわんとイケンから、お寺と教会をはしごせなアカンか?」
「それに、近所のモンが2,3人は葬式に来てもらわんとイケンじゃろ。
息子さん一人でお通夜とか焼き場も葬式もじゃったら、Wさん寂しかろう」

「そらそうじゃ。多少は、賑やかしが居らんと」
「近所の人が祭壇の写真見て、Wさんがエエ人じゃったなーって思って欲しいじゃろ」
「そらそうじゃけど、自信ない」

「そう思ったら。近所の人に、多少はエエ顔見せとかんとイカン」
「当分死ねんじゃないか。あたしゃ、早う四角い箱に入りたいで」
「エアコンなしの箱に入ったら、熱中症でどうにかなるで」

「暑がりじゃから、それは困る」
「ドライアイスを入れてもろうても、あとに3000度とか4000度が待っとるで。
こんがり焼かれたら、この猛暑じゃタマランやろ」

「んじゃ、寒くなったらエエじゃろ。秋を待つか」
「秋の気配は遠いで。炎天下は紫外線たっぷりやで」

外に出てWさんより先に焼かれる夏。

<見えない団塊医>

「ちょちょっと、失礼しまーす」
「いまワシの後ろを通過したんは、縞ブタかそれとも縞ゾウか?」
「はあ?いまセンセの後ろって、通ったんはDちゃんだけじゃけど。夜勤明けの」

「そう言えば、日本語喋ってたような。んでも、白地に黒太い横縞は。
あれを人間と言えば、人間に失礼やろ?」
「シマウマと言えば、シマウマに失礼」

「かと言って、縞ブタと呼べば。ブヒッて答えそうな」
「かと言って、縞ゾウと呼べば。パオーんと答えそうな」
「コラコラ、そこの2人。Dちゃんで、遊ばないッ」

「人は見かけによらないけど、人は見た目?」
「どっちやねんと、突っ込めば?」
「よー分からんと答える、ホンにあんたは屁のような」

「失礼しまーす。今日入院のQの嫁ですけど、お借りした吸い飲み。お返しします」
「あどうも。んじゃ、看護婦さんに言いましょうね」
「あら、Qさんの」ステーションに帰ってきたナースM。

「ハイ、これ。お返しに来られたみたい」差し出すMIHIセンセ。
「あ、センセ。そこへ置いててエエですよ」
「あッ、センセでしたか。申し訳ありません、センセには見えんかったから」

「気にしなくてエエですよ、ゼンゼン。この間なんか、もっと凄かった」ナースM。
「もっと凄いって?」Q嫁。
「心電図モニターを見ていた、どこかの坊やが。ジイジこれ何?」

「そうなんですよ、んで答えたんですよ」私。
「あれは答えじゃありません、出任せ」
「何処がや、電池で動いてる心臓から電波が飛んで来るまではホンマやで」

「ちょっと違うような・・・」
「んで、小人がTVの裏で線を描いてるって。凄ーくわかりやすい、説明やろ」
「何処に小人が?」

「そう言えば、夢があるやろ。メルヒェンやで。夢、夢」
「悪夢ですか?んで、帰り際に聞いたでしょ。センセに」
「ジイジは、電気屋さんか?ってな」

「んで、なんて答えましたっけ?」
「電気人間の修理屋さんって、タブン」
「あの坊や、将来お医者さんになりたいって言ってたけど。医者に失望?」

「大丈夫、ワシは医者には見えん」
「ホント。つくづく、確かに、きっちり、しっかり。納得」
「そこまで納得されると、若干焦るような」

医者に見えない団塊医の、午後。

<山口に原発は待ちイねの団塊医>

孫と遊んだ1週間を除いておよそ3週間、1日30分のイエス・アイキャン。
「ナンか、センセの字変わった」の評価を受けて、ひたすら精進する日々。
心落ち着けてペンを握っても、TVから流れる原発ニュースに心が揺れる。

もめにもめて原発を我が地にも作る事が決まり、調査から建設まで進んでいた。
今回の事故を受けて、中国電力が「待て」を出さないのは如何なモノかと思って居たら。
知事の一言「ちょっと待ちいね」で、休止になったけど信用出来ない電力会社。
事もあろうに投書欄に「でも電力不足に原発を!」が出る、時期をわきまえない無神経さ。
「あんたは原発の手先か!自家発電しなさいッ」と突っ込みたくなったのは、私だけ?

オイルショックの街中現象が都会じゃ起こっても地域限定で、パニックはない。
田舎じゃ溢れてる物資を送れば済むけど、そういう手立てのない人はどうする?
「健康被害はない」って言われて、「あ、そうなんだ」で安心できるか?
情報源に信用出来ないヤツばかりで、そうなりゃ自分で考えて行動するしかない。

他の方法で電力を作るだけじゃなく考え方を変え、不足するなら我慢する算段は無い?
痛みを分かち合う為に、日本全国「輪番停電」とか一定に基準を超えると警報後停電とか。
未来の子供達にも、ニュー・ダーティエネルギーを残して良いワケないでしょ。

ホントにクリーンエネルギーは効率悪くて、高くつく?そんな計算オカシイでしょ。
事故が起こってからの費用や不安と汚染から後遺症まで、比べる方がオカシイでしょ。
「安全第一」で効率二の次じゃなければ、「新自由主義の副作用」の代償が大きすぎるッ。
そうでなくても乱れる字、コーフンで3倍乱れてしまった。

山口に原発は待ちイねの団塊医。

<団塊医は見た、切断された足の秘密>

それは節電とはほど遠い、冷え切った当直室。
1週間ぶりの当直のナイトキャップは、東野圭吾サスペンス「変身」。
いきなり脳移植の出だしで興味をそそられ、速読の上に拍車がかかった。

頭の上の電話が鳴った。その呼び出しは、低くくぐもった音だった。
静寂を突然破壊する無遠慮な騒音は、不愉快この上ないから。
タオルを畳んでその上に電話機を置き、苛立つ呼び出し音を和らげていた。

医者になると電話嫌いが増えると言うが、どの医者も同じ感性なのだろう。
タオルが敷かれて4ヶ月以上経つのに、誰一人としてそのタオルを外す気配がなかった。

「センセ、*病棟ですが。Kさん、3時間で時間尿14ccです。全身浮腫で」
「確か、Fセンセの患者さんだったよな。大腸癌末期、腹水たっぷり。意識朦朧の」
「ハイ。んで、尿14ccはどのように・・・」

「尿量増やすことより、どうしたらKさんのQOD(死の質)を高められるか?やろ。
そっちを考えた方がエエんちゃう?94歳やし。あんたやったら、どうして欲しい?」
「教えて下さい」

「ワシじゃったら、胸の音聞いて。あ、背中側もな。んで、恐らくプチプチ言うやろ。
低蛋白血症で全身浮腫じゃから、肺も浮腫んでいるやろしなー。せいぜい酸素1か2L?
さっきラウンドしたときは、ぼーっとしてウトウトしとったから。1Lやろ、1.5Lでも。
やたら増やすと、呼吸が止まるか。頭がはっきりしすぎて、苦しみがはっきりするし」

「酸素飽和度が65%ですけど、チアノーゼはありません」
「その酸素飽和度が下がってる原因は、低酸素・貧血・末梢循環不全やろなー。
肺転移はどうじゃった?酸素を、目一杯行きゃエエってモンじゃないよな。分かるな。
しっこが出ん言うて、点滴増やしたら。血管から水分が逃げて、益々パンパンやで」

「ハイ、この間のセンセの勉強会で」
「先々月、ターミナル・ケアのカンファやったよな。あ、あんたも居ったよな。
今度、ワシの患者さんでQODテーマのディベートしよ。おもろいツカミも用意するし。
ゼッタイ飽きさせません、忘れさせません、興奮して泣かせません。んじゃ」

電話を切ってナイトキャップを開こうとした時、突然の悲鳴が廊下の静寂を切り裂く。
慌てて身繕いをし当直室のドアを6cmほど開け、耳を澄ませても音はかき消され元の静寂。
「うー。チビルかと思ったら、ホンマに」、言いつつわざと大きな足音を立ててトイレ。

帰り際に当直医が薄暗い廊下で見たのは、熱帯夜も凍る惨劇。
大きめの柿の種を中心に、散乱した焦げ茶色の毛羽だった切断足5本。本体に、少々足。
スニーカーの裏を見る勇気はなく、階段でスニーカーをゴリゴリしてみる当直医。
すれ違う当直ナースZのスニーカーに、茶色いシミを当直医は見た。哀れ、ゴキ。

<団塊の風呂歌>

ナニがどうしてどうなったのか、我が家の庭のサクランボ・梅・木蓮。
大して肥料もやっていないのに例年になくどれも元気は、異常気象の影響か?
梅もサクランボも、もう少しすると沢山の実をつけそうな勢いが嬉しい。

地震を恐れて一時撤収した孫達も元気、2歳の孫が言葉を覚える速度は素晴らしい。
変化は日々新鮮でジジイも頑張らねばと、うかうかしてられず尻を叩かれる。
半年足らずの下の孫はジジイの顔を覚え、笑う顔に癒され腰イテテもぶっ飛ぶ。

初日で号泣されたのに懲りて、風呂で響かせる元コーラス部はテノール。
子守歌は受け付けず、かと言って同様もしかりとなれば苦肉の演歌。
何故かこれがピッタリはまって、色々レパートリーから繰り出す演歌。

「ンギャー、ンギャー」「横浜、たそがれエ。ホテルの小部屋アー」
「ンギャ、ヒクッ・・・・」「口づけ・・・タバコの煙イー」「ヒクッ・・・」
これが偶然でないことは、3日連続成功で証明され。シブイぜ、こぶし廻すぜベイベ!

風呂上がりに眺めるニュースショーは、灯りを落とした東京の街を映し出す。
それでエエやん、ネオンピカピカさせなくてエエやん、色と明るさで競争せんでエエやん。
慣れるとますます刺激を求めたがる人間の悪い癖、何処かで絞ってみるのも良いかも。

環境問題を一気に解決するはずのツールも、結局は環境汚染してたんじゃん。
身の丈をわきまえて、背伸びするのは歌だけにしようと思った午後。
今夜の風呂歌はもちろん演歌、「背伸びしてみる海峡を、今日も汽笛が・・・」。

<報道関係者は愛を!と叫ぶ団塊>

ボランティアを募る話になって、あるセンセがTVで言ってた。
自分の食糧くらいは持参するのが礼儀、手ぶらで行って飯を食わせて貰っちゃイカン。
ただでさえ物資が不足しているのだから、そのくらいの気遣いは常識であると。

この度の凄まじい状況を伝えることは重要だけど、TVを見ると何処も同じ切り口で。
我が業界の関連で見たインタビューは、「いまナニが必要ですか?」が気になった。

そこまで言うなら出かける前に聞いといて、米なり水なり可能な限り持って行けば!
病院なら薬も消毒薬もナニもかもが不足しているのは、分かりきっているのだから。
手ぶらで行って「ナニが足りませんか?」はネエだろが!と、鼻息荒くなっちゃって。

物資を持参した上で不足物資を聞いて、報道した上で次の現地入り報道関係者に連絡。
その情報で必要物資を持参するなら胸が熱くなれるのに、あれじゃ愛を感じない。
手ぶらで行って聞きたいこと聞いて、映像を持ち帰るだけじゃ如何なモノか。

情報の垂れ流しだけでなく、報道が復興のお手伝いをするのも有りじゃないの?
似たような情報は1つにまとめ、各報道局は得意な部門を活かして役割分担。
色んな角度で伝えるべきじゃないかと思うのだが、間違いだろうか?

現地入りする時は、物資を持参するのを決まり事にするくらいの意気込みが欲しい。
更に言わせてもらえば、帰りの車にはがれきを積み込んだらますます役に立つと思うけど。
報道関係者は現地に愛を!、何も出来ないボクは1ヶ月分のお小遣いを寄付。

報道関係者に愛を!と叫ぶ、団塊。

<髪切評価と怒り度が悪化する団塊>

「おろ?首から上、変わった?」
「誰が女子高生ですかッ!」
「首絞められたいの?昨日まで振り乱していたのに。今日は、ザンバラ髪のさらし首」

「んじゃ、なんですか。あたしは戦場のマドンナ?」
「マラドーナ?」
「酷いんですよ、うちの旦那。帰ってすぐあたしを見ても、ゼンゼン気づかない」

「興味の問題か?」
「愛情の問題でオネガイします」
「ドライアイス並みじゃね。いっそ、モヒカンか丸坊主にしたら気がつくかも」

「気がつかなかったら、夜中に濡れバスタオル掛けちゃうから。顔に」
「んじゃ、先を急ぐ旅ゆえ。失礼しまーす」
で、次のステーションは婦長さんの前へ座る。

「おろろー、ナンか違う。ナンか」
「何処の美女かと?やだーセンセ、はっきり仰ってよろしいんですよ。
みんなが言うんですよ、10も若返ったって」

「フンフン、そういうイヤミな言い方もある」
「何処がイヤミ?んじゃ他に?」
「どさ周りの、女子高生風」

「ちょ、ちょっとお待ち下さいませ。ワケ分かりませんけど」
「どさ周りと、女子高生の関係について。7文字以内で述べよ」
「15文字以内なら」

「んじゃ、どうぞ」
「おばはんなりすまし女子高生。9文字以内なら、異臭腐乱女子高生」
「どっちにしても、臭いがきつそうですね。もっと良いイメージのモンが」

「もっと激しいダメージのモンなら・・・」
「言わなくて、結構ですッ!」
「ウッセ」

髪を切った評価とキレ方が悪化する、団塊医。

<保育園団塊医>

「前回泣いたのは、15人中3人じゃったよな」
「ハイ、3人の中に号泣1名」
「んでも、帰り際には仲良くなって、みんなが纏わり付いて離れんかったやろ?」

「爺ちゃんの感覚が生まれたんですかね、お子ちゃまたちに」
「んで、今日は14名ね。作戦練ってきたから、大丈夫かも」
「んじゃ、お手並み拝見」

「皆さーん、こんにちはアー。元気イー」
「ウ、ウエーん」
「あららー、作戦失敗で撤収ですか?」

「イエイエ、ここで孫で鍛えた知識を。あ、アンパンマンだ。これは、ドキンちゃん」
「おじちゃん、これはカレーパンマンだよ」ポスター指さすMちゃん。
「んじゃ、これはウグイス豆パンマン?」知っているのに知らんフリで指さすMIHIセンセ。

「んーと、メロンパンナじゃん。おじちゃん知らないんだ、エヘヘ」
「あららー、泣き止んだ」
「ま、作戦成功やで。んじゃ。もしもしー、あれは焼きそばパンマンじゃね」

「おじちゃん、あれはカレーパンマン」を無視しつつ、「そうねー、ハイ、胸出してエ」。
2分もしないうちに涙も乾けば、何事もなかったように診察が始まって。
「んじゃ、Mちゃん。なんて言うの?ありがとうございましたでしょ」保育園センセ。

「エエよ、エエよ。御礼なんか。ハイ、お粗末様」
「お粗末様はないでしょッ!」突っ込む、同行総婦長さん。
「んじゃ、お大事に。も、ヘンだしイ。プールへ入りたいかアー、オー。みたいな」

「なんか、高校生対抗クイズ番組みたいですねー」
「プールh入る前に、手を洗えよー、顔を洗えよー、お尻も洗えよー。みたいな」
「大きなお世話、言わずもがなのお節介だしイ。なんか、ドリフターズみたいですねー」

バイバイで見送られ、1名の半泣きで終わったプール遊び前検診の保育園団塊医。

<団塊が気になる扇風機>

人生の折り返し地点をとっくに過ぎても待ち受ける誕生日、反省ばかりの日々。
テーブルの上にナニやら小箱が1つ、ひっそりと待ち受けていて。はて?
怖々開ければカードリーダー1ヶがお出ましになって、思い出すカメラ雑誌。

全国2名のうちの1名に選ばれたようで、50円出資で2980円の品をいただいた。
フロアに置かれた雑誌をめくれば、ぎりぎりに送った懸賞応募はがき切り取りの名残。
見事当選は嘘や冗談でもなく勘違いでもないようだけど、活躍するのはちょいと先か?
「こいつは夏から縁起が良いやん」と出勤すれば、上機嫌で外来が始まる。

「あら、可愛い」
「イヤイヤ、還暦過ぎのジイですから。そんな、可愛いなんて・・・もう一回」
「イエ、あれ」の指さす先を見れば。

「あ、縦2連の小型扇風機グルグルね。上は患者さん用、下はボク用で半分こ」
「そういう目的で、作ってあるんですか?」
「外来で、節電で、汗っかき医者で、パソコン用を使い回したみたいな?」

「そこまで詳しい目的設定は、いかがなものかと」
「んで、あたしのは?」突っ込むナースS。
「3連はないから、この団扇で我慢してネ」

「やっぱ、団扇はプラスチックじゃ風が違うような」
「ワシの高校のある町は、全国の団扇の90%作ってたかな?同級生の家も団扇製造。
あ、コラコラ。勝手に、扇風機の向きを変えちゃイカンぞ」

「分かりましたア、あんがい敏感なんだ。首は振らないんですか?」
「そういう設定はないみたいじゃから、自分の首でもグルグルしなさいね」
「結構ですッ!かえって汗をかきますッ。んじゃ、午前の外来は終了です」

「んじゃ、ランチしてラウンドしようっと」
で、55分後にステーション。
「センセ、Gさんの白内障の目薬オネガイします」

「あのさ、Gさんって1日中目をつぶってるし。TVに、やしゃ孫の絵が貼ってあるし」
「新聞や本を読んでる風もないですわねー」
「98歳じゃねー。あんたらと看護介護についてディベートすることもないし」
「ほとんどお休み状態だからと言って、白内障の目薬が要らん理由も・・・」

白内障の目薬よりベッド策に取り付けたGさんの小型扇風機の向きが気になる、午後。

<団塊は、これもあれも研修医指導>

1分間オリエンテーション3ポイントは、定番で珍しくもないけど。
目線水平・分からなかったら聞いて行動した後に調べろ・迷ったら親と思って対処。
医療行為は加害者となり得ることを忘れるな!念のための検査はよく考えろ!

「急患診て、直ぐMRIはないやろ?」で、話を聞いて総合診療医なみにアタリを付け。
五感を駆使して、診断を探りながら診察しなさいから始まって。

ちょっと得意分野の心音の聴診をしながら、クライアントの皮膚を摘む癖。
熱帯夜の後の発熱で、いきなり抗生物質なんてアホなことをするな!
診察して異常がなかったら、皮膚を摘んで先ず補液を考えろ!

追加の「君のクライアントは誰か?真摯に対応しなさい」は、パクリ。
調子に乗って、「医療行為の中で、安全第一より優先順位の高いモノはない」。
「安全よりプライドが優先順位で高いのは、武士の世界だけだ」なんちって。
クライアントのQOLを忘れたら、主治医の資格はないぞ!と唾を飛ばした後。

心不全の情報収集の為に行った診察所見の整合性について、2分間レクチュア。
何処かの病院に当直に行き困った時、体験談から1分レクチュア。
頭の中に色んな病気が浮かんで、考えをまとめる時間稼ぎ法について。
どうもこれが一番印象に残ったらしく、感心のあまりメモしたり。

「研修はしなくて宜しい」の我が教授から、いきなり大学院生の研究と臨床生活。
「何もないから、お前で充分」に騙されて、当直に赴くと話は大違い。
いきなり待ってる外来患者3名、いくら何でも患者の前で当直必携パラパラはイカン。

尿沈渣を回す先輩伝授の時間稼ぎは、目一杯廻しても15分。(フツーは5分)
さらに沈渣をじっくり観察すれば、落ち着いて診断を進める時間はお釣りが来る。
いかにも全て知っている風、経験豊富な熟練医風、内科書完全読破風。

レクチュアをしながら、青春時代を思い出した午後。

<今までと明日の団塊>
人間は弱い者で、今までされてきたことが平穏無事ならイノベーションを嫌う。
総合病院から心臓血行動態の報告書を手に入れ、パクってエエもん作るぞ!と。
情報を入手し日付を見れば暫く更新が無く、計測しなくなったものもパラパラ。

今までのでエエやん、使えるところへ追加で済ませりゃ波風立たない!
最初に吟味して作ったのであろうが、時代の流れは速く印刷と更新が空回り。
マシンは進歩し続けて得られる情報も溢れ、古の報告書になりつつある。
専門医じゃない人が受けても、直ぐに役に立ちそうなヤツはないモノかと。
結局、自分好みは独自に作らねば仕方が無いようで小一時間悩みつつ作成。
あらかた出来てしまう頃には腰イテテ状態で、ストレッチするうちに徘徊に変わり。

景色が変わればパクリ製作なんて、何処かへぶっ飛んで脳みそクールダウン。
画期的な提案をすれば、「先ず、センセがたたき台を作ってね」折衷案で決着。
「することは良いことは分かるけど、センセの場合せっかちでしょ?」

”今までの”は、ドラッカー的に反省せなアカンぞ!と「何でや?」精神が沸々と蘇り。
「まあまあ、オタイラに」は無く、しかしああ言えばこう切り返すディベートでも無い。
自分から突っ込めば火の粉は降りかかり、追い払うのも自分しか居ない。

今までの自分をイノベーションもリノベーションもして明日の自分につなげる模索をする団塊の、午後。

<団塊の世界一幸せな国>

突然出来たスキマ時間を上手に使える人は、幸せな人なんだそうで。
時間に厳しくなくゆったりのんびりのスタンスが、当然求められるのだが。
せっかちな日本人に輪をかけてせっかちな私は、大いに反省しなければならない。

「釣りに行こう」に「じゃ、雨が上がったら」を、どう理解できる人は良い。
「雨は何時上がるのか?」とか「せめて何時頃?」は、受け入れられない。
ブータンのにはこれが当たり前なところが、既に凄さを超えている。

時の流れが異次元にあるようなかの国は、バージョンアップは他人事。
欲張らない生活は次第に薄れ、私が考えるフツーに1歩接近したらしい。
とは言っても1歩の単位が、想像以上に異なっているかも知れない。

せめて「突然出来たスキマ時間」を、楽しく使えるようにしようと思う。
平山さんは俳句だが、私はそう言うセンスがないので川柳でもひねろうかな?
どこかの国の総理大臣の「最小不幸の国を!」なんて、ちょっと違うんじゃない?

パソコンのバージョンアップなんて気にしない、ましてや携帯は声が聞けたら十分。
速さや新しさは幸せとは無関係だし、便利さに至っては無駄の裏返しかも。
「幸せの定義」を考え直すのも、良いかも知れない。

そう言いながらも、タブレット端末をどうしようとか。
個人情報を雲の中に持ち出すのはイカンけど、書き殴りならクラウドがお手頃。
んじゃやっぱ、「エバーノート」でエエかいね?などと悩むのは不幸せの始まり?

参考:「美しい国ブータン」平山修一著 リヨン社

<団塊とターミナルに生きる>「おろ、Wさん。目が覚めたか?」って言われても、脳幹部梗塞を貰ってんのよな。
確かにMIHIセンセの声が、部屋に入ってくる気配よりずいぶん前から聞こえてくるし。
聞き慣れたお世話をしてくれる皆さんの声、やっぱエエもんじゃ。気が落ち着く。

「見えるかー」なんて耳元で大きな声出さんでもエエ、うるさいわ。
頭がはっきりしてきてちょっと一安心で、薄目を開けていたらこれじゃろ。
MIHIセンセがベッドの周りをウロウロするから、ホコリが舞い上がって。

おかげで目にゴミが入ったらしい、チクチク気になっていただけじゃのに。
「Wさん、そんなに感激して泣かんでもエエ」なんて、ワケの分からんこと言うて。
それほどもうろくはしとらんし、涙もろいのは娘の頃から変わっちゃ居らん。

MIHIセンセの声を聞いて、感激するはずが無かろう。
まあ、ちいとは安心したけど。そんなモンじゃ。
んで娘と嫁が側で言うとったけど、あたしゃバス停か?と初めは思ったんじゃ。

「おばちゃんは、脳梗塞のターミなんたらじゃっ」て、MIHIセンセが言うたそうな。
んでジイさんがそれは何か?って聞いて、どうやら末期なんじゃそうな。
孫が医者の卵でな、「じいちゃん、それはターミナル」って言うた。

なんでも、ここの病院には色んな集まりがあるらしい。
亡くなってからは「デスカンファレンス」、末期は「ターミナルカンファレンス」じゃと。
んじゃあたしのことで、少なくとも2回は集まりがあるワケじゃな。

他にも1人の患者さんに、ケアカンファレンスとかなんたら言うのやらあるらしい。
出来ることなら全部聴かせて欲しいが、これじゃ無理じゃのー。
なんでも家族だけじゃなくて、本人も参加することもあるそうな。

とにかくターミナルなんたらで、エエ話し合いをしてもろうて。
ナンでもエエから、QOLとかQODとかをエエ具合にしてもろうて。
もう暫くターミナルで生きようか、MIHIセンセの側で。

<団塊は未曾有の想定外>

災害で被災された方々には、いくらお見舞いを申し上げても足りない。
それに引き替え、政治家や企業から提灯持ち評論家までいちいち腹が立つ。

未曾有で想定外の地震は、歴史をひもとけば(古文書までとは言わないけど)あれれ?
と思っていたら東北大学の教授が「むかし同じような被害が刻まれてる」って言うから。
政府や企業に不都合な発言と、飽きやすいメディアから見えなくなっちゃって。

とすると、単純明快の「危機管理無し」の言い訳けとしての「未曾有・想定外」でしょ。
あんパン1個買いに行く時に昨日\89だったからって、\90持ってゆくヤツ居らんやろ?
フツーの神経でも値上がりとか\89のパン売り切れを想定し、倍の\200準備するのがフツー。

人の命や財産がかかるとなれば、何度でも石橋をたたいて渡るでしょ。引き返すかも?
最大マグニチュードが関東大震災で7.9だから、その5割増しの12を想定してもエエやろ。
「一番じゃなくちゃいけないんですか?」の体質の政府じゃ、期待できそうにないけどネ。
襲ってくる象の大群に竹槍、進入した泥棒を結わえる縄を編むのに稲作の危機管理だから。

神戸震災に、ボランティアとして1日だけ参加させていただいたときは悩んだ。
たった1日だけで支援物資を届けるだけじゃ、自分はもしかして「えせボランティア」?
到着したら先ずは腹ごしらえ?で、明け方4時に屋台の灯りがこうこうと灯ってた。

暖簾をあげれば、「手持ちより、地場品を現地で消費するのが1番助かる」と店主。
同僚とラーメンライスで、経済効果にささやかながら貢献したのを忘れない。
自分がそうだからみんなもそうだと勘ぐって、ボランティアを信じていなかった。

だがこの度のボランティアを見ていると、ちょっと違う。本気なのだ、まっすぐ本気。
えせではない腰を据えた本気を感じて、団塊の涙腺は緩んで嬉しい未曾有の想定外。
えせボランティアじゃない本気に、日本も捨てたモンじゃ無いと安堵する日々。

<団塊は無神論で震災をにらむ>
外国じゃ「自分は無神論者」と言うと、テロリストとしてマークされるらしい。
日本人に「貴方の宗教は?」と聞くと、「ナンも信じてないんで、無神論者」が多いとか。
お盆・初詣・クリスマス・甘茶の祝い(お釈迦さんに)・お葬式は色々など、節操がない。

朝日を浴びれば柏手打って拝むし、受験や就職試験にはお参りして絵馬やお守り。
「どれがあんたの神さん?」に、「興味ないモン、気分だモン、取りあえずだモン」。
かくいう私も、親が決めていたからそれぞれの命日にお坊さんに来ていただいてるだけ。

自分の時は、散骨・墓要らず・戒名は俗世の名前でOKと妻と話す。
でも人に聞かれりゃ、「無神論者ですからー、何でもOKみたいな。八百万みたいな」だ。
外国じゃ自然は神が作ったもので、尊敬しなくて良いらしいが。

日本人は、木・山・川・石に始まって動物など、自然界のものに神を感じてません?
我が地では「しろへび」も「白狐」も、人々が敬う対象になる。
これからは「自然神論者ですけど、何か文句ある?」と返事することに決めた。

この間、震災は天罰と言って再選をはかった東京都知事。あれはイカン。
自然神の警告かも知れないが、それにしてはひどい事するやないのあれはイカン。
東電社長室・アホ大臣室・司令塔になれん総理室に大きい雷を落とさんとイカン!

原発の現場に行って直ぐ逃げ出した自衛隊関係大臣は、国家機密を漏らすていたらく。
自衛隊員の半分を復旧に向かわせますで、TVで自衛隊員の数言えばアホでも分かる全体数。
遠吠えで腰が引けてるウミエダ君なんか、都知事を泣かせるほどひどい事を言っちゃって。

そう言うヤツには、超スペッシャルでバズーカもオマケでオネガイします。
行っちゃって、ドッカン・ドッカン・バリバリ。気が済むまで。
その方が国民もすっきりするし、被害もスポットで済むから雷さんもも楽でしょ。

円安だったのに円安傾向に振れ、景気は悪いし便乗じゃない値上がり。
これに加えて金利でも上がった日にゃ、スタグフレーションもどきでナンじゃこりゃ?

奇しくも良いこと言ったのがIMFで、復興予算が決まったら赤字国債どげんかせんと。
いま野党時代からずーっと先延ばしで手こずってた嫌なこと、言い訳しないで着手せんと。
自然神じゃなく、生身のIMFから警告しまっせ、実力行使しまっせ!ですぞ。

<団塊は髪を切る>

「おろ?首から上、変わった?」
「ハイ、ノリカに」
「んじゃねーべ、昨日まで振り乱していたのに。今日は、ザンバラ髪のさらし首」

「んじゃ、なんですか。あたしは戦場のマドンナ?」
「ワケ分かりません」
「酷いんですよ、うちの旦那。帰ってすぐあたしを見ても、ゼンゼン気づかない」

「視力の問題?」
「愛情の問題でオネガイします」
「ドライアイス並みじゃね。いっそ、モヒカンか丸坊主にしたら気がつくかも」

「気がつかなかったら、夜中に濡れバスタオル掛けちゃうから。顔に」
「んじゃ、先を急ぐ旅ゆえ失礼」
で、次のステーションは婦長さんの前へ座る。

「おろろー、ナンか違う。ナンか」
「何処の美女かと?やだーセンセ、はっきり仰ってよろしいんですよ。
みんなが言うんですよ、10も若返ったって」

「フンフン、そういうイヤミな言い方もある」
「何処がイヤミ?んじゃ他に?」
「壊れた女子高生風みたいな」

「ちょ、ちょっとお待ち下さいませ。ワケ分かりません」
「壊れ方と、女子高生の関係について。7文字以内で述べよ」
「15文字ならなんとか」

んじゃ、どうぞ」
「おばはんなりすまし女子高生、みたいな。9文字なら、腐乱女子高生みたいな」
「どっちにしても、臭いがきつそうですね。もっと良いイメージのモンが」

「もっと激しいダメージのモンなら・・・」
「言わなくて、結構ですッ!」
「毛先にかろうじて留まってた素直さが、髪と一緒に切られて。根性ヒネたみたいな」
「フンッ」

髪を切る頻度とキレる頻度が比例する団塊の、午後。

<団塊の手から>

「おっはよー、今日も頑張ってリハビリ行くぞオ−。じゃね、Bさん」
「しかし、センセだけ元気じゃのー」
「Bさんも、平行棒で5m往復出来るようになったらしいやん。凄いやん」

「まあな、んじゃ。センセに手を握ってもろうて、行ってくるわ」
「手でも足でも、何でも握るで。ついでにハグは?あ、暑苦しい」
「お隣のUさんも、MIHIセンセに手エ握ってもらいたいって」

「そらエエけど、担当じゃなくてエエ?」
「たまには、エエって。気分転換に」
「んじゃ、気分転換に。ニギニギと。ヘッ、ついでに聴診器も?エエよ」

「気が済んだ」
「ついでにハグも?あ、暑苦しい」
「MIHIセンセは、冬向きですモンね」介入するナースV。

「そう言うことをいうヤツは、お仕置きでハグ・・・はしない」
「結構ですッ!昨日の栃木ピョン様ショーの記憶が飛ぶから、止めて下さいよ。
DVDボックス¥3万なにがしで、ゲットした入場券。行きましたわよ」

「やっぱ、与作とか矢切の渡しとか。コブシころころで?」
「キャー、イメージがダメージ」
「んじゃ、寸劇か?まぶたの母とか?」

「どさまわり劇団じゃないっつーの」
「んじゃ、まさかトーク?」
「そのまさかで、よろしかったでしょうか」

「彼は日本語上手ナン?」
「片言で、皆さんはボクの家族です!なんて」
「んじゃ、1分もあったら終わるやんか」

「イエ、1時間」
「皆さんはボクの家族です!なんて、3万回繰り返すとか?
ま、まさか。上から読んだり下から読んだりで、1万5千回?」

「んなはずは、でも2万人のお客」
「んじゃ、握手しまくる?」
「あたし、そんなことされたら失神」

「ポツポツ、痒いヤツね」
「なんでピョン様で、蕁麻疹ッ!こう、手をさしのべて」
「灰を出すとか、レッドスネークカモンとか?」

「元気をもらっちゃうんですッ!」
「灰で?レッドスネークがエエか」
「手からパワーをいただくんですッ!」

団塊の手からパワーを出す、午後。

<団塊は座るとイケナイ>

「んで、ほんとにこれで?3年前にいたPTのW君が、はいていたヤツ」
「ちょっと細身じゃけど、黄色いシミついてるけど、いささか足長いけど」
「些かというか、かなりというか。ま、その分センセは胴が長いから」

「んじゃ。この白衣のズボン、医局でこっそりはいてみるね」
「あたしの目に入らなければ、大胆にはいても宜しいですけど」
で、7分後。

「息が出来んー、苦しいー、死ぬー。んでも、ギリギリ入ったで。この絶命ズボン」
「そのまま、そのまま。ずーっと息を止めてても、エエんですよー」
「立ってる間はエエんじゃけど、座るとイケナイ」

「んじゃ、ずーっと立ってるとか」
「宿題を忘れた小学生みたいな?それって体罰か罰ゲーム?」
「とにかく座ったらイケナイんですね。実はあたしもそうなんですよ」

「無理矢理Mサイズのスカートに、3Lサイズのボディを押し込んだみたいな?」
「ハイ息を吐ききって、思いっきり端と端をぐぐーっと引っ張って」
「そら座ったらボタンが飛び散るやろ、縫い目が裂けるやろ」

「分かりました、ちゃんと合うサイズのズボンを買えって言いたいんですね」
「ここまで演技をせんと、おニューを買ってもらえないわけね」
「暑気払いには、座るとイケナイズボンの話は丁度エかったですわ」

暑気払いのズボンで冷や汗かいた、午後。

<団塊の相棒は古いヤツ>

機械ものはいつか壊れるのは分かっていても、馴染んでくると壊れて慌てる。
動かなくなった時のショックは、計り知れない。
パソコンのハードディスクの寿命は5年と言われても、国産ノートPCは7年持った。

町の自家製パソコン店のマシンは、6年目にハードディスクがカリカリで一瞬焦り。
リセットで静寂が帰ってきて油断した3ヶ月後、リセットしようが蹴ろうが無視され。
カリカリ言い出して、「まさか、箱の中でかき氷やってんの?」で諦めがついた。
10年もののパソコンなどと言う古手の相棒は、あり得ずPCは消耗品のようだ。

アンティークカメラは出来に味があったり、マニアの間で高値取引されたり。
私のはレアものじゃないけどドライボックス保存、使ったら手入れで雨の日は使わない。
適度な温度と湿度でレンズはカビが生えていないし、潤滑油も干からびにくい。

銀塩カメラだけの時代から持っているレンズでも、デジタルカメラに使えるし。
素人が撮影する範囲じゃ出来に違いが現れるより、手ぶれの方が大問題。
そんなことぐらい、画像がちょいと粗くなってもISOを400にすれば大抵の場面でOK。

雲台も脚も別々に吟味を重ねて購入した、フランス製プロ仕様三脚はとにかく重い。
重さが安定感を保証する三脚だけど、アラカンにはじゃじゃ馬並みの扱いにくさ。
レンズにしても明るく使い勝手の良いメジャーものは、値段も重量も十分。

視力と腕力の衰えた還暦を過ぎは、レンズの明るさより軽さを好むようになり。
先の短さを意識して、現像・ベタ焼きから選んで本格焼きじゃ完成するまで待てない。
シャッターと出来が見られるまでの時間は、寿命と比例するんじゃないの?

蔵書処分で味をしめた「断舎離」を、カメラ趣味の世界でも断行に至り。
プロ仕様三脚も銀塩カメラも、銀塩カメラに興味を持った義理の息子のもとに納まり。
アラカン・ジイの手に、雑誌で評判の18-270mmをネットで注文から3日で届く。

若干ちゃちだけど、やたら軽くて広角から長い望遠までのレンズ1本。
気がつけば、アルミの三脚とまたまたアルミの一脚に簡易レフ板1ヶが残ったアラカン。
重いカメラ機器は若者に任せて、カメラ類の相棒は古いヤツで落ち着こうと思う午後。

<団塊は楽しくて委員会(良いんかい)

「んで、センセ。この委員会、今年度は最後ですね。けっこう楽しかったワ」
「そやろ、そうやろ。楽しくなかったら委員会とちゃう」
「意味分かりませんけど、エエですね。それ」

「ワシがむかし作った委員会は、凄かったんや。どっちかが泣くまで、ディベート」
「イヤですよそんなの」
「3回目で、急用バッカの委員が続出」

「そらそうでしょ」
「んで、ワシが言いたい放題じゃマズイんで」
「そこら辺は、今と変わらんけど」

「方針変えて、業務を楽して早く済ませるにはどうしたらエエか。
んで、ミスと無駄な労働時間をどげんかして減らすにはナニがあったらエエか」
「エエゾ、エエぞ」

「費用は\1万以下が大原則で、交渉は委員長のワシがする」
「交渉と言うよりも、脳みそ使った脅しかカツアゲみたいな」
「んでも、パソコン使って年賀状書く要領で採血スピッツのラベリングエかったろ?」

「確かに、病棟に1人くらいはパソコンで年賀状書いてる人いますモンね」
「しかも、ミョーなNSTスコアやら作っちゃって」
「あれで、また研究できそうな。上手く行ったら、どっかで発表がてら遊びに・・・」

「MIHIセンセの遊びの軍資金用にあるんですウ、この委員会?」
「ある意味、そういう見方もある」
「他に、ナニが?」

「色んな委員会作って、和やかに仕事をして。コミュニケーション作り、みたいな」
「それで、あっちこっちの委員会に顔出してるんだ」
「ある意味、そういう見方もある」

「こんなに楽しくて委員会」を作ろうと思った団塊の、午後。

<お気楽団塊は短命か?>

カリフォルニア大学の心理学教授 H.S.Friedmanセンセは、仰るんです。
1500人以上の方を生涯にわたり追跡し、研究結果をまとめたワケですが。
1)楽天的すぎるとリスクは高くなる
小児期に最も陽気で最良のユーモアセンスを持ち合わせている人は、
平均的に短命であった。その逆の方(用心深く粘り強い人)は、長生きだった。
陽気な人は、時にムチャをしやすい事がその原因か?
「幸福は健康の真の源ではない。幸福と健康は両立し合うもの」
2)結婚は男性にとってはプラスになるかも知れないが、女性にはさほど関係ない。
堅実な結婚を維持した男性ほど、長生きしない。
3)「働きすぎず、ストレスを作らない」は健康と長寿のためのアドバイスではない。
のんびりした生活を送るより、生産的な生活を維持した方が明らかに長生きした。
4)ペットと遊ぶことは、長寿に関係しない。ペットは、友人の代用にはならない。
5)愛されている、気遣ってくれる人が居ることは、長寿に影響しない。

お勧め;健康的生活の第一歩は、「健康な生活を送る為のリストを捨て、
過剰な心配の連鎖を止めること。

出典:Medical Tribune、2011年4月28日号34頁。

これを知って、健康と長寿の為に考えた結果。
「お気楽・適当」より、「コツコツ地道」の積み重ねだね!の午後。

<団塊のショッキングイエロー・レッド>

「あららー、センセ。そのポロの色」
「ワシってジミーじゃろ、車が突進してきたらイカンからショッキングイエロー」
「もしかして、ジミって。日本語でウザイとか、キモワル?」

「元々色白じゃから、白人と間違えられて。スワヒリ語で話しかけられたらイカンし。
コテコテの日本人つーか、黄色人種っつーか」
「ポロの色が顔に反射して、黄疸じゃん!みたいな」

「んじゃ、今度は赤にするな」
「熱発した赤鬼のお面をかぶった赤ブタみたいな感じイ、センセはピンクが似合う」
「イカンイカン、あれは膨張色やろ」

「既に、膨張してますからア。あとは爪楊枝を刺されて、パッチンって弾けるだけエ」
「トリプルダイエットで、ちいとは縮んだけど。ご不満か?」
「不満って言われれば、他にたっぷりございますでしょ。なんならアンケート?」

「町内会の犬猫に聞いてもエエで、ワシぐらい動物に人気絶頂なヤツはオラン」
「何語で聞くんですかッ!」
「署名捺印は、肉球ペタペタ」

「しかし、よくそこまでクダランことを思いつきますこと」
「やっぱ、風水でも丁度エエショッキングイエローポロのおかげ?」
「明日から、ポロは白でオネガイしますッ!」

ジミーなMIHIセンセは白のポロを持っていないのに気がついた、午後。

<団塊家の危機管理>

わが家の周辺には海はなく、小さな小川が1本チョロチョロ流れ。
大雨で川が増水して少々溢れても、わが家の軒下に到達することはなく。
ましてや津波など30万年はご縁がない土地柄だけど、地震はあり得る。

わが家の耐震構造は、関東大震災(マグニチュード7.9)までOKとは言っても。
その分部だけ設計に制限があり苦労したし、実際マグニチュード7.9ならどうなる?
コンクリートの壁がバキバキ壊れたら、柔な体はひとたまりもなく煎餅状態。

来てみなくちゃ分からない、想定以上の地震マグニチュード7.9。
と言うことで。バーゲンだけどアディダスのリュックを奥様と色違いで購入。
必要物品をあげていたら、1泊2日の家出みたいな雰囲気になって来た。

二階で居る時のことを考えて、靴とロープを揃えれば30秒以内に脱出。
わが家の庭は1区画分有り、根をはった5mほどの楓なら地割れにもOK?
いざとなればこの楓につかまって、助けを待ちながらラジオで情報収集。

何事もなければ年一回、蓄えの食料をいただき中味を更新して安全に感謝。
本気でわが家の危機管理を考え始め、色んな事を想定してグッズを詰め込む。
「チョコも入れなきゃ!」はわが家だけかも?、の午後。

<団塊のサスペンダーは輪ゴム>

「コラコラ、誰がサスペンダー引っ張ってんの?ワシってそれほど人気モン?」
「自意識過剰って、センセのためにある?椅子の角に、引っかかってるだけでしょ。
どっちか言えば、追い出したい気分」

「オロッ、んで。椅子なんか蹴っちゃうワケね」
「蹴ってません、足が当たっただけ。あーヤダ、自意識過剰のオヤジって。
あら、このカルテカートってストッパーが付いてた?」

「MIHIセンセの足が、ストッパーになってるだけでしょ」
「おろ、いつの間に。こんな所に、カルテカートの車輪が」
「そんなにあたしのこと、かまいたいんですか?夫と娘が3人。困ります」

「困るのはワシの方じゃ、自意識過剰を32倍にしてお返しします」
「センセ、そのサスペンダー緩くない(語尾上げで)」
「そうなんよ。相棒の右京さんは、座っても立ってもピシッとしてるやろ」

「足の長さの関係?」
「サスペンダーは足とは無関係やろ、やっぱ」
「性格とか品格とか?」

「立ってぴったりなら、座れば緩むはずやろ?」
「座ってぴったりなら、立てばきつきつで食い込むサスペ」
「んで。スタイリストが立ったり座ったりする度に、長さを調整(語尾上げで)」

「余分な脂身が少ないのと、関係が?」
「んなこと言うたら、あんたの白衣のベルト・・・あら?」
「ボタンとボタンホールの間に輪ゴム入ってぴっちり、伸縮自由の食べ放題」

我がサスペンダーにも輪ゴムが応用できないか悩む、午後。

<団塊の23Kg11cm19本>

大きな挫折を経験せずに15年前から取りかかってしまった、ダイエット。
この2ヶ月は殆ど動かなくなった体重計の針は、プラスマイナス0.5Kgで安定。
気まぐれでサスペンダーをベルトに替えて、腹周囲の風通しの良さでずり下がる。

クシャミをした途端に今風ハンケツじゃ、既にセクハラ状態3歩過ぎ。
これじゃイカンと、先ずは白衣のズボン代わりのパンツを買いに走る。
「うっそー、もっとサイズダウンなのー」で、取っ替え引っ替え。

とうとうウエストのサイズダウンは、およそ11cmとあいなり。
これならベルトでクシャミでも被害者ゼロだから、周りの目を気にしなくて良い。
やっぱサスペンダーじゃね。でも、腹に手が入るのは僅かなのも良い。

週末はタンスの中を引っかき回し、想い出が詰まったお気に入りの「断捨離」を開始。
ゴミ袋がパンパンになるほど詰め込みつつ計算すれば、パンツが19本になりそうで。
「ちょっと待ってね、もしリバウンドが?」と、「地道コツコツダイエット」が交差する。

数日前に行った血液検査、血糖はもちろんのこと。
中性脂肪もコレステロールも、悪玉コレステロールも血管の中でサラサラ状態。
善玉コレステロールは、あと15で長寿症候群に届きそうな勢いがかえって恐い。

減量の中に脳みその減量を計算に入れてなかったのに気付く、午後。

<団塊の尊敬>

「コラコラ。もう1ヶ月先の処方箋とは、如何なモノかと。センセだけ、よほどヒマ?」
「ワシは先読みできる能力を活かして、次の処方は連休。ちいとは脳みそ使わんと。
蛸と一緒に処方箋を出したらサブイやろ、この細やかな心遣い。ソンケーする?」
「カレンダー見たら、先読み出来なくても分かりますッ!尊敬の意味がワカランッ」

「じゃあそう言うことで。拙者、先を急ぐ旅ゆえ。お女中、これにてゴメン」
「廊下はスキップしないッ!」
「ふぁーい」デコチンに汗しながら移動。

「あ、センセ。この間のカンファレンスの後、K相談指導員さんが誉めてましたよー」
「足が長い分だけ顔がエエってか?先祖がオラウータンじゃったのが、バレたか?」
「やっぱねー、体型がただ者じゃないとは思っていたけど。オラウータンでしたか」

「オラウータンの中でも、メタボキングかも」
「そうじゃなくて。センセに頼み事をすると、全部言い終わらないうちに直ぐOKって。
 困った患者さんには優しくて頼りがいがあって、安心できて」

「あのさ、もう少しスタイルとか顔の方も絶賛の嵐をしてくれん?」
「そんなこと、どうでもエエんですけど」
「チイとも良くないナー」

「でも直ぐOKってことは、物事を深く考えていないという事じゃ?」
「ワシの脳みその回転が素晴らしいと、何故に貴方は言えないのか?と、自画自賛。
あんたの辞書には”ソンケー”という言葉はナインか?
なんなら、紫のマジックで書いたろか。尊敬がノータリンって」

「じゃあ、センセは尊敬する人っているんですか?」
「そうやなー、恐い人は1人おるなー。師匠やけどなー・・・」
「恐いって事は、尊敬とは?」

「近くもあり、遠くもあり。睨まれたら、ちょっとチビルかも」
「じゃあ、尊敬−恐い−チビルと来ると。MIHIセンセは、トイレで尊敬してるんだ」
「ナンか可笑しくない(語尾上げで)」

数年前の年賀状にあった、最初で最後(?)の「センセを尊敬しています」を見た時。
先輩からのモノだっただけに、恥ずかしさと幾ばくかの違和感でミョーな気持ちになった。
尊敬すると言うことは、自分にとってどのような意味があるのだろうとも思った。

年長者に対して尊敬の念を抱くことは、ごく当たり前かも知れないが。
年下のモノに尊敬の念を抱くには、多少なりとも勇気が要る。
そんな勇気を持てるように、研鑽を積まなければと思った昼下がり。

謹賀新年

年明挑戦思案(なにしようかな)
時の流れは速いもので、今年も残すところあと3週間となった年末。
卒論を書いている時はやたら雑用が多く、1日25時間は欲しい!と思っていた。
いざ投稿してみると急に自由時間が増えて、時間を持て余す様になっちゃって。

年明け早々の定期処方を!とせっつかれて、ヒマなので書いちゃって。
高々30名だからそれ程に手が掛かることも無く、小一時間で済んじゃって。
いきなり始めた大掃除、BGMは「カーメンキャバレロのクリスマスメドレー」。

机周りが主だから、30分もあれば良い感じ。
ヒマと言えばいつもならサスペンスなのだが、こう言う時に限って手持ちが無い!
サボテンにやり過ぎてはいけない水スプレー・シュッで駆け込むトイレ。
すっきりして、「来年の抱負」思案したワケで。

毎年1つ、何か新しいことに挑戦してきたけど。さて、今年は?
反省は、あっという間に沈没した「自作パソコン」と「作曲」。もう無理無理。
せっかくあるのに飾り物になったウクレレ、チューニングし直してみよう。
沈没した訳じゃ無いけど、最近遠ざかっていた「似顔絵」も復活させよう。
アイディアとツールは揃ってる、親戚だけの「葉書通信」を練ってみよう。
デビュー後に出番が無い鼻笛、エア・ノーズフルートじゃなく音を出してみよう。

年が明けて挑戦思案で「何しようかな?」と思う、新年。

2022年;正月早々い(ぼーっとしない)

どうして、年末年始はツマランTV番組しかないのだろう?
恐らく1ヶ月以上前から撮り溜めた映像を、ダラダラ流しているのだろう。
24時間働けますか?の時代はとうに過ぎ去って、働き方改革の時代だから。

何処のチャンネルをプッシュしても、変わり映えもせず笑えもしない芸風。
笑い声を被せて、平気でいられる神経がかえって腹が立つ。ちょこざいな!
手軽に放送音量を五dB上げられても、面白さは3割以上も下がってる。

いくつかの連ドラを1クールディスクに押し込んで、観るに限る。
CMを飛ばすのが上手になって、時短で電気節約にもなる。
1クールおよそ10本、暇潰しにはもってこいで週末2日が過ごせる。

1週間の年末年始の長期(?)休暇をいただいて、持て余すくらいだから。
これが毎日となったらどうだろう?、遅々として進まない時の流れ。
想像しただけで背筋の温度が5度下がり、思考回路が凍結する。

小学時代は、「落ち着きがない、少しもじっとしていない」の高評価。
疲れを知らない、立ち止まったら命に関わる「マグロ」子供時代。
歳を重ねても、ダラダラして居ても脳みそは活発活動で糖を消費。

論文だけじゃなく文章を書かなくなったら・・・、想像したくない。
脳みそが溶けてしまうんじゃないか?・・・、心配する。
脳細胞はフツーでも、1日に10から20万個死滅する・・・不安。

90歳まで生きてそれが続いても、数的には大丈夫なんだそうで。
計算上では90歳までに死滅する神経細胞は、全体の6%余りだそうで。
これで安心して良いのやら、ほろ酔いで一桁アップの死滅だそうで。

この13年間はそれを避けられた死滅数に安堵する、年末。
ノンアル辛口日本酒(けっこう甘くて氷入り)をいただく、元旦。
今年投稿する症例報告のイントロを思いつき、PCを立ち上げた。

15分だけボーっとしなかった団塊の、2022年の正月早々。

<団塊の手からエネルギー>
「センセ、お手を」
「ワウ?あ、いつものヤツね」
「今日のセンセは、風邪気味ですか?」

「汗じっとり、ほっかほかの手やろ?」
「ナンか。いつも伝わってくるモンが、ゼンゼン来ない」
「手を、洗い過ぎやろか?」

「そういう問題じゃなくて」
「センセ、ググッと力を入れて握ってあげてくださいよ。手エ抜かないで」
「こうかね?」

「そうそう、これこれ。元気出たワ」で、足取り軽く撤収するIさん。
「あたしは握ってもらおうとは思わんけど、ナンが出てるんですかね。センセの手から」
「いろんなモン出るけど、灰とか南京玉すだれとか」

「瓢箪とかダルマとかを、出してもらっても。試してみんですか?」
「ワシって、瓢箪は苦手なんよ。ダルマは特に、体型が気に入らん。
んじゃ、ラウンドして来ようっと」で、ステーション侵入すれば。

「あららー、Pさん。飯なんか見たくもないって言ってたのに。ぐんぐん食欲増して」
「何が、良かったんですかねー」
「ワシの食介から、ナンか増えたやろ?」
「脅しながら、食べさせたとか?」

「この猪八戒の入れ墨が目に・・・入れたら痛いで!みたいな。
んじゃなくて、1匙食べるごとに”ワシ、泣きそうなくらい嬉しいーとか言って。
手エ握って、次の匙なワケよ」
「やっぱ、脅してんじゃん」

手を握ると脅してることになる団塊の、午後。

<出ない団塊>

午後のラウンド2時間の頃になると、そよ風とともにハーモニカの音が漂ってくる。
「しかし、この音色って哀愁を感じるよねー。実際のとこ」
「確かに、胸にぐっと来ますよねー」
「縦笛なら鼻でもピーひゃら吹けるけど、ハーモニカは苦手なんよねー」

「やっぱ、指が太いとか足が短いとか?」
「イヤ、そういう問題じゃなく。環境の問題で」
「土壌汚染とか?」

「イヤ、そういう問題じゃなく。当時は、ハーモニカより縦笛が人気でね。
ワシって、流されやすい体質じゃから」
「んで、この曲を歌ってる人って誰でしたっけ?」

「おでこに大きなほくろがあって、暫くしたら美容整形で消したりして」
「んで、あの人の奥さんって」
「そうそう、金髪の外人で。名前は出ませんねー」

「歌の名前は・・・出ませんねー」
「そんなことより、センセが往診に行ってるGさんって。何年のおつきあいなんです?」
「んーと、10+13で23年じゃね。たぶん」

「最初の頃はどうだったんですか?喘息は」
「結構ひどくて、んでも今頃は結構エエじゃろ?」
「訪問診療の朝から、具合が良くて。センセが帰ると、悪くなるのはナンでじゃろ?って。
モグラたたきみたいに、センセがあっちこっちから。飛び出したり引っ込んだり」

「もっとエエアイディアは、出ん?」
「出ませんねー。あ、もう1人。Qさんは?」
「途中2年抜けて、やっぱ16年(語尾上げで)」

「そうそう、抜けて再会したのが印象的じゃったんですって。覚えてます?」
「車いすじゃったのは覚えてるけど・・・あとが出ませんねー」
「廊下の向こうから、見たことあるセンセが手を振って近づいてきたでしょ?」

「だっけ?記憶の扉から出ませんねー」
「あららー、これはナンかの腐れ縁と。センセを見て、思ったらしいですよ」
「だっけ?縁が腐る理由が出ませんねー」

団塊は出ないことが多い、午後。

<団塊の中毒剤>

初孫記念に禁酒してみて、中毒剤も案外止めようと思えば出来るモンだと。
2週間を過ぎる頃から、「なんだ、大丈夫じゃん」となり。
アルコールもタバコも、止める基本は同じであると自己流解釈。

代休の関係と天候の関係で、この3週間ほど本屋に行きそびれていた。
最初の1週間はむかし禁煙した時のように、新鮮な活字の禁断症状が出ていたが。
3週目には何処からか古い本を探し出してきて、集中力の無いままにパラパラ。

フツーの人間は、集中できる時間は15−20分だと聞いたことがある。
生来の習慣で私の集中力はフツーの半分であることは自覚している。
その習いで、メール・雑文・ペン習字・パソコンいじりを15分ローテーション。

痛む前に止めるから腰にも良いし、気分転換が図られて。
複数のことをいつも新鮮に出来るから、途中休憩に雑誌を挟む。
雑誌もパソコンとカメラの2種類で、さらにさらに気分を変え。

これを、せっかちで飽きやすく集中力欠如している私流にしようと思った朝。
団塊の「中毒剤の活字」は、止められそうにない。

<団塊の腰イテテ効用>

「センセ、最近落ち着きが出てきたな?」のWさん。
「まあ、ワシも前期高齢者を過ぎてやっと人並みに」返す私。
「ただ枯れてきただけとか?」突っ込むナースS。

「ナンで、落ち着きが出てきたと思うん?」
「いつも汗かきながら、せかせか。あっという間に見えんように」
「あ、あれね。腰イテテで、ちょうど良い具合にここに椅子。隠れて座る」

「んじゃ。みんなのベッド横に、椅子を用意すれば良いワケ」
「はしご酒の、止まり木みたいな。ここで一杯、あちらで一杯、そちらでも一杯如何?
ワシ、禁酒してるから。ピンと来んな−。スナック道連れみたいな」

「ハイハイ、なんでも好きにおっしゃって下さいませ」ナースS。
「あ、センセ、聞きたいことが」Wさん。
「Wさんが聞きたいと言えば・・・ナースSの弱点とか?」

「それもエエけど、ナンで腰イテテになったんね」
「ティッシュを投げたら、ゴミ箱から外れて。それを拾おうと思って、ギクッよ」
「お坊ちゃんじゃねー、腰まで」

「ワシの先輩は、羽毛布団の羽を拾おうとしてぎっくり腰みたいな」
「その先輩も、お坊ちゃんナンじゃねー。腰まで」

「んでも、そのおかげでこうしてゆっくり話ができるやろ?」
「腰が治ったら、また、色んなモン拾ってもらわにゃイケンなー」
「マジックハンドを持って歩こうな、これから」

マジックハンドで腰イテテ予防団塊の、午後。

<団塊の色々応募>

高額宝くじを買って、「もし当たったら、次が来るのは不幸?」の不安が勝つ。
当たるはずもない宝くじなのに、当たった時の心配するなら買わなきゃ良いのだが。

応募した記憶も乏しく、ましてや苦手な缶入りトマトジュース1ダース。
突然「おめでとうございます、当選です」と言われても、大いに困った昔。
今時なら、「目出度い、目出度い」詐欺を真っ先に疑うのだが。
滅多に応募しない懸賞で、「まあ一応出してみる」の感性が大事なようだ。

全国で1名様に当選する「伊達政宗」フィギュアも、そうだった。
でも買わなきゃ当たらない宝くじと同様、出さなきゃ当たらない懸賞応募。
身の回りに、学会がらみや医学雑誌に関する色んな応募が増えてきた。

取りあえずテキストをお勉強して、質問に答えるタイプ。
提出する時に適度な緊張があるのは、「8割正解で単位あげます」だから。
「あー、こんなん間違ってるやん」などと、わざわざ知らせては来ないけど。

そう思われると想像するのが、ちょいプライドに傷みたいな。
結局のところ必死でテキストを確認してしまうから、とにかく勉強になる。
これが月に1回の程良い緊張になってるうちは、良い刺激材料なのだが。
単位貰ってもクーポンにも図書券にもならないけど、費用は葉書代だけだからお気楽。

色んな応募に程良い刺激をいただく団塊の、昨今。

<団塊には孫がスーパー>

「あら、センセ。スーパーですか?やっぱ、環境問題の半袖シャツ」
「っつーと、停電予防のクールビズやね。しかも、スーパー」
「んでも、センセ。ダイエット効果で、心持ち暑苦しさがクール(語尾上げで)」

「確かに、あんたのオヤジギャグを聞くとメチャメチャさぶいんよ」
「確かに、センセは今まではどてら。最近は、金太郎腹掛け前後に近いような」
「んじゃ、スーパー金太郎か?」

「なんでも、スーパーって付けりゃ良いってモンじゃ」
「買い物行くなら、スーパー・スーパーとか?」
「ワケ分かりません。んじゃ、次の方お呼びしますね。Zさーん」

「おう、センセ。ワシ、元気がないんじゃ」
「奥さんに怒られたんね?」
「バッ様に怒られるようじゃ、ワシも終いじゃ。文句言うたら、一ひねりじゃ」

「んじゃ・・・あ、お孫さん?」
「そうなんじゃ、近所のモンが遊びに来て。孫が居らんと思って」
「ぶっ放したんね?例のシモネタ」

「そうなんじゃ、あとでこっぴどく怒られて。お祖父ちゃんとは、口聞かないって」
「そら、応えるなー」
「応えた」
「孫ってスーパーよねー。ちょっとした事で、応える」

孫がスーパーの団塊は、午後。

<団塊のペン習字雑感>

「パソコンはペン代わり」と言い続けて20年、おかげでパソコンには結構慣れた。
その間に乗り継いだパソコンは現在5代目、ちょっとしたシステム不調は驚かない。
趣味の写真と凝り性が災いして、ナンでもビジュアルでお気楽フツーだ。

今までの私が書いた手紙を読む先輩に言わせると、
「汚い字を見なくて良いし、文章はそこそこ面白い。その上、写真が付いて飽きない」。
これが誉め言葉とは思って居ないけど、手書きよりましとタカをくくっていた。

尊敬されなくても良いから、孫に馬鹿にされない程度の字を書こうと奮起して。
先ず形から入る人として、何はともあれ揃えたのはペン5本と国語学習ノート2冊。

人前で宣言して始めたペン習字も、孫と遊んだ分を除けば2週間が過ぎた。
意地っ張りなのが幸いして、通常練習時間と言われる1日20分の3倍をこなし。
字が上達する極意は、1に練習2に練習3,4が無くて5にまだ未熟なリラックス。

時には夢中になり、腱鞘炎になりかけてペンを置く。
前の字が酷すぎたばかりに、ちょっと本気で練習すればそれなりの成果があるモノで。
誉めると言うより意外さ溢れる驚きの声にも、気分を良くしてますます励む。

つい最近のことだが、書類を書くのも億劫にならなくなったのに気づいた。
練習帳を前にすると握るペンに力が入り、自分でも緊張するのが分かるほど。
この緊張が取れる頃には多少見られる字になっているかな?と思う、団塊の午後。

<団塊が癒されるバレエ>

奥様グループとは違うけど、招待状を貰った別グループの発表会。
座った横を杖を突いたジッちゃまが、えっこらえっこら降りて行く。
そのはるか先を、息子らしい若者と幼稚園ほどの女の子が行く。

恐らく孫が踊るのであろう、形相は必死でよたつく足をモノとはせず。
自分の将来を見るようで、他人事とは思えず差し出したくなる手。
5分後にたどり着いたのは最前席、かぶりつきで孫を見たいらしい。

その気持ちがグイグイ伝わってきて、声なき声でエールを送る。
かく言うMIHIジジイは、年少お子ちゃまダンサーに目が行く訳で。
思わず微笑んだり、プッと吹き出したり涙ぐんだり、孫が重なったり。

2時間も観察すると、バレエってかなりハードなモノらしい。
演目の中で踊りまくるのは、1人3分が限度かも知れないと思う。
跳んだりはねたりくるくる回ったり、手を上げたり廻したり、ねじったり(ウソです)。

お子ちゃまダンサーに癒され、帰りにカルビとロースでも癒された午後。

<団塊せっかちと夏休み>

経済学では、人間が後悔するのは「時間割引率」が有る特徴を持っているのが原因だと。
「時間割引率」とは、「せっかちさ」の程度であると言い換えられるらしい。
また、遠い将来の「時間割引率」が近い「時間割引率」より低下する事があるのが問題。

夏休みの宿題を先延ばしした後悔や、カードで衝動買いをして破産する事を説明できる。
1)消費者金融で借り入れて債務整理になった人は、そうでない人より
夏休みの宿題を最後にした人の割合が高い。
2)消費者金融から借り入れた経験のある人は、そうでない人より
夏休みの宿題を最後にした人の割合が高い。
3)夏休みの宿題を最後にした人は、そうでない人より肥満の傾向がある

かく言うMIHIセンセは、
1)消費者金融から借り入れたことはない
2)宿題帳などの夏休みの宿題は、最初の3日間で取りあえずやっつけた
3)昔は肥満だったけど、今のBMIはフツー
4)メチャクチャせっかちは、小学生から変わらない
であり、混沌とした人生を送ってきたようだ。

出典;競争と公平感(P108-P111)、大竹文雄著、中公新書、2010.中央公論社、東京

 さらに。夏休みの宿題とパチンコ
大阪大学の池田新介教授の調査から、次のように引用している。
1)タバコを吸う人は、ギャンブルもやるし酒もやる
2)タバコを吸う人はそうでない人より不幸であり、年収が200万円減ったのと同じ
なのだそうだ。

経済学では、分かっていても止められない財を「中毒財」と呼ぶ。
その特徴は、
「今それを消費する満足度は、過去にそれを多く消費しているほど大きくなる」と。
「ヘビースモーカーだった人ほど、明日以降のタバコが美味い」と言うことらしい。

もともと後回し行動を取るタイプは、中毒財から抜け出しにくいらしい。
「夏休みの宿題を休みの最後にやった」と答えた人は、
1)タバコを吸いやすく
2)ギャンブルをしていることが多く
3)借金を背負う確率も高い
のだそうだ。

不幸になるのが分かっていても、中毒財から抜け出せないのが依存症の最大の不幸。
最近、韓国・台湾ではパチンコが法的に禁止されたそうだ。

出典;競争と公平感(P114-P116)、大竹文雄著、中公新書、2010.中央公論社、東京

<団塊ジジのスマホ>

いくらアラカン・アフター団塊の世代でも、ケータイは使ったのですが。
職場のピッチは「首輪代わり」で、出来ることなら電池外したい。
個人用は殆ど奥様専用で、私には滅多にかかるモンじゃないから持ちたくない。

従来より電話嫌いの私だから、スマホメール以外は用がなかった。
パソコンメール歴は直に30年近いけど、スマホメールとは月とマル虫の差。
ところがひょんな事から「最安で、持っちゃう?」となって大きく様変わり。

いくら5度のダイエットで20Kg減量しても、指先の太さって細くならないようで。
スマホのボタンは押しにくいけど、検索なんて年に数回しか使わないから間違いも数回。
ポッケに入れて歩くと万歩計になるって!あ、そんなのジョーシキですかア。

スマホシーラカンスは、マイ・スマホに驚くことばかり。
すれ違ったジッちゃまが、「あ、病院終わったから。いま帰る」ピッ。

良く見りゃMIHIセンセのと色違いの真っ赤な、ジジ・スマホ。

<団塊のアクセス数>

メールの中には、「差出人にメールを見たことを知らせてエエ?」の開封確認。
「クッキー行っちゃってエエ?」には、アクセスいきなりだから「ダメ」クリック。
そう簡単にアクセスを教えてなるものかと、要らん心配をすることが多い昨今。

立場が変わると人間とは我が儘なモノで、自分と他人の接点が気になる。
果たして自分のホームページは開設以来、およそでエエから何人来たんやろ?
およそ13年で122600アクセスって、読みに来たんは何処の誰やろ?

遊び心で頼まれもしないのに作った病院のホームページが、9年で128000。
2ヶ所の病院から問い合わせが来たし、アップする時の私の数を除いても凄いモンだ。
双方向を維持して予備アドレスも掲載して質問にも答えたけど、業者丸投げで模様替え。

息子関連で勝手に作ったホームページは、プロバイダの設定で回数ではなく絶対値。
10ヶ月で115アクセスは、PRしていない割には立派なモンと思わず誉めちゃったり。
こっちも仕事関連を重視して、業者に丸投げで写真は美しくなったから模様替えもOK。

脳みそが上手く回転する間は自由にしようと思う、午後。

<団塊の\399の安心と不安>

春も深くなり、鯉のぼりが泳ぐ頃になると下半身は模様替えになる。
しかし、10年以上お付き合い願った短パンはかなりお疲れなのだが。
最近のファッションには、短パンという定義がないらしく店には無い。

かと言って、膝下10cmの股引みたいなハーフパンツは如何なモノかと。
休日の朝のチラシは、「NIKEショートパンツ¥1980」なら。
ショートは短い、だからショートパンツ=短パンでしょ!で駆けつける。

「わ、ワシがショートパンツを買うんだかんね。短パンだかんね。
いくら足が短くても膝下までは来ないでしょ!ショートなんだから。
NIKEじゃなくても、ニケでもエエから。短パンでオネガイしますね」

この声が届いたのか。
激安店の奥に、陳列してある地味色のショートとハーフパンツを発見!。
「こ、これはいくらワシが短足胴長でも。膝下までは来ない、ショートパンツ」

グレーとKだから、側面に3本くらいラインが入ってないと遠目に下着?
ラインの色はなんか変だけど奥様の、「ずーっと見てるうちに馴染むかも?」で決定。
「まあ、3回洗えば色が落ちて刺激の無い色になるかも。なんせ\399、なんせかの国製」

これで10年使い倒した部屋着短パンは、全て処分してもOKの一安心。
外出用は、ブルックスで決めちゃいそうな良い気分。
その気分の中で、これが\399で売ると言うことは原価は?労賃は?の不安。

こうして、\399の短パンを着用して足元すっきりしたものの。
我が国の繊維産業を思うと、不安は尽きないもどかしさ。

10年以上お付き合いしてくれた短パンは、煙と共に昇天した午後。

<団塊の出来>

高校時代に英語雑誌の懸賞付き添削で、ペンやら手帳やらをいただいて。
全国順位の下の方に名前を見つけて、ちょっぴり喜んだモノだが。
ボールペン習字講座を、ヒラかなばかり10日間腱鞘炎一歩手前まで来て。

与えられた課題を提出するようになり、緊張しまくりで僅か7行の清書。
それから1週間後に赤ペンで添削されて、批評を添えられて返ってきた。
よくよく見れば緊張した結果は字の大きさに表れて、ハネもトメも何やら情け無い。

それでも、「形が良い」なんて誉めて延ばすタイプの先生らしい一言。
誉められると緊張する長男性格なのに、背中がくすぐったくなるけど嬉しい。

院生の1回生の時、なぜか書き手が廻ってきた医学雑誌の小論文トラウマ。
A4でわずか1頁の文章を書き上げて、会心の作と師匠に見せれば。
「MIHIちゃん、日本語になってないけど。意味ワカラン」で、書き直し30回。

30年前はワープロもパソコンも無い時代で、赤い文字が1つでも入れば全てやり直し。
原稿用紙の束を引き出しに、消しゴムは2つだけどシャープペンの芯も買い足して。
「まあまあ、かな?」が聞こえた時は、懸賞論文入賞の栄誉に似た感動だった。

スタッフから「字が読めるようになった」の嵐に、満足度うなぎ登り。
2度目の課題提出までにあと5日はあるから、手に鎮痛ローション塗りまくり。
誉められたい一心で、ひたすら精進する爺の夕暮れ時。

<団塊は研修医指導>

「イヤイヤ、若いってエエねー」
「センセ、それってまさかのあたしのこと?」
「皆目、ゼンゼン。言語道断、市中引き回しの上さらし首」

「んじゃ、誰?」
「婦長さんの後ろに立ってる、研修医のセンセ」
「あらま、自画自賛して損したワ」

「それは自画自賛じゃなくて、大いなる勘違い。はたまた、妄想じゃけど。
んじゃ、一発ラウンド行っちゃいますか」
「あ、ハイ。とっとと」

で、老年医学の心得「人生の先輩に大して、尊敬を忘れない」から始まって。
聴診器を使いながら皮膚を摘んで、脱水症チェックを忘れないとか。
弁膜症の音も脈が遅い時は聞こえやすいけど、速くなると聞き落とすから油断しないとか。

あれこれゴジャゴジャ言いながら、背の高い彼を後ろに引きつれている。
遠目にはとっ捕まった宇宙人もどきみたいな、若殿の前を行くメタボ小姓みたいな。
急性期病院から療養型病床へ研修に来た彼にとって、恐らく2度と体験しないかもの2週間。

丁度良い具合に患者さんのご家族に病状説明だったから、同席して貰い。
ビジュアルサマリーA42頁をお見せしながら、チラリと目をやれば。
「ほオー、ここじゃこういう風に説明するんだ!」風の表情。

レントゲン被爆と血液検査の意味と有用性を、データをお見せしながら解説。
この時、「医療行為は、注意しないと医者の自己満足と加害者になり得ること」を確認。

つつがなく終われば、ドラッカーパクったレポートが待っているのは。
「今回の研修を元に、いま自分が所属している病院のイノベーションについて」
もし自分だったらどう書くか?を考え結論はまだだけど、まっ良いか!のお気楽。

提出されるレポートが楽しみな研修医指導団塊医の、午後。

<禁酒13年目団塊への朗報>

ここまで来ると、TVでウグウグ・プハーッなんてやられても喉は鳴らないし。
ウーロンに手を出さないし、炭酸飲料を求めて家の中を彷徨うこともない。
もちろん健康診断でASTやALTを云々することもないし、γーGTPも話題に上らない。

アルコールが抜けきってピカピカの肝臓、後は脂(脂肪肝)が気になると思っていたら。
強制を含めて4度のダイエットで、BMIも腹囲もフツーの範囲に突入して。
エコー検査をやらなくても、フォアグラ状態じゃないことはほぼ明らか。

これで暫くは孫と遊べると、安心していたところに朗報?
Medical Tribune 2011年4月28日号、「大量飲酒で膵癌による死亡リスクが上昇」なんて。
でもいつも気になっていたのは、この「大量飲酒」の定義なんだけど。
アルコール性脳症やアルコール性二次性心筋症でも、この「大量」の定義が色々。

S.M.Gapsturセンセは、大量飲酒=蒸留酒3杯と定義した。
でも3杯って、盃?グラスも色々、ドンブリはたまたバケツ(冗談です)とか。
しかもビールやワインは関係無いね!のコメントは、彼の好むもの?
まあ邪推はそこまでにして、これ以上追求せずに。

さらに飲酒と喫煙が混じり合うと、蒸留酒は2杯以上でリスクが高まるらしい。
喫煙しながら蒸留酒を3倍以上飲むと、飲まなくて喫煙だけより36%リスクが高まる。
喫煙経験者で今は禁煙していても、リスクは16%高いらしい。
彼は飲酒も喫煙も御法度の、敬虔なナンタラ言う信者かも知れんと読み解く。

禁酒13年目団塊への朗報。

<チームケアに団塊の一石ポッチャン>

今まで大きな事が無くケアをしてくると、無難な状態に慣れてしまうことがある。
何時もじゃないけれど、「もう少しどげんかせんでエエんやろか?」のわだかまり。
「ナンで今?」じゃなく、「ナンで今までしなかった?」で動き始める。

いきなり言われたスタッフは、新鮮な驚きが不安を増幅させ始まるディベート。
孤軍奮闘で多数の抵抗勢力をちぎっては投げ・・・説得じゃなく、納得するまで。
声は枯れ喉はからから、増幅した不安も分かるけどオチは想定してあり。

言い出しっぺは資料を出しまくり、データーを見せ放題。
わざわざ弱点を作っておいて、質問に「それ待ってたんよね」で切り返し。
これって30年前に先輩達が学会発表でやってたヤツやん、いまはしとらんと思うけど。

想定問答集を作るまでのこともなく、叩かれるモグラは次々と沈んで行く。パンッ!
一瞬の静寂を逃さず、「イヤなら話は簡単、ワシは止めてもエエんやで」攻撃。
想定内の「そこまで言ってません」を待ちわびて、折衷案を切り出すタイミング。

洗いざらい書き出した疑問不安に答える形で文章化すれば、証拠というか記録になる。
それを元に患者さんやご家族に説明した上で納得していただければ、動くのは当たり前。
慢性疾患を診させてもらう時に、最も恐いのが「まあ、こんなモンかな?」発想。

研修医には、日々変化している慢性疾患をなめんなよ!と檄を飛ばすジジイ。
安全第一だけど、時にはチームケアスタッフに新鮮な一石を投げるのも私の役目。
脳みそストーミングには適度な刺激だねと思う、午後。

<団塊は、哲学的な弁証論的な?>

「センセ、今電話して宜しかったでしょうか?」
「座敷童に起こされて。読書中じゃけど、宜しかったですウ」
「あ、この時間ならC君ですね」

「んじゃ、そう言うことで。さらばッ」
「コラコラ。あと50分で、主治医が出勤すると思うんですけどオ」
「んじゃ、そう言うことで。さらばッ」

「コラコラ。血糖36で、宜しかったでしょうかア」
「宜しくないッ、50プロぶどう糖40cc静注。オネガイしますネ」
「ラジャッ」の15分後。

「どや?」
「ハイ、くっきりはっきり。お食事中です」
「んじゃ、エエな」

「ハイ、直に主治医が来られるでしょ。んで、読書ってナニ?」
「あんたらの世界には無い本よ」
「例えば?」

「互いに矛盾しあった前提を含むいかなる論証も、その論証の結論がね。
どのようなものであるかに関係なく、妥当である。なんてな」
「それって、日本語ですか?」

「あんたでも分かるように、説明するとやな。例えば、犬には必ずシッポがある。
んで、犬の中にはシッポのないものも居る。結論は、月はブルーチーズで出来ている。
これが哲学的に妥当とされる論証である。なんてな」

「なんや、フランス語やん」
「コラコラ、れっきとした日本語じゃッ」
「あたしがワカランモンは、ゼンブ外国語って決めてるんです」

「エエ加減な前提で話を進めると、結論はどうでもエエんちゃうかみたいな」
「ナンや、MIHIセンセが言い訳する時の台詞みたいなヤツね」
「あれは、哲学的な弁証論的な・・・」

団塊にとって哲学は外国語に近い、午後。

出典;哲学101問、マーティン・コーエン著

<団塊の米戦艦撤収>

「ほうれん草を*g食べても、レントゲン写真1回分ですから」って言われても。
暫く(半減期がくるまで?ホンマに半減期が来れば大丈夫か知らんけど)
毎日レントゲン撮ってるわけで、余程の重症患者さんでもそこまでは・・・。

生産農家だけじゃなくて、流通に関わる部署も災難。でも一番災難は国民。
世界唯一の被爆国民だけに、敏感になるのも仕方が無いと思う。
と思っていたら、その原爆を落とした国の戦艦が逃げ足速く撤収を聞く。
思わず「あんたの国は壊れた原発より恐いモンを落としたんやで」と言おうと思ったら。

「こないだ、お疲れエ。んで、原発30Km以内なんじゃけど。行く気ない?」問い合わせ。
悩むよなー、行きたいのは山々。でも、ナンで患者さんを別な場所に移動せんの?
しばしの間はご不自由をかけるけど、点滴も薬もスタッフも充実してる施設や病院へ。
と思っていたら、動きがあったようで。

不十分な体勢じゃ、人生の先輩や日本を背負っている国民への配慮が足らんやろ?
それに与野党で足引っ張り合ってる場合じゃ無いやろ、かと言ってどっかの大臣。
「腰引いたらペナルティだかんね」、んなら現場で先頭に立って旗振りなさい!あんたが。

口が軽い大臣をゴメンで済ませちゃうなんて、武士の世界じゃ切腹なのに。
消防士さんも自衛隊さんも、危険を承知で頑張ってんだから。あんた言い過ぎ。
あたしゃレスキュー隊隊長の、涙目で語る一言一言に胸が熱くなってしもうた。

いっそのこと国会を原発5km以内に置けば、色んな事さっさと片付けるかも。
政党同士でケンカしてるヒマ無いでしょ。復興に本気出して欲しいモンだね。
現地の方々の痛みも身に染みて分かるだろうし、そうなりゃ本気出すかも?

知恵と力を出し合って原発を冷やし、島国根性の団結の凄さを世界に見せつけて。
「あ、やっぱ日本人って凄いね」って思わせたいモンだ。被災地援助も充分じゃないし。
同僚が赴いた避難所に、主治医もケアマネも行方不明の患者さんが不安がってるとか。

電気会社の社員さんを責めちゃイケンよ、想定外の地震と津波だし彼らも頑張ってんの。
彼らに言葉のつぶてをぶつけるなんて、日本人のやることじゃないね。
その上、募金箱盗む恥さらしとか義援金詐欺とかが出てくるとは情け無い。

「オネガイだから、日本人の恥の文化と美徳を忘れないでね」
と勝手なことを言いたくなった、午後。

<もし団塊ソクラテスが原発報道したら>

ソクラテスはおっしゃいました、「大工と話をするときは、大工の言葉を使え」と。
「なんせワシらに情報が来ないんよ」なんて、棚ぼた風お子ちゃま原子力委員会は論外として。
なんたら保安院がTVに出現して情報を垂れ流されるのを見ていると、ワケ分かりませぬ。

聞くところしょっちゅうお出ましなる方は、専門家じゃないそうな。
専門家から聞いたとおり口に出してるらしいから、質問をされてる場面は余り記憶にない。
エダノさんもそれに近いけど政治家言葉で国民言葉じゃないから、くしゃみを途中で止められた不満。

そこで、「そうだったのか!の池上さん」が出番でしょ。
しかも、ばらばらに好き勝手にマイクの前に立つんじゃなくてなんたら委員会も保安院も全員集合で。
保安院は管理指導するだけで責任がないから、事故に対する「ゴメンね」感覚ゼロ。

誰かが情報を流す度、池上さんが国民言葉に翻訳してエダノさんがOKサインで次へ進む。
ここまでやったら視聴率が上がるなら、国民が要らん不安と不満を抱えなくて良い。

池上さんも仲間の「安心デマトリオ」と大本営発表の某国立放送じゃ、聞くだけ無駄?
TVで「安心デマ」を流すのは、東電提灯持ち識者に東電腰巾着の記者ばかり。
安全異論を唱えるまっとうな人は、直ぐに画面から消えてしまうていたらく。
いかさま博打の胴元と、どこがどう違うんじゃッ!

東電社長が震災で大騒ぎの頃、取り巻きマスコミと中国ゴルフ旅行とはトホホ。
手足口付き(全部おごり)たかりのマスコミじゃ追求できないし社長も追求されたくない。
病院入院避難で逃げ足速いと勘ぐられても、言い訳できんやろ。
事故隠し体質・素早い逃げ足・東電語誤魔化しが横行すれば、誰を信じて良いのやら。
こうなったら天の邪鬼、言うこと全て逆に聞けば良いんだ。

それにしても、コミュニケーションが足らん?ちなみに、ドラッカーさんも言うてます。
コミュニケーションとは、
1)知覚である;受け手(国民)に何を感じて欲しいか?
2)期待である;受け手(国民)は期待しているものだけ聞く
3)要求である;受け手(国民)の価値観・欲求・目的に合致するときに強力となる。
逆になると、受け入れられないか抵抗される
4)情報ではない;情報と依存関係にあるが、知覚が最も重要である。

原発情報垂れ流し作業は、コミュニケーションとしては程度が低い。

<ジイにハイの団塊爺>
認知症があるとの情報で転院してきたKさんなのだが、どうも納得が行かない。
認知症検査をしてみると以前の病院では20点なのに、我がスタッフなら7点とは。
独居生活だったと聞いたが、比較的小ぎれいにしていたようで顔つきしっかり。

食事もリハビリも拒否して、ひたすら寝るばかりで足腰更に弱る。
私の大きな声で嫌々布団を顔からズリ降ろし、相手をしてくれる時は普通のジイ。

「こないだ看護婦さんがやったテスト、手エ抜かんじゃった?」
「あ、またか。そう思ったら、飽きて・・・。あんなモン、1回やったら充分じゃ」
「んで。飯、マズイ?メシ食わんと元気が出んから、死ぬまでここに居る?」

「勘弁してもらおうか」
「ワシだって。仕事じゃなかったら、こんなツマランとこ。んで、何年居るつもり?」
「もう、死んでもエエ。メシ食わん」

「冗談やないで、ここでハンストして死なれたら迷惑じゃっつーの。
とっとと家へ帰って。好きなだけハンストして、どこぞと行ったらエエがね」
「センセは、出身何処ね?」

「基本は讃岐じゃけど、1/3江戸っ子、後の1/3はコテコテの周防人。おいでませや」
「ちょっと、言葉を治さんとイケン」
「字も治そうと思って、ペン習字・・・んじゃなくて。飯ッ」

「食わん」
「確かに、病院の飯は誉められたモンじゃないけど。薬と思えば、大丈夫じゃ」
「大丈夫って、意味分かっとるんか?」

死んだオヤジと同じ年頃のジイを見ると、団塊はハイになる。

<デイサービスでズルしないッ!と言う団塊>

「ヘッ。わ、ワシ?」
ガラスドア越しに目があったジッちゃまが、両手ヒラヒラおいでおいで。
自動ドアをすり抜けて、指示通りの椅子に座り込むと理学療法士Z登場。
聴診器ぶら下げたオヤジを見て、一瞬たじろぎつつ気を取り直し。

「お早うございまーす。あらら。デイサービスに、見慣れん人が紛れ込んでますけど。
ゼンゼン気にしなくて宜しいですよ、そのうち皆さんのお友達になると思いますけど。
ハイッ、軽ーく準備体操でーす。両足のつま先を上げます。10までエ」

15分ばかり軽くストレッチ、深呼吸の頃には皆さんちっと息が弾んで。
適当にこなしつつクライアントの様子を覗い、時々サボってズルをするMIHIセンセ。
「ハイッ、大きく深呼吸う。ハイッ、最後でーす」

「センセ、ズルしたじゃろ?ワシ、見とったで」
「あ、そうじゃった?ちゃんとやったような・・・」
「イヤ、3回ズルした」と厳しいご指摘に、「ハイッ、今度からズルしません」。

しかし、こんなズルなら可愛いモンで。
ズルがばれるのは時間の問題と思うのに、ケータイメールでカンニングをする受験生。
将来は弁護士に!らしいが、基本的にズルしまくっても司法試験はどうなんだろ?
運やツキで合格すれば、一生罪悪感を引きずって行くはずだから見つかって良かった。

 収入の倍の借金をして、まだ借金を増やす政治家はズルくないの?
破綻に突っ走ってるのに、「まだまだ、大丈夫」なんてズルを言う政治家と評論家。
儲かってないのに儲かってるのを装って、借金続ける粉飾決算のズル会社。

世界的な経済危機を生んだサブプライムローン、さっさと金持って逃げたのは完全ズル。
大丈夫なーんも国民を締め付けてないし国を広げてないよねと、ズルを決め込む赤い国。
世の中ズルが多すぎるッ!と独り騒いでも、負け犬の遠吠えと言われても仕方が無い?

他人のズルを見て、我が身を振り返り「ズルしてないよね?」自問する団塊の、午後。

<団塊の手抜きにはPC>

「センセがパソコン使うのは、何でです?処方箋なんか、手書きが速いのに」
「アホ言え。最近のプリンターは、よー出来とるで。A4にびっちり書いても10秒足らず。
何枚書かせても文句は言わんし、字も間違わんし。第一、自分の書いた字が読める」

「んでも、スイッチ入れて立ち上がるまでに時間が」
「あ、着替え中に立ち上げて。あとは、つけっぱなし。でも、あんたらとはチャイます」
「何処がですか」

「勤務時間以外は電源落とすで。PCスイッチ入れてないのに、電源入る病棟プリンター。
どう言うこっちゃ、ワシが気づけば切るけどな。時々、印字してる時も」
「あー、昨日もやったでしょ。褥瘡経過のをプリント最中。犯人はセンセじゃったか!」

「たまにやないか、年に300回くらいの可愛いモンやで。エエんでチュ。
それよか、垂れ流した電気代返せエー。みたいな」
「しかし、どうにかナランもんですかね−。手抜きしたいこと、いっぱいあるでしょ」

「勘弁してくれん、あんたのスッピンだけは。拷問以上、ハゲシさ天井知らず」
「ちょちょっ、んじゃなくて。あたし達も採血スピッツラベル書き、手抜きしたい」
「そんナン簡単やん、ワシが美白スリムナースならとっくの昔に」

「その点で、あたしと競合するじゃないでデスか。美白・スリム・面長で」
「最近じゃ、顎やえらが張ってんのを面長って言うんか。ホエー、知らんじゃった。
職員検診の採血管のラベルは、手書きじゃなかろう。300年前から」

「あらら、あれって事務から来ますよね。何で、300年前から気づかなかったんやろ」
「それに、ホレ。ワシのイラスト入りラベル、研究会受付で重宝しまっせ。
「あ、どうも。あ、サインね。あ、これぺたッね。3秒で済むすぐれモン」

「しかし手抜きにかけては、MIHIセンセは宇宙一ですねー。感心するワ」
「どうかして手を抜くかを考えると、パソコンっちゃ便利な箱やねー」

手抜きにはPCぐらいしか思いつかない、午後。

<団塊はDTMより鼻笛>

毎年の賀状に「今年こそはDTMに取りかかる」で、合計5回は書いたような。
我が家のマシンに繋げていたトーンジェネレーターを、思い切って引っこ抜き。
予備のノートPCに繋げようと思ったら、RS232Cで繋ぐシーラカンスシステムが歯止め。

某量販店に走れば「これで繋がりますけど、ちゃんと作動するかどうか・・・」
「あ、5000円を超えるんだ。それで繋がらなかったら、紐としか使えない悲しいサダメ」
「そうですねー。ボクも悩みますね−」で脳みそクールダウン撤収。

こいつをUSBに切り替えるコードなんか無いよね?と調べたら、あるんですねー。
しかもトーンジェネレーターとナンとか繋がる情報は、とってもマニアックな世界。
購入の決断は、代引きとかゼンブ込みで3000円でお釣り来る価格にあったワケで。

ネットで注文・宅配で届き・ドライバー突っ込んでピンピン音が出だしてウヒャウヒャ。
お手軽作曲フリーソフトも、バージョンアップしたヤマハのソフトもインストール。
ヤマハスピーカーから音が出だして、ちょいコーフン気味で取りあえずPC再起動の昨日。

「な、なんですかこれ?」背後から事務のおにーさんの声がかかる。
「あ、これって昔から持ってた(使っていたとは言いませんよ)ボクの楽器。どうよ」
「これで、いったい何をしようと?」机の上ノーズフルートを指さす。
「まあ、早い話が作曲」

「演歌とか?」
「やっぱ、イカは焙った方が。みたいな。雨雨フレフレ、もう止んでネ。みたいな」
「ジジイには、演歌ですよねー」
「でも、DTMより鼻笛が気楽でエエなー」

ホントはジャズハーモニカが吹きたい、午後。

<団塊の正義>

「どオこーの誰かは知らないけれど、誰もがみイんな知っているウと。
んじゃ、フツーに知られてんじゃん。責任者出てこいッ、なんてな」
「おろ?センセ、ご機嫌の絶好調じゃないですか。迷惑千万」

「んで、Kさん。月光仮面って知ってる?」
「ナンですか、いきなり。子供の頃、人気のアニメだったですよねー」
「おろ?月光仮面は実写版でしょ、オオセコウイチ。武田薬品提供」

「そう言えば、私の叔父が実写版を見たって。白黒」
「カラーじゃないから、血イが出ても墨汁ドロドロまみれみたいな。
んでも。カラーでプロレス見たジッちゃんが、血イの赤色を見て失神したとか」

「ま、まさか。センセも実写版見たなんて、言うんじゃないでしょうね」
「そ、そらやっぱ。月光仮面は、アニメのモンやろ。あれって、カラーよね?」
「私はモノクロTVって、見たことありませんから」

「ボクも、そうじゃった。気がついたらカラー」
「んじゃ、隠密剣士は?」
「あれもオオセコウイチだよね」

「じいちゃんが言ってました、提供は・・・」
「パンパンパンビのパンビタン。武田薬品ッ」
「やっぱ、MIHIセンセ。モノクロで、見たんじゃ」を後頭部に受けながら撤収。

「月光仮面のおじさんは、正義の味方だ良い人だーっ。悪い正義の味方って、どんなん?
イヤイヤ、悩むと疲れる。やっぱ、正義はエエ人のモンやねー」

団塊医師の棚には、<サンデルの政治哲学、正義とは何か>が出番を待っていた。

<報道関係者は愛を!の団塊>

ボランティアを募る話になって、あるセンセがTVで言ってた。
自分の食糧くらいは持参するのが礼儀、手ぶらで行って飯を食わせて貰っちゃイカン。
ただでさえ物資が不足しているのだから、そのくらいの気遣いは常識であると。

この度の凄まじい状況を伝えることは重要だけど、TVを見ると何処も同じ切り口で。
我が業界の関連で見たインタビューは、「いまナニが必要ですか?」が気になった。

そこまで言うなら出かける前に聞いといて、米なり水なり可能な限り持って行けば!
病院なら薬も消毒薬もナニもかもが不足しているのは、分かりきっているのだから。
手ぶらで行って「ナニが足りませんか?」はネエだろが!と、鼻息荒くなっちゃって。

物資を持参した上で不足物資を聞いて、報道した上で次の現地入り報道関係者に連絡。
その情報で必要物資を持参するなら胸が熱くなれるのに、あれじゃ愛を感じない。
手ぶらで行って聞きたいこと聞いて、映像を持ち帰るだけじゃ如何なモノか。

情報の垂れ流しだけでなく、報道が復興のお手伝いをするのも有りじゃないの?
似たような情報は1つにまとめ、各報道局は得意な部門を活かして役割分担。
色んな角度で伝えるべきじゃないかと思うのだが、間違いだろうか?

現地入りする時は、物資を持参するのを決まり事にするくらいの意気込みが欲しい。
更に言わせてもらえば、帰りの車にはがれきを積み込んだらますます役に立つと思うけど。
と言うことで、ボクの1ヶ月分のお小遣いを寄付させていただきました。僅かですが。

<団塊の失敗会議>/H2>

我が業界の殆どと言える会議は、発言も少なくつまらないことで時間を費やし。
大したディスカッションも行われないまま、大した結論も展望も得られないのが常。
新自由主義かぶれ毒とるの私としては、ある委員会の長になったのを機会にぶっ放した。

資料は事前配布で熟読した上で、必ず自分の意見を持って委員会に参加すること。
委員長兼司会でいきなりディスカッションから入ると、沈黙するのは想定内で。
指名して発言を求めると、渋々と準備してきたメモを見ながらしゃべり出す。

次の指名で事もあろうに、「先ほどの方と同じです」なんて言おうものなら。
「違う意見を持ってる方?全員一致は否決だかんね」で、初日は大抵これで沈黙の行列。
2回目の会議の前に出す通達は、「ありきたりの総論じゃなくて、各論を言うように」と。

各施設独自のことを要求し、「前の方と同じ」だけじゃ済ませない。
古手のやる気のない委員は、想定通りここでギブアップし部下が代理出席。
さてこれでやる気のないヤツを淘汰したから、事は順調に進むと勘違い。

何だかんだと理由をつけて欠席者が続出、頭に来た委員長(私ですけど)が吠える。
「本気で施設を良くする気がないんなら、こんな委員会は無駄じゃから。
委員会は解散ッ!反省してやる気になったら、おいで!んじゃ、撤収ウ」

経済学では、政府による規制などの要因によって市場メカニズムが
適正に働かず、望ましい資源配分が実現できない状態を「市場の失敗」と呼ぶ。

我が業界では、新自由主義好みの委員長の要因によって会議のメカニズムが
適正に働かず、望ましい前向きな展望が実現出来ない状態を「会議の失敗」と呼ぶ。
参考:資本主義はなぜ自壊したのか  中谷巌著

<還暦後団塊の病気感>

なぜ人は病気になるんだろうと常々思っても、答えが出るわけがないのも承知。
還暦前に名簿を眺めて、同級生が「死亡」と記されているのを見ると心が痛かった。
ナンであんな良いヤツが、しかもベジタリアンで節制した生活を送っていたのにと。

更新された名簿を見るには、還暦を過ぎるとちょっとだけ勇気が必要になって来る。
大した変わりようがなければ、直ぐ棚にしまい込み忘れその勇気は次の数年後に持ち越す。
普段の臨床の中で出会う私より若い(還暦より下の年齢)患者さんは、そうは行かない。

自分で動けないような病気にかかり急性期を過ぎると、次に待ち受けてくれる施設がない。
かと言って、慢性疾患で年単位の入院を受け入れて貰える病院もさほど多くない。
リハビリの期限をつけられて、まな板の上の鯉に成らざるを得ないのは誰の責任じゃッ!

特に還暦を前にした人には、落ち着いて療養できるところが少ないのが現実だ。
それもこれもあいつが悪いと吠えてみたところで、ヤツには痛くも痒くもない。
あと5年後なら年齢的に良いけどとか、病名が入所の対象になっていないとか。

つい最近還暦を迎えた担当患者さんが、病院生活8年間を過ぎて施設に移動できた。
移動しても続きの建物で、主治医も変わるわけではないのだから本人の環境変化は少ない。
強いて言えば、介護スタッフのローテーションだけと言っても過言ではない。

入院ではないから、ラウンドは外来同様月に1,2回となる。
入所1週間目に久々の施設ラウンドで、声をかけることになった今日。

施設が新しく窓も広く部屋は明るいし、雑音が少ないからリハビリ以外はウトウト。
「たまにならエエけどなー。どうね?」の声掛けに、想定内の無反応。
「んでも、病院より居心地がエエやろ?」も、静寂だけ。

いつも「もしこの患者さんが自分だったら」の想いを抱いて、仕事をしている。
若い頃のようにサクッと結論が出なくなったのも、還暦を過ぎてからのような気がする。

<団塊とナースの大台>

「ヤダ、あたしとうとう大台に乗ったんよ」
「あららー、とうとう来るモノが来たって感じイ(語尾上げで)」
「んで、いくつに?」

「それが大問題で、どう思う?」
「不摂生しとるから、大台に乗ったワケやな。やっぱ、100キロ?」
「な、なんてことを。確かに、1ヶ月で0.2割増しですけど」

「んだから、先月から20キロ増えたんやろ。計算合うやんか」
「ゼンゼン合ってませんッ!」
「んでも。フツー大台って言えば、桁が変わることやろ?」

「いくら何でも100キロはネエ。90の大台もあるし」
「110もあるでよ」」
「ウウ、70キロですッ!んじゃなくてエ、三十路の大台ッ」

「なんや、大丈夫。10年前から三十路に見えてたから、逆に若返った(語尾上げで)」
「ゼンゼン、大丈夫じゃありませんッ」
「それよか、MIHIセンセも大台に乗って初老期」いきなり参入婦長さん。

「んでも、ナンで大台って言うんですウ」
「株式の市場用語で、目標値や目安値などの総称なんよ。オバカは知らんじゃろけど」
「オバカは言いすぎ。んで、バカってナンで馬鹿なんですウ」

「バカの歴史は、秦の始皇帝に遡らなければならないけど」
「やっぱ、バカはバカなりにバカに詳しいんだ」
「早口言葉になりそうな・・・」

「んで、馬鹿?」
「あ、皇帝が鹿狩りに出かけたワケ。んで、矢を放ったら馬に当たっちゃったワケよ。
んだら家来が、皇帝!矢が馬に当たりましたって言うたそうな」

「そら言うでしょ」
「ところがそれを見た皇帝、コラコラこれはゼッタイ馬よな?ゼッタイ、って言うたら」
「意地っ張りですねー、皇帝って」

「んだら、しゃーないわな。家来も、ハイッ鹿ですって。んで、馬鹿になったワケ。
では拙者先を急ぐ旅ゆえ、大台80キロのお女中。これにてゴメン」
「大台が100キロなら30キロ余裕じゃから、唐揚げ弁当は大盛りにしなくっちゃ」

 ナースQの大台は3ヶ月先!と読んだ、午後。

<団塊の喧噪中に流れる時>

立てかけた板にぶつかった泥饅頭のように、国債評価は落下し始めたら止まらない。
見苦しい国民不在の政局争いは、「誰に日本の将来を託せるのか?」の答え以前の問題。
今与党も元与党も責任の擦り付け、対案無しの反対に終始する野党ぼけも変わらない。

このまま生き残りたい一心で、市中銀行が国債を売り始めたら再現される敗戦の焼け跡。
新自由主義の悪い面ばかりが目立ち、若者の活き活きさが失われている。
贅沢を言わず求めれば仕事に就くことが出来たのは、シーラカンス的事象か?
いくら我慢強い国民でも、ほとほと愛想が尽きれば残るのは不安だけ。

安もの買いの挙げ句の果てが、安い賃金の国へ逃げる工場・仕事場。
自分で分の首を絞めているのに気づかず、毒ギョウザに文句が言えるか?
アリジゴクに落ちた自分の身の上に、気づかないまま這い上がる努力を繰り返し。
いつしかエサになるのは時間の問題のトホホ、怒りがエネルギーに変われば。
エジプトだけじゃない、何処かの大佐さんと同じ運命の与党やで!

国粋主義者じゃないけれど、資源が少ないけど知恵と工夫なら胸を張れる日本。
いろんなモノをぶっ壊した元与党は、選挙に負けていろんなゴミを残していった。
それに輪をかけて同じ様にゴミを出し続け、掃除パフォーマンスは自己満足にしか見えない。
細々と知恵で工夫・得意の改善だって、飯を食わなきゃ知恵も出ないし戦えない。
それでもどんどん進む円高に得意技で耐えてきた底力も、放電してしまいそうな弱気。

当直明けの昼過ぎは、昼食後に上昇した血糖が眠気を誘う。
脳みその回転が鈍っているのは、2,3回のテーブルゲームで確認。
白衣を脱いでラウンドとは言えない徘徊は、リハ室へ。

体が不自由になった人生の大先輩の皆さんは、平行棒の中をゆっくり進む。
横を見れば麻痺した足をPTが曲げたり伸ばしたり、先の見えないゴールへひたすら前進。
病室のTVが垂れ流す喧噪の国会中継を思い出しつつ、緩やかなリハ室の時の中でプチ覚醒。
病棟を通りかかれば、聞こえてくる賑わいに誘われ。
いきなり誕生日合唱隊のリーダーとして、両手に握りしめるマラカス。

「センセって、南米の血が流れてません?真っ赤なマラカス、似合うわ」
「ワシのご先祖は、ホセ・源左衛門じゃったかな?オーレイッ」
「ワケ分かりません」
「んじゃ、唄いながら突っ込むぞオ。ハッピバスデー」

後ろを見れば1人を除いて、殆どステーションに居たスタッフ。
「今日は、オールスター勢揃いじゃねー。MIHIセンセって、こういう時は牽引力がある」
「そうそう、何でやろ?」

「んじゃ、踊りも行っちゃいますか?」
「ま、まさか。イエス・ウイキャンで。踊りも?」
「ウー・・・マンボッ!当たり前だのクラッカー、ラテン盆踊り6ヶ月コースやでッ!」

「センセ、センセ。タンバリンは?」
「おうおう。足に2個結わえ付けて、ガシャガシャあらよっと」
「こんなオモチャ、無かったア?」

つい先ほどまで、緩やかだった私の時の流れは加速する。
喧噪が最高潮に達して完全に覚醒した、午後。

<団塊の国家破綻とノストラダムス予言>

いくらゆっくり食べても、菓子パン2ヶにブラックコーヒーは7,8分でけりが付く昼。
結局自分で考え出した腰痛体操(筋トレとストレッチ3種類)も、およそ15分。
その後は医学に関係ない読書30分で、昼休み残すところ15分足らずだから。
脳トレにテーブルゲーム3,4回で、午後に使う脳みそウオーミングアップ。
カップの底の冷え切ったコーヒーを、一気に啜ればジャスト1時間。

最近しつこく読み進めているのが、「マルクス資本論の入門書」。
470頁そこそこだから、速読術免許非皆伝の私ならとっくに読み終えているはずが。
想定内の超粘着スピードで、噛み砕いて飲み込むのにやたら時間がかかる。

ライオン総理ジュンちゃんがいろんなモノを壊し、跡を濁しまくって消えた数年前。
後始末をせなアカンと思って居た与党は、沈没して交代したけど代わり映えせず。
何処がどうイカンかったか反省の無いまま、低迷する我が日本のトホホ。

ライオン総理ジュニアは父ちゃんに似た吠え方だけど、負け犬の遠吠えじゃあるまいし。
我が業界への悪行三昧を思い出して腹が立っても、どうすることも出来ず。
後釜のおぼっちゃん総理は、橋本さんの「よーけ国債発行したらアカンよ」法を凍結し。
ママから貰うお小遣いに麻痺したのか、自分の首を絞めて切腹する準備に入った。
火傷をしないのはおぼっちゃまくらいのモンで、苦しむのは一般ピープルだぞ!

経済が上向いたとか聞かされても、全く実感が湧かないのは中華やアメリカの国民も。
ごく一部の金持ちには回復したかも知れないけど、それを支える多くの民はどうなんだろ。
平均という統計のマジックで都合良く解釈することは、ウソではないけどまやかしに近い。

「資本主義はなぜ自壊したのか「日本」再生への提言−中谷巌著、読破を前に。
「資本論」を読む−伊藤誠著が遅々と進まないけど、やっと1/3まで来たのを誉めちゃう。
マルクスさん以前の経済構造の単純さを考えると、複雑極まりない昨今の経済。

近代経済の父(だったかな?)ケインズさんも、世界を見渡して頭を捻るかも。
「雇用、利子及び貨幣の一般論(だったかな?)」でも解き明かせないかも。
医者にならなきゃ通ったはずのゼミ、アダムスミス「国富論」じゃ到底読み解けないし。

経済活動をいじくるは工学部出身なのは、PCで統計解析してプログラム作成が主だから。
超専門化されて素人に毛が生えたくらいじゃ、太刀打ちできないから火傷するのがオチ。
こうなると経済出身者は、工学部出身者がズルするのをチェックするだけか?

我が先輩で株式売買にどっぷり浸かり、聴診器と株式市況を聞くイアフォン二刀流。
両方本気じゃ出来なくてどっちか偏って、遅れる一方の医学知識なら「医者止めろッ!」。
反面教師として勉強させていただいたから、バクチ(投資関係)には手を出さない。

そう思っていたら、「2014年国家破綻」なんて本読んじゃうと安閑としていられない。
スイスの銀行へ貯金を移動して、有り金はたいて金を買い占めるしかないか!よっしゃ!
そう思ったら、それほど金持ってないし。庭で家庭菜園、自足自給の準備するくらいか?

今は真綿で首を絞めるような恐慌?、30年周期で襲う昔の恐慌とは違うのは分かる。
経済学部中退の団塊が今の資本主義を読み解くには、フツーの「恐慌論」じゃ無理らしい。
バクチは胴元が勝つように出来てるけど、それでも勝てるのは余裕のある大金持ちだけ。

持ち金を外貨に換えて、優良外国株を買い、海外の銀行に隠すなんて。出来ればね。
地道コツコツあとはお気楽で、最後にちょっと笑えりゃエエの団塊なんだけど。
話にナランわが国の政治家への危機感は、「ノストラダムス予言」なみなら良いのだが。

<団塊の正義>

「どオこーの誰かは知らないけれど、誰もがみイんな知っているウと。
んじゃ、フツーに知られてんじゃん。責任者出てこいッ、なんてな」
「おろ?センセ、ご機嫌の絶好調じゃないですか」

「んで、Kさん。月光仮面って知ってる?」
「ナンですか、いきなり。子供の頃、人気のアニメだったですよねー」
「おろ?月光仮面は実写版でしょ、オオセコウイチ。武田薬品提供」

「そう言えば、私の叔父が実写版を見たって。白黒」
「カラーじゃないから、血イが出ても墨汁ドロドロまみれみたいな。
んでも。カラーでプロレス見たジッちゃんが、血イの赤色を見て失神したとか」

「ま、まさか。センセも実写版見たなんて、言うんじゃないでしょうね」
「そ、そらやっぱ。月光仮面は、アニメのモンやろ。あれって、カラーよね?」
「私はモノクロTVって、見たことありませんから」

「ボクも、そうじゃった。気がついたらカラー」
「んじゃ、隠密剣士は?」
「あれもオオセコウイチだよね」

「じいちゃんが言ってました、提供は・・・」
「パンパンパンビのパンビタン。武田薬品ッ」
「やっぱ、MIHIセンセ。モノクロで、見たんじゃ」を後頭部に受けながら撤収。

「月光仮面のおじさんは、正義の味方だ良い人よ。悪い正義の味方って、どんなん?
イヤイヤ、悩むと疲れる。やっぱ、正義はエエ人のモンやねー」

団塊医師の棚には、<サンデルの政治哲学本、「正義とは何か」が出番を待っていた。

<団塊の月光仮面的チノ>

ハーバード白熱教室、政治哲学サンデル先生じゃないけれど。
正義には善が前提であるというけど、そんなことは子供の頃から歌で知っていた。
「月光仮面のおじさんは、正義の味方よ善い人よー」、即ち正義は善なのだから。

またまた日本国債の評価が下げられたけど、色んな大きな事件にかき消され。
ホッとしたのは政治家かも知れないが、どうひいき目に見てもの正義は見えない。
善がないから?イエイエ、ブレまくりで朝令暮改手のひら返し軽過ぎる国会答弁。

このまま円高が進めば、ひたすら国内で頑張ってきた物作り産業はどうなる?
安い労働賃金を求めて工場を流浪させ、産業の空洞化を作り出した新自由主義。
他所の国にオンブに抱っこの飽食の日本、自給自足しかないでしょ。

「お国のため」など、シーラカンス以前の言葉としか思えないほど風化し。
口は出しても何もしないヤツばかり、義務は無いけど権利だけは一人前以上に主張する。
これで戦争でもしようものなら、戦わずして兵糧攻めだけで白旗が揚がるのは必定。

ついこの間までは自分だけでも国産品をと、奮発して老舗のパンツを買い。
パソコン買い換えるなら、部品から何から何まで全て純国産のF社の製品と決めていた。
10cm縮んだウエストが流行のファスト・チノパンツに出会い、思わず買ってしまった。

衣料産業空洞化の張本人なのは忘れて居ないけど、今日だけは軟派で許してねと。
3本買っても老舗パンツ1本分もしないから、Uの袋をぶら下げると心がちょっと痛む。
憧れのヒーロー「月光仮面」に成りきれない団塊オヤジ、正義が無いけど良いかとエヘヘ。

明日から心を入れ替えて、正義の使者「月光仮面」になるのだぞ!と意を決する。
月光仮面予備軍が寝転ぶ横には、ベージュ・紺・グレー3本のチノ。
本物の月光仮面は画面じゃいつも白タイツだけど、オフはやっぱりチノかな?

団塊にとって月光仮面的チノパンツは、眩しい。

<団塊の神の見えざる手>

英国の産業革命の結果、資本家と労働者が現れて金持ちと貧乏人の差が大きくなった。
市場で利益を追求する人々のお互いの行動は、最も無駄のない資源配分する定理。
即ち、アダムスミスは「神の見えざる手」によって解消すると言った。

そうした貧富の差は、社会の調和により緩和されるはずだった。
結果的にはあまり上手くいかず、社会主義やマルクス主義という考え方が現れる。
だがロシアに見る資本主義への移行の加速、共産主義の中国でさえ資本主義化する昨今。

人間の欲のスケールが、計り知れないほど大きくなった資本主義。
誰も歯止めが利かずひたすら先を争い、トップとそれ以下では想像以上の差。
「平均への回帰」を知っていても知らんフリ、「自分だけは」が纏わり付く。

止まるところを知らぬ人の欲は、コンピューターで解析できるはずもなく。
工学部出身者が「統計」で、投資を始めバクチで勝ち逃げを決めても長続きしない。
ルーツがバクチの「統計」でさえ、人の欲望は移ろいやすく想定外であることは想定内?

我が国の国債暴落から国家破綻までのシナリオを、数年後に予想する経済評論家は多い。
喉元過ぎれば「あれってナニ?」のノストラダムスの終末論は、実害がないから可愛い。

マネーゲームにウツツをぬかし、本業を忘れたら論外だけど。
実害の無い範囲で経済に遊ぶのは、現実味があるだけに面白さはMAXだ。

アダムスミスの言う「見えざる手」は、何処からニュルッと出て来て何をするのか?
その手は桑名のヤキハマグリと冷静さを保つべきか?「見えざる手」は神のみぞ知る。
以前口走った、昨今の経済はアダムスミスでは解き明かせないかも?には大いなる反省。
経済知ったかぶりドクトルは、しっぽを巻いて退散するしかないワケで。
「経済学=哲学 手稿」マルクス著の横に、「諸国民の富」アダムスミス著を並べる午後。

<団塊の喜ばれる字>

「キャー、キャー」
「ナンじゃナンじゃ、キャーって」
「イエね、このセンセのサイン」

「ブラピにすればエかった?」
「ナニ、言ってんですか」
「ナニ、言われてんだっけ?」

「まるで今までとは・・・あまりにも変わり果てた字イ」
「落ち武者みたいな、字イ?」
「傷つき戦場を追われて・・・んじゃなくて。どの手で?どの脳みそで、書いた?」

「13本目の奥の手で、スペアの脳みそで」
「センセは、千手観音ですかッ!」
「8本目の足で、蹴り入れちゃってエエ?」

「あたしあんまり嬉しくて、涙が・・・」
「涙腺も、とぼけたんちゃう?」
「これを、みんなに見せましたわ。Dセンセにも」

「ワシがちょっと実力を発揮すれば、イエス・アイキャンなワケ。
脳あるタカは痔で悩むって、世間じゃ言うやろ」
「センセだけですッ。んでもー、名前4文字のうち3文字目がいささか・・・」

「あ、まだ練習してないの。イエス・アイキャンのペン習字で」
「あらまあ。嬉し恥ずかし、爺の手習いですわね」
「そんなに喜んで貰えると、半年後を想像したら恐いイー。地球滅亡、世紀末」

名前を書いて喜ばれたのは、実験用ラットに赤マジックで”プ”って書いた時以来。
ちょっと血だらけだったけど、シェービングクリームも奢って背中の毛を剃る優しさ溢れ。

プラセボ投薬ラットの目印が消えなくてエエって誉められた、嬉しい字の午後。

<団塊はパンツを買った>
牛の肉を1Kgいただいても、その1時間後ならざる蕎麦1枚程度の余裕があった青春時代。
パンツは自然落下しないように、思いっきり締めたベルトでボンレスハム状態だった。
ダイエットに成功し、禁酒と筋トレが加速したメタボボディは様変わり。

体重とウエストはピーク時の20%ダウンという有様は、着るものを1サイズダウン。
若かりしピーク時こそ着てみたい、地味じゃないゴルフ用じゃないファッション。
バブルはあらゆる年齢層にデブのバブルを作り出し、選択枝が圧倒的に増えた。

団塊の世代でさえ「こ、これほどは・・・」で、敢えてそれより地味なヤツを選ぶほど。
色や素材は良いけれど、形が見せる歴然とした嗜好の差。即ち、トラッドじゃない。
トラッドばかり作っていたら、新鮮味がないからアドリブは良いとしてもセンスが・・・。

団塊ジジイのファッションには、流行がないと思って居たけど。
やっぱ違いはあるモノで、バブル接待が華やかなりし頃はタックが入ってるヤツが多い。
接待費のスリム化と時を同じくして、タックの入ったパンツが減りスリム化がちょっぴり。

かく言う私の体つきもプチスリム化で、ピーク時に履いていたパンツは袴同然に。
色は気に入っていても形がねえ、歩くとバサバサ言いそうなくらい羽ばたいて。
ポッケに手を入れて広げれば、引退して痩せた相撲取りのチョウチンブルマー。

とうとう3本のパンツを処分して、以前から気になっていたお店でパンツ2本の午後。
裾はダブル(3.5cmのこだわり)でブルーと茶、機嫌良くいただいて帰る。
夕食は焼き鳥5:25店の前、ガラス越しに店内を彷徨く人影に入りそびれていると。

「あ、直ぐ終わりますから−」
「出直した方が。事件ですか、自殺と他殺の両面から?ガイシャの身元は?
あ、インタビュー!んでもこの格好じゃ、なんせジャージにフリースなんだけどなー」

「大丈夫、撮しませんから」
「モザイク入れて、声を変えて。キムタクの顔に入れ換えて貰ったらOKなんですけどオ。
あ、奥様はヘップバーンでオネガイします。あ、冗談やめろ」

撮影も終わり、一息ついてアナウンサー。
「常連さんですかア?」
「ハイ、30年前から」
「良く来られるんですかア?」
「ハイ、定休日にしょっちゅう」
「お近くですか?」
「ハイ、ジェットで39分かな?」
「んじゃ、ごゆっくり」
「ハイ。温泉にでも浸かって、5年ほどユックリして行きますわ」

こうして、楽しい会話をエンジョイするのが団塊世代のファッション。
色んな串を夫婦で突っつきながら、ノンアルコールビールと共に流し込む。
メタボ団塊ジイは、久しぶりにおニューの綿パン2本を買っちゃいました。

<国債暴落で団塊医はリストラ>

国債の利回り上昇は、信用されなくなった証拠なのは歴史が証明しなくても常識。
「大丈夫、日本国債の利回りが低いから安心してエエんよ」は、歴史を知らない人らしい。
これが続いていきなり利回りが上昇した途端に、国債は大暴落のあと紙くずになるとか。

国債を支えて来た郵貯が最もデンジャラスで、次いで銀行・生保とくるけど大差なし。
不安を煽る経済評論家、それで本を書いたり講演をして儲けるヤツがその上を行き。
近い将来に小銭を失う小市民はいったい誰を信じたらいいのか、ワケワカランッ!

ものの本によると、破綻した政府の切り経済詰め策で何処の病院も経営は逼迫し。
詰まるところ金のない患者さんから追い出され、入院がグッと減るからベッドも削減。
いくら紙幣があっても直ぐに紙くずになり、役に立たなくなる手はず完了。

金の切れ目は治療の切れ目、通院治療もままならず今まで安定していたのがウソのよう。
病気が悪化しても入院できるはずもなく、世界一の寿命は最下位に落ち込む。
何処の病院も風通しが良くなり、閑古鳥が啼きまくる。嗚呼、病室は荒野に。

スタッフをリストラし始めるのは当然の成り行きで、医者も安閑としていられない。
医師が全員クビになるワケじゃないから、「さてどの医者から撤収していただくか?」。
「手堅い発想・充分なコスト意識・持ち合わせる経営センス」が評価されるかも。

さらにさらに、聴診器1本と後は触診・視診・聴打診の五感だけで医療可能もお奨め。
またまたさらに、最小費用で最大効果が可能(似たようなことを言った総理が)な事。
野戦病院の医者じゃあるまいが、医療の原点に帰る様相を呈してきたけど誤診率5%。

いろんな業績を積み上げ続けているヤツが、「あ、もうちょっと居ってエエよ」か?
そうなると金の板を買って床下に貯めつつ、地道コツコツ自分を磨くしかないんじゃ?
お気に入り「金は盗られても、知識と経験は盗られることがない」は、ユダヤの末裔か?

家の周りにバリケードを張って暴徒を跳ね返し、庭を耕し種を撒き自給自足に供える?
裏で政府の煽る危機感で、増税への反論を押さえ込む理由にしてんじゃないやろね?
無策・いい加減なカンさんは止め自民党も壊してしまったらすっきりする?

アホな政治家をリストラし、グイグイ日本国民を引っ張って行ける人って居らんのか?
赤い国にも星一杯の旗の国にはっきり言える、タイガーマスクが出て来て欲しいもんだ。
壊れたところからしか新しいモノは生まれないと言うけれど、壊れて欲しくない日本。

老害を垂れ流す団塊医は、リストラか?

<団塊はラベルの屁理屈>

「あのさ、NST(栄養サポートチーム)フォローアップ採血があるやん」
「有りますわね、センセらはオーダー用紙にチェック入れるだけじゃから楽う。
あたしらは採血するわ、痛いって患者さんは機嫌悪いし。災難だわよね」

「しかも、医者がオーダーし忘れて。アフターフェスティバル」
「ちゃんと日本語で、あとの祭りって」
「んで、スコア判定が遅れて」

「そうやろ、さもありなんやろ。そこでワシの提案があるんじゃけど」
「どーせろくな提案じゃ」
「あ、そういうこと言うワケね。ちょっと最初は手間じゃけど、あとでエエこと一杯」

「分かった。ゼーンブ、センセがやってくれるとか」
「アホ言え、ワシはそれほどはヒマじゃない」
「んじゃセンセがやってくれるのは半分?あ、1/4?えー、1/7イ。ナンそれ?」

「病棟のパソコンは、最初から要らんソフトが入ってるやろ。あれを使い倒すワケ。
殆ど役に立たんモンがゴジャゴジャ、あんたらの化粧品みたいな」」
「ちょっちょっと、意味ワカランですけどオ」

「あんたでも分かるように言うと、五目飯みたいに色々取りそろえていても。
ゼンゼン役に立っていない、みたいな」
「確かにあんまり役に立ってないような、ゼンゼンのような、高いバッカのような」

「そうやろ、そうやろ。それそれ」
「話題を変えてと。採血スピッツラベルソフトなんて、入ってましたア」
「年賀状なんか書くヤツがあるやろ、あれってラベルも書けるんよ」

「んで、センセの1/7のお仕事って?」
「そのソフトを使って、ラベリングをする為のサンプル作成かな?。2名分作ったから。
あれを書き直して、練習すればエエ。ちなみに、キムタクとMIHIセンセで作ってある」

「んで、ラベルシートは?」
「病院で買って貰うんよ。ミスを減らし、医者からイヤミを言われない。
余った時間をケアに使い、患者さん喜んだりころこんだりでエブリバディ・ハッピー」

「採血忘れチェックは一覧表で、ヌケサク呼ばわりされずナースはオール・ハーッピッピ。
1シート44名分で1枚¥52。安くて、どうもスイマセン」
「んで、事務には?」
「安い・速い・楽の、トントン3拍子は王将だイで。事務もウンウン納得、即OK」
それからラベル印刷になるのに半年かかった。遅いッ、トロイッ。

ラベル作りにも屁理屈が大事な、午後。

<団塊の自己追い込み編:悪字走る>

何かを始めようと思いついたモノの、なかなかコシが上がらない時がしばしば。
そんな時は、「決めたア、ゼッタイするぞオ」と公言するに限ると誰かも言ってた。

「聞きましたよ、ペン習字始めるんですって。良く決意されましたね」
「それほど誉めて貰うモンじゃ・・・」
「イエイエ、センセは有名ですから。あ、私は解読できるんですよ。私は」

そんなに繰り返すと、嫌み。自分で書いた字が、読めないことだってあります。
確かに殿はお上手、お上手。上手すぎて、読めんこと有るけど>
「んじゃ、センセが読めるならエエですかね−」

「イヤ、そういう次元の問題じゃ・・・」
「センセ、センセ。とうとう気づかれたんですってね、決めたんですね」介入の婦長さん。
「ハア、イエス・ウイキャンで。この間資料請求しましたから、そのうち」
「念のため、あたしも資料請求しましょか30枚くらい。センセの為に」

大きなお世話、小さなお節介ですウ
「んでも、Qセンセの字も読みにくいですよ。MIHIセンセどころじゃない」
ワシもこの間、英語で書いてあると思って辞書引いた。あれ、漢字じゃった

「そんなこと・・・有りますけど」
「センセ、センセ。ペン字の資料請求したんですって?」介護士D。
「ナンでみんなそんなこと知ってんの?昨日誰かに言ったような」

たった1日で、悪字反省の情報が走ったわが社はいったい・・・の翌日。
「あらら、今日の処方箋はけっこう読めますね」
「そうやろ、そうやろ。イエス・ウイキャンに、受講申し込み送っただけでこの効果」

「ナンか怪しくない(語尾上げで)」
「取り消したろかしら。あららー、いきなり積み上げるカルテ10人分。
んもー、ワシって人気モン?どんどん増える処方箋、グングン苛つくワシ」

「あららー、いつものきちゃない字い。ナンでですかこの変わりようは」
「せっつかれると、字がきちゃなくなる会者定離」
「ワケ分からんけど、丁寧に書こうという気持ちの問題みたいな」

さて、イエス・ウイキャン効果は如何に?半年後に続く。

<団塊の表現力の差>

「んじゃ、申し送りしまーす。先ず、Pさんが食堂の椅子からトローンと落ちて」
「あのね、それってナン?トローンじゃなくて、ドドズルーじゃ」
「それを言うなら、バズウーズズッと違うん?」

「しかしあんたら、表現力が欠如しとるなー。ナニがトローン、ドドなんたら。
挙げ句に、バウズズーッ。トドがソリに乗って、田んぼを滑ってるんとちゃうで」
「イメージが湧かんですねー、ゼンゼン」

「表現力も、想像力も。どっちも、化け猫女なみに欠如してるワケだ」
「もうちょっと優しい言い方は出来んのですか、センセは」
「真綿で首を絞めるような表現なら・・・」

「結構ですッ。おろ?へが上手になりましたねー。カルテ指示」
「なんなら、水戸さんで一曲。ボヘボヘ行っちゃう?」
「字の”へ”ですッ」

「痔も有るんか。切れてる方か?」
「んじゃなくて。文字の”へ”だけ、ナンか異常に綺麗になったような」
「そらそ、昨日びっちり練習したバッカじゃ。ペン習字」

「あと、”を”と”た”もけっこうイケてんじゃけど。見たい?あ、イヤ!」
「んで。Pさんは結局、滑り落ちたと言うことで」
「ナンか、ツマラン申し送りじゃねー。貧しい表現力で、面白くないやろ」

「申し送りは、フツーでエエですッ」
「まあ、表現力の差は歴然。当然、厳然じゃね」
「センセは邪魔ッ、ゼンゼン申し送りが進まないでしょッ」

「本気で速めるなら、異常なしは一々言うな!異常だけ言えばエエんじゃッ!
観察結果には正しい医学用語を使いなさい」

ストレートな感情で団塊と表現力に差がある、朝。<>

<団塊の断捨離>

毎年残り少なくなった日を数えながら、今年の反省と来年の展望をするのが常。
年の瀬が迫ってくる寸前で、断捨離生活の始まりを感じたのは還暦を超えたから?
何時か使うかも知れない・何かの役に立つかも知れない・高い価値が付くかも知れない。
これを一言で言おうとした「勿体ない」は、近いようで遙かに遠い位置にあるようだ。

煩悩を全て捨て去りひたすら身綺麗に、この世から消える時は何も残ってないのが究極。
手始めに2000冊を超す蔵書は、読み終えてしまい込む為の特別製の本棚も限界に近づいた。
よくよく考えてみると一度読んで棚に立てたら、2度と開くことがない物ばかり。
業界からやや離れた何かの論文を書く時に、2度の日の目を見た本があったくらいで。

600枚に届こうかというジャズCDコレクション、お気に入りは数度廻されても。
「あ、こう言う音なワケね」で、本と同じ一度だけの出会いが90%だろうか。
何時か断捨離断を行う日が来るのが予想されるが、リタイアした時のためにとっておこう。
ジャズCDを回しながら、西田幾多郎全集を紐解きつつ全19巻最後のあとがきを読む想定で。

自身を縦笛小僧と勝手に呼んだ私としては、オカリナ・縦笛・ウクレレは捨てられない。
ましてや一念発起して作曲を目指して、考えあぐねて購入したトーンジェネレーター。
4,5回遊んだ作曲ソフトは、しっかりバージョンアップまで済ませたまま熟睡中。
このソフトでさえ、3度目のバージョンアップがないまま消え去ろうとしているようだ。
それでも再度再度の挑戦で、付け替えたり元へ戻したりはまだ3回だから愛嬌のウチ。
スピーカーから自作曲が流れる日は、さほど遠くないはずなのだが・・・。

;団塊の私に、まだ残っている断捨離は何だろう。

<平成の団塊はマッドタックス>

昔、マッドマックスという映画があったのを覚えて居られる方は団塊の世代前後。
戦争によって枯渇した石油、それを積んだトレーラーを奪われそうになりながら移動する。
当時珍しかった「改造ターボエンジン」の唸りに、血湧き肉躍ったものだ。

首都地震で政府の中枢は壊滅状態、評価Aに下がった瞬間に国債は一気に売られ評価0。
それと連動してかつてデフレだった物価が急騰しても、給料の上昇は追いつかず。
日々の食べ物に困るけど、貨幣価値は急降下しているからダイコン1本\10000。

翌日は更に上昇して、2週間後には1本のダイコンが\1000000でも買えない。
自給自足も出来ない国民が、食料を奪い合うドロドロのストーリー。
食糧輸送車は襲われ、商店はシャッターを下ろし流通は麻痺同然。

円は紙くずと化し、ドル紙幣か金でしか食料と交換して貰えない時代。
物価は上がり続け超インフレで、金利が上がっても追いつかない。
無策の国によって貯金は銀行で凍結され、引き出されない状況に追い込まれる。

次に政府が打った手は、引き出し限度額を押さえ込む事から始まり。
新札に切り替えて交換限度額を決めると、目一杯交換しても残りはゴミ扱い。
それでも物価高騰は収まらず、奥の手のデノミを出した途端に治安は一気に悪化。

アメリカ並みに、「自分は自分で守るから銃持ってもエエよ」法案は通過し。
国民は1人銃3丁、バズーカ1台、手榴弾10個まで保有できるようになったし。
全ての家の窓ガラスは防弾ガラス、壁はバズーカまで大丈夫!自家用戦車が普及した。

ちょっと前まで使っていた1兆円札が路上に落ちていても、誰も見向きもしない。
円安は大企業に有利に働いて3年後、財閥系だけが息を吹き返し輸出の増加で見事復活。
橋本さんの「やたらに国債を発行しちゃアカンよ」法は、ようやく凍結を解かれた。

その頃、ベランダにベンチを置いて読書しながらCDを廻す人が居た。
禁酒して20年、冷えたノンアルコールビールで喉を鳴らしつつオーシャンビュー。
アロハシャツにベージュの短パンは、かつて医者をしていたヤツだった。

「今日はステーキね。フィレ200gが3ベンベン(平成23年当時の日本円で\30)は安すぎイ。
部屋代が30ベンベンやもんなー。外貨に替えてた500万円で、50年は優雅に暮らせる?
んじゃ、マッドマックスのDVDでも見る?これも、カンさんが経済に疎かったおかげ」

「貴方、そんなに誉めちゃ行けませんわ。カンさんを」
「日本から孫達が遊びに来るって!4万馬力の車でもお土産に注文か?色違いで1台ずつ。
金の延べ棒を文鎮にせん?ゴロゴロしとるけど。あ、要らん。ウチも邪魔なんじゃけど。
しかし孫達は、ホント欲がないなー。日本に持って帰ったら、2本でお城が買える」

300インチの画面には、「日本沈没;平成のマッドタックス」が映し出されていた。

<団塊の「で」と「が」>


「あ、ヒマやろ。ハイハイ、お仕事お仕事」
「ボーッとしてるように見えても、こう言っちゃナンですが考えてるんです」
「下手な考え、サルにも劣る。ささ、気管カニューラ交換しましょ。そうしましょ」

「先に行ってて下さい、1分後に追いつきますから。あらま、もう行っちゃった。
んだから、先のないジジイってせっかちなのよねー」師長は既に病室入り口。
「おーい、師長さんは来んでエエよー」声が病室から出て廊下に響き渡る。

「んまっ。あ、Sちゃん捕まってんじゃん、んじゃ、Sちゃんでエエですね」
「イヤ、Sさんがエエ」
「”で”と”が”じゃ、えらい違い。MIHIセンセみたいなジジイも、若い方がエエんだ。
Sさんならあたしだって負けてませんヨ、体重なら。エエんですね、ホントに」

「エエと言うより、来るな!みたいな」
「エエですねと言うより、行きませんッ!みたいな」
 仕事をきっちり済ませ、徘徊して次のステーション。

「あ、昨日の会議はエかったです。すっきりしましたわ」
「出るモンが出たか、3年便秘」
「んじゃなくてエ。会議の最後に、WセンセがMIHIセンセに振ったでしょ?」

「あ、あれね。日と火の2日当直でボーッとして。考え事してたら、いきなりやモンなー。
眠気ぶっ飛んだで、殿ったら。困ったちゃんよのー」
「んで仰ったじゃないですかア、危機管理を。あれを、Wセンセは待ってらしたんでしょ」

「誰かが言うやろと思ったら、シーンやで。怒るデ、ワシ」
「危機管理でぶっ飛ばしたのが、センセでエかった」
「危機管理のことを喋らせたら右に出るモンは3人、左に出るモンは数えきれず。
上に出るモンは・・・879人」

「どう言う計算してんですか。んでも、シメがMIHIセンセで良かった」
「それ言うなら、センセがエかったやろ。あの時、誰かがゴジャゴジャ要らん事言うたら。
ワシ、テーブルひっくり返して暴れちゃったかんね」

「ハイハイ、MIHIセンセでエかったでも、MIHIセンセがエかったでも。
どっちでも、お好きになさいませ。大差有りませんから」

「で」と「が」じゃ、ずいぶん違うと思う午後。

<団塊の確認パラドックス>

「確認するんですけどオ」
「こう見えても、ワシはキムタクやないで。確認する?あ、しない。中間試験のヤマね」
「Pさんが、仰るんですよ。自分とこの村は認知症が多いけど、あれはうつるんかって」

「認知症は、伝染せんやろ。ごく一部に、遺伝と関係するモンがあるとか」
「ですよねー」
「あ、オバカは伝染するで」

「あれは伝染と言うより、遺伝か環境(語尾上げで)」
「確かにあんたんとこみたいに、親子で通知表がアヒルの行列(語尾上げで)」
「時々、矢ガモ風に、棒が隣に1本突き刺さって。あたしは、3もあった」

「体育やろ、脳みそ使わんでエエやつ」
「家庭科もですッ、雑巾縫い。でもあれはバッちゃんの作」
「んで、何で認知症が伝染するなんて言い出したワケ?」

「自分は大丈夫じゃけど、両隣のじいさんが気がついたら自分の家で飯食うて風呂まで。
そろそろ家に帰らなきゃイカンって言うたら、ここがあんたの家じゃって。
んで、悩んであたしに相談したらしいですウ」

「裏の家に住んでるじいさんが、この村のじいさんは認知症が多いから気イつけよって。
真夜中に枕元にボーッと立って、何度も何度も言うんやろ」
「そう言えばそんなことも」

「村のじいさんはすべて認知症じゃって、はす向かいに住むその村のじいさんも言うと。
さて、ホントの認知症のじいさんは居る?居ない?誰?」
「ワケ分かりませんけどオ」

「これって、古代ギリシャの”嘘つきのパラドックス”をパクッたんやけど」
「んじゃ、MIHIセンセの言うことは全部ウソみたいな」
「 ”すべてのクレタ人は嘘つきだ”とクレタ人が言うパラドックスを知ってる?」

認知症の確認をされてパラドックスを確認する、団塊。

<孫と筆ツルン団塊>

「まいどッ!」MRのHさん。
「儲かりまっか?」
「ボチボチでんな」

「しかし、あんた宮島出身じゃったよな?」
「そらもう、イケイケカープですよってに。あららー、センセのデスクトップ。
もしかしてお孫さん?可愛いじゃないですか、愛くるしいじゃないですか」

「上の娘のな」
「もしかして、25年くらい前にお会いした。お人形みたいな女の子の?」
「ワシに似て、赤い靴履いてた・・・誰が異人さんに連れて行かれるんじゃッ」

「センセ、センセ。そう言うの、疲れません?」
そのお子さんなら、やっぱこう来るでしょうねー。目の中に入れても痛くない?」
「グイグイ入れちゃっても、ゼンゼン気持ちエエ」

「ちょっとアブナイ言い方ですけど、しかし正味可愛いですね−」
「あのね、もう3回言ってエエよ。んで、オタクの売りはPね。3万人処方するネ」
「ヤですよ、ジョーダンばっか。Pは競争相手のッ!」

「ブイブイ宣伝してね、孫を誉められると筆がツルンツルン滑って。処方しまくり」
「なんか、信用ナランなー」
「他所の病院に行って言うたらアカンよ。MIHIセンセントこのお孫さんは、可愛いとか。
何処へ入れても痛くないとか言ってくれちゃうと、嫉妬する爺ドクター居るやろ」

「そら1人や2人は」
「あのね、そこで100人や200人って言わないと筆が滑らんワケ。ツルンツルン」
「んじゃ、思い切って1000人や2000人に奮発しておきましょ」

「思い切ってくれたねー、エエよ。ツルンツルンだよ」
「んじゃ、失礼しまーす。来月来るのが、すっごい楽しみになってきましたわ」
「あのさ。ワシ、筆じゃ処方箋を書かんのやけど。ツルンツルンとPは書けん」

「Pは競争相手のッ!端からセンセの言うこと信じてませんッ!」
「んでも、孫の肌はツルンツルンや。一緒にお風呂に入ると、分かっちゃうツルツルン」
「他所の病院で宣伝しますッ。疲労困憊、ビョーキになりそう」

「お大事に」を言い忘れた筆ツルン団塊の、午後。

<団塊に飛び交う讃岐弁と山口弁>

「よっ、来たで」訪問診療先。
「あら、よう来たナ。まあ、お入り」
「んで、元気じゃったんね?」

「まあまあッちゅーとこやな」
「そらエエ、メシは美味いか?」
「嫁はんが料理が上手もうて、やけ食いじゃ」

「ワケワカランけど、まあエエ」
「今年中に、こんがり焼いておくれな」
「イカン、未だ早い。当分じゃ」

「あのー、センセ。診察を」
「そうやね、ぼちぼち」
「あたしんちに来る人で、讃岐弁が使えるんはMIHIセンセだけじゃから。つい、ナ」

会話15分に診察5分で撤収すると、次の訪問診療先は忙しい息子と二人暮らし。
「こんちわ、来たよ」
「あら、ようおいでた。外は寒かろ?」

「ああ、すんごい寒いで。んで、元気か?」
「そらセンセ、ボロをえっと(沢山)着とるから風邪ひかん」
「そらエエ。布団でも何でも、えっと着ときゃ温いで」

「身動きとれんから、1日寝ちょる」
「んで、喘息は?あ、最近発作が出ん。そらエエこっちゃ」
「あと1年は無理かの?センセが医者してる間に、カタつけてもらわんとイケン」

「ワシ、カタのつけかたを忘れた。あのさ、玄関横のハッサク。美味そうやな」
「あ、あれは。センセ用に、取らんと残してある。エエよ」
「んじゃ、ワシが毒味したろ」

会話15分に診察5分で玄関脇に立つと、葉っぱの間に手を突っ込む。
「おまわりさーん。医者のミカン泥棒ですよー。いまなら現行犯ですよー」ナースB。
「コラコラ、これは毒味じゃッ。盗人とちゃうで」

「しかしセンセは、何時そんなヘンな言葉を身につけたんですか?」
「流浪の少年時代にな、コーガンの美少年時代とも言い換えられるけど」
「ギガ有り得ねーって、ご存じです?」

「最近の若者言葉は、ワケワカランね」
「センセの方言もね」
「マックス、大丈夫イ」

乱れた日本語をどうにかせねば!と思った、午後。

<項垂れる団塊は大音量の第九>

合計3つの病棟モニターで、5本の心電図が走ってはいるものの。
皆さん脈拍も呼吸数も落ち着いて、なだらかな光の軌跡が落ち着きを見せている。
2本は心房細動で不規則だが、それなりの心室収縮で寝ながら小走りはないようだ。

「おろ、こっちは期外収縮2発。まあ良い方じゃね」などとぼんやり眺めていると。
「あ、丁度エかった。センセが来ないかなーと思ってたんですわ。超ラッキーい」
静寂のステーションが、いきなり盆踊りなみに騒がしくなる。

「アンラッキーと言うことで、あんた誰?」
「ハイハイ、お惚けはそのくらいで。ま、まさかホントにあたしのこと」
「んじゃそう言うことで、お女中さらばじゃ。拙者、先を急ぐ旅故。これにてゴメンッ」

「コラコラ、エエんですか。殿の患者のことなんですけど」
「若年寄としては放っておけないその1文字、殿」
「でしょでしょ。んで、点滴」

「してさし上げればエエじゃん。ブチューッと、行っちゃってね」
「それがア、無いんですよ2本」
「どっかの病棟で借りてくるとか?」

「それよか、MIHIセンセが薬局から取ってくる。そうしましょ、そうしましょ」
「ワシは、病棟のパシリか?」
「んでも、あたし達が勝手に入って取って来ちゃ行けないんでしょ。んだから」

「ワシ付き添うから、取りに行きなさい」
「んなら、独りで取ってくればエエのに」
「ワシって、休日当直で点滴取りに行きたくない人なんよ」

「どんな人か存じませんけど、殿の患者さんですよ。殿の」
「筆頭家老としては、行かねばなるまいか」
「さっきより格が上がったのは何故?」

「しかし、だるいなー」
「どーせ、ヒマなんでしょ?」
「論文の書き出しと研究のプロットに、行き詰まってんの」

「でしょでしょ、論文とか研究とか言ってる時はすっごいヒマと判定!
気分転換に点滴2本持ってくるとか。エエんじゃないですか、すっごいぞオー。
しかも殿の為となれば、この上なき幸せと言うことで。2本、オネガイします」
「ふぁーい」

人気のない薬局の鍵を開けると、冷え冷えの空気が背筋を凍らせ。プルプルッ。
結局、ナン素敵なアイディアを捻り出せなかったこの徘徊。またもや、プルプルッ。

項垂れて団塊が医局で廻すCDは、ベートーベン「第九」大音量。

<20年を越える同郷団塊のつきあい方>

「あんた、エエ加減にせんと。食やあエエってモンやないで」
「分かっとるわいね、んでも嫁とケンカすりゃなー。腹が立てば、腹も減るから食う」
「また、ケンカしたんかいな。エエ歳こいて、我慢って言葉忘れたか?」

「アホ言いなさんな、老い先短いから言わなアカンことはきっちり言うて死なんと」
「それがアカンのや、多少遠慮するのが奥ゆかしいワケよ」
「あたしゃ、遠慮とか我慢とかが嫌いじゃッ」

「あと何年生きられるかワカランけど、最後の最後に辛い思いをせんようにな」
「そやけど、センセ。息子も息子じゃ。嫁のカタ持って」
「そら、Wさん。寿命から言っても、息子さんが嫁さんに世話になる時間が長いやろ」

「育てた恩を忘れたか?」
「たっぷり恩返ししてもろうて、とっくにお釣りが来とるやろ?」
「アホ言いなさんな、まだ半分も返してもろうてないで。
とことんイヤになったから、やけ食いしてやるんじゃ」

「ちょ、ちょっと。とばっちりがこっちに来るやんか、止めて」
「ちいとはセンセを困らせんと、気が晴れん」
「ワシは憂さ晴らしの相手か?止め、止め」

「たまにはエエやろ?」
「アカンで、なんぼ20年の付き合いじゃ言うても」
「腹立つから、思いっきりコシのあるうどんを食うちゃろ」

「この辺で、気に入ったコシのうどんが食える?ムリムリ。箸で摘まむと、だらーん」
「んじゃから、実家に頼んで送ってもらうんじゃ」
「もしかして、ワシが通った高校の隣にある製麺所?」

「そや、そや。あそこの麺は最高じゃ」
「ワシが高校の頃は、素うどんネギ入れ放題1杯と牛乳1本が20円じゃったで」
「食べたいな−、あそこで」

「んならリハビリをちゃんとやって、足腰鍛えんと」
「しゃーないなー、ちいと頑張るかのー」

約20年お付き合いのWさんは同郷だから、お互い言いたいことを讃岐弁でお付き合い。

<団塊の駆逐>

今はないだろうが、大きな声が真っ当な発想を駆逐した古き良き医局症例検討会。
やる気のあるヤツが、いい加減な強気のヤツに駆逐され消えていったり。
大学を飛び出してみると、そう言うことって医者の世界だけじゃなかった。

経済の世界じゃ有名な「悪貨が良貨を駆逐する」を、人間関係の中に見て数十年。
インフルエンザウイルスの世界でさえ、新型インフルがソ連Aを駆逐した?と言うから。
生きている限り仕方がないこと、世の習いなのかもしれない。

ずる休みではなく熱で学校を休まされた夕暮れ、給食のコッペパンを届けてくれた友。
「明日、待ってるね」の声を、ドキドキしながら布団の中で聞いていた小学時代。
1日休むと同級生に1年出遅れるような気分になって、ミョーな胸騒ぎ。

フツーの日に仕事をしない時間が流れると、罪悪感を感じながら過ごした今まで。
平日と週末の週2回当直でいただいた代休は、還暦を過ぎて有り難いと思う。
熱なんか無視して登校した、ミョーに頑張る学校大好き少年時代を駆逐したのか?

<団塊の緩やかな時の流れ>

早朝迷惑回診のおかげで、午前中からまったり時間が始まる快感。
2つの施設のラウンドには、一度外へ出なければならないのが辛いところ。
今年一番の冷え込みと思ったら案の定、白いものがちらつきだした。

先ずはショートステイから、ぐるり廻って回診録を記入すれば邪魔者は退散。
10m程離れたところに、軽い認知症の方の為のグループホームが待っていて。
自動ドアが開くと次は手動になっていて、軽いバリアになっている。

スリッパに履き替えやや重めのドアを引くと、温かい風が全身に纏わり付く。
「おはよー」を繰り返しながら、奥のテーブルにたどり着くとそこは静寂。
食後と快適すぎる温度で眠りを誘い、音でTVだけが覚醒しているのを主張している。

ソファーに座っていたクライアントが、ゆっくり立ち上がり。
スタッフが居る事務室で何やらひそひそ話、「分かった、用意しよ」。
「Kさんが、センセにコーヒーって」、目の前になみなみと注がれたカップ。

「んじゃ、Kさん。いただきます」で啜れば、ちょい苦手なほど甘い。
「砂糖入れすぎだよー」Kさんを見れば、目は閉じ気味でウトウトが始まっている。
Kさんの隣に座って、見るでもなく視線だけTVへ投げていると時間が経つのが遅い。

猫舌の私は甘さも手伝って、いつになくコーヒーが進まない。
TVのボリュームを少し落とすと、Kさんの寝息が聞こえてきそう。
ようやく飲み干して台所へカップを返し、「ごちそうさま、じゃまた」。

Kさんの安眠を妨げ無いように、トーンを落として壁掛け時計を見上げる。
まだここへ来て17分しか経過していない、かなりの時の流れの遅さに気づく。
外に通ずる自動ドアが開くとまだ白い物が風に揺れて、今朝は良い日だ。

<団塊の始動>

屠蘇気分と言うほどアルコールを口にしてないけど、1月半ばにエンジンスタート。
文献整理をしつつ何処かの政治家みたいに、使えそうなヤツを選んで仕分け開始。
研究計画立案と同時に、プロットも脳みその中であっちへ行ったりこっちへ行ったり。
正月で鈍った脳みそは油ぎれなのか、かなりノリが悪くて30分持続しない緊張感。

「センセ、オネガイが・・・」
「お姫様だっこじゃなければ、取りあえずお話を聞きましょ」
「んで、センセ担当じゃないけどQさん。嘔吐と下痢アンド発熱」

「それって、まるでノロみたいな」
診察して充分に手洗いをしたあと、点滴指示書きまくる。
「センセ、今日はいつもの30倍尻が軽いですね−」

「尻も軽るきゃ、屁も軽いとか」
「要らんこと言うのもいつもの5倍。さては、書き物が進まないんでしょ」
「あんたも、ワシのストーカーか?」

「”も”って言うことは、座敷童以外にも居るとか?うっそー、趣味悪ウ」
「それにワシっていろんな経験してるから、奥が深いんよ」
「経験って、臨死経験とか?もしかして、遠くの山の上から電波が飛んでくるヤツ?」

「あ、それって電波少年だっけ?」
「センセなら、さしずめ電波ジジイ(語尾上げで)」
「あのな。経験するというのは、事実そのままに知るってことやで」

「何処にセンセの事実が?誰ですか、そんなこと言うのは」
「キタロウセンセじゃ」
「オヤジが目玉の?」

「んじゃねーべ。西田幾多郎センセやで、”善の研究”第1章の出だし」
「第1章の出だしで挫折したんでしょ、次の文章は?」
「んーと。全く自己の細工を捨てて・・・んーと。君達には難解すぎて無理無駄」

第1章の話題が出ただけで、脳みそがとろけてきた午後。

<団塊周辺談話>

「センセ。仕事しなくなって、便秘になるし。寝ると、胸ヤケ」定年後3ヶ月のRさん。
「胃腸の緊張感がないんじゃろねー。どうせ甘いモンとか、何だかんだグータラ食いで」
「ヒマしてると、せめて口だけでも動かさんと」

「そういう時は、何はなくとも酢昆布やろ?」
「確かに髪の関係で、そういう選択もエエけど。やっぱ、こってり甘いモンが」
「脳みそ育てんと、皮下脂肪と肝臓の脂ばっか育ててどうするんね」

「んでも、センセの発明した腰痛体操だけは続けてるで」
「あ、それ。ワシもやってる、結構エエでしょ?」
「やっぱこの歳になると、患ったところが同じ医者を探すんがコツじゃと思うたね」

「んでも、なかなか居ないでしょ。あなたと同じ病気を患った医者を、探すんは」
「その点、根性とかがねじ曲がった医者なら直ぐ見つかるけど」突っ込むナースT。
「しかし、この腹。イカンよなー、反省がたっぷり詰まっとるで」メタボ腹突っつく。

「そうなんですよ、最初に会った頃は体型的に親近感が湧いてたのに。
ナンか最近よそよそしくないです、センセの体型」
「そら、ダイエット・腹筋やら筋トレに加えて、禁酒」

「最後のヤツが・・・。しかし、最近飲めんようになったわ。イカンなー」
「チャンスや、ここで思い切って禁酒ッ!」
「パチンコも軍資金の関係で止めたし、タバコは異常値上がりで止めたし」

「これで禁酒すれば、長生き間違いない」
「そうなると、ナンの為に長生きするか?ですわな。生きる意欲みたいな」
「そら世界平和しかないでしょ、全学連・安保反対・東大占拠の我々ですモン」

「あれも、ハシカみたいなモンだったんですかねー。みんな長髪で、ジーパンで。
期末試験の前になると、スト突入したりして。途端に学生の殆どが、先ず宴会。
その次の日には、帰省したり」

「あ、ワシはちゃうよ。脂性ナンで、髪は短め。LLジーパン売ってなかったから。
ギリギリサイズの綿パンで、トラッドとかアイビー系(語尾上げで)。帰省は同じ」
「ツイストなんか踊っちゃって」

「ワシ汗かきじゃから、踊らないの。大して運動神経無いし、踊りならボックスでしょ」
「坂本九がやってましたわなー。明日があるさアーなんて唄いながら、ボックス」
「午前の外来、もう締めますよー」

若い頃の話になると何時までも終わらない、団塊周辺談話。

<団塊の早朝迷惑回診納め>
当院は70歳を境に当直が免除されるので、もうこんな事は無いのですが。
「キャー」
「キャ、キャー。んで、なんでキャーってか」
「止めて下さいよ。年末でしょ、休暇でしょ、朝早い回診は迷惑千万でしょッ!」

「モーニン。こういう感じでよろしかったでしょうか、恨めしイ・・・」
「白衣だから、白い服は我慢しますけど。手がねエ」
「ちゃんと2本有るやないか。これで973本に見えたら、あんた、目エもオカシイで」

「目もオカシイって、ナンで”も”が付くんですか。おかしくない(語尾上げで)」
「ゼンゼン、笑えない(語尾下げで)」
「両手を前に、だらーっと出してんのは如何なモノかと」

「首にぶら下げた聴診器が重くて、首も手もだらーっと」
「く、首って。出来れば見たくない顔と、見ると暑苦しいメタボボディの間の肉塊?」
「そう来るか。周囲42cmのほっそりタイプ」

「あー、ヤダ。静かに仕事納めしたかったのに」
「3時間ほど息を止めれば、静かになれる」
「静かすぎますッ」

「残念やなー」
「あたしがこの世から居なくなったら、そんなに残念?」
「そう来るか。試しに35分ほど息を止めてもらってる間に、よーく考えるね」

「考えなくてよろしいッ!」
「ホント、残念やなー。ダンナも子供も喜ぶと思うんじゃけど、残念やなー」
「ウッセ」

年末の回診は残念で終わった、早朝。残念ッ!

<団塊の第九>

「キャー、しまった。音量調整が難しいわ、これって」
「流石サプライズのベンちゃんやねー、相変わらず強弱ハゲシイわ」
「えらく気安く呼んで、親戚ですか?」

「イッヒ・ニヒト・リーベ・ディッヒ・・・んーもー、ドイツ語は忘れたわ」
「あ、もしかしてドイツのベンちゃんと言えば。ベンジャミンなんたら」
「アホ言いなさい、電線音頭のベンジャミンとちゃうッ。ベートーベンやで。ホンマ」

「この曲って、年末にTVから良く流れるヤツですよね」
「年末と言えばこれやね、ダイク」
「トンカチとかのこぎりとか、匠の技の」

「んじゃねーべ、ダイク」
「暴走族が乗る?」
「それはバイク、あんたとはやってられんわ・・・とまあ、ここまでがツカミじゃね」

「センセ、疲れますから本題をオネガイします。これ以上付き合うと、あたし熱出すわ」
「日本で最初に第九を演奏したのは、誰か?何処でか?知らんやろなー」
「やっぱ、文明開化と共に日本に来た外人でしょ?」

「外人までは合ってるけど、1917年頃なんよねー」
「んで、やっぱ何たら交響楽団が何たらホールで?」
「捕虜収容所があった、徳島の板東」

「センセ、えらく詳しいけど。センセも捕虜に?」
「ハイとっ捕まって・・・んじゃなくてエ、映画で観たの。バルトの楽園」
「暴れん坊将軍が主役で、メンクラモデルのアベちゃんが出てる」
「ウッセ」

「第九」CDをハゲシク廻す医局。

(注)映画「バルト(ドイツ語でヒゲ)の楽園(敢えて、がくえんと読む)」とは。
1914年第一次世界大戦で敗れたドイツ兵が捕虜として日本に送還され、
各地にある俘虜収容所に振り分けられた。1917年に全国にあった収容所が統合され、
捕虜達は徳島県鳴門市板東俘虜収容所に移送され第一次世界犬戦が集結。
自国に戻る事を許されたドイツ人は松江所長や地元民に感謝し、
日本で初めて『交響曲第九番 歓喜の歌』の演奏が板東で流れた。

<団塊の業務安全川柳>

「センセ、なんか良いアイディア有りません?」
「そら無理やろ」
「まだ、なーんも言ってません」

「あんたのアイディア募集なんて、ろくなモンじゃネーベ。
どうやったら、5段腹が3段に誤魔化せるか?みたいな」
「ウウ言っときますけど、4段ですッ」

「どーせ、3段目と4,5段目をホッチキスでガジッて」
「痛いでしょッ」
「脂身に神経あったっけ?1度でエエから、やってみる気イない?あ、無い!」

「無い無い。んじゃなくてエ。業務安全委員会の来月の標語、何かエエのはないですか?」
「先月は、曲がり廊下を真っ直ぐ歩くな!で。その前の月は溝の横を歩く時は・・・」
「目を開けてスキップで!・・・んなアホな標語無いでしょッ」

「どうもツマラン標語が多すぎる。ちょっと捻りというか、ウイットが足らんなー」
「んじゃ、つねったり捻ったヤツを1つ」
「標語は陳腐じゃから、川柳とか?」

「何でもエエですけど、アカンですよこの間のは」
「夜勤明け 映った自分に コシ抜かす。じゃったっけ」
「イエイエ。スッピンで 帰宅のあたしに 犬吠える」

「それって、犬チビるじゃ・・・」
「どっちでもエエですけど、そう言うんじゃないヤツをオネガイします」
「贅沢なやっちゃ。あ、1句出来ましたけど。聞きたい?」

「イエ、もっとフツーのヤツ」
「何で分かったんやろ?腹抱えて笑えるのに」
「センセの思考回路は、単純明快。アホくさ、じゃから。ゼンブお見通しイ」

で、応募予定の句。
「緩めるな 緊張感と パンツゴム」・・・お粗末様。

<団塊の悪筆談義>

「私は読めるんですよ、私は」
ウウ・・殿、何度も言うとオ・・・
「診療報酬チェックのHセンセが、MIHIセンセ名指し。書いてるモンが読みにくいって」

ウウ・・・Hセンセって、ネアンデルタール人?象形文字は苦手で・・・
「内容は良いけど、字が・・・なんだそうで」
字をけなした分、内容でフォローして貰っても。たった3行しか、書いてないのに

「しかもこの患者さんはまだ働ける歳なんで、主治医から仕事をするようにって。
そう諭して欲しいらしい。それは医者の仕事か?なんて思ったですよ」
ウウ・・・思っても、言うてない?ウウ・・・あたしゃハローワークでも無いし

「もう少し字を大きく書けば」
大きく書いたら、アラが目立っちゃうでしょ。ウウ・・・
「大学院のトラウマで、大きい字が書けないんですよ」

「そうですかア、困ったですねー」
「こう見えても高校時代、書道は通信簿で5なんですけどねー。ふう。
あ、まさかその5は1000点満点と思ってないでしょうね?」

「ププッ。1000点満点の通信簿はないでしょ、いくら何でも。でも、四国はあるとか?」
ウウウ、やっぱ信用してないんだBR>「筆で隷書文字を書かせれば、ゲージツ的なんですけどオ」

「いくら何でも、筆はイカンでしょ。隷書文字も」
「3行書くのに、半紙が120枚は」
「見る方も、朱筆持ってたりして。例えばワープロで書くとか、出来ませんよねー」

「たった3行の為に、パソコン立ち上げて。プリンターで印字、適当に切り取って。
糊で貼り付けて。そこまでしますウ、フツーせんでしょ」
「次のチェックは10年後らしいから。私、その時は定年。テキトーでエエです」

印字文字サイズを3ポイントサイズでゴジャゴジャ書いたろかッ!の、午後。

<団塊のナースにとって義理の定義>

「センセ、今いいですか?」
「ダメッ、忙しいんじゃ。ワシの後に立たないでね、背後霊みたいに」
「あらら、10年に1回の忙しさですか。何事?ハルマゲドン?」

「誰がマルハゲドンじゃッ!」
「なんだ、ヒマなんや」
「アホ言うでない、病院のホームページを更新してんの」

「確かに、ああ言うのセンセしか居ないから。ヒマで、知識があって、物好きな」
「あのね、お義理でやってんとは違うんよ。あの婦長さんの写真、オカシイやろ。
写真撮影用化粧というか、化け顔で。今とエライ違うやんか、詐欺やで。なっ」

「あたしに振らないで下さいよ。どうリアクションすればカドが立たんか、ワカラン」
「んで、この間レクで撮ったヤツと差し替えてんの。これが笑える、実際」
「婦長さんを笑いモンにして、エエんですかア」

「笑いものにしてるんとはちゃうで。見たら笑えるだけ」
「大して変わらんと思うんですけどオ」
「んで、3年ぶりの病棟モットーも変えて」

「あ、変わりましたか」
「3年もモットーが変わらんって、可笑しくない(語尾上げで)。コツコツ変えなきゃ」
「そう言うところは、マメなんですねー」

「マメなキムタク似とも言う」
「ゼッタイ言いませんッ!」
「義理でもエエから、ワシがなぜキムタク似と呼ばれてきたかを聞いてみん?」

「センセに、1mgも義理はありませんッ。聞いたら、耳が腐りますッ」
「残念なお知らせ。あんた、全身が腐っとるやん、既にグジュグジュやん」
「センセの話を聞いてるだけで、義理にもカビが生えそう」

「万が一、あんたに義理があっても。ワシに対しては、凄く軽くね(語尾上げで)」
「ゼロですッ」
「ワシの場合、義理の親でも息子でもそこまで軽くはないで」

「幸いにして、あたしはセンセの娘でも孫でもないから」
「義理にでもエエから、娘とか言わんでね。ましてや孫なんて、ジョーダンキツイで」
「センセ。義理って、どう言うことっすかねー。ところであたし、何しに来たんだっけ」

ルースベネディクト著「菊と刀」講談社学術文庫166頁。「義理とは」を披露。
「正しき道筋。人のふみ行うべき道。世間への申し訳に、不本意ながらすること」

<団塊の天才モンク>

モダンでもなくクラシックでもない、独自のモンク流を磨いたのがセロニアスらしい。
「俺は天才だ」と言ったのを聞くと、ちょっと嬉しくなる。
我が家の10枚に満たない彼のCDジャケットは、「俺のは、誰も真似が出来ないんだ」風。

マイルスのように当時の今風を取り入れるのは、納得が行かなかった。
あまりにも頑固で頑なだったのか、ピアノ以外は器用じゃなかったのか?

彼の「モンク流」が受け入れられるまでには、かなりの時間を要した。
一旦受け入れられると賞賛の嵐だったらしいが、元来少しずつ病んでいた精神。
あまりの急速なときの流れの中で、心が傷み始めると加速度が付いてしまった。

晩年の彼は、ピアノから遠ざかっていた。
燃え尽きたわけでもないだろうが、自分の時代を凄まじい勢いで走り消耗したのか?
セッションに参加した数々の有名なジャズメン達は、天才に戸惑いつつ作品を残した。

「セロニアス・モンク:沈黙のピアニズム」をやっと読み終えてみると。
普通の伝記とは趣を異にした本だけに、モンクに対する興味の湧き方が尋常ではなく。
50枚近いCDをかき集めたビルエバンスを卒業して、次はモンクか?と思わせるに充分。

500枚を超えたジャズCDで、収集もぼつぼつ沈静化か?のはずだったのに。
虹色のミラーボールのように輝く作品を、本気で集めようと思った午後。
このまま行けば、1年以内に600枚を越えるかも?

<団塊が推敲するの「もし」>

投稿論文も6回推敲する頃、秋風が吹き始めて窓からそよ吹き込む空気はひんやり。
書くことは格闘技とは言っても、長期戦に向いていない性格では致し方ない。
かと言って、集中力は幼稚園前から1mgも持ち合わせていないのが災いして。

椅子が暖まるのが先かコーヒーが冷め始めるのが先か、ワケワカラン状態。
足腰が弱っても70歳を過ぎても落ち着きのなさは少しも衰えず。
孫にだけは落ち着きのあるところを見せておかねばと、大いなる反省。

7回目の推敲を断念して(飽きて?)投稿するかどうか、ラウンドしてから決めよう。
階段を降りて最初に出会った人が男性なら、直ぐ投稿するのが1案。
女性に出会えば5分待って背伸びをし、さらに7分待って投稿するのが2案。
出会った人がニューハーフなら、スキップしつつ直ちに投稿するのが3案。

最後の階段を降りかけて「それだけの選択枝で良いのか?」で、ふと足を止める。
もしダンゴ虫しかいなかったら、宇宙人に出会ったら、座敷童が遊んでいたら。
頭を横切る3つの「もし」に、急遽医局に引き返し選択枝を3つ分増やす。
ダンゴ虫なら3分待ち、宇宙人なら12分待ち、座敷童なら目をつぶって投稿。

端から7回推敲する気がなく、投稿の後は肉体労働
構想7ヶ月・実行12ヶ月のデータを、3ヶ月で整理して文字にすれば。
6回のいじくり廻しで手から離れて、何とか投稿にこぎ着けたら気が抜けた。

お銚子乗りが災いして、「これも論文にしましょか?」がイカンかった。
「そうですね。なら早い方が」で飛び入りが尻に火を付けて。
オマケに自分で扇風機のスイッチを入れたものだから、焦る焦る2編目も投稿した。

次のネタ用に文献検索を開始した時には、想定される結果は2つか3つ用意して。
その結果に対して、ゴジャゴジャ言い訳やら自画自賛やらの根拠をぶっ放す準備。
だが頭を抱えて必死で考えても、おもろいストーリーは浮かんでこない。

こんな時は昔なら芝刈りだったが、腰イテテで芝生をはぎ取ってしまったから使えない。
脳みそを使わないで有酸素運動をするには、模様替えが一番。
要らんモンを思い切って捨てられるし、だいいち風通しが良くなって気持ちが違う。

6ヶ月開かなかったら、先ずこの6ヶ月で日の目を見ることはない定説。
ゴミ箱は瞬く間に一杯になり、大きなゴミ箱へ2回は往復する。
30分もあれば作業は終わり、机周りと脳みそに出来たスキマに新鮮な風が吹き。
風と共に美味しいアイディアが見え隠れし出すと、トイレタイム。

脳みそに残った使い古しのカスと一緒に、温尿便器へ放出。
すっきりしたところで棚を見渡しているうちに、文献の位置を決めてKJ法用の紙を重ね。
ナニをするわけでもなく、マインドマップソフトを立ち上げてみる。

僅かに溜まった筋肉内の乳酸も、あっという間に追い出して。
脳みそのクールダウンに、3度目の内科書読破を思いつくにはワケがあって。
25年引きずってる症例はいまだに消えることが無く、墓まで持って行かねばならない?

突然発症の歩行意識障害で先ずは脳神経外科的疾患?と紹介しても、「ハイ異常なし」。
んなことネーべ。ホンマにCTは異常無いんかい、ナンか見落としてないか?ブツブツ。
意識レベルが低下でもなすすべが無く、髄膜炎・脳血管障害・電解質異常は否定的。
心機能低下も不整脈もなく、神経難病にしては速すぎる経過。薬物でもない。

当時は神経内科もGMも無く、思いあまって相談した先輩と同僚も「ワカラン」。
私を見る家族は「あんたホントに治せんの?医者代える?」の視線が痛い。
除外診断の教科書みたいな病状説明は、家族が理解できるレベルを超えて。

3日後に亡くなって見送る辛さは、かつて経験したことがないほどで落ち込む。
いまだにつかない診断に内科書をめくりながら、手遅れだけど何処かにヒントは?と。

こんなヤクザな生活もあと10年かなーと思いつつ、その先は未定。
論文投稿後の肉体労働で、ちょとだけデコチンに汗を滲ませて。
棚に3度目読破予定の内科書を立てて、赤鉛筆を添える午後。

<音と画像の団塊>

週1回の平日と週末の当直が3週間続くと、ジジイにはちょっとだけ応えるようで。
有給休暇を1日いただいてリフレッシュは、エバンスのジャズピアノで始まる朝。
先ずはペンタブレットで描いたイラストを、ちょいと手直ししてほぼ完成。

使いこなせなかったDTMツールを今までのPCから取っ払い、お掃除して袋詰め。
医局のノートPCに取り付けて音を出す予定だけど、ちゃんと音が出るか若干不安。
作曲ソフトも有料からフリーまで、準備だけは整って既に5年がだらだら流れた。

カメラマニアが加速して、とうとうWebカメラを2個買った訳は孫とやりとりへの挑戦。
機種は友人推奨300万画素、セットアップも勉強して今年中にはナンとか形になりそう。
一安心は「休め」などぶっ飛ばし、「ハイ次は?」の連発出しまくり。

3台目のデジイチも気になって、カメラ雑誌で候補機の評価もチェック済み。
こんな時「何を使うかじゃなく、何に使うか?」が、物欲にブレーキをかける。
新しいことをしようとする時に準備が一番楽しいけど、再挑戦の始まりも楽しい。

ケースに収まっているウクレレは、チューニングもしなきゃ。
オカリナのホコリを払って、いつでもピーヒョロ出来るように。
おっと忘れて居た縦笛も拭き掃除、これでピーピー吹き放題。
「あれもしよう、これも忘れて居た」

音と画像で代休が暮れて行った日々は70歳で無くなった、午後。

<団塊の選択>

胃瘻とは胃に穴を開けて、体外から栄養を注入する医療行為。
胃瘻をどんな場合にいつ造設するか、いつ止めるかの選択について報道番組をみていた。
胃瘻専門という医師のインタビューや、施設を担当して胃瘻で栄養補給を続ける医師。
家族の気持ちと短いなりに経過を見せられても、結局のところ結論は出るはずがない。

その中でおや?と思ったのは、「ガイドラインを作れば良い」の一言。
何もしないことで、訴えられたり犯罪者扱いをされたくないかららしい。
水戸黄門の印籠みたいなモンで、「このガイドラインが目に入らぬかッ!」。

私の担当させていただいている患者さんの3割は、胃瘻を造設している。
紹介されてこられた時には、既に胃瘻を造設されている方が多いのだが。
意地悪な気持ちではなく、胃瘻のことを家族に聞くと「自分は何もしなくて良い」が多い。

「自分にされたくないことを、大切な親にするのは何故?」は、凄く意地悪な質問。
「あちらの先生が、これしか無い」って言われたからだと、大抵は答える。
私のように還暦を過ぎれば覚悟は出来ているとは言っても、年下に何もしないのは悩みだ。

98歳などと言われると、胃瘻を造設する時の多少のリスクもさることながら。
意識レベルと歩行や身辺の世話等の日常生活動作(ADL)によっては、やはり悩む。
悩みつつ結論は直ぐに出るはずがないから、家族へ「貴方だったらどうして欲しい?」。

実はこう言う質問を医者にすると、胃瘻を拒否する割合が高いとのこと。
「じゃあ、自分にされたくないことを、大切な患者さんににするのは何故?」を家族へ。
自分に跳ね返ってくるこの意地悪な質問に、答を出せない情け無い自分自身。

結局のところ膝つき合わせ、想定される医療情報を確認したら。
互いの気持ちを全てさらけ出し、出された結論はいつでも変更できる自由度があれば良い。
医師と患者さんや家族との人生観のぶつけ合いで、結論を出すべきとする団塊の選択。

<団塊の35インチ安心はガラパゴス>

ダイエットと禁酒に加えて、筋トレで我がメタボ腹は結構すっきりし。
1年前に買ったジーンズがブカブカになり、下取りセールに釣られた。
2サイズダウンで試着すれば、「なんかもうちょっと(ごびあげオネーさん)」。

「んじゃ、もう1サイズ小さい方でオネガイしますけど。入るやろか」で試着。
「あらら、入るし。何か格好良くない(語尾上げで)」
「良いじゃん」の奥様。

「しかも日本製がエエよねー、ユニクロの3倍じゃけど。ユニクロ\500下取りで。
30%オフだから、尖閣列島問題に影響されんし」
「んなオーバーなことはないけど」

「ユニクロの柳井さんも、反省してた。業績不振は、商品構成に失敗したからって。
ボク的にはポリシーというかアイデンティティが無くなって、ツマランと思ってた。
買いたいモンがないしイ、遊び心も湧かんしイ。ワゴンセールも、コーフンせんしイ」

「今風で安さだけじゃねー、イカンよねー。センス的に、ついて行けん」
「トラッドとかアイビー1本で、徹底的に攻めるとか?」
「そう言う発想は、団塊世代ガラパゴスだけかも」

「んでも、これって35インチやん。初めて履いたジーンズは38インチでキツキツ。
3インチサイズダウンして、ちょい余裕とは。イヤ、驚いたね」

水洗いした翌日、足を通せばなんかジェームスディーンオヤジ版になった気分。
茶の細かいチェックのサスペンダーで、地味に合わせて見たけど。
9ヶ月の筋トレの成果が、1インチサイズダウンで国産の安心オマケ付き。

脱中国は当然だけど、空洞化して行く日本の製造業を見直す時期はもう来ている。
「たかがジーンズ1本で」だが、タグの「Made in JAPAN」 は久し振りに安心を実感。
車もレアアースも脱中国は当然で、国粋主義ではないけど「Made  in  JAPAN」を見直した。

足元を良く見て本気で探せば良い物が沢山あるのに、気づかないのかも知れない。
得意の「kaizen」で、日本を安心で余裕のガラパゴスにしても良いんじゃない。
ガラパゴスケータイも、捨てたモンじゃないかも(ケータイ嫌いだけど)。

誰かも言ってたけど、円と国内独自通貨の2本立てを考えても良いような気がする。
人民元と国内通貨交換比率を同じにすれば、侵入赤い国の船をとっ捕まえても関係ない。

赤い国の旅行団が来たけりゃおいで、イヤなら来なくてもエエよくらいの余裕で。
イヤミのドタキャンなんてへっちゃらだい!くらい言えたら、気分エエなーと思う。
バブルが弾ける赤い国を想像すると、対岸の火事は大きいほど面白いとは言ってられない。
たかがジーンズ1本で、まともなリスク管理が出来る政治家をどうにかせねばと思う午後。

<団塊ジジ医の代休>

飛び石で3回当直すると流石に体がミョーな具合になって、1日代休でバイオリズム調整。
鈍って回らなくなった脳みそに筋肉労働が一番と、気になっていたフロアのワックスがけ。
段取りを考えながら眠りについて、オーバーオールで決めればコーヒー啜って作業開始。

まずは雑巾がけでダイニングから、置いてあるものをパズル風に移動しつつ作業は進む。
フロアに見つける白のスポットは、孫のこぼれたミルク?顔を思い出しながら拭き取れば。
昨日の電話に至って手を止めるのは、2歳に届かない孫だけに「ジジ」が精一杯?
かすかな息づかいさえ聞き逃すまいと、受話器を持つ手に力が入るジジだった。

ダイニングを仕上げて脱衣場は、雑巾がけもワックスも20分もあれば十分で。
腰をいたわりつつ、最後の仕上げのトイレ掃除で昔を思いだす余所の家のトイレ掃除奉仕。
試練のトイレ掃除を励行していたあの宗教団体の奉仕は、今でも続いているのだろうか?

一度だが彼らの掃除修行中の顔に新鮮な驚きを覚えて以来、トイレ掃除が嫌いではなく。
必ずお世話になる場所で汚れる可能性も高いけど、扱うのが好きな人はいないトイレ。
そこをきれいに仕上げた達成感に、曲がりなりにも清々しささえ感じるのは私だけか?

光が反射するフローリングにニンマリしつつ、腰をいたわって再び椅子を求める。
お買い物のついでに、山口では1,2を争う讃岐うどんの腰を感じる店。
うどんの基本「たまり醤油+ネギ+ショウガ」のシンプルなヤツを、エンジョイ。

残りの時間は予定していた手はず通り、ネット検索でチェックは映画「SP」開演時間。
お隣の町まで40分として、出発時間を差し引きすれば奥様のチェロ教室も余裕綽々。

久しぶりにお邪魔するレストランは帰り道の途中だから、食事時間も具合が良い。
無駄のない時間配分でジジの充実した代休となった、遊びまくり夫婦の良い日は今昔。
寄る年波には勝てないし、引いてゆく波には軽く引っ張られる様になって当直免除の今。

<団塊が別に止めたワケじゃ>

体を壊して嗜好品を止めるのは、当たり前すぎるけど。
嗜好品と言うモノは、ダラダラ続けているうちに依存感覚が麻痺して。
空気と変わらなくなって、余程じゃないと止めようなんて思いつかない。

禁断症状もなく止められた飲酒、自己診断で「アルコール依存症」じゃないようだ。
1年半ぶりというとやや正確さに欠けるが、夕食で350ccの缶ビールを夫婦でいただいた。
1人が僅か200cc足らずのグラスビールだけど、一息に飲み干すには勇気が必要で。

下戸が甘酒を舐めるようなチビチビ・ビールは、喉ごし命の自分じゃ考えられない。
ノンアルコールビールに慣れてしまった舌は、ビールに含まれているいろんな味の再発見。
夫婦が同時に発した「ビールって、こんな味だったっけ」に、思わず笑ってしまった。

コーンスターチが入ってたり、混じりけ無しだったりするのを以前は見分けていたが。
ビールと発泡酒は似て非なるモノで、舌で味わうモノではないことも今回改めて感じた。
アルコール度7%として、200ccでアルコールは大した量ではなく酔うヒマもなかった。
翌日からノンアルコールビールでも全く違和感が無く、これがフツーだと思った。

もう1つの嗜好品は、死ぬまで止められそうにない音だ。
この1年以上ライブというかコンサートに縁がなかったけど、先週は先ずピアノ。
生の音は体全身に訴えかけるから、廻したCDが奏でるスピーカー音とは明らかに違う。

今週はクインテッドで、楽器の綾織りを体中に浴びて来よう。
論文を書くには尻が重すぎて、娘が使わなくなったノートPCをいじろうと。
別に止めたワケじゃないDTM(コンピューターミュージック)に、遅ればせながら再挑戦。

ソフトをインストールして、バージョンアップも済ませたけどWinXP専用で。
こいつを壊れるまで使い倒して、DTMの入り口辺りをウロウロしてみようか。
Win8が出る頃までに形が整っていればそれなりのマシンを決めようが、今やWin10。

今日は2週連続の秋吉台芸術村、天下御免の晴れ男のパワーで上天気だった。
初孫をきっかけに体に良いことしてみよう!禁酒だから、止めたワケじゃ無いんだけど。
いつ破っても問題はないが暫くは・・・で、10年を超えた。

<団塊の模様替え>

「おろ?センセ、定年でしたっけ?昼逃げみたいな。あっちの世界へ、引っ越し?」
「んじゃ、そう言うことで。失礼しまーす、お達者でビョーキになってね」
「しかし、好きですねー。なんか、来る度にあっちゃこっちゃが変わって」

「んじゃ、半年に一回しか来ないんだ。そうかねー、それほど変わった?」
「代わり映えせんのは、センセだけ」
「んじゃ、そう言うことで。失礼しまーす、お達者でビョーキになってね」

「ちょ、ちょっと。センセ、あたし今来たばっか」長いお付き合いのMRさん。
「んで、何かご用?あ、暇つぶしにウチの病院に来てまったりしてるワケね」
「確かにそういう面もありますけど、一応仕事しなきゃ。ネッ」

「あのさ、模様替えの邪魔じゃから。そこのゴミ箱の中に、静かに座っててね」
「するってーとナンです、あたしはゴミ?ヘッ、それ以下。ハイハイ、どーせそうですよ。
社内の嫌われ者は、ここに来るくらいしか無いしイ。ウウウ・・・」

「しかしなんやねー、よー独りで遊んでくれるねー」
「センセのが伝染して、こんなになっちゃいました。悲しい」
「エエんじゃないの、どーでも。んじゃワシ、ラウンドに行かねば」

「センセに着いて行って、処方箋が書きたい」
「どーせ、PとかRとかDを書きまくるんやろ」
「それってゼンブ他社の製品じゃ、それってパワハラ?」

「んじゃ、そう言うことで。失礼しまーす、お達者でビョーキになってね」
を残してラウンドは、*病棟ステーションから。
「あら、センセ。ナンか違うけど、何処じゃろ?」

「ワシがいつものキムタク似じゃなくて、嵐のニノミヤ君に見えるとか?」
「んなわけねーでしょ、暴風雨のサンノミヤ君」
「ナンかいろんなモンがぶつかって、あっちこっちが壊れてるみたいな(語尾上げで)」

「首から上は、でこちんテカって変わりなしと。首から下は、メタボでノーチェンジ」
「んじゃ、首だ」
「キリンと骨の数は同じなのに、ナゼ故それほど短い。可哀想なくらい、カワンナイ」

「あ、聴診器を模様替えしたんよ。それかも」
「確かに、体型に合わせて。太短い聴診器」
「これは循環器用なんよ、心音が良く聞こえるような構造」

「んじゃ、いつもは手抜きで?」
「あっちはフツーに使うヤツ」
「んじゃ、こっちは異常に使うんですか」

聴診器の模様替えだけの、午後。

<団塊は自分の心にピュア>

失言や放言で更迭される政治家が後を絶たないのは、ナンでやろ?
彼らは自分の心にピュアなはずもなく、品格のないお銚子乗りと思っていたが。
認知症の方々と接していると、もしかして更迭された政治家はフツ―以上に老化が速い?

それならそれで、先ず政界から外れて心を穏やかに過ごしていただきたいもの。
さらにお銚子乗りを加速させる生活習慣も変えてもらわねばと思った、勤労感謝の朝。

虐待を受けるお年寄りは年間1万5千人と報じられ、虐待される方の多くは認知症で。
虐待は家族からが多いとか聞くと、あまりにも切なくて心が寒くなって来る。

少々認知症があっても、心の安心感がいわゆる「問題行動」に至らないことは常識だ。
近所の底力が溢れていた昔、それが本土で失われてもいまだに続いていた沖縄。
そのお年寄りにとって良い環境も、世知辛い世の中になって減っているかも知れない。

お年寄りへの虐待なんて悲しい話は、今に始まったことではないだろうが。
寿命が延びる分加速度的に増える認知症は想定内で、それも我々団塊の世代に接近中。
あと20年我慢すれば急速に平均年齢が下がり、有効な認知症治療薬も出てくるだろう。

認知症の方々と接していると、いつも思うのは「自分の心にピュア」過ぎること。
ある意味とても敏感で押さえきれずに直ぐ反応し、行動に移ってしまう。
そのきっかけは、便秘だったり寒さだったり何かが気に入らなかったり。
しばしば経験するのは、転院などで環境が変わって天井の模様が変わった事。

100%とは言わないが、目を見て声をかけるとある程度は気持ちが伝わってくるが。
私は未熟で「?」を連発する方が圧倒的に多く、反省の日々。

<団塊のひらめき>

私にとっては「ナンでや!?」の問題意識が、ひらめきの始まりのことが多い。
多くのひらめきは遊び心を含んでいるから、生まれたものは受け入れられやすいのか。
軽妙な遊び心がなけりゃ誰でも出来そうで、やっててもツマランし長続きしない。

言い出しっぺは楽しいのは、漫才で言えば「ツカミ」の工夫を模索する時。
新鮮な驚きをもって広がる時は、高笑いを表情に出さないでおくにはパワーさえ必要。
ひらめきが磨かれると、発案した人や時期が思い出せないほど自然になる。

そうなる前に次の新鮮な驚きを求めて、連発する「何でや!?」。
その中から新しいひらめきをひねり出したり、棚ぼたでいきなり飛び出したり。
ひらめきに心浮かれながら、30年以上も遊び心ある研究をやってきた。

想定外の良い結果が出ると、かえって心配になり後戻りすることもしばしば。
草を食む牛のように反省を反芻し、書き散らしてきた論文の別冊請求は3回だけだった。
ひらめきが役に立つのは、薬の宣伝で貰った他人の論文イチャモンをぶっ放す時。

他人の論文の弱点を見つけるのはやたら得意になって、趣味の域に入ってしまった。
スタッフの論文や文章くらいなら、赤鉛筆1本でひらめきも額に汗も要らない。
修正しながら研究にひねりや輝く何かを伝授するのも好きだ。

「ナンでや!?」の問題意識の根底にあるのは、「便利にして、楽をしたい」。
少しの苦労と工夫でもたらされた「楽」は、何物にも代え難いほど気持ちの良いモンで。
何となくわだかまっていた物をぶっ飛ばすことが5年続けば、ひらめきはフツーになる。

「フツーと言われる事がフツーであるほど、実はフツーではない」by  MIHI

参考まで;共にカンブリア宮殿「社長の金言」日本経済新聞出版社より
(1)どんな職業でもひと工夫、ふた工夫することはある。
何かを生み出すひらめきはどの職種にもある。男前豆腐店株式会社社長
(2)「便利なもの」は人をものぐさにする。助けてくれという人を助ける
「必要なもの」を作るべき。三鷹公器会長

<海保救助ビデオに熱い胸の団塊>

難破船中国人が5人助けられたビデオがTVから流れて、必死の努力に胸が熱くなった。
なんせ相手は船をぶつけると英雄になれる国の方だけど、やる時はやるんですよ武士は。
荒波にさらわれそうになって一度離れた手を、再びさしのべて救助の図。

必死で助けたのが、例の情報を流した海保の人だからというわけではないだろうが。
赤い国にお偉いさんは、電話一本「有り難うね」の一言だけでエエんかッ!
桃饅頭の折の1つも持って、「助けてもろうて、ありがとさん」でしょ。老子さんなら。

こう言うビデオこそ、YouTubeで赤い国へばらまいて欲しいもんだね−。イヤ、ホント。
情報操作がやり過ぎの国だから、日の丸が将軍様の国の旗に変えられてたりして。
お礼にテポドンの材料とか、メロンとか高級ワインなんかが国境越えたりして。ウソです。

同僚が自己責任で流したビデオは、あれってホントに国家機密なん?
見た国会議員がTVの前で絵を描いて、見た国民は「あ、そこまでやっちゃったワケね」。
ニュースなんかでアニメ風な画像で見せられりゃ、「あ、なーるほど」そう来たか!」。

生かイラストかの違いで、長い分だけの違いでしょ。何処が秘密?
あれは見せられても、会議で居眠りしたり下品ヤジの国会議員は恥ずかしくて見せられん。
そっちの方がよほど国家機密にして欲しいもんだね、そう思うのはあたしだけですかね?

「葉隠れ武士道」でも、内部告発する前に何かすることないか?ってのがあるけど。
「潜かに申し上げ、お請けなされざる時は、力及ばざる儀と存知果て、
いよいよ隠密致し、色々工夫を以て又は申し上げ申し上げつかまり候らえば、
一度はお請けなされる事に候」

この国の政治家か上司はアカンと見たから、差し違えるつもりでのビデオ垂れ流し?
こんなクダランことで、日本を守る海保の人のやる気が失せる方がマズイでしょ。
流れた中国人救出ビデオを見せられて、胸が熱くなったのは私だけ?

<団塊学会準備(おにがわらう)>

先日の、腹痛・嘔吐の若者は読み通り「左尿管結石」でビンゴしちゃったけど。
返事が返ってくるまで気になっていた除外診断は、ジーパン刑事こと松田優作さんの病気。
症状で気になった、「尿管癌+浸潤による尿漏出に伴う腹膜刺激症状」。

腹部診察上は否定的であっても、いくらゴールドフィンガーでも日野原センセじゃない。
悪い方じゃないことを祈りつつ泌尿器科の返事を待ちわびていたら、ビンゴで一安心。
気分転換に、PC+HDD専用の2連扇風機を大掃除してしまい込み机の上はすっきり。

それに自分専用フツーの扇風機、11月になる前に掃除をしてしまい込むことが出来た。
いつものように暇つぶし模様替えを終え、研究計画をマインドマップでプロット。
この作業が一番楽しく、ニタニタしてんのを他人が見たらどう思うやろ?

来年の某学会総会は我が古里とのこと、しかも10年勤続表彰とパーティがあると聞けば。
ますますファイヤーし、久々の紺ブレ+ベージュ綿パン+赤チェックボウタイで洒落る?
そう言えばある地方学会の会長をした時、この格好で彷徨けば特別講演ご招待の某教授。

「センセ、ナウイですね」の死語をぶちかます。
昔のメンクラじゃ、コテコテのトラッドでっせ。粋に、ちょい崩しでを飲み込んで。
「あ、どうも」を返しただけ。

故郷を遠く離れて通販でしか手に入らない、美味いうどんを想っただけで喉が鳴る。
うどんは喉ごしで味わうモノ、本場の讃岐うどんはコシが喉に効くワケで。
白魚の躍り食いはニュルッうーで軟派だけど、讃岐うどんは硬派でウヒッと来る。

臨床研究のプロットしながら、喉が鳴るのは何故?なんて野暮なこと。
栗林公園や屋島は地元だから、有休とって足を伸ばし鳴門の渦でも見て来ようかと。
既にお遊び気分で、文献より先ずは旅行雑誌?みたいな。ここは、同行の奥様担当?

発表までに論文を仕上げるのが癖になり、質問者に別冊を差し上げたこともあった。
スライドに論文掲載雑誌を載せるのも、余裕グジャグジャはすこぶる気持ちが良い。
大昔なら学会発表をすると、師匠から「んで、投稿はいつなん?」なんて尻を叩かれた。

そんなシゴキのお陰でついた癖、30年経ってひたすら感謝で足を向けて昼寝が出来ん。
昔は発表前にかなりの文献を押さえ、意地悪な質問に準備したものだった。
最近は要領が良くなって、文献を適当にはしょるテクを覚えてしまったジジイの年輪。

昔は一見弱点をわざと作って、「そうそう、その質問。待ってたんよ」が定番だった。
ジジイになると「恥」をかかない範囲で大胆になり、「エエんよ、ナンでも聞いてね」。
知らんモンは知らんし、やってないモンはやってないんよ」が気楽に言える。
文献をかき集めて書いたのが半年前なら、ジジイじゃなくても内容は順調に忘却の彼方だ。

こうして残すところ現役生活4年+数年、コツコツ地道+お気楽でエエんじゃないの?
年内は脳みそで暖め当直でプロットを完成させれば、翌月から行動かな?
テーマは「院内感染予防のためのスクリーニングをスコアで評価する」かな?

来年の鬼も笑う学会準備がお気楽に進む、週末の朝。

<団塊のボクがなりたかったもの>

「大人になったら何になる?」と聞かれる度に、年単位で変わった子供の頃。
時々遊びに行って使い古しガラス製注射器を貰って、叔父からすり込まれるのは医者。
息子である従兄弟2人は文句なく医者で、いま開業医で納まってその息子も必然の医者。

なりたいモノはTVと共に変化して、先ずは目に入ったのが脳外科医ベンケーシー。
未だに白衣はケーシータイプを好み、聴診器を首にかけるのもケーシーを真似る。
続いて弁護士プレストンと来れば、法曹界デビューか?は3年持たず放送と同時に終了。
黒部の太陽と親父の仕事関係で、なんてったってダムの設計士でしょは、1年で速攻終了。

受験校選びは文系も理系もなく、節操なくあっちこっちと鼠花火じゃあるまいし。
落ち着く経済学部で「公認会計士でも良いね」、当時は年に120人足らずの合格者と知る。
これって入試より数倍難関じゃん!で、直ちに撤収して約40年前に受験し直して医学部。

会ったことはないけど、医者のルーツはオヤジの兄。
戦争中に中国大陸から帰国中に船が攻撃されて死に、医者の系列が途絶えたと思ったら。
長女が結婚した相手が医者で、我が祖母は意地でも直系で医者を作ろうとしたらしい。

直系としては、その孫であるボク兄弟と従兄弟が先ず医者になり。
家系図を作れば、面白いように増えるのが分かる医者の点在。
我が夫婦だけかも知れないが、そろそろ医者の系列を卒業しないとツマランと思う。

たまたま医者になってしまうと、やっぱ哲学とか文学とか芸術とかが渋くてエエよなー。
この業界にどっぷり浸かってしまうと、憧れと諦めだけは強くなり。
はてさてあと10年医者して、惚けるのを待つのもなんだしナーと思って居たら。

娘の結婚相手は文系ばかりで、美術関係だったり経済関係だったり。
どうして医学ほど分かりやすいモンを職業にしないのか?と、ミョーな事を思う浅はかさ。
自分に特別な才能がないのを自覚して、才能と若さに嫉妬しながら齢を重ねるのも悔しい。

やっぱ初志貫徹で経済学博士か?イヤイヤ、あと10年もすればどうなることやら?
他人の論文にイチャモンつけるのだけが上手くなって、いじけたジジイの戯言とか?
とろとろ医者をしながら、貰った臨床系の論文に「これってヘン」を言いまくるか?

いったい自分は何になりたかったのか、45年前に思いを馳せる団塊の午後。

<男の子を躾けたい団塊ジイの躾け方>

男の孫が産まれたのをきっかけに買った本「男の子の躾け方」第3章から一部抜粋
・無趣味型人間は主役になれない
仕事一辺倒なだけのヤツは話していてもツマランし、付き合っても時を持て余す。
あんなヤツとは挨拶を交わす程度で充分などと、言われないようにしたい。

・思いっきり遊ばせると、勉強と遊びのケジメがつく
ながら族には耳が痛いが、勉強時間は短いけど集中力のある同級生が居た。
ヤツはスポーツもするし、住んでいる町のことも良く見て知っていた。
ボランティアなんて言葉を聞いた事がなかった頃から、町内会の奉仕活動をしたり。
自分の家の稲刈りを手伝って、やたら力持ちで。2つ合格し、医学部を蹴って理学部へ。
ヤツがノーベル賞を取ったというニュースに接するのも、時間の問題かも?

・父親が家庭にあって、先ずよく学び、よく遊べ
酒飲んでゴロゴロしてる父親は、何を言っても説得力がない?
親の背中を見せて子供を育てろと?子供と一緒に本気で遊べと?

・良い人や良い家に住みおいしいものを食べるだけに、人生を費やしてはならない
人間には欲望がつきもので、時にエネルギー源になるが。
結果と目的を混同してるヤツは、武士の品格に欠けるワケだ。

その本には他にも色々あるのだが、んじゃ自分はどうなんよ?とふと思う。
学生時代に下宿のおじいさんから、縁側に座って酒を酌み交わしながら言われたこと。
「お医者さんは広く浅くでも良いから、いろんな趣味を経験しなさい」なのだが。
「医学は人間学だから、人間を理解するには狭い了見じゃいけない」と言うことか?

それを実行しかけて挫折したり途中で放り投げた物も、3つや4つじゃない。
無駄だったかどうだか分からないらないけど、それなりに費やしたなにがしと時間。

リタイアした時に独りで遊べる物と夫婦で遊べる物が多いほど、老後が充実するはず。
還暦を過ぎあと2つくらい趣味を増やそうと、団塊ジイの躾け方を考える午後。

参考;男の子の躾け方−あるドイツ人からの提言、クラウス・シュペネマン著
光文社 知恵の森文庫

<団塊の躾けと消耗本>

子供には余り多くの物を与えてはいけないのが、ドイツ流の子供教育らしい。
欲しいのものが全て手に入るようになったら、モノの価値が分からなくなるから。
小遣いは家の手伝いなどの報酬として、それで欲しい物を買わせるのが躾とか。

ボクの親は欲しい物があれば、理由がちゃんとしていれば買ってくれた記憶がある。
一番欲しかったのが顕微鏡で、最大100倍のものだった。
夏休みの自由研究で、葉っぱを処理して拡大した葉脈観察日記を完成した。

マンガ以外の本なら言わなくてもオヤジが買ってきたから、本には不自由しなかった。
偉人伝や科学学習物が多かったのが欠点だったが、当時のボクは単純で結構感動した。
努力の人「野口英世」の感動は、後になってネット情報で無残に打ち砕かれた。

大人になって自分で稼ぎ出すと、自由なお金が増えて趣味のカメラは増幅し。
NikonからCannonに総入れ替え、6本の交換レンズは40Kgを越す新品電気保湿庫へ。
交換レンズはショートからロングまで、フツーに使うには不自由ない範囲で揃った。

ちょっと凝って居たオーディオは、JBLスピーカーと山水のアンプで落ち着いたはずが。
カントリーから鞍替えしたジャズCD収集は、600枚弱でクールダウンしてやっと止まった。
ビルエバンスのCDなら意地になって集め、2枚の絶版CDは中古で探すしかない程になった。

さらに、ヘタクソ字をカバーするために使っていたワープロ専用機。
懸賞論文で手に入れたパソコン。このオモチャと仕事道具の区別がつかない代物が参入。
パソコンに付随し発展させるグッズのカタログが積み上げられ、暇つぶしは充分過ぎた。

物に溢れた生活にピリオドを打ちそうなのが「還暦」、無駄物を処分する楽しみになり。
最後まで残った無駄物が本で、雑誌類は切り取って綴じれば捨てるのは簡単。
さらに文庫本は2度読むことはないから、処分しやすい。
単行本と全集は見ただけで処分はパワーダウンし、思わず目をそらしつつも。
10年開けなければ処分の対象にして、せっかちオヤジの週末は決まり。

ジャズ・医療・哲学がテーマの物だけ残して、後は思いきり良く。
捨てるには重くて多いので腰に来るし、紙だけど燃やすわけには行かない。
いくつかの段ボールに納めたら、古本買い取り業者を呼ぼう。
200冊以上が処分されれば本棚は整理しやすいから、30年ぶりの大掃除だ。
売り上げがいくらになるか分からないけど、ネギラーメン1杯分くらいにはなるかも?

2010年の末には電子図書とそのツールが目白押しで、新書サイズでお手頃\2万。
1400冊が蓄えられるとか聞けば、古本買い取り業者にお世話になる事もまずない。
何処でもネットも使えるヤツなら、ちょいと大きくなるが触る部分も増える嬉しさ。

とうとう本が消耗品になってしまったけど、時代の流れか?でも寂しい、ノスタルジア。
我が家に電子図書を読むツールのカタログが溢れても、せいぜい3ヶ月だろう。
いくら場所を取らないと言っても、電子図書を節操なく買わないよう自分を躾けよう。

参考;「男の子の躾け方」あるドイツ人からの提言、クラウス・シュペネマン著
光文社知恵の森文庫

<よーワカランけど凄いッ!と思う団塊>

HSMR指標(標準化病院死亡比)と言うのがあって、イギリスに頼んで計算するらしい。
我が国の入院患者の死亡率は、平均の1.6倍から0.6倍まで散らばっているそうな。
医局制度が働いていた頃と医師の偏在著しい昨今では、大違いな医療環境のような。

日本慢性期医療協会会長の文章を見ると、急性期病院の問題点を指摘しているが。
実感はあるのだが、じゃあそれを是正するにはどうしたらいいのか?
病院と施設の棲み分け、病院群の中でも場所と受け持ちの適正配置も考えねばならない。

施設の選択肢が増える前は、患者さんや家族が終の棲家を選ぶのは簡単だった。
医療費抑制を目的に導入された介護保険制度が、選択方法を大きく様変わりさせた。
無条件で介護保険料を取られるが、意識して払っていないと凄まじいしっぺ返しに合う。
払ってない時まで遡って一気に支払えば解決するのだが、それが出来れば最初から・・・

運悪く色んな病気にかかって、とうとう家で世話が出来なくなり施設入所を考え。
「あ、介護保険料納めていないんですか!」となると、自己負担は10倍に跳ね上がる。
昔なら「社会的入院」で事なきを得るのだが、バブルが弾けてそうは行かなくなった。

運良く自分のことが色々出来るようになると、病院に長くはいられなくなる。
本人も家が恋しくなり家族をせっつくが、既に自分の居場所はないことが殆ど。
やおら施設を探すには「介護保険」が、重い足かせになる。

ちゃんと介護保険料を支払っていて、さて施設入所か?となっても簡単なことではない。
施設群では、根拠は別として患者さんに線引きをして医療・看護・介護を提供する。
この線引きは介護報酬と大いに関わりがあり、なされる入所判定は受け身的で。

「施設なら、評判が良いあそこしかないッ!」は、余程じゃないと通用しない。
病院も施設もそれぞれ努力して、患者さんや家族から自分達を選んで貰おうと一生懸命だ。
その汗を真っ当に評価して貰える?スタッフが安心して生活や仕事が出来ない悲しさも。

世の中は矛盾だらけでも、コツコツ地道で不器用に生きるしかないか!
2つの論文を仕上げてエネルギーを出し切り、グータラしつつあれこれ考える。
最後は自己満足に浸るしか無く、「よーワカランけど、ワシ凄いッ!」自画自賛の団塊。

<団塊のおいとま>

「センセ。そろそろ、おいとまを頂きます」
「ヘッ、いま来たばっかやのに?」
「ハイ、長い間でしたから」

「おいとまする前に、血圧とか診察とかは?」
「イエ、そうじゃなくて。おいとま」
「んだから、まだ来て2分13秒・・・」で、ようやく言いたいことが。

「あのさ、こないだの心電図もエエし。血イもオシッコも、ほぼエエしイ。
強いて言えば、年相応の貧血と腎臓がちょっとだけ弱ってる(語尾上げで)」
「残念でございますわ、フウー(語尾下げでもなく)」

殆どお年寄りの口癖みたいな「早くお迎えに」は、聞き飽きたけど。
「早くじいちゃんがこっちへ来いって、言うてくれんやろか。ハアー。
男前じゃったら、他所のじいさんでもエエから」はちょいひねりが利いて。

「センセは、三途の川の渡し船漕ぐんは上手いか?」は、並程度。
「楽に気持ち良く逝ける薬は、持っとらんか?飲むんでも、注射でもエエ。
どっかに隠しとるじゃろ」となると、思わずポッケに手を突っ込む。

MIHIセンセが担当させて貰ってるジッちゃんやバッちゃんは、パターンを変え。
ミョーに工夫を凝らすようになった人が増えたけど、ナンでやろ?
そう思っていたらこの「おいとま」で、ちょっと語源を調べたりして。

「いと」は「休みの時」で、「ま」は間だから。
「おいとまをもらう」は一時的に休むとか休暇をもらうとか。
英語的にspare timeで、「席の暖まるいとまがない」はI'm busy every moment.

でもお年寄りの場合、人生の流れの中で「いとまをもらう」のだから。
休暇が明けたら、蘇っちゃうんだろうか?団塊のおいとまは、難しい。

<団塊たちのデスカンファ>

「センセッ!言って良くないい事と、悪い事がありますッ」
「あ、スマン。必死で治療したのに効果が無くて悔しかったんでつい。しかし青いのー」
「どうやって三途の川渡したか?なんて、酷すぎます。んじゃ、デスカンファの続きを」

こんなトラウマのデスカンファは30年以上前のことで、今はもっと紳士的だ。
大きな病院だと、治療の甲斐無く無くなった患者さんの診断と治療経過をプレゼン。
聞いた医者達が厳しい質問をぶつけ、それに答えるには文献考察を用意せねばならない。

丁々発止とまでは行かなくても、プレゼンが新人なら指導医の代理戦争もどきになる。
最後は声が多き方が優勢になり、教授の咳1発で終戦を迎えるのだがわだかまりを残し。
学会発表のシミュレーションでは、敵を討ったり打たれたりのつばぜり合いは当たり前。

そんな血の気の多いデスカンファとは全く違う、僕たちのデスカンファ。
お年寄りのお世話をさせていただくことが多く、100歳前後も珍しくない。
知恵を使ってお世話をさせていただいても、手の届かないところへ行かれることもある。

このカンファの意味は、昔のとは全く異なっていてもそれなりに意義深い。
私がいつも言うのは、「ケアは本人だけじゃなく、その家族のケアを含んでいる」だ。
分け隔て無くお世話をさせていただいているが、亡くなった方の家族は力が入ることが多い。

医師を含めたスタッフの反省と展望で締めくくるのも、昔とは違う。
それより何より「この間ご挨拶に来られて、良くしていただいた」で安堵する。
そこも、昔とは大いに違う「団塊たちのケースカンファ」。

<教授に誉められる団塊>

「おまえ、Pがいま何処にいるか知っとるか?」
同窓会の幹事をしている私に、にじり寄るH君(某大学教授になった)。
「Pっちゃ、軽音の。最初はドラムで、ビートルズ見てギターに変更した」
「よー、そこまで覚えとるなー。感心するワ、んでいま?」

「あいつ、3年で4つ病院変わって。ワシが知ってる最終は、T病院やろ」
「それが、さっき電話したらオランって」
「変わり身が速くて、右利きじゃったのに利き腕変えたよな。5回生の時」

「そこまで覚えとるんか、他にその記憶力を使えばあんたも今頃は教授だったかも」
「ワシ、それほど人は悪くない。あんたみたいに」
「どう言う意味じゃ。んで、ナンで利き腕変えたんね?」

「サウスポーのギタリストの方が、カッコエエって思ったから」
「カッコが・・・ありゃ、ナンの話じゃったっけ。あ、Pはいま何処?」
「2年前の年賀状じゃ、K病院じゃったけど」

「そら古いで、んじゃ知らんな。んで、Rは?」
「Rっちゃ、付き合ってた一人娘の彼女の家が整形外科じゃったヤツやろ。
 小児科から、いきなり整形に鞍替えした」

「おまえ30年以上前のこと、そこまではっきり覚えとるんか。凄いのー。んじゃ、F」
「Fは記憶鮮明じゃ。あいつ兵庫県のクソ田舎出身なのに、家が神戸近郊って入学式で。
母ちゃんが大根や白菜を担いで遊びに来たろ?進学2回生の時。んで、ばれたヤツ」

「そうじゃったかいのー」
「笑ったんが、夏休みに遊びに来いって時。兄貴がトラクターで、無人駅に迎えに来た」
「そうそう、ワシも覚えとる。んで、いま何処?あ、知らん。んじゃ、Gは忘れたか?」

「イヤ、くっきりはっきり」
「あんた、動く卒業アルバムやな。やっぱ凄いわ、勿体ないのー」
「Gは沖縄に帰って開業したけど、これにひっかっかって北海道へ逃げたヤツじゃ」

「小指がひっかけるか。そう言えばあいつ、スキーが好きじゃッたモンなー」
「沖縄は水上スキーで、北海道は雪の上。大してカワランか」
「んで、いま?あ、千葉」

「今日、あんたに電話してエかったで。でも繋がるのに、時間がかかった」
「あ、あれね。母校のTセンセから電話って言うてたから。マンション売りと思った」
「んで。やっと出たと思うたら、探るようにモシモシなんてか?」

「ああ言うマンション、ワシが知ってる範囲じゃあんただけやモンなー。騙されたんは。
それも覚えとるで、死ぬまで忘れん」
「要らん事は忘れてね。しかしあんたのクダラン記憶力、凄いわ。また電話するな」

滅多に教授から誉められたことはないけど、同級生の教授が誉める午後。

<団塊の10年勝負>

「センセ。この間、訪問看護婦さんに聞いたんじゃが。センセのこと」
「何故ワシがキムタク似なのか?アンタのアホ孫とウチの孫、どっちが可愛いか?」
「何を言ってんのか、よーワカランけど。何時まで往診に来て貰えるんか?って」

「定年まであと4年じゃけど、どっかで仕事をさせてくれたら都合あと10年か」
「んじゃ、往診に来て貰えるのは10年と見てエエんですね」
「計算上はな」

「あたしも確かにもう80じゃから、あと10年は持たんじゃろ。んじゃエかった」
「計算上は、エエと言うことやで」
ゆっくり歩いてもヒーヒー言うほど肺機能は悪いし、食道がんもあるし。10年は・・・

「んじゃ、センセが丈夫で長持ちして貰うだけでエエんじゃ。頼むで」
「10年1本勝負みたいなモンやね、どっちが勝つか」
「よっしゃ、負けんよ。しかしナンじゃね、センセと20年以上付き合うことになるんか」

「イヤなら、代わってもエエで」
「そう言う意地クソの悪いとこが、好きじゃ。こうなったら、墓に入るまで張り付く」
「そう言うしつこいとこが、Kさんのエエとこじゃ。長生きしいよ」

で、次のお宅。
「センセ、足痛い」
「40年モンの糖尿じゃし。6年前まで、糖尿なのに食い放題。ワシ、治せんで」
「しかしセンセと腐れ縁で、もう16年か。センセは、ワシが死ぬまで往診するんじゃな」

「あと10年は医者する予定じゃから、それまではエエで」
「大丈夫じゃ、ワシの寿命はあと4,5年と見た」
「んならエエよ、10年は面倒見よう」

「10年ならお釣りが来て、倉が建つ」
「んじゃ、インフル予防注射しとくな」
「このババになんかせんと、若い人に廻してあげてエエで」

「あ、去年も他より先に打ったけど。今年は余るくらいあるんで、気にせんでエエ」
「んじゃ。センセとあと10年付き合って貰わにゃならんから、痛いけど打つか」
「そうそう、そう言う気持ちが長生きの秘訣や」
「んじゃ、センセが丈夫で長持ちして貰うだけでエエ。呆けんように、頼むで」

あと10年は丈夫で長持ちしなきゃ!と思う団塊の、午後。

<臨床研究で団塊ハイ>

「んで、さあ。これをスコアで探索するワケ」
「んでも、見つかったらイヤじゃないですか?」
「アホ言いなさい、見つかったときに既に全員が持ってたらもっとイヤやろ?」

「そうですけどオ」
「ちょっとヤバイんちゃうの?みたいな中で、お世話するのは気分エエか?」
「そらそうですけどオ」

「アタリを付けて探ってみたけどOKなら、多少は気分が違うやろ?」
「まっ多少は」
「その多少が大事なんよ。かと言って、何でもかんでも撃ちまくりじゃアホやろ?」

「そらそうですけどオ」
「んで。アタリを付けるには、ワシが今作ってるスコアなんよ。これって日本初う」
「出ましたア、得意の自画自賛。しかしセンセは楽しいでしょ?ナニしても」

「最高やで、日々ハッピー。自画自賛は、ハイを呼ぶで。ウウ最高、タマランッ」
「その分、あたしらアンハッピー。ウウ最低、タマランッ」
「ネーミングには凝っちゃってて、やる前から決まってんの」

「やっぱ形から入るわけですね」
「そう!ゆPHaI(Prophylaxis against Hospital-acquired Infections)スコアって」
「ワケワカランッ!」

「素人にはちょいと難しかったかもな。んでも一応は、I医大の教授の意見も参考やで」
「あ、センセのお友達の」
「彼は秀才。類は友を呼ぶって言うやろ?」

「来なくて良いし呼んでもないのに来る、類も居る(語尾上げで)」
「それを言ったら、友達に悪いやろッ!」
「呼んでないのは、センセですッ!」

友は遠きにありて思うモノ、臨床研究に想いを馳せじっと手を見る団塊ハイの午後。

<団塊のドラマチック・チェンジ>

異常低温で5月の連休前後のいつもは、鳥よけにかけたサクランボにかぶせた網を外し。
「ちっとは鳥に残してやるかんね」と、機嫌良く収穫すれば大きめボールに2杯分だった。

例年200個近い無農薬ちょい小さめサクランボが、洗われ冷蔵庫に収まるはずが。
今年はやっと5個という体たらく、鳥よけ網も10cm四方4個の網とはトホホ。
これで事足りる、サクランボは情けなくハゲしくチェンジ。

¥550で買ったゴールドクレストは背丈が6倍に成長して2.7mは見通しが悪い。
剪定するのも結構大変で、治りつつあるものの腰痛と泣く子と地頭には勝てぬから。
思い切りよくばっさりに加えて、芝引っぺがし洋風庭作戦に突入して5日後。

手入れは散水と砂利の追加だけという、安楽な余りにも安楽な庭の日々を獲得。
芝生作りはデザインとは縁がなくひたすら教科書通り、洋風改造は円をモチーフにした。
素人のデザインを美大卒庭師二人が修正して、想定以上に可愛く出来上がった庭。

ドラマチックと言うか、インクレディブルに変貌を遂げた庭。
初夏の到来を思わせる爽やかな風が、散水後のここを渡ってくる。
開け放った窓から入ってくるヒンヤリが、全身に染み渡れば今日も良い日。

<軍人勅諭的団塊の危機管理>


「菊と刀」で誉めている「軍人勅諭」を調べてみると。
・軍人は忠節を尽くすことを義務としなければならない
・軍人は礼儀を正しくしなければならない。
・軍人は武勇を重んじなければならない。
・軍人は信義を重んじなければならない。およそ信義を守ることは一般の道徳を守ること
・軍人は質素を第一としなければならない。

質素を第一としなければ、武を軽んじ文を重んじるように流れ、軽薄になり、
贅沢で派手な風を好み、遂には欲が深く意地汚くなる。(ウウ、奥が深い)
これを実行するには、ひとつの偽りのない心こそ大切・・・(ウウ、反省)

別に、国粋主義者でも極端な右主義者でもないけど。
私を含めて今の日本人に、何処をどう探しても見つからない物が多いのは無念だ。
赤い国の人々も同様か更に輪をかけて凄いのかは、徹底情報管理の国じゃ判断付かない。

垂れ流しの情報管理とどっちもどっちで、比較できないけど。
無理なこじつけで戦争突入させた日本軍は何をか況んやと思うのは、戦後世代だから?
軍人勅諭の「軍」を外せば、エエこと言うとるやん!と思うのだが如何か?

胸のつかえが下りたビデオ流出後、背筋が凍ったのは私だけじゃないかも。
温カンは政治経済だけじゃなく、国家危機管理もか!みたいな。
んでもエよなー、こんなこと書いても逮捕されないし軟禁もない国でエかった。

体当たり中国船長の反応は、フェイクで得意な映像技術で作った?
恐らく映像が流れた瞬間に政府の手によって、船長は匿われてる?拉致されてる?
こんな想像するのに3秒も必要じゃないと思っていたら、既に船長は雲隠れ?

もし家に居てインタビュー受けたら、要らんことを答えてもらってもイカン。
私が赤い国の鉛笑顔のトップなら、リアクションは分かりやすい。
「速攻で隔離イ!監獄でもエエで。事と場合によっちゃ、入院で病死。ウフッ(鈍笑)。
「ホントは粛々と死刑(語尾上げで)、ヒーローに仕立て上げたからそうも行かんし」

映像をそのまま受け取れば、衝突前に本国と話が付いていて。
「構わん、こっちからぶつけろ!後は何とかなる。楽勝じゃ」で、全員が甲板から部屋へ。
「よっしゃー行くでー、戦略的偏恵関係で突撃イー(タブン中国語で)」
なんて言ったりして・・・これって妄想?

団塊の自分だけでも、軍人勅諭的に危機管理を見直そうと思った朝。

<団塊医も鏡をみる>


「キャーやだ!あたしって、こんなに皺あったっけ?キャー」
「鏡もキャーだよな、フツーに仕事してるだけなのに。あんた、夜勤明けの顔やろ。
鏡も災難や。家へ帰って、誰も居ないところで化けの皮剥がせばエエのに」

「今からエステなんで、その前に化粧を落とさんとダメなんですよ」
「んじゃ、おんぶババの面でもかぶって行けばエエじゃん」
「そんなモン、何処に売ってんですかッ」

「例えの話やで、そらパンダでもヌラリヒョンでも」
「例えが良くないでしょ、もうちょっとエエのは?」
「はっきり言わせてもらうと、化け方見たらヌリカベ」

「そらまあ、女は化けてなんぼですモンね」
「どっちゃにしたって、大人になったら自分の顔に責任があるワケよ」
「んじゃ、センセも鏡見る?」

「しょっちゅう見てるけど、不思議なんじゃ。ナンでこんなに素敵!みたいな」
「無責任な不思議ですね。んじゃ、あたしも顔に責任持たんとイケンのやろか?」
「自分の顔が映った鏡をみても、マナコが腐ってたら見えるモンも見えん」

ルースベネディクト著「菊と刀」353頁には、次のようにある。。
日本人は「恥を知らぬ自我」をどの程度に保存しているかを調べるために、
自分の顔を鏡に映してながめる。鏡は永遠の純潔さを映し出し、魂の奥底を映し出す。
日本人はこの目的のために、いつも肌身離さず鏡を持って歩く。

鏡を持ち歩くことはないが、目に入る鏡の前でふと立ち止まり。
身繕いをチェックしながら、責任を持たねばならぬ自分の顔を恐る恐る映し。
「コツコツ地道に、真っ当に生きてるか?」、問いかけることしばしば。

日本人は何時から、心の鏡を持つのを忘れてしまったのか?

<団塊のノーベル賞と理系博士>

いきなりのニュース速報に驚いたのは、何と言ってもノーベル賞受賞。
奇しくも仰るんですね、どちらのセンセも。

「物がない国は知恵と工夫を磨かなきゃイケナイし、そう言う人を育てなきゃ」とか。
「ラッキーだったけど、運じゃない。そのラッキーは、突然来るんじゃなくて。
一生懸命努力しなけりゃ、ラッキーは訪れない」とも。

何処かのセンセも、おっしゃってました。
「博士をとっても就職出来ない、食べて行けないから研究者も減るんだ。
政治家はそこを分かって手当てをしないと、このままじゃ、日本はダメになる」

医学部以外の博士をもっと手厚く処遇して、他国と知恵で勝負するしかない。
レアアース輸出刺し止めで、慌てたのはカンさんだけじゃなくアメリカも脱中国に走る。
これがホントなら、政治家の危機管理は最低だ。
医学部は医者に逃げる奥の手があるから、基礎系以外は後回しで良い。

「悪貨は、良貨を駆逐する」じゃないけれど、「安物は、コツコツ良品を駆逐する」だ。
中国の物作りも日本を見習って発展してきたし、バブルを見て学習したようだ。
バブルをゆっくり弾かせて、軟着陸で納めようと努力しているようだが国民性は如何か?

今回の受賞理由の「カップリング」というのは、凄いらしい。
現在使われている色んな物に応用されていて、画期的なんだそうだ。
中国に依存している物も、そのままとは言わないけれど工夫で何とかならないか。

グローバルに圧倒的シェアを持つ下町工場製品を見ても、日本は捨てたモンじゃない。
せめて赤い国に舐められないくらいのことは、博士を育成すれば出来るでしょ。
いくら真似っこ上手でも知恵や工夫は真似が出来ないし、追いつく前に引き離せる。

落ちこぼれ医学博士でもコツコツ知恵と工夫で、たまにおもろいモンが出来るんだから。
真面目な理系博士なら、もっと凄いことが出来るでしょ。

<団塊とナースのマルウエア>

「センセ、センセ。SOSッ」
「とうとう土左衛門か?」
「私は、今何処で仕事をしてる?んじゃなくて。真っ赤」

「ケツが?」
「お猿じゃありませんッ」
「確かにあんたのほっぺは真っ赤で、おてもやん。化粧、どうにかしなさい」

「んじゃなくて、パソコンの画面が。ナニやらの木馬って言いながら、真っ赤」
「それね、どこぞのアホがUSBでばっちいマルウエアを擦り付けたんやろ」
「なんたらウエアって。やっぱ保存用、タッパーウエアみたいな?」

「マルウエア」
「赤ん坊のおまる関係?」
「ウイルスッ!」

「んじゃ真っ赤は?」
「それって警告。赤がイヤなら、白ペンキでも塗る?あ、意味ワカラン。
んじゃ水でもかける?あ、それも意味ワカラン!」

「結果、どうすればフツーに?」
「シッコのついでに、治しちゃろ」
「手を洗ってから、オネガイしますね」

ちょいと手を洗って、ステーションのパソコン前に座る。
「あーらら、またこれや。どーせ、ネットで感染したんやろ」
「どうやったら、感染するんですウ」

「ネット通販とか、カタログとか。ウエストを、1/3の93cmに出来るサイト見た?
豆大福ダイエットとか、メタボ腹が4段腹に見える眼鏡とか注文したやろ?
そん時にアンケートで、どっかをクリックせんじゃった?ウソばっかの自己申告」

「”貴方は何処をどう見ても女優”なら、ダブルクリックでしょ。当然」
「んで、旦那が真夜中に、”妻は鬼嫁だ”をクリック」
「何処をどう見ると鬼嫁?」

「ナース妻による虐待対策サイトとか、ナース妻パワハラ被害亭主同盟サイトとかで。
奥さんを野壺に落としたいと思ったことがある?に、ハイ年中!のトリプルクリック」
「ウウウ、どう言う夫婦ですかッ!」

「マルウエア夫婦ッ!」と言い捨てる、午後ラウンド前。

<団塊の黄金週間報道(どれがふぇいく)>

そろそろ飽きてきたステイホームなのに、連休が始まって。
手に入れた電子印鑑フリーソフトが、学習する間も無く使えるようになって。
これじゃ残りの日々、残すところ100ページのデジイチ撮影超入門書だけ。

新聞見ていたら、「私は見た!」のトランプさん。
「武漢研究所から、コロナウイルス・コウモリ。フライアウエー」。
しかも「報復しちゃうよ、イエス・アイドゥ」って、どうなんよ。

習さんは、「そらアンタ、アメリカ兵が持ち込んだヤツあるよ」と逆襲。
「コウモリは食用で、実験道具じゃない。シェーシェー」と言ったかどうか?
フランスから、「コウモリが逃げてヤバイって言ったよ、コマンタレブー」の追い打ち。

何がフェイクで、どれがフェイクじゃ無いのか。
北朝鮮の将軍様が危篤?イヤイヤ、元気でテープカット。
コロナだけでカオスなのに、フェイクでゲップが出そう。

指折り数えて、待ちに待った黄金週間。
聴きたかったジャズCD6枚は、うっすらホコリをかぶってる。
本屋に行っても、新刊が少なく足が遠のく情け無さ。

昨日の山口は最高気温が28度と、トホホ夏日で1日8000歩弱の汗だく。
ボウタイを手入れして収納、ポロに白衣ズボンの季節かな?
病院のクールビズ通達に合わせようかと、衣替えを考える黄金週間の真ん中。

<団塊孫のジャズ>

1歳の誕生日を越える少し前より、よちよち歩きに付き合うのは良いのだが。
静寂の中で遊ぶのもなんだしと、BGMをお馴染みビルエバンスに決めた。
優しい感じの「ワルツフォーデビー」を、最も多く聞いた赤ん坊はウチの孫?

巡り巡る、妄想世界。
条件反射でエバンスをかけると、纏わり付いてくるようになり。
音楽教室に通うようになると、ジャズから教室で使ってるCDに取って代わる。
ジャズを廻しづらくなって、いつしか耳にタコみたいな子供用音楽専用になった。

JBLから流れるのは、くっきりはっきりリズムの優しい曲で。
リズム感があるけどマイペースな孫は、曲によって身振り手振りが加わって。
1ヶ月も付き合えば、ジジイでもある程度ついて行けるほどに孫の後を追って成長した。

別な部屋で昼寝を幸いに、半年ぶりのジャズを廻して読書。
空腹で目が覚めたのか、気づけばジジイの横に立っていて。
アップテンポのエバンスに、足をタップダンス風にステップ踏んでいる。

なかなかリズム感あるやんか!と、頬を緩めて眺めるジジイ。
音楽に言葉は要らないとは良く言ったモノで、国も年齢も関係ないんだと気づく。
こんな生活も残すところ1ヶ月を切って、その先に生まれる心の空白を埋めるのは何?

2年前の静寂に返るだけのことだけど、やはりちょっと違う。
ジャズは、終末の雨が降り出した夕暮れが似合うと思って居たけど。
ジジイがあぐらをかいた中に、孫がすっぽりはまって本を読んでやる習慣が出来て。
今まで聞き込んだエバンスは、孫の温もりを思い起こさせるジャズピアノに変貌した。

孫とジャズで妄想する、団塊。

<団塊医の論文は相棒次第>

「この間センセが言い出した、VREの院内伝搬防止スコアですけど」
「あ、あれね。どうせやるなら楽しくと思って、遊び心満載はやっぱアカンか?」
「イエ、そう言うワケじゃないですけど。あれって遊んだんですか?」

「遊び心ッつーか、ゲーム感覚っちゅーか。エンジョイしまくりみたいな。んで?」
「試しにやってみました、ゴジャゴジャ言われる前に」
「素敵な心がけやん。んで、貴方がお手伝い?」

「ハア、センセのお遊びにお付き合い(語尾上げで)」
「ゴジャゴジャ言わんから。ハイハイ、データは?あららー、けっこうイケてるやん」
「対象は56名で、センセのスコアでハイリスクが9名」

「良いね、良いね。ナンか良い雰囲気じゃん。絵に描いたような、まるで作ったような」
「んで、これを元に検査をして。その結果で、どうすれば?」
「陰性なら、3回連続で偽陰性が1/2の3乗。すなはち1/8の確率じゃね、計算上」

「立派なモンじゃないですか」
「立派って言うんなら、5%基準として4回と5回の中間。つーことは5回連続陰性でエエ」
「そこまでやりますか?」

「イヤ。費用対効果を考えて、フツーは3回連続にしとるな。京都の論文もそうじゃった。
イヤイヤ、しかしあんたら2人頑張るなー。先ずはこれをたたき台にして。142人に」
「入院患者さん全員にスコアリングするんですかアー」

「ビシビシ行きまっせ、今度は。野バラのムチで、ケツをピシピシ行っちゃうぞ!」
「センセに尻叩かれるより、自分で自分の尻叩きます。気持ちの問題ですけど」
「やっぱS?」

「多少は・・・んじゃなくて。取りあえず院内感染予防委員会で、お披露目して」
「んで、スコアを作ったワシを絶賛の嵐で褒めちぎる?」
「イエ、ゼンゼン。今後の方針を決める」

「あ、あのスコアやけど。近日中にバージョンアップしまーす。ヨロピクう」
「えー、未だ2週間経ってないのにイ」
「エエんでチュ。日々進化、朝令暮改で論文ネタになっちゃった。
悩むなー、また宇宙一の論文なワケね」

「そんなアホなことする人居ませんし、論文書く人も居ませんから。確かに宇宙一」
「君ら、ワシに対する尊敬の念が足らんのとちゃう?虎は死して皮残すって言うやろ。
しかるに、ワシは遊び心で論文残すワケ。あ、付き合わされる相棒は大変!ってか」

もう論文ネタはないやろと思ってたら、相棒のおかげで見っけ!の午後。

<狭了見の団塊は負けた気がしない>

トイレに行って同年齢の方を見つけると、終了で勝負をする。
見るからに年上と見て力んでも、先を越されて負けた気になる。
便器手前に水玉模様多発しているのを見ると、負けた気がしない。

ケーキ屋で物色していると、肘に誰ががぶつかって。
「あ、スイマセン」2mはありそうな若者を見上げて、負けた気になるが。
マスク「げほげほ」体弱々を見たから、負けた気がしない。

あのセンセに、お世話になったんです。凄く良いセンセ!」を聞いて。
世の中には良いセンセは山ほど居るから、たまには負けるよね!素直に思うが。
患者さんの旦那と私を比較され、じっちゃんを知ってるだけに負けた気がしない。

最近ハマっている、主人公がレストラン・シェフのドラマ。
グループ解散でいろいろ言われたり、「顔にシャープさが無くなったね」とか。
良い感じに齢を重ねたキムタクには、勝つ気がしないのが当たり前。

歳を重ねると了見が狭くなり負けた気がしない団塊の、午後。

<団塊と茶ラブ哲の学習>

計算上はMIHIセンセと同じ年頃であり、それなりにオヤジをしている。
このまま行くと人年齢換算で、追い越されて行くはずだ。
幼稚園すら行ったことがない割に日常生活の中で学習する、通勤途中の茶ラブ哲。

1:「まだやでエ」と言われると、MIHIセンセは何も食べるものを持って無いのを学習。
大きくシッポを振って近寄ってきても、この台詞を聞くと期待ハズレも知った。
クルッと背を向けて小屋へ撤収するときには、既にシッポはだらーっとしてる。

2:「ヒマか?」の声を聞く前に、靴音で「あー、MIHIセンセじゃ」と身構える。
朝の出勤時間は何もくれるはずがないから、シッポを3回振り回したら朝寝する。
MIHIセンセが昼から病院を脱走する時は、想定外に食べ物にありつくと涎が止まらない。

3:昨夜の食べ残し牛肉を目の前にすると、学習したことは消え失せてしまう。
「待て」も「お手」も「お代わり」も無く、もちろん「良しッ」も無い。
地面に奥前に肉を持つ手を舐めまくり、スキあらば手を噛まずに肉だけ奪う小技を持つ。

4:2つの食べ物を置かれたときは、ターゲットとMIHIセンセの意地悪で反応が変わる。
a)同じモノが2つ並んだときは、通常は近い方から攻める。
b)大きさが違うときは、大きい方を優先する
c)複数ならエンジョイ順位は、肉系・野菜系と来て最後に乾き物だ。

ここでMIHIセンセの意地悪が入ると、学習スピードは加速する。
2つの物が置かれて、こう言うときに限ってお手の回数が3倍になるのだが。
「良しッ」を待って、ゆっくり食べられるときは問題がないが。
1個をエンジョイしているときに、もう一つを隠す意地悪をされることがある。

暑くてボーッとしているときに、隠されて焦ることが2度続くと学習の成果は上がる。
冷静なときは次に食べる方を左足(手?)で押さえて、「盗ったら怒るよ、ワウッ」だ。
しばらくフツーにしていて突然食い物隠しに会うと、嗅覚能力を上げて探しまくる。

MIHIセンセは単純だから、大抵は手の中にあるわけで。
手の甲を2,3回鼻で突っつくと、「ホレ」でお許しが出るのだが。
ヒマなときは、なかなか一筋縄では許してくれない。

そう言う時は小さめに「ガルッ」とか言って、怒ったフリをして見せるのがコツ。
直ぐさま思いっきり手の甲を舐め上げると、「きっちゃなー」とか言って手の力が緩み。
自然に哲の前に隠したモノが落ちてくる技も、つい最近学習した。
こうして団塊の茶ラブ哲教育は、小技の応酬でますます成果を上げている。

<団塊の委員会お知らせ>

「この資料を、M委員会のメンバーに配ってね」
「ハイ。んでどなたでしたっけ?」
「んーと。R、G、Zのナースでしょ。んで、栄養科のQさんと。事務のFさんと」

「*病棟のナースは?」
「あ、んーと。んーと、あの人。んーと」
「名前、忘れたんですかア」

「バカ言いなさい、覚えてるけど。ど忘れ。ヒントは?」
「ファイナルアンサー?ニューヨークへ行きたいかアとか?」
「オーッ・・・んじゃなくて。面長、色白黒・・・グレー、背は130から160cm。どう?」

「それじゃ分かりませんよ、ゼンゼン。もっと特徴的なことは」
「趣味が、呪文関係読書と化け物映画鑑賞って言ってた様な」
「フツー過ぎますッ。フツーじゃないとこは?」

「夜中に首がニュルニュル伸びて、行灯の油を舐めるらしい。そう言う人」
「恐すぎでしょッ。んじゃ、目は?」
「2つ。鼻は1つで、口も」

「口が2つの方が、探しやすいですッ。もっと直ぐ分かる特徴うッ」
「鼻の右側に直径3mmのホクロ、周囲に剛毛が3本」
「だんだんリアルになってきましたね。その調子、んで?」

「見栄はって大げさに言うときは、ケツをボリボリ掻く癖」
「なんだ、Rさんじゃないですか。最初から、そう言ってもらった方が。
んで、あの短い首が夜中にニュルニュルう?うっそー、キャー」

「あ、そこんとこ。ワシの想像じゃけど、結構多いやろ。そういう感じイのスタッフ」
「ミョーな想像を入れないで下さいッ。それに、うちは化け物屋敷ですかッ」
「それに近いような、遠くないような・・・」

委員会のお知らせをゾンビニュースに変えたい、団塊の午後。

<団塊の恩は返す>

特にスポーツ系の人から良く聞く言葉で、気になることがある。
サッカーや野球選手は言うに及ばず、相撲力士まで「恩返しのつもりで頑張った」と。
それは年齢も国籍も関係なく、「これでやっと恩返しが出来ました」に違和感。

他のところじゃ滅多に出ない「恩」と言う言葉を、どう言う意味で使っている?
辞書を開くと「恩」は、「慈しみ」とか「めぐみ」とある。
英語では、〔受けた好意〕a favor や 〔恩義〕an obligationとある。

時々ヘンな日本語を喋る外人横綱の「恩」に、彼の国ではどうなってるのかなと思う。
ましてや、歴史に残る多くの哲人を排出した赤い国はどうなんだろうと。
この国は世知辛い昨今、「恩」とまでは行かなくても感謝の気持ちを忘れたか?

ルース・ベネディイクト著の「菊と刀」の中に、「恩」の英語置き換えは難しいと。
強いて言い換えるならば、「obligation」なのだそうで。
彼が日本人の「親の恩」を分析した結果、「日ごとの愛護と骨折り」とした。

彼の国では親への恩を忘れぬと言うことは、せいぜい親に親切を尽くす程度だとか。
最近驚くのが生きていれば186歳とか、別荘に行って30年帰って来ず行方知れずの親とか。

返さなくて良いけど、せめて今まで受けた色んな「恩」を忘れないで欲しいモノだ。
無人島に独りで住んでいるわけではないから、息をしても何かの恩恵を受けている。
タダで手に入ると有り難みが薄いけど、安全な空気・安全な水は誇るべきものらしい。

なによりも、銃で身を守らなくて良い安全な社会はこのままで居て欲しいと思う。
娘達が生まれたときもそうだったけど、初孫が生まれたときも思ったモノだ。
「この子らのためなら、命も惜しくない。僅かな見返りも、要らない」と。

生まれて来る子供や孫に、「これじゃ、まだ死ねん」と欲が深くなり続ける身勝手。
この国の色んな安全を子々孫々に繋げていかなければと、つくづく思う団塊ジジイ。

<団塊は真夏のドクターバッグ>

医局のアラスカ温度で冷え切った体を温めようと、通りかかった夏の午後外来。
ナースYの「キャー、何これ?」に、釣られて覗き込む私。

「バケツの水に映った、あんたの顔?ナルシストやなー、そんなにビビってからに。
寝起きのスッピン見た旦那、300年は寿命が縮むやろ。その分、あんた長生き」
「コラコラ、バケツの隣イ。この鞄ですッ、何処に自分の顔を見てビビるナルシスト?」

「ちょい変形してるけど、懐かしいなー。新宿で開業してた叔父さん、思い出すなー」
「あたしここで勤務して8年なるけど、使ってんの見たこと無いわ」
「んじゃ、9年以上ここにあったワケ?」
「算数の計算上では、恐らく12年(語尾上げで)」

「あのさ、これで遊んでエエ?」
「遊ぶって、押し売りごっこみたいな?はたまた、詐欺師の借金取りとか。
ま、まさかお医者さんごっこ?」

「あのさ、ワシって医者じゃったよな。たしか」
「ある意味、そういう言い方も出来る」
「んじゃなかったら?」

「怪しいオヤジ」
「ヘッヘッヘ。奥さん、エエぼけ茄子と土手カボチャ有りまっせ。3万円で如何でっしゃろ?
3トンの漬け物石、オマケしておきましょか」
「病院の裏で、独りで遊んでて下さいッ!」

と言うことで、先ずは固く絞った雑巾で汚れを拭き取ると結構イケてる。
一旦天日干しして、殺菌スプレーに殺虫スプレー咽せるほど吹き付けて。
バッグの口を締めて3時間、再度天日干しすればハンドクリームたっぷり。
余分なクリームはペーパータオルで拭き取って、乾いた布で仕上げ磨き。

「あのさ、ここまでが限界かなー」
「あらまっ、見違えるような。そこまで出来るんなら、センセもやれば人並み以下には?
あ、それよかこれをバザーに出しちゃおうかしら。事務に聞いてみよっと」

「コラあ、待った!ワシが、暇つぶしに愛情かけて手塩に掛けたバッグを」
「暇つぶしだけでしょッ」
「このバッグの価値のワカランヤツに、いくらで売るか知らんけど身売りしてエエんか」

「まあ、\1000かなー。古いけど、ヒマなセンセのおかげでちょっと復活したし」
「よっしゃ、ワシが買う。先ず、そのまんまじゃったら\1000として。見事復活で\5000。
ワシの手間賃\2000をさっ引くと、買値は\3000やね。それ以上は、あこぎな鬼畜生ッ」
「なにコーフンしてんですか、独りで。分かりました、事務に交渉して参ります\3000」
ということで、およそ50年前に往診に行く叔父を思い出させたバッグが我が家へ。

ドクターバッグを初めて見たのも、夏の暑い日の午後だった。
横川吸虫を発見した横川博士と若い頃に一緒に仕事をしたと、ことある毎に聞かされた。
酒もタバコもやらなかった真面目な叔父は、要請があれば気安くスクーター往診。
「ちょっと往診に行ってくるな」、後ろ姿が格好良く見えたドクターバッグの記憶。

<団塊のストライクゾーンに魔球>

「センセ、どっかにコロコロ転がしてくれる人いません?」
「ハナクソならコネコネだし、雷ならゴロゴロだし。なにをコロコロ?」
「あたしを、手のひらの上で」

「ムチャ言うたら、アカンで。あんたを手のひらでコロコロ出来るんは、ゾウか?
それとも、オラウータンの親分か?手が千畳敷のタヌキ(語尾上げで)」
「もうちょっとエエのは、ないんですか?」

「砂利の上でゴロゴロなら、道路工事のおじさんに頼んでみよか?
猫車じゃ乗り切らんから、ショベルカーかユンボでゴロゴロ・ゴンゴン」
「コロコロは例えですよ、そう言う心の大きな人」

「タイプは?ネコ顔とか、イタチ顔とか、ムササビ顔とか。大顔症短足(語尾上げで)」
「大きいのは顔じゃありませんッ、心ッ。顔はフツーで、オネガイします。超フツーで」
「フツーじゃない人には、フツーじゃない人が釣り合うやろ?」

「趾の水虫から、頭のてっぺんのフケまでフツーですッ!」
「んじゃ、年齢は3歳から121歳。超ワイドなストライクゾーン」
「保母さんとか宅老所の寮長候補じゃありませんッ!」

「んじゃ。40歳以上、39歳未満?」
「何処にそんな人が?」
「欲の深いやっちゃ、いい加減のところで手を打たんとアカンで。足打ってもエエ」

「まあ、40歳以上の落ち着いた方で。マックス、還暦かなア」
「おろ、ゾーンを広げたね。んでもエかった、ワシ外れて」
「何でセンセが、ストライクゾーンに入るんですかッ。ゼンゼン、ボールでしょッ!」

「ワシのは魔球やで、ストライクゾーンに入ると凄い。相手によってサクッと消える。
んだから、あんたを見ると消える。ワシのあだ名は、魔球王星雄豚」
「巨漢の星?」

幼稚園以来、野球音痴の午後。

<団塊の論文推敲はホラーで>

医局のドアが開くのと、だみ声が鳴り響く時間差2.3秒。
「んじゃ、今日はヨロピクう。なんですかこの雄叫びは、ホラー映画?」
「人呼んで、オペラ。んで、ある時は神の声。はたまた、仏の屁とも言う」

「誰が言う?仏の屁」
「ワシが・・・と、ジャブをかましておいて」
「んで、えらくサブいけど。やっぱ、仏の屁は冷えるんですか?こんなに」

「確かに外気温度より5度は低い設定が、ワシ好みイ。そう言う人なんよ、ワシって」
「どんないい加減な人か知りませんけど、ホラー館みたいな中でナニしてんですウ」
「論文の推敲。今年は豊作で、2つ書いたし。締め切りまで、あと3週間切ったし」

「ゾンビにヘソはあるか?とか、ドラキュラは型の違う血イ吸っても大丈夫かとか?」
「ワシは、ホラー専門じゃないけど。ドラキュラの血液型って、やっぱD?頭文字で」
「んで、推敲」

「そうなんよ、推敲。これで6回目ナンじゃけど、ためらい傷風にチョコチョコ赤ペン」
「思い切って、バッサリとか?」
「グジグジいじくるのが楽しいんよ。3,4回やるとこれって2回目に戻った?みたいな」

「んじゃ、無駄なあがき?」
「そうとも言う、完璧主義のなせるわざとも言う」
「後のは、MIHIセンセ見てるとあり得ない。なんせ、テキトー・お気楽主義者」

「医局がホラー館みたいにサブイと、出るんよ」
「お岩さん?ネコ娘?ろくろ首?それとも、センセの友達ゴキ?」

「ヒュードロドロ、菜種油はマルピンがエエで!んじゃなくてエ、良いアイディア。
魔物や。はたまた、悪魔が来たりて笛を吹くピーヒャララと」
「キレやすい悪魔じゃ?眼鏡メタボで秋でも短パン履いてそうな、真冬でも汗っかきの」

団塊のホラー医局は、鳥肌やらアイディアが出まくって推敲しまくり。

<団塊のわが家と病棟の人口密度>

子供達が巣立って50坪足らずの家に、夫婦二人だけで生活し始めて長い。
この連休に一時的に、我が家の人口密度が一気に普段の3倍になった。
連休末に一人減り、あと2ヶ月もしないうちに娘と2人の孫が喧噪を残して帰ってゆく。

一抹の寂しさもあり、安堵の気持ちもある。
瞬間風速3倍の人口密度との落差は、何か遊び道具を増やさねばと思わせる。
念願だったパソコン組み立ては、プラモ世代なら大丈夫と本2冊で学習した。

それでもと、パソコン屋さんに聞けば。
「メモリとかを自分で代えたことは?あ、無い。あ、うちでやってもらった!
簡単に見えて、ピンを刺し間違えやすいし。それやっちゃうと、使えないし」

「もし正しく刺しても動かなかったら、ゴミ?」
「イエ、組み立て代いただければ。んでも、無理しない方が・・・」
「ナニを使うかじゃなくて、ナニに使うかってとこですか?」で撤収。

そんなことを思い出しながら、電話で呼ばれた病棟へ。
「ヘッ、試験退院?」
「ハイ、オヤジも98ですし。これが最後かと」

「エかったねー、あれだけ家がエエって言ってたモンなー。あ、泣かんでエエ。ウウウ」
「んじゃ、連れて帰りますから」
「んじゃ、元気でね。今ならなんとか、家でOKじゃから」

「ウウウウ」
「あ、泣かんでエエ。ウウウ、握手しよ」
「センセ、元気でな」
病状説明だけかと思っていたのに、いきなりの退院。

たった1人分の人口密度が下がっただけで隙間風がするっと吹いた、午後。

<飽きた推敲に団塊の新ネタ>

流石に赤い国の政治家も、青い眼に「それって、やり過ぎやで」で冷めた?
いきなりトーンダウンは、あのイチャモン報復をどうケリつける?みたいな。
新ネタか次のイチャモンを見つけたか、飽きたか、放電しすぎて充電中か。

かの船長「あっちからぶつけてきた」にビデオを見せたら、それフェイクって?
ヒーローがいきなり激しいバッシング食らって、村八分なんて直ぐ想像がつく。
やたら熱しやすいお国柄、生きてはいられないかも知れんと思うとVサインは悲しい。

「日本は、誠実かつ実務的な行動を!」は裏を返せば、弱気な証拠。
「テヘッ、引っ込み付かんから。そっちから、スマンのーって言わんね?
そうしてもらえると、すっごい助かるんや。突き上げも外せるし」なのか?

「こっちから折れたら、舐められるんちゃいますか!赤い国に弱気じゃアカン。
チャンスを活かして、言うべきことはちゃんと言わねば。言うのは、カンさんやで」。

そんな赤い国とのいざこざに飽きた頃、投稿締め切りは無関係に迫ってきた。
6回目の推敲ともなると、流石に赤ペンの動く量が減ってきて。
その上に緊張感も減ってくるから、だらけてるのが推敲する姿勢にも現れる。
増えるのはアクビと、眠気覚ましのがぶ飲みコーヒーでトイレ往復回数。

新ネタは論文が仕上がる前から脳みそにあるから、早く新しいオモチャで遊びたくて。
ウジウジ推敲するより、新ネタのプロットをいじくる方が楽しいのは当たり前。

次はなるべく統計と距離を置くモノで行きたいと思いつつ、このままじゃまた忘れる。
必要は発明の母、使わなきゃならないように追い込むのが統計の父。

一般的応用が利く院内感染スコアを模索して、端からネーミングだけは決まった。
これって、形から入ると自画自賛しやすい癖かも?

「ゆPHaI(Prophylaxis against Hospital-acquired Infections)スコア:仮名」は、
お友達の某内科教授と共同製作のアイディアで。これだけでワクワクするのは、私だけ?
PHaI=Φまで書き換えたら賛同が得られず、泣く泣く断念したけどまだ未練が・・・。

注;最初の「ゆ」は病院名の頭の字で、色んなスコアにつけまくって遊んでます。

<団塊は資本論読むぞ!>

相変わらず赤い国は勝手気ままで、挙げた手を下ろすタイミングを計りかねている。
「弱気を見せた政治家は失脚する」鉄則に習って、相手が折れるまで強弱イチャモン続け。
「しゃーないやっちゃ。今日はこの辺にしたろ!」がオチなら、吉本新喜劇じゃん。

わが国の赤い政党は、ダンマリを決め込んでいる。赤い国に、呆れて声も出ないか。
師匠の影響で学生時代から1ミリも変わることなく右翼的脳みそが出来上がった。
昨今の状況を見ていると、やっぱ赤い国は信用ナランと思うのは私だけ?

何処かで、「赤い主義の国は、やっぱオカシイ」って言ってる?
ホントに言ってたら、アサヒ系マスメディアが言わないはずがないし。
ネット世界に溢れる情報だから、聞こえてこないはずがネーべし。

こんな時ナンも言えない赤い党は、資本論を学習し直しなさい。
昔取った杵柄で、読み始める?専門用語の難易度は、我が業界と似たり寄ったり。
そう思った昨今で、今日は創立記念日でオフだから本屋に走ろう。

マルクスで挫折しケインズで諦めた我が青春に、多少の無念さはあっても悔いは無い。
公認会計士で良いかも?から医者の方が楽かも?の切り替えは、我ながら速かった。
済学より医学に向いているかも?で、いきなり方向転換を加えておよそ40年が経った。

その間に医療界を取り巻く経済は、市場原理で推し進めたらイカンのにやっと気付く。
気付かずにやり放題で、調子に乗って色んなモンぶっ壊して消えた純ちゃん。
政権交代したって、ウソが上手な政党からバレバレの政党に変わったとしか思えない。

カン一派の経済オンチ弱腰が続けば、赤い国に舐められてしまうのは必定。
「東京って、京が付くから。北の京の端っこで、赤い国の領土じゃね」
これが白日夢なら良いけど、油断召されるな!旅行と見せて、市場調査してない?

定年後に医療経済で経済博士を狙って、手始めに現代経済を資本論で読み解く?
脳みそをかき混ぜて先読み練習の手段に、詰め将棋を使おう思ったけどままならぬ。
業界の経済学は心理学と政治学で味付けられ、カオスの味になって行くのかも?

むかし習った「恐慌は30年周期でやってくる」は、今の時代は通用しない?
弾けたバブル以降、真綿で首を絞める泥沼恐慌が続いていると思うのは独断的か?
その謎を解き傾向と対策を練るのに、「資本論」が使い物になるか?

と言うことで、解説本と原作(もちろん訳本で)を手に入れようと思った朝。

<寿命が64ビットの団塊>

最近の超高齢者は行方知れずが多いようで、とうとう現れた戸籍上200歳。
このまま行けば日本人の寿命は、計算し直さなきゃならなくなる。
その点で我がパソコンの寿命ははっきりしていて、動かなくなったら寿命とん死。
それでもしつこくいじくり廻して、突っつき廻しても動かないのを確認するのも寿命。

「なんだかなー、かったるくてチンタラだなー。メモリ足らんのかなー」
たった512MBしかないところへ持って来て、ビデオでちょい取られ貧弱極まりない。
と言うことで、短期入院256MB1枚引きはがして1GB奢っちゃって帰還した我がマシン。

スパゲッティ症候群風にぶら下がったコードを、汗を滴らせながら繋ぐ。
スイッチオンにはいつもと変わりない・・・と思ったら、かったるい起動は変わらず。
ワイアレスキーボードがヘン、ハードディスクのワンコイン健康診断が災いした?

システムエラーチェックと修復・デフラグ・レジストリ掃除を終え。
ワイアレスキーボードのドライバをネットから拾ってきて、インストールし直す。
再起動で結構サクサク動き始める老年PCは、CPUはそのままだけど若年寄になった?

&待つ間に雑誌パラパラ、フンフン64ビットならメモリは青天井に増やせる!凄いやん。
んで、OS起動時間は32ビットとほぼ同じ・・・ダメじゃん!意味無いジャン!
64ビット専用ソフトなら大きな画像開くのに12秒速くなったからどうだっての?

ベンチマークテストをやってしもうた!んで、7−8%速くなってる!
よそ見してる間に作業が終わってて、速くなったのに気づかなかったりして。
クダランことのために金かけたCPU使って、メモリを奢って。金をドブに捨てたいワケね。

2年以上古いプリンターやスキャナーは64ビット用ドライバが無いから捨てろって!
ジョーダンじゃないね、7年物の周辺器機はクイクイ動くのにあっちイケは如何なもの。
エコじゃないじゃん、マータイさんがテーブルひっくり返して暴れちゃうよ。ホントに。

結局、Win2000ベースのXPはなかなか丈夫なことが証明されたようなモンで。
だるいVISTAはタコだったのを、商売っ気だしてWin7で化粧直しした64ビットが未熟モン。
上位互換性の鉄則を維持出来なかったのが、はっきり言えば敗因だから。

今買う64ビットマシンは、何だかナー。OSがXPなら、メモリは2GBもあれば充分じゃん。安いじゃん、速度は殆ど変わらんじゃん、ボールペン代わりなら十分じゃん。

我がPCの寿命は¥6480で3年以上伸ばして、日本のPC寿命がちょいと延びた計算。
ジジイのPCはここに健在、何処かの国みたいに行方不明の不明朗計算じゃありません。
64ビットマシン並にじわじわ伸びると良いなー!の、団塊の寿命。

<団塊の死ぬ自由>

「ちょ、ちょっと待ってくれんね」
「イヤ。ワシはいつ死んでもエエんじゃ、思い残すことはないッ」
「んでも入院中に自由に死なれたら、ワシも困る」

「飯は要らん、便が出る時ケツが痛いから。痛いと死ぬ」
「飯食べんのは自由じゃけど、自分の家でミイラになってくれん」
「そら寂しい」

「んでも、ワシを道連れに死んでもろうても困る。ワシ、もっと孫と遊びたい」
「んじゃ、センセの目の前でワシだけ死ぬ」
「ワシの目の前でPさんが死にかかったら、助けようと思うで。一応」

「要らん事、センでエエ」
「んじゃ、家じゃね。死ぬのは」
「んでも、足が弱って。歩いちゃ帰れん」

「タクシー自分で呼ぶか、這って帰るかじゃね」
「そんな冷たいこと」
「んじゃ、飯くらい食いなさいよ。ご馳走とは言えんけど、腹の足しには」

「ケツが・・・」
「ミイラになるか、ケツの痛みか。どっちかやね」
「2,3日考えさせてもろうてエエか?」

「イカン、病院じゃな。家で考えるんならエエけど」
「それじゃ結論が出たんと一緒じゃろ?一人娘なのに、ちいとも来ん。毎日来ん」
「甘えちゃイカンで、娘は嫁に出したときから頼っちゃイケン。
遠くの娘より近所の他人の方が頼りになるって、言うやろ?」

「誰が?」
「ワシが。んで、飯」
「食わん」

「んじゃ、大サービスでタクシー呼んだろ。ハイ、お大事に」
「何時から、センセはそんなに冷とうなったんじゃ」
「んじゃから、死ぬのは自由やで。ワシの見えんところで、頼むな」

「困った」
「困ったときは、先ず飯じゃ。腹が減っては、ミイラになれん」
「そう言うモンか?困った」

「そう言うモンじゃ」
「んじゃ、今日中にどうするか決めたらエエで」の1時間後。
「センセ、MIHIマジックですねー。Pさん」ヘラヘラ笑いつつ婦長さん。

「ワシは、ある時はマジシャン。はたまた、ある時はダンサー。時に、医者。
その実体は3つの顔を持つピアニストだったら、カッコエエのになー。
憧れるな−、セロニアス・モンク」

「得意じゃないですか、モンク」
「その文句じゃないッ。”沈黙のピアニズム”59頁のセロニアス・モンク。
ローラン・ド・ウィルドって、哲学科卒ジャズプレイヤーが書いた」

「センセ、内容が難しすぎて混乱してません?」
「カオスね。”モンクはたった一人ですでにリズムセクションになっていた”なんてな」
「意味分かりませんけど」
「すなはち、独りでメロディのピアノとドラムとベースの3つ。エエなー、憧れるなー」

3日後に娘さんに経過を説明して、順調に回復したPさんはお世話付きアパート入所決定。
迎えに来られた娘さんが「父はどうなんでしょう?」に、「どんな顔に見えます?」。
私のグダグダ説明より、あの笑顔が十分な説明になってた午後。

参考;セロニアス・モンク、沈黙のピアニズム、ローラン・ド・ウィルド著、音楽之友社

<団塊の塊と単品>

「どうして、あんな風なんですかねー」
「まあ、習慣も違えば食い物も違うし。そうすりゃ、考え方も変わるんやろ」
「んでも、熱くなりすぎと違いますウ」

「TVカメラの前だけ、キレてる風で。撮影が終わったら、ほなお疲れエーなんてな。
んで、キレてる風に見せるんも大変や。回鍋肉食うて、肉まん土産に帰ろかもよ」
「そうですかねー、しかし」

「繰り返し街宣車なんかを映しまくったら、日本じゃ街宣車がバス代わり?なんて。
地下鉄も新幹線も、ゼーンブ街宣車型してて。怒鳴りまくってると思うやろなー。
声のトーンは別として、極端な右じゃ無いけど左よりマシ」

「そんなモンですかねー、実際」
「戦時中のアメリカ人が、日本人の考え方や行動がようワカランって。研究したらしい」
「日本人くらい分かりやすい国民は、他にないでしょ?」

「それが違うんじゃ。と、ルース・ベネディクトさんが言うとるんや」
「あ、ナンか有名な野球選手でしょ」
「そら、ベーブルース。”菊と刀”って本を書いた人」

「んで。ベネ何たらさんが、何て?」
「奥が深いんやけど。”ある国民がそれを通して生活を眺めるレンズは、
他の国民が用いるレンズとは異なっている”ってな」

「毒ギョウザ国の方と、個人的お付き合いはないけど。一人と塊じゃ、考えが変わる?」
「そんなモンですかねー。でも、大きな顔して言えないけど。横断歩道で言うでしょ。
みんなで渡れば怖くない」

「大昔、夫婦で上海。ツアーガイドの馬さんに聞いた、中国に人は全員共産党?」
「失笑でしょ」
「あい」

「んでも、いきなり1日に5人入院があるとやな。3つの病棟で、うちが一番多いとか。
今日は入浴日で忙しいのにとか、MIHIセンセのメタボ腹が気に入らんとか言うやろ?
んで、別々に交渉したらなーんも言わん。ハイどうぞ!みたいな」

「確かに、直接交渉。直談判なら、しゃーないわなんて」
「そんで病棟へ来てみたら、なんじゃかんじゃ文句を言うやろ?」
「あたしは言いませんよ、1回しか」

「同じデブでも、脂肪細胞の大きさがデカイんと数が多いの違いみたいな」
「ナゼ故、あたしの下腹部に熱視線」
「あんたの脂身は、塊としても単品としても凄いと感心してるワケ」

「フンッ。大きなイチャモンの塊、小さな了見の単品」
「塊はイカン」

出来たら毒ギョウザの国の方とは、塊を相手にお付き合いしたくないかも?の午後。
でも一見温厚なトップの会見は、ビョーキかと思うほど言葉を長く空け、やたら句切って。
一言一言噛みしめて喋った世界と自国民に向けたメッセージは、何だったんだろう?

搾取されっぱなしじゃタマランと、塊になって交渉する技を使い始める赤い国の方。
今まで世界の工場とか言って、美味しい汁を吸いまくった資本主義国も黙っちゃいない。
塊で交渉する術を身につけていない、更に安あがり国へ工場を分散する危機管理。
10年後には弾けるだろう中国バブルに、わが国も脱中国を本気で考えなければイカン。

多少は端切れが良いけど、我が国の政治家の中身の薄い内容はナニ?
粛々は遅々だし、毅然は玉虫色だし。かと思うと大事な証拠品で遊んじゃう、検察エース。
エライ人たちのレンズは曇って歪んでいるのでは?と、自分の眼鏡を拭く昨今。

参考:「菊と刀」ルース・ベネディクト著、講談社学術文庫  26ページ

<団塊の後出しジャンケン>

「な、ナニい。沖縄を返せって?ナニを惚けたことを言うとんじゃッ」
朝刊の小さな囲み記事を見て、思わず吹き出しつつ呆れてそのまま絶句したのは私だけ?
かの赤い国出身のどこぞの教授(日本の大学)も、そうだそうだ!なんだと。

アメリカに大きな代償を支払って返して貰った時に、「あ、それうちのじゃからネ。
日の本の国より余計に払うかんね、うちへ返してえね」言えば多少は反論しやすい。

美味しそうだったり都合が良さそうな気がすると、自分のモンだの主張は恥知らず。
武士道とはほど遠い仕業に、なるべくクールでいようと思ううちに反論もなく消えた。
そう思っていたらまた火が強くなったり、伏線を張った動きをしたり騒がしい。

力で押さえつけられてる鬱憤を向けるベクトルは、上手く誘導しなけりゃイケナイ。
積もり積もった不満は火の粉となり降りかかるから、扇風機で他所へ追いやるしかない。
その動きをはっきり見せておかないと、火は消えないばかりか勢力を増すだけだ。

と思っていたら、とうとう痺れを切らしてトップが吠えた赤い国。
確かに「粛々」なんて言ってる状況じゃないから、先手必勝。
とっとと作業を済ませないのも大問題で、経過と展望を示さないからこじれる。
トップじゃなくても苛立つのは当たり前で、ある意味で吠えて見せるのも当然かも。

扇風機で押し返すより、自分に水をかけて冷やす方がパワーを必要としない「粛々」?
そのうち飽きて、新しい矛先を見つけるかどちらかに軍配が上がるまで静観するか?
毒ギョウザしかり、毒オモチャしかり、コピー天国しかり、パクリまくりしかり。

ここで冷静になってみると、日の本の国の経済が異常急成長した頃と同じ?
あれほど品格がないとは言わないけど、国民性の違いがその差なのか?
メディアの取り上げ方にも疑問に溢れ、確かめなければイケナイことが多い。

星条旗の国の傘下で(ホントに傘になってるのかは疑問だけど)、軍事費を節約できた。
生き馬の目を抜く荒野に、棒きれ1本で彷徨っているのに気づかない国民でエエの?
ひたすら知恵と体力で色んなモン作ったり、パクって改良は得意になった。
最初は安くて色々問題があっても、改善の嵐がブランド品にのし上げた。

自分の身を守るために銃を持って良い国と、安全はタダで手に入る国の違いもある。
ましてや、生活の快適さより先ず生活の安全を優先しなければならなかった国もある。
その国は「財産は盗まれることがあっても、知恵は盗まれない」で、ずらりノーベル賞。

我国子供達の学力は「ゆとり」に毒され、赤い国の子供達に追い越されたのは当たり前。
まあ学力と言うより、スピーディな情報処理能力と言うべきもので瞬発力かも知れないが。

赤い国も、「後出しジャンケン」をそろそろ卒業出来ないだろうかと思うのは奢り?
それには政治システムに問題がありそうだが、自分の足下を見れば大きな事は言えない。
これって、騙されているのに気付かずにノホホンと生きている国民の戯言なの?

<団塊は歳重了見狭勝気分(まけたきがしない)>

トイレに行って同年齢の方を見つけると、終了で勝負をするが。
見るからに年上と見て力んでも、先を越されて負けた気になるが。
便器手前に水玉模様多発しているのを見ると、負けた気がしない。

ケーキ屋で物色していると、肘に誰ががぶつかって。
「あ、スイマセン」2mはありそうな若者を見上げて、負けた気になるが。
マスク「げほげほ」体弱々を見たから、負けた気がしない。

「あのセンセに、お世話になったんです。凄く良いセンセ!」を聞いて。
世の中には良いセンセは山ほど居るから、たまには負けるよね!素直に思うが。
患者さんの旦那と私を比較され、じっちゃんを知ってるだけに負けた気がしない。

最近ハマっている、主人公がレストラン・シェフのドラマ。
グループ解散でいろいろ言われたり、「顔にシャープさが無くなったね」とか。
良い感じに齢を重ねたキムタクには、勝つ気がしないのが当たり前。

歳を重ねると了見が狭くなり負けた気がしない、午後。

<団塊の50周年(ふしめ)>

年末休日前夜、夜更かしTV。
陽水は50周年なんだそうで、今まで発表した曲のメドレー。
知らず知らず、夫婦で口ずさみながらエンジョイして小一時間。

翌日のTV欄に、「ドラえもん50周年」の番組を発見。
ポケットから取り出すツールは、科学発達の先が見えてる様。
早速録画スタンバイして、夏休みに孫が来たら見せようと。

何事も50周年と言うか半世紀、節目なんでしょうね。
自分を振り返って50周年、その節目は前の病院で。
副院長と老人保健施設の施設長兼任で、お出かけレクは毎回参加。

週2回の外来は1日瞬間風速80人オーバーに、自分で凄いと思った。
訪問診療が月に25人前後で、主任ナース1人給料分診療報酬も凄いと思った。
ゼロからスタートした透析患者さんの診療が、およそ40人も凄くない(語尾上げで)。

先日亡くなった理事長の肝煎で、スポーツ医学にも手を染め。
自分の専門はナニ?で、山口県で最後の老健研究大会会長はオマケ。
全国老健協会広報担当で、自作病院ホームページを紹介も楽しいオマケ。

陶器様胆嚢の症例報告を皮切りに透析関連まで、ジャンル問わず。
お気楽論文を書いてる中で、粋がって学会発表もしたモンで。
老年医学会地方会、済生学会総会、県の高齢者に関するシンポ。

50周年にはあと6年、徹底したコツコツ地道でお気楽適当の医師人生。
50周年で医者を辞めるか、余裕を残して辞めるか。思案のしどころ人生。
50周年の節目の人生を、人として医師としてどう迎えるか?に悩む人生。
50周年では無いけれど、1新聞と2雑誌でエッセイ投稿小遣いゲット人生。

節目までボーッと生きない!様にしようと思う、新年。
皆様、明けましておめでとうございます。

<団塊が踊る微熱と背部痛に動悸>

「センセ、5分後にスタッフが来てもエエでしょ?」
「フグフガ」
「はあ?何言ってんですか、顎が外れたんです?それとも入れ歯が」

「ウグッ。アホ言え、パン囓ってたんじゃ。あんたに殺される寸前じゃった」
「大丈夫、その点はアリバイがあります。力一杯、喉にパンを詰め放題OKみたいな」
「んじゃ、そう言うことで。ワシ、図書室に消える」

「コラコラ、背中の鈍痛・動悸・微熱。スタッフ若い。さてナンでしょう?」
「そういうこと言われると、そそるなー、気になるな−、診たいなー」
「でしょでしょ、心電図とレントゲン2方向はオーダー済み」

「なかなか良い展開じゃね、ミネラルウオーターで押し込んだら行くわ」
「そう来なくっちゃ、お銚子乗りドクター」
「踊るドクター(語尾上げで)」

「あ、検査から帰ってきました」
「ラジャッ」ですっ飛んで行く外来。
「んで、どうなんよ?」
「動悸はしますけど、痛みは大分治まったみたいです」

「咳とか大きい息した時に、痛みが強くならない?あ、ならない。風邪引いてない?
あ、元気じゃった。こんなの初めて?あ、3回目。旦那の暴力は?あ、独身。
しかも、彼氏いない歴26年。そっちの方が、深刻な問題じゃろ?」

「ウッセ、フンッ」
「誰かに殴られたことは?あ、殴られたら3倍返しでボコボコ!そっちも問題
空手初段は、お手柔らかにね。診察してんだかんね、セクハラとちゃいます。ホント。
ゼッタイに殴らないでね、オネガイね。ボク体弱いんだから、キムタク似だけど」

「ウッセ、フンッ」
「んで、37.1度。心膜摩擦音無し、心雑音正常。胸膜摩擦音無し、呼吸音正常。
悩むなー、なんだろなー。甲状腺腫大無し、眼球突出無し。悩むナー、なんだろなー」

「センセ心電図は、如何でした?」
「ローボル(低電位)無し。ST変化も不整脈なし。某医療ドラマも、そうじゃった」
「ナンですか、それ」

「先週のヤツは放映24分でブルガダ症候群やん!って、ワシが先にファイヤーしたんよ。
台詞で、心電図異常なしって言うんやで。国際学会で発表するほどの、循環器チームが。
ナンか見落としとらんか?ホルター心電図は?胸部誘導のrsrは?なんちってな」

「センセ、TVお好きなんですね」
「ハイとっても、子供の頃はTV小僧。いまやTVジジイ」
「んで、ボクの診断は?」

「レントゲンで、心外膜と心臓の間に水が溜まってないしイ。胸膜炎も、肺炎もないしイ。
ワカランッ。んでも、一応抜くぞ血イの検査。末梢血とCRP。念のためのT3、T4。
 血糖検査は糖尿病性神経障害の神経痛?で、ファイヤーッ」

「んじゃ、分かったんですか?春の検診で血糖は53でしたけど、ファイヤー?」
「ワカランけど、血糖のファイヤーは止めて。消火、鎮火。んじゃ、結果は3日後に」
「ナンか、不安なような安心なような」

「んで今、痛みは?」
「センセと話してるうちに、痛みが消えたような・・・」
「ビミョーな症状がファイヤー前に治っちゃったら、ドラマ的に踊れんでしょッ」
「んじゃ、結果が出る2日後に。お世話になります。ドラマ的には、来週」

ビミョーな症状に踊れない団塊医の、午後。

<団塊医師指名料>

「あのさ、A歯科って担当医を指名出来るんやで。受付に書いてあった」
「エかったですねー、うちは指名出来なくて」
「コラコラ、意味分かりませんけど」

「そのシステムじゃったら、センセの外来は閑古鳥とかスズメやカラスが啼きまくり」
「そんなに賑わっちゃうワケね、ワシの外来だけ」
「目覚めなさいッ!」

「んで、指名料無しなんて。凄いやろ」
「ホストクラブじゃあるまいし、指名料なんて」
「ワシじゃったら、指名料\120でエエ。缶コーヒー1本分」

「\300は払ってあげないと」
「指名料っちゃ、ワシが客っつーか患者さんに出すモンか?」
「センセが取ったら、詐欺か脅しでしょッ」

「\120缶コーヒー1本分で、詐欺師とか言われたくないねー」
「センセが詐欺師って言われるには、お金は要りませんけどね。
それに、スーパーの安売りなら缶コーヒー1本\68ですよ。PBなら\38」

「プライベートブランド価格まで、来ちゃったワケね」
「ハイ、格安のヤツでオネガイします」
「枯れ木も山の賑わいって言うしイ、まっエエか。外来の時は、小銭を用意しよッと」

その後は団塊医の外来で、ポチ袋に指名料を入れて・・・配らないッ!

<団塊は寝る前ブッダ>

「センセ。昼休み、どこへ隠れてたんですウ。探したのに」
「腹筋と背筋の筋トレアンドストレッチ、のち戦略会議と哲学してた」
「ナンか、走りながら難しい本読んでるみたいな」

「そういう言い方もある」
「他にどう言う言い方が?」
「アラスカ温度の図書室で、筋トレして読書」

「んでも、タブンそう思って電話しましたよ図書室」
「確かに鳴った、しつこく2分37秒も」
「ナンで出ないかなー」

「あの時間にかかる相手不明の電話は、ろくなモンじゃないから」
「酷ーい」
「ワシ限定ならケータイが鳴る。誰でもエくて、アホなヤツが出る不幸の電話」

「その辺りは敏感じゃないですか、宇宙一99.8%鈍感なのに」
「ビミョーな数字が気に入ったから、今度は電話しないでね昼休みの図書室」
「今度は、55分ならしっぱなしにするかもオ」

「受話器に、座布団3枚乗せたろ」
「それ、酷くない(語尾上げで)」
「どっちが酷いんじゃ。どうせ、ろくなことさせんのやろ」

「確かに、湿布の処方箋1枚だけ。あたしの」
「雑巾に唾でもペペッとして、貼り付けとったら治るやろ。湿布が無駄」
「またまた、酷ーい」

「あのさ、これ。論文ネタのヒントを貰ったお礼。一気に2つも出来そう」
「あらら、ペン5本と新書ですか。寝る前に読むブッダ・・・。
あたしに出家しろとか言うんじゃ?」

「それエエな、頭にメチルアルコールぶっかけて着火したろ。出家より、手っ取り早い」
「ちいとも良くないッ!」
「寝る前に読むとエエらしいから、出家の前に」

「出家はしませんッ。んで、読まれて如何でした?何か変わりました、センセは」
「完全爆睡で学習したから、寝ないと出てこん。爆睡念仏、ナムグーグーみたいな」
「んじゃ、ゼンゼン役に立たないじゃないですかッ」

3千年後に仏と呼ばれる予感がする団塊の、午後。

<団塊の遠方より来たる友と論文談話>

メールで打ち合わせていたより2時間も早く到着した、遠来の友。
遠くの家族より近くの悪友と地で行く関係で、担当させていただいている身内。
検査データや経過を説明して、ウーロン啜りながら話が弾む。

高校の同級生が我が師匠に治療を受けていることが飛び出し、ちょい緊張。
趣味の格闘技である論文書きに話が至り、耳に挟む学生担当になったこと。
近頃の学生の書く文章は、主語も述語もミョーだと言うことになった。
研修医はまともな論文が書けないのが当たり前で、指導に苦労をしているらしい。

北極温度の医局でパラパラしていた、マインドマップ本を見せて。
「今日書き上げた論文は、このマインドマップソフトと、KJ方で楽勝やで」ご披露すれば。
「ナンやそれ?」に、調子に乗り解説して気づいてないフリの相手は内科教授でも同級生。

いきなり解説。例えばテーマが4つとして、4人で論文執筆チームを作り協同作業。
論文の方法や結果はフツーの脳みそを持っていれば、アホでも書けるが考案はひねりが肝腎。
ここはトップネームの人の作業
1;マインドマップで、メインテーマから大まかに複数のブランチを出す。
2;各ブランチの下に、とにかく順不同でよいから項目を可能な限り書き並べる
3;検索でかき集めた文献から、自分にとって有利な部分を書き出す
番号を振った文献サマリーは、順不同で1つの用紙に書き連ねる

ここは4人で共同作業
4;新聞紙(エコです)の真ん中に、赤のマジックで目立つようにメインテーマを書く
5;放射線状に赤のマジックでブランチを、間を開けて書く
6;サマリー毎に短冊に切ったものを、ブランチの下に取りあえず貼り付けて。
内容と論理が適当であるかどうかを4人で討論し修正

ここはトップネームになる人の作業
7;討論の結果ブランチに貼り付ける順序が決まったら、最初に振った番号を手直し
8;引用雑誌名を切り取っては「引用文献」の下に順に並べる
9;これで考案の概要が出来上がるから、後は推敲に入り論文を仕上げる
10;1週間熟成させて読み直し、推敲する

この作業を4回やれば、4つの論文が出来上がる手はず。
最後にオーベンが赤ペン入れて、再度書き直す。
「こんな感じで、研修医論文執筆指導するとオモロイやん。
なんぼアホでも同じことを4回繰り返せば、脳みそに染みつくやろ?」
試用目的で、マインドマップソフトをUSBメモリにコピーして進呈。

静寂が戻った医局でウーロン啜りながら、医学サスペンスを仕上げた団塊。

<ニューロン絡まる団塊>

「んで、センセ。今はナニしてんですウ」
「あんたの目の前に立ってるけど、本物のキムタクとちゃうよ」
「信じられんわ、ホント。どう言う脳みそしてるんですか?」

「こう、シワシワで。顕微鏡でみると、神経細胞からニュルーっとニューロンが」
「遠回りしたり、ひねくれてグイグイ曲がったり、頭蓋骨からはみ出したり」
「ワシって。直球でモノを言うほど、思考回路が単純やないから」

「んで、趣味の研究はやってるんです?」
「あ、そっち系ね。いまは、栄養評価とQOL評価がリンクするかって言うヤツかな?
ほぼ仕上がってんやけど、こねくり回してるんよ。文句が言えん人が対象でな」

「んじゃ対象はセンセ以外みんなじゃないですか、文句が言えん人なら。んで?」
「んで、VRE院内伝搬防止作戦のヤツに取りかかってるんよ。更にその次はすんごい。
踊るドクターの向こうを張って、医学サスペンスみたいなストーリーなんやけど」

「ま、まさかパクって。跳ねるドクターとか、スキップドクターとか?」
「アホ言え、そんな単純パクリは良心が許してもご先祖が許さんッ!」
「んじゃ?」

「踊らにゃソンソン・ドクター。これじゃったら、ナニをパクったかワカランやろ?」
「まんまじゃないですかッ。どう言う思考回路、どう言うニューロン」
「星形の細胞からイトミミズみたいなんが、ニュルーっ」

「そうとう絡まってるでしょうね、きっと。グチャグチャ」
「そらもうあんた、カーリーヘアなみ」
「無理やり引っ張って絡まってるのを解こうとすると、ブチって切れるんだ」

「そうそう、特に会議でアホなこと言うヤツが居ると。ブチブチブチッてな」
「そらまた、はた迷惑な」
「ワシのニューロンには、他のヤツにはた迷惑じゃッ!つー回線はないんよね」

 絡まったニューロンを解くにはアホな会話をするのが一番の、午後。

<団塊は院長じゃない>

「あ、ヒマなヤツみっけ。ハイハイ、気管カニューレ交換交換。カモナ・ベイベ」
「センセ、あたしを見たらいつもヒマヒマって。院長センセは、お一人で済ませるのに」
「ワシ、院長じゃないしイ。ゴッドハンドでもないしイ」

「んじゃ、何ハンド?」
「強いて言えば、先が2つに割れたブヒハンド。ジャンケンはゼッタイ、グーに負け」
「あー、聞くんじゃなかった。とっと済ませましょうねー」

「あーい」
「しかしセンセ、暑いですねー。エアコン、新しいのに買い換えましょうよ。
センセ、買ってエ」

「アホ言え、自分の家でもないのに買えるかッ!院長でもない」
「ハイハイ、そうだったですわねー。言ったあたしがバカだった」
「そうそう。超バカだった、アホだった」

「Dさんの輸血は明日の11時でよろしかったですウ?んで、センセが針刺す?」
「んにゃ、刺さない人」
「んじゃ、何する人?」

「柱の陰から、針刺すナースを恐々見る人」
「まるで、ナースのストーカーじゃないですかア」
「ワシ、院長じゃないし」

「院長センセは、そこまではしませんッ!」
「ワシって。院長センセじゃないから、ワカラン」
「始めて10分は、側で付いてなくちゃイケナイから・・・。センセは?」

「側に付いてるナースを見張る人、ワシ院長じゃないし」
「さっきから、院長じゃないを連発するけど。院長と同じものって何かあるんですウ?」
「間違いなく還暦を過ぎたジジイだっちゅーことかな。他に何かあるかね?
あ、タブンY染色体を持ってること。まさか、Yのどっかが欠けてたりして。キャハ」

「チクっちゃろ」
「大丈夫、その程度じゃキレません。院長センセは」
「そこがセンセと違うんだ、キレ易さが」

鑑別点がはっきりした院長じゃ無い団塊の、午後。

<新旧でも変わらない団塊の35分>
ギャグも腰椎も滑っちゃって、腰イテテの昨今。
昼休みが大きく様変わりして、定番作業も板に付いてきた35分のひととき。
菓子パンにミネラルウオーターなら、3分で充分だが。

腹筋・背筋筋トレ+背筋ストレッチが各6分に加えて1分の深呼吸で合計19分。
18分はビジネス書+20分はミステリー。どちらも速読の甲斐あって合わせて120頁。
こんな時間が週3日で、2冊平均の読書という塩梅になる。

「ヘッ、3分はどうしたかって?」
勤務時間開始までの3分は、脳みそを臨床論文執筆のために保存してあって。
この脳みそ空白時間にプロットしたり、ツカミ充分なタイトルに思いを巡らせたり。

エアコン最強低温設定の図書室だから、飛び出す頃にはソファーに霜が。
んなはずないけど空気は真冬なみで、調べ物に入ってきたスタッフは「ヒャー」。
「マグロ専用の冷凍庫じゃないですかッ!」
「サブかったら、エアコン暖房にする?あ、しない!エアコン切るだけで充分!」

このところ「マインドマップ戦略入門」+「ブラックペアン」がお友達。
色んな経営に関するフレームワークを、病院に置き換えて読み進め。
クールダウンでサスペンスパラパラでも、今回はちょいと違ったストーリイ。

やたら血の気の多い外科系医局のお話しで、ふと思い出す我が医局の頃。
最初の頃の患者さんは無傷でも、何かすると血を見ることの多い循環器の世界。
サスペンスほどけんか腰ではないけど、必要以上に声高になるのに時間は要らない。

プレゼンの研修医が立ち往生しても、寝たふりをするオーベン(指導医)。
それでも火の粉がオーベンに及べば話は別で、いきなり反撃をするだけじゃ済まない。
追求した医者の部下がプレゼンでもしようものなら、目を潤ませるまで手を緩めない。

そうでなくても研修医離れの医局じゃ、そんな懐かしい景色は見ることはないだろう。
それじゃ下のモンは成長しない、出れば打つ。また延び始めたら叩く。
こうして得た経験は、優しく手取り足取りの指導じゃ身につかんね。フンッ!

「コラッ、MIHIッ。病棟へいま直ぐ来いッ!」激怒レベルは鼻声レベルで分かる師匠。
オーベンから離れて30年近く経っても鮮やかに蘇る悪夢、うたた寝の昼休み。
耐震構造に問題があったようで、旧館は新館へ様変わり。

建て替えられたも昼休み休憩35分は変わらない、午後。

<団塊の円高と手数>

ブレインストーミングのために、詰め将棋を始めて2ヶ月。3手詰めは、ヘンッ!超楽勝。
5手詰めから始まって、7手詰めに入ったときは倍難しくなってムムム手強い。
7手詰めをようやく卒業して、9手詰めに入った途端に倍どころの難しさじゃ。ウヒッ!

手増えると累乗で難しくなるワケで、3手詰めと比べて8倍難易度が上がる計算。
ウンウン唸りながら、ながらTVニュースショーは円高で実感の湧かない大騒ぎ。
円高で1円上がったのと2円上がったのでは、倍になる計算では解決しないようだ。

ここぞとばかり「どうすれば円高が解消出来るか」で、取っ替え引っ替えの評論家。
どれも納得出来そうでもあり、胡散臭さプンプンでもあり。あれこれ手数が披露されて。
「んでもなー、ホンマに出来るんやろか。それやって、効果があるんかいな」

心太なら一方から押せば、反対側から出るのは分かりやすい。(あんまり好きじゃ)
今の円高に一方から押しても途中に色んな大きさの穴が空いてて、そこからも出ちゃう。
あちこち手当をせずに1箇所だけ(日本だけ)じゃ、大して効果は上がらない。

経済学部経営学科を中退してなけりゃ、今頃円高に苦しむ立場だったかも?
先を読んで動こうと思っても、カゲロウのように儚い総理の命じゃ先が読めない昨今。
その点今はお気楽で、することさえちゃんとしていれば趣味の論文書きでも良い。

締め切りを勘違いして残すところ1ヶ月少々となり、焦りつつ赤鉛筆で2度目の推敲。
考案を色んな方向から眺めては書き散らし、手数だけが増えるような気がしてならない。
詰め将棋5手レベルの考案なら良かったのに!と力が入り、赤鉛筆の芯が折れた団塊。

<孫と筆ツルン団塊>

「まいどッ!」
「儲かりまっか?」
「ボチボチでんな」

「しかし、あんた宮島出身じゃったよな?」
「そらもう、イケイケえカープですよってに。あららー、センセのデスクトップ。
もしかしてお孫さん?可愛いじゃないですか、愛くるしいじゃないですか」

「上の娘の方の」
「もしかして、25年くらい前にお会いした。お人形みたいな女の子の?」
「ワシに似て、赤い靴履いてた・・・誰が異人さんに連れて行かれるんじゃッ」

「センセ、センセ。このクソ暑いのに、疲れません?」
そのお子さんなら、やっぱこう来るでしょうねー。目の中に入れても痛くない?」
「グイグイ入れちゃっても、ゼンゼン気持ちエエ」

「ちょっとアブナイ言い方ですけど、しかし正味可愛いっすねー」
「あのね、もう3回言ってエエよ。んで、オタクの売りはPね。3万人処方するネ」
「ヤですよ、ジョーダンばっか。Pは競争相手のッ!」

「ブイブイ宣伝してね。孫を誉められると、筆がツルンツルン滑っちゃって」
「なんか、信用ナランなー」
「他所の病院に行って言うたらアカンよ。MIHIセンセントこのお孫さんは、可愛いとか。
何処へ入れても痛くないとか言ってくれちゃうと、嫉妬するジジイドクター居るやろ」

「そら1人や2人は」
「あのね、そこで100人や200人って言わないと筆が滑らんワケ。ツルンツルン」
「んじゃ、思い切って1000人や2000人に奮発しておきましょ」

「思い切ってくれたねー、エエよ。ツルンツルンだよ」
「んじゃ、失礼しまーす。来月来るのが、すっごい楽しみになってきましたわ」
「あのさ。ワシ、筆じゃ処方箋を書かんのやけど。ツルンツルンとPは書けん」

「Pは競争相手のッ!端からセンセの言うこと信じてませんッ!」
「んでも、孫の肌はツルンツルンや。一緒にお風呂に入ると、分かっちゃうツルツルン」
「ハイハイ。他所で点滴っすかねー。ウウウ、気分悪い。熱中MIHIセンセ症っすかねー」

「お大事に」を言い忘れた団塊医の、午後。

<団塊医の論文は相棒次第>

「この間センセが言い出した、VREの院内伝搬防止スコアですけど」
「あ、あれね。どうせやるなら楽しくと思って、遊び心満載はやっぱアカンか?」
「イエ、そう言うワケじゃないですけど。あれって遊んだんですか?」

「遊び心ッつーか、ゲーム感覚っちゅーか。エンジョイしまくりみたいな。んで?」
「試しにやってみました、ゴジャゴジャ言われる前に。第9病棟で」
「素敵な心がけやん。んで、貴方がお手伝い?」

「ハア、センセのお遊びにお付き合い(語尾上げで)」
「ゴジャゴジャ言わんから。ハイハイ、データは?あららー、けっこうイケてるやん」
「対象は56名で、センセのスコアでハイリスクが9名」

「良いね、良いね。ナンか良い雰囲気じゃん。絵に描いたような、まるで作ったような」
「んで、これを元に検査をして。その結果で、どうすれば?」
「陰性なら、3回連続で偽陰性が1/2の3乗。すなはち1/8の確率じゃね、計算上」

「立派なモンじゃないですか」
「立派って言うんなら、5%基準として4回と5回の中間。つーことは5回連続陰性でエエ」
「そこまでやりますか?」

「イヤ。費用対効果を考えて、フツーは3回連続にしとるな。京都の論文もそうじゃった。
イヤイヤ、しかしあんたら2人頑張るなー。先ずはこれをたたき台にして。142人に」
「入院患者さん全員にスコアリングするんですかアー」

「ビシビシ行きまっせ、今度は。ムチで尻をピシピシ行っちゃいますウ」
「センセに尻叩かれるより、自分で自分の尻叩きます。気持ちの問題ですけど」
「やっぱS?」

「多少は・・・んじゃなくて。取りあえず院内感染予防委員会で、お披露目」
「んで、スコアを作ったワシを絶賛の嵐で褒めちぎる?」
「イエ、ゼンゼン。今後の方針を決めるだけ」

「あ、あのスコアやけど。近日中にバージョンアップしまーす。ヨロピクう」
「えー、未だ2週間経ってないのにイ」
「日々進化、朝令暮改で論文ネタになっちゃった。悩むなー、また宇宙一の論文なワケ」

「そんなアホなことする人居ませんし、論文書く人も居ませんから。確かに宇宙一」
「君ら、ワシに対する尊敬の念が足らんのとちゃう?虎は死して皮残すって言うやろ。
しかるに、ワシは遊び心で論文残すワケ。あ、付き合わされる相棒は大変!ってか」

団塊医の論文は相棒次第の、午後。

<鍼師Hと愚者の団塊医>

「あ、どうもー。Hでえーす。Qさんの鍼灸、延長で宜しかったでしょうか?」
「結構エエみたいよ。んじゃ、延長で。しかしあんた、エエ商売しとるなー」
「な、ナンですか。いきなり」

「イヤ。鍼も灸も大して元手は要らんし、ぼったくりバーなみじゃね」
「人聞きの悪いこと言わんで下さいよ、これでも努力してるんだから。
日夜、学習DVDみながら工夫に工夫を重ね。患者さんのために、一心不乱」

「アホ言え、ナニが学習DVDじゃ。この間、弟がこぼしとったで。
兄貴に貸したエッチDVDが、3ヶ月も帰らんって。あっち系は、しつこいって」
「センセも見たいんですか?やっぱ男じゃから、あっち系」

「アホ言え、ワシ忙しいんよ論文で」
「やっぱ、あっち系の論文?ウヘッ、ボクよりベースケじゃないですか」
「アホ言うな、臨床研究の論文じゃッ」

「しかし、センセは凄い。しかもヒマたっぷりあるのも凄い、他には居ませんね」
「あんたに誉められても、ちいとも嬉しくない」
「けなされるより誉められた方が、気持ちがエエでしょ」

「ワシが昨日読んだ本にあったんや。”寝る前に読むブッダの言葉”って言うんやけど。
”称賛してくれる愚者と、非難してくれる賢者とでは、愚者の称賛よりも、
賢者の発する非難の方がすぐれている。ウダーナヴァルガ25−23”スンゲーやろ」

「んじゃ、待って下さいね。センセがボクに向かって、エエ商売してるって誉めた?
つーことは、センセが愚者でボク賢者?それじゃ、MIHIセンセに失礼でしょッ」
「電話切ってエエ?Qさんの延長無しで」

「じょ、ジョーダン言わんで下さいよ」
「ワシは、ちいともあんたを誉めてない。そんなことがワカランヤツの鍼灸は、ヤバイ。
とってもデンジャラスや、針金削って鍼作っとるんちゃうか」

「んなアホなことしてませんよ」
「あんたなら、きっと出来る。その点、誉めて使わそう  by 賢者の医師。
んで、あんたは愚者で決まり」

「まさか、ボクがセンセを誉めたワケですかア?」
「アホ鍼師Hと賢者の医師と言うことで、Qさんの延長OKね」
「ナンか納得いかないけど、失礼しまーす」

「鍼師Hと賢者の医師って、ナンか聞いたこと有るような。映画で。
愚者の非難の場合は、ブッダさんはなんて仰るんでしょうね」

電話を切った途端呟くナースZに絶句する、午後。

<団塊が関西系で、悪かったなッ>

「それはちゃんと、綺麗にはげるでしょッ!」
「誰が綺麗なハゲじゃッ!ウグイスの糞で、磨いたろかッ」
「んでも、ガムテープのノリがガラスに残ってるでしょ」

「あ、そっち系ね」
「ナニ、ハゲに敏感になってんですかア。ハゲしく敏感に」
「誰が鈍感ハゲ、ボーッとしとるんは頭蓋骨の中身。外側の髪の毛は関係ないッ。
・・・あ、酷く敏感な件の話ね」

「ホント。MIHIセンセはちょっと振ると、独りでよー遊ぶこと。
関西風のノリですわねー。んで、来週の木曜日往診に行かれますね?」
「行けたら、行くわ」

「んじゃ、13:15出発でオネガイします」
「それってオカシイやろ、行かんかも知れんのに」
「行けたら行くって、言うたやないですか!」

「関西系はそういう場合、気持ち的には行かんってことや」
「んじゃ、往診に行くは?」
「往診、行きまっせかな?」

「んじゃ、往診どうしようかなーは?」
「強いて言わせてもらえりゃ、行きたいような行きたくないような」
「んじゃ、ゼッタイ行かないは?」

「イ・カ・ンッ!味噌汁で顔洗って出直さんかいッ!!かな」
「んじゃ・・・」
「たまにはあんたからボケ入れなきゃ、おもろないで」

「あたしって上品だからア、ゼッタイ言えませんわ。ノリ突っ込みボケなんて、とても」
「あんたは国民の半分を敵に回すつもりやな、下品なヤツはかかってこいッ!みたいな」
「んなオーバーな」

「真夏のオーバーは暑いッ!」
「ワケワカランッ突っ込みですこと、これが関西系ですね?お下品じゃ」
「下品で悪かったな、関西系で悪かったなッ!」

讃岐弁をベースに、京都はんなり語・東京江戸っ子弁・流れ流れて仙台東北弁・広島弁。
複雑に入り組んだ言語を操るMIHIセンセは、はたして関西系と言えるのか?悩む団塊。

<団塊と喋る目>

「ナニ、ワシにガン飛ばしてるんや。一発、丁半勝負でも行くか?」
「野球バクチでもしますか?受けて立ちますわよ」
「ワシの文句のある目エをしてるやろ、三日月タヌキ目で言うとる」

「こらこら、んじゃなくてエ。センセの処方オカシイでしょッ」
「そんなに笑えるモンなら、三段腹震わせて笑ってみん?」
「んじゃないでしょッ!カルテは1から2で、3が無くて4と5」

「3を外すのがマニアックやろ?」
「そう言う意味じゃなくて。この処方箋は、1,2,3,5じゃないですかア」
「気の迷い、それとも目の錯覚、はたまた幻覚かせん妄?その実体はババ眼」

「んまっ、失礼千万この上なし」
「他にもあるでよ、ただのインネン。見逃せ、3と4」
「ちゃんと見て下さいよ、ちゃんと」

「そう言うことは、小さい小さい。んだから、鼻タレ小僧の通信簿はアヒルの行列」
「要らんこと言わないで下さいッ、人が聞いたら信じるでしょッ!」
「こう言っちゃなんじゃけど、ワシはウソと他人の誉め言葉は言うたことがないッ」
と言うことで、カルテを書き換えさせられてラウンドへ。

「ヤダ、センセったらア。あたしを見つめる目は、ナゼ故ノリカ似みたいな。そんな目」
「ワシ赤内障になりそうな予感。んじゃねーべ、邪魔ナンよ。邪魔邪魔」
「そう言いながら、ナゼ故ノリカ。みたいな」

「スマンけど、ノリカとシャウカステンから離れてくれん。レントゲン、スケッチ中」
「キャー。ヤダ、カルテに落書きかと」
「アホ言え、カルテに落書きする医者が居るか?」

「少なくとも1人は居る!みたいな目で喋ってんの、分かりますウ」
「分かりたくないッ!」

失語症の患者さんを回診しながら、喋る目を理解するには修行が足りない午後。

<団塊医の医者と患者の言い方>

「おっはよ、元気じゃッた?」
「元気ならこんなとこに来ん、と言うといて。わし好みのナースは・・・と」
「アカンよ、セクハラは」

「センセ、人聞きの悪いことを言うモンじゃない」
「ナニ言ってんの、Gさんはいつも下世話なあっちのこと言うじゃろ。看護婦さんに」
「80を越えると、物忘れが激しうなって。何を言うたか、誰を誉めたか」

「誰にエッチなことを言うたか?じゃないん」
「エッチって言われても、ナンのことやら」
「シモの話、いわゆるシモネタのことよ」

「そういう言い方もある」
「イヤ、それしかない」
「ハイ、お大事に。センセの将来を見るような、午前で最後の患者さん」ナースG。

イライラして、割ってはいるナースP。
「バカ言わないで、往診に行ってこようっと」
「センセ、あと10年現役で居ってもらわにゃイケン」

在宅療養中で、家族に好きなこと言いまくりHさん。
「まあ、10年は仕事が出来そうじゃね。あとは、ぐったりまったり」
「10年以内には、四角い箱へ入れてもろうて」
「Zさん、同郷じゃから知っとるやろ。四国は丸い棺桶で、土葬じゃろ?」

「バカ言いなさんな、そんなことされたら虫のエサになるのが精一杯じゃろ。
そんなんイヤヤで、綺麗さっぱり焼却炉行き」
「熱くないやろか?」

「アホ言いなさんな、死んだら熱いも冷たいもないで。矢でも鉄砲でも持ってこいッ」
「そういう言い方もあるか」
「そういう言い方しかないで」

医者と患者では言い方が違うんだか同じなんだかの、団塊医。

<団塊論文はマインドマップとオペラ>

「キャー、センセ。この異様な雰囲気は、いったい何を?」
「フッフッフッ、悪魔払いの儀式やで。シッシッ」
「なんでこのあたしが」

「払ってんのがワシで、あとはあんたしかオランやろ。従ってあんたが悪の怨霊」
「なんで悪魔の親玉みたいなセンセに、悪魔払いされなきゃいけないんですウ」
「CD変えなきゃ」

「んで、何してんです?」
「休日当直の日にすることと言えば、悪魔払いか論文執筆やろ。やっぱ」
「んで、異様なBGMなワケですね」

「エエんでチュ、ノリノリなんだかんね。すこぶる」
「やっぱ、北極関係の論文?」
「イヤ、栄養状態とQOLは相関するか?ってヤツ。寝たきり、経管栄養患者さんで」

「やっぱ秘薬を使うとか、ミョーなお祈りするとか、悪魔のK魔術を使うとか?」
「もういい加減、悪魔から離れてね」
「んでも、その論文の関係で。あたし医局に入った途端に鳥肌が」

「ホウホウ、かなり魔力があるなこの論文。エコエコ、アザアザ・・・んじゃねーべ」
「あららー、ナニ考えてンですかッ!このエアコン設定温度は悪魔的24度とは」
「ワシの頭脳はフルスロットルで廻すと、加熱して火が出るんよ。ボーボー」

「んで、このディスプレー。ナンですか?回線図みたいな」
「よー気がついてくれた、ワシ凝ってんのよ。これに。マインドマップってんじゃけど」
「マップって、地図みたいな?回路図みたいな?」

「そうそう、それそれ。脳みその思考回路図みたいなカンジで。
これを描くソフトをバーゲンで買ったんよ、¥990。んで関連本を1冊、\1600。
読破に3日、ソフトをインストールして使い方を覚えるのに3時間」

「思考回路がヘンじゃないですウ。そこまでするくらいなら、白い紙にペンで」
「それじゃ、ツマランやろ。形から入りたいワシとしては」
「お好きになさいませ。色々サブくて、足の先から頭の先まで凍りそう」

「身も心も懐もサブいんやろ、んでほっぺたがシモヤケ?」
「これは顔の脂身ですッ」
「それを何とかする方法を、このマインドマップで」

「結構ですッ」
「BGMは、やっぱオペラやで」
「それも結構ですッ」

マインドマップとオペラで、考察はノリノリな午後。

<団塊はプチサマフェスの人気モン>

「センセ、Q施設のミニ夏祭り。センセの患者さんが一番多いから。分かるでしょッ」
「あのさ今からドーナッツ囓って、ストレッチと筋トレ・・・あ、意味無い。行け!」
「分かればエエんです、枯れ木も山の賑わいって言うでしょ」

「ワシって、枯れ木なワケね」
「そう言う見方もある」
「キムタク似の枯れ木で、オネガイしますね」

「ゴジャゴジャ」プツッと切れた(切った)電話で、ゴー。
「あー、MIHIセンセじゃあー。いらっしゃいませエ、イラハイラハイ、ずずっと奥へ」
「あー、綿飴じゃん。かき氷じゃん、たい焼きじゃん。んでもって、たこ焼きじゃん」

「しかし、センセ。葬式には似合わんけど、お祭りにはホント似合うわー」
「あ、そうかいそうかい。そう来なくっちゃイケネエ。てやんでイ、江戸っ子だぜイ」
「タヌキ男は、先ずは駆けつけ3杯」

「コラコラ、タヌキじゃなくて讃岐だって。シラン人が聞いたら、ブラピ似と思うやろ。
それに麦茶を3杯も、一気に飲めるかってんだい。ジョーダンはたいがいに。
あ、ボクに?この綿菓子を?もうちょっと大きい方が、凄く嬉しかったりして」

「センセ、それ。あたし摘んでも?」車椅子Dさん。
「エエよ、ガシッと摘んでね」
「センセが囓ったのここね?んじゃ、あたしもおなじとこを」

若い頃に居酒屋をやっていたらしいDさんは、昔取った杵柄を発揮しまくり。
MIHIセンセのぽっちゃり手の甲を、綿飴の棒を握っていない左手がスリスリ。

「ハイ、ご返杯」
隠し持っていたもう1本の綿飴を、MIHIセンセの口に突っ込む。
「あらまっ、MIHIセンセにそこまで出来るのはセンセの奥様とDさんぐらいよ」

驚くナースのお偉いさんを尻目に、
「結婚以来、ここまでされたことは・・・」
「んで、お茶は何処から飲みました?あ、ここから。んじゃあたしも同じところから」

「これがお茶じゃなく酒だったら、赤提灯の会話じゃね」
「ハイ、綿菓子出来ましたアー。誰か欲しい人オー」
「ハーイ」思いっきり手を挙げるMIHIセンセ。

「あら、さっきあげませんでした?」の認知症Gさん。
「ハイ、まだ」
「そうですかア・・・さっき」

「センセ、Gさん覚えてましたね。いつも物忘れがハゲシイのに」
「短期記憶障害とは無縁なんよ、人気モンは」
割り箸を咥え3回目を待ちながら、綿飴製造器を覗き込む私。

「あら、あなたまだでした?」もう一人認知症のDさん。
「ハイ、今からです。オネガイしますね」
「そうでしたっけ」もDさん。
「そうですよ、そうに違いない。きっとそうでしょ、私忘れましたけど」

ミニ夏祭りの時間がゆったりと流れる、夏祭り人気モンの昼休み。
ラウンド帰りに出会うナースVから声がかかる。
「センセ、ミニ夏祭り。あ、行った。けっこう」

「ちゃんと行って、あんたの代理で言うたで。ナゼ故客用スリッパ裏が汚い?って」
「ちょ、ちょっと。それじゃあたしが文句を言うたみたいじゃないですか。
 止めて下さいよ、濡れ衣着せるのは」

「夏の人気モンは、人が嫌がることは裏で言うても表じゃ言わんのよ」
「あー、やな性格。んで、誰に言いました?」
「一番べっぴんさんに」

「エエーッ、誰やろ。それって。そんな人って居りました?あたし以上が」
「あー。自分より美人は居らんって、はっきり言うたね!」
「それは事実ですけど、ホントのことを言うと角が立つ」

「あー。またワシ言うたろ、QのスタッフはナースVよりアホバッカって」
「暑苦しいッ!」
あんまり暑いと、色々暑気払いを考える夏。

団塊は、プチサマフェスの人気モン。

<団塊の真夏のドクターバッグ>

医局のアラスカ温度で冷え切った体を温めようと、通りかかった午後の外来。
「キャー、何これ?」に、思わず覗き込む私。

「バケツの水に映った、あんたの顔?ナルシストやなー、そんなにビビってからに。
寝起きのスッピン見た旦那、300年は寿命が縮むやろ。その分、あんた長生き」
「コラコラ、バケツの隣イ。この鞄ですッ、何処に自分の顔を見てビビるナルシスト?」

「ちょい変形してるけど、懐かしいなー。新宿で開業してた叔父さん、思い出すなー」
「あたしここで勤務して8年なるけど、使ってんの見たこと無いわ」
「んじゃ、9年以上ここにあったワケ?」
「算数の計算上では、恐らく12年(語尾上げで)」

「あのさ、これで遊んでエエ?」
「遊ぶって、押し売りごっこみたいな?はたまた、詐欺師の借金取りとか。
ま、まさかお医者さんごっこ?」

「あのさ、ワシって医者じゃったよな。たしか」
「ある意味、そういう言い方も出来る」
「んじゃなかったら?」

「怪しいオヤジ」
「ヘッヘッヘ。奥さん、エエ茄子とカボチャ有りまっせ。3万円で如何でっしゃろ?
3トンの漬け物石、オマケしておきましょか」
「病院の裏で、独りで遊んでて下さいッ!」

と言うことで、先ずは固く絞った雑巾で汚れを拭き取ると結構イケてる。
一旦天日干しして、殺菌スプレーに殺虫スプレー咽せるほど吹き付けて。
バッグの口を締めて3時間、再度天日干しすればハンドクリームたっぷり。
余分なクリームはペーパータオルで拭き取って、乾いた布で仕上げ磨き。

「あのさ、ここまでが限界かなー」
「あらまっ、見違えるような。そこまで出来るんなら、センセもやれば人並み以下には?
あ、それよかこれをバザーに出しちゃおうかしら。事務に聞いてみよっと」

「コラあ、待った!キムタク似のワシが、暇つぶしに愛情かけて手塩に掛けたバッグを」
「合ってんのは、暇つぶしだけでしょッ」
「このバッグの価値のワカランヤツに、いくらで売るか知らんけど身売りしてエエんか」

「まあ、\1000かなー。古いけど、ヒマなセンセのおかげでちょっと復活したし」
「よっしゃ、ワシが買う。先ず、そのまんまじゃったら\1000として。見事復活で\5000。
ワシの手間賃\2000をさっ引くと、買値は\3000やね。それ以上は、あこぎな鬼畜生ッ」
「なにコーフンしてんですか、独りで。分かりました、事務に交渉して参ります\3000」
ということで、およそ50年前に往診に行く叔父を思い出させたバッグが我が家へ。

あのバッグを初めて見たのも、夏の暑い日の午後だった。
横川吸虫を発見した横川博士と若い頃に一緒に仕事をしたと、しょっちゅう聞かされた。
酒もタバコもやらなかった真面目な叔父は、スクーターで要請があれば気安く往診。
「ちょっと往診に行ってくるな」、後ろ姿がやたら格好良く見えた暑い記憶。

<団塊はプチサマフェスの人気モン>

「センセ、Q施設のミニ夏祭り。センセの患者さんが一番多いんだから。分かるでしょッ」
「あのさ今からドーナッツ囓って、ストレッチと筋トレ・・・あ、意味無い。行け!」
「分かればエエんです、枯れ木も山の賑わいって言うでしょ」

「ワシって、枯れ木なワケね」
「そう言う見方もある」
「キムタク似の枯れ木で、オネガイしますね」

「ゴジャゴジャ」プツッと切れた(切った)電話で、ゴー。
「あー、MIHIセンセじゃあー。いらっしゃいませエ、イラハイラハイ、ずずっと奥へ」
「あー、綿飴じゃん。かき氷じゃん、たい焼きじゃん。んでもって、たこ焼きじゃん」

「しかし、センセ。葬式には似合わんけど、お祭りにはホント似合うわー」
「あ、そうかいそうかい。そう来なくっちゃイケネエ。てやんでイ、江戸っ子だぜイ」
「タヌキ男は、先ずは駆けつけ3杯」

「コラコラ、タヌキじゃなくて讃岐だって。シラン人が聞いたら、ブラピ似と思うやろ。
それに麦茶を3杯も、一気に飲めるかってんだい。ジョーダンはたいがいに。
あ、ボクに?この綿菓子を?もうちょっと大きい方が、凄く嬉しかったりして」

「センセ、それ。あたし摘んでも?」
「エエよ、ガシッと摘んでね」
「センセが囓ったのここね?んじゃ、あたしもおなじとこを」

若い頃に居酒屋をやっていたらしいDさんは、昔取った杵柄を発揮しまくり。
MIHIセンセのぽっちゃり手の甲を、綿飴の棒を握っていない左手がスリスリ。

「ハイ、ご返杯」
隠し持っていたもう1本の綿飴を、MIHIセンセの口に突っ込む。
「あらまっ、MIHIセンセにそこまで出来るのはセンセの奥様とDさんぐらいよ」

驚くナースのお偉いさんを尻目に、
「結婚以来、ここまでされたことは・・・」
「んで、お茶は何処から飲みました?あ、ここから。んじゃあたしも同じところから」

「これがお茶じゃなく酒だったら、赤提灯の会話じゃね」
「ハイ、綿菓子出来ましたアー。誰か欲しい人オー」
「ハーイ」思いっきり手を挙げるMIHIセンセ。

「あら、さっきあげませんでした?」の認知症Dさん。
「ハイ、まだ」
「そうですかア・・・さっき」

「センセ、Gさん覚えてましたね。いつも物忘れがハゲシイのに」
「短期記憶障害とは無縁なんよ、人気モンは」
割り箸を咥え3回目を待ちながら、綿飴製造器を覗き込む。

「あら、あなたまだでした?」
「ハイ、今からです。オネガイしますね」
「そうでしたっけ」
「そうですよ、そうに違いない。きっとそうでしょ、私忘れましたけど」

ミニ夏祭りの時間がゆったりと流れる、夏祭り人気モンの昼休み。
ラウンド帰りに出会うナースVから声がかかる。
「センセ、ミニ夏祭り。あ、言った。けっこう」

「ちゃんと言うたで。ナースVがカンカン、ナゼ故あんな汚いスリッパ裏って」
「ちょ、ちょっと。それじゃあたしが文句を言うたみたいじゃないですか。
止めて下さいよ、濡れ衣着せるのは。何でセンセの口から」

「夏の人気モンは、人が聞いて嫌がることは裏で言うても表じゃ言わんのよ」
「あー、やな性格。んで、誰に言いました?」
「一番べっぴんさんに」

「エエーッ、誰やろ。それって。そんな人居りましたア。あたし以上が」
「あー。自分より美人は居らんって、はっきり言うたね!」
「それは事実ですけど、ホントのことを言うと角が立つ」

「あー。またワシ言うたろ、QのスタッフはナースVよりアホバッカって」
「センセ、本気で怒りますわよ」
あんまり暑いと、色々暑気払いを考える夏。

団塊は、プチサマフェスの人気モン。

<団塊医師(すらんぷ)>

「うっ、出ん」
「肛門狭窄?いっそのこと、その口がキュキュッと締まったら静かでエエのに」
「んじゃなくてエ、オチが出んっちゅーのは苦しいモンじゃね。スランプじゃー」

「スランプってのは、ずーっと調子がエエ人がたまにあるんがスランプでしょっ。
無理やりひねりだそうとして出んのは、ヒヨコが親鳥産むみたいなモンで。
センセの場合、能力外・身の程知らず・無知蒙昧(語尾上げで)」

「んじゃワシはブラピ似か?実際のとこ、悩む」
「聞き飽きたパターンですね、ホントにスランプだわ」ナースH。
「んで、センセ。お聞きしたいことが、Dさん」横からナースG。

「年の頃なら、花も恥じらう87,8。ナゼ故に恋に落ちたか、そのワケが聞きたい?」
「あらら、パターン変えましたね。あと3歩じゃけど。んじゃなくてエ、Dさんの尿」
「恋に落ちたバッちゃまの尿は、ナンで薔薇の香りがするか?」

「ちょっとだけパワーが戻ってきたじゃないですか、んじゃなくて。検査。
ナンで尿のナトリウムを測ったんですウ?血液じゃなくて」
「勿体なくて言えんなー、んでもヒントなら言うて欲しい?あれって、除外診断なんよ」

「結構ですッ、どうせミョーなオチでしょ?」
「アホ言え、患者さんの体を使ってオチは求めんで。いくらキムタク似のワシでも」
「センセなら、やりかねん。キムタク似じゃないから」

「ワシをキムタク似って言うたら、教えてあげたのに。惜しいッ、残念ッ、勿体ないッ」
「ハイハイ、キムタク似です。ハイハイ。ヒントを言わせてあげます。どうぞッ」
「スマンのー、甲状腺。ハア、すっきりしたア」

「ハア?体の下から出るシッコと、上にある甲状腺は何処でどう繋がって?」
「ウッ、カッポレが踊りたくなってきた。踊り終わると、診断が出ちゃうワケ」
「それってパクリじゃないですか、怪しいサスペンスの」

「踊ってポンッ!診断医とお呼び」
「益々ワカランようになってきたけど、ウソか冗談じゃ?」
「あんたの誉め言葉と自分の悪口は言うたこと無いけど、これホント。さて診断は」

「んーん、んーん。出ん」
「浣腸したろか、出るぞ出るぞオ」
「婦長さーん、またまたMIHIセンセのパワハラですよー」
「んじゃ、そう言うことで。お女中、拙者先を急ぐ旅ゆえさらばじゃ。来週に続く」

スランプのおかげでミステリ風エッセイが書けそうな、団塊医師。

<団塊のMカメムシ>

「キャー。蹴って、踏んじゃった。内臓出ちゃったア、キャー」
「災難じゃねー」
「そうですよ、あたしって弱弱な美白女」

「アホ言え、災難は絶命した虫ッ」
「センセ、カメムシですよ。カメムシッ」
「カメムシにも、踏まれて内臓出さずに生きる権利があるやろ」

「そらそうですけど」
「臭いし」
「臭さじゃ、あんたはゼンゼン負けてないっつーか。勝ってる(語尾上げで)」

「あたし虫嫌い」
「虫も、あんたが嫌い」
「コラコラ。そんなこと何時何分、虫が言いました?」

「つい27秒前。カメムシ語もゴキ語も、大学院で習ったんよ。医学部じゃけど。
その上マル虫語で、何故マル虫は四角ではないのかっつー論文も投稿した。
あ、博士論文はフツーで書いたけど。ゴキ学会雑誌に、続編を投稿したんやで」

「ハイハイ、流石でござりまするです。んでも、あたしゴキだけは」
「ゴキも、あんただけは」
「虫関係は、熱湯釜ゆでの刑じゃないと気が治まらない。みんな、喜んで死んでるし」

「なんで喜んでるのが、分かるんじゃ」
「手足をぴくぴくさせて、失神するほど気持ち良いみたいな」
「苦しがってんじゃッ!」

「そうかなー、時々手を自分でちぎって投げてる。それくらいカイカン(語尾上げで)」
「気持ち良くないッ!Sのあんたの周りには、M系の虫しかオランのか?」
「そういう言い方もある」
「そんな言い方はないッ!あんたの旦那が見て見たいッ」

Mカメムシの行く末が気になる団塊の、午後。

<団塊はKJ法とマインドマップで論文>

「あのーセンセ、話しかけても宜しいでしょうか?」
「既に話しかけて居るではないか、その上何をかけたい?ごま塩?デミグラスソース?」
「VRE」

「いきなり来るか!予告なく、VREを頭からふりかけてどうするッ」
「あー、もー暑苦しい。他の病院で、流行ったらしいので。うちも、本格的な対策」
「せっかく参考文献があと2つになったのにイ。しかも英語なのにイ」

「んじゃ、丁度良いじゃないですか。タイミングが良いって言いますか」
「英語バッカ読んでると、日本語が恋しいワケ・・・ねーべ」
「まあまあ、これ資料。1つは英語ナンであたしは素通り、センセに到着」

「ワシって一度に3つのことをやると、ナンもカンもミックスするタイプ」
「ってことは、シッコもウンチもオナラもミックスする?そーとー臭いでしょッ」
「意味ワカランッ。ナンか、ワシ熱が。知恵熱みたいな、文献読みたくない熱みたいな」

「ハイハイ、んで院内感染予防対策オネガイしますね。得意のスコアは、好きじゃ?」
「あ、そうやね。スコアで区別するのって、エエよねー。100万点満点で行ってエエ?」
あ、冗談止めろ!んじゃ、10点越えたら要注意!で宜しかったでしょうかア」
「そうそう、そのお調子ノリで行っちゃいませ」

んで、日本語の論文は斜め読みでOKだし。英文は斜めたすき掛け読みで。
2つの論文の美味しいとこ取りで、構想30分・製作25分・微調整35分。
優先順位で点数評価をしてみると結構面白く、自画自賛の嵐が吹きまくり。

出来上がった資料をケースに入れる時、読まなきゃいけない英語の文献に気づく。
したくないけど、タマにで良いからワシの勉強させろッ!は手遅れの叫び。
渋々と読んだ論文の美味しいところを10行程度にまとめ、雑誌名を付す作業。

データは元々脳みそに放り込んであるから、考案の構築をマインドマップでプロット。
プロット用紙に短冊切りをした文献まとめ、脳みそ回転通りに置いては移動を繰り返す。
最終的に短冊はテープで貼り付け、論理の進行が飛び跳ねないように短冊の間を埋める。

「KJ法」と「マインドマップ」合体技で仕上げた考案は、暫く寝かせて熟成。
1週間後に印刷して最終チェックに入れば、来年の春には無事投稿か?
ねじりハチマキで論文書いても面白くも何ともないけど、小技を使う遊び心は良い。

論文はKJ法とマインドマップの、団塊。

<団塊の熱中症時代>

<ペタッ、ペター、ペタッ>
「あのさ、廊下からヌリカベがゾンビを引きずって歩く音しない?」
「イエ、別に。あれは拭き掃除したバッカの廊下を、ナースZが歩く音でしょッ。
あの不思議ちゃん走りは、彼女にしかできん」

「ヌリカベまでは、合ってんだ」
「そう言う言い方もある、ここだけの話」
「んじゃメモ帳に・・・と」

「コラコラ、何を書いたんです。あっ、ナゼ故あたしの名前で今のチクり」
「こ、コラッ。個人情報満載のメモ帳を見るでない。ちょっとお漏らしするとオ。
ナースMが、Zの化粧はメタボの厚化粧だと言いふらしていた・・・と」

「無駄に暑苦しいこと、しないで下さいッ!それよか処方箋1枚ッ」
「ふあーい。あ、これね。ヘイヘイ、お待ちイ」
「あららー、これって」

「便秘じゃから、下痢止めは出さんけど。出して欲しい?」
「センセ、いつになく3倍ミョー」
「3倍で済めば、エエ方」

「そらそ、んじゃなくて。日付。何で2月」
「あ、それは7って書いたら。ペンが熱中症で、ギャグと同様に滑った(語尾上げで)」
「んで、このウコソベピンって何?」

「ウじゃなくて、ラ。コじゃなくて、キ。ピじゃなくて、ロ」
「殆ど違ってんじゃないですか」
「あんたの見方が?」

「んじゃなくて、センセの書き方がヘンッ」
「ワシ水分取りすぎて、熱中症みたいな。医局のエアコン、26度設定じゃイカンよなー」
「それもヘンッ」

「やっぱなー、熱中症みたいやな−。ワシって体弱いしイ、キムタク似だし」
「ヘ?脳が弱くて、キモイオタク?」
「ワシ。熱中症で、耳がヘン。誰がブラピ似ッ」

「あーヤダ、暑苦しくて、頭が痛くなって来たわ。息苦しいみたいな」
「それって熱中症の症状や、やっぱ猛暑やなー。熱中症時代やなー」
「センセの頭に、打ち水しましょか?」

エルニーニョで熱中症時代が続く団塊の、午後。

<小走り団塊情報>

「センセって、綿飴が好きなんですってね。3回お代わり」
「その情報を持ってるのは、死んだ茶ラブの哲っちゃんとマル虫のイケちゃんだけ」
「それと、P君とRちゃんと患者のJさん」

「そのメンバーじゃと、G施設しかないデ。綿飴だけやな?他に情報は入っとらんな?」
「もう1つ。Dさんとたい焼きを半分こ。センセが大きい方を取ったこと(語尾上げで)」
「あんたは見たんか、もらったワシのたい焼きを?」

「そう言う情報ですから、あたしに入ったのは」
「ネットと同じで、ミョーな情報垂れ流しは打ち首やで。もう無いな?」
「もう1つ、あると言えばある」

「勿体ぶってないで、言うてみ」
「スリッパの裏が真っ黒で、1年に1回ぐらい雑巾で拭きなさいって」
「そら、もっともやろ。ジョーシキ。入り口入って、直ぐ汚いスリッパはイカン」

「その後が、非常識。スリッパを刺してあるラックをひっくり返したでしょ?
裏が全部見えるようにするなんて、イヤミい。K君が陰から見てたって。あー、ヤダ」
「隠れて見てるくらいなら、とっとと雑巾がけすりゃエエやろッ」

「さらにさらに、見た」
「まだ見とったんかッ!」
「ラックについてる飾りのブタ人形に、ヒゲ描いたでしょ。ちゃんと情報が」

「そんな情報流すヒマがあったら、スリッパの裏を雑巾で拭けッ」
「しかも言うことがエエ。スリッパが汚いって、ナースQがあちこちで言ってるって。
 あたし、そんなこと言いふらしてませんよ。濡れ衣だわ」

「情報は一人歩きするワケよ。んだから、あんまり人の言うことは信用せん方がエエ」
「一番信用出来んのが、MIHIセンセ」
「ほらな、そうやって一人歩きしたミョーな情報に惑わされるワケ。
ワシはこんなに正直な人なのに」

5分前のことがもうナースQに伝わるなんて、団塊の情報は小走りするらしい。

<団塊の透明頭蓋骨>

「センセ、Pさん。転院して2時間もセンうちにいきなり重症になったらしいですよ」
「重症3歩手前で、精密検査を兼ねて行ったんだよな。それがいきなり重症かア」
「読みは合ってたんです?センセの」

「オバカ言わないで、ワシはハウスドクターともカッポレ踊れドクターと呼ばれ。
町内会じゃ悪名高き、うるさ型のジジイで評判や。しかも、言いたか無いけど」
「それ以上、言わなくてけっこうですッ」

「読みはエかったと、一言ぐらい言わせて貰ってもバチも宝くじも当たらんやろ。
あんたなら、腐ってヨーグルトみたいになった牛乳飲んでもあたらんやろうし」
「ナニ言ってんですか、こう見えても心も体も弱々なんですよ。あたし、そう言う人」

「自分が見えんワケや、ワシにはすっかりお見通し。3Km先までくっきり、はっきり。
ワシに言わせりゃ。あんたは背中のイボまで見通せる、透明人間みたいなモンやで」
「丸見えって仰るんですかア、しかも透明人間なのに」

「単純・単細胞・形がなくてアメーバ状態、獄門さらし首の下側で無い脳みそ」
「話が見えんでしょッ、そう言うのって」
「アホ言え、話が見えたらラジオはやたら目障り。漫才聞いたら、目が疲れるッ」

「ワケワカランッ!やっぱ話がスカスカで、見えんワ」
「スカスカなのは、あんたの頭蓋骨や。骨粗鬆症で、中の蜘蛛の巣も丸見え」
「んまっ、失礼な。巣を張ったクモはどこから?あ、耳から侵入した。なーるほど」

「しかし透明やのに、よー入れたなクモ。透明でも見えるんじゃ、単純構造じゃから」
「思考回路が単純透明だから。ナニ考えてんだか、直ぐ分かっちゃう人も居ますよねー。
んだからMIHIセンセも、透明でも見えるんだ脳みそが」
見えると透明は相反していながら、同居出来るらしい。

頭蓋骨が透明な、団塊。

<団塊の日本人論とハンバーグ>

久しぶりの孫と一時の生活の中、ジジイと風呂に入ってもやっと泣かなくなったら。
遊んで出たがらないのは嬉しい限りだけど。湯あたりで、すっかりのぼせたジジイ。
風呂上がりに脱水症予防の氷水をたっぷり飲むが、禁酒以前なら間違いなく焼酎ロック。

肉食獣の私だけでなく、2歳前にして我が孫も大好きなハンバーグ。
子供の好きなモノと言えば、一般的にカレーとハンバーグと相場は決まっているが。
団塊世代の子供時代の好物と言えば、カレーは出てもハンバーグは出てこなかった。

何時から?、食卓に出現する野菜の煮物に魚の塩焼きからハンバーグに変わったのは。
主食のご飯からパンに衣替えは、団塊の世代が慣れ親しんだ給食なら進駐軍の作戦。
味噌汁が牛乳、布団がベッド、頭を洗うのは石鹸じゃなくシャンプーはメディアの作戦。

子供の頃から日本人のアイデンティティを変えてしまうには、体にしみこむ食から?
これは日本人を西洋かぶれさせてしまう、誰かのマインド&ボディコントロールか?
初夏の暑気払いに、「日本人のアイデンティテイとは何か?」を考えている。
きっかけは何気なく買った”「日本人論」再考、船曳建夫著”の文庫本。

大学院の時に、英会話を習ったアメリカ人留学生との会話の中。
知識人は自分の国の文化や芸術に精通しており、ディスカッションにも耐えうる。
ただの知識だけでなく、自分なりの考えを持っていることを知った。

その本を読み始めて、次に読みたくなる本が出て来るのはどれも学生時代に読んだはず。
新渡戸稲造「武士道」英語版=原本、ベネディクト「菊と刀」、九鬼周造「いき」の構造。
「武士道」英語版は内の本棚のどこかにあるはずだがいくら探しても見つからない。
どこかにあるはずでも、探すのも面倒で昨日買いに走り無事入手した2冊。

昼休みに腰痛体操後、寝転がって30分の読書時間に頁をめくりつつ浅い眠りに落ちる。
いつまで経っても「西田幾多郎全集全19巻」にたどり着けず、積ん読が増える団塊ジジイ。

今夜はハンバーグだね!の団塊。

<団塊は短パン買うぞッ>

梅雨入りする前から、ちょっとした温度の上昇だけじゃなく湿度の上昇に敏感だから。
裾に纏わり付くズボンの感触が気に入らず、30年来履き続けた通勤用短パンを取り出す。
5月に入ったら既にホームウエアは、気温に無関係にすっきり夏模様のジジイ。

ダイエット+禁酒+腰痛筋トレ=18Kg減量は、流石にウエストも6cm縮まる。
ポケットに100g以上のモノを入れると、ショート丈がセミロングになるずり下がり。
リボンベルトをきつく締めると、生地が波打って寄り添い集うから表に出せない。

せっかくメタボ腹がちょっとだけすっきりしたのを、強調出来ない(しなくて良い?)。
3,4年前以上の私しか知らない人は、すれ違っても気づかないかも(んなはず無いけど)。
顎の下の余り脂はカンナで削ったように、薄皮程度は取れたようで(有意差なし?)。

買い込むポロのサイズはLでゆったり、パンツは1サイズダウンで丁度良い。
そう言えば以前より汗をかかなくなった(ジジイになって、汗腺が減った?)。
食事に気をつけると無駄食いが減った(ほろ酔いが満腹中枢を鈍化させていた?)。

昨日の休日当直は白衣のパンツは用意してあっても、病棟構わず短パン移動。
日頃私を見慣れたお見舞い客は、「あ、センセ。夏ですね」ですれ違う。
スタッフは、「フツーよりワンシーズン早く来て、遅く去るんでしたよね。夏は」。

iPodを突っ込んでずり下がり気味短パンだから、きつめのベルトをシャツで隠す。
「案外、足長いんだ」の冗談に、「脳あるブタは足隠すって言うやろ」。
「意味分からんッ」の合唱にもめげず、当直が明けでサイズダウン短パン買うぞッ!

短パンのこだわりは、ハーフステテコみたいな中途半端な膝下15cmはイヤッ。
膝上5.7cm、色はベージュか濃紺か、ゴムじゃなくてベルトですっきりが良いッ。
出来たら裾折り返し3.5cmで裾は絞り気味、素材は勿論コットン100%。

いわゆるバミューダパンツも、30年前にタイムスリップしないと手に入らないかも?
5時起きで短パン・プチラウンドしたせいで、眠気覚ましに色んな事に思いを巡らせ。
神戸の学会のついでに立ち寄ったブルックス、ハーフパンツ3本一気に買い。

<アラカン時代の団塊世間>

トラッド・アイビー・VAN・みゆき族と来れば、多くのアラカンには馴染み深い。
MIHIセンセも多分に漏れず、出来るなら起きてから寝るまでトラッド気分で居たい。
ひとたび家のドアをくぐった瞬間から、世間を意識し始めるのはフツー。

不祥事を起こした放蕩息子に手を焼いた親が、「世間の皆様に申し訳ない」は死語。
この逆の場合は、子供が「世間の皆様に申し訳ない親で」とは聞いたことがない。
この「世間」って何?と思うと、なかなか明快な答えは返ってこない。

他人の目じゃ充分じゃないのは、「見た目で恥ずかしい」が希薄になってきたせい。
武士道ことに葉隠れ武士道では、「恥」を最も嫌うのは潔さの頂点とも言える。
「約束を破ったら、満座の中で辱めを受けても構わない」は、シーラカンス的。

腰パンで、ケツの割れ目がチラリ見せられた方が気分が悪いと思ったら。
見なきゃ良いのに、いちいち見ないでくれん!本人は恰好良いと思ってるんだから。
大きなお世話を「ウザイ」の一言でしか言い表せない、貧弱なボキャブラリー。

日本には「野暮」や、その対極の「いき」を忘れてない?渋み・上品もあるんだけど。
アラアカンの私には、「いき」とはほど遠いと思うのは腰パンだけじゃない。
世間に出すには、完璧に躾の出来ていないガキがウロチョロしてると思ったら。

それに輪を掛けて、躾も恥もかなぐり捨てて微塵もない親たちは私に言わせりゃ恥の塊。
「今時のヤツらは、世間体なんかちっとも考えて居らん」と、憤慨する方がオカシイ?
ましてや、多くに「いき」を求めることが出来るほど世の中平和じゃない。

子供の頃から「市場原理」で鍛えられ、でも大人になれば「いき」で居たいと思う団塊。
そのアラカン・ジュニアは教育と経済政策の失敗で、受難の日々を迎えている。
彼らには「いき」を想う余裕もなく、品格を無視しても時に受け入れる年寄りの「渋さ」。

フツーに「いきる」のに精一杯で、「いきかた」「いきがい」も遙か彼方に追いやられ。
アラカン軍団がジジババ族になって、彼らの生活の重くのしかかられる不安と不満。

明治維新を境に、「西洋に追いつけ追い越せ」で突っ走ってきた日本人。
ふと気づくと「西洋かぶれした黄色人種」であって、鎖国で培ってきた日本人とも違う。
思い直す「日本人らしさって?」に、「いき」が肌で分かる人と言い換えるとヘン?

「いき」を表す外国語がないらしい、これを受け止められればコテコテ日本人。
コテコテ日本人じゃなくても、「世間」を意識出来れば真っ当な大人で充分。
「世間」とは、個人個人の中にある「恥を知ることが出来る上品さ」なのか。
そして、価値観や倫理観でそれぞれに違うのではないか?と思った。

猛暑の中、アラスカ温度の医局でまったり「いき」と「世間」に思いを馳せた午後。

<antique医師のススメ(以前のものをリメイク)>

高校生の頃から落語を聞くのを趣味としていた。
日曜日の夜7時過ぎ、ラジオから聞こえてくる落語を部屋を暗くしてよく聞いていた。
噺家が自分に向かっているような臨場感がたまらなく好きだった。下町ものが好きで、
中でも出来の悪い若旦那の噺によく出てくる”横町の熊さん”の大ファンであった。
いつも飾らず少しおっちょこちょいで、憎めなく、親しめて、僅かに頼れ、いつも正直
に生きている”熊さん”であった。
医者になったとき”熊さん”に憧れていた私は、”熊さん”みたいな医者を望んだ。
これは今の医療界では、antiqueな医師なのだろうか?

パターソンによると”医者の三つの権威”というものがあるそうだ。
それは、
知的権威(SAPIENTIAL AUTHORITY)
道徳的権威(MORAL AUTHORITY)
カリスマ的権威(CHARISMATIC AUTHORITY)
だそうである。

”熊さん”医者に我が身を振り返って上の三つは当てはまるかと考えたとき、どうも
つもないようである。さてどうしよう。
先ず、知的権威。これは今後の努力次第ということで勘弁して頂こう。次いで、道徳
的権威。常識的で平均的であることには自信があるから(タブン)、これはなんとかい
けそうだ。
さて、問題はカリスマである。”熊さん”にはどう逆立ちをしてもカリスマの匂いが
しない。軽薄なマスコミならいざ知らず、現代の医者にパターソンのカリスマ的権威を
要求することに問題はないか?医者も患者も、大病院を好む風潮は否定できない。そう
してみると多くの人が、器である建物にカリスマ性を強く感じている?と思うのは全く
間違いとは言いきれぬ。F病院事件は記憶に新しい。建物も、機械も立派なF病院で、
医者を装った医者ではない人の診断?判断?(多分まやかしであろうが)によって多く
の女性が騙され手術をされて泣いた。経験もないのに心臓検査や肝臓手術をして、患者
を痛めつけたのは記憶に新しい。今の医療にはカリスマ的権威は必要としていないと結
論し、自分が目指すのは”熊さん”医者しかないだろうとなった次第。

「よう。熊さん。まんじゅう食い過ぎて腹こわしちまったよ。診ておくれよ。」
「あいよ。」
「こりゃあなんだな、八っつあん。恐らくまんじゅうの食い過ぎだ。しょうがねえ、
おめえのために残ったまんじゅうは俺が食っといてやる。おめえは独り占めしようと
した罰 だ、反省して寝ときゃあいいよ。そのうち治らあ。」
(要を得た問診である)
「てやんでい。べらぼうめ。そっくりもってけ。」

出るは出るは、八っつあんの布団からまんじゅうの山。
「かまうこたあねえ。おいらが全部持って帰って食ってやらあ。」
「熊さん。おめえの腹はどうするんだい?」
「心配するねい。おいらは医者でい。まんじゅうの中に薬を入れときゃあでーじょう
ぶっ てことよ。おめえも今度はまんじゅうを食うときは、おいらに一言いっとくれ。
おめえ が腹こわす前に、おいらがまんじゅうを食ってやらあ。」

えー、おあとがよろしいようで。
(深々とおじぎ、座布団を返し下手へ。テン、テケツク、テケツク。太鼓の音が響く。)

<団塊の風流脳細胞>

「あぢぢー、ナンで夏やッ!責任者出てこいッ」
「そんなこと、ナース・ステーションで騒がれてもねエ」
「エアコン、暖房設定か?」

「んなはず無いでしょッ!試しに39度設定で、血イも湧いちゃいますウ。泡ブクブク」
「試さないッ」
「全国の室外機から熱風ビュービューじゃ、外気温も上がりますよねー」

「確かに、ワシの高校時代は扇風機から生暖かい風がブンブンでもこれほど熱くは」
「そうですよねー。軒先に風鈴なんかぶら下げて、ちょっと風が吹くとチリンチリン。
&風流ですよねー、いきですよねー」

「流石に同じ歳となると、みみざわりの良い単語が飛び出すねー。”粋”と”風流”。
 その点、最近は何でもかんでも、やたら野暮でイカン。奥ゆかしさは、死語か」
「センセも、ジジイになった証拠ですよ」

「ついこの間までは歳をとったら、”不良ジジイ”と呼ばれたいと思って居たんよ」
「念願かなった?」
「それが禁酒して1年以上経つと、アルコールで破壊された脳みそが復活したんか?」

「脳細胞復活説ですね」
「”粋”で”風流”なジジイと呼ばれたくなったのは、孫のセイかもしれん」
「孫はジジイを変えるワケですね。粋と風流って、分かったようで曖昧」

「”粋”は、垢抜けして、張りがあって、色っぽいワケ。婦長さんは皆目縁がないな」
「あたし垢もあるし多少の色っぽさは。んでも花より団子、旦那は元気で留守が良いわ」
「”風流”は、離俗、耽美、自然美への復帰の状態らしいで。ワシゼッタイ無理かも」

「確かにMIHIセンセは目一杯俗っぽくて、煩悩まみれじゃし。先ずアカンでしょ。
今のあたしら団塊の世代は、まだ枯れ切ってないから”風流”は脳細胞的に無理」
「そうやねー。九鬼センセは、世俗と断ち虚空を吹きまくる気迫が無いとイカンって」

束縛がなくゆるゆるじゃ気迫が生まれるはずがないと、俗っぽく思う団塊の午後。
”風流”については、九鬼周造著「風流に関する一考察」より引用。

団塊の令和元年連休

1)1飛10連休(やすみへた)

史上初?の10連休前日、取り敢えずコーフンして迎える準備。
初日は庭仕事で、雑草引いて除草剤で追い討ちをかけ。
枯葉をかき集め、焼却炉で使用済みティッシュや封筒類と煙に。

それでおよそ本日の予定は半分終了、さて?とほぼ「英会話本」。
目だけ使った英会話文章は、学術書と違って「ほぼ理解」で良い。
英語初心者並みの喋り速度と私の黙読速度は、「ほぼ並行」進行。

ダラダラやっていては、230ページを残りの8日間で仕上げは無理。
孫達が遊びにきた時の写真で、豆本を作る手はずは整った。
花粉症も峠を越えて鼻の通りが良くなったから、湯船に浸かって鼻笛も。

連休突入前に立てた予定は残ってない?と、思いを巡らせども。
無い、無い、無い、何しよ?何、何、何、どうしよ?
学生時代に受けた教育は、休むことは怠惰の言い換えだった。

ボーっ持続は長く持たない休み下手団塊の、1つ飛ぶけど10連休。

2)本業以外万作業請負(きゅうじつもーど)
「鈍るー、呆けるー、万歩計カウントしないー」
と言うワケでは無いけど、休日出勤。
外来日じゃ無いので、のーんびり・ゆーっくりラウンド。

クールビズ+汗っかき+雨上がり高湿度+殆ど休日状態を計算すると。
計算式は「白の綿パン+白衣+ボウタイ終了」=上下真っ白。

「あら、センセ。ラウンドですか」
「あい」
「まるでその格好は、医者みたい」

「よく言われるんよ、医者みたい・・・じゃねーっつーの。こう見えても、医者っす」
「今日はあたし達、休日モードで仕事してんですから。センセにかまってられない」
「別にかまって貰おうなんて」

「あ、PさんとMさん。処方3枚」
「あい」
「今日は、メッセン(メッセンジャー)居ませんから」

「意味不明」
「処方箋切った瞬間に、それ持って薬局。薬を貰って、このテーブルへ」
「あ、ワシがメッセンね!んじゃ、ユニフォーム変えなきゃ。形から入るタイプなんで」
「ウッセ。形は関係無いッ!ゴジャゴジャ口を使わ無いッ!足使うッ!」

本業以外で八百万作業を請け負う休日モードの、休日出勤日。

3)長期連休作業仕上美庭(たいしょくぎじたいけん)
5月下旬にBBQを予定して、10連休を迎えた我が庭。
突入前夜に、大掃除シミュレーションしつつ眠りについた。
小学校以来、休日は早起きが染みついた体は伊達じゃ無い。

「すぐ枯れる」が謳い文句の除草剤、効果確認作業開始。
「フムフム、確かに」呟きつつ、およそ100坪の庭を徘徊。
真っ赤に熟れたサクランボは、連休後半に摘み取る予定。

ボーボに茂った南天の枝葉をカットして、夏向きにすれば1袋。
無駄に伸びたベニカナメ枝葉の裾刈り上げで、キッチリ1袋。
引きやすくなった雑草をむしり取って、パンパンの3袋。
燃やすのは面倒な枯葉かき集めて、軽いけど2袋。
目に見える連休成果だけで、50Lゴミ袋7袋となった次第。

BBQ計画準備のおかげで、庭は見違える程にスッキリ。
万歩計は庭作業だけで3000歩、買い物に行っても普段の半分。
1日残して英会話本、たったの50ページはトホホ。

長期連休庭作業はリタイア生活の擬似体験の、午後。
で、写真は摘み取ったサクランボの一部です。
冷やして洗って口に入れれば、甘酸っぱい令和味。

<傷だらけの団塊>

「おろ?センセ、フロントレッグ・リストカット」
「前足って言われてもなー、ワシって白馬?」
「イエ、前足チョキのブヒ」

「いくら何でも、腹減って自分の前足切って食うか?」
「イヤイヤ、センセならやりかねん。前足だろうが、クルクルシッポだろうが」
「あのね、どーしてもワシをキムタク似にしたいワケね」

「意味ワカラン、ワケワカランッ。その右前足ッ」
「あ、右手。名誉の負傷というか、左手で敬礼言うワケには行かんし」
「ま、まさか。野ブタ爆走団対抗のデイリ?」

「チッ、チッ。流れ者のおいらに惚れると、ケツが火イふくデ」
「どうせ、デイリの場合は真っ先にやられるタイプ」
「コラコラ、名誉の負傷だって言うてんじゃん」

「週末にやられたワケじゃからア。どーせノンアルビール箱担いでてとか?」
「段ボール箱が擦れて、イテテなワケ。あ!あんた、ワシのストーカーかッ!」
「それほど悪趣味じゃありませんッ!」

「傷がうずき出して、放屁したい」
「んで、その上に手打ち?それともさらし首一歩手前ってゆーか、プチさらし首?」
「短い首に厚い皮膚、辛うじて繋がった。みたいな」

「ってゆーか、ヤキ入れられたみたいな」
「あ、これね。乙女の柔肌なみの、ワシの肌。汗と聴診器の金属で、キムタク似皮膚炎。
はたまた金属が溶けてブラピ似皮膚炎でも、OK!」

「人間のアクが強いと、汗まで強い。硫酸みたいに、どんな金属でも溶かす汗ですねー。
ついでに、自分も溶かしちゃえばエエのに。骨までトロトロ」
「ワシって傷つきやすい人なんよ、はアー」

「傷つけやすい人の間違いでしょ、甘えんじゃないッ」
「そうやって、心ないナースの言葉がワシを傷だらけにするんだ。つ、辛いなー」
「あー、ヤダ。ジジイのひがみ根性は、みっともないでしょッ」

団塊の子羊は傷だらけでブヒブヒ嘆く、午後。

<団塊のWinXP危機管理>

8年使いまくったデスクトップWinXPのPCは、まだまだサクサク動いて。
時々HDDを色んなところから出たゴミとレジストリを、クリーンアップしデフラグ。
4年目にメモリが壊れて差し替えただけで、仕事にネットに趣味に活躍中だが。

時々マシンからカリッみたいな異音が出始めたのを機会に、リスク管理を再検討。
何時壊れても直ぐ捨てられるように、先ずは本体内HDDに残ってるデーターを削除。
ただ削除ではなく、リネーム・日時の変更・ファイルサイズをゼロに完全削除処理。

その後で全て上書きするフリーソフトを使いまくった後に、フォーマット。
ここまでやっても、出来る人なら削除したファイルを復活するかも知れないが。
出来るだけのことをやって、ヒマと腕力があったらトンカチでぶん殴ればOKか。

今までやって来たみたいにHDDを取りだして、データ用に改造も良いがそれも限界。
真っ新外付けHDDに移した全てのデータ、いざという時は磁石と釘とトンカチ破壊。
娘から譲り受けたWinXPノートPCに、USB2のハブ\980を取り付けて。

古いノートからはぎ取ったHDDに、フリーバックアップソフトがファイル更新の仕上げ。
ネットでHDDの寿命を調べると100万時間という情報は、ホントだろうか?
1日6時間使うとして理論上の寿命の19年弱、同じPCを使い続ける気持ちが失せる年数。

物を買わない若者が増えてるが、昔は要らんものを買った団塊世代も買わなくなった。
バブル真っ盛りの頃「物の捨て方」のノウハウ本を読み、イランものを買わないのが一番。
時系列で優先順位を決めて、ホコリが積もれば捨てるしかない?

HDDと人生、危機管理は同じじゃん!と思う団塊の午後。

<アイドリングする団塊の脳>

高気温と湿度がグイグイ上がると、脳みそはとろけて粘度も上昇するから。
書きかけていた論文の進捗状況も、おして測る程でもなく夏休み状態まっしぐら。
ある程度フットワークの良い思考回路を維持するには、アイドリングが必要で。

5,6分というメチャクチャ短時間で集中力を鍛えるために、最近復活した詰将棋。
5分で初段の5手詰めを、軽く(偶然?)2分で解けば計算上は2.5段じゃんのお気楽。
それでも5分で2級が15分でも解けなくて、アイドリングのはずが過熱しかける。

ながら読書が定番としては、珍しく気が抜けないのが「Dr.HOUSEシリーズ」。
油断した隙に診断のヒントが出て、さりげなく過ぎ去って最終診断の頃「あ、あれね!」。
ゲルマン民族由来の(?)ウイットの効いた台詞が、チラリと出て緩衝材となるのも良い。

ワケのワカラン症状を解析して、アタリを付けるときは大不正解でこれが2,3回あって。
強引でそこまでやるか!検査しまくりつつ研修医をいたぶり続けて、つかみ合いのケンカ。
ホワイトボードに黒ペンでやたら診断名が並び、半分以上レアな病気だから緊張しまくり。

こうなるとながら読書は無理で、画面に食いついてトイレさえ我慢の55分。
2/3まで来て診断が当たる方が珍しく、オチが出てフラッシュバックするする症状群。
これを殆どパクってお笑いの要素を加え、最終回は「多分ああなるね」のヒガシヤマ君。

中年隊になっても、踊りのキレは少年隊のままのような気がするが。
踊りながら診断しちゃうところが笑わせてくれて、こうなったらパクっちゃおうかと。
踊りながら「うーん、蟯虫症に足白癬菌症の併発ッ!あ、かっぽれ。あ、かっぽれエー」。

あれなら安心してながら読書が出来、私の脳をアイドリングするのにちょうど良い?
詰め将棋を解決させながら「あ、それって違うやろ」だから、加熱することはない脳?
アイドリングしながら、週末当直でプロットを手に入れたパソコンソフトで仕上げるかな。

熱気が過ぎ去った夕暮れ、孫の水遊びを激写しつつノンアルビールをプシュッ。
キャーキャー言いながら喜ぶ孫を見ていると、アイドリング中の脳は笑顔溢れる。
こんな脳みそだから詰め将棋3問解いて、アイドリングする団塊の脳はチョロい。

<ぢゃない団塊>

「コラコラ、あと5人お待ちですよ」
「トイレ」
「何しに?」

「な、何しにって言われてもなー。トイレでカッポレ踊るのも、一人じゃ寂しいし。
あんたも踊る?フツーはシッコやろ、そらウンチもあるかも知れんけど」
「ホントにトイレでオシッコ・・・じゃなくて。トイレだけですね」

「なんなら、ストーカーする?あ、しない!」
「サクサク済ませて、とっととお帰り下さいませエ」
「ナンか、ちょっとむかついたら腹が張って来たで。放屁3.5発したろ」

「ちょっと待ったア。その0.5発は意味不明、説明責任、会者定離」
「空手とか少林寺の試合じゃ、ゲンコを相手に当てたらアカンわけよ。フツー。
んで、当たる寸前で止めるワケ。それを寸止めと言うのじゃ」

「それと0.5発は?」
「1発の半分で、即ち0.5発やね。んで、半出し半残り。んで、屁の寸止めっつーか。
100パー出し切らない、屁の寸出しと言い換えてもエエ。で、結果0.5」

「あたしは、ゲップとオナラは思いっきり出さないと気分悪い人ぢゃないですかア」
「ワシは、そんな情報は聞きたくない人なんよ。あんたは黄色いパンツ履きなさいね」
「意味ワカランッ・・・あ、なーるほど」

指示通りサクサクトイレを済ませて、サクサク診察で外来終了した人になる。
「あのさ、心電図モニター。4本も走りまくりで、画面があっち向いてホイなん?」
「偶然、マル虫が蹴った?か、モニターが動いた?そうに違いない。マル虫めエ」

「んであんたが怒って踏んだから、マル虫が扁平虫に?」
「キャー、踏んじゃったア。ヤだ、あたしってマル虫を踏みやすい人ぢゃないですかア」
「靴に聞いてとくれ。わしゃその点は興味も関心も、皆目アンド絶無でオネガイ」

「んで、旦那も虫嫌いぢゃないですかア」
「あんたが結婚してることも知らんし、旦那の国籍も目が幾つあるかも知らん」
「目エはフツー2個でしょッ」

「そらじっくり見てみんと、ワカランワカラン。トンボみたいに複眼とか」
「もしその目であたしを見たら、ノリカが300人も見えるぢゃないですかー」
「ぬらりひょんとのっぺらぼう合体レンジャー300人(語尾下げで)」

「地球防衛軍、サンゴゴレンジャーみたいな」
「あのさ、サンゴはジュウゴやろ?」
「んだから、不思議戦隊って頭についてるんですよ」

「いくら何でも、鼻タレガキを惑わしてどうするんや。計算合わんやろ、悩むやろ」
「んでも、うちの子達は納得してますけどオ。あたし気になる人ぢゃないですかー」
「そう言うアホガキの、親の顔が見たいもんだね。どんなアホ面やろ?」

「こんな、美白ノリカ似」
「ワシって、アホ臭くなると放屁する人ぢゃないですかー」

団塊医はスキップしながら放屁する人になったぢゃないですかーの、午後。

<団塊のせん妄>

「センセ。Pさんなんですけどオ、先週から認知症が急に進んだような。
お世話してるあたし達が不安で、家族も不安らしいんで。CTとか血液検査は?」
「あのね、何処がどう変わったか。つまびらかに、はっきりいくっきり述べよ」

「スタッフの印象というか、感じというか。ご飯食べないで、ボーッとしてるし。
歩く時、何となくフラフラしてるし」
「37歩譲って、もし認知症が進んだら治療方針変わるか?施設を変わるか?」

「イエ、それはないと思います」
「んじゃ、ナンのために検査するんじゃ?放射線浴びまくって、痛いのに針刺されて」
「スタッフの安心というか、勉強させて」

「本人は、ナンか得するんか?ハワイ旅行とか、ビアガーデン招待とか」
「イエ、それは・・・」
「そらあんたらは、痛くも痒くもないワイ。危害を受けるのは、クライアント」

「危害って、言い過ぎじゃ?」
「いつも言うやろ、医療はある意味で加害行為って。いま言うたことは、その典型じゃ」
「んじゃ、Pさん診て下さいよ」

「エエよー、ウエルカムじゃ。あららー、皮膚摘んだら立ってるな。これ、見たな!
見事な脱水症。これで熱が出たら、熱中症みたいな。脱水によるせん妄ッ、点滴ッ」
「CTは?」

「あんたの頭にしなさいッ、注射も。子供と年寄りは、細胞内液が10%少ないんよ」
「成人よりな。体脂肪には水分は蓄えられんから、そこんとこあんたとちゃうな」
「んだから汗の貯水庫が小さくて、汗の元が直ぐ減って体温調節が出来んからアカンの」

「一日3回、余分にお茶を飲ませてもですかア?」
「スタッフが飲ませたと思っていても、足らんのよ。誰かの脳みそみたいに」
「それって、あたしの事?パワハラじゃー」

「ゴジャゴジャ言わない。認知症があるお年寄りの脱水症は、せん妄を起こすワケ。
んだから、Pさんの認知が進んだような。この間、Dさんもそうやったやろ。
学習が足らんなー。諸君、励め!誰が、ハゲ!」

「センセ、独り突っ込みは止めて下さい。紛らわしいから」
「ナンと紛らわしいんじゃ?」
「MIHIセンセの、脱水症と言うか。せん妄というか」
「ウウ、説明したら。喉カラッカラ」

せん妄予防にミネラルウオーターをがぶ飲みした、午後。

<ソクラテスの次は団塊らしい>

「センセ、Pさんのレントゲン出来ましたア」
「あ、シャウカステンにぶら下げてね」
「ハイハイ、これで」

「あのさ、あんたの正面に懸けてどうするんよ。見るのはワシじゃろ?」
「んでも、センセの正面懸けてエエんですか。ホントに、覚悟が出来てるんですね」
「な、ナンで写真見るのに覚悟?あんたのスッピン寝起き写真を見るんとはワケが」

「そんなモン、直視出来んでしょ。恐くて、サブくてウウ・・。ナニ言ってんですかッ」
「しかし、日増しに腕上げるなー。んじゃ、懸けてみて。ワシの真正面に。あらら」
「でしょ、でしょ。止めがセンセみたいにアホになって、懸けても直ぐ落ちるでしょッ」

「まるであんたのババパンツやん、ゴムが伸びきってずり落ちるウみたいな」
「昨夜、入れ替えて、食い込んで3段腹が4段・・・ナニ言わすんですかッ」
「ノリ突っ込み初段、進呈じゃね」

「んで、写真をこちらへ懸けるワケですよ」
「これを治そうとか、殊勝な心がけのスタッフは居らんのか?そういうこっちゃ、イカン。
MIHIセンセが気持ち良く仕事が出来るような、そう言う態勢作りイ(語尾上げで)」

「センセが外来しなきゃ、あたし達は気持ち良く仕事が出来る(語尾上げで)」
「村一番の人気モン医者、外来にワシは外せんやろ。ナンか、自分で言って、照れるね」

「照れるぐらいなら、言わなきゃエエのに。無理して、無いこと無いこと」
「正しい認識と正しい倫理観を、無理やり一致させるマルクス主義は崩壊して。
偽善と欲に充ち満ちた資本主義は、修正を繰り返した」

「ハア」
「んじゃ。総務課に電話して、修理オネガイね」
「センセ。この間、外科外来のシャウカステン。殿が、ご自分で直されてましたけど」

「キリスト教を元にした真理は、時の流れと共に変化して。真理の本質が・・・」
「ハア」
「殿が直して若年寄のワシが何故直さないか?って、言いたいワケね」

「若を外してください」
「ワシって、肉体労働向きじゃないんよ。強いて言えば、頭脳格闘派(語尾上げで)」
「脳みそが、悪知恵で溢れてる一派ですね」

「永遠の真理を語れども、凡人の世界では受け入れられるのに時間がかかるワケ」
「センセの場合、おそらく7万年かかっても理解不能」
「ワシのこと、ソクラテスどくとると呼んでエエよ。遠慮無く」

ソクラテスは、アテネで青年を惑わす説を説いた理由で死刑の判決を受けたらしい。
この時、自信の論理の正しさに従って自ら毒杯を飲んだらしい。
ニーチェによれば、ソクラテスは知性と論理によって死の恐怖を克服した最初の人らしい。
それ以後の欧州では、ソクラテスは「理論的楽天主義」の創始者になったらしい。
「理論的楽天主義」は「非理論的お気楽主義」を生み、団塊に受け継がれたらしい。

<一部分だけ欲しい団塊の脳みそ>

「センセ、オネガイがあるんですけどオ。聞いていただけますウ」
「フッ、おぬしなかなか悪じゃのー。タヌキ心あれば、ミジンコ心もある」
「これを我慢して付き合うと、あと5分で終わるんだっけ?次も有るんだっけ?」

「殿ッ、このUSBですが・・・」
「おうおう、ういヤツよノー。近こう寄れ、遠慮するでないぞよぞよ。んで、USB?」
「入ってる写真のうち1枚をエクセルに貼り付けるんですけどオ、サイズを調整して」

「ヘイヘイ。あ、これね。これを摘んでここへ、ポイッ。んで、サイズは・・・と。
ここに入れるなら、300でエかろう。んで、よいしょっと。一丁上がりッ。
おっとどっこい、あらよっと」

「ミョーなかけ声を聞いてたら、褥瘡の写真が張り付いてるやん。
あと1つは、黙って作業していただけません?」
「黙って作業すると、混乱して3時間17分かかるが」

「いったい、どう言う脳みそしてるんですか?」
「こう丸くて、シワシワがあって。溝もあるでよ!みたいな」
「センセのパソコンを使う時に廻す脳みそだけ、いただいた方が速いわ」

「Pちゃん。MIHIセンセから、そこを取ったらろくなモン残らんでしょッ」
「背脂3.7Kg進呈」
「お腹の脂身なら、倍返し」

「んで、あとは?エクセルの関数でエ・・・」横からナースVが口を挟む。
「ウッ、お女中。拙者急に持病のさし込みが、ウウウ。さらばじゃッ」
「MIHIセンセ、エクセルは苦手ナンよ。脳みそに入ってないんて」

「脂身とキャラを外して、あたしが必要なとこだけ脳みそが取れんやろか」
「取り方を失敗して、要らん部分だけ付いてきたらどうしよ」
「捨てりゃエエわね。何かのエサにしたら拷問やん」

団塊の脳みその取り方で遊ばれた、午後。

<団塊が髪を切ると壊れる>

「んじゃ、婦長さんの次にヒマな・・・主任さん。気管カニューラ交換介助ね」
「ヒマじゃないけど。放っておいて、ゴジャゴジャ言われると暑苦しいから」
「おろ?主任さん、髪切ったア?」

「センセだけですよ、これに気づいていただいたのは。ウウ・・・取りあえず嬉しい。
んでも、よりによってMIHIセンセが真っ先に気がつくとは。ウウ・・・悲しく惨め」
「いくら何でも、そこまで変わりゃ。目に刺さって、痛てーのなんのって」

「やっぱ、あたしは罪作りな女だわア」
「それって、バチ当たり(語尾上げで)」
「誰があたしにバチを?ジョーダンじゃございません事ですわよ、ったくもー」

「んでも。旦那が気づくやろ、そんなん見せられたら」
「言葉の選択、ヘンですけどオ。気づいたっちゃ、気づいたんですけど」
「んならエエやんか」

「良くないんですウ。そら完璧可愛いくなったとか、美しすぎて眩しいとか。
はたまた、ノリカとうり二つ。ちょっとひいき目に見ても、サユリみたいな」
「脳みその膿、ギュギュッと搾って出し切った方がエエかも。んで、なんて?」

「お前、何時から壊れたんや顔が。あたし頭に来て、旦那のUSBに乗せましたわ」
「ま、まさか」
「そう、そのまさかのマグネット。冷蔵庫の扉にあった、喜び熊さんの」

「あんたが髪切ったバッカしに、USBが壊れちゃったワケね」
「そうとも言います」
「それしか言いようがないけど。まあ、確かに壊れたと言う部分は合ってるわな」

「壊れたって、何処が」
「細かいこと、気にしなくて宜しい。表現形式の問題(語尾上げで)」
「けっこう難しいんですね」

「形而上学的に、はたまた中世破壊美学的にかな?」
「理解出来そうにありませんけど、ホンのさわりだけでも」
「髪を切ることは、ゾウに踏まれて壊れたおかっぱ女子学生人形的と言うか」

「ナゼ故に、ゾウに踏まれたおかっぱ女子学生人形」
「そこがカオスなんよ、髪切り呪縛の。明治時代のアンティーク人形じゃけどな」
「あ、センセも髪切った?」

「ゼッタイ、髪切ってないッ」
「あ、そうですよね。少ないから、切っても切らなくても・・・」
「ウッセ」

 髪切りの話題だけはしたくない、午後。

<団塊青春の英語時代>


楽天もユニクロも、社内で使うのは英語になるとか。世の中は、英語時代なのか?
時を遡って札幌農学校じゃ、クラークセンセが学生に英語でディベートをさせてたらしい。

「MIHI君、時間だよー」
「ふあーい、直ぐ行きまーす」

下宿生活高校時代は、英語の先生と同居していた関係でお約束タイム。
夕食後ラジオから流れる英語ニュースを、先生が入れてくれたお茶を啜りながら聞いた。
聞き終わった後で「ナンの話してた?」に手短に答え、チェックを受ける日々。

喋るのは日本人アナウンサーだが、「これが生英語」と思っていた。
たった10分だったけど、田舎で外人を見ることも滅多にないのでとても新鮮。
この「半生英語」の時間が、「外国」と繋がっていた唯一の時だった。

ボクのクラスの英語担当は、定年間近カタカナ英語に近いコテコテ日本人センセ。
何故か席が一番前だったせいか、色んなモノが見えてしまって。
その先生はトイレが近いのか、授業の前には必ず放出するらしい。

真夏のボーッとした時期はしばしばあるのだが、なるべく見ないようにしてもダメ。
こっちもボーッとして受けていた授業だから、ナニを血迷ったかつい言ってしまった一言。

「あのー、センセ」
「おっ、MIHI君。エエね、ナンでも質問しなさい。たまには英語でどうかね?」
「へっ。ちょ、ちょっとそれは・・・んーと。アイ・フェイス・ヨア・フンドシ。
んーと、ちゃうわ。Your fundosi is sticking a face out of the window.」

「英語は正しいが、アイ・ルーズ・マイ・フェイス(私はメンツを失う)。
そんなところを見てるから、英語で・・・満点が取れんのや」
「センセ。そう言う場合、英語では?」
「そんなことは、日本語で言えばエエんじゃッ。要らんこと言うなッ」

嗚呼、団塊の青春英語時代。ipodから流れる、リンカーン演説・AFN・VOA・BBC。
流れてくるホントの生英語で耳慣らしをしつつ、団塊の英語時代は流れて行く。
本棚には、「なぜネイティブは、見知らぬ人に挨拶をするのか?」に混じって。
「医学英語検定試験」本、「TOEICテスト”超”必勝法」、「英会話音読挑戦編」が並ぶ。

<団塊の武士道とニンジン>


新渡戸稲造の「武士道」は、どちらかと言えば騎士道のような気がして近寄りがたく。
山本常朝の「葉隠れ武士道」は、純国産武士道と思ってお気に入りは私だけか?
質素で潔いところが私にはとうてい真似が出来ないからこそ、憧れる。

モノがあるから次を欲しがり、止めどなく物欲に流され手に入らなければ不満。
モノがなければ諦めるか、ナンとか工夫して自分で作り出すかしかない。
団塊の世代が子供の頃は、遊び道具は買うより作るのが普通だった頃は物欲とは縁が薄く。

団塊世代が成長して行く時に、常に立ちはだかった受験戦争。
ニンジンを目の前にぶら下げられた競走馬として、時は流れって行った。
世に出て稼ぎ始めると、目の当たりにする品々は教科書と違って新鮮でどれも魅力的。

気づけば巷は想定外のモノに溢れ、「ヘッ、こんなものまで!」がしばしば。
ニーズの多様性は事細かく分析されて、ちょっと探せばどこかの誰かが対応している。
品物を探すのだって昔はそれぞれの店を尋ねても無く、最終的に注文して暫く待った。

家にいながらにして、あっという間に探し当てることが出来るのがネット。
細かな写真付きで見て、指先1本で注文が済みあとは到着を待つだけ。
気に入らなかったら、返品可能の気安さは良いような悪いような。

それもそのはず、物欲はマインドコントロールされているから覚めるのが早い。
話題に上らなくなることは、即ち誰もが欲しくなくなることと言い換えられる。
この「誰もが欲しがらない」すらも、マインドコントロールの所産だから。

節操も無いし、多数の流れに遅れることの不安も不満も人一倍強い。
むかし流行ったギャグをパクって、「赤信号、みんなで渡れば誰か事故に遭う」。
物欲はエネルギー源だったのに、いつしか不満の種になってしまったようだ。

何もかも手に入れたわけでもないのに、「あれが欲しいー」が無いのは何故?
アラカンを迎えた団塊世代にとって、物欲とはナンだろう?
思い切って潔く6ヶ月使わなかったモノを捨て去り、身辺整理するのも良いかも?

身の回りがすっきりさっぱりしてみると、本当に欲しいモノが見えて来るはずだ。
それすら無ければ、あとはのんびりお迎えを待つ?イヤイヤ、まだまだ!そうはイカン。
血湧き肉躍る団塊世代ここにあり!何か素敵な物をニンジンに仕立てて、トコトコ走ろう。

<団塊医っちゃ信用出来ん>

「んじゃ。入院して4日目、いろんな事が分かって。病状と治療方針をお話しします。
いろんな医者がいますので、色々意見はあると。医者って、信用出来んでしょ?」
「ヘッ、信用出来んのですか。お医者は」

「私、自分以外は先ず疑ってかかる悪い癖」
「ハア」
「んで、Gさんに付いてる診断なんですけど。ボクのと、ちょっと違うんですわ」
「ハア」

「イエね。前のセンセがウソをついたとか、勘違いとか言うんじゃなくて」
「ハア」
「見解というか考えの相違ですから、あくまでも。ゼッタイに」

右隣に座るGさん家族の正面にナースN、MIHIセンセの靴に軽い衝撃コツン。
「ゴキブリ?まあね、良かれと思ってしたことが徒になるとか。良くあるでしょ」
「ハア」

「んで大がかりな検査器具でナンか異常があると、症状をそっちへ結びつけたくなる。
診断名と薬は、どんどん増えて。いろんなモンで腹一杯」
「フツーなんですか、それって」

「心配すればするほど、心配の種が増えるようなモンで。なんか無いと、落ち着かん」
「ビョーキがあると落ち着きますか、やはり」
「前のセンセは心配しすぎて検査しまくり。ビョーキを探した結果、薬9種類」

「歳を取ると、色々ありますから。薬も増える、9種類」
「ボクみたいナンが3人居ってもケンカするのに、9人居ったら収集が付かんッしょ」
「喧嘩大会ですね。センセらも大変ですねー、当てモノみたいで」

「極たまに、時々外れることがあって。時々それに気づくヤツが居って」
「時々ですね、時々。その場合、センセの立ち位置は何処なんです?」
「んでも、外れ診断に気づいて薬減らしたら。具合が良くなったしょ?」

「確かに。でも、外れに気づくんはセンセだけ?センセの外れは、誰が?」
「まあ、初心に帰るってんですか。運良く、色んな事が見えて来て」
「それが、うちのばあちゃんにも?」

「ハイ。ボクの場合、ウンが良いというか。ばあちゃんが強運と言うか」
「それで、結果的に良かったワケですね」
「医者選びも、運でしょ」
つま先に軽い衝撃を3発受けて病状説明は終了し、ご家族は撤収。

「しかし、センセ。目が覚めたわ、実際。医者っちゃ信用出来んことが、よー分かった」
「そうやろ、そうやろ。実際、医者っちゃ信用出来んやろ」
「そうそう、医者っちゃ信用出来ッ。んで、センセのお仕事は詐欺師?」ナースG。

だから団塊医っちゃ、信用出来ん。

<取引としての団塊禁酒>

キューブラーロスの「死ぬ瞬間」での5段階のうちの1つ、取引。
そんな格好いいモンじゃないけど、取引としての禁酒で10年が過ぎた。

TVCMでウグッとビール登場で、汗をかいた時に喉が同調したのは最初の2,3ヶ月。
半年過ぎた頃から気にならず、ノンアルコールビールか氷水で代用出来るようになった。
グレープフルーツジュースやノンカロリー炭酸飲料は取引の妨げにならない。

アルコールと決別する代わりにダイエット効果で、ベルトの穴の一が2つ移動。
出来合いのパンツでも手直ししなくて良いから、選び放題。
ポロもBDシャツも1サイズダウンし、変わらないのは靴とソックスだけになった。

この頃から体重計に乗るのが習慣化し、時に反省時に安心の日々。
奥様から「お腹がへこんだわね」と言われ、減量の実感が増すと益々頑張ろうと思う。
禁酒して1年経ってみると、「禁煙は簡単だけど禁酒は無理」の口癖はナンだったのか?

禁煙で分かったコツは「次に始めるまで、止めてみよう」だった。
そのお気楽さがストレスを生まないから、続けられると思ったのが禁酒。
あんまり孫が可愛くて、「この子がジジイの言葉を理解するまで生き抜こう」と。

不良ジジイは健在だぜイ!を可愛い孫に見せつけるには、酒なんて止めるの簡単。
そう思って始めた禁酒も、やって見りゃなんて事はなく時の流れはスイスイ。
ふと振り返ってみると、湿度と温度に対する過敏さ異常反応(やたら汗かき)は健在。
どうやら、「発汗減少」を取引条件に入れるのを忘れたようだ。

「酒も要らなきゃ、タバコも要らぬ。あたしゃも少し、汗減らしたい」

<シャーロキアン団塊の夜>

久しぶりの、不良夜遊び夫婦だった。
かねてより天気予報と睨めっこ、夕食後ホタルを見に車で10分ほど。
雨が来そうな曇り空はいつもより日の落ち方が早かったけど、蛍が飛ぶにはちょいと早い。

それも想定内で、昭和45年頃に悪友達のたまり場だった喫茶+ミニギャラリー。
お目当てはデザート系、私はフルーツヨーグルトで奥様はフルーツ蜜豆。
満腹になった頃には完全に日が落ちて、フラフラ飛び交う小さな明かり。
川の上手から下手とUターンしてエンジョイ20分デートは、毎年のこと。

昨夜のちょい早めの夕食は、棚から選ぶ家庭料理の食堂ディナー。
2人で色んな8品、ご飯大1ヶを2人で分けて丁度良い塩梅はジジイ向き。
「1200円少々で、これだけの量を作って皿まで洗うかね?凄いモンだ」の感動。

程良い時間ちょい前に、チョコ系クッキーとアーモンドチョコ1箱ずつ買い込んで。
ナンとか賞を取ったらしい映画でも、ギリギリに入場するし並ぶ必要なしは田舎の証拠。
シルバー割引1人\1000にコーヒー購入すれば上映時間で、プチシャーロキアンに変身。
「あららー、完全貸し切りじゃん。電気代だけで、\2000以上使うかもオ」

なんせ、コナンドイルのホームズ全集全9巻読破の私だから。
「ヲイヲイ。ウクレレじゃ有るまいし、バイオリニストのホームズはピンピンしないぜ」
「そうそう、ホームズは痩せていても格闘技じゃ凄いんよね」
「んで、ワトソン君とのなれそめは、ベイカー通りの下宿屋共同生活なんよね」
「んでも、コナンドイルを参考にしたらしいけど。ストーリーはちょっとね。
ハリーポッターとダ・ヴィンチ・コードを足して2で割った感じイ」
「しかしナンだね。やたら出てくるサスペンダーにボウタイは、嬉しいね。身近だね」

ブツブツ言いながら、2時間少々エンジョイする夜。
映画館のドアをくぐれば、シャーロキアンから江戸川アンに戻る。
「江戸川アン」とは下町の甘味処じゃ有るまいしの、江戸川乱歩ファン。
かと言ってランポアンじゃ、ちょっと聞き間違えるとアンポンタンかトルサデポアン。
こんなクダランことを考えながら、不良夫婦の夜遊びは終了。

(注)シャーロキアン とは、A・コナン・ドイルが書いたシャーロック・ホームズ
シリーズの主人公のファン。イギリスではホームジアン、アメリカや日本では
シャーロキアン。関係ないけど、トルサデポアンはフランス語で危険な不整脈。

<週末の団塊1貨幣夕食>

この歳になると、流石にステーキ1Kgを気持ち良いまま腹に収めては居られない。
それでも突然カツカレーが食べたくなって、先週末に物色した末に豚カツ専門店?
カレーを期待する方が無理だし、カツの出来も味も知っているから感動を予想せず。

ちょいピリッとして、お馴染みインド人のシェフが調合したカレーとは明らかに違い。
昔懐かしいちょいとこだわり喫茶店で味わったような、デミグラス混入か?みたいな。
カツは想定通り衣サクサク、筋切り完璧スプーンで切れる肉は噛み心地ソフト。

カレーも良いけどアイスもね!と言うことで、予定の行動を終えて。
さて夕食は生蕎麦専門店へ行けば、開いてるはずがワールドサッカーに負けた?
17時過ぎだというのに暖簾は店の中、トボトボ撤収し急遽うどんへ。

 うどんと言えば、我が郷里の讃岐うどんッ!
箸で挟んでもだらんとしない、ある程度緊張感を保った腰の強さは芯の堅さとは別物。
基本はうどんをゆであげてざっくりお湯を切って丼の中か、お湯を張った桶の中。

丼の中ならたまり醤油+刻みネギ+おろし生姜を軽く混ぜ啜る、讃岐男のうどん生活。
湯気も嬉しいお湯張り伝統の桶に、ユラユラゆれるうどんなら浸け汁付きだ。
塩味はややきつめでも色は黒くなく甘くない汁に、お湯の中から一つまみ下1/3浸すだけ。
あとは一気に啜り上げ、噛むことなく喉ごしを楽しむのがうどん道の正道だ。

並サイズ1人前\500でお釣りが来るから、ネギにお金がかけられないのか。
筋張って歯ごたえ悪しは、讃岐男にはちょい我慢が出来なかったが。
粉から打ち上げたうどんの長さと腰で、テーブルをうっちゃるのを待てる範囲。

帰りの車中の話題は、スパゲッティはなくてもうどんはある讃岐の喫茶店。
こだわりのコーヒーなんか目じゃない、製麺所直送のうどんだから。
昼時分の讃岐の喫茶店じゃ、コーヒーよりうどんを啜る音がうるさい程(ウソです)。

スピーカーの名器「パラゴン」の音より、うどんの汁の味で会話で弾む讃岐の昼時。
金もないし、親と同伴じゃなければ入れなかった喫茶のうどんに対抗して。
自分で湯がいて汁・ネギ・天かす入れ放題、格安ファーストうどん店は500mに1軒。

ダイエットで体重は高校時代に戻り、学生服も着られそうな気になったが。
週末のワンコイン・ディナーは、我がドン亀高校時代を思い出した「丸亀うどん」店。

<団塊医のラウンドが増えたワケ(理由)>

「キャー、ストーカー」
「ヘッヘッヘ。あ、コラッ。誰がストーカーじゃッ」
「今日も、ノリがエエですねー。ウザイぐらい」

「まあな。ドアが1/4開きじゃから、オムツ処置中?あ、誰も居らんッ」
「いま終わったバッカ。ゴジャゴジャ言わずにラウンド、ラウンド」
「ヘエーいと。おっZさん、お元気イ」

「ハイ、まあなんとか」
「今日も頑張って、リハビリ行くぞオ。オーッ」
「そうですわね」

「そんな、やる気がない返事はアカンで。エイエイオー、突撃イーやね」
「ったくもー、患者さんと医者の会話とは思えんわ。ハアー」
「んでも、Zさんは師匠でもないし。ましてや愛人でもないしイ」

「愛人ならラウンドする時に投げキッス。このように、チュッ」
「んじゃ、あんたにオマケで。ホレッ」
「ナンですそれ?お尻に指を当てて、ポイッなんて」

「投げ屁」
「きっちゃないモンが当たったら、女優ナースに傷が付くでしょ」
「んじゃ、これで我慢してね」

「今度は口じゃけど、ナンかヘン。今あたしに何を投げましたア」
「ウゲッと、投げゲップ」
「キャー、止めて下さいよ。ミョーなモン投げるの」

「んでも、口からやでえ」
「お尻も口も、センセの場合は大して変わりませんッ」
「んじゃ、何か。ワシは口から屁をこいて、尻からうどん啜るんか。ウー、やってみよ」

「やる気はおっしゃって下さい、見せていただきますからッ」
「あのーZさんを、リハビリにお連れして宜しかったでしょうか?」
 カーテンから顔をにゅーっと出す、理学療法士P。

「ダメダメ、もうちょっとセンセのお話し聞きたいわ」のZさん。
「ダメよ、MIHIセンセの話を聞いていても足は丈夫にならないわよ。リハ行ってね」
「足は丈夫にならんでも、なんか気持ちは陽気になるわ」
「んじゃ。ラウンドが終わったら、リハ室へ出張ってもらうわ。ネッ、センセ」

団塊医のラウンドの場所が1つ増えた、午後。

<団塊が欲しがるリカバリCD>

「センセ、あたしの可愛いパソコン」
「そうよなー、あんたんちで可愛いって言えばパソコンぐらいしか・・・」
「ピーちゃんもですッ」

「あの駄犬も見方によったら、小型犬じゃからサイズ的にだけ可愛い」
「どーしても、見た目が可愛いことに賛同していただけないんですね」
「強いて言えば、アリンコサイズの目でのっべり可愛いとか?」

「気にくわない誉め方ですけど、他に言い方があれば」
「無いから無理やり、万力で搾りきった歯磨き粉チューブをゾウに踏んで・・・」
「そこまでやらないと、誉め言葉が出ないんですかッ。んでも、今日は我慢と」

「怪しい我慢はイカンぞ。拙者、先を急ぐ旅。イカの一夜干し囓って、達者で暮らせ」
「こらこら、さっき言ったパソコン。仕事中に止まるは、キレるは、言うこと聞かないは。
まるでMIHIセンセじゃないですか、殺す・・・んじゃなかった捨てるわけにも行かず」

「ういヤツじゃのー、ナデナデして可愛がってあげてね」
「んじゃなくてエ、ステーションのパソコンと我が家のとの間を取り持つUSB」
「三途の川の渡し船みたいな」

「んで、この間駆除したゴキみたいな木馬ウイルスとか色々。感染したんじゃないかと」
「あり得るなー、あんたの腐れ脳みそがCPUかシステムに感染したとか」
「ウウ・・・我慢、我慢っと。んでセンセ、ウフッ」

「あいやしばらくお待ち下せエ、持病のさし込みがコーモンをいたぶって言うんよ。
今日は婦長の頼みを聞くなーッてナ」
「そんな都合の良い、許しません。水戸様を折檻しますわよ」

「んじゃ、教えて進ぜよう。リーサルウエポンやね。リカバリCD」
「そう、それッ!」
「研修会の朝お届け、帰りにいただいて帰りますから。セッティングしておきますから」

それから2時間つきっきりで、合間にちょいラウンドして帰って来る休日当直。
椅子に座って膝がテーブルに当たった瞬間、プチッと切れる電源。
全てのコードを抜いて刺しすると、電源復活のやり直し3回。

「お世話になりましたアー。センセ、治ったア?」
「治ったような治ってないような、初期化は済んだけどな・・・」
「まあそこまでやれば、後は家で仕切り直しでしょ。んじゃ、コード外さなきゃ」

「あ!こ、コラッ。そのACコードは、ナンじゃッ」
「なにが、ナンじゃッですか?」
「包帯でグルグル巻きにされたミイラみたいな、変圧部分」

「あ、これね。Pちゃんがコード引っ張って落とす、囓る、オシッコかける」
「どらどら、グリグリと」ディスプレイの後ろから引きずり出されたコードを振り廻す。
「あらら、電源が切れた。あら、入った。なんじゃ、コードの不良」

「文献読もうと思ってた2時間を返せエー、鬼イ、人でなしイ、砂かけ婆アー」
「そこまで言わなくても・・・。MIHIセンセのリカバリCDって、ナインですか?」
有ったら欲しい、むだ時間のリカバリCD。ウウウ・・・

団塊が欲しがる、人生リカバリCD。

<団塊の殿チャンス>

「センセ、いつになくヘンッ」
「顔もエエし、スタイル抜群。ワシのために、容姿端麗って言葉があるワケよ。
はたまたキムタク似ってのは、すなはちMIHIセンセと同義語(語尾上げで)」

「あ、フツーにヘンじゃわ。んでも、ナンか口に入れてません。鳥もちとか?」
「口から鳥もちをピュッ、ハエをシュッと捕まえて。銀バエは、美味いッ」
「良く独り遊びされますわねー、感心するワ。独居ジジイがこれじゃったら・・・ねえ」

「ナンや、はっきり言うてみイ。事と次第によっちゃ、暴れるデ。ワシ」
「半径3.9km、誰も近づかないから。ミイラになっても発見されない、みたいな」
「キムタク似ジジイなら、家の周りを徘徊バッちゃんで賑わう(語尾上げで)」

「石投げたり、油撒いて火を付けてウチワで扇いだり」
「あ、ちょっと待ってね。んも、うがいする。口が渇いて、モゴモゴ」
「確かに、モッチャリした言い方」

「あ、これね。じんま疹で貰った薬の効き目が弱い、自分で考えた処方」
「んなら、P病院の皮膚科。受診すればエかったでしょッ。自分で勝手に処方」
「いつもマスクして往診に来る、皮膚科の開業医センセの実力と素顔も見たい」

「んで、どうなんです。効き目は?皮膚科のセンセの素顔は?」
「ワシの処方の方が、効き目は速いがキレるのも速い。貰ったヤツは、逆。
口が渇くのなんのって、ひでーもんだで。あ、顔の勝負はワシの勝ち。自画自賛」

「世の中上手く行かんモンですねー、センセの人生みたいにウソと誤魔化しばっか」
「頭ボーッとしてるは、絶壁だわ」加わるナースY。
「チャンスよ、Sちゃん。脳みその回転、グズグズよ」追加するナースC。

「んじゃ失礼して。MIHIセンセ、殿が上洛してご不在ですので。処方、んじゃなかった。
殿の書類を、代筆していただきたい」
「殿の身代わりとは、何たる名誉。何たる晴れがましさ、んでどれ?」

「これ3枚ね、よろぴくウ」
「殿は何処へ?あ、江戸!」
「じんま疹は酷くなった?全身に廻った?ウフッ、致命的になった?」ナースS。

「それが嬉しいことに、殆ど消えて。残ったのは、脳みそがボーッとしてるのだけ。
あと2,3日で、すべすべ肌っちゅーか。乙女ジジイの柔肌っちゅーか」
「んじゃ。院長センセ・・んじゃなかった、殿のチャンスもあと数分」

団塊殿のチャンスに絶壁後頭部をポリポリ、昼下がり。

<団塊はどこを伸ばす?>

「モーニン」
「お早うございます」
「あららー。コロボックル婦長さんが、ナゼ故今日はワシを見下げ目線?」

「コロボックルなんて、そんなに可愛いですウ。あたし」
「サイズが35cmくらいじゃったっけ、コロボちゃんは」
「あたし、その4倍はありますッ」

「んじゃ、とうとう伸びた?真夜中に天井のヤモリを食べようと、首がにゅるにゅる」
「ろくろ首の現代版ですね、足元見て下さいません。椅子の上に上がってるでしょッ」
「あららー、段ボールが3個も。とうとう夜逃げ?みたいな」

「夜逃げなんて、風情のないことを。せめて駆け落ちとか・・・憧れるわア」
「貧しさに負けたアー。イイエ、空腹に負けたアー。なんて歌があったけど。
ああいう感じイ?それとも不幸のどん底へ、ゴロゴロ転がり落ちる駆け落ち?」

「ヤですよ、そんなの。あ、それより。そこの棚の上の定規を取っていただけますウ」
「ワシ、いま定規をとりたくない気分ナンよねー。バケツじゃイケン?」
「スキマの幅を計るのに、定規じゃなくて。どうやって、バケツで計るんですかッ」

「バケツの外周が23.7cmとして、くるくる回すと・・・」
「センセの短い手をちょっと伸ばせば、届くでしょッ」
「ワシ、今傷ついてすんごく手を引っ込めたい気分。他にもう伸ばすとこ無いモンなー」

「アタシ、キレそう。椅子から転げ落ちそう、眼前のセンセの頭をぶっ飛ばしそう」
「手エ以外で、何処をどう伸ばす?」
「もうちょっとでエエですから、キレる気持ちを伸ばしていただきたいですわ」

「キレるなんて、ああた。最近伸びたんよ我慢時間と鼻の下」
「もう結構です、椅子から降りて自分で」
「そうそう。そう言う素直に言えば、ワシも鬼やブタじゃなからブヒッと取るデ」

「鬼じゃなく、ブタですけど。それと、大きな声じゃ言えませんけど」
「んでも小さな声じゃ、聞こえない(語尾上げで)」
「あたしのカモシカのような脚を引っかけて、もうちょっとですっ転びそうになって。
センセの足。短いクセに目一杯伸ばして、いかにも足が長く見せるのお止め遊ばせ」

思い切り伸ばした足の上に落ちてきたホコリは、サクッと避ける。
ホコリを払いながら何処をどう伸ばすか?悩む、団塊。

<団塊のじんま疹がフツーで悪いかッ!>


「それで、ご自分で書かれた紹介状を見せていただきましたけど」
「昨夜の写真がこれで、今日はこんな風に跡形もなく」
「ハイ、フツーのじんま疹ですね。典型的な」

「天然酵母のパンを食べて、2時間した頃より痒くなって」
「あとは?」
「水です。そのパンは、チョコレートが練り込んで。味は、マアマア」

「センセは、菓子パンがお好きで?」
「パンが大好きで、特にあんパンとクリーム系に目がないワケで」
「イチゴジャムが加わって、3食菓子パンとか?」

「イエ、基本2食っしょ。んで、センセ。診断は?」
「フツーのじんま疹では、ご不満ですか?」
「不満とか言う、緊張感のない問題じゃなくてですね」

「お酒とかタバコは?」
「両方とも、とっくに縁が切れました」」
「あらまあ。センセをお世話するのって、簡単ですね」

「簡単ねエ、それを言うなら。盆栽の松を、横に割ったような感じ(語尾上げで)」
「痒いからと言って、お風呂で体をごしごしやらないで下さいね」
「んで、やっぱフツーのじんま疹?」

「ハイ。ご不満かも知れませんが、フツーの。ですから、フツーのお薬を出しますね」
「他に病気は?デブ以外で」
「やっぱしご不満ですか、フツーじゃ」

「んじゃ、フツーのお薬をいただいて。フツーに帰ります」
「ハイ、お大事に」5分で撤収し、フツーに帰って来た病棟廊下。
「あら、センセ。短パンにTシャツで、いつものフツーのセンセ。んで、如何でした?」

「フツーのじんま疹じゃと。着替えよ」
「ああ、フツーの人でも出るじんま疹。エかったですわねー、フツーの生き物扱いで」
「突然出て、ちょっとして消えて。あっちこっちに移動ってのが、フツーの証拠じゃと」

「んじゃ、やっぱ肌に良いベビー用石けんとか使うんでしょうね?フツーは」
「ワシって肌も気も、か弱い人。んで肌に合わせて、ベビー・ボデーシャンプー」
「体に合わすってんなら、肌は洗濯石けん。頭は、ベビーシャンプー(語尾上げで)」

「頭だけは、フツーの人間用シャンプー。毛根弱いんで」
「センセはフツーじゃないけど、じんま疹はフツーなんだ。少しはフツーもあるワケね」
「ワシは、凄ごく痒いし、綺麗なピンクじゃし。キムタク似のワシは、ただ者じゃない」

「センセと同じ異常なじんま疹だと、都合良く診断したワケ?分かるワあ、その異常さ」
「んでも、フツーなんて」
「やっぱフツーじゃないセンセに出るじんま疹は、フツーじゃない?」

「そうやろ、そうやろ。うー、痒いイー。フツーじゃないイー」
「ゼッタイフツーじゃないわ。センセは」
「んでもじんま疹はフツーなんて、薬もフツー」

「人間の医者は、気に入らんっすねー。どっかに、フツーの獣医は居らんやろか?」
「ゼッタイ獣医よねー。異常な獣医でもエエから。センセの蕁麻疹が、フツーなんて。
フツー極悪性蕁麻疹っしょ」

私のじんま疹をフツーにしたくないらしいが、ワシの蕁麻疹がフツーで悪いかッ!

<ICD更新を待つ団塊の蕁麻疹>

「昨日の当直は参ったモンねー、今日は眠くて」
「遊びに来た座敷童達をとっ捕まえて、腹踊りをさせたとか?」
「それに近いような、真反対のような」

「センセの得意な、どっちつかずね。先が短いから、睡眠時間をどうかしたいみたいな。
息してる時間を長引かそうと思ってんでしょ、小癪な小技」
「君達は3万年に1回くらい、ワシを尊敬する気持ちになれない?
それほど家庭不和?それほど夫婦仲最悪、罵詈雑言?それほど赤字家計?」

「3万円のTシャツを、バーゲンで3枚。昨日から、旦那のビールは小瓶」
「1年後に旦那のミイラを作って、干物市場に出す気やね」
「んで。睡眠不足の原因は、当直室に悪魔が来たりてピーヒャララ?」

「夕方からミョーな感じやったんじゃけど、電気消した途端に痒いの痒くないのって」
「んで、どっちなんです?高血圧ですか、キレ痔ですか。はっきりして下さいッ」
「電気つければ、全身じゃモンねー。あっちこっちに大小様々、ピンクやら赤いのやら」

「あっちゃこっちゃにお花が咲いて、あらまあチョウチョまでピラピラ」
「んな可愛い蕁麻疹があるかッ、責任者出てこいッ!」
「あったらドサマワリッ!んで、原因はやはりご先祖の祟り?ひらい食い?」

「んでも、まだ痒いし。赤いし」
「体中ですか?赤いのは」
「ヘソの横で良かったら見る?一番痒いとこは、勿体なくて見せられん」

「そう言われると気になるけど」
「この印籠が目に!じゃなく、この陰部が目に入らぬか!」
「誰がそんなとこみたがるモンですかッ」

「しかし何で顔には出んのやろ?」
「それは、厚みの差?」
「薄すぎて、じんま疹が出る余地がない?」

「それを厚顔無恥と呼ぶ」
「アレルゲンを薄めて体外排出で、ミネラルウオーターがぶがぶ」
「飲尿療法じゃないですか」

「おかげで太っちゃって、ミネラルウオーターが原因の新種のビョーキやろか?」
「ミネラルウオーターに対するインネンでしょッ。メタボに、蕁麻疹が加わっただけ」
「ビョーキの国際分類(ICD-10)がすっかり新しくなるんて、日本じゃ2018年らしいけど。
じんま疹由来デブは、やっぱJYD−37みたいな」

「いつもより、7倍はすっきりした顔してますけど」
「睡眠不足に加えてかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)。私は誰?ここは地獄の3丁目?」
「いつもより数倍、まともじゃないですか」

「エかった、エかった。お祭りじゃ、叩け大太鼓」
「やっぱ新種のビョーキ、ICD更新してKM082」
「おっ、新種ね。んーと、キムタク似(K)MIHI(M)オヤジ(O)じゃね」
「イイエ。最初がキモイ(K)で、後はおおせの通りになります」

ICD更新が待ち遠しい、午後。

<団塊のカリスマ医養成ギブス>

「ヘッヘッヘ」
「フヘッヘ。ワシの背後霊は、MRのPさんやろ」
「あらら。ここにあるのは、MIHIセンセの抜け殻?」

「あ、それね。ワシの、カリスマ医師養成ギブス」
「センセ。ご冗談を」
「それを着けて患者さんを触ると、凄いんやで。エコー、CT、MRIは言うに及ばず。
PETはお呼びじゃない。ケツから血イが出る前から、イボ痔が分かっちゃう」

「そんなん有るんですかア、またまた怪しい」
「ピッツバーグ・コンパウンド・Bの、陽電子放射線断層撮影もびっくりしてチビる。
YYFSによる手かざしイタコお祈り風味、オマケはニンニク豆板醤隠し味」

「新しい中華料理ですか?しかし、YYMSって?」
「Y温泉・湯の香・パラパラ粉末・診断の略」
「案外と馴染みやすいみたいな、ゆったり癒し系みたいな。んで、YYPSじゃ?」

「最後に湧かしまくったお湯を注ぐと、凄まじいよ。さてお立ち会い」
「さぞかし、大騒ぎ。さぞかし、あぢぢ。やっぱ、YYPSじゃ?」
「細かいことを言うと、貴方は成仏出来ませんって。イタコが言うとる」

「背筋がゾワゾワしてきましたけど、診断は?」
「その騒ぎ具合で体の何処にビョーキがあるか、たちどころに分かってしまう」
「かなり恐いですねー。あら、K義肢制作所って札が」

「あ、それは世を欺く仮の名前。そう言うところを見てるよーじゃイカンぞ。
MRのPさんにびったしの、カリスマMR養成ギブスもあるでよ」
「な、ナンですかそれ」

「頭からかぶって、顎をグイグイ締め上げるんよ。メタボ腹にムチを2,3発くらわして。
しかも、ぶっとい火の付いた蝋燭3本。全身くまなく、舐めるようにボタボタ」
「そーとー熱そうですけど、声が出ますか?絶命寸前の悲鳴しか出ないかもオ」

「良いところに気がついた。それを装着して薬の説明トレーニングをすれば、あら不思議。
37年後には、カリスマMRの出来上がり」
「センセとお付き合いして、13年。掛け合い漫才できるのは、センセだけ。
でも、あと2年で定年。ナンか、さみしい。ナンか、安堵。ナンか、MR卒業」

カリスマ医師養成ギブスを卒業したい、MIHIセンセ。

<団塊の街角クッキー>

「センセ、主人なんですけど。最近、図書館に行って帰って来られなくなって」
「寄り道してるとか?」
「帰り道が分からなくなって、警察から電話があって迎えに行ったり」

「手足は、不自由になってません?」
「ハイ、けっこう器用に棚を直したり。ずれますけど。絵は中学生以上、高校生以下」
「足は?」

「サクサク、あたしの足じゃ追いつけないことも。でも文句は、はっきり言えなくて。
コーフンしてもしなくても、言葉が出なくて。ウーウー。何が言いたいんですかッて。
あたしの方がコーフンしちゃって」

「んで、ちょっと診察しましょうねー。お話も聞かせてもらって」
<経過>
数年前にカラオケで、歌詞が出ないのに気づいた。
図書館に行って、帰り道が分からなくなることが時々あった。
脳外科でCTなど精査を受けるも、異常なしと言われた。
神経内科を受診したが、ここでも異常なしと言われた。
人の名前や言葉が思い出せないことが続いた。
アルツハイマー病(AD)の疑いが強い点で、STと意見が一致。
本人の承諾を得てアリセプトを開始した。
その後、脳血流シンチを行いADの疑いが強いことを指摘された。
認知症検査(HDS-R)は3月15点、7月21点、10月26点と着実に改善した不思議。
しかし失語症には大きな変化はなく、少なくとも悪化はしていなかった。
言葉は出ないが人から言われると指摘でき、身振りで言葉を伝えることは可能。
趣味の絵には特別な変化は無く、周囲から賞賛されて状況は安定。

「Pさんはお洒落じゃねー、男前じゃし。センスも良いし」
「ハア・・・・ども」
「検査はだんだんようなってきたんじゃけど、どうね?」

「ハア・・・んーん。あの・・・・」
「図書館へ行ってる?」
「ハア・・・んーん」
「ちゃんと帰られる?」
「ハア・・・んーん」
「絵は描いてます?」
「ハア・・・んーん」

「あの・・・んーん。これ」で、指さすカルテ。
「お薬ね、4週間分でしょ?」
「ハあ」

会話が全く一方通行と言うワケではなく、自分で身繕いをして消える。
時々奥様がお薬を取りに来られて、彼を忘れかけていた日曜日。
信号待ちの通りの向こうに、素敵なヒゲの紳士が私に気づいて手を振る。

道路の真ん中でご挨拶をすれば、「アア、んーん」と握手。
「今日はお買い物?散歩?」
「んーん」と言いつつポケットに手を突っ込んで何やら探す仕草。

「アア、んー」でぼくの手にヒラに1枚のチョコクッキー。
側で見ていた奥様が驚き「あ、スイマセンねー」を聞きながら歩き去る。

「お父さん、あの方?」
「んーと、患者さん。息子とでも思ってんのやろか?チョコクッキー1枚」
「どうなの?」
「ホントに、アルツハイマーかねー?」

街角で貰ったクッキーの味に思いをはせる団塊の、午後。

<団塊医は誉め上手>

「んでもさ、凄っごいんよ。ワシが帰ると、玄関まで出て来て背中へピタッやモンねー」
「あら、うちもですわよ」
「んで。これをおばあちゃんへ、ハーイしてねって言うと喜んで持って行く」
「そこがちょっと違いますわ、うちは咥えてですけど」

「ワイルドなお子やねー、坊や?あ、そ。それはそれでエエとしょ。んで。
ご飯の時に可愛い両手を合わせて、いただきますもごちそうさまも出来るんやで。
思わず、この孫は1歳にして天才の片鱗をのぞかせてるんとちゃうか?なんてな」

「まあうちの場合は、前足ですけど」
「ちょ、ちょっと待てや。それって、野獣。青ばな垂らした、駄犬の話?」
「チョッ、チョッ。うちのピーちゃんをつかまえて、駄犬とか野獣とか」

「拍手すると物覚えが倍増して、大抵のモンは2日じゃね。サクッと決めるのに」
「うちだって1週間でお手」
「アホ犬でも、おだてりゃ木に登るかも」

「誉めると伸びるタイプ(語尾上げで)」
「その点では、ワシの孫も駄犬と同じ。あー、ヤダ。駄犬と孫がア、ヤダあ・・・」
「やたら駄犬、駄犬って言わないで下さいませ」

そんな会話があって、ラウンドへ。
「あー、センセ。丁度良いところへ、罠にかかった野ブタみたいな」
「ブヒッ。拙者先を急ぐ故、さらばじゃッ。ブヒッ」

「コラコラ。このプリンターですけど」
「あんたらが屁をこいて交代睡眠中、使いもせんのに電源入れられて?」
「あたしは屁をこかない人ですけど、嗅いだことあるんですかッ。何なら、今ここで。
 んじゃなくてエ、言うこと聞かないんですウ」

「そらあんた、あんだけパワハラしたらなー。誉めて伸びるタイプのプリンター?」
「どう言うプリンターですか、それ」
「こう、四角くて。角が丸くて、、シッポかと思ったら電源コードで」

「んじゃなくてエ。あらら、何を頼むか忘れてしまったわ」
「プリンターの誉め方とちゃうか?」
「でしたっけエ?ナンか違うような・・・」

「ワシって、カリスマ・プリンター誉め師」
「やって見せて下さいよ、出来るモンなら」
「誰にも口外無用ならな。んじゃ、行くで・・・エエ子じゃねー。あらよっと。
あいつらが寝てる時もサボってる時も、独り電源入れられて。可哀想なやっちゃウウ」

「センセ、ナンかミョーなモンひらい食いした?」
「静粛に。ああ、泣かんでエエ。今度ワシがあんたの憂さを晴らしたるデ、任せなさい。
休憩室の前に、落とし穴30個ほど掘りまくるかんね。エエ子じゃあー」

「それでホントに治るんですウ?」
<ギィヤー・・・ンゴゴゴゴ>
「見ろ、治ったやん。あらら、紙詰まり。誉めて言うこと聞かないヤツは、あんたと同じ。
アホッ、カス。このオ、おたんこナース。エエイッ、このッ」

「やっぱ、殴るんじゃ」
「おっかしいなー・・・エエイッ。このッ、このッ」

プリンターの誉め方を忘れた褒め上手団塊の、午後。

<団塊は腰痛・芝・脳みそ衣替え>

「昨日ちょっと無理して庭作業やっちゃったモンなー、起きられるかいな。
起きぬけの腹筋30回。なんか、腰が気持ちエエんじゃけどなー。ウウウ・・・
オロッ、コルセット無しで取りあえず起床の嵐は・・・無いなー。
んでも、用心に用心を重ねてベルトだけでも・・・」

 明日から1週間、芝をはぎ取り庭改造が始まる。
出来上がりが楽しみだし、なんせこの季節に雑草だらけの芝が心穏やかでなく。
考えてみれば、およそ20年間で1トン少々の芝目土を入れた計算。

芝生の教科書も買ったし、手入れのグッズは数限りなく手に入れた。
芝刈り機は買い換えて3台目、肥料なんて数えられないくらい撒き散らした。
それより何より、刈り取って散水する一時の快感のための大汗は忘れるほど。

衣替えと共に、腰と芝も衣替えをすることになった。
5月と言えば衣替えの季節だから、いつかは外したいコルセット。
外して恐い「腰イテテ」だから、延ばし延ばしにしてきたコルセット外し。
その分鎮痛剤を徐々に減らして、筋トレとストレッチは怠らず。

3時間の仕事中バンド無しで過ごしても、腰は軽い鈍痛程度で座れば5分で回復。
椅子の背中に低反発クッションセットすれば、心地よい背中さわりは懐かしい。
これなら連休中に腰痛に気を取られず論文執筆が出来そうで、ちょい安心。

すそが擦りきれるほど使い込んだ綿パン、いっそ短パンに改造するぞ!
と言うことで、久しぶりに綿パンを探しに行けば、あららなんてこったい!
ダイエット+禁酒+腰痛で筋トレ=17.5Kg減量の成果があって。

パンツサイズが1ランクダウンしても、若干余裕の腹回り。
4cm以上細くなった(メタボ腹にも、誤差範囲ではないッ!)確認の感動。
使わないでやせ細ってしまいそうな脳みそは、トレーニングしなきゃ!

さて昼のお約束のホームズも全9巻の最終となり、半ばを越えた。
ツチヤケンジ本2冊を残し、「TOEIC」攻略本と関連本を含めて7冊。
脳みそをコテコテの大和味から、グローバル風味に衣替えする団塊。

<団塊のボナパルトとエバンスの診断>

先日、大ナポレオン展にお邪魔して知った。
彼が上着の真ん中辺りのボタンを外し、右手を突っ込んでる姿。
ポケットに手を突っ込む癖と同じで、位置が違うだけだと思っていた。

解説を見ていると、51才の時に胃癌で亡くなったそうだ。
それを思うと、あの右手は痛みを紛らせるために心窩部の辺りを押さえているのか?

帝王の座を追われて島へ流された失望の姿は、でっぷりとしてガンの痩せはない。
あのメタボ腹は、転移かそれとも低蛋白血症に伴う腹水か?そう見ると、眼瞼の浮腫?

それよりなにより、我がエバンスは玄関前で吐血して亡くなっているのだが。
物の本によれば、診断は十二指腸潰瘍の吐血と言うことになっているようだ。

ジャズメンには当たり前だった危ない薬、それを介して感染したなんて想定内。
運が悪かったら肝炎から始まって、治療もまともに出来なかったら肝硬変?

更にに進行すれば食道静脈瘤を併発し、治療せずにピアノを弾き続ければ・・・。
吐血だけで上部消化管出血と静脈瘤破裂とは、鑑別できない。

職業柄か人を見ると隠された病気を思い、亡くなったと聞けば死因を思い。
自分ならどう思われるのか?なんて、灰になったら関係無いゼ!は団塊世代。

<団塊の買い物>


ただでさえせっかちな上に腰イテテが加わって、少々の動きにも17分で閾値に到達。
最も苦手なのが何を買おうか迷うような買い物で、今まで以上に動線を意識して。
買い物へ行く前から目的の品まで計算し、車から陳列棚経由レジまでシミュレーション。

目的地に着くまでに目に入らなければ、余計なものは買うことが無く。
最低限のショートカット動線に距離と時間が加算されて、歩くタクシーメーター。
立ち止まっている時間、レジで手こずっている時間、外れた値札チェック時間は論外。

せっかちの3乗のせわしない買い物だから、値切る精神的余裕が生まれるはずもない。
腰イテテ・馬のしっぽ神経痛による大腿皮神経痛・異常なまでのせっかち性格の三重苦。
これはネットによってあっけなくクリアされたが、もはや時代に激しく後れをとっている。

探す・値切る代わりに最安値をチェック・注文配達の手はずまで、数分で終了。
最安値であれば代引き手数料が加わってもおつりが来るし、場合によっては配達料が無料。
アメリカ大陸町外れ住在風のオヤジは、こうしてネット通販にどっぷり浸かるのか?

見て触ってみなきゃ買い物はしない決意は、最早どこを探しても欠片も残っていない。
腰イテテは、「気に入らなかったら、送り返せば良いの」の前にひれ伏してしまった。
送り返すのも宅配便の回収という、楽ちんの技があるのを知ったシーラカンスオヤジ。

今時の団塊は、ネット買い物に違和感が無いのがフツー?

<団塊はぶっ飛ばす派>


「どうしてこうするかなー、先祖の顔が見たいね」
「ヘッ、何がですウ。あ、それね。みんなやってますけどね」
「こう言うエエ加減な、中途半端な、やりっ放しは許せんねー。実際」

「意外な面が、すこぶる想定外だわ。センセが、そんな人とは」
「ワシって、こう言うの気になるタイプの人」
「局麻ゼリーチューブは、いつもベコベコ。あっちこっち、好きなところを摘むから」

「こうしてこうすると、すっきり。見た目は、ワシみたいなキムタク似(語尾上げで)」
「そうしてそうすると、猪八戒似。はたまたカーネルサンダース似のオヤジのまんま」
「7秒待ってね、直ぐ済むから」

「センセは、歯磨きチューブは下からクルクル巻いて使い切る派?」
「んにゃ、固いモンで下から押し上げて。使って無くなったところを、超薄くする派」
「どーせ捨てるのにと思う派ですね、あたしは」

「主人はテキトーに摘む派で、それに輪を掛けてあたしがエエ加減に摘む派」
「ワシは歯磨きチューブをエエ加減にして済ますヤツは、ぶっ飛ばす派」
「ミョーなところが、几帳面なんですね。もっと違うところが几帳面ならエエのに派」

「ハイッ、挿入完了うッ。やっぱチューブをちゃんと摘むと、滑りがエエね派じゃね」
「ナンでも、派を付ければエエってもんじゃ」
「ある時はナンでも派を付けたがる、ワケワカランッ派。しこうして、その実態は。
ミョーなことしたり、要らんことをゴジャゴジャ言うとぶっ飛ばす派」

歯磨きチューブ1本で派閥争いが起こりそうな、朝。

<団塊が知る、ボジイの激やせする理由(ワケ)>

「ホント、センセ。細くなったワ、ちょっとだけど」
「そうやろ、そうやろ。ホント、激やせ。げっそり」
「なんかあたしのと違うんじゃけどオ、脳みそも痩せた?」

「干からびて、頭を回すとカラカラ。誰が陶器の鈴じゃッ」
「あ、変化無しや。ゼンゼン変わってないわ、回転の仕方。んで、どうやったんですウ」
「どうやったって、丸いモンを四角く削って。丸餅をかき餅に・・・」

「あーらら、悪化してるわ。んじゃなくてエ、ダイエットの仕方ア」
「先ずは、アホ食いせんことやね。あ、ひらい食いもね。時々あんたがやってるヤツ」
「犬猫じゃ有るまいし」

「今時の犬も猫も、食通が多いらしい。んで、ひらい食いをせんグルメなんて」
「そう言えば、うちの犬。ボジイって言うんですけど、好き嫌いがあって」
「例えば味噌汁ぶっかけ飯みたいな残飯は食わんけど、ドッグフードは食うとか」

「何で知ってるんですか。もしかしてセンセ、犬?」
「ガルッ。あんたが電話注文してる昼飯。聞いてると、想定内じゃね」
「天ぷら定食、サイドメニューのカツLLが?」

「食生活が荒れてんとちゃうか?フツーの生活もやけど」
「これで痩せないのは、オカシイでしょ?はア、辛いわ実際」
「逆にイ、痩せたら糖尿が悪化してるみたいな」

「んでも、ボジイは痩せてますワ」
「その名前。ミョーと思わんの?誰が名付け親?」

「うちの爺さまが付けたんですよ。血は出るわ、コーモン焼け火箸痛。痔。
んで、最近どう?って聞くと。最悪なんは、イボジじゃイボジって」
「それと、何処で繋がる?」

「じいちゃんの疣痔の再発で、一緒に通院した孫が覚えちゃって。ジイジはイボジイって。
そのうち、貰ってきた犬をボジイって呼ぼってなったんです。洋風で可愛いでしょ?」
「自分の名前の理由(ワケ)を知ったら、犬もショックでむかつくやろ」

ボジイ激やせの理由(ワケ)を知った団塊の、午後。

<カーテン越しの団塊医>

「ウヒャッ。ヘ、へっくしょーい。ウッウー」
<チャー、チャー、チュー>何はなくとも、1日3回コーモン洗浄水音。
「だ、大丈夫ですかア−」カーテンの向こうから声。

「ホエ?大丈夫じゃけど」
「なんや、センセか。んじゃ、どうでもエエわ。声かけて、損した。次、次行こ」
「コラ待て、んじゃどうでもエエって。どう言うこと?37字以内で簡潔に」

「イエね、トイレを何度も詰まらせたPさんが使ってるのかと。ただそれだけ」
「しかしナンじゃね、シャワーは気持ちエエねー。世に出たウ*チも、すこぶるエエねー。
色・形・艶、もちろん太さに長さは申し分ないけど。見る?あ、見たくない」

5分間ですっきり、ラウンドへ向かった病室10057号。
「Rさーん。おッ早う、元気かねー」
「朝っぱらから大きな声出したら、びっくりして脈が増えるがね」

「Rさん、もともと脈が遅いから丁度エエやんか。次はもっと大きな声か?」
「止めて下さいよ、隣のあたしも驚くじゃございませんか」
追加の声がカーテンのを通して聞こえてくる。

「その声は、んーとGさん。元気かの?」
「だから、Rさんもいつも言うけど。元気じゃったら、こんなところに居らんじゃろ」
「センセ、センセ」

「おろ?その声は、んーと。んーと、どなたかな?」
「そら昨日入院しちゃった、Bさんじゃ」Gさんの助け船1艘。
「初めまして、MIHIです。お見知りおきを」

「やっぱそうじゃろ、MIHIセンセじゃ」
「はあ?ちょっとカーテン開けるね。あららー、Gさんじゃん」
「覚えてくれとったかの?」

「その鼻横の、大きなホクロ。13年前と、ゼンゼン変わらんじゃん」
「センセは・・・あららーセンセ。すっかり、若返ってからに」
「そうなんよ、ミョーにキムタク似じゃろ?」

「アホな冗談言うところは、ゼンゼン変わらん」
「このカーテン、辛気くさいから。パアーッと開けようや」
「そうじゃね、そうしよ」

ポータブルトイレを使う時以外は、カーテンが開けられ明るくなった。
もう1つ、薄化粧の時以外もカーテンがぴちっと閉じられるようで。
他人に化粧する姿は見られたくない乙女心のGさんと見た、団塊。

<団塊はどうなんよ>

「フントにイ。君らワシに言うことと、院長センセに言う事が違わない(語尾上げで)」
「ゼンゼン、違わない(語尾下げで)」
「院長センセにはペンで書いてエエって言うその曲がった口で、ワシにはどうよ?」

「確かにフツーの場合、ペンで書いて良いって言いましたッ。でも、でも。センセには。
パソコンで書くように言いました。相手と字の下手さ加減で、言い方変えましたッ。
その何処がいけないんですウ、臨機応変が」

「ハト山君じゃ有るまいし、フク島さんに言わせればダブルスタンダード。
その心は、二枚舌じゃん。あんたらと全く同じやろ?」
「舌の数が、ハト山君よりセンセが3枚多いだけっしょ。ちっさいこと言わない」

「んじゃ、ワシはどうなんよ。ワシは5枚舌か?」
「あら、6枚でした?」
「んじゃ。ワシは棒キャンデーを、どの舌で舐めたらエエんじゃッ。責任者出てこいッ」

「ちっさい、ちっさい。センセのメタボ腹みたいに、ででーんと大きく構えなきゃ」
「ナンか誉められているような、けなされているような、応えるような気分」
「それを誉めてるととる人は、生まれてこの方ずーっと誉められたことのない人ですね」

「んじゃ、ワシは違うわ。誉められたこと、あるモンねー。ヘンッ」
「ホエ、何処をどう探す。誉めるとこ?」
「悪りイけど、ワシって賞賛の嵐の中ですくすくと育った人」

「確かに。頼みもせんのに、横へすくすく育っちゃった人」
「縦にも少しは育ったし、ホクロも育ったでよ」
「育ってないのは、脳みそだけですかッ」

「あんたワシの脳みその中、見たんか?」
「外から丸見えでしょ、センセの場合」
「誰が、髪の毛が薄いから丸見えじゃッてか」

「そこまで言うてません、思ってるけど」
「んで。本心じゃ、ワシはどうなんよ」
「そんなこと、首締められても。団塊医には言えません」

絶命寸前まで首絞めちゃいたい、午後。

<団塊のオモチャ比較>


こどもの日だからというワケではなく、孫の玩具を日米比較をした格好になった。
三輪車に改造可能な歩行器(アメリカ製)VS プラスチックの滑り台(日本製)。

三輪車の部品は1つ1つが大きめで、工具は全く使う必要がないばかりか。
用事に部品が工具になる優れものには感動した一方、わが国の物はドライバーを必要とし。
ねじ切りもナットもなく、ネジより小さめの穴がプラスチックに空いていて。

ねじ込むほどに、次第にきつくなりながら押し込む感じで最後まで押し込めない不安感。
時間と共にネジが緩みそうな予感、ケガをさせてはならじとジジイの指に力がこもる。
事故と裁判の歴史の差が、オモチャの作りにも出ている気がしてならないのは私だけ?

価格がやや高いアメリカ製とは言えそれを考えても、日本製のリスクが高いのは?
そう思って見るわけではないのだが、こういう製品の差は歴史の中で繰り返す。
子供用玩具に危険な鉛が混入していたり、使ってはいけない塗料の事件は記憶に新しい。

およそ半世紀前とは比較にならないが、幼児のオモチャはじいさんの手作りだったり。
金魚のジョロ、端切れで作った手まり、紙人形。あとはシャモジくらいだろうか?
物心が付くまでにどんな物で遊んだかなんて、記憶に残るはずがないから。

色や形ではなく安全第一こそ、幼児のオモチャで優先順位が高いのかも知れない。
孫のオモチャと小一時間格闘しながら、良いオモチャって何?を考えた団塊の午後。

<団塊が見た診療報酬点数表参考資料>


頑張ればそれなりに評価するらしい改訂と聞いて、医師会配布の分厚い本を手にとった。
最後の頁を確認すればななんと1000頁、これなら翻訳物の内科書約3000頁よりましか。
無味乾燥な「こう言う場合、こうしてこうしなけりゃ点をあげないカンね」のトホホ。

事務のプロがチェックしているから、得意の斜め読みに付箋と動きが鈍い赤のマーカー。
176ページまで来て飽きてしまって、何とか楽をする手立てはないものかの思案に移る。
やらせたい医局の医者が4人・・・と言うことは、読むべきは730ページだから・・・。

 都合良く開かれた医局会に、「上品に稼がせていただきましょうよ」の提案。
「意味ワカラン」の反応に、「やるべき事を徹底し、ご褒美をいただくワケ」にも。
「医者がそこまでやらんと、いけないんですか?」

「今時の研修医でも、コスト意識を持ってますよねー。それがない医者は、研修医以下。
居っても存在が見えない、屁みたいなモンでしょ?」
「んで上品に稼ぐんですね、軍資金がなかったらエエ仕事できんし」

「んじゃ、下品な稼ぎってどんなんです?」
「某ナンタラ会みたいな」
「あ、あそこね。業界じゃ有名ブラック(語尾上げで)」

「んだからア。患者さんのためにちゃんとやってる、プライドがあればの話で。
上品に診療報酬いただいてもエエでしょ。医局の努力で、カバーできるところはして。
んでも。それをやるには、改定された診療報酬を知らなければ脳みそ回らんでしょ?」

「そんなこと、事務がするんじゃないんですか?」
「人間ですから、ミスがつきものでしょ。人間ってそういう生き物、by元第1病理U教授。
;死体はウソ言わん、声なき声を聞け。by法医学K教授、仲人お節介好き」

「確かに、そういうMIHIセンセはミスがMax。人呼んで、Dr.ミステイク」
「センセには言われたくないけど。現場を知ってる我々が出来る範囲で、ダブルチェック。
その程度のことをしても、罰は当たらんでしょ?」

「罰って、誰が当てるんですか?」
「やらなきゃイカンことを、してなかったら。お上が、診療報酬カットの罰をブチブチ」
「そこまで来ますかねー」

「罰が当たってからか、その前か。どっちで手を打ちますウ?想像力働かせたら。
まあ守るより攻める方が、ゼッタイ楽ですよ。これ定説、これ会者定離、これカオス」
「すっかり、ワケ分かりませんけど」

「先制攻撃は負け無しって、兵法にあるしイ。五輪書にも書いてあるの、ご存じですよね。
あれに比べりゃチョロいチョロい、センセらには改訂診療報酬なんて屁1発ブヒッ」

ミョーな論理矛盾を残しつつ、やっと医局の皆さんのOKで担当の割り振り任せた時に。
「前半に大事なことが多いでしょ。MIHIセンセはそこをよろしく」のグー・タイミング。

「勿論、1人180ページ弱でエエですね。あらら、なぜかボクって既に176ページなんだな。
まあ我々の作業は、オマケのようなモンじゃから。何でやろ?残り4ページ、楽勝2分」
「エエですねー、ボクと代わります?」

「ここはきっぱりお断りさせていただいて、皆さんお気張りやっしゃ。ハイ、ガンバ。
もちチェックミスの無いように、ざざっと読めばエエんですから。
まあせっかちな私は1時間勝負。んで、中を取って、期限は1週間でしょ」

「何と何の中を取ったんですか?」
「こんなモンに1ヶ月も使うほど、皆さんヒマじゃないでしょ?
んじゃ、そう言うことでオネガイします」

何でもそうだと思うのだけど、スタッフのやる気を出させるリーダーシップは医局が鍵。
医局が足を引っ張るなんて、言われる前に済ませるのが1流でっせ。イヤ、ホンマ。
だから院長の「スタッフの皆さん、頑張ってネ」に、先ずは医局が応えなきゃアカン。

プライドの高い医者に、
「あくまでも上品に稼ぎましょうよ。あたしら、追いはぎじゃネーんですから」は有効?
診療報酬点数表参考資料をざざっと見て、ナンだかなーと思う団塊の私。

<団塊医の、違うッ!>


「MIHIセンセ、いらっしゃいますかア」あのダミ声は、師長F
<シーン・・・>
「ホントにいらっしゃいませんねー、隠れてませんねー。掃きだめの、猪八戒ですねー」
<声を出さずに、ウッセ。違うッ!キムタク似ッ。でも、ヤツは最近人気ないモンなー>

昼休み突入15分後、医局のドアが閉じかけて止まる。
「机の下に隠れてませんねー、居留守使ってませんね−。やっぱ居らんか、ムムム」
再び閉じたドアは開かれる事が無く、静寂が戻る医局にドア続きの図書室。

15分のストレッチ・プチ筋トレの後、お約束のホームズも図書室のソファー上。
25分でおよそ50頁の短編1作は丁度良い長さで、仕上げの目を休める5分付きが嬉しい。
目を休めながら睡魔に襲われるけど、コナンドイルとの1本勝負の反省で覚醒する。

「ふぁーあ」の大きなアクビ1つと共に、エイヤッと起き上がり。
続きドアをそっと開けようとすると、カチャカチャ先ほどのナースの足音が接近。
思わずソファーにへたり込んで、息を潜めて嵐が過ぎ去るのを待つ予定だったのに。

昼食を終えて帰ってきたセンセを見つけて、「あ、Rセンセ。MIHIセンセは、脱走?」
「タブン隣の図書室で、ストレッチかコナンドイルでしょ」
「んでも、さっき大きな声で呼んでみたけど。どらどら。あーみっけ」

「ヘッヘッヘ、何かご用か。誰が猪八戒じゃッ」
「やっぱ、聞こえてたんだ。居留守使ってたんだ。カウチ読書だったんだ」
「違うッ!自分だけの世界で泳いでたんよ」

「土左衛門で?」
「違うッ!ワシって、こう見えてもサーファーやで」
「ボードに乗せられた、水死体(語尾上げで)。あたしの声、聞こえなかったですウ?」

「聴診器してたから、ワシの呼吸音しか」
「聴診器して、ストレッチ。ナゼ故に、そのようないかがわしい。はたまた、お破廉恥」
「違うッ!循環器医師のたしなみじゃッ。正常心音確認ッ!」

「心音を?正常を?何か、怪しい」
「違うッ!素敵に真面目そのままじゃッ」
「素敵も真面目の使い方も、違うッ!」

違うッ!ことの多い午後に突入した、昼下がり。

<団塊は人のフリ見る>


奥様がレジから出てくるのを待つスーパーのベンチは、恰好のマンウオッチング席。
なんと中年太りが多いモノか、大きな腹を突き出したオヤジ達が通り過ぎる度に思う。
過去に成功したダイエットで1サイズダウンのパンツ、食後はちょっときつめだけど。
それが足かせになってリバウンドを抑制する、人のフリ見て大いに反省する昨今。

「ゲホゲホッ、んじゃ次の方ア」
「お早うございます。ゲゲホッ」
「ゲホッと。んで、どうしました?」

「1週間前から、咳が止まらんのですわ。ゲホゲホゲホッ」
「ンゲゲホッ。あ、熱も38.3度。んじゃ、診察ね。あららー、右下に痰の音じゃね。
気管支炎、痰が黄色くない(語尾上げで)。薬を飲まなきゃイカン。Wさん」

「自力で治らんか?何とか頑張ったんじゃけどなー。ゲホッ、ゲゲホッ」
「限度があるで、いくら何でも。ゲホッと」
「Wさん、このMIHIセンセでさえ今朝からお薬飲んでるのよ。このMIHIセンセでさえ」

「MIHIセンセでさえを、えらく強調」
「そらセンセ、フツーはハナクソ丸めて飲んでも効くセンセでしょ。
そのゴキブリ以上、銀バエ以下のセンセですから」

「なんか、こっちの方がこたえるなー。ゲゲホッ」
「Wさん、人の振り見て我が身を治すって言うでしょ。
MIHIセンセの薬飲むのを見て、Wさんも薬を飲まにゃ。ネッ」

「そう言うモンかのー」
「婦長さん、前足が邪魔ッ。血圧計が見えん」
「んまっ、これは手ですッ」

「んだって、チョキの蹄が付いてるやんか」
「これは指です、ブヒッって啼けばエエんでしょッ」
「分かっとるやんか、ゲホッのブヒッ」

「自分の指だって、チョキしたらブヒと区別が付かん癖に。
人の指見て、我が手の指隠せって言うでしょ」

チョキの指からグーに変えた、咳する団塊の朝。

<団塊医は見た目が良いと字がヘタ>

「MIHI、エエか。酔っぱらってフラフラ歩き回る時は、エエ格好して来るな。
身なりがエエとインネン付けられるから、如何にも見た目医者はアカン」
「ボクって、医者に診られないの得意です。今晩、着替えてお伴します」

「黒装束とか、覆面とか、ミョーなお面はアカン」
「こないだ、縁日でモスラのお面買ったんですけど。ダメですか?」
「ダメに決まっとるやろ、そこいらのオッさんの格好でエエ」

師匠と激酔で乗り込む深夜、タクシードライバーは担当隣の患者さんのご家族。
「あ、センセじゃないですか」
「はあ?あ、どうも」
「修行が足りんッ、もう見破られとる。着いたら起こせ」と同時に深い眠りに落ちる師匠。
「イヤイヤ、そんな格好をしてるから。ちょっと見じゃ、センセには見えん」

この一言を聞かせたい時は、詰まって鼻の通りが悪いのかハゲシイいびき。
師匠の教えは、忠実に守っているけど、医師会長になっちゃった師匠はどうなんだろ?
医局に届いた医師会の雑誌を見て、そんな会話を思い出してラウンドへ。

「あら、センセ。Tさん、回診されました?ホントにイ」
「したけど、あれって亡霊じゃないよな。足もあったし、手もだらっとしてなかったし」

「んじゃなくてエ、顔」
「目の上7cmに皮下出血は、可哀想じゃった。夜中に転んで、歩くのが恐いって。
夜が不安って、言うとった。特にあんたがスッピンで夜勤の時って、言うてなかった」

「何言ってんですか、あたしのスッピン。美しすぎて、眩しいくらいで。嗚呼、罪だわ」
「確かに罪悪。気になるその美貌」
「ヤダ、夫が1人居る身ですわ。そんなに気にされなくても」

「特に右側が気になってしゃーない。3年前から、ずーっと」
「んじゃ、ここの病棟へ来た時から?そんなに際立ってましたア。
人呼んで、掃きだめに天女みたいな。んで、ナゼ故右側?左の方が自信が・・・」

「この1年で、右の耳毛。太さと言い、長さと言い、色つやと言い。申し分なしやね。
感心するわ、ずいぶん立派になっちゃって。肥料は何使ってん、芝生にも使えるん?
あんたを見る度、気になってしゃーない」

「何処を見てるんですかッ、もっと美しいところがあるでしょッ!」
「んーと、んーと、んーと」
「もう結構ですッ」

「しかし、話は違うけど。見た目って大事よなー」
「しつこくお聞きしますけど、それもあたしの事じゃないですね?
確かにMIHIセンセは、白衣を脱いだら医者には見えないですもんね−。実際」

「それがワシの師匠の教えなんよ、ワシ真面目じゃから守ってんの。ずーっと30年。
確かに、人は見た目って言うよねー。こう見えても、ワシがキムタク似なんてな。
人の口には扉を立てられないって言うよねー、照れるけど」

「照れる必要なしッ!確かに、人も医者は見た目かも」
「ナースも、そうやな。その腹で、食べ過ぎに注意って言われても。腹何段?なんてな」

「医者がタバコの臭いさせながら、禁煙しろって言われてもねエ。
デブがメタボ対策の指導じゃ、説得力無いし。減塩醤油も、たっぷりじゃ意味無いし。
ましてやMIHIセンセに、字が下手って言われてもネエ腹立つだけよねー」

「見た目が良いと、字が下手って。ご先祖が言うとった」
「いつ何処で、何代前のご先祖に?名前は?年は?」
「歳だけ知ってるんじゃけど、確か3735才」

「ああ言えばこう言う見た目もどうしようもないご先祖は、字が下手だったんでしょ。
その末裔のMIHIセンセは、ウウウ・・・どっちも」
「ウウウ・・・どっちもだったか」

下手字インネンに変わった見た目の良い(タブン)団塊医の、午後。

<団塊が50年前に聴いた>


ラックからCDを引っ張り出した、「ミッチミラー合唱団」ベストアルバム。

50年前ミッチミラー・ショーが毎週日曜日に放映され(多分)、完全字幕スーパー。
勿論当時はモノクロで、白から黒の濃淡でも画像は良く出来ていた。
当時の私は小学高学年で、「100万人のポピュラーリクエスト」と共に感じる異国。

常にカメラ目線で、両指で輪っかを作り上下させるミッチミラーは印象的だった。
面長に立派なヒゲを鼻の下と顎に蓄え、スーツをびしっと決めていた。
足は長いし胴は短い、格好が良くてお洒落なじいさんがいつも目に映った。

20人以上の団員が厚みのあるコーラス、中学生にも分かりやすい発音で楽しみだった。
オープニングは軽快な「シンガーローン」だから、耳に優しく記憶も鮮やか。
聞こえてくる弾むリズムは、MIHI少年の心も弾ませた。

文芸部と掛け持ちコーラス部を、行ったり来たりする讃岐の高校時代。
なぜかミッチミラーを知ってる同級生は少なく、耳で覚えた英語の歌詞を口ずさんでも。
「何や、意味ワカラン?」リアクションに、「これが英語の歌やで」を返した。

アメリカ人にしては歯切れの良い英語、時に開拓時代の騎兵隊の衣装は新鮮で。
「いつかあんな大人になりたいな」と、憧れの目で見ていたTV画面。
大学に入った頃には既に放映もされていないし、山口じゃレコードも手に入らなかった。

それからおよそ30年、大型電気量販店ワゴンセールで偶然見つけたこのCD。
懐かしのメロディCDラックに収められ、思いだしたように年に1回廻す。
50年前に聴いた「愛しのクレメンタイン」に、仙台での中学生時代に思いを馳せる団塊。

<団塊の新曲>


「げんこつ山のオ・・・・」
レクリエーションは、若い介護士さんが工夫を凝らして毎日色んな行事を催す。
最も燃えるのは風船バレーか、テーブルサッカーだろうがいつもそればっかりじゃ。
歌も頻繁に行われるのだが、カラオケは懐かしのシリーズしか思いつかないようで。

電子ピアノで弾ける曲にも限りがあって、今風は「ナンじゃ、うるさい」不評。
レパートリーの限界を超える時は、誰もが知ってる童謡と言うことになる。
幼稚園児の訪問なら、黄色い声やくぐもった声が入り交じるのはご愛敬なのだが。

黄色の声が入らない時は、いきなりパワーダウンした上に声が出さない人が多い。
スタッフの童謡メドレー独演会か、遠くから風に乗って聞こえてくる幼稚園の音。
それでも担当の患者さんが参加していれば、主治医としては足を止めてチェックとなる。

「あら、センセも参加したいですかア?電柱の陰から覗く、ストーカー」
背中からナースRの声。

「そう言うワケじゃないけどオ・・・」
「またまた、太短い指3本でマイク摘んで。小指なんか、ピッと立てたりして?」
「イヤね、ワシこの3曲は完全振り付きで歌えるんよ。最近」

「危ない趣味に走ってないでしょうね、センセ」
「童謡で近頃のガキが振り向くか?なんたら戦隊6987ジャーやろ」
「そんなに数が多かったら、子供が覚えられんでしょッ。せいぜい5人まで」

「はたまた、秘密のバッコちゃんとか。天然戦士、ピーラリとか」
「直ぐ悪者に負けるでしょッ。如何にも弱わっちくて、ミョーにアホげなネーミング」
「歌のフリが激しすぎて、体が着いて行かんが。童謡なら、ワシの腰でもなんとか」

「んじゃ、完全振り付きで」
「孫の本に写真付きで解説してあってな、しょっちゅうやらされるから体に染みついた。
んでもなー、あれを孫の居ない所でやらされたら。はっきり言って暴れるな、ワシ」

「せっかく覚えたんだから、ご披露すればエエのに」
「げんこつ山の狸さんとか、むすんでひらいてやぞ。真面目な気持ちで出来るかッ」
「んじゃ何なら?」

「ワシがアレンジした曲ならな。げんこつ山とむすんでひらいてを合体させたんよ」
「んじゃ、曲名は?」

「狸さん開いたッ!つーの」
「ナンか、危ないない歌詞じゃ?」
「狸さんの千畳敷を、パコパコ開いたり閉じたりする歌」

「やっぱ、子供にはそーとー危なくない(語尾上げで)。大人の宴会用とちゃいますか」
「全曲聞く前に、腹から笑えるから覚悟しとらんと大変やで、ホント」
「笑うと言うより、アホくさくて失笑みたいな」

「腹じゃら笑えば腸が良く動くから、便秘解消うッ。軟らかウンチは、お気をつけ遊ばせ。
んで、聞く?最初は孫の前じゃ、恐くて歌えん。試して、みんなの反応を見たいし」
「ゼッタイ聞きたくないッ!」

孫に聞かせるのは、当分先になりそうな、団塊の新曲。

<団塊の電池> by ホームズ

「センセ。Pさんお熱が37.4度で、発熱」
「ある時は、熱と言えば熱。はたまた、発熱の定義じゃ37.5度以下は?
しこうして、Pさんの平熱はやや低め。聴診は異常なし。故に?」

「ゴジャゴジャ言わずに、治療方針は単純でしょッ」
「単純であるが故に難解とは、我がホームズの言葉」
「んじゃ、ホームズ的には低体温?みたいな」

「んなアホなことはないやろッ、by  MIHI」
「んで。Pさんは熱が有りや、無しや?」
「シッコの回数もフツーじゃし、腰も痛くないし。あ、ワシの腰も結構良い感じイ」

「センセの腰がどうなろうと、3つ割れで折りたたまれようと、5寸釘37本刺さろうと」
「あのさ、だんだん酷くなってない(語尾上げで)」
「ゼンゼン、フツー(語尾下げで)。んで、熱があるのは明白な事実でしょッ」

「明白な事実ほど誤解を招く by ホームズ。引用は、先ほどの言葉も同様。
短編、ボスコム谷の謎より」
「んなことどうでもエエですから、処置と処方をオネガイしますウ」

「さっき使った体温計は?あ、これね。フンフン、なーるほど」
「何がフンフン、何がなーる」
「渋いお茶でも入れてね、茶菓子はチョコ・マシュマロ5個。んで、別の体温計1本」

「その心は?」
「この体温計の首を絞めると、38度。ケツを抓ると35度」
「それが、どうした。その体温計、SとMの多重人格障害なワケね」

「んで、先ッちょを思いっきり曲げると。デイスプレーの数字が消えたり出たり」
「そら、そこまでやられたらあたしでも蹴りを3発」
「ホームズ的には、体温計は電池切れ。Pさんのぐい飲みの中は、空」

「んで、渋いお茶ですか。んじゃ、チョコ・マシュマロは?」
「入れ歯の具合が、良くないって。それに、ワシの趣味も入れちゃって。
んで、さっきワシがこれで自分の体温を計ったら35度と40度を行ったり来たり。
ワシのデコチンも、聴診器を当てたPさんの胸も冷え冷え」

「じゃから再検ですか?持って回ったような言い方、止めて貰えません」
「電池入れ替えて再検じゃ、ツマランやろ?」
「ヒマなセンセに、付き合ってるヒマはありませんッ」

筋トレストレッチ10分、クールダウン読書はコナンドイルの昼休み。

<団塊の胡散臭さと真っ当>


「センセは、ナンで医者なんかになったかの?」
「ヘッ、ナンで?」
「イヤの、見とると商売にむいていそうな気がしての」

「そうやろか、んじゃ何を売ったらエエやろか?」
「そうじゃのー、さしあたり饅頭か餅じゃろうか。ぱあーっと陽気に行ったらエエ」
「根が地味じゃから・・・」

「フッフッ、年寄りを笑わすモンじゃない」
「確かに医者の世界は、極道モンの世界と同じやモンなー」
「そう言う世界は、センセは似合わん。占い師は、エエかも知れんが」

「顔で惹きつけて、口で騙して。みたいな?」
「それそれ。それか、いかさま師もエエ」
「ナンか、胡散臭くなってきたんとちゃいますかア」

「胡散臭くない人間は、1人も居らんで。ワシが言うんじゃから、間違いない」
「Pさん、昔は何してたん?」
「村会議員。これがまた、ワシ同様で胡散臭いヤツばかりでのクフッ」
「ふーん、そんなら間違いないわ。クフッ」

 つい5分前、「センセ、緊急事態ッ!359病棟うッ」
「ラジャッ!」は、座敷童君ならB君が遊びに来る時間帯。
心不全が次第に進行、心電図モニターがフラットになった93歳の病室。

名札を見て顔を見下ろせば記憶が蘇る17年前、胡散臭さで競ったPさん。
記憶をかき集めながら死亡診断書、戻った静寂でカリカリとペンの音がやたら大きい。
ご家族に説明をして当直室に引きこもっても、高ぶった心は治まらない。

暗闇の中で眠りに落ちる中、胡散臭さと真っ当は紙一重かも?を反芻し続ける。
なかなか寝付かれないまま、幾度となく右に左に寝返りを打つ冷え切った体。
新聞配達らしいバイクの音と共にカーテンを開けば、朝の眩しさが目に痛かった。

<団塊が感じる目線>

昨夜の当直で明け方に起こされたせいか、その夜は爆睡していつもより30分早く覚醒。
座り込んで靴下をはく脱衣場、いつもと目線が1m低くなった分いろんな物が見えてくる。
「あららー、髪の毛3本。小さなホコリ2ヶは、イカンな−」で始めた拭き掃除。

1枚ずつ固く絞った雑巾を両手に持って、車のワイパー風に仕事をすれば。
30分でピカピカだからそのまま辺りを見渡せば、風呂場ドアの隅っこに蓄積したゴミ。
カッターナイフでそっと削り取れば、どの目線でもすっきり気持ちよく取れた長年のゴミ。

模様替え・お掃除大好きHMIセンセだから、開始前の視線はサーチライト風に光る。
終了して5分間、し残しを探す視線はいつになく鋭いがそれを過ぎればただの鈍った眼。

同じ視線でも人間以外じゃ、どうかな?と思ったら。
朝のゴミ出し中に頭のてっぺんから感じる視線、見上げた電線にカラスが2羽。
「スマンけど、どこでもエエから網をちょっとだけずらしておいてね」を送られてもフンッ。

流石に小動物の視線を感じることはまれだが、ヤツらは人間の視線に敏感なようで。
蜘蛛やゴキブリはいくら小さく「アッ」で、やっつけスプレーを取りに行っても。
帰ってきた時には、「危険で邪悪な視線には、敏感なんよねー」を残して消えている。

「おろッ、MIHIセンセじゃ?いつもと違う場所で見られてると、ミョーなモンですね」
2,3分見つめてやっと気付いて貰えたレジ前、目の先は患者さんのご子息でほぼ同じ年。
眼力が弱いのか、私の視線を感じて貰うのには時間がかかるようだ。

いろんな目線を感じる、段階医。

<団塊のチビチビ不幸の喜び>
「おろ?まだ持ってんの。早く食べちゃえば」
何時から身につけたか、誰が教えたわけでもないのに孫の仕草。

美味しいモノをいただいていてる時は、片手に確保してもう一方の手で食べる。
最後になるときが問題で、囓るようにチビチビとエンジョイし。
休憩する時は手の中へ握りしめて居るのだが、何かの拍子に落としたら大騒ぎ。

落下予防エプロンポッケ中に落とした物を見つけた時の笑顔は、私の笑顔を誘う。
食べ物が直径1cm足らずになって、持ちきれなくなると思い切って口の中。
最後の一口を噛みしめる笑顔が、またジジイの心を揺さぶる。

 そんな事を思い出しながら、カルテを書いていると。
「あー、すっごいやん。見て見て、インクが無くなったで。すっごい見たいやろ?」
「そらセンセ、使えば無くなるのが当たり前。増えたらオカシくなイ(語尾上げで)」

「ワシこの瞬間が大好きなんや、感動するんよねー」
「やっぱ単純なんだ、センセは。脳みそは、デブ細胞1個で出来てんだ」
「アホ言え。脳みその細胞なんか、何兆あるかワカランで」

「へエ。やっぱ木綿というよりは、絹ごしですか?」
「あほ言え。何ちょうって、豆腐とちゃうッ。しかし君らイカンで。
ビミョーなところに感動を感じない、その無神経。はたまた、丸太サイズ太い神経」

「そら、あたしだってチビチビの喜びなら」
「ホお、言うてくれるやん」
「主人に小遣いチビチビ与えて、あたしはパアーっと使う。快感だわア、凄ーく」

旦那のチビチビ不幸のおかげで獲得した喜びに、トホホの午後。

<団塊のチープ・ヒューマン・ウオッチング>

ソックス3足\990でUQでエエわ、フツー用はこだわりブランドやけど。
と言うことで奥様と孫とお買い物は先ずUQから、予定外若草色ポロを籠に先ず放り込んで。
迷っても5分で1品だから予定外でも都合10分、いきなりヒマになる。

 ピンクのBDポロにサスペンダー+ジーンズの眼先は、どうしても同じ年のオヤジ族。
40年前のミユキ族やVAN族なら大正解のパンツ丈は、くるぶしよりちょい長めが定番。
それを真似たUQの今風丈は踵ぎりぎりだから、直ぐ分かるオヤジの中古こだわり。

UQを彷徨くオヤジの髪の毛の長さは、サイドは耳にかかるかからないか。
そうじゃなかったら色が付いてりゃそれでエエ、格好は奥さんの言うがままでエエ。
2種類オヤジ族をウオッチングすれば、「おまちどおさまー」で撤収。

夕食の食材は行きつけのスーパーで、入り口にコーナーを設けた同年代オヤジ。
「らっしゃい!トレトレだよー」
テーブルの上を見れば全て乾物、「オカシイやろ取れ取れは!」を飲み込む。

「試食、如何ですかー」に、「イヤ」と手を振れば。
「あららー、可愛い。お孫さんですかー」に、後ろ髪全部引っ張られて引き返す。
同じ年だけに、弱点は元から承知。

「先ずはこれ、ヒジキは美味いよー」
ラップにくるんだヒジキ入り手まりおにぎりを、ホイッと頬張れば。
「こ、コラッ。何でヒジキが青虫のエサの匂いかなー、テーブルひっくり返すド!」

店頭販売の店先で、青シソ悪臭を放つおにぎりをはき出せない。
「美味しいでしょ?」
「ウッ、まあ。なんか口直し無い?」

「これこれ、お酒のアテならこれ一番。取れ取れ、新鮮メザシ」
 <んだからア。トレトレの魚を、まったりゆっくり干したヤツやろ>
「香り付けはしてないですよね?」

「乾したまんま」
ちょい苦みのあるメザシは、お約束の味。
「どうも、頑張ってネ。後で来ないかもオ、口の中はウウまだ青虫エサの匂いが・・・」

「お酒に合いますよー」って言われつつ。
口直しを飲み込むのと、またまた「おまちどおさまー」が同時。
チープなヒューマンウオッチングは終了、禁酒で忘れかけた昼ビールの味。

<団塊は休むのがヘタ>

新聞を開いた途端目に入った「団塊」の文字に惹かれ、最後まで読んでしまった。
「団塊の世代はひたすら走り続けたけれど、勉強をしなかった」のだそうだ。
「そのツケが今の若者にもたらした弊害は、大きい」とも言うのだが。

そう言われれば競争に勝つための勉強はしたが、向上心や学習意欲は横に置いた。
その習癖がいまだに染みついていて、若者を鍛えるための学習はしてこなかったかも?
ゆとり学習などと言うのも、恐らく無い物ねだり団塊の世代の発想だろう。

学校をたった1日休んでも、同級生の遅れをとってしまう危機感があった。
試験前に交わされる会話は、徹夜しても「ワシ、あんまり勉強してないんよ」。
疑心暗鬼でお互いに探りを入れる嫌な関係は、鉄棒の錆のように完全に削り取られない。

臨床医を30年もやってくると、根拠のない自信が渦巻いて同僚に探りなど考えない。
流石の団塊もアラカンになれば、気力と体力にアンバランスが生じ。
体力を温存しておかないと、精神力がパワーダウンするのは必定で。

ましてや、人を説得させたり短期間でも信用させる(騙せる?)論文は無理。
1人あたり1ヶ月のおよそ1/6になった当直に、代休制度を主張したのも団塊。
院長以外は全員が部長を危機と見るか、それとも安心と見るか?答は明らか。

あと5年もすると団塊定年の危機がくるのを、ひたすら心配しているのは私だけ?
魅力ある医局、達成感が感じられる魅力ある病院を模索している団塊の週末。
定年になったら第3の職場を探せばいいと思い、団塊世代は休むのが下手だと思う。

<団塊ジイの禁煙指導>


「あらー、師匠が来るんだもんなー。まいどッ!」
「お前、もう夏かッ!」
「まさかセンセは、冬?」

「アホ言え、この背広は春用じゃ。それやのにお前。もとい、センセのその格好」
「まあ、強いて言うなら。サマービーチの人気モン(語尾上げで)。
そうでなくても患者さんが多いらしいのに、医師会長は忙しいでしょ?」

「ワシ、2期で辞めるんよ。クビ」
「んで次は県の医師会長?」
「もう力が出んな、ああいう方面には。もうちっと、本業を勉強せんと」

「センセでも勉強ですか、それ以上やったら脳みそぐちゃぐちゃになりません?」
「んで、論文書いてるか?」
「ハイ。構想3ヶ月、実行1年の臨床研究が終わって。文献かき集めて」

「やるもんじゃ」
「んで、センセの教え通り。考案は我田引水、自画自賛をひた隠し。
読んだヤツを最低10年騙せる論文に仕上げつつ、戦ってます」

「ますます、脳みそが冴えて来るんとちゃうか?」
「ハイ。冴えまくりで、この半袖ですから」
「おまえ、25年前と変わらんなー。進歩がないっちゅーか。んじゃ、あとで」

私にしては珍しい3時間の講演会とワークショップは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)。
聞くなら最前列と決めてあるから、座ったのが演者のセンセのお隣の席で睡眠学習不能。
聞きながら質問を考え、「では、良い機会ですのでご質問を」に3分の静寂が苦痛。

結構広い会議場に、たった20人の医者とは知らなかった地味一筋の私。知ってたら・・。
師匠含めて顔見知りが5人、師匠が「お前、何かきっかけ作りの質問!」の視線ピッ。
孫と遊ぶ時に癖になっていた「ハイッ」と同時に手を上げ、沈黙を破る私。

「ま、まだや!ワシの隣のセンセが手を上げかけたやろ、空気を読め」の師匠と目が会う。
既に手遅れで、「ハイ、どうぞ。そちらのセンセ」の座長の声に。
常々3人のヘビースモーカーのジッ様の禁煙指導に、手を焼いていたのを思いだす。

「ぜーぜー、ゲホッ。んでもセンセ、今更たばこを止めろって言われてもなー」
「長生きできんで、ヒーヒー言うとるやんか」
「ワシは85じゃ、好きなモンは、死ぬまで止められん。焼かれる時は、たばこと一緒」

ああ言えばこう切り返す、人生の達人。
「んじゃ、人間一回は死ななアカンけど。死ぬ時に、笑って死にたかったら禁煙ッ」
「大丈夫じゃ、ワシはずーっと前向きで生きてきたから。死ぬ時も笑えるで」

こんな会話を思いだしつつ。
「お年寄りの効果的な禁煙指導のコツは、如何でしょう?」
お隣同士だから質問も答も1本のマイクがハイどうぞで、行ったり来たり。

「私も悩んだんですけど、いい手があります。高齢者のエビデンスより、孫ですね」
思わず私も孫で禁酒しました」が口から出そうになってると。

「喫煙する家族の新生児死亡率が高くて、小児の色んな疾患の罹患率も高いんです。
ペーパーあります。それを言うと殆どは男性なんですけど、禁煙して貰えます。
孫を人質にされたら、ジイはひとたまりもありませんね。でも先日中国に行きまして。
呼吸器の学会場なんですけど、煙もうもうで向こうが霞んでるんですね。
全て呼吸器専門家で、ヘビースモーカーが多いのはどうなってるんでしょうね。
孫も何もありゃしない、わが国のじいさんは気が優しいんですかね」

これを聞いて、MIHIセンセ風に作戦を練る。
「Qさんが苦しいーッて言いながら死んでも、自己責任やね!ってみんな同情せんやろ。
孫が死んだりしたら、何言われるかワカランで。孫と一緒の墓に入れてもらえんかも」

「そんなことないやろ、薄情な」
「骨が雨ざらしで、さぶいやろなー。ウー、悲惨じゃアー」
「ウー、なるべくたばこ減そ」

「死なんでも、ジッちゃんのせいで孫が病気になってみいよ。大きくなったら、言うで。
ジジイのせいでボクこんなに苦しいの、位牌に鼻くそ付けちゃおうっと。なんてな」
「そこまでするやろか?」

「それで済めばエエ方やで、位牌を蹴るは殴るは。痛いでエ」
「ワシ、禁煙しよか」

 明日の外来が、とっても楽しみになった午後。

<団塊と病院の花>

「綺麗やねー、ここだけ桜が満開じゃねー。お嫁さんは優しいねー」
「んでも、桜切るバカ梅切らぬバカって。センセ、知っとるネ?」
「ワシ、バカじゃから。何でも切って、すっきりせなアカンのよ。頭は刈り上げ」

「少ない上に、刈り上げじゃな」
「そう言えば、イギリスじゃ病院に花を持ち込んだらアカンところがあるらしいで」
「心が寂しいとこやねー、イギリスっちゃ」

「なんでも、それを研究して論文にしたセンセが居るらしい」
「センセ以外で、そんなにヒマなセンセが居るんじゃ。んで、どうなったんね?」

「花を持ち込まなくなったのは、色々と理由があるらしいデ。メディカル・トリビューン、
 2010年3月11日号に書いてあったんよ」
「何で、病院に花を置いちゃイカンのかね?」

「1つは、花に含まれとる水分の中に細菌が居るらしい。それを研究したセンセが居って、
 論文にまでしたってヨ。ワシ以上にヒマなんじゃ。んで2つ目が、酸素が減るって。
 3つ目が、医療器械に健康と安全にリスクをもたらすんて。それも論文にしたらしい」

「インネンみたいな論文やね。んで、結果は?」
「バイキンの研究じゃ、はっきりしたデータがなかったらしい。それも論文。
 んで、酸素を吸うっていってもたかが知れてるから。無視してエエと」

「んじゃ、流石に3つ目はやっぱ何かあったんじゃ」
「それが、花と飲食物が入った容器と比べてリスクは大してカワランかったんて」
「花が枯れそうなら水を替えるくらいの仕事量が増えるんで、ナースが反対するんて」

「あたしのこの花瓶は、2日に1回看護師さんが変えてくれるけどな」
「花が飾られている部屋の手術後の患者さんは、使う鎮痛剤が少ないってよ。
 そう言う論文があるそうな」

「ホント。医者っちゃヒマなんだか忙しいんだか、ワケワカランですのー。
 まあ、そう言う記事を読むセンセが一番ヒマかも知れんが」

 記事の締めくくりは「花を贈ったり貰ったりすることは、文化的に重要な行為」だった。

<団塊医は喋る>

「Rさん、今朝の病院の玄関。桜5分咲きじゃったよー、春やねー。お花見に行こうや」
右腕の付け根が、ピクッ
「おろ?胸の音はエエけど、皮膚摘んだら水分足らんかも。白湯を200ほど増やすね」
右腕の付け根が、ピクッ

「Jさん。週末はエエ天気らしい、お孫さんが来ると良いねー」
ちょっぴり口が開いて、小さくハアー
「この間のは、ご主人?イケメンじゃねー。んじゃ、またね」
ちょっぴり口が開いて、小さくハアーッ

「Bさん、雨が降るとリウマチはイケンねー」
「あたしゃ、主人が迎えに来るのを待っとるんじゃが」隣のDさん。
「あの世があんまり楽しいんで、迎えにくるのを忘れとるんやろ」
「そうかも知れんなー、困ったモンじゃ」で外来に呼ばれて。

「ところでセンセ、還暦を過ぎとるんか?」いきなりの質問はYさん。
「とっくに、過ぎて8年。孫も4人、ジジイじゃ」
「あたしんとこの長男と同じじゃ、センセ若く見えるのー」

「アホは、歳を取らんってな」
「んなことは無かろうが、息子はY大じゃが。勉強せんかったから、1回失敗したけど」
「実は、1個先輩ナンよ。ワシも勉強せんかったんで浪人したし、他所の大学も1年ほど」

「ふうーん、そうかの。気が多いんじゃ、センセは。あたしの主人と同じで」
「んじゃ、ご主人も大学を2つも3つも?」
「イヤ、こっちの方が2人も3人も」

「甲斐性があるモンじゃねー」
「そういうのは、甲斐性とは言わん。」
「センセは、この気あるんか?」右手の小指を立てる。
「次の方アー。スタッフの、Hさん。センセ、この心電図」

 Hさんが入ってくるまで待ちきれず、心電図を差し出すナースS。
「おろろ、af(心房細動)のタヒ(頻脈)じゃん。初めて?」
「時々あるみたいで、自然に治ったり出たり」

「もしかして、お年寄り?」
「イエ、若いです。48歳」

「あんたと大違い。やたら大食いなのは一緒でも、ハゲシク痩せてる。そこ、真逆。
 しかも、汗かきで皮膚がじっとり湿ってる?異常なくらい元気で、活動的。
 しかも、首が太く見える?そんな方でしょッ」

「ウッセ。Hさん見てから、自分で判断した方が良いと思うんですけどオ」
「職員健診で、コレステロールが低いとか?ガリガリ、BMI13?」
「それって、甲状腺検査をしなさい!みたいな事を考えてません?暗に」

「やっぱ、シャーロック・ホームズになりきれん。インディアンと同じ、嘘つけない。
 ハーあ、辛い。喋り足りん。つ、辛い。ウウウ・・・」
「要らんこと言いながら、嬉しがってるっしょ」

 団塊医は、嬉しくて余計なことを喋る。

<団塊のWinXP危機管理>

 6年使いまくったデスクトップWinXPのPCは、まだまだサクサク動いて。
時々HDDを色んなところから出たゴミとレジストリを、クリーンアップしデフラグ。
4年目にメモリが壊れて差し替えただけで、仕事にネットに趣味に活躍中だが。

 時々マシンからカリッみたいな異音が出始めたのを機会に、リスク管理を再検討。
何時壊れても直ぐ捨てられるように、先ずは本体内HDDに残ってるデーターを削除。
ただ削除ではなく、リネーム・日時の変更・ファイルサイズをゼロに処理。

 その後で全て上書きするフリーソフトを使いまくった後に、フォーマット。
ここまでやっても、出来る人なら削除したファイルを復活するかも知れないが。
出来るだけのことをやって、ヒマと腕力があったらトンカチでぶん殴ればOKか。

 今までやって来たみたいにHDDを取りだして、データ用に改造も良いがそれも限界。
真っ新外付けHDDに移した全てのデータ、いざという時は磁石と釘とトンカチでOK。
娘から譲り受けたWinXPノートPCに、USB2のハブ\980を取り付けて。

 古いノートからはぎ取ったHDDに、フリーバックアップソフトがファイル更新の仕上げ。
ネットでHDDの寿命を調べると100万時間という情報は、ホントだろうか?
1日6時間使うとして理論上の寿命の19年弱は、同じPCを使い続ける気持ちが失せる年数。

 物を買わない若者が増えてるが、昔は要らんものを買った団塊世代も買わなくなった。
バブル真っ盛りの頃「物の捨て方」のノウハウ本も読んが、イランものを買わないのが一番。
時系列で優先順位を決めて、ホコリが積もれば捨てるしかないかも?

 HDDの整理って人生の危機管理と同じじゃん!、そう思った午後。

<団塊医とプリンターの寿命>

 スタッフに言わせると、「PCなんて5年ですよね、買い換えるっつーか寿命頓死」。
我が家では毎日使う家電(洗濯機・TV・冷蔵庫)の類は、良く持って10年だ。

 私の愛機PCはWin3で始まり、プリンターも同じで10年目に入った物ばかり。
これってフツーじゃないのかね?Win95も3台平均寿命が7年だったし。
Win98は3年でMeに引きずって、デスクトップもノートもやはり7年。

 WinXPは丈夫で壊れて短時間で修復も7年目に入って、すっかり馴染んできた。
まだまだフリーソフトはWinXPに対応している物も多いので、エコ流行に乗るのも手。
そこへ9年目に入ったモノクロページプリンター、補給トナーが近日中に必要になった。

 量販店2軒とも「それって、かなり古い機種っすね。トナー在庫は、無い」みたいな。
こうなるとネットで手に入れるしかないのに気づき、土左衛門がサーフィンしてみると。
最新・最安値のモノクロレーザープリンターは、8年前に購入した額とほぼ同じはトホホ。

 トナーも定価で2割安く、新品トナー1個に数千円追加で新しいプリンターが買える時代。
メーカーの「プリンターを安くして、消耗品で稼ぐ」作為が見え見え。
解像度は同じだけど、速さも静けさもやや改善されているらしいトホホ。

 プリンターもPCも、メンテナンスをして常に使っているとしっかり仕事で寿命は延びる。
医者として良い仕事が出来る寿命は、PCもプリンターも同じ事。

 健康に気をつけて(メンテナンスを滞りなく)常に脳みそを使えば(使い続ければ)、
PCも団塊医の寿命もグイグイ延びるかも?と思った、休日。

<節分の赤鬼になりきれない団塊医>

「あ、今年はダメですよね」
「腰イテテじゃ、迫力無いモンなー」
「体型的には、センセしか居ないんですけどねー」

「んでも、ピーク時からダイエットで12Kg減量して。禁酒して6Kgやろ。
 それで、充分スリム体型なのにな」
「スリムとメタボは意味同じ?みたいな」

「そこへ持って来て、腰やろ。1ヶ月で1.3Kg減って。げっそりじゃモンな−。
 昔を知ってる人が見たら、あんた。激やせ、るい痩、全身消耗みたいな」
「ホント、笑っちゃいますよねー」

「あのな。ナンでワシが痩せたら笑うんじゃ、オカシイやろ」
「ゼンゼン」
「んでも、ワシ専用のトラ柄パンツを作ったらしいやないか」

「そうですよ、段ボールでLLサイズ。んでも、コルセットした上には履けんでしょ?」
「そら無理。あ、ちょちょっとオ。パンツが、段ボール製ってどういうこっちゃ。
 ワシのベッドも家も紙で出来てるから、丁度良いみたいな」

「それもあるけど。センセは還暦で、勝負パンツは赤らしいじゃないですか。
 そこが丁度良いワケ、フンッとか踏ん張ってトラ柄パンツが破れて。
 勝負赤パンツがチラリなんて、腹抱えて笑えるっしょ」

 勝負パンツが赤と勝手に決められた、午後。

<体弱い団塊医の呟き>

「いよッ、春だねー。ちょいと温かくて、過ごしやすいでおじゃりますなー」
「なにが、おじゃるですか。んで、短パン・・・履いてないじゃないですかッ!」
「この季節で短パンじゃ、アホやろ?ワシって、体弱い。足長いけど」

「それを言うなら、体デブやけど足短いでしょ」
「んじゃなくてエ、腹横に割れてるけどキムタク似イ」
「それを言うなら・・んーと・・・もう良いですッ。イライラしてきた」

「まあ、春やね!ってことや。春はまったり、のったりかな。みたいな」
「MIHIセンセは季節を1つ飛ばすから、春と言えば夏。夏と言えば、短パンと」
「ご期待に添って、明日より短パン(語尾上げで)」

「期待に添わなくて結構(語尾下げで)」
「間を取って、バミューダショーツなんか如何でしょうかア」
「とっとと、ラウンドなさいませ」

「今日のラウンドのツカミは、ナンにしよ?」
「フツーで結構ですッ」
「ツマランのー、それじゃラウンドの楽しみがないやろ?体弱いしイ」

「趣味で仕事をしないで下さいッ!」
「昔、学部長に趣味は何か?って聞かれて。仕事ですって答えて。はあ?言うから。
 仕事が趣味だと思うと、何時も楽しく仕事が出来ますって答えたら。君らしいって」

「そんなクダランことより、センセ。薬局のDさんが文句言ってましたよ。
 今日の処方箋、字が薄くて読めんって。まるで、MIHIセンセの影みたいに薄いって」
「あと0.5mm、ペンのインクがキレそう。書いてて突然インクが切れると、感動せん?」

「別にイ、そのままポイッでしょ」
「その上、筆圧上げんとイカン。同じ薬を書くのに、いつもの500倍パワーなんよ」
「んなオーバーな、せいぜい3倍(語尾上げで)」

「せいぜい、2.7倍(語尾下げで)。んで、腱鞘炎になるワケ。体弱いしイ、顔良いしイ。
 そんでもって、ある時はブラピ似みたいな。体弱いし」
「体弱い?、脳みそ弱い?っしょ」

 体弱いとナースに虐められる団塊医の、午後。

<団塊と介護保険>

 介護保険準備期から、10年以上関わった。
揺らぐ土台の上に築き上げた一次判定ソフトは、なかなか手直しをしないと思っていた。
介護審査会も10年勤め、一次審査ソフトを自分の都合の良いように変えたのに立腹。
根拠になる部分を公開した初期ソフト、完全にブラックボックス化した2代目。
思わず「ワシ、怒ってんだかんね。審査委員辞めるかんね」に、「あ、どうぞ」だけ。

 確か、介護保険が導入されて2年ほど経った頃。
介護保険に関わりの深い某教授との懇親会の席で、介護保険のカオスの世界に穴が開き。
酔った勢いだったわけでもなく、端からずーっとわだかまっていたことが飛び出した。
シルバー受難の時代の幕を開けたのは、まさに「介護保険」ではないかと。
直ぐさま返ってきたのが、「けしてそんなことはない。逆だッ」。

 社会的入院を可能な限り排除して、医療費を削減するのが介護保険のホンネと見た。
なんでもそうだが奥の手があるもので、なかなか減らない医療費に業を煮やした政府。
ますます厳しい締め付けも、力を持っていた医師会が跳ね返してきた。

 そこへ、自分の所属する党を「ぶっ壊しちゃうゾ!」と叫んだ総理のおかげで。
「介護難民」という悲惨極まりない言葉を生ませて、どっかへ行って知らんふり。
立つ鳥が跡をグチャグチャにしてくれて、仰るとおりその党は壊れかけ状態。

 新政権も、「何で1番じゃなければいけないんですか?」のトホホ。
ケンカ太郎の異名を取った医師会長ほどではないから、情けないほど弱体化した我が業界。
新政権の耳障りの言い言葉の裏でナニしてんだか、予想通り直ぐに野党へ真っ逆さま。

 マスコミも飽きたらしく、介護保険の話題は忘れた頃にドブ泡風に紙面へポワッ。
お年寄りの介護の場は減らす一方、急性期の病院の在院日数は減らせ!の号令が鳴り響く。
療養病床数は制限されたままだから、受け皿のサイズも変わらないジレンマ。

 早い者勝ちと言うわけではないが、一旦入院したら取りあえず席確保で後はゆっくり。
介護保険の話題が以前ほどマスコミに上らなくなったのは、政治家に対するあきらめ?
あと15年もしたら我々団塊の世代が、高齢者層の中で一大勢力になるはず。

 最近じゃ、マスコミが取り上げるほど美味しくない介護保険。
介護保険って金だけ取られ、使う頃にはあの世か?使わない方が、幸せだけど。
いっそ「団塊の党」でも作っちゃうゾ!は、妄想じゃねーぞ!

<団塊と芝の悲鳴は今昔>

「おー、かっちけねえ。いつ引いてくれんだろって、この日を待ってたワケよ。
 毎年の今頃なら、雑草なんか1本も生えてねえのに。なんだこりゃ!だぜい。
 そんな風に思っていたさ。んでも、腰は良いのかい?こう見えてもおいらだってナ。
 MIHIセンセを、ちょっとは心配してんのさ。でも、窮屈でたまんないねエ」の悲鳴芝。

 10日もすれば雑草もろとも芝生も全て引っぺがし、私が基本設計をした洋風庭の手はず。
それでも芝生歴25年弱としては、春の芝の中に雑草があること自体が許せないから。
この1ヶ月ずーっと芝生を見る度心が揺らぎ、芝生とは視線を合わせないようにしていた。

 孫が芝生の上を、歩きにくそうにしていると。それって、雑草かい?小石かい?
つい心が揺さぶられ、さび付いてるけど手に馴染んだペアン(手術道具)を握りしめ。
刈り上げ含めて50分少々、50Lのゴミ袋にほぼ満タンに久々の充実感だった。

 元気が出始めた芝生根から出る排他液で、やられ気味で色が黄みを帯びてる草。
大きくなってるわりに、元気がない雑草は伸びも止まり葉先まで栄養が届いていない。
ブシッの音で小気味よく土から離れ、ちり取りが一杯になるまで夢中になる悪い癖だった。

 「テテテ。ひ、ひエー。大失敗やー、テキトーでエかったのに」で目覚める朝。
唯一の1日代休だったから良いようなもんだが、フツー勤務ならエライこっちゃ。
調子に乗ってわずか6m四方の芝生を刈って雑草を引いただけなのに、悲鳴だった。
久々に鎮痛剤を含みながら、テキトーお気楽で腰をかばいつつ見つめる芝生はフル快感。

「ひえー。雑草と一緒に引っぺがして、どうする気かッ!助けチくれエー」。
芝生の悲鳴が聞こえてきた3年前、青々とし刈り高30mmの芝記憶は薄れ。
装着で腰痛復活した軟性コルセット、メタボ腹に食い込んだ感覚も今は無い。

 テキトーお気楽の庭改造でコルセット卒業団塊の、昨今。

<論文執筆始動の団塊に雨>

 腰イテテが峠を越して、勤務医にはこれが限界の稚拙駄論文を書く余裕が出て来た。
2年前に始めた構想7ヶ月・実行12ヶ月、栄養状態とQOLそれぞれのスコアデータをまとめ。
どの統計処理を行えばいいのか、真っ新な状態から1年間ほど悩んだ統計。

 霞がかかった向こうに眼を細めていると、統計のなんぞやがおぼろげながら見えてきた。
あ、こう言う方法で処理すればいいかもオ?の結論に到達したのがスピアマンの相関係数。
持ってるソフトじゃ処理出来ないのに気づき、色々思案した結論も想定通り。

 この処理のためだけに、新しいパソコンが買えるほどの散財をするのも如何なものかと。
結局は甘える気持ちが強くなり、ある方にお願いして処理すれば予想通りの結論。

 慢性疾患の患者さんの栄養状態は、QOLとリンクするという報告があるが。
この対象は医療・看護・介護を十分に受け、欲しければ自分で食べることが出来る方。

 今回の臨床研究は、既に論文にした独自のQOLと栄養のスコアリングを合体。
対象を経管栄養を行っている患者さんとし、3ヶ月毎に判定して相関を見た。

 高齢である上に24ヶ月の長丁場だから、転院や死亡で1/2がドロップアウト。
わずか9例のデータしか手元に残らなかったが、こんなアホなこと誰もやっていない。

 オリジナリティとはネタが分からないもの、と言うわけではないが。
はっきり言えば宇宙で1つの臨床研究と、腰イテテを忘れて自画自賛の嵐。

 かき集めた文献を元に理論構築して、考案をぶちかませば論文が一丁出来上がり。
論文を投稿するといつも感じる「もうこれでネタは尽きた」は、今度は?
還暦を超えて「論文は格闘技」の持論から言えば、自前エネルギーは放電状態か?

 ワケワカランッ論文を書き散らして25年、回転が鈍くなってきた脳みそだから。
油をさしても錆び付いてしまった我がブレインは、年代物昭和初期の木炭車?
錆びたり穴が開いたり、燃料を調達しにくかったり、不完全燃焼したり。

 リタイア後に最後の力を振り絞っても、経済学の博士論文は無理かも?
せめて書き殴ってきたエッセイ原稿を推敲しまくり、1/5に減量して。
新書版で2冊にでもなればまあ良い方と、またまたお気楽かましコーヒー啜る。
弱気になってる午後の窓外はしょぼ降る雨、濡れ犬が走る。

 ようやく論文執筆始動する団塊、昼下がりは雨。

<団塊の推理思考動線>

 速読の極意は文章を一塊で見ることで、1文字ずつ読まないらしい。
速読に関わる脳みそはフツーの場所とは違っていて、そこが機能し始めると上達する。
思考回路を変えるトレーニングで、上達すれば充分速読可能とか。

 論文のプロットの殆どは、脳みその中でこねくり回しているばかりで形にならない。
キーボードから文字が浮かぶには、かなりの時間が必要であるのは何時もの事。
私の思考回路は他人には見えないから、「ナニ考えてんだか?」とか「寝てんの?」。

 コナンドイル全集も殆ど読み終える頃になり、ホームズの思考回路の1/3が分かった。
殆どが短編で1作が50頁前後だから、登場人物はさほど多くはない。
だから犯人までたどり着く推理思考の動線は、数本に限られる事になる。

 2時間TVサスペンス(ギョーカイ的に、2サス)では、犯人当てまで20分が勝負。
25-30分で読み終える短編は、それに従って計算すれば10分前後が勝負時。
歴史的因縁があれば別だが、心の葛藤は時代を超えるから現代感覚でも問題はない。

 いかにも良い人がすなわち犯人の定理は、ホームーズも明智小五郎も変わらない。
その目で読み進めば、100%のホームズとは言わないが確率50%で犯人を特定出来る。
乱歩の相手の殆どは子供なので、大人風に人間関係を複雑にしていないから確率は高まる。

 児童文学を専攻していた娘に言わせると、1歳の孫に昔話は理解不能らしい。
3-5歳くらいになってくると、色んな経験を積んで人の心の難しさを受け止めるらしい。
それを発展させて知的ゲームに変えたのが、サスペンスかも知れない。

 人の心の奥底に踏み込んだり、あえて逆に捉えたり、間引いたり。
こう言うトレーニングの甲斐あって、裏読みをするのが好きになってきた。

 思考回路とその動線が切れて混沌となった、午後。

<団塊と結核>

 休日当直しつつ、ちょいとお勉強。
しかし何ですねー、結核菌。いきなり唐突なんですが。
ヤツらは冬眠(ホントは休止菌状態「dormant」って言うそうで)するそうな。

 そうやって、肺の中で何十年も出番を待つことがあるんですねー。
熊でも冬眠してる間に、時々起きて何か食べるのにと思っていたら。
完全な休止菌状態じゃないらしいから、何や熊と同じかいッ!と。

 古くて新しい病気「結核」は、時々院内感染で世間を賑わせる。
脳みその隅に病名を残しておかないと、ブレイクアウトした時はパニックになる。
入院治療は専門の結核専門病院だけど、導入部分で診断を外すとエライことになる。

 そう思って、「結核」について復習して当直を締めくくる事にしたわけで。
1つのファイルにして、いつでも呼び出せるようにしておくと使い回せるし。
院内感染予防委員会で聞かれたら、直ぐ資料が配れるし。

 結核なんて、気にしなくて良いのが一番だけど準備怠らず。
いつものの自画自賛、「あんたはエライッ!」が木魂するひとりぼっちの医局。
当直が明ける明日の朝まで、「音楽療法」の続きでも行っちゃいますか?

 大したことも無く粛々と過ぎて行って欲しい、団塊当直医。

<団塊に見えそうで見えない>

「師長さーん、師長さーん」ナースK。
「はアーい、ここに居るわよー」
「エー。何処、何処」

「ハイハイ、ナンでしょ。あんまりスリムで、見えんかった?」
「確かに、アリンコのヘソゴマ・サイズじゃ。探すんも、一苦労やねー」私。
「コラコラ。センセ、アホ言い過ぎ」

「あら、声は聞こえるけど姿は見えず。ホンに貴方は屁じゃないかッ!と」これも私。
「んで、ナニ用ですの?」
「次の看護研究のテーマなんですけどオ」ナースK。

「あららー、もう準備とは。尻がデカイと、フットワークが重いんやね」また私。
「尻も態度もでっかいセンセにだけは、言われたくありませんッ!
 しかしナンですねー、自分のことは見えないですからネー」

「見えないのは、サイズの問題か?」
「と申しますと?」師長。
「例えばあんたがワシの目の前1cmに立つと、前がナンも見えんけど」

「確かに大きすぎると、見えないですわ。ゾウの足元のマル虫、ゾウは・・・コラッ」
「あんた、最近腕上げたなー」
「ウフッ、お褒めの言葉。痛み入りますわ」

「んじゃ、そう言うことで。今度の看護研究のテーマは、見えそうで見えない物に決定」
「ナゾナゾみたいな、禅問答みたいな、奥が深そうでアホみたいな」
「やってみんと、なーんも見えて来んやろ。見えんと、なーんもワカラン」

 団塊に見えそうで見えないカオスの、午後。

<団塊は何の宗教>

 休日朝の「ピインポーン」は、我が家へのネット注文品の到着のことが多いので。
インタフォン画面を良く見ずに、印鑑持って玄関へ小走りすれば。
「貴方は宗教を信じますかア」は、ビミョーな笑顔の背広オヤジ1名。後ろに、もう1名。

 「はア?」で、オヤジの後ろに控えているジミーなおばちゃん追加が目に入る。
「こういうのはご、興味ございませんでしょうか?」
「あ、イエスさんね」

「ハイ。とってもためになる事が、書いてあるんですけど。イエス様の」
「ちょっとお聞きしますけど、やっぱイエスさんは様呼びじゃないとアカンのですか?」
「ハア?それはどう言う意味で」

「関西人やったら。訛ってイエスはん、みたいな?そんなこと言うたら罰が?」
「罰はゼッタイ当たりませんし、イエス様は寛大な方ですから」
「ちゃん付けとか、ため口はいくら何でもねー」

「いくら身近に感じておられても、節度と言いましょうか礼節が」
「あ、スンマセン。ワシ、こう見えてもユダヤ教ナンですウ。ダビデ様で」
「お気持ちが変わるかも知れませんから、これを1度お読みいただければ」

「そこまで仰るんでしたら、お祓いをしてから読ませていただきましょう。ゼヒ」
「なんか、お渡ししたくなったような気分」
「なんか、凄く貰ってみたい気分」

「んじゃ、これだけお渡しさせて・・・」
「そちらにお控えの方からは、ナニもいただいてませんけどオ」
「あ、こちらは研修中で。失礼します」

 燃えるゴミを焼却炉に放り込んで火を付け、ポッケのありがたいチラシを思い出す。
我が家の前の通りは行き止まり、Uターンしてきた2人が塀から現れたのに気づかなかった。
クシャクシャのチラシを燃えさかる火の中へポイッと、オヤジと目があったのは同時。

「アッ」
「てヘッ。ハンニャハラミイター、アララー、ナムう」

 あれから3日、まだMIHIセンセに罰は当たっていないと思うんだけど。
無宗教に近い私はある時はヒンズー教、はたまたある時はユダヤ教、そして仏教。
その実体は、「ワシの宗教って、ナンだっけ?」の大罰当たり団塊。

<団塊のプチ・アタックは春の兆し>

 ハンバーガーがやたら食べたくなるのを巷で言う、バーガーアタック。
それを言うなら私にはケンタ(フライドチキン)アタックに、かりんとうアタック。
禁酒しているだけに、喉の奥にピリピリ来る刺激を求めるコーク・アタック。

 脳みそを使いすぎて(極たまに)、甘味アタックが襲来してくる。
塩大福・アタック、ショートケーキ・アタック、ぜんざい・アタック等様々。

 3日も魚が続くとは滅多にないが、そんな時は肉(牛しかあり得ない)アタック。
焼き肉かステーキを筆頭に、豚で許せるのは豚カツ、鳥で許せるのは唐揚げアタック。
それが続けば(1000年に3日くらい?)、天ぷらもポークピカタも許せるアタック。

 こう言うアタックは食べ物以外に、さほど感じないのは何故だろう。
生命保存に繋がる「食」だからこそ、心に突っ込んでくる何かがアタック。
パソコン・アタックとか、キレまくり・アタックなんて聞いたことがない(タブン)。

 ましてや生きて行くための必要性や緊急性が乏しければ、優先順位は下がる?
30年に1度くらいだが、いきなり演歌アタックが来て探すCDは何処で手に入れる?
無性に森進一が聴きたくなったり、八代亜紀の「舟歌」を廻したくなる?

 こう言うアタックは体調と大いに関係があり、肉体的精神的な余裕の現れだろう。
そう思うと、腰イテテであれほど好きなジャズさえ聴く気になれなかった昨今。
私の腰にも春が来そうな予感、プチ・アタックは休日にビル・エバンス。

<研究発表で椅子が欲しい団塊>

「センセ、オネガイがあります」
「んだから、¥300貸してくれって言われても。¥273しか、無いモンはないッ」
「ウウ、センセもご苦労なさって・・・」

「小銭は持たん主義。ワシって、そういう人」
「どういう人か、ゼンゼン気にしません。大きいのも持ってないんだから、ご勝手に」
「んじゃ、ナニよ?金以外のオネガイって」

「まあ、センセにすれば大したことじゃないとは思うんですけどオ」
「ま、まさか。体重を量らせろってか!」
「んな無駄なこと。んじゃなくて、発表して欲しいワケ」

「記者会見でも開いて、何故ワシがキムタク似か?どうしてブラピ似じゃイケンか?
 結論は屁をこくより簡単明瞭じゃけど、聞きたい?あ、ゼッタイ聞きたくない!」
「こんなこと、医局で頼めるのはヒマなセンセだけ」

「ちょ、ちょっと待ってね。自慢じゃないけど、我が医局に忙しい医者が居たら。
 イニシャルかそれとも、ニックネームでもOK。6名挙げなさい」
「6名なら全員じゃないですかッ!それは傲慢、自画自賛、無知蒙昧」

「熟語はもう出んやろ?んじゃ、お聞きしましょうか。オネガイを」
「今度、研究大会があるでしょ?」
「そうなんよ、ワシが名付け親の」

「そうそう、それ。そこで発表していただけると幸せマス」
「ヤダ、なんであんたの幸せのためにワシが発表?百歩譲って、OKのヤツならあるで。
 次に他の医者が発表せんと不幸になる、不幸の研究発表や。不幸の手紙みたいなヤツ」

「止めて下さいよ、ミョーな発表。分かった、研究してないんだ。データがない?」
「それを言っちゃあ、おしめえだぜイ。誰に向かって、研究データがない?チッチッ。
 メタボ腹が揺れるほど、ブヒブヒ笑っちゃうぜイ」

「メタボ腹の隙間に隠された研究データって、やっぱ凄いんでしょうねー」
「2つのスコアを、統計処理するんじゃけどな。スピアマンの順位相関係数?
 それともケンドール相関係数?なんて、ちょっと悩む。ノンパラじゃから」

「そういうのはお止めになって、もちっと分かりやすくて身近なモンが」
「アルツハイマー認知症医師への気配りは、どんだけー?みたいな」
「センセにぴったし」

「んじゃ、条件あり」
「ま、まさか。順番が来た時に、キムタク似のMIHIセンセって呼べとか?」
「それもエエな、んじゃ2つ。それと、腰イテテじゃから発表の時に椅子1ヶ」

「そんなことでしたら、高圧電気椅子ご用意。スイッチ押す係は、お任せ」
「もしダメって言ったら、演壇ひっくり返してスキップで帰っちゃうんだかんね」
「そんなに元気なら、椅子なんてイランでしょ?その辺の椅子でもエエし」

「ワシだけの椅子が欲しイー」
「んじゃ、倉庫から電気椅子取ってこなきゃ。忙しくなるかも?」
「データ整理しなきゃ。ワシも、忙しくなるかも?」

「センセは凄くヒマっしょ、ねつ造データで笑わせ放題っしょ、直ぐ作れるっしょ」
「メタボ腹抱えて、ブッヒブヒ笑えるヤツを堪能させましょ。そうしましょ」
「発表時間は、もって3秒。いきなり、スイッチポンッ!」

 演壇に立った途端に電気椅子のスイッチが入りそうな、午後。

<団塊は統計的に若年寄>

 プチ早朝ラウンド、最初の部屋へ入るなりYさんの声がかかる。
「あら、センセ。朝ご飯は、抜きですか?それともお預け?」
「軽ーくいただいて、徘徊中なんよ」

「そう言えば、夜明けの回診はされなくなったんですね」
「まあ一部の職員じゃけど、言われたんよ。朝早すぎるのは、迷惑やろって」
「一部じゃありませんッ。センセ以外、全員ですッ!」

「だ、誰や。カーテン越しに吠えるんは。ガルッ」
「しかし、今日の服はお似合いじゃね」
「そう?もっと誉めて褒めて。どんどん、バリバリ」

「若く見えるで、ハタチくらいに」
「ブプッ、Yさん。言い過ぎ、眼科行く?あんまり笑わされると、手が震えてプルプル。
 ちゃんと食介(食事介助)出来んじゃないの、ホントに」

「ワシって。ハタチの頃におじさんって、近所の子供に言われたんよ」
「子供にしたら、自分の直ぐ上の兄弟以外の男性はゼンブおじさんに見えるんですよ」
「色もエエし、見栄えもエエ。やっぱしハタチじゃ」

「Yさん、孫と同じに見えるウ。確かに、精神年齢だけはハタチかも知れんけど。
 体はアラカン、脳みそは3歳なみイ。犬計算で、13歳超老犬(語尾上げで)」
「統計的には、体の真ん中は平均8歳の若年寄犬(語尾上げで)」

 統計処理したい団塊の、午後。

<団塊に良いナニか>

<ピリリリ>「ハイ、医局ウ」
「あらッ、センセ。いらしたんですか」
「ワシが居ったら無口なイタコが、カッポレ踊るるか?」
「それなら、それでも」

「RさんのIC(病状説明みたいな)、今日もですか?」
「昨日たっぷり1時間したからもうネタがないけど、ご家族が居られるんだったら。
 新作漫才たっぷりお時間まで?あ、ダメ!」

「予定じゃ14時にICって。でも、当直明けでお休みかと」
「あ、しまった。休んでエエ?」
「サボっちゃダメですッ!」

「ヒマじゃからラウンド3.5でもぶちかましちゃおうかなーっと」でステーション。
「センセ。ナンか、肌がしっとりしてますね」
「ジジイの割に、しっとりタイプの人。キムタク似の人って、言いたい?」

「言いたくありませんッ!」
「汗かき脂性肌が、禁酒と腰イテテダイエットで18kg減の微乾燥ツルツル美肌。
 ナニが良かったかって、敢えて言えば心根と育ちかな?あと、ご先祖の功徳」

「痩せたら、脂も減るでしょ?」
「皮膚が縮んでも、脂腺の数も出す脂の量もは変わらんと思うけど。
 皮膚の面積が減った分、脂が行き渡りやすくなった(語尾上げで)」

「気味悪いような、触れたくないような、忘れたいけど夢枕に現れるような」
「ワシの美肌問題について、ディスカッションせよ」
「なにゆえに、上位目線?」

「ワシの肌問題は、地球環境と北京ダックの幸せに関わってる」
「閑話休題。昨日の夜勤で、凄ッいモン見ちゃいました」
「鏡に映ったあんたのスッピンより凄ッいモンって、ナウマン象の水芸か?」

「両者、引き分けエ。みたいな。んじゃなくてエ、出たんですよ」
「風呂の中で、屁が7発?」
「そんなに出したら、実も・・・んじゃなくてエ。病棟に霊が」

「霊のお出ましに当たって、ナニかが良かったんやろ?」
「なーんも、良くないッ」
「やっぱ白い着物で、両手ダラリ。気をつけッ、礼ッ!みたいな霊?」

「んじゃなくてエ、イケメンなんですよオ。あたしをじっと見つめて、キャー」
「あんたのすっぴんにフリーズした、宅配便のオニーさん?」
「夜中の2時に、宅配便は来ませんッ!言いたいこと、はっきり仰ればッ!」

「言えるモンなら、苦労はせんッ。シロイヌ邪馬台宅急便なら、黄泉の国から来るやろ」
「ナニを運んでくるんですか?」
「あんたに死の招待状と、白装束」

「足もあるんですよ、あたしくらいの美脚・すらり八頭身・ぱっちり眼」
「フンフン、ダルマ足裏ウオの目程度の足と、んーと・・・。メタボ腹に、キツネ眼ね」
「都合の良いように、変えないッ!」

「ナニが良かったって、敢えて言うと。前夜の夫婦喧嘩で寝不足か?」
「ナンで知ってるんですッ。センセはあたしのストーカー?」
「あんだけ休憩室でギャーギャー言えば、廊下を通れば聞きたくなくてもナ。
 大笑いさ、実際のとこ。ナニが良かったかって、敢えて言えば。旦那のへそくり問題」

 ナニかが良かった団塊の、午後。

<団塊はセンセと言われるほどの>

「はアー、処方箋書きたくネーなー。昔はエかった、あ・うんの息で済んだから楽ウー」
「あ!うん!!コラコラ、それも仕事のうちでしょッ。書いてナンボ」
「まあそうじゃけどオ、ペンのどっかを押すとディスプレーが出て」

「センセの脳みその中身が映し出されるんですね、センセのすっごい恥ずかしいヤツが」
「もう外を歩けなイー、浴びるほどノンアルコール焼酎飲んで暴れちゃうぞオー」
「センセ、センセ。飲まなくても暴れてるじゃないですか、会議でギャーギャー。
 タヌキかブタの着ぐるみで歩けば、アニマル暴れるちゃん?無しでも、まんま!」

「何かセンセの安売りみたいに言われると、アホ呼ばわりされてるみたいな。
 センセと呼ばれるほどのバカで無しって、良く言うやんか」
「んじゃ、ずーっとセンセってお呼びしましょうねー」

「閑話休題。数字を押したら、ポンポコ1回37錠・1日13回みたいなのがサラサラッと。
 ペンが自動的にワシの字を真似て書いちゃう、みたいな」
「んじゃ読めないから、意味無いでしょッ!プリンター明朝体文字で、オネガイします」

「それって、ワシの字が汚くて読めんことを暗に言ってるわけね」
「イエ、はっきり言ってますけど」
「んじゃ、次の方」

「センセ、チャックが下がってますよ」
「イカン。股間が風邪をひくから、グッと引き上げ・・・上がってるやんかッ!」

「センセ、こちらです。そちらは外科、こっちは内科」
「ここは何処、私は誰?」

「センセ、センセ。MIHIセンセの診察ですよ」
「んじゃ、聴診器をワシの胸に当てちゃってネ・・・」

 介護施設スタッフに付き添われて、現れたKさん。
「おろ。Kさん、元気ね?」
「お世話になっております、お久しぶりで。どちら様か、元気そうで何より」

「んで、Kさんはナンのセンセじゃったんね?」
「ナンでございましょうか、私はさっぱり」
「お茶とお花でしょ、確か掛け持ちで。んじゃなかったですウ」

「保健体育と漫才科の掛け持ち?」私。
「そんなセンセは、おバカっしょ」突っ込む介護士S。
「んで、センセと言われるほどのバカで無しって」横からナースN。

 センセと呼ばれたくない団塊の、朝。

<団塊医は漏らさない>

「あんたら、そのUSBメモリを家に持って帰ってないやろな」
「もちろん、そうしたい気持ちは有りますけどオ」
「施設の外へ持ち出した瞬間に、個人情報保護に反するんだかんな」

「そう言うモンですか」
「ま、あんたらの場合は。パソコンから外した時点で、情報ダダ漏れやね」
「んじゃ、センセはどうしてるんですウ」

「ゼッタイワシは、患者さんの情報をUSBメモリに保存しないんよ」
「んじゃ、ナニに?」
「パソコンに繋いだハードディスク、ダブルで保存がしっかり者」

「しっかり者じゃなくてするのは、ヒマなセンセがすること。んでも、センセ。
 そのハードディスクが盗まれたら?」
「大丈夫イ。ワシのハードディスクは3トンじゃ、ユンボじゃないと持って行けん」

「んじゃ、センセはUSBメモリは持ってないんですか?」
「んーと、6個持ってるけど」
「んじゃ、ナニ入れてるんです。そん中に」

「ワシのエッセイかな?個人情報とはちゃうで」
「見る人が見たら、悪口が誰のことか直ぐ分かって。あー、Pちゃんのことみたいな。
 それって、個人情報(語尾上げで)」

「そらあんたらのUSBメモリとは、ワケが違いまっせ」
「どのように?」
「笑えるオラウータンファミリー夏祭りとか、ヨゴレ猪豚一家の猿山遠足の写真」

「あー、あたしのUSBメモリ見たでしょ?」
「病棟のパソコンに刺してあれば、つい恐い物見たさでクリッと」
「よそんちのデジカメ写真の、何処が恐いんですかッ」

「37枚目を見た時は、ワシ失神しそうじゃった。ちょイ、チビリそうじゃった」
「良く失神するんですねー、目エ開いて歩きながら。たまにラウンドしながら」
「そう言う写真は、世間を恐怖に陥れる悪行三昧?拾って中を見たヤツは、とん死」

「んじゃ、どうしたらデータ無くさないんですウ」
「入れ物に、見たらゼッタイ笑い死にするぞ!とか。3代祟りがあるぞ!とか、書く」
「その上マグネットと一緒に袋に入れて、読めなくなったりして」

「そんなんより。USBメモリを、ウニの殻か栗のイガの中にいれるとか」
「お尻のポケットに入れたら、血だらけみたいな」
「それが癖になるなら・・・あ、ならない!ストラップを付けるワケよ、特大の。
 それか、クイーンエリザベス号の錨にぶら下げるとか」

「センセも、そこまでやってるんですウ?」
「ワシのストラップは凄いで、油断大敵印の腹掛けをした象ぬいぐるみ」
「死ぬまで、ぶら下げてて下さいッ!」

 患者さんの情報漏れは、ちょっとした油断から起こる。
その点で団塊医は、情報もシッコも漏らさない。

<団塊の繋がり>

「あのさ、P病棟の男性トイレ。使えんの?何で」
「今は使えますよ、でも普段は使えないことになってるけど」
「それって、ワシみたいやな」

「センセは使えないって意味じゃ、今も昔も変わらんとか」
「んじゃなくてエ。今はキムタク似で、ブラピ似じゃないって事になってるみたいな」
「更に35倍、意味ワカランッですけど」

「あそこのウオッシャーはエエんよ、マックスでヒエー効くウみたいな」
「そう言う患者さんが問題で、壊されたんですッ」
「コーモンを突き上げるような、強い水力は最高やで」

「トイレの3つ隣のお部屋の方が、同じ趣味で」
「エエ趣味しとるやんか」
「んで、Gさん。センセと同じで、認知があって」

「ますます、お友達イ」
「放っておくと1日中トイレにまたがって、シャーシャー。もち、マックスで」
「肛門の内側まで、洗ってんじゃなかろうね」

「そこまでしたい気分なんでしょうねー」
「風呂桶一杯も使わんやろし、飯と寝る時は便器から離れるやろ?」
「そらそうですけどオ、この間は予備のペーパー5個クルクルしちゃって」

「そーとー出たんやねー、いっぱい食べて」
「違いますよ、認知がさせたんです。結局、紙が詰まって使えなくなって」
「治ったわけね。んじゃ、ワシは使ってエエんじゃね?」

「フツーの使い方で、オネガイしますネ」
「異常な使い方って、どんなん?」
「そらセンセが、一番よくご存じでしょッ」

「つま先からそーっと、便器へチャップン。湯加減は・・・んじゃなくてエ」
「さ、仕事仕事」
「んじゃ、失礼して」

 機嫌良く、マックス・シャーシャーするMIHIセンセ。
カーテン越しに聞こえるシャワー音を聞きつけたGさん、侵入する。
「おろ?治ったか。じゃ、使わして貰おうかい。あら、先客か」

「あ、スイマセーン。修理中でーす、使えませーん」
「まだ治ってないんか、イカンのー」

 この一言を残して撤収する、コーモン繋がりのGさん。
足音が少しずつ遠ざかるのを、切なく思う団塊医であった。
外れかけてる「使用禁止」のビラを直す、コーモン繋がり団塊医でもあった。

<団塊の腰痛と動線>

 元来せっかちなものだから、無駄な動きを大いに嫌って動く前3分間で動線を決める。
動線を妨げられるのをもっとも嫌い、猪豚突猛進しかありえない日々だった。
加わった腰イテテは益々動線を意識するようになり、家でじっとしていれば良いものを。

 つい本屋・やっぱ電機屋・なんてったって孫のためのおもちゃ屋・時にスーパー等々。
幼稚園以来の性癖で、すこぶる落ち着きがないのは治るはずもなく。
小学校時代の通信簿の「授業中は、なるべく前を見よう」は、伊達じゃない。

 自分の買い物なら端から目的を決めてあり、最短距離でまっしぐら商品棚リターンレジ。
これがお買い物のお付き合いとなると、せっかちさが3万倍にふくれあがり。

「あ、あれ買うの忘れてたア」は、「ウウ、助けてくれエ。見逃しチくれえー」の悲鳴。
「あれって、どこだっけ?」は、「お代官様ア、はしょって下せいましイー」の懇願。
「ついでに買っちゃう?」は、「3年後に、またのお越しをお待ちしてますウ」の祈り。

 それなら一緒に行かなければいいと思うのだが、独り遊びも限界がある。
私の腰は「安静にしていてはいけない」で、主治医のお勧めで寝ていてはイケナイらしい。
病院の仕事は最良の動線で、病棟1つ分を回診してカルテ書きは腰イテテを忘れさせる。

 仕事熱中人ではなく、時にはお勉強・たまには論文・出たくないけど会議の変化を求め。
ストレッチ筋トレの間にコナンドイルを挟んで、腰イテテと戦うのが日課になった。

 院内で「腰イテテ」が流布し、30年ぶりにスタッフから優しい言葉を聞く。
「あ、センセ。腰痛いんでしょ、良いんですよ。放っておいて」の同情が多い。
実は腰イテテは筋トレでかなり改善しているのだが、褒め言葉と同情は蜜の味。

 腰は結構良いんだけど・・・とは言えなくなっても、最短動線は外せない団塊。

<団塊のサボる心理>

 生まれて久しく賞に縁がなく、私の人生に晴れがましいことはなかった。
義務教育はゴルフ大会じゃないから、人生かけっこにブービー賞はもちろん無い。
もしあったら、時々ドジなヤツがすっころんでくれるから私にも賞1つ。

 とにかく学校が好きで(と言って、家で辛いことがあるわけではないが)。
教室の椅子に座ると心穏やかになったのは、給食が特別美味しかったわけでもない。
小学3年生の時に転んで石の角で太ももの肉を削がれ、18針縫って入院した4日間。

 それ以外で学校をサボったのは、38度の熱で休んだのが2回。
その過ちをバネに、高校3年間は皆勤賞。全校生徒727名中7名のうちの1人だった。
それが生まれて2度目の賞で、中学2年生の時に夏休み研究発表で全校2位が初。

 いまだに引き出しの中に、薄黒く錆びたメダルが鎮座していて。
机周りを掃除する度に思い出すのは、熱を出して学校をサボったこと。
登校時間になると何故か胸騒ぎ、這ってでも学校への企みは9時過ぎてやっと失せる。

 サボると決まってしまえば今さら遅れて行くわけにもゆかず、天井の節を数えていると。
お粥が出て、牛乳が1本とバナナが1本。苦い薬が無ければ、これほどのパラダイスは無い。
「学校へ行ったみんな、ザマー見てネ。堂々と朝寝していても、怒られないんだかんね」

 こんなミョーな優越感も、午後になると歩幅前進でも登校すれば良かったに変わり。
熱も下がってくる頃、同級生が紙に包んだコッペパンなんかと宿題を届けてくれて。
乾燥して固くなりつつあるコッペの表面を突っついたり、ガリ版刷り宿題をチラリ。

 こんな学生生活も、サボって単位を取るテクニックに変わる大学時代。
何処がターニングポイントか分からないけど、医学生の多く(タブン)はそうだった。
要領の良い医学生は、講師連中にはすこぶる評判が悪くても進学課程2年間だけ。

 専門課程に行けば、そんなテクニックは先輩にお見通しだから通用せず。
サボった代償として、お楽しみの3倍地獄が待っているのを知っている。
たまにサボったりすると、不整脈発作じゃ済まないドキドキは少なくとも2時間。

 医者生活の中で時に学校の先生役をすると、サボってるヤツがちょっとだけ気になる。
こんな時は我が身を振り返り怒ることが出来ないから、「ここ試験に出す」の抵抗と一言。
「ワシもね−、医学生時代にもうちょっと基礎医学を勉強してたらエかった思うんよ」

 サボる奴に対する気持ちと裏腹に、団塊は自己反省の日々。

<団塊医のキャッチ>

「センセ、ドクダミってご存じですよねー」
「青虫でも嫌うヤツやろ?あんたみたいな、虫が付かん草ッ葉とも」
「あたしはガードが堅いから、悪い虫は付きませんけど」

「良いも悪いも、ナフタリンなみに虫はゼンブ避けるみたいな。んで、ドクダミ?」
「あ、そうそう。ドクダミをヌタあえで50Kg、毎朝食べると便秘が治りぺったんお腹」

「ナンじゃそら、下痢して背脂ペッタンコ。食えば体脂肪、ドンブリコ。
 そんなんより、サクサクッと早い方法あるで。高々、数分かな?遅くても30分以内?
 TVサスペンスならあっという間じゃけど、あれは大嘘」

「そんな良い方法、教えて下さいませんこと。ゼヒに」
「口に含むと、しばらくしてナッツの臭いがするヤツ」
「あー、知ってるウ。青酸カリじゃん。刑事が、ナッツの臭いだ。他殺だ、みたいな」

「そうそう、それそれ。丼で行っちゃって、クイクイでもってドンドンのばりばり」
「ヤです。ドクダミでエエですッ。ドクダミで美白痩身、貴方もノリカに!だって。
 Rさんの持ってる本の表紙にもキャッチ。貴方でさえもノリカ、全国に続々みたいな」

「何とか言う健康雑誌やろ。雑誌名は。不快とか、ブ健康とか、るい痩とか」
「凄く体に悪そうな雑誌イ」
「んでも、キャッチコピーで。”紙風船ダイエットで激やせ300Kg”もあるでよ」

「あ、それって3月号特集でしょッ」
「スペッシャル付録、ダイエット用紙風船1375枚え頓死。今なら付いてます、なんてな」
「そうそう、付録の上にスペッシャルが付いた日にはもう大変。小走りで本屋」

「とかア。キョーレツワイヤ・ブラシ。ゾウ肌の貴方は、ずばり3分後に鮫肌にとか」
「良くなってないッ!」
「んじゃ、足の裏5寸釘刺せば鼻横ホクロは真っ赤っかは?」

「SMですかッ!んでもキャッチコピーって、難しいですねー」
「キャッチって、漫才のツカミみたいなモンじゃから。中身より大事やモンねー」
「中身無視で、酷くない(語尾上げで)」

「読者の心わしづかみ、緩い粘度を思いっきり掴むと指の間からニュルーっと同じ。
 あの粘度が指の間を通り抜ける時の快感、あの開放感」
「分かるウ。なんでMIHIセンセと同じ快感を共有するかなー、あーヤダ」

「ワシも、あーヤダ。んで、ドクダミ?」
「そうそう。癌を予防して、若返るって」
「どーせ、ミョーなキャッチが付いとるんやろ」

「ドクダミで貴方だけ成功する、癌と加齢からの大脱足マーチ!って」
「癌になる前に早死にするか、すっとぼけて自分の歳を忘れるんやろ?」

 患者さんの心をわしづかみにするキャッチは団塊医には難しい、午後。

<団塊の4日目有給(いろいろなやむ)

 年間40日ある有給を消化するために、夏過ぎて4日目をいただき映画へ出発。
車窓から目に入る大看板、その半分は悩めるじっちゃま。確かに、8の字眉毛ニタニタ。
残りの半分に、二行にわたって「事前相談で安心じゃ」。見れば葬儀社の宣伝。

 看板じっちゃまは何に悩んでいて、相談して何に安心(語尾上げで)。
悩みつつ赤信号で並んだ車の運転おばちゃん、叫んでいる様な笑っている様な。
同乗する人なし、携帯のヘッドフォンとマイク無し、歌ってるにしてはリズム感無し。

 おばちゃんは、誰と何について妄想会話?幻視?幻覚?幻聴?
悩みは信号変わると同時に走り去って10分後、目的地到着。
軽昼食。フードコートのテーブルに並ぶパン、チーズ、コーヒー、チビ饅頭。

 5メートル先にカートを押す、色黒、和人に見えない顔立ち、上背タップリ。
思いっきりニット帽かぶってるから、動きが目立つ口元は相手が見えない会話中。
視線を避けて目だけが追うオヤジ、真っ赤なダウンコート。
オヤジ目立ちまくり、私は悩みまくり、んでオヤジ喋りまくり。

 見渡せば3人に1人はダウン製品身に纏い、ぬくぬくで歩き回っている。
ダウンコート、ダウンジャケット、ダウンベストと私でさえ3枚持っている。
ダウン製品の為に、一体何羽の鳥の羽がむしり取られたのだろう。
 
 色々悩む、今年4日目の有給日。

<団塊は神経ブロック卒業>

「んで、センセ。どうします?次」
「ぼちぼち、ここいらでいわゆる経過観察でしょうねー」
「そうですねー、ブロック。ここいらで置きますか?」

「んー、そうですね。やはり、ここいらが潮時でしょうね」
「んじゃ、とりあえず最後のブロックを」

「なんか、最後なんて言われると。とどめを刺されるみたいな、ヤーな気になりますねー。
 センセのおかげで、患者学を勉強させて貰いました。くっきり、しっかり」
「たまにはエエでしょ?その言い方、トゲありません?」

「センセのおかげで、もうこりごりですわ」
「しかし、センセくらいですよ。痛みのスコアを、エクセルで立体折れ線グラフ」
「このデータ整理はさすがに本気で、冷静さを失わないようにするのが精一杯」

 こんな会話をしながら、患者とは身勝手なものであることを自分自身で体感するのだが。
治療終了は嬉しい反面で完治していても不安が残るのに、そうじゃなければなおのこと。
医者が患者の立場になっただけに、治療・予後と踏ん切り時も心得ているはずなのだが。

「しかし、今回は前回と同じじゃなくて。前回は脊柱の線香花火に、火を付けたみたいで。
 いつもは終わって歩き出すと不連続無作為方向にピリピリが飛び散る感じは、無い」
「はア、そうですか。んじゃ、効いてるんでしょ。とりあえず卒業で」

「卒業なんて言われると、卒業証書貰うみたいに、最後くらい効かなきゃ損とか?」
「されたことない私には、分かりませんねーブロック。またどうかあったら電話下さい」
「ハイッ。ホント、お世話になりました」

「んじゃ、10分ほど腰掛けて様子を見ましょうね」のナース。
「大丈夫です、今日は効きましたから。スキップでも、お見せしましょうか?」
「プッ、ここで静かにしましょうね」

「あら、MIHIセンセじゃ?」
「おおう、あんたは・・・」
「ハイ、以前一緒に施設で仕事を。センセは病院と兼務」

「やっぱそうじゃろー、どっかで見られたような」
「あれから、患って。医大に2ヶ月入院したけど、治らなくって。言われたんですよ。
 あんたの病気を治せる医者は居ないって、酷くないですウ」

「ゴメンなー、わしの後輩かも知れん」
「元気すぎるお医者は、患者の心が分からないんでしょうねー。んで、センセは?」
「腰イテテでな、ブロック。まあまだから、もう来んでエエ。とりあえず卒業って」

「もともとセンセは優しいけど、ますます患者さんに優しくしてあげてね」
「あんたも元気出してな。ホンマはワシ、治ってナインじゃけどなー。
 こういう時に医者はいつもこう言うんよ、まあ経過を見ましょうって」
「もしかして、神経ブロック退学だったとか?」

 別れ際に握手をしたら涙ぐまれて、じんわり胸が熱くなる午後。

<団塊のお勉強はエサで>

「センセ、狙ってたでしょ?悔しいでしょッ」
「キムタク似は狙わなくてもそのまんま、たまにブラピ似って言われてもなー。
 多少悔しいけど、まっ許しちゃおうなんて。ワシって、凄く心の広い人」

「心が狭くてエエから、オネガイですから猪八戒似にしていただくと幸せますウ」
「ナンであんたの幸せのために、ワシがトム・ハンクス似で我慢せなアカンのや。
 責任者出てこいッ!」

「なんでそこまで話がぶっ飛ぶかなア。この間の、研究大会の懸賞ですよ」
「あ、あれね。ワシの発案の。やっぱ、お勉強したらご褒美。勉強させるにはエサ」
「んで、欲しかったんでしょ?」

「1万円の図書券、マンガとか週刊誌買ったらアカンで。ホラーナース・シリーズも」
「そんなシリーズ?なんで、中身を知ってるんですウ?懸賞の」
「あれはワシが言い出したから、まるっとお見通しだぜイ」

「そう来るか」
「駄馬でも、美味そうなニンジン目の前にぶら下げられたら。どたどた必死で走るやろ」
「だ、駄馬ってあたし達のこと?」

「まあ、ワシみたいな讃岐のサラブレッドとはラベルがちゃう」
「ホントは悔しい癖にイ、このこのッ」
「たかが1万円の図書券なんか、ワシならアンケート生活1ヶ月で稼ぐで」

「どーせ、いい加減、適当、ウソばっかのアンケートでしょッ」
「み、見たな!」
「いつも言ってるじゃないですか、アンケートの3つのミス」

「しまった、教えるんじゃなかった」
「センセがやるアンケートは、質問相手とウソついた。最低2つは、既にミス」
「確かに、ワシにアンケートはブタにマスク。はたまた、トンビに串カツ」

「ワケワカランッ!んでも、あたしらのチームがいただいたからエエとしましょ」
「今度は他所が取るって、研究チームを立ち上げたらしいで」
「おろろ、んじゃこっちも」

「あんたら、幸せモンじゃねー。お勉強させるのに図書券ぐらいで、単純明快ッ」
「いただけるモンなら、ゴミ以外。30円まで内密に」
「精神的ビンボー人達を、誉めてつかわそう」
「誉めなくてエエから、エサが良いですウ」

 自分のお勉強のエサを何にしようか思案する、団塊の午後。

<団塊は春から初夏>

 ベッドから離れて立ち上がる時の、「ク、クーッ」情け無い悲鳴はやっと峠を越して。
戯れにコルセット無しで立ち上がった時に襲う鈍痛に、その威力をまざまざと実感。
1ヶ月もすれば腰回りに馴染んで、大げさに言えば人生の相棒と化した。

 喉元過ぎれば熱さを忘れるではないが、起き抜けの嵐が過ぎれば当初の痛さを忘れ。
朝の恐怖は昼の期待に変わり、それでもベッドの中で軽くストレッチと筋トレは定番。
この作業は昼休みと風呂上がりまでお約束のもので、欠かすことが無くなった。

 人間は色んな刺激に閾値が上がり鈍感になるようで、イヤな音や臭いにも徐々に慣れる。
何時までもストレスを感じていたら体がもたないから、自然に自己防御装置が働くのか?
この度の腰痛には当てはまらないと思っていたら、コルセット違和感の閾値は上がった。

 窮屈と痛みの緩和を天秤に掛ければ、遙かに高い優先順位の痛みからの逃避。
痛みが遠のけば次第に我が儘が顔を出し、「コルセットを外してみたら」の誘惑。
エイヤッと思い切って外してみると、ナンと快感・ナンと体の軽さ・ナンと開放感。

 病棟に呼ばれトボトボ歩いて行けば、それほど腰痛を感じない幸せ。
「おろ、センセ。激やせ?」
「いまコルセット外してんの」
「んじゃ、丁度エかった。褥瘡処置でも、オネガイしますか」

「今日だけは、見逃しチくれエー。お代官様ア、便所コオロギ様ア」
「あ、けっこう余裕有るんだ」
「ナイナイ。あんたの、パンツのゴムの伸びみたいな」

 これが精一杯の抵抗で、トボトボ歩き帰る医局で再びコルセットにくるまって。
我が腰に訪れる春を待てば海路の日和あり、団塊は春から完全初夏。嗚呼。

<団塊のお洒落は見えない腰パン>

「おろ、センセ。ミョーな腰つきは、腰イテテ?」
「んにゃ、お洒落」
「クイクイッの、何処がお洒落?」

「あんたのお洒落と同じやで」
「勝負ババシャツには、マル虫の刺繍でしょ。やっぱ」
「刺繍ならゲジゲジとか、赤トカゲやろ。やっぱ」

「キティちゃんとか、ドラえもんとか。可愛いのはアカンのですかア?」
「んじゃ三段腹の皺の間に飼ってる、ゴミ虫3兄弟。すっごいお洒落エ」
「あ、この間4匹目が。んじゃなくてエ。何で、センセの腰つき?」

「腰パンって、知ってる?」
「あのスノーボーダーで、話題のヤツでしょッ」
「あれはあれで、大した問題じゃ無いと思うんよ。好きに、勝手にしなさい」

「若者に理解があるんだ、スタッフには無いけど」
「腰パンの上に羽織袴じゃったらねー。良ーやった!日本人の鏡イ」
「見えなきゃ、意味無いでしょッ」

「見せるからヒンシュク買うけど、見えなきゃ文句なし」
「見せるからエエんじゃ?」
「オバカ言わないで、ワシみたいにシャツの下の腰パンがエエんよ。実際。
 見えないところでするのがお洒落、見せるのは野暮って。石器時代から」

「やっぱ、石器時代も腰パン?」
「石器時代は、パンツ無いしイ。んーと、腰ミノ」
「アロハーとか言って?」

「時代を戻して、江戸時代にしてくれんね。大商人が、裏地に金かけるみたいな」
「ヘッヘッヘ、越後屋。お主も洒落男よなー、ヘッヘ。みたいな」背後霊の主任さん参入。
「センセも言われたい?ヘッヘッヘ、MIHIセンセもダ洒落男よなーって」
「あ、それダメ。ダ洒落も腰椎も、ズルッと滑ってるから」

 団塊が見えないところでお洒落をするのは難しい、午後。

団塊は還暦にして立つ・・・じゃなく、断つ

 断つと言う行為は、目尻をキリリと挙げてすることが多い。
私の人生の中で”断つ”と言う行為は、記憶のある限りではまず禁煙だろう。
結婚したら止めようと思って居たのに、ウジウジと医局だけでで吸っていた。
これは”断つ”とまでは言えないから、ちょっとだけ横に置いてみっかな?程度。

 上の子が宿った時にエイヤッとタバコを断った(声に出さなかったけど)。
タバコを断っても、アルコールの誘惑にはシッポを振った(シッポはないけど)。
だから禁酒が出来ない人には寛大で、禁煙出来ない人には厳しく接した(身勝手だけど)。

 還暦を迎えた頃待ちに待った初孫誕生、こんな可愛い子は将来もっと可愛くなるはずだ。
なんせMIHIセンセの孫なんだから、ヘンになる余地が無いはずだ。
そうなると、確認するためには細くても良い(太いのは大歓迎)人生が必要と思い。

 ある種の取引として、何かを断つのが手っ取り早いとなった。
取引の相手は、ダビデさんでも、キリストさんでも、ブッダさんでも良いのだが。
残念(不謹慎?)なことに私は無宗教に近いので、私の守護霊としておこう。

 44年間エンジョイしてきたアルコールを、断った。
この時は犬小屋の屋根から飛び降りたつもりで、後戻りはしないと固く決めた。
水代わりノンアルコール炭酸麦水(あれをビールと呼ぶヤツが居たら、成敗じゃッ!)。

 芝生の手入れと孫のだっこに加え運動不足が重なって、ギャグだけじゃなく滑った腰椎。
思いがけなく始まった腰イテテの人生は、飛ぶ鳥から直撃のフンを頭に受けたような気分。
「神経ブロックは一応卒業で」の一言で、先行き不安の暗澹たる気分で芝を引きはがす。

 私の人生暗かった?私の腰イテテは何時まで続く賽の河原の石積みか。
麻薬撲滅のキャッチじゃないけれど、貴方ブロック止めます?それとも人間止めます?。
だからと言って人間止めたら、せめてオラウータンかマントヒヒでオネガイしたいけど。

 自習スポーツ医学腰痛編練り上げた自己流ストレッチが、メザシの頭程の効果!!
気を取り直して、プチ取引で断つの医局っでコーヒー。完全断珈琲は、無理!
腹筋と背筋の筋トレ・ストレッチの甲斐あって、歩行距離が延び始めたのを機会に。
1ヶ月ぶりに啜ったほろ苦い味は、2度目の還暦にして断ったものを取り返した。

 次に断つべき手持ちが少ない中、何が残ってるのか悩む還暦過ぎの午後。

<団塊はモーチョーを散らす?>

 「モーチョー(いわゆる虫垂炎)を抗生物質で散らした」と言う話を時に聞く。
「急性虫垂炎に対する抗菌薬療法の効果は手術より劣る」とLancet(ねつ造じゃなく?)。

 CTで合併症のないと判断された急性虫垂炎について検討。
抗菌薬と手術グループで、治療開始から30日までに腹膜炎の発生を比較した。
抗菌薬療法120例、虫垂切除119例。
結果は30日までに腹膜炎を発症したのは、抗菌薬療法で8%。
ところが、虫垂切除群では2%と低かった。

 虫垂切除群ではCTの評価にもかかわらず、21例で腹膜炎の合併が確認された。
抗菌薬療法群では、14例が最初の30日間に虫垂切除術を受けた。
さらに30例が1年以内に虫垂切除術を受け、うち26例が急性虫垂炎の再発だったとか。
Von .C,et al.Lancet2011;377:1573-1579らしい。
参考;Medical Tribune 2011年5月26日号 P51

<ホームズと団塊の共通点>

「コナンドイルの作品の中で、気に入っているのが”緋色の研究”なんよ」
「センセって、ついこの間まで乱歩って言ってませんでしたア?」
「いくら腰がイテテでも、頭脳明晰・容姿端麗・キムタク似」
「妄想癖も、ヨロピク」

「その中で、ホームズは言うんよ。世界中ボク1人だけ、変わった仕事をしてるって。
 行き詰まった警察や刑事がやって来るから。正しい手がかりを、教えてあげて。
 ホームズの知識で見事解決って、言っちゃうワケ」

「自画自賛のところが、まるでセンセ。ウリ3つ、タコ4匹」
「しかしなー、推理がなー。後で取って付けたみたいな感じイ、ちょっと強引」
「またまた、MIHIセンセとブタ4匹」
「シャーロックホームズって、そういう人。ボクって、そういう人」

 この作品は2部に分かれていて、1部の謎を解き明かす2部がちょい複雑で込み入って。
今まで読んだものとは、作風が明らかに違うと感じたのは私だけか?
文庫本で200ページ少々だから、一気に読むにはちょうど良い。

 研究大会を終えて腰をかばいつつ、違う翻訳家で2度読んでみると違った面白さ。
ホームズとワトソンとの出会いもある、記念すべき作品らしい。
第一「緋色の研究」のタイトルが気になって、放っておけない。

「人生という無色の糸の束には、殺人という緋色の糸が1本混じっている」なんて。
帯に「There's the scarlet thread of murder runnning through the colourless skein of life.」とあるけど。

 アメリカ英語じゃ「color」だけど、イギリス英語じゃ「colourless」だったよね。
ねえ、シャーロックホームズ君?

<団塊のIR(とば)>


 IR!なんじゃそら?と思ったら、国が胴元の小洒落た言い方バクチ場。
賭場なら、「よっ、健さん!殴り込みやー」だけど。
付随した施設で経済活動活性化するかも知れんけど、悲惨な家族を作ってどうする!

 パチンコならピョンピョン打つから、手が疲れれば止められる。
ボートやオートなら、騒音で耳がどうにかなれば遠ざかる。
麻雀なら腰が痛くなるから、集中力低下して長続きしない。
お金が限界の遊びは、お金で人生の限界を変えるのはどうなんよ。

 その上まだバクチ場を作って、バクチ依存症からお金巻き上げるの?
もっと健康的で精神にも良い、ナンか無いの?汗かいて遊ぶモン無いの?
ビギナーズラックじゃなく、コツコツ努力しないと遊べないモン無いの?

 税金上げたら支持率下がるから焦ってIRは無いっしょの、午後。

<ネットで気付く団塊>

 個人的にはネット通販は滅多に使わないが、腰イテテのおかげでちょっと様変わり。
行動範囲が狭くなったところへ、メールカタログは「腰専用低反発クッション」の誘惑。
限定200個!の文字は、「腰に良いことはナンでもいっちゃう」がキーボードを打たせ。

 折り返しメールで、「2月中旬に発送します」まで10秒足らず。
コルセットを装着して、町中を似たような物を探す気にはなれないから。
「物は見て触って買う」のポリシーは、何処へやら。

 感心しつつ、ヤフーで試しに打ち込んだキーワード「毒とるMIHI」。
web検索でヒットしたのが約37400とは、ネットの怖さを改めて感じた朝。

 それじゃ、本名では?・・・同姓同名を含めて僅か731だった。
川端文学研究家の方が半分、残りの多くは自分が関わっているもので。
ホームページとブログが主だが、よく見れば懐かしいタイトルが目に入る。

 知らない間に、むかしのものから最近のものまで私の論文が紹介されている。
どうやら医学関係の業績をまとめたサイトの中に、お邪魔しているようだ。
最近作はいざ知らず、あんな旧い論文まで!と感心するやら恥ずかしいやら。

 ネットの世界は、知らない間に宇宙同様広がり続けているらしい。

<団塊の痛みVS欲>

 最も基本的な欲望は、「痛みからの開放」だとつくづく思う。
痛みが激しいほど欲望への意識が遠のき、全ての行動は痛みに制御される。
痛みが明らかに軽くなるまで、欲望を発生させる場所を変えて出てこない。

 電源を落とされたか壊れたモグラ叩きのように、穴の中へ潜ったままのモグラ欲望。
痛みが明らかに良い方向に向かうと、先ず顔を見せるのが食欲。
それと同時に出てくるモノは千差万別で、個人差が大きいのは言うまでもない。

 私だけかも知れないが、次に出て来たのが軽い読み物の活字。
まだ音楽を聴く気にはなれないし、ましてや勉強する気にはなれない。
データをいじって統計処理をしようと思っても、集中力が続かない。

 それでも今日は義理の息子のために、彼のホームページを作ってアップした。
アクセスしてみるとちょっとした不具合が見つかり、修正とアップを繰り返す。
この間に30分1回はストレッチをし、同じ姿勢を続けない配慮は怠らず。

 夏樹静子さんの「椅子が恐い」を思い出しつつ、腰とメンタルな関係に思いを馳せる。
確かに私の場合、最初は整形外科的な疼痛であるのは間違いがないが。
時間の経過と共に、メンタルな部分が影響している可能性を感じた。

 抗うつ剤を飲むほどではないと思ったが、2度目の神経ブロック前は心が揺れた。
ブロックの翌日の朝、手のひらを返すほどではないが明らかな改善を感じ食欲が増した。
勤務中「痛みからの開放」の予感は、まだ知識欲を回復させるほどではないのが情け無い。

 「痛みVS欲」をどう考えたらいいのか、模索する午後。
疼痛によって明らかに増したのは、入浴に対する欲望であった。
60年生きてきて、これほど入浴があらゆる欲望に優先するとは。

<団塊は朝の嵐>

「ウーッ、クッ。クフうー」

 雨戸を開けようと立ち上がった時、この一言で絶句していたこの2週間。
起床してベッドから離れようとして立ち上がると、腰からお尻にかけての鈍痛。
35cm歩くのに1分はかかりそうな、そう言う表現しか出来なかった。

 ベッドの中で腹筋運動をしている時から、今朝は何処かが違っていた。
「おろ?嵐がそよ風とは言わないけど、風速が落ちたみたいな感じイ」

 階段を降りトイレへ行って、新聞を持ち椅子に座り先ず静止5分。
この頃から痛みが薄れてきて、動きはフツーに近くなり。
着替えて食事を終える頃は、軽い鈍痛だけになって嵐が過ぎ去る日々。

「んで、センセ。どうなんよ?腰」
「昨日な、ブロックをしてもろうて。生まれて初めて、牽引ッちゅーのをしたワケ」
「センセじゃったら、さしずめ釣り上げたマグロを横にして引っ張ってるみたいな」

「エエ脂、乗ってまっせ。この大トロ最高!みたいな」
「んで、引っ張るのは何キロ?」
「体重の半分が相場じゃから、27キロ」

「そんなところで見栄を張って、どうするどうする。40キロじゃ?」
「・・・んじゃなかった、30キロ。凄いやろ、歴代1位らしい」
「あと50キロ追加すると、エエんじゃ?」

「アホ言いなさい、真っ二つに千切れるで」
「んでも、上下で合計80Kg?」
「ダイエットに加えて禁酒で減量、しかも腰イテテで食欲やや落ち」

「腰に気が行って、無駄食いしなくなったワケだ」
「あんたねえ。物は言い様、愛は要らんからゼニを出せ。みたいな」
「ワケワカランッ!」

「まあ、そう言うワケワカランッ!状態なワケ。ワシの春は近いか?」
「春にも、嵐って有りませんでしたっけ?」
「背なで泣いてる、桜吹雪みたいな」

 腰に気が行き過ぎてワケワカランッ!ことを言う腰痛団塊の、午後。

<断る団塊>

 昔から信心深い方は願い事をする時に、自分の好物を断つと言う。
私の場合は自虐的なのが好みでもなく、悲壮感に溢れているわけでもないが時に断つ。
この節目節目で余程困らないと断つことはないが、断つには踏ん切りも必要で。
神や仏とのある種の取引だから、成就すれば断ったことから解き放たれることになる。

 1日40−50本吸っていたショートピースは、上の子が出来た時に断った。
初めの頃は研究室や当直先限定で、スパスパやっていても自宅では我慢出来た。
それならと言うことで、思い切って断ったタバコのおかげで元気に生まれた。
そのまま下の娘が生まれても、禁煙は持続したままタバコに手を出す気になれなかった。

 孫が出来て、高校生以来エンジョイしまくった酒も「ここいらでお休み?」と。
禁酒してみれば意外に続くもので、副産物として7Kgの減量に繋がった。

 20年の芝生フリークは、腰イテテで芝手入れを断つのを決めたのは当然。
一気に芝生を引っぱがして、飛び石と砂利に模様替えするデザインまで行き着いた。
腰を思えば芝生歴20年以上も、容易く捨てられ少しの未練もない。
このまま何でもかんでも断ち続けると、白髭に杖の仙人になってしまいそう。

 腰に良い筋トレとストレッチをしまくりつつも、副産物で2ヶ月で2Kgの減量に至り。
腰イテテも良くなりつつあり安堵するも、微妙に続く減量に幾ばくかの不安さえある。
ここでナニかを断とうと思いつき、医局で飲むのはコーヒーを止めて白湯にした。
断ったものを復活する気はないけれど、せめてコーヒーだけでもと気弱になっている。

 今日の休日当直を利用して、遠方での発表は諦めて論文だけにしようと。
臨床研究を断ったわけでもないのに、データーを見つめると脳みそが空回り。
ふと机の上に風邪薬の包み紙、理由をこれにこじつけてボーッとしていた午後。

 記者会見の大臣がヘロヘロだったのを、風邪薬のせいにしていたのを思い出す。
確かに風邪薬と酒の組み合わせは、意識朦朧となるのもさもありなんと。
皆の前でPL顆粒を服用し、酒を断ってますって言えば次は当選するかも?と同情した。

<キューブラーロス的団塊腰イテテ>

 死に瀕した病に向かい合った人の心理過程を、キューブラー・ロスは
著書「死ぬ瞬間」の中で5段階を経ると言った。
それは、第一段階:否認と孤立、第二段階:怒り、第三段階:取引、
第四段階:抑欝、第五段階:受容である。
 宗教的背景が明らかに違うから、全ての人間に当てはめられないかも知れない。
多かれ少なかれ、これに近い過程を踏むことが考えられる。
 この2ヶ月ほど腰痛に苛まれた私が、ロスをパクって自分の心理を分析して
みようと思い立った。

第一段階:否認と孤立
腰イテテ。昨日、芝生の手入れをしたワケじゃないしイ。ナンでや?
 落ちてた\10を屈んで拾ったワケじゃないしイ。ウソやろ、テテテ。
 人畜無害、キムタク似のワシなのに腰が痛くなるはずがないやろ。
 禁酒8ヶ月目の禁断症状か、幻か?それとも白昼夢?

「おろ、センセ。ミョーな歩き方して、新しいギャグですか?」
「オバカ言わないでね。メチャクチャ、腰イテテなんよ」
「あたしなんか、スイスイスキップですわよ」
「エエなー、脳みそが軽いと足取りまで軽いんじゃ。ワシなんか、脳みそ重いから。
 知恵が垂れ下がって腰まで来とるわ、テテテ」
「頭が重いのは、鉛でも乗せてんじゃ?どーせ、孫のだっこしすぎでしょ?」
「確かにワシに似て、最強の可愛さ。着替えていたら、すそを可愛い手が引っ張ってな。
 おうおう、なんちって。だっこするワケよ。それがもしあんたなら、デコピンしまくり。
 一昨日来やがれッ!とか言って、2,3発蹴りを入れるナ。頭の出来も違う、ゼンゼン」

第二段階:怒り
「ハイハイ。どーせあたしの通信簿は、アヒルの行列ですからあ」
「時々、爪楊枝が立ってたりして」
「センセ。体育は、アヒルでしょ?」
「アホ言え、センセにおべっか使って3じゃモンねー」
「キャー、ヤダねー。小学生の頃から要領が良いんだ」
「要領と言うよりも、処世術に長けた小学生と呼んでね。しかし、あんたは丈夫やねー。
 腰が痛いとか、満腹とか、人に優しくなんて。3段腹の皺の間にないんじゃねー」
「センセの3段腹の皺の間に隠れて出てこない、労りの気持ちみたいなモンでしょ」
「オバカを言うんじゃネーぜ、心根の良さは滲む脂汗と同じやッ!」

第三段階:取引
「んじゃ宝くじに当たるんと、腰イテテが良くなるんと。どっちがエエですか?」
「あのさ、ちょっとだけ変えてくれん?3億円が当たって、スキップ出来るんと。
 あんたのガキ・・んじゃなかったおこちゃまの成績が、ぐいぐい上がって。
 矢が刺さったアヒルなみになるのと、さてどっち?みたいな」
「変わったのは、ちょっとじゃないでしょッ。んで、矢が刺さったアヒルって?」
「2ダッシュやろ、素敵に珍しい」
「素敵じゃなくてエエですから、せめて2を3にしていただけません。1教科ぐらい」

第四段階:抑欝
「しかしナンやねー、腰イテテは辛いね−。フう」
「一種の老化現象でしょッ」
「治るんやろか?」
「老化現象じゃったら、世の中のお年寄り全員が腰イテテでしょ?
 うちの裏のジッちゃま夫妻なんか、昼はゲート夜はフラダンス。
 腰の切れの良いこと、クイクイですモンねー」
「ハア、ナンかワシ腰イテテが3.7倍になった気分。フう」

第五段階:受容
「んでも、先週よりミョーな歩き方が治ったみたいな」
「そう言えば、腰に良いことゼンブやったモンな−。神経ブロック、湿布と鎮痛ゼリー。
 鎮痛剤、筋トレ、ストレッチ。お祈りなんか、八百万のご神体にオネガイしたんやで。
 オマケに、丑の刻参り、雨乞い、イタコにチクる」
「後半の4つは、ホントに腰にエエんですか?」
「ワシの腰イテテを、誰かに肩代わりさせちゃろと」
「そう言う性格の悪さが、腰イテテの原因じゃ?」
「腰イテテで、死ぬワケじゃないし。起きがけの腰痛の嵐も、春一番になって来たし」
「センセの腰にも春が来るでしょ?もしかして、気がついたら冬に逆戻り?みたいな」
「あんたのわら人形で、今夜は丑の刻参りするかんね」

 こうして心理変化を分析してみると、団塊のMIHIセンセは単純素直で分かりやすい。
参考書;「死ぬ瞬間」E.キューブラー・ロス著、中公文庫

<団塊騙脳し(あるだけまし)>

 人は中身で勝負つ−たって、見た目も大事っしょ。
この歳になっても、他人の目も口も気になるわけで。
だからと言って騙す努力もする気しないし、騙せないし。

「しかし、P君はカワランねー。あの頃と、殆ど」
「ヤですよ、センセったらア」
「全身が脂ぎってギッロギロ、パンパン腫れ。硫酸も弾く張り、可愛いオテモヤン」

「センセは、騙されてるんですよ」師長さん。
「んじゃ、20年前から?」
「あい、脳味噌が騙されて、着太りに見えるタイプ(語尾上げで)」

「学生さんじゃった頃は、初々しくて。ちょっと頼りなくて」
「ちょっとアホげで」突っ込む師長。
「ちょ、ちょっと。師長さんは知らないでしょ、あたしの学生時代」

「知らんでも、17年も一緒に仕事すればねー。センセ。
 分かりたくない所まで、幕の内弁当の隅から隅までほじくり回してご存じよ」
「でも、カワラン」

「Pちゃんは、卒業して直ぐに恋愛。男を騙して、年齢詐称」ハアーの師長。
「性別詐称」突っ込む私。
「こう見えても、女ですッ!」

「な、ゼンゼン変わらん。そのキレ方も」
「そこからですよ、そこから。犬のお産じゃ有るまいし、ポンポン5連続妊娠。
 12年間、産育休。あんな、こんな。騙しまくって、はや7人家族」ハアーの師長。

「それと見た目で騙すのと、どう関連?」
「女は化粧だけじゃ無く、フリやら言葉で騙す見た目。騙す色んなモンっつー関連」
「進歩が無いMIHIセンセ、騙しも出来ん」ナースPの決め台詞。

「人間、見た目じゃねーよ」
「せめて、見た目だけでも騙さないと」
「騙せる脳があるだけ、ましッ!」

 騙すより騙される方が多少ましと思う団塊の、午後。

<団塊の朝の嵐>

「ウーッ、クッ。クフうー」

 雨戸を開けようと立ち上がった時、この一言で絶句していたこの2週間。
起床してベッドから離れようとして立ち上がると、腰からお尻にかけての鈍痛。
35cm歩くのに1分はかかりそうな、そう言う表現しか出来なかった。

 ベッドの中で腹筋運動をしている時から、今朝は何処かが違っていた。
「おろ?嵐がそよ風とは言わないけど、風速が落ちたみたいな感じイ」

 階段を降りトイレへ行って、新聞を持ち椅子に座り先ず静止5分。
この頃から痛みが薄れてきて、動きはフツーに近くなり。
着替えて食事を終える頃は、軽い鈍痛だけになって嵐は過ぎ去る日々だった。

「んで、センセ。どうなんよ?腰」
「昨日な、ブロックをしてもろうて。生まれて初めて、牽引ッちゅーのをしたワケ」
「センセじゃったら、さしずめ釣り上げたマグロを横にして引っ張ってるみたいな」

「エエ脂、乗ってまっせ。この大トロ、最高!みたいな」
「んで、引っ張るのは何キロ?」
「体重の半分が相場じゃから、27キロ」

「そんなところで見栄を張って、どうするどうする。40キロじゃ?」
「・・・んじゃなかった、30キロ。凄いやろ、歴代1位らしい」
「あと50キロ追加すると、エエんじゃ?」

「アホ言いなさい、真っ二つに千切れるで」
「んでも、上下で合計80Kg?」
「ダイエットに加えて禁酒で減量、しかも腰イテテで食欲やや落ち」

「腰に気が行って、無駄食いしなくなったワケだ」
「あんたねえ。物は言い様、愛は要らんからゼニを出せ。みたいな」
「ワケワカランッ!」

「まあ、そう言うワケワカランッ!状態なワケ。ワシの春は近いか?」
「春にも、嵐って有りませんでしたっけ?」
「背なで泣いてる、桜吹雪みたいな」

 そんな可愛い会話から半年、朝の嵐は起床時ストレッチだけで過ぎ去った。
腰に気が行き過ぎてワケワカランッ!ことを言っていた腰痛団塊の、午後。

<高齢団塊異常発汗ー(おくがふかいねー)>

 症状が乏しい場合とハゲシク出る場合があって、診断基準が合わないこと多々。
意外と打たれ強かったり想定以上に脆く、打つ手が全てオーダーメイドが多々。
検査数値が正常でも安心出来なかったり、勿論異常は通常の数倍危険も多々。

 検査数値がボーダーラインは、すこぶる要注意で油断大敵この上なく。
過剰反応でやり過ぎると逆に悪化させ、繊細で緻密な作戦を要することこの上なく。
微妙な反応を切り捨てるべきかはたまた重要視するべきか、油断大敵この上なく。

 結局、高齢者に若い者と同じ揺さぶりを掛けるのは危険。奥が深いねー。
結局、高齢者に若い者と同じ最大限の量まで薬を使うのは危険。奥が深いねー。
結局、高齢者に若い者と同じ効果を期待して治療するのは危険。奥が深いねー。

「フィー、あぢぢじゃねー」
「寒いっしょ、この季節。あららー。異常発汗、異常体質、異常性格、異常人格」
「温度と湿度やろ、発汗の原因は。あと、スタッフの仕事ぶり(語尾上げで)」

「んでも、笑いが出るくらい汗かいてますねー」
「んなにワシの汗で、笑える?」
「更年期なんですかねー」

「男の更年期っちゃ、何歳?」
「あ、老年期じゃ!67歳」
「フツーのジジイは、干からびて汗なんか出んやろ」
「ミョーな汁が出てるとか」

「ジジイ汁」
「シジミ汁は出んやろ?」
「カレイ汁」

「スープカレーみたいな?」
「ダンマツマ汁」
「旦那と妻の汁っちゃ?」

 ラウンド時の異常発汗は、断末魔のジジイ汁らしい。奥が深いねー。ウッセ!

<ヤキモチで戸惑う団塊>

「イヤイヤ、Pさんがいきなり外出するって。エエんか、エエんか」私。
「んでも、車いすを押してくれる人は?車に乗せてくれる人は?」ナースL。
「大丈夫だから、じぶんだけでエエって」私。

「ナンでまた、外出を?」突っ込む介護士F。
「旦那が心配で、心配で。変な虫がつくんが気になるからって、言われてもなー」
「あの歳にしては、かっこエエですから。タイプじゃ無いけど」ナースL。

「モノは見ようで、カバもキリンって言うやろ」
「ちょっと強引じゃございません?」
「カバもダンゴ虫か?」

「ワケワカランッ!」
「焼くほど亭主モテもせずって、言うやろ?」
「そらうちの旦那はイケメンじゃし、ちょっと油断したら・・・気になるわよねー」

「あらあ、この間スーパーであんたの後ろで引きずられていた?3匹のうちの1匹か?」
「ナニナニ。うちの旦那?誰が、イヤイヤ着いて歩いてた嵐のD君似ですって?」
「そこまで言うか!あのね、確かにイノブタKちゃんか、しょぼい駄犬Z君似?」

「センセ風に言えば、キムタクとブラピを足して2で割って」
「んで、3で割って7足して。さらに5で割ったあとに17で・・・」
「そこまでやったら、残りは僅かじゃないですかッ!」

「あと23引いてみん?あ、引いたらマイナス!情けねー、侘びしいねー、外歩けねー。
 小さい、ぬらりひょん。女ガキのコナキジジイは、サービスね。持ってけ泥棒うッ!」
「あたしんちは、妖怪集団ですかッ!」

「先頭が、一番ハゲシイ。従って、人呼んで妖怪の館とか魑魅魍魎一家みたいな」
「いっそ、化け物テーマパーク、なんちって。あら?ナンの話してましたっけ?」
「んーと。んーと。あ!、Pさんの外出理由っしょ」私。

 ヤキモチ話が意外な方向へ進んで戸惑う、団塊。

<団塊の斜>

「斜に構える」とは、どーゆー事?傾けは何度?どっちが前?左?右?
 剣道で「刀を斜めに構える」とか、「身構える。改まった態度をする」なら良いが。
「物事に正対せず、シニカルな態度で臨む」なんて、お勧め出来ないのもある。

 カメラ雑誌を、立って(寝ていたらイカンでしょ)斜め読み。
テーマが「斜めの構図」。最近手に入れたデジイチは、疑似水準器が付いている。
敢えてその水準器を無視して、構図を傾けて撮影するらしい。

 水平と比較してみると、斜めの構図はナンか落ち着かないばかりか少々胸騒ぎ。
解説を読み込むほど厚顔じゃないから、「買おうかなー、よそうかなー」。
そんなオーラ発信に、背中を通過した店員の「とっとと、買いなはれ!」オーラ返信。

 先日手に入れた三脚も、簡単な水準器が付いていて安心だ!と思っていたのにイ。
至れり尽くせりお世話三昧に、見えない制作者を相手に揺さぶりかける。
記事に、「斜に構えるアレンジも良いモンっしょ」の揺さぶり返しが見え隠れ。

 斜に構えるのは相手だけじゃ無く団塊の心も揺さぶる、午後。

<団塊の論文7手先のオチ>

 ブレインストーミングと言えば聞こえは良いけど、ボケ防止に始めた詰め将棋。
定番じゃないけど、天才羽生が作った詰め碁はひと味違うような気がする。
5手詰めまでは1つの閃きで解けたのに、たった2手増えた7手詰めは容易くは行かない。

 \1000以下で、あれほど楽しめて苦しめられるけど熱くなれる本はない。
フツーの本なら内容に関係なく、1時間もすれば最後の頁に到達するのに。
15手詰めという最難関まで近づくには、1ヶ月以上かかりそうな気配。

 初段を基準に分数が設定されている問題は、解ける時は1分も要しないが。
躓くと時間に無関係にウンウン唸らせて、出る汗にはエアコン+扇風機でも不足だ。
風呂上がりに氷水でクールダウンしながら、毎夜1問か2問やっつけるようになった。

 尻に自分で火を付けて、鉛より重い腰を上げて2週間経過した臨床研究論文。
マインドマップと「KJ」法で仕上げた考案に気をよくして、さてさて論文のツカミは?
整理したデータを1枚にまとめてプリント、横にはカロリーゼロのコーラにぶち込む氷。

 3手先か5手先までは文章を思いつくのだが、7手詰めにまで届かない歯がゆさ。
昼間に雑用をすっかり済ませたし、クッキーも2枚温存しコーラの残りも冷えている。
休日当直夜のサスペンスのトリックと犯人当てをチラチラ、ながら論文と洒落ますか!

 さてデータから、7手先に見えて来るものはナニ?詰め上がりがあるのか、楽しみだ。
ツカミも大切だしオチも大切だから、文章を書くのって格闘技だとつくづく思う。
私の論文なんかせいぜい7手まで15手なんて夢のまた夢と、睡魔に誘われる団塊の午後。

(参考)
1)KJ法とは、文化人類学者川喜田二郎(東京工業大学名誉教授)が
 データをまとめるために考案した手法
2)マインドマップは、英国の教育者トニー・ブザンが開発した
 脳の力を引き出す思考技術

<団塊の加齢車医者臭(どっちから)>

 保育園の園長で私立探偵が活躍するのが、TVドラマの「保育探偵」。何じゃそりゃ。
なんだかワケワカランウチに終わったけど、私は今日だけ「保育医師」。何じゃそりゃ。
我が病院では心音聞き取りに一番近い私が、抜擢された「保育医師」。何じゃそりゃ。

 仕事の合間に、保育園の健康診断。
確か半年前に聴診器で聞いた音が気になった子…と思いだす。
「この子は」「ハイ、あれから治療」で、元気一杯走り回る。

 1人が泣くと雪崩泣きなので、泣きそうに無い子を見繕って開始。
それでも医者のトラウマのある子が居るもので、「ヒー」とか「イヤー」乱発始める。
その頃には残す所2,3人、抱き上げられ羽交い締めのまま診察。これもトラウマに?

 阿鼻叫喚一歩手前で仕事を終えた保育医師は、引き続いて訪問診療の午後。
「何か臭わん」
「何かって?」

「加齢臭かねー」
「まあ、センセの歳なら。無臭のはずが無いっしょ」
「ワシじゃ無くてこれよ、これ」

「これって、この車?」は、ちょっと離れた施設回診道すがら。
「確かにエンジン、一回り以上してますから」
「10万か。んでも、人間の心臓は1日10万回くらい動いとるで」

「12年で」
「12年もあんなヤツや、変なヤツが車使えば臭いも出入りするわな」
「あんなとか変なヤツに、センセは入ってるでしょうけど。あたしは、ねー」

「みょーなヤツで」
「最近の車は、メンテすれば20万キロは走るんですって」
「ホウホウ」
「まだセンセも、捨てたもんじゃ無いですよ。加齢臭ぶち撒いて、あと10万キロ」

 ポンコツ加齢車に乗るポンコツ加齢医者、異臭はどっちから?

<団塊の短編探偵小説の栞と楽しみ>

 サスペンスとか推理小説と呼ばずに、あえて探偵小説と言うのはワケがあって。
近代に近いが古典的とも言える、江戸川乱歩や小酒井不木そしてコナンドイル。
作品の醍醐味は短編作品だと、勝手に思い込んでいるのは私だけかも知れない。

 15分の勝負とか、睡眠を挟んでのナイトキャップ勝負とか名付けている。
多くの場合は1作品が50−60頁のモノであるから、読み終えるのにおよそ30分。
真ん中辺りに栞を挟み、25分まで来たら例えば窓の外を眺めるようにストップ。

 そこで犯人やトリックに思いを馳せ、自己流の結末を迎える。
まとまった時点で栞を外し読み進め、作家と対決するのが残り5分の勝負。
当直の夜はいささか趣を変えて、睡眠に入る前の1作品は栞で本を横に置き。

 灯りを落として、意識が遠のいて睡眠に落ちて行くまであれこれ推理する。
翌朝はちょいと早起きをして、昨夜の推理を思い出しながら最後まで読む。
これをナイトキャップ勝負と名付けて、ささやかな楽しみにしている。

 放映されている作品なら、栞を挟むなんて事はできないからこれは不可能だが。
推理のスピード感と緊張感は本の比ではなく、役者で犯人の見当が付くことも問題。
ごくたまにその裏をかいて、さほど有名じゃない俳優が犯人だと新鮮だ。

 元作品がどんなに長編でも、フツーは2時間ドラマ仕立てになっているから。
栞の役目は時計の針で30分辺りにしているものの、推理を待ってくれないのが欠点で。
やたら推理のスピード感を要求されるのが、良いような悪いような。

 その点で短編作品は登場人物が少なく、スピード感や緊張感を要求される。
細々とした説明は要らないし、ストレートさとか簡潔さが勝負でもある。
アマチュアがプロと対決するのだから、勝率10%なら良い方だろう。
 短編探偵小説の栞と自己流の楽しみが脳みそを巡り、コナンドイルと勝負する団塊の朝。

<団塊裸族生活ぜ(どきどきだぜ)>

 名古屋大学のセンセは、何でも鏡を見ながら食べると美味しいと。
高齢独居の方が美味しく食べるのに、鏡を使うとか。
以前に娘のお産の関係で、ジイジのプチ独居だったことがある。

 暇つぶしのお相手は掃除機、思いついたら夜掃除機。
それも飽きたら、録画スペースを広げる作業。
部屋もビデオもスッキリ着替えて洗濯すれば、あーヒマッ!

 食事の準備しかけてパラパラ新聞、独食に美味しい鏡とある。
独り暮らしで沈黙食事は味気ないが、鏡を前にすると味が良くなるらしい。
新聞通りに鏡を出してはみたけれど、TVにイチイチご返事した方がまだまし。
鏡に写った自分を見て、出るのは食欲じゃなく油汗。四六のガマじゃ無いっつーの。
セット10分摂食7分片ずけ3分、いくら頑張っても全行程20分。

「センセ、独居なん。とうとう逃げられた?」
「アホ言うでない、実はーーー」
「1人で適当に食べに行けば、好きなもん食べられるっしょ」
「面倒くせー、お手軽不味い解凍生活。晴まったり雨読ビデオ」
「うちの旦那と同じ、引きこもり生活や」
という塩梅で、独居オヤジの行き着くところは皆同じ。

 まあ初日は緊張していたから、今後の行動行程チェックで精一杯。
3、4日すると洗濯機、電子レンジを当たり前の様に使い。
設定より30秒長くアレンジ解凍、独身時代より手際が良い洗濯。

 本物の独身時代の自炊は、料理の出来上がりと調理器具洗い終わりがほぼ同時。
風呂から上がった時に、洗濯が終わり風呂前に脱いだ衣服が残ってちゃいけない。
独居ならたやすい5分間裸族にも、大きな問題があるのに気づく。

 宅配便は腰ミノで我慢してもらうとして、大地震に驚く裸族は準備に手間取る。
我が家は関東大地震にも耐えうる造りらしいが、テストしたわけじゃないけど。
家が崩れそうになって裸族のまま出るか?悩む間に、玄関で下敷き。

 翌日の新聞に、がれきの中から裸族発見!じゃあねー。
孫誕生にドキドキしながら入浴工程をこなす、5分裸族。

 当直明けに交代医師に申し送りで会話をして以降、言葉を発していない。
生まれてこの方、こんなことがただの1日でもあっただろうか?
初体験の無口生活、ホントの僕を知ってる誰かに見られたらドキドキだぜ。

 ドキドキだぜ!団塊裸族生活の、休日。

<団塊医の5年沈黙幸福(できるかな?)>

 沈黙と幸福は比例するらしいと言う、本のキャッチがあって。
物言えば唇寒し秋の風とのたまわった芭蕉、良い事言いますねー。
ま、私の場合は。提案してもノーリアクションスタッフにいらつく団塊心。

 で、決めました。5年の沈黙のまま、終医しようと。
いくら寿命が延びたとはいえ、後進に道を譲るチャンスをわきまえて5年と。

 とうとう動きが怪しくなって、Linuxなんか突っ込んでた10年物の古いマシン。
そいつに我が身を置き換えて、いつまで出来るか医者生活。
5年で区切ると、PC寿命と医者生活も大して変わらない。

 ある程度のこだわりCPUで、チョイと吟味した最安値PC入手。
押し出されたPCのHDD削除ソフトで、個人情報は綺麗さっぱり大掃除。
久々にbios画面に遭遇し、クーラー効いてるのに汗かいて。
2台目は疲れてしまい、ちゃっちゃとしないと気が済まない性格もトーンダウン。

 日延べした作業は、新病院内覧会日の当直で暇つぶし黙々。
机周りをスッキリさせて、ジャズ回しながら室引きこもり沈黙。
会議や病棟で、沈黙に耐えうる練習(どんな?)でもしようかと。

 医者生活、あと5年として。
その間の沈黙で、最大限の幸せを欲しいままにしたいけど。できるかな?
「センセ、なんかミョーなもん食べた?」とか。
「センセ、顎脱臼?」何て言われるのがオチかも?

 ニューマシンを調教しつつ浮かぶ疑問、幸せのために5年沈黙出来るか?

<団塊のモーチョー>

 「モーチョー(いわゆる虫垂炎)を抗生物質で散らした」と言う話を時に聞く。
「急性虫垂炎に対する抗菌薬療法の効果は手術より劣る」と、Lancetに。

 我々団塊世代の高校時代の都市伝説は、女子に確認してないけど男子学生の間じゃ有名。
「おまえ、モーチョーまだ持っとる?」
「ま、一応。ヤバイ時があったけど、散らしてもらってセーフ。おまえは?」

「ワシもセーフじゃけど、アニキが切った」
「おっ、どうじゃったって?切った後の、あそこ」
「あそこっちゃ、あそこか?」

「あそこっちゃ、あそこしか。んで、マルゾリータ?」
「何じゃそら」
「まる剃りよ、ツルツル。後遺症関係(語尾上げで)」

「ひげ剃りクリームたっぷりつけられて、無毛状態」
「うっひゃー、ヤバイねー。んで、後遺症」
「あ、退院して3週間頃に。剛毛なんで、チクチク。気持ちエエような、不思議気分」

 団塊世代にとってのモーチョーは散らすに限ったが、今時は?

注;CTで合併症のないと判断された急性虫垂炎について検討。
抗菌薬と手術グループで、治療開始から30日までに腹膜炎の発生を比較した。
抗菌薬療法120例、虫垂切除119例。
結果は30日までに腹膜炎を発症したのは、抗菌薬療法で8%。
ところが、虫垂切除群では2%と低かった。

 虫垂切除群ではCTの評価にもかかわらず、21例で腹膜炎の合併が確認された。
抗菌薬療法群では、14例が最初の30日間に虫垂切除術を受けた。
さらに30例が1年以内に虫垂切除術を受け、うち26例が急性虫垂炎の再発だったとか。
Lancet2011;377:1573-1579らしい。
参考;MedicalTribune 2011年5月26日号 P51

<墓を意識してデジイチ注文した団塊>

 今、ナンでケータイ。たかがケータイ、嫌いでも、ケータイ。
ナンで何日も並んでケータイ、信じられんケータイ。
新作スマホは、電話も出来るタブレットじゃん!と思うTVニュース。

 んで、まだ情報無いん?フォトキナで、ナンかお知らせが出てんの?
もう発売して5年やでー、見飽きたアー、カビ生えてないかアー。
あららー、雑誌特集?どの雑誌も一斉紹介はメーカーの作戦か?
こらイカン、スキップでネットショップじゃん!

 と言うことで、今度買ったら墓まで持って行こうデジイチ(言い過ぎです)。
雑誌読み終わって、5分もしないうちにネット繋げてコーフン鼻息。フンッ!
メモリカードとレンズなし本体だけ、オマケの専用バッテリーグリップにウルウル。
思わず5回クリックすれば、ハイ、まいどッ!の返事メール。

 パソコンなら初期不良を考えて、半年待ちなのだが。
な、ナニイ。プロユース・サブの立ち位置。ワナワナ
な、ナニイ。65点オートフォーカスう。トンボやん
な、ナニイ。んもー、わけワカラン。ウウウウ

 と言うことで、注文して2ヶ月待ちもなんのその。
月末には特集雑誌も出るし、手に入った頃には学習終了。
こないだ買ったコンデジなら7台分のトホホは、脳みその隅に追いやって。
まあ、取りあえず勤務医卒業記念と思えばエエんちゃう?のお気楽。

 常々なにを使うか?じゃなくて、なにに使うか?やろ?みたいな。分かるウー。
重々承知の上でも、おつりがある入れ込み様。釣りは要らねエってんだいッ!
新入りコンデジで、実験写真も撮ったし。押したら写る安直なんよねー。しかも綺麗!
夢にみた5年ぶりデジイチを未だ手にしてないのに被写体を模索する。

 今度買ったら墓に入るまでデジイチ買わないと思う、週末の朝。

<団塊わが家5日目のiPadで電子書籍三昧>

 小酒井不木や海野十三と来れば、ちょっとマニアックかも知れない。
江戸川乱歩と同時代の推理作家なのだが、本を手に入れるのはかなり難しい。
アマゾンで数冊在庫しているようだが、立ち読みが出来ないし。
その上に結構値段が張って敷居が高いから、ついつい諦めの方が強くなっていた。

 ところが先週末、あぶく銭(某勉強会で講師報酬いただき)になにがしかを加え。
我が家まで連れて帰ったiPad。昔Winの片手間にMac2台潰して。
それ依頼、触っていなかったMacOSは戸惑うばかり。

 迷いながらも、何はなくとも電子書籍と青空文庫に進入。
見て驚いたのは、我が西田幾多郎全集の1/3を発見したこと。
さらに驚いたのが、小酒井不木や海野十三がやたらめったらある。ウヒャウヒャ。

 ジュンク堂でも見つからない本、アマゾンでもアカンじゃったのにイ。
勢い余って、西田センセの「善の研究」もダウンロードしてみると。
本棚の全19巻は要らんのやない?古本屋に処分してもエエんやない?

 そうなるとiPadの2000冊は軽い、本棚の行く末が危ぶまれるじゃないのオ。
ピアノと同じ部屋に置くつもりで、床下補強は万全だったのにイ。
エッセイ集をいつか本にしようと思って、置き場所を確保していたのにイ。

 書き散らした論文集はどうでも良いから、自炊する気は全くない。
世の中から消えてもエエし、どっちか言えば忘れて欲しいくらい。
それでもエッセイ集は電子出版にしようかと、テキスト買い込む団塊性格。

 手に馴染んでくるiPadに、日本の出版界の将来が心配な午後。

<団塊の4本後3本川く(れんやねぶそく)>

 夏休み帰省で 、あたし今日からジイジトバアバ寝る!に僕もオ。
4本川の字睡眠となったのだが、ウトウトしかけて不安は的中。
睡眠リズムとサッカー孫キックが逆シンクロ、深くなったらキック浅くなったら寝息。

 やっとシンクロしかけたら、ゴドンッヒーッで完全覚醒。
な、なに!ベッドの下の方から、手が痛いーで状況を飲み込んで。
薄暗い中で、引っ張り上げた孫坊やの一言。
長い針と短い針はどこ?に、4時だよと寝息がほぼ同時。

 今日からボクはママと寝てねの翌朝、でもあたしはジイジトバアバと!の孫娘。
今夜こそ熟睡できると思ったのに、代打が追い打ちをかける孫娘パンチ。
何故かシンクロ具合は相変わらずでも、ベッド落下事件は起こらず。

 4本川の字後の翌夜は一本減ったけど、熟睡感の無い目覚めは続く。
2日で1キロ減量して、残りの3日でげっそり減量できそうだ。

 4本でも3本でも連夜の寝不足に変わり無い、朝。

<団塊の三欲>

 ブッダさんじゃないけれど、人には三つの欲があって。
「持ってないから欲しがる」・「いま持つ以上に、もっと欲しい」。
そして、「もてあますほど持っている上に、欲しがる」のだそうで。

 人口も土地も10倍以上あって、本気で探せばいい物がいっぱいありそうなのに。
美味しい物は確保して、先ず手始めは他人の物からいただいちゃうガキ精神。
目に入る物を節操もなく欲しがり、インネンを吹っかけて欲しがる危ないヤツ。

 それを見た青い眼の社説で、品格のなさと言うかいじめ行為を指摘して。
「インネン吹っかけられた側の諦めを得ただけで、他に得た物はない」と。
その裏を読めばきな臭さも感じるのだが、横へ置こう。

「検察OBがTVで言ってたけど、かの国は秩序も何もなく政府はやり放題言い放題。
だからそう思って付き合わないと、どうしようもないのだ」と。
確かにそう言われれば、数々の「そうそう!」を思わさせるのは偏った情報?

 かの国は孟子・老子・荘子を始め、エライ哲人を輩出したのに活きてないようだ。
ブッダさんじゃないけれど、「3欲を捨てない限り、心の安寧はもたらされない」。
哲人は「トホホじゃね、ワシの末裔はどうなってんじゃ」って、草葉の陰で泣いてるかも。

 レアアースが赤い国から来ないと、ケータイはブルブルしなくなるらしい。
ケータイのブルブルがなくても、技ありの我が国民は他の手段を考え出すはず。
いっそ電圧上げて、ケータイにマッサージ器を組み込めば肩凝りも消える。

 それよりなにより、ケータイ無くせばボク的安寧が得られるのは必定。
いじめも振り込み詐欺もゼロになり、子供もジジババにも安寧がもたらされる。
それもこれも「脱赤い国」のおかげと思えば、インネンも楽しい。

 カラーからモノクロになっても良いじゃないか、その分想像力が逞しくなる。
モノクロ時代から馴染んできたTVは、長い間カラーじゃなかったけど。
当時子供だった団塊世代の色彩感覚教育も成長にも、少しの問題もなかった。(多分)

 便利さを追求するのも良いが、不便さに対する脳みそを使った工夫も楽しい。
新しい便利も良いが、旧い物を大切にする女王の国の精神も捨てがたい。
手に馴染んだWinXPの健康寿命を延ばし、Win8まで使いまくるワケには行かないものか?

 この際ちょうど良い機会だから、脱赤い国でユニオンジャック精神をエンジョイだ。
ある物で我慢する無いりゃ諦める、お気楽テキトーで良いじゃないか。
やたら欲しがれば良いってモンじゃない、我慢我慢。トホホの我慢。

<団塊は3万円の桶狭間>

 経済関連本が、やたら売れているんだそうな6千円。
経済学部経営学科中退ドクとしては、ケインズ以来気にはなるのだが6千円。
少し足せば、プチディナーを夫婦でエンジョイできる6千円。

 経済の記憶と意欲が薄れつつあるだけに、二の足も三の足もふんじゃう。
馴染みのアフロヘアーシェフが凝るメニュー、絶品デザートであっという間の1時間超。
二回に一回1割引だから、気安く?通う月一回のプチディナー。

 経済本のTV情報では、小金持ち以上のやつは消費行動をしなさい!
グローバルに大金持ちは当然しっかり使って、たっぷり納税しなさい!
年金は消費に回し、体が動く間は仕事をして税金を納めなさい!(私的、オマケ)

 72歳で医者辞めて、憧れの年金の底力生活でジャズと読書三昧は何処に有る?
他人の災難蜜の味、自分の災難辛子味。んなこと、ゼッタイ思ってません。
こんな可愛く人畜無害な仔羊に、一瞬の安らぎさえ無いなんて。嗚呼。

 しかし、どんなヤツがあんな本を買うんだろ?本当に全部読むんだろか?
ボク的には立ち読みか?目次だけで良いか?触って、表紙だけ見りゃ十分か?
勇んで行った本屋の店員さんは軽い営業笑いで、売り切れ在庫無しだよ!
仕方なくネットで批評本探れば、星一つやらやや絶賛まで。

 その平均値は、どこの国も同じ累進課税にしなさい!じゃねーの?と呟く私が居た。
そいつは学生時代に、マルクスの共産党宣言と資本論を岩波文庫で手に入れて。
薄い方(共産党宣言せすけど、当然)を斜め読みして、これって宗教書?とバチ当たり。
分厚い分冊(もちろん資本論)を前にため息一つ、やっぱ資本主義だよねーと。
本棚の奥へ押し込んで、引越しの時にゴミに紛れて処分したヤツです。
同じ大学の経済学部の学生に、ケインズを知らんヤツがいるんだ!なんて。
あたかも経済通医学生を装って、タカビーな態度で嫌われたヤなヤツ。

 で唐突ですが、3万円。2つの選択肢で、軽くフラフラ揺れかけたこの3日。
選択肢の1つはカメラ、次は統計の通信講座なんですけどね。
テキストはやたら持ってるから、独学が出来ない訳じゃないけど。
似顔絵師取得講座みたいに大枚叩いて尻叩かれないと、ゴールが遠退く根性無し。

 情け無いこと両者共にテキスト代は、気付けば軽く3万円オーバーのトホホ。
どっちも趣味みたいなもんだけど、年季ならカメラ歴40年に統計もがき歴13年。
バカチョン統計処理法を作っちゃおうとした、気の迷いも3ページで挫折したし。

 もがいた分だけ欠点も弱点も知り尽くす(良いとこは無いんか?)、統計なんだけどオ。
しかも、今なら5万円が3万円のサービス期間も魅力なんだけどオ。
折り込みハガキに名前書いて、ハンコ押してポストでOKなんだけどオ。
突発的に襲う、カメラグッズ入手誘惑に負けちゃったら困るんだけどオ。

 症例報告を仕上げれば、黄泉の国へお花摘みに行くまで統計に触れることは無い?
受けて楽しいカメラ講座、やって苦しい統計講座の花一匁っと。
統計なんて面倒くせー、なけなしの軍資金だけじゃ足りんしイー。

 自慢する程大したもんじゃないけど、デジイチ3台もってんの。
アンケートで貰った図書カードで、カメラ操作本2冊買っちゃったの。
ネット上でカメラ条件関連模擬テストは、結構成績良かったの。

 統計講座申し込みハガキとパンフ、試しに破ってみたり。
統計学が最強の学問っつー本、二度目の読破を始めてみたり。
読破してない統計本なんか僅か5冊だけど、本棚に立たせてみたり。
で、決まりッ!ぜんぜん悩んでないッ!

 4日目には選択の狭間で1mmほどのブレも揺れも無いのが、余計に悲しい団塊医。

<団塊の三行塊文章リズム>
「昭和63年の作品っちゃ25年前、ツー事は初期の作品なワケね。やっぱねー」
このブツブツには生意気な理由があって、この作家の作品は20冊以上の読破癧。
つい最近「書き下ろし」作品を読んでいたから、素人でも分かる歴然の25年差。

 文章が甘い、設定が甘い、トリックが甘い。
まるでガムシロップに生クリームを混ぜて、さらにアンコをぶち込んだ感じイ。
と言うことで斜め読みしても結末が想像したとおりだから、金返せーみたいな。

 そう思っていたら、職業上の先輩で学生時代にエンジョイした作家の最近作。
とは言っても2年前にインフルワクチン打った翌日、体調崩して入院死亡された。
熟した頃の作品らしいが、今読むとなんとまあ…失礼ながら甘い文章続々。

 業界の先輩だけに「金返せー」とは、口が裂けても言えないけどねー。
ナンでこれほど上から目線?ナンでこれほど小生意気発言?となっちゃう次第で。
亡くなった先輩に鞭を入れるほど、あたしゃ悪人じゃ無いぜい。

 その点、まだ健在の作家の最近作は「速い・軽い・サクサク」の王将状態。
食いつかせ方が「おろ、前にも…」でもOK、ストーリー展開はエエんでないかいのOK。
違いの差をエンジョイしつつ、休憩時間は我がスキー体験の如く(3回です)過ぎる。
その上秀逸だったのは、トリプルどんでん返しお笑い締めと来るからたまらない。

 話は変わります(唐突な展開!)けど。
音楽には心地よいお約束のリズムと意外性が、人を引きつけると思いません?
ジャズのアドリブにもワケがあり、そのお約束をぶっ飛ばしたディブ・ブルーベック。

 テイクファイブは、4分の5拍子なのはジャズ好きの赤ん坊でも知っていて。
ナンか引っかかるようなでも気持ちいい新鮮さを、具体的に表現するのは難しいけど。
耳の中に耳かきヘッドの綿毛を突っ込まれて、コチョコチョされたような感じイ?

 その点、ど素人に甘んじる私の文章。
10年以上前の物を読み返すと、推敲で99パー消え去る感じ。
昔から変わらないお作法があって、殆どの文章が3行塊。

 掛け合い漫才のネタ帳なら、偶数塊が分かりやすいけど。
逆にイ(ナニと逆かワカランッ)、3行塊で掛け合うと油断できない緊張感が生まれる。
その緊張感をいきなりマッサージして解す(ワケ無く)、偶数行のマジック(別にイ)。

 と言うことで3行塊文章リズムの言い訳をする、午後。

<団塊の缶詰丼3品評価>

一時的独身で目に入った缶詰は各種あるけれど、今しか出来ないこと。
サバ味噌煮とクジラ及び牛肉の大和煮の3種、一気に評価してみようと。
何も引かず何も加えない白ご飯レンジは600ワット2分と、そのまんま缶詰。

食順は食思が動く順、ガキ風好きなものは最後、そして折衷案。
サバ味噌煮丼がジャブとしては若干重すぎか?と思いつつ、第一陣を飾る。
イワシ梅煮は、生臭さを苦手な梅でマスクしてると思うと手が出ない。

手では触れないくらい高温の白ご飯に、逆さの缶から躍り出るサバ塊。
汁が染み込み始めると、ちょっと生臭い味噌の香りがで始める。
フォークで解しながらトレー一杯に広げ、暫し待て!
学生時代に食パンに解したサバを広げて、トースターで焼いたのを思い出す。

やっぱ肉は牛だね、しかもホテル何とかを記した小箱入りは期待できそう。
加熱ご飯にばらまくと、白小塊だった脂が溶けて染み込めば大コーフン。
ツユダクが良い、色合いも良い、何てったって牛の匂いが良い。
考えてみりゃ、牛丼缶詰版だな!不味いわけがない。

同じ大和煮でも鯨、捕鯨船を追っかけ回す諸君に睨まれそうだけど日本の食文化。
と言うことで開封缶詰をひっくり返せば、貴重品鯨肉か?量的不満。
ほのかに香る生姜?牛丼に比べて、汁は十分なのに肉が貧相で悲しい。
ノンアルビールで喉を潤して、鯨丼の一部が舌を刺激して生まれるノスタルジー。
鯨竜田揚げに次ぐ大和煮は、50年の年月を遡るには余り合って潤む目。
肉の繊維が多い噛み心地と脱脂粉乳が思い出させる、小学時代の給食。

味的には牛だがノスタルジーで鯨丼に軍配が上がった、独り缶詰丼の夕。

<3センチ減せ(ぷちしあわせ)団塊>

 確かに20キロダイエット効果が、私にもたらしたものは様々。
減量も限界にきてプラトーになると、体型の変化も一息つく。
ウエストの10cm以上サイズダウンを始めとして、シャツも1サイズダウン。

 脳みそは分からないけど、頭蓋骨は減量せず帽子のサイズは無変化。
職場で履くパンツは作業ズボンと割り切って、 春夏用のうち半分はユニクロ。
意地じゃなく裾の3.5cmダブル折り返しは、ちょっとした拘り。

「おろ?昼食直後なのにユルい!」スキマに手を突っ込みながら、試着パンツで呟く。
メタボ腹とパンツの間に両手が入って、「これ、どうなんよ!」。
「お客様、財布代わりの腹巻をお着けになるんですね」言いたげ目つき。

「何か、激やせかも」を訴える私の目に、「もっと短いのが」。
「そっちかい!足の長さの方かいッ」思う間もなく「それと、1つサイズが小さいのが」。
「ですよねー、そうこなくっちゃ」は無視されて、カーテン閉まる。

「これ。足が短くて、3センチ減量になります」で、再び閉めるカーテン。
「良いじゃん、クビレ無いけど3センチ減じゃん、想定外じゃん、これじゃん」

想定外新鮮驚き3センチ減にプチ幸せを感じる、昼。

<団塊の2と3の違い>

「コラッ、何処へ行ってたんですか。ちょっと目を離すと糸切れタコじゃから。
 インフル問診票にサインだけして、消えたりして」
「婦長さんが遊んでくれないから、病棟徘徊してたんよ」

「お望みとあらば、お医者さんごっこしますウ?私は、美白可憐なナイチンゲール役ウ」
「んじゃボクは患者さん役でエエ?2,3見繕うと、大痔主かコーガン異臭症候群で」
「下関係バッカじゃないですか」

「コーガン異臭症候群って、自己免疫性慢性炎症性疾患。血管炎らしいで。
 間質性角膜炎、感音性難聴、耳鳴、回転性めまいとして発症し、
 大動脈炎症候群を合併する事があって。発熱、体重減少などを来たす事もある。
 不明熱の鑑別疾患の一つでもあるとか。byウィキペディア」

「ナンでもエエから、とっととインフルッ」
 軽ーく3人ブチュッとして、ステーションでカルテを開く。
「グフッ、ガハッ、デヘヘ。ナンでワシってこんなに・・・」

「その後は、エエ加減とか、テキトーとかでしょ?」
「オバカ言わないで、凄いとか流石しかないでしょッ。ワシの場合」
「ボキャブラリーが貧弱だから?」

「昨日転院してきたBさんの心電図ナンよ。事の起こりは」
「今日も心電図とってましたよね、しつこく」
「昨日の心電図を診て、紹介状と話が合わんから。ゼンゼン悩まんで、ちょいテク確定」
「ナンか嘘くさいけど」

「なっ、なっ。この心電図。P波は自分勝手に打って、おーい電流が流れんぞーなんて。
 Pに続くQRSが、んじゃしゃーないわ。自分でテキトーに打っとくねッで。
 それを引き出すノイズ切りに倍感度は、技師さんもちょい驚きの隠し技」

「隠すほどのモンじゃないと思うけど。QRSは、まるでMIHIセンセじゃないですか。
 んでこっちかなー。やっぱあっちが合ってた、みたいな?」
「の逆ウ。2度の房室ブロックじゃなくてエ、3度の房室ブロックう」

「2と3じゃ、大して違わんでしょ」
「大違いじゃッ。んじゃ何か、29歳と30歳じゃ大して違わんか?あんたの肌」
「確かに、張りとか皺とかくすみとか。20代と30代じゃ、コロッと大違い」

「じゃろ、じゃろ。それと同じくらい違うんよ、心電図の判定が」
「それで嫌みったらしく、転院2日目で報告書を送ったんだ。キャー、ヤダねー」
「イヤミじゃなくて、若い医者を育てたいと言う慈悲心ぜよ。龍馬なら」

「龍馬じゃないから、イヤミでしょッ」
「まっ、そういう言い方もある」
「そのまんまですッ」

 2と3で大違いぜよ!団塊の、午後。

<団塊の4個1万円>

 チャンスはピンチなんて言葉は、シーラカンス的死語になってるけど。
誰が考えてもおかしいことって、何処にもゴロゴロしているのに。
還付金詐欺とか、サブプライムとか、もっと遡ってバブルとか。

「何故か、自分だけは違う」と、魔が差して油断するから人間なのだが。
150円のものを1万円って言われると、何処かにそれだけの価値あり?と勘ぐり。
他のアホどもには分からなくても、判断力も感性も十分な自分ならと思っちゃう。

「小荷物の色んなモンに混じって、トイレットペーパー4個って何と思う?」
「オイルショック再来ではないし、水に浸けると紙幣になる訳でもないし」
「それが、驚き。有名なトイレットペーパーなんて」
「ナウマン象が使ったとか、平清盛のご愛用とか?」

「もっと驚き、4個1万円だったんて。これ」
「何処のアホが買うんや?お札で尻拭くようなもんじゃん」
「バブルの頃は、結構売れたらしいんよ」

 と言うことで、4個1万円のワケを探ってみた。
1枚もので厚みはやや頼りないくらい薄く、ティッシュ1枚分に相当。
だから、ちょっと強く引っ張るとミョーなところで千切れる。

 臭いは薄く夏みかんに近い柑橘系、色は薄黄色で濡れると土色になる。
中途半端なペルシャ絨毯風模様が、30cm事に繰り返されている。
芯も大きめでのり付けしっかりだから、最後の1周は諦める。

 拭き取ったときにコーモンさんがうれしがって、ピーヒョロとさえずる訳でもないし。
和歌が浮き出るよりも、コーモンにまつわる川柳がスカして読めればなお嬉しいが期待薄。
「毎度!これでさっぱりになりましたで」みたいな声が、流れる仕組みもないし。

 何処をどう見つめてもフツーかそれ以下のトイレットペーパー。
聞けば4個300円で売っていたのを見つけ、話題作りにと買い求め。
それを送ってきたらしい事が判明して、それでも300円は高価でフツーは150円でしょ。

 人生は油断禁物!教育効果が値段半分かも?と邪推した、午後。

<団塊の缶詰丼3品評価>

一時的独身で目に入った缶詰は各種あるけれど、今しか出来ないこと。
サバ味噌煮とクジラ及び牛肉の大和煮の3種、一気に評価してみようと。
何も引かず何も加えない白ご飯レンジは600ワット2分と、そのまんま缶詰。

食順は食思が動く順、ガキ風好きなものは最後、そして折衷案。
サバ味噌煮丼がジャブとしては若干重すぎか?と思いつつ、第一陣を飾る。
イワシ梅煮は、生臭さを苦手な梅でマスクしてると思うと手が出ない。

手では触れないくらい高温の白ご飯に、逆さの缶から躍り出るサバ塊。
汁が染み込み始めると、ちょっと生臭い味噌の香りがで始める。
フォークで解しながらトレー一杯に広げ、暫し待て!
学生時代に食パンに解したサバを広げて、トースターで焼いたのを思い出す。

やっぱ肉は牛だね、しかもホテル何とかを記した小箱入りは期待できそう。
加熱ご飯にばらまくと、白小塊だった脂が溶けて染み込めば大コーフン。
ツユダクが良い、色合いも良い、何てったって牛の匂いが良い。
考えてみりゃ、牛丼缶詰版だな!不味いわけがない。

同じ大和煮でも鯨、捕鯨船を追っかけ回す諸君に睨まれそうだけど日本の食文化。
と言うことで開封缶詰をひっくり返せば、貴重品鯨肉か?量的不満。
ほのかに香る生姜?牛丼に比べて、汁は十分なのに肉が貧相で悲しい。
ノンアルビールで喉を潤して、鯨丼の一部が舌を刺激して生まれるノスタルジー。
鯨竜田揚げに次ぐ大和煮は、50年の年月を遡るには余り合って潤む目。
肉の繊維が多い噛み心地と脱脂粉乳が思い出させる、小学時代の給食。

味的には牛だがノスタルジーで鯨丼に軍配が上がった、独り缶詰丼の夕。

<団塊の10cm別離>

 里帰りお産の三人目の孫。
視力はおおよそ0.1らしいので、ジイジと同じやんと眼鏡を外して疑似体験。
学習した疑似体験を元に孫に接すれば、今までの5倍のコミュニケーション。
10cm接近して明るく声かければ、喃語が帰ってきてジイジはコーフンのるつぼ。

 こんな体験でも、孫に教えられたと思えばちょっとウルウル来る単純ジイジ。
孫に学習させてもらったのを振り返れば、一人は似顔絵・二人目は男同士の絆。
静止画像専門だったのに、三人目孫の動画を見た途端サクッと気持ちを入れ替えて。

 せっせとクラウドにアップして、3ヶ月で5GBの80%に至る早業。
あちらのご両親もいたく喜ばれ、「感動しました!」のレスにまた燃える。
動画編集ソフトまで買い込んで、マニュアルを開けば羅列カタカナにちょい冷え。

 有給休暇で空港へ見送り、その場面はいささかドキュメントタッチに凝っちゃう。
姿が見えなくなって帰途、気分を変えて\1000ファーストバーバー「短くねッ」。
数十グラム軽くなった頭に、開いた自動ドアから入り込む風が心地よい。

 目尻に光るのは降り始めた雨粒?ジイジの涙?、10cmコミュニケーションに別離の昼。

<団塊医ボウタイ3者3様>

 出がけ「ウフッ」奥様アクションも、病棟じゃ。
「ヘッ、何事?」
「キャハハ」
「お労しや」
に変化する今日この頃。

 グリーンベースに、細目白と赤のチェックBDシャツ。
ブレザー型白衣、グレーのパンツに黒のスニーカー。
ナンか文句有りますウ?スタッフ的には、あるんですよね−。

 卵色ベースに、薄目卵色ストライプぷを織り交ぜたボウタイが問題で。
「おろ?ちょっ、ちょっ。回れ右ッ。あたしはテイクアウトで、ポテトと…」
「ハア?ケンタッキーのバイト・オヤジじゃネーべ」

「ま、まさか。変装ナイト・ランナウエイ?」
「ナイト・ランナ…。何処のアホが、ボウタイして夜逃げするッ」
「ここに1名」

「しないッ」
「んじゃ、七五三ジイジの月命日(語尾上げで)」
「ナムう。エエ人じゃったのにイ…んじゃネーべ」

「んじゃ、壊れた…」
「あのね。いちいち壊さなくても、エエっしょ」
「壊さなくてどーする、どーする」

「たまには、壊れかけでオネガイします」
「ヤダ、我が儘なんだから。んで、どうイメージするとそのようなカタチに?」
「スリムボディがXマスツリーで、ここが星。歩くツリーみたいな」指さすボウタイ。

「強引な感じイ。そのゴーインさが、ウザイわー。ヤダーわー、ハアー」
「ボウタイしてだけで、そこまで言われるなんてトホホじゃねー」
「ボウタイで驚かされる身になって下さいよ、ヤダホントに」

 ボウタイに3者3様リアクションの、午後。

<団塊は夢大人(ちゃんとした)>

 何か感激するたびに、将来の夢が変わったり舞い戻ったりする孫たち。

「Mちゃんねー、大人になったらケーキ屋さんになるの」
「Mちゃんねー、大人になったらおにぎり屋さんになるの」
「Mちゃんねー、大人になったらお花屋さんになるの」

「僕はねー、大きくなったら。んー、んーん」
悩んだ挙句が、仮面ライダーを筆頭にやたらとヒーロー。
男の子は現実味が薄く、女の子は現実と繋がりやすいのか?

 そんな時、「ジイジは大人になったら?」って聞かれても。
既に大人になって久しく、それ以上は黄泉の世界しか思いつかないのが情けない。
残りの人生に、もう1つくらい夢を抱いても良いかな?ふと思う。

「MIHIちゃんねー。ちゃんとした大人になりたいの」、みたいな大人の夢。

<5年先を言う団塊>

 例年のこと、年末に喪中を差し引いておよそ200枚の賀状印刷は小一時間。
往復数がほぼプラスマイナスゼロ状態になった三ヶ日、連休で整理を始める。
アイウエオ順に束ねれば、次はプリントアウトした一覧と付け合わせる作業。

 裏書を見直していると時空は遡り、当時の顔やお付き合いの中での事件を思い出す。
この30年の間に、3人の悪友と永遠のお別れをしたのに気付いて切ないこの時期。
名簿から削除する手が止まり、しばしの空白の時間。

 亡くならなくても、名簿から削除する事も増えてきた。
独身時代に当直に行った病院、結婚資金を貯めさせて貰った先の病院長の一言。
ボケる前にとの最終挨拶をいただいて、94歳義父の賀状対策を思いつく。

 ホントに現役を引退した時に、仕事上のお付き合い人に最終挨拶を出そうと決めた。
それでも100枚は残ると思うが、その頃には有り余る時間があるはず。
思いっきり楽しめるヤツを 、一年かけてデジカメとイラストペンでやっつけよう。

 5年先の事を言う団塊を鬼が笑う、朝。

<団塊は1万円足らずの超贅沢>

 定点観測すれば、ランチと土日が賑わう(そうあって欲しい)レストラン。
平日の5時過ぎ、都会では絶対味わえない贅沢をエンジョイしている。
とは言ってもせいぜい月に一回だが、多少の運も手伝っている。

 殆ど隣市との境に位置しているので、国道を車で20分は丁度良いアペリティフ。
確か映画帰りに何気なく入って、自家製パンから始まってセンスの良さが光る。
見つけて数回通って気に入ったアフロヘアシェフが、店をたたみ。
何処に行っちゃったのかなーが、忘れた頃にいきなりの出会いだった。

 オーナーが変わった?郊外レストランで発見し、映画帰りは定番。
シェフのアフロが2回りサイズダウンしても、味はサイズアップ。
食材と味の深さに新鮮な変化、都会で出したら3倍価格のコスパ。

 夫婦ですっかり虜になって、多分6年は経った気がする。
4、5年は職業不詳、食べる度に「美味いッ」を連発するから悪い気はしないだろう。
値切りそうな顔をしてるとは思わないけど、割引券は毎回。

 騒つく家族連れの中から、「あ、センセ」に「あ、どうも」。
職業不詳の壁がいきなり崩れる、ベルリンの壁風?(言い過ぎました)

 と言う事で、昨日金曜日5時過ぎの駐車場は停め放題で「貸し切りやね」。
笑顔で迎えてくれるイケメンに、「あ、どうも」赤スタジャン脱ぎ始め。
予約してないけど、いつものテーブルにいつもの椅子がスタンバイ。

 色々堪能しまくる間、シェフとイケメンは私ら専属でプチセレブ気分。
赤ワイン煮洋梨のコンポート、マスカルポーネ添えで締めくくる。
「エスプレッソは、倍に」の気配りも嬉しく2時間の贅沢。

 帰りがけ、 色とりどり見た事もない花を陳列した奥からイケメン。
オーナーから「大切なお客様用です。センセに」の、花籠。
月一回だけど、1円万足らずで超贅沢気分を堪能した団塊の夜。

<団塊の5帽子5爆笑>


 ボクのオヤジは着るものに拘っていて、僅かに残っていたモノクロ写真で見て取れる。
背広に中折れソフトをちょっとだけ斜にかぶって、ニコリともせず前を見つめて。
なかなか見合うな!と思ったそんなオヤジのDNAの欠片くらいは、残っているはずなのに。

 既に20や30は超えてしまった、各種の試着帽子。
自分の頭に載せて鏡の前に立てば、見るだけで若手の漫才より笑えるなー。
大学生の頃から「みゆき族」の、綿パン+BDシャツ+ハンチングは素敵に見えた。
何時かあんなハンチングで、何時かあんな綿パンで、何時かあんなBDシャツで。
小脇に抱えた「VAN」のロゴ入りペーパーバックは、アイビーの象徴だった。

 嗚呼それなのに、ウウウ…爆笑だゼイ。
ハンチングを載せた鏡の中には、陽気だけど気の弱い借金取り。
登山帽を載せた鏡の中は、山崩れに出会ってナウマン象と一緒に埋没した登山者。
パナマ帽を載せた鏡の中は、リズムに乗りきれないスーダラ節を踊る盆踊り参加者。
中折れソフトを載せた鏡の中は、親分気取ったマフィアのパシリ。
シャーロック・ホームズ記念館でかぶった帽子は、似合ってないけど記念写真。

 こうして、5帽子は5爆笑を誘ったわけだが。
終末にやたらめったらあれこれ被ってみると、分かったことが1つ。
ボウタイや真っ赤なスタジャンのように、他人の目に慣れさせてしまえばOK?
それが「帽子に合わない癧」を払拭する手かも?と思った次第。

<団塊の喧噪3週間

 嵐のような3週間が、終わろうとしている。
嵐の中心は、3歳(女)と1歳半(男)の孫だ。
少し前に会った時は、赤ん坊に毛が生えたようなものだったが。

 イヤなものは、相手が誰でもはっきりイヤと主張するようになった。
弟は姉を見て真似をするから、姉より早く色んな事が出来るようになった。
相手を見ることも覚え、ちょっと甘い顔をすると調子に乗るようになった。

 時にはしたくないことさせられそうになると、何らかの理由を見つける術を知った。
そればかりか、演技でしたくないことを拒否する技を見つけた。
その演技はミエミエなので、思わず笑っちゃうのをこらえるのが大変だ。

 字を覚え、モノの名前を言い、活発に走り回り、愛くるしい笑顔を振りまいた3週間。
孫の成長を思いながら、これって医学生がフツーの医者になるのと同じかも?と思う。

 教科書を読み、病気を知り、真摯に患者と向き合い、笑顔を振りまく訓練。
でもそれだけじゃ世の中を渡れないから、適当に技を身につける。

 オーベンの真似をし、師匠の機嫌を伺い、ちょっと誉められると調子に乗る。
イヤなことはイヤとは言えず我慢して、時々ズルをする理由を造る。
ばれるのは承知の上で、頭を下げるタイミングを探すのは上手くなる。

 この3週間は怒濤の如く流れ、あと3日で静寂が戻り穏やかな夫婦の日常が待つ。
孫の成長を見て、ジジ医師も成長しなきゃ!と思った連休前。

<団塊は何手詰め人生>

 なんでもそうであるが、何かするときは目的がある。
目的は時にゴールであったりそうでなかったり、はっきりだったりぼんやりだったり。
最近の昼食後およそ60分には、いろんな目的が設定されているから邪魔されるのがイヤ。

 アラカン関連整形症状で、¥990ラバー筋トレ15分は沈痛の目的がある。
脳トレで詰め将棋3問15分は、ぼけ封じの目的がある。
今は「7つの習慣」まったり読書は、勤務医としてのまっとうさを促す目的がある。

 コビー氏の著書「7つの習慣」の中、「成功のはしご」のところで彼は言うんですね。
「人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という1日を始める」と。
それを読みながら、さっきまで挑戦していた詰め将棋を思う。

 脳トレが十分じゃないのと、テキストが天才「羽生センセ」の作品だから。
7手詰めまではすいすい来たのに、9手詰めで勝率ががた落ちの50%。
王手!で詰みは、詰め将棋と言う人生で言えば最後のどん詰まり。

 我が「地道コツコツ」を振り返れば、例えば1手1年の9手詰めを1ステップとして。
なんとか踏ん張って9手詰めが仕上がれば、次の11手詰めのステップに這い上がり。
果てしなく繰り返す王手!で、人生のどん詰まりが来るのに詰めはあと何手?

 分厚い本格的将棋盤を出す人生何手詰めの、週末。

参考;「7つの習慣」S.R.コビー著、キングベアー出版

<団塊はジジイマシンで>

 医者の机上は3世代同居からWin8そしてWin10から?
3世代同居と言っても、娘と孫とかと同居しているのではなく。
我がペンや絵筆代わりだったり、郵便屋さん代わりだったり。
ことの始まりはWin3、そこからWin95、そしてWin98、WinMe、WinXPまで来て足踏み。

 CPUは変化がありすぎて、霞がかかった記憶の中では濡れてぼろぼろ走馬燈風グルグル。
寿命が長かった4台のWinXPマシンも、寄る年波には勝てず昇天に続く昇天で。
息をしているのは半分だけとなり、世代交代を待っている机上。

 スイッチが入っていた時間が長いほど、逝っちゃう順番が先に来るようで。
真っ先に逝っちゃったのが職場のマシンで、持ち主と同じ1日9時間労働。
ただ持ち主は昼の筋トレ読書の1時間は、スイッチ切ってるみたいなモンだから。

 休日以外は、夜間は我が家でせいぜい3時間労働のWinXPマシンだから。
デスクトップもネットブックも健在で、サクサク動いて元気一杯初老。
惜しくも逝っちゃったところへ、ささっと割って入ったWinvistaノート

 自宅のWinXPマシンにぶら下がったDTMグッズは、ソフトの進化が止まったままで。
その上懐かしのスカジーボードに刺さったMOとくれば、何をか言わんや。
ジャンクでも扱ってもらえそうも無いものばかりで、机上は粗大ゴミ置き場?

 新進気鋭のWin7・64bitマシンは、仕上げがすめば中央に鎮座するはず。
還暦色とも言える真っ赤なノートは、サクサクなんてもんじゃなく凄まじく快適。
欠点は操作に慣れたかつてのマシンとは、トホホなほどに扱いにくいのは何故?

 ジジイは、ジジイマシンを仕えってこと?久しぶりにカンじゃ動かないことを実感し。
ネットでマニュアルを探したけど、「ヘッ、動画!ジジイは字だろが」の悩み。
3世代同居でキーボード打つ指に、緊張が走る日々はいつまで続くのか?

 取りあえずWin7の調教に入ると、純正メーラーへ連絡先がアドレス帳に反映しない。
XPからVistaならめちゃくちゃスムース、1分で終了したのに。
インポートは成功しているのを確認しても、どうにもこうにも。

 Win7になってすぐはバグがあるから飛びつかず、こなれてきたSP1でもこれ?
そう思っていたら、新聞開いてあららの「2012年にWin8でっせ」とは。
SP3くらいになったらバグも減ってOKなのに、その頃にOSが変わるらしい。

 CPUは速度競争でソフトは重量競争の厚化粧だから、ひ弱なCPUはゴミに一直線。
世代交代があるたびに、複数のOSを積んだマシンが同居するのも如何なものか?
団塊ジジイはジジイマシンでのんびりの、午後。

<団塊にはキビシイ>

 イヤイヤ、23時・3時・6時は厳しかった。
「3時間ごとに睡眠を分断されると、てきめん思考能力が低下」
まさにその状況は、67歳には酷と思うでしょ?昨日はそれでしたので。
そんなこともあろうかと、代休を取っておりまして今朝配信。
もうこんなやくざな生活は、即刻辞めたいモンです。
真っ当な世界に足抜けしても、良いっしょ?

「Mちゃん(孫)、6の次は?」
「あたし1年生よ、簡単じゃん。なな」
「んー、他の言い方は?」

「セブン。英語習ってるから、13だって言えるよ」
「うー。他に言い方は?」
「知らんけど。じゃあ、ジイジは?」

「そら、”ひち”やろ?」
「えー。センセ、そんなこと教えなかったよー」
「そうなんよ、んでもジイジが子供の頃は、そこらじゅう”ひち”じゃったんよ」

「引っ越した仙台でも”しち”で、”ひち”って言うたら。センセが違うって。
 んでも、お父さんもお母さんも”ひち”ですって言うたんよ」
「ふーん」

 で、調べました。
1)音読み(呉音):シチ、音読み(漢音):シツ、訓読み(和語):なな
2)「なな」を主とし、「シチ」もOKは、7行、7号、7字、7台
3)「シチ」を主とし、「なな」もOKは、7時間、7人前、7年
4)「シチ」だけOKは、7時、7人 等。

 で、病棟呼ばれてステーション。
「Kさんですけど」
「その前に、6の次は?」

「ハア、あたしをからかってますウ?こう見えても、天使幼稚園卒でございますわ」
「悪魔じゃ・・・」
「ハア?んで、しちでしょ」

「アホ言うな、”ひち”やで」
「何処のクロマニヨン人、何処のネアンデルタール人、何処の田舎モン」
「ウウウ。荒縄で、首絞めてエエ?」

 7の読み方は”ひち”じゃないらしい、午後。

<団塊夫婦の\1万足らずの超贅沢>

 定点観測すれば、ランチと土日が賑わうとあって欲しいレストラン。
平日の5時過ぎ、都会では絶対味わえない贅沢をエンジョイしている。
とは言ってもせいぜい月に一回だが、多少の運も手伝っている。

 殆ど隣市との境に位置しているので、国道を車で20分は丁度良いアペリティフ。
確か映画帰りに何気なく入って、自家製パンから始まってセンスの良さが光る。
見つけて数回通って気に入ったアフロヘアシェフが、店をたたみ。
何処に行っちゃったのかなーが、忘れた頃にいきなりの出会いだった。

 オーナーが変わった?郊外レストランで発見し、映画帰りは定番。
シェフのアフロヘアがサイズダウンしても、味はサイズアップ。
食材と味の深さに新鮮な変化、都会で出したら3倍価格のコスパ。

 夫婦ですっかり虜になって、多分6年は経った気がする。
4、5年は職業不詳、食べる度に「美味いッ」を連発するから悪い気はしないだろう。
値切りそうな顔をしてるとは思わないけど、割引券は毎回。

 騒つく家族連れの中から、「あ、センセ」に「あ、どうも」。
職業不詳の壁がいきなり崩れる、職業不詳ベルリンの壁?(言い過ぎました)

 と言う事で、昨日金曜日5時過ぎの駐車場は停め放題で「貸し切りやね」。
笑顔で迎えてくれるイケメンに、「あ、どうも」赤スタジャン脱ぎ始め。
予約してないけど、いつものテーブルにいつもの椅子がスタンバイ。

 色々堪能しまくる間、シェフとイケメンは専属でプチセレブ気分。
赤ワイン煮洋梨のコンポート、マスカルポーネ添えで締めくくる。
「エスプレッソは、倍に」の気配りも嬉しく2時間の贅沢。

 帰りがけ、 色とりどり見た事もない花を陳列した奥からイケメン・ウエイター。
「オーナーからで。大切なお客様用です。センセに」の、花籠。
月一回だけど、夫婦\1万足らずで超贅沢気分を堪能した夜。

<団塊10年の節目>

 白物家電みたいに年中電気が流れている機械は、10年を待たずに壊れることが多い。
本体の寿命とかOSの寿命よりも、会社の設定する寿命と言った方が良いPC。
プリンターの使用頻度にもよるが、PCと共に齢を重ね同じ頃に命が尽きるようで。

 毎月80枚の処方箋に、紹介状や報告書に加え時々論文で出番を見るプリンター。
トナー1本でA42500枚程度の仕事量らしいので、今の職場に来てトナーは6本目に入った。
そう思えば私に成り代わって文句も言わず、美しい文字で書いてくれて感謝。

 永年勤続表彰を終えて、紹介状を6通したためようとした半ばで急ブレーキがかかる。
同じ症状が3度再現されれば諦めも付くから、ネットでニュープリンター情報を仕入れる。
思い切ってゴミにすればいいのだが、イジイジとガチャガチャやって15分。

「これでダメなら廃棄だかんね、分かっとるね」が聞こえたのか。
排出された紙には文字列並んだのをしげしげ眺め、ネット情報ぶっ飛ぶ。
「無理しなくてエエのに。んじゃ、もうちょっと頑張る?」に勢いづいて。

 今までになく元気な音で、紹介状を13枚はき出して「どうや、こんなモンよ」状態。
いじってみるモンやね、諦めないのがエエんじゃろうか、捨てられたくないんじゃろうか。
命短し恋せよ乙女みたいな、命尽きそういじくりまわせよプリンターみたいな。

 若い頃は「ステンレスの胃」だったのに、胃に優しい腰痛改善薬にもヤラレタ2日前。
そうっと歩いても振動が響いて、胃袋の位置が分かるほどの鈍痛が警鐘を鳴らした。
直ぐ鎮痛剤を止めて、「明日辺りは、腰が・・」の不安が過ぎる。

「消化管系薬は、通常量じゃ殆ど効かない」の先輩の教え通りに自己責任で3倍増量。
2日経過してみるとはっきり分かる効き目に、「先輩っちゃ、偉大じゃねー」。
当初の症状は3日目には70%減となり、腹部触診も良い感じ。しかも、腰もマアマア。

「薬はだらだら飲むンじゃない。時々止めて、引き際を探るのも大事」を地でいった。
10年の節目を越えて定年を迎えても、体力と能力を温存し第3の青春を謳歌だぜ!
還暦過ぎの団塊のジジイを、イジイジ・ガチャガチャいじくり廻し。

「あたしゃ、白物家電とは違うんよ」と、ネクスト10年の節目を待つ団塊。

<団塊医師の1日1捨>

 人生の折り返し地点をとっくに過ぎて、のんびり身辺整理をしようと思った。
それは最近何気なく見ているTV番組に、何故か気になる「片づける」のテーマ。
「どうしても捨てられない」は、キャラでは無く一種の病的状態かも?と。

 「いつか使うかも」は99%無くて、「タブン使うだろう」は80%無いこと。
それに加えて「ゼッタイ使う」でさえも、使う可能性50%が良いところ。
そのくらいの基準で「思いっきり捨てる」を断行しなければ整理は出来ない。

 と言うことで、定年までに「1日1捨」を心がけ。
1年もすればかなりのモノが整理でき、身は分からないが周辺はスリムになるだろう。

 いざ定年の日を迎えたら、ノートPCバック1ヶで颯爽と椅子から立ち上がり。
何も無い机の上をさっとひと撫でして、誰にも見送られること無くそよ風と共に去る。

 嗚呼、なんとさっぱりした引き際。これは理想であり、現実はそんなもんじゃない?
第3の人生をどう過ごすかはこれから決めるのだが、結局「ケセラセラ」となりそう。

 殆どがタイミングかな?とお気楽をかまし、尻に火が付くのは何時だろう。
それまでは、ひたすらコツコツと時を刻みそうな気がする「1日1捨」。

<3口爆睡た(よわくなった)団塊>

 高校時代の下宿には、赤玉ポートワインとサントリーレッド・ダブルサイズ各1本。
下宿に遊びに来た団扇屋のボンボンは、ワイン1杯顔真っ赤で自転車に乗って帰った。
滅多に現れない親父が部屋に入ってきて、棚の上の2本を見て一言。
「飲むんだったら、もっと良い酒を飲め」

 それから4年が過ぎて医学生、後の指導医になる先輩に鍛えられ。
飲む度に脳細胞が100万個以上破壊され、大学院でオーベン(師匠)にしごかれ。
酒で破壊された脳細胞は数えられないが、ツマラン文章を書く力だけは残っている。

 休日の芝手入れシャワー後のビールは、この世のモノとは思えないほど甘美。
そのためにと思える芝生も腰イテテで引きはがし、初孫誕生記念に禁酒した。
別に肝臓が傷んだわけでも無いから悲壮感溢れる禁酒では無く、節酒。

 元々、入眠障害は無いが。きっちり6時間の睡眠リズムは、健在で。
奥様に付き合った、寝酒(ちょっとオーバー)のワイン40-50ml。
ほぼ3口でチビグラスの底が見え、あらら3分後にはホンワカし出す。

 6年前ならビールジョッキ1杯で勢いつけて、ワインなら1本でほろ酔い。
嗚呼、それなのに。ナンという体たらく、ナンという安上がり、ナンという軟派。
たった3口で爆睡とは、何ともはやアルコールに弱くなったモンだ。

<団塊残1か月幸さ(きづかないあぶなさ)>

 パソコンの寿命と言うか、賞味期限と言うか、フツーに使えるのが5年とか。
しかし、現役PCの最も古手は、スタンドアローンで使っているWinXPマシン。
いきなり処方や、いきなり紹介状要求に対応出来て重宝している。

 ほそぼそ使って15年、この二年前からオフィスソフトだけのスリム化。
メモリ1GBでCPUはワケワカラン貧相なのに、なんとサクサク動いてくれちゃって。
その前のマシンも8年持って、自分が作ったわけでも無いけど褒めちぎる。

 Win7マシンを手に入れて、皆より遅れてWin10にアップグレード。
これで暫く持つな!と安堵していた矢先、重い・外付けHDD認識遅い。
「なんだなんだ、Win10の祟りか?と思っていたら「ビジーです」を皮切りに。

 立ち上がるのが何時もの、2,3が6倍・・・3,4が12倍・・・でフリーズ。
PC診断して得られたエラーコード、「HDD壊れてまっせ、直ぐにお店ね!」。
フツーの保証書しか無いよねー・・・あら?5年保証やん、ギリあと1か月あるやん。

 偶然立ち上がったところで、デスクトップのデータをUSBに取り込んで。
「もう、何時頓死してもエエよ」申し渡す前に、怪しい動き。
再起動すれば、「御達者でー」自滅したワケですわ。

 昨夕持参で入院し新しいHDDに換装されて、来週辺りには復帰出来るはず。
調教するのにチョイ時間をいただいて、迷惑メールが始まる予定です。
HDD換装が自腹なら5-6万円らしいし、その他手数料税金等々。それがゼロ!

 ギリ一ヶ月の幸せに気付かないと危ねー団塊の、午後。

<ばれ易い団塊>

「誰かア、電話ア。フントにもー、出ればエエんでしょ。ワシが。
 ハイ、もっしー。病棟でしたけど、どなたかお探しでしたア?」
「MIHIセンセじゃなくて、婦長さんで嬉しゅうございますけど」

「ナンでワシって分かったんや?鼻摘んで、声も変えたのに」
「イヤミなメタボ声は、センセしか居ないでしょ」
「ワシって声もメタボじゃったんか、知らんじゃった。ウウウ・・・」

「何が、ウウウですか」
「片目つぶって、右足も挙げてたのに。もしかして、あんたワシのストーカー?」
「それ程の悪趣味じゃないって、以前に申し上げましたけど」

「先祖の気が変わったとか、趣味が良くなったとか?」
「ゴジャゴジャ言わずに、婦長さん。オネガイします、後生だから」
「今は、ワシそう言う気分じゃナインよ」

「センセの気分なんかどうでもよろしいッ!婦長さんを出して下さいませ」
「何故ワシが電話に出たか、未だワカランのか」
「よー、分かりましたッ。気づくのが遅くて、ウウウ・・・」

 プツッ、プープーの3秒後。
「あらセンセ、回診ですか?徘徊ですか?」
「後の方。んで、さっき電話があったで。鬼主任から」

「Rさんですか?」
「ホッホー、婦長さんはR主任を鬼と思ってんだ。チクったろ」
「あ、誰がそんなこと言いました。センセの幻聴っしょ」

「あ、丁度いいところに帰ってきた。主任さん。婦長さんが、あんたをババ鬼って」
「言うワケ無いでしょッ!どーせ、センセの作り話か幻聴でしょ。妄想かも?
 センセのことなら、ゼンブお見通し。あたしの、妄想でも幻聴でも無いッ!」

 何を言ってもばれ易い団塊医の、午後。

<団塊医に飛び交う電波>

>

「ウッ、後ろからイヤな電波が」
「な、なにイ。背後霊のワシがか?」
「ミョーな気配を感じたんですよねー」

「こんな香しいものを放つのは、ワシと牛若丸くらいやろ?」
「牛ジジイ丸ですよねー、ジジイの電波の方でオネガイします」
「電波っちゃ、ワシは鉄人237号ダッシュか?」

「数と言い、ダッシュまで。しかも鉄じゃなくて、奇の方でしょッ」
「んじゃ言い直して、奇人4万3千・・・」
「ナンでそこまで、数字が増えるッ」

「んで、Qさんの処方箋。丁度33枚・・・んじゃなかった、1枚。電波でピッ」
「ナニが丁度だか。無駄が多すぎるでしょ、センセの会話」
「と、イエローカード電波がピッと来て撤収ウか?」

「そう言えば、さっき*病棟から捜索の電波じゃなかった電話が」
「腰痛てエ、どっから腰痛電波が飛んでくるんじゃナイン」
「それなら、脳みそとろけ電波でしょ。センセ専用の」

「やっぱ、撤収電波じゃ。次、行こう」
「あらーらー、センセ。見かけたらナニか言おうと思ってたんじゃけど・・・。
 ナンだったっけナー」

「貴方はだんだん眠くなる、ワシが手を叩くとヨダレを垂らしてアホ顔爆睡イ」
「あ、思い出した。Wさんの睡眠薬、1個落としたんで。臨時処方っ」
「爆睡電波が跳ね返って、ワシが爆睡しそうなカンジイ」

 ミョーな電波が飛び交っている病棟に団塊医の、午後。

<団塊の域値と生き血>

「テテテ」
「センセ、腰は絶不調みたいですね−」
「そうなんよ、テテテ・・・。実は偽装で、ホントは絶好調なのね」

「あたしも肩が痛くて、首も回らないし。どうにかナランモンですかねー」
「痛みって、原始的な感覚じゃからなー。スタッフ見て笑うより、ひでーモンなー」
「笑う理由を、聞きたくないけど。確かに、笑うって人間だけでしょ?」

「まあ歯が痛い時に、足の小指をタンスの角にぶつけると。歯の痛みは、どうよ?」
「歯の痛いのなんか、世の中ひっくり返っちゃうくらいぶっ飛んじゃう」
「それは、痛みのイキチってのが関係してるんよ。福沢ユキチセンセとは、ちゃう」

「やっぱねー、ドラキュラだわ。古典医学では、瀉血で病気を治すみたいな」
「学生時代に、生理学でも医学史でも習わんかったなー。その辺り」
「どーせ、居眠りしてたんでしょッ」

「学生時代は、惰眠症候群じゃった。閑話休題。化学反応でも、イキチってあるよねー」
「血イ、吸いまくりですねー」
「分かりやすく言うと、頭が痛い時にトンカチで足の親指をぶん殴ると頭痛を忘れる」

「そらそうでしょ、それでも頭が痛かったらMIHIセンセじゃないですかッ」
「末代まで、呪うぞ!それは、イキチが関係してるワケ」
「そら、そこまでやったら血イも出るでしょッ。イケメンなら、その生き血を啜りたい」

 団塊医のイキチ(閾値)話が通じなかった、午後。

<団塊医と心電図モニター生死>

「おっかしいなー、蹴りか?それとも・・・」
「ナニしてるんですウ」
「オカシイんちゃうか?この心電図モニター」

「ヘッ、モニターが笑ってますか?」
「モニターとあんたの頭を、トンカチでボコボコにしたろか?」
「それで、ホントに治るんですね?」

「そんなこと、やって見なきゃワカランやろ。ハイ、頭出してエ」
「少なくともこのモニターは、今朝まで元気だったですよ」
「このモニター、今朝買ったばっかやろ?」

「イエ、3年前からレンタルですけど」
「メーカーすぐ壊れたって言えば、あんたん家のぬらりひょんも納得」
「それって可愛いゴンちゃんのことですか?聞き捨てならないワ、呼び方が」

「イヤ、アホ狸じゃ。朝出て行って、夕方になるとねぐらへ帰って来る」
「あ、旦那のことですか。確かに、センセの言う通り。あたしの一言で、即納得永眠」
「納得永眠は、逝き始めてるこのモニター。こうなったら、鼻の脂をちょいと」

「コラコラ。ビョーキになるじゃないですか、モニターが。止めて下さいよ。
 隅っこで干からびているゴキブリにでも、擦り付けてあげればア」
「やたら元気になったりして」

「007風、ゴキは2度死ぬみたいな」
「んで、ナンでモニターが真っ黒?コンセントは入ってるしイ」
「MIHIセンセって、以外とジョーシキ的ですわね」

「そうなんよ。んじゃ、病棟が停電とか?」
「もう外れますか、真っ当な考えから。天井を見て下さいよ。天井ッ!」
「あんたの顔と一緒、シミだらけ?」

「んじゃなくて、光ってるものは?」
「ハイハイ、皆まで言うな。天井で光ってると言えば、1つしか無いよねー」
「そうそう、そう来たら?」

「あんたを監視する、カメラのレンズ。みたいな」
「なんであたしを監視?美しすぎることは罪って言いたい(語尾上げで)。フンフン」
「タコになっても、言いたくない(語尾下げで)。無口なボク」
「端から病棟が平和だと、言えばいいだけッ」

 患者さんが安定していると、心電図モニターの生死が分からなくなる午後。

<例えで団塊は脳を活性化>

「センセ、Pさんの腸瘻チューブって。いまは25cm入ってるでしょ?」
「イヤ、24.9cm。タコとイカぐらい、ゼンゼン違う」
「どっちがタコですかッ。んじゃなくて、危なかった。ヤバイ、センセに誘い水」

「んで?」
「時々、注入中に止まったり。また入り始めたり。あれって?」
「イタコがマリリンモンローを呼び出して、東北弁でゴジャゴジャ言うようなもんやね」

「しかも、外人が英語で質問したら。あんた、何言ってんだべ?あたしゃ英語はワカラン。
 日本語で喋ってけれ、みたいな。あ、しまった。誘い水」
「だから、挿入している長さとはあんまり関係ないみたいな意味よ」

「んじゃ、35cmでも?」
「そらあんた、373mでもな」
「そんなに入れたら、コーモンから出ません?」

「牛乳飲んでる時にクシャミをすると、白い鼻水が出るようなモンやね」
「センセ、センセ。うどん食べてる時だと・・・あ、しまった。再び誘い水」
「白いミミズが、鼻からニョロ、?」

「んじゃ、様子を見てエエんですね?」
「あんたの前に犬のウンチがあっても、黙ってるようなモンやね」
「ネコのウンチは、凄ーく臭いでしょッ。タマとゴンちゃん同じモノ食べてんのに」

「あんたの屁の方が、旦那の屁より鼻がもげるくらい臭いようなモンよ」
「センセはあたしのオナラを、1度でも嗅いだことがあるんですかッ!」
「そんなことしたら、コアラがサルスベリの木をのぼるようなもんやね」

「有り得んてことですか。もうちょっとまともな例えは、出来んのですか?センセは」
「それを言うなら・・・」
「ミョーな例えは、もう結構ですッ!」

 ミョーな例えで脳みそが活性化する、午後。

<団塊の見た目と信用>

「オロッ、昨日はエエところで会ったけど。あれって息子?」
「ハイ、自慢の」
「豚まん5個は一気に行けそうな、でっかいホクロじゃったもんなー」

「センセ。ホクロの大きさと、食べる量が関係有り?」
「有るワケ無いやろッ」
「散髪で待つのは超大嫌いだから\1000カットは、分かりますけどオ」

「何で知ってる、昨日の\1000カット。せいぜい待っても10分ってのが、エエよなー」
「んで、何処をどうカット?」
「短い首を水平にカットのさらし首、んじゃなくて。飛び出し跳ね返り髪を、ちょいと」

「ちょっと見た目じゃ、カット前と代わり映えがしませんねー」
「ますます、見た目がブラピ似?」
「ゼンゼン。センセ、ナンで?」

「ナンでワシが、キムタク似ってか?」
「誰がそんなアホなことを、何回も3回も、聞きますかッ!ナンでこの処方箋」
「手作りでエエやろ、足じゃ出来ん。ま、まさかあんたは足で看護記録を?」

「んなお馬鹿なこと。んでもあたし足が器用だから、今夜密かに挑戦?(語尾上げで)」
「んで、処方箋がどうした。どうした」
「ヒモ通しの穴が、見た目がヘン。ずれてる、センセの脳みそ。見た目も、信用なし」

「確かに、人間も見た目がヘンだと信用無いモンなー」
「センセは信用無いから、見た目もヘン?みたいな」

 見た目が信用と関係有るのに気づいた団塊の、午後。

<団塊は患者から医師へ>

「あら、センセ。ご機嫌じゃん、さてはブロックが効いた?」
「そうなんよ、10の痛みが14:23現在5じゃね。腰なんかクイクイ、ほれ」
「んじゃ、復活ですか?困ったわ」

「優しいねー、それ程までにワシのこと心配してくれて」しんみり・・・じゃないッ団塊医。
「人間っちゃ、どっか具合が悪いと、機嫌が悪くなるでしょ」
「確かに」

「んで。超最悪の場合は、無口になるじゃないですかア」
「確かに」当たってるだけに無口の団塊医。
「んで。センセって、昨日まで最悪っしょ?あたしはただそれが懐かしい」

「んじゃナニか、メガフォンで病棟中に気合いを入れろってご希望か?」コーフン団塊医。
「誰ですか、センセにブロックしたの。電話で、今度は水道水でオネガイ?」
「ダメよ、雑巾絞った水でも効くかも知れんしイ。水道水は飲めるから、勿体ないッ」

「あくまでも優しいねー、涙が出そう。屁も出そう」ウルウル団塊医。
「センセ、脳みそにブロックして貰った?ナンか、ヘン」
「まあ、いつもの2.3倍はヘンじゃね」ムカッ団塊医。

「ブロックのキシロカインが、血流に乗って脳みそへ?」
「キシロカインが、危ないモンに変わってしもうた?」
「キャハ。危ない医師に、危ないモンじゃ。足したら逆にイ、フツーじゃん」

 三者三様ナース悪口雑言にもめげず、その1ヶ月後にはスマンが絶好調の団塊医。
患者から医師へ戻るまでパワーを蓄える記憶も懐かしい、団塊医。

<団塊医のワシのと違う>

「センセ、あたしゃ熱があるんよ。3年前からずーっと」
「ホウホウ、何度ね?」
「36度1分」

「そらQさん、熱とは言えんで」
「あたしゃ昔から、平熱は35度に決めとるんじゃ」
「決めるのは好きにしてエエけど、病院に来て36.1度で熱って言われるてもなー」

「あたしが36度1分で熱がある言うたら、お天道様が西からあがるか?」
「そう言う問題じゃなくてエ、医学的な発熱は37.5度以上って。一応、な」
「あたしんと、違う」

「ワシのとも違う。ワシと教科書は同じ、つーことはQさんは教科書と違う」
「だんだんワカランようになってきた」
「簡単じゃ、Qさんは平熱っちゅーこと。帰ってエエよ」
「そう言うモンかのー」

 ブツブツ言いながら出て行く後ろ姿を見送りラウンド。
「センセ、Rさん今朝からゼロゼロなんですけど。あれって喘息ですよねー」
「ほへ?あれが喘息じゃったら、あんたは白雪姫」

「あらまっ、そこまで誉めちゃ。もう3回オネガイします」
「んじゃ言い方変えるわ、ゼンゼン分かってないから。あんたはノリカとうり二つ」
「キャー、あたしに惚れてますね。夫と息子と娘が居るんですよ。ヤダーあ」

「これで最後にしてくれる、ワシ疲れてきた」
「誉めるんも、パワー要りますから」

「あんたを誉めようと思ったら、全身のパワー放出せんとアカンなー。ワシ絶命。
 Rさんが喘息なら、あんたはオヤジ。これでよろしかったでしょうか」

「そうそう、あたしって竹を割ったような男らしい女って。良く言われるんですウ」
「ワシが言いたいことと、ナンか違うなー」

 世の中にはワシのと違うことが多いと思い知った、団塊医の午後。

<文句言必須冗談の団塊医>

「この間持って行ったら、1,2週間って聞いたんよ。今日は3週間目じゃけど」
「はア、そうですね。そのように記録されております。パソコンに」
「エかったア、とうとう来たかと。パソコンは、ウイルス風邪ひいてない?」

「それでお客様、まだ修理担当が接客中でして」
「うへエ、30分以上接客してるんだ。流石やねー、立派だネー、電機業界の鏡だねー。
 んで、あと3年くらい接客するつもりやろか?それとも7千年?」

「イエそこまでは・・・」
「さぶいんよ、ストーブがないから。もう下半身が凍って、足を引きずって歩くとアカン。
 つま先から削れて、シャーベットが出来るけど。蜜かけて食う?」

「イエ、結構ですけど」
「ま、まさかあと半年待つ?扇風機なら丁度季節じゃけど、ストーブじゃもんなー。
 夏になって、やっと治りましたって言われてもなー。あんた、それ意地でも使う?」

「イエ、そう言う趣味は。政治家みたいにしっかり調べて、お電話さし上げます」
 それから25分、静寂が苛つきを増幅してかけ直す電話。
「あ、さっきの人やね。声を覚えてしもうたがね、1時間の間に3回電話したワシ」

「ハイ、私も声を覚えさせていただきました」
「も、もしかして修理担当さんが逝ったとか?」
「イエけして」

「虫の息で、逝きそう?首、締めに行く?、濡れタオル顔に掛ける?」
「不要です、スンゲー元気です」
「んじゃ、居留守を使ってる?」

「トンでもございません、生きて接客中です」
「あんたと担当と社長の名前教えてくれる?ついでに裏で呼んでるあだ名も」
「ヘッ。そ、それは・・・。裏あだ名を言えば、血イを見ますから」

「3文字だけでも?あ、ダメ。しかし明日の朝、最低気温がマイナスらしいけど。
 家で寝ている間に凍死したジジイが新聞に載ったらワシじゃから、線香あげてね」
「ハイ。あ、イエ。必ずゼッタイに5分以内に、折り返しお電話しますッ」

 端からそう来れば、要らんこと言わんでエかったのに。けっこう楽しかったけど。
クレーマーにもジョークの修行が必要だと思った、妄想休日の朝。

<団塊の2位>

「んで、ナンで2位じゃなけりゃイケンのですか?」
「前にも言うたけど。2番手っちゃ、お気楽とか追う楽しみとか。
 上手く騙して、同情なんかいただければ御の字。色々楽しみ、てんこ盛りだくさん」

「フツーは1位を狙うでしょッ。端からハードルを低くウしたら、伸びないでしょッ。
 やる気出ますウ?ゼンゼン意気消沈でしょ」
「仕分け議員のピンホーさんとは、ちゃうねー。日本語ヘンなとこ似てるけど」

「そら顔はまあまあ、ドングリ豚の背比べ?(語尾上げで)」
「しかし圧倒的に勝ってるのは、脂身の勢いじゃねエー」
「まあ、空勢いですけどオ。脂身は大きなお世話ッ!」

「あのものの言い方を見てて、あたし凄ーく反省しましたわ」
「鏡に映ったガマ風、脂汗だらだら」
「酒飲んでゴロゴロしてる旦那に、掃除中のあたしが言うみたいなモンですよ」

「おどりゃアー、とっとと手伝わんかいッ!みたいな、仁義なき戦いみたいな」
「そこまで過激だと、また家出するかもオ。もし出ていったら、今度で7回目?」
「ボク実家へ帰らせていただきますッ、ウウウ・・・。みたいな」

「コラッ、そこでゴロゴロしてる穀潰しッ。確かそんな感じで、やんわり優しく。
 軒下の犬走でゴンと、3年添い寝してなさいッの感じで爽やかに。
 あ、ゴンって17才の老犬ですけど。」

「ワシなら、5万年はトラウマ持続。ブルゴーニュ風メタボ腹、ブルンブルン」
「ワケワカランッ!」
「分かりやすく言うと。酒も飲まないのに、悪酔いするみたいな」

「しかしナンですねー。無くて七癖、あって八癖」
「またまた日本語ヘン。7と8の熟語で来たかア、んじゃ24文字熟語で返しちゃうけど」
「そんな長い熟語って・・・」

「ワシって、カリスマ熟語師。んでも、町内会じゃ9位タイトル保持者なんよ」
「何軒あるんですウ?」
「10軒で、1軒は空き家」

「んじゃ、最下位やん」
「腹に一物、手に荷物、あんたは旦那の厄介者。これで1,2,8が織り込めたナ。
 生きるか死ぬかの競争社会で、端からトップを狙わないヤツは、本音はアホやッ!」

 それでも1位じゃ無く2位好み団塊の、朝。

<全員一致は信じない団塊医>

 ユダヤ的には「会議で全員一致は仕切り直し」と聞いたが、いまもそうなのか?
100パー一致、完全無欠、ウインウインだらけ、お手々繋いで同じ向き。
んなアホなことがあってたまるかいッ、一人ぐらいよそを向いたりしててもエエやろ。

「へエー。センセ、そう言うのをサプライスって言うんでしょ?」
「オムライスとかカレーライスとか、チキンライスみたいな?」
「そら、あたしんとちょっと違うわ」

「パエリアみたいなやつやろか?」
「Qさん、それってサプライズって言うの。フツーは」
「あら、そうかの。あたしんと違うんじゃ、フツーは」
「そら、違う。んでも、みんな同じじゃツマランから。それでエエじゃろ」

 午前の外来をQさんが締めて、ラウンドへ向かう。
「あら、MIHIセンセ。またこの間、会議で吠えたんですってね」
「ガルッ。ワオ、ワオーン」

「センセはプーの野良犬ですかッ!しかも脳みそ長患いの」
「ワ、ワウ?」
「Dセンセがまとめようとしたら、過激なイケンを言い出したらしいじゃないですか」

「ガル、ガルッ」
「おバカ犬は、お黙り遊ばせ」
「犬に馴染んで、四つ這いでキンちゃん走りするとこやったで。フィー、危ねー」

「もういい加減歳だし。あの世までそう長くないんだから、お静かに暮らしませ」
「物言わぬは腹膨れるる業なりって、兼好法師さんが言ってなかった?」
「言うたかも知れませんけど、口にチャックチャック」

「壊れて、開きっぱなしになりますけどオ」
「ボンドでくっつけましょうか、2度と開かないように」
「端っこだけ開けとくように、オネガイします。ストローだけでも」

「みんな意見一致でチャンチャンじゃ、何故ダメなんですウ」
「ワシって、ユダヤの末裔の隣に住んでたどん百姓がご先祖なん。
 全員一致は仕切り直しが、会議の掟」

「ふうーん。そんなモンですか」
「MIHIセンセが言うことはゼンブ疑えッ!ってのも、ユダヤの掟にあったような」

 勝手に掟を作られた団塊医の、午後。

<団塊医のプチ変化、ある時は>

 子供の頃にTVに齧り付いて見た番組は、イキなり姿が変わるヒーローもの。
ピカッと眩しい光、もわもわ煙り、グルグル画面などをきっかけに変化。
どう変わるか?なんて毎週のお約束なのに、ドキドキした団塊。

「おろ、センセ、当直ですか?」
「あーしまった。違ったかも知れん、帰ろっかなーっと」
「コラコラ、当直表をよーく見たらMIHIセンセ。センセは、帰れば敵前逃亡」

「ワシの敵は、よーく見なくてよろしい。あんたの日本語ヘンだから、帰られる」
「あらら、ジーンズに赤チェックのBDシャツにはサスペンダー。
 まるでウオーリーを探すな!みたいな風じゃございませんか」

「それなら、ウオーリーを探さんとイケンやろ?」
「MIHIセンセだから、探さなくてエエんです」
「なあーんだ。そうだったんか、ケータイのスイッチ切ったろ」

「コラコラ。当直医は、雲隠れ出来ませんッ!」
「んじゃ、マッサージ設定にしとこっと」
「それを言うなら、バイブでしょ?」

「あ、ワシのはスペッシャルやから。モミモミにも、弱・中・最強・肉離れまである」
「勝手にして下さいッ」
「んじゃ、ちょいと激震設定でプチラウンドして来ようっと」
「3年ほど帰ってこなくて、結構ですからアー」

 次の病棟のステーションでは。
「あららー、とっちゃんジジイですか。それは」
「ま、しょーゆーこと。んじゃ、さらばじゃ。達者で暮らせエ」

「もう消えるんですか?」
「消えて欲しくない?ホントに、ゼッタイ?」
「すんごく、欲しいですウー」

「女心はワカランなー」
「ボクも左に同じですウ」
「男心もワカランなー、分かるのはカマイタチとマル虫くらいやなー。撤収ウー」

「今日は、けっこう蛋白に消えたわねー。いつものをやられたら、消化に悪いから」
「え、ナニナニ。呼んだ?」
「ゼッタイ呼んでませんッ!戻ってこなくて、よろしいッ」
「あ、そ。んじゃ、拙者ホントに消える故。しみじみ暮らせ」

 さらに次の病棟では。
「あららー、センセ。いつになく、アメリカ西部開拓時代のビール腹オヤジ」
「そう、ある時は探されないウオーリー。そしてある時は、とっちゃんジジイ。
 その実体は、ビミョーに何を隠そう」
「隠さなくても、MIHIセンセになりますけど」

 病棟でビミョーにプチ変化するはずの団塊医は、午前。

<団塊の古い爪切>

「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」のは、ホントか?
団塊医は夜じゃ無くても、病棟で爪切り作業に出くわし古い爪切りを捨て損なう。
病棟の爪切りは、親の死に目とは関係ないのはホントだ。

「あら、カーテン閉めて何してんの?辛気くさいわねー」
「MIHIセンセは、中にいるんでしょ?いじけて、立てこもってんの?」
「居るわよ。さっきZさんの回診が終わってから、だーれも出てこないモン」

<プッチン、プチ、プッチン>
「ほらね、蹄を切ってるんでしょ。それか、毛繕い?」
<プッチン・・・プチ、プッチン>

「あ、いま前足が終わって。後ろ足に移ったんだ」
「あ、痛ッ」
「やっぱ不器用なんだ、爪と間違えて肉球を切ったみたい」

<ズリズリ・・・ズリズリ>
「ほら、仕上げの蹄削りやん」
「ワシがナースSの爪切作業を見てたら、隕石があんたの土手っ腹にぶち当たるんか?」

「あららー、見てるだけ?聞こえましたア。賞賛の嵐が」
「何処をどう、賞賛ナンじゃ。3万7千字以内で、トイレットペーパーに書け」
「カーテンがあるから聞こえないかと」

「アホ言え。筒抜け、糸電話なみにグイグイきこえるけどナ」
「んで、センセの場合。蹄は?」
「チョキの爪の間もちゃんと・・・ワシの爪はブタなみかッ!」

「あたし自分の爪切りは、苦手エ。直ぐ失敗して、痛いモン」
「んじゃ、こっちの爪切りをしんぜよう」
「そんなに爪が切れやすいんですか、サクッと」

「サクッと指が、骨までパックリ」
「結構ですッ!」
「他人の痛みは甘美やなー、見たいなー、残念やなー」

「残念って、センセの日本語ヘンでしょッ」
「あんたの指が、皮1枚で繋がってプランプランしてんの。
 そう言うすっごい楽しいヤツ、見たくない(語尾上げで)」
「ホントにホントに、結構ですッ!」

 古い爪切りを処分し損なった団塊医の、午後。

<団塊の優しさ>

 優しさにムカつくって、我が儘か?ムカつく優しさは、無いのか?
同じ事をされても「優しさ」と感じられるか?は、個人差がある。

「Pセンセ。点滴の指示で、ローバリックは1号ですよね」
「ボクは指示簿に、初めのヤツは1号って書いてるけど」
「いえ、Pセンセは、2に見えるって言う人と1に見える人が半々だったんで」

「あ、そ。マジックで大きく1って書こうか?代行で。なんて気配り、なんて素敵。
 なんて豪華絢爛、なんて優しい」
「そこまでやらなくても、優しさも中ぐらいが良い。センセじゃないんだから」

「ちょいちょいッ、ナンでそこでワシの名前が出るんよ。オカシイやろ」
「ま、字のへたくそというか。イトミミズが、腹壊してのたうち回ったというか。
 そのような字を書く医者の代表として、ご紹介させていただきましたけど」

「ふーん。あ、そ」
「それよりセンセ、医療区分の書類にサインをお願いしますネ」
「名前の印鑑と三文判、好きなだけ押してエエよ。ヘッ、ナンでアカンのオー。
 んじゃ、いっそワシのファンクラブ専用サイン?キムタク似って書くんじゃけど」

「ゼッタイ許しませんッ」
「名前の印鑑とシャチハタじゃ、誰が書いたかワカランでしょ」
「んじゃ、自筆のサインがあれば印鑑は要らんな」

「両方お願いします」
「印鑑は誰が突いたかワカランけど、サインはワシだけの独自のヤツじゃから。
 印鑑は要らんはずじゃ」

「確かにセンセしか書けない汚さは、世界ヒロシといえども1名だけ」
「言い方が気に入らんけど。そうやろ、印鑑よりサインの方がエライんじゃ」
「エライとかそうでないとかの問題じゃなくてエ」

「だから死亡診断書は、自筆のサインがあれば印鑑は要らん」
「ハイハイ、センセはエライ。そうしましょ、そうしましょ」
「おろ、ナンか怪しいな−。その優しさ」

「気にしなくて良いんです、ゼンゼン。なにも研究大会があるとか。
 そのネタで悩んでるとか、ちょっとパワポを手伝って欲しいとか。
 発表の時は、意地悪な質問をしないで熟睡していて欲しいとかではありません」

 分かりやすい優しさにムカムカして闘志が湧く、午後。

<団塊の褥瘡と銀連休>

 日頃の行いが良いのか?胴長短足がキムタク似なのか?分からないけれど。
首になったワケじゃなく、当直が外れ超ゴールデンヒマ5日間をいただいて。
連休に入る前にサスペンス三昧と決め込んでいたのに、方針変更して「褥瘡」の5日間へ。

 乱歩賞受賞作「脳男」・横山「看守眼」・森村「暗黒星団」は1ページも開けられず。
買ったばかりの「褥瘡」テキスト(約300ページ)、毎朝6:30起床で取り組めば。
4日目にしてほぼ読破し、5日目は必要グッズ買いそろえる手立てとなったのはワケがあり。

 我が社には褥瘡チームがあって、主治医とは別仕立ての褥瘡回診。
委員会に任せておけば適切に治療がなされ、基礎疾患と合併症だけ治療をすれば良い。

 全病棟の栄養管理は、私が委員長をやってる栄養管理チーム(NST)が定期チェック。
問題があれば委員会で検討し、その結果を主治医に伝え改善を指示する仕組み。
栄養管理は、NSTチームが定期的にリチェックすればいいようになっている。

 自分の患者さんだけ、褥瘡はリングフラッシュ+マクロレンズ付きデジイチで定期確認。
前々から褥瘡治療に興味があって、色んな文献やテキストを読みあさる間に進路変更。
適当・お気楽精神が変わり、3冊目のテキストでホンマにガイドラインでエエ?

 沢山の写真と第三者の医師やナースの経験を目の当たりに見せられると、よっしゃ!
チームに任せず何がジョーシキで何がヒジョーシキ?を、自分自身で検証したくなった。
経過を細かくチェックして、改善進路が脇道に逸れそうならガイドラインの退路へ変更?

 こうして、団塊オヤジの銀連休は褥瘡と共に閉じた。

<団塊の指示と痛み>

 何気ない言葉が、人を傷つけたり不快感を与えたり極たまに喜ばせたり。
発信した側じゃ分からない事が、受けてみると痛みとして実感することがしばしば。
立場、シチュエーション、目線、人生観、年齢、気分、機嫌が複雑に入り組む要素。

薄手ブレザー型白衣をパパッと羽織ると、せっかちラウンド。
「センセ、いま某病院に母が入院してるんですけど。この間、カチンと来ちゃった」
「石でも噛んだか?」

「んじゃんくて、お見舞いに行って。部屋の外で待ってたら、聞こえてくるんですよ」
「ヒュードロドロとか、3枚、4枚、6枚とか?」
「5枚目が抜けてない(語尾上げで)。んじゃなくて、スタッフの会話」

「見舞いに来た娘の目つきが、すんごく悪りいとか?」
「娘っちゃ、結果あたしじゃないですか。んじゃなくて、母に指示が入らんって」
「もしかしてそいつら、騎兵隊の上官か?突撃イーみたいな指示?」

「バカ言わんで下さい、んじゃ母は上等兵ですか?」
「イヤ、炊事兵みたいな」
「指示が入らないって言葉は、いつも気になってたけど。ここまで嫌なモンとは。
実際に自分の親に使われると、すっごくカンジ悪いですねー」>

「ワシに向かって命令口調は、カンジ悪いで。いっつも、あんた」
 「あらそうですか?フツーですけど。そら指示が入らんて、意味は分かるけど。
 あんた何様のつもり、みたいな。他に言い方、無いんですかねー。」

「あんたと同じで。”コミュニケーションとりにくい”で、エエやんか」
「長い」
「んじゃ、ごじゃごじゃ言うと理解して貰えないは?」

「それ、センセでしょッ」
「んじゃ”スタッフがアホだから、ワケワカランッ!”は?」
「そう言うのって、1度で良いから叫んでみたい」

「エエ勉強したやないか、その教訓を明日からのワシにも活かしてね」
「回れ右ッ、ラウンドッ!」
「ラジャッ、ウウウ・・・」

 何気ないことが自分の身に降りかかり初めて相手の痛みが分かる団塊の、午後。

<団塊の溜息>

 人生色々、溜息色々、溜息をつく基準も人それぞれ色々。
犬だってブタだってつく溜息だから、イカもタコも当然つくだろうから団塊だって溜息。

「はア−。みんなこうなら毎日天国、いま地獄ウ」
「そうなんよ。ワシってこう見えても、天使の生まれ変わり」
「野ブタの生まれ変わり?フンコロガシでもエエけど、ハアー」

「んで、なんでため息?」
「このポスター見て下さいよ、しあわせの処方箋って映画」
「実はあぶり出しで、幸せから不幸せに変わる処方箋みたいな」

「んなワケワカラン映画は、あり得んでしょッ」
「んじゃ、何がため息の元?」
「これこれ、ナースの側に立ってるのがねー。はアー」

「確かに、ハあーじゃねー。鼻は高いし、顔は小さい。目筋がすきっと。
 しかもスカートから出てる足、この人バレリーナ・ナースじゃねーか」
「ハア?」

「こんなナースが介助してくれたら、ワシでもオムツでも変えちゃうとか?」
「あらら。この医者、何言ってんだか。その隣の白衣に聴診器、ペン2本。素敵イ」
「それならワシも、白衣に聴診器。しかもペンも2本や。一緒や一緒や、嬉しいなっと」

「勝手に、独りで喜んでて下さいね。うちには、こんな医者しか・・・ハあー」
「無い物ねだりは、お止しになってねみたいな」
「考えるだけ無駄、無理ってことですね。お互いに」

 その翌朝、「キャー、誰え。こんなことしたのオ」がステーションから流れる。
ポスターのナースの顔には、ちょび髭や大きなホクロが黒々と書き込まれていた。
前夜の当直はMIHIセンセで、早朝ほの暗い中で迷惑回診をしていたのは確かだ。

 団塊の朝は、ハアーを先ず1つ。

<団塊の良い病気>

 無病息災と言われるように、健康であることにこした事は無い。
1つくらいなら持ってる医者の方が、患者の心の痛みが実感して良いかも。
病気を10個も20個も持ってる医者も、患者の同情と親近感が溢れて良いかも。

 最近、犬の気持ちが分かるコンピューターが有るらしい。
よその家の茶ラブ犬とツーカーな私は、ある種のビョーキか?

「しかしナンやネー。実際のところどうなんよ、インフル」
「ハイお手」
「あ、ハイ。お手ね。んじゃいただきッ」

「もうあんたもジジイじゃし、ビョーキでトンコロッと逝くかも知れんし」
「ワクチンも余ってるところもあるって。遠吠え通信」
「必死でかき集めて、気がついたらやたらキャンセル出て。あんたも打つ?」

「打たん、打たん。犬インフルなんて聞いたことないでしょ。ワウッ」
「んでも、おばちゃんがインフルになって。ご飯持ってくるわな、ゴホゴホ言いながら」
「そう言う時は、ワシ手で口押さえるでしょ」

「あんたの口、手っちゅーか前足で隠れるか?」
「確かに、はみ出る」
「はみ出る方が10倍多いやろ?インフル感染し放題」

「センセ、もっと楽しいビョーキの話しよ」
「腹抱えて笑うようなビョーキっちゃ、笑いタケ中毒くらいのモンやろ」
「ゴジャゴジャ言わんと、外来の日じゃろ。とっとと出勤、ワウッ」

 スキップしながら、病院の門をくぐるMIHIセンセ。
「お前、良かったやないかビョーキで」
「ハイハイ。おかげで、新型インフルの注射が出来ますモンね。ヒー、フー」

「これで、ビョーキしても大丈夫じゃ」
「でもとっくにあたしビョーキですから、ヒー」
「注射さえしておけば、これ以上ビョーキが増えんやろ」

「この上にもう1つビョーキじゃ、体が持ちませんわ。フーヒー」
「その点、ワシなんか注射一発でインフル菌はポン・コロリや」
「大丈夫、貴方は血圧が高いから。そっち系でポンコロリ。ヒフうー」

「血圧だけじゃ、インフル注射打ってくれんげな。もっとエエ病気じゃないと」
「困りましたわね−、もっと良い病気を貰ってらっしゃいませ」
「何処ぞに安う売っとらんじゃろか?」
「安売りはダメでしょ」

 何処まで続くか分からないこの会話、オチがあるのならお早めに!と思いつつトイレ。
帰り際に聞き耳を立てようとしたら、Fジッちゃんは新聞を読んでいて会話はなく。
トイレから帰ってきたばかりの奥様、ヒーヒー肩で息をして無事注射終了の朝。

<団塊被誤解女(うけやすい)>

 数が多い分誤解を受ける可能性も高いのが、団塊世代。

「オロッ。座り便器のカーテンから、顔が半分。キャー、ストーカー。キャー」
「コラコラ。車いすのZさんがおトイレ使ってらっしゃるんで、付き添いですッ。
 誤解もはなはだしいでしょ、失礼しちゃうワ」

「危なかったア−、もうちょっとでチビルとこやったで」
「あたし見てませんから、お好きなだけお使い下さい。ゼーンブ出し切って」
「背中に視線が突き刺さって、出るモンも引っ込む。あー気分悪ウ、止まってもた」

「それよか、こんなところで何ですけど。何で介護士Rさんはトモさんって呼んで。
 あたしはスケさんなんですウ、意味ワカランでしょ」
「そらあんた、二人とも親戚でもないのに名字が同じやろ。名前で呼ぶしか」

「んで、あたしのスケは?」
「廣中平祐センセの祐子で、スケちゃん。けっこう可愛いやんか、名前負け?」
「負けてませんッ!」

 トイレを後回しにしてラウンドへ向かって、2557号室へ侵入した途端。
「センセ、酷いじゃないですか」
「ワシ何かした?」

「あたくし、寂しい」
「ご主人が腹踊り大賞授与?犬がパンダの子を産んだとか?」
「30年前に亡くなってますし、犬も飼ってません」

「んじゃ、何?」
「センセの声が大きいから、聞こえるんですよ。隣で話してんのが」
「Dさんの悪口なんか言うとらせんよ、ゼンゼン」

「そうじゃなくて、朝の挨拶ですよ。センセの」
「スペイン語かイタリア語とちゃうけど。得意なのは讃岐弁、他の外国語は知らん」
「じゃなくて、お隣ではお早うさんって言うのに。ここは、おっはよーでしょ?」

「そうじゃねー、パターンを変えんと飽きるやろ?」
「それじゃ、あたしの誤解です?差別されてんのかと」
「そう言うこと、女の誤解って恐いね−」

 団塊は女の誤解を受けやすい、午後。

<団塊の指示と痛み>

 何気ない言葉が、人を傷つけたり不快感を与えたり極たまに喜ばせたり。
発信した側じゃ分からない事が、受けてみると痛みとして実感することがしばしば。
立場、シチュエーション、目線、人生観、年齢、気分、機嫌が複雑に入り組む要素。

 薄手ブレザー型白衣をパパッと羽織ると、せっかちにラウンドへ向かう。
「センセ、いま某病院に母が入院してるんですけど。この間、カチンと来ちゃったわ」
「石でも噛んだか?」

「んじゃんくて、お見舞いに行って。部屋の外で待っていたら、聞こえてくるんですよ」
「ヒュードロドロとか、3枚、4枚、6枚とか?」
「5枚目が抜けてない(語尾上げで)。んじゃなくて、スタッフの会話」

「見舞いに来た娘の目つきが、すんごく悪りいとか?」
「娘っちゃ、結果あたしじゃないですか。んじゃなくて、母に指示が入らんって」
「もしかしてそいつら、騎兵隊の上官か?突撃イーみたいな指示?」

「バカ言わんで下さい、んじゃ母は上等兵ですか?」
「イヤ、炊事兵みたいな」
「指示が入らないって言葉は、いつも気になってたけど。ここまで嫌なモンだとは。
 実際に自分の親に使われると、すっごくカンジ悪いですねー」

「ワシに向かって命令口調は、カンジ悪いで。いっつも、あんた」
「あらそうですか?フツーですけど。そら指示が入らないって、意味は分かるけど。
 あんた何様のつもり、みたいな。他に言い方、無いんですかねー。」

「あるよ。コミュニケーションがとりにくいで、エエやんか」
「長い」
「んじゃ、ごじゃごじゃ言うと理解して貰えないは?」

「それ、フツーでしょッ」
「んじゃ、スタッフがアホだからワケワカランッ!は?」
「そう言うのって、1度で良いから叫んでみたい」

「エエ勉強したやないか、その教訓を明日からのワシにも活かしてね」
「回れ右ッ、ラウンドッ!」
「ラジャッ、ウウウ・・・」

 何気ないことが自分の身に降りかかり初めて相手の痛みが分かる団塊の、午後。

<団塊の講演会>

「ワオワウーッ、ワオ。ワーワオ」遠吠えするラブラドール犬の哲。
「コラコラ、近所迷惑やろ。とうとう脳みそとろけたか?」
「ちゃいますがな、今夜の講演会は欠席するぞーって。遠吠え通信ですワ」

「犬の世界にも、講演会ってあるんやなー。ナニを勉強するんや?」
「昼寝してサボっていても、いつも仕事をしてますよー見せかける方法。
 最近じゃ、インフル対策ですわ。うがいの仕方とか、外れないマスクのかけ方。
 ジジイ犬になったんやろか、耳が遠くなったような昨今」

「あんたは、耳が垂れてるモンなー。耳釣るゴムを、ホッチキスでプチ。聞こえるー」
「鬼イ、人でなしイ、町内会で言いふらしたろ。ワウ、ウウ・・・」
「んじゃ、ちゃんと講演会に行かなきゃ。ワシなんか、講演会フリークって評判やで」

「ホンマかいな?怪しいモンだね、ワウワウッ」を後にして医局に入りかけると。
「お待ちいたしておりました。センセ、この間の講演会いらしていただけましたっけ?」
「行ったに決まっとるやん。涙涙の禁酒5ヶ月で、4.5Kg減量でワシが見えんかった?」

「激やせって、たった4.5kg。そんなん、関係有るんですかア。姿が霞むんと」
「時々ワシって、講演会場でだと霞んで見えるんよ。ある時は透明人間みたいな」
「またまた、そんな都合のエエ話が・・・」

「あの時、タクシーチケット1枚じゃったろ?あれはイカン」
「センセに3枚も渡したら、アメリカでも行っちゃうっしょ」
「せいぜい北海道か沖縄(語尾上げで)。3枚で日本一周みたいな」

「だから1枚」
「その心は、帰りのチケットを渡す前に念書やろ?イカンぞそれは、極道の道に外れる」
「道から外れれば、簀巻きでドボンか小指の先ッちょサクッポトンみたいな」

「やっぱなー、R社は恐い恐い。講演会は素晴らしかったから、医局へ帰って言えとか?
 行かんかったヤツはアホじゃ!ボケじゃーって」
「そんなセンセを信じる程の信用、無い(語尾上げで)」

「確かにないッ、ウウウ。あんた明日から300年、顔見せないでネ」
「あ、センセ。P薬品でございますウ。来週の講演会は、バリバリ笑えますけどオ」
「そう言うキャッチーな感じがエエなー。んじゃ最前列で大笑いさ、みたいな」

「講演会で笑えるって、落語じゃあるまいし。P社さん、足すくわれますよセンセに。
 行くと見せかけて、家でゴロゴロ。チケットは、ゴミ箱の底」隣から突っ込むR社。
「ヘッ、そうなんですか?」

「たまーに。極々たまに。しょっちゅうあるかも、万が一悪運が強ければ無いかも」
「んじゃ、チケット2枚。それと講師のセンセは、かの有名なG大B教授っすよ」
「あ。ワシ、ファンなんよねー。とっても辛口。スポンサーの提灯持ち、大嫌い」

「良くご存じで。だから今回の講演、ナンであのセンセになったのか7不思議」
「ワシゼッタイ行くかんね、チケット1枚で往復ね」
「払いは一緒ですから、お好きに。でも、ホントに出席していただけるんですねー」

「来るなって言われても。這うか、転がるか、頭に火の付いた蝋燭を2本立てて」
「そこまでして、来られなくても。いっそ、来ない方が」
「ガルッ、来るな!なんて言うと噛みつくかんね。ガルッ」

「狂犬病みたいなセンセは、来られない方が。私どもも、すこぶる助かりますけどオ」
「ガ、ガルッ。講演会イー。ワオ、ワオーン」

 医局に団塊の遠吠えが響いた、午後。

<団塊が褒めてちぎっちゃう>

 今時の若いモンは誉めて育てるなんて、アホとちゃいますか?
その点、団塊世代は上から叩かれても頭をもたげる育て方をされたような。
だからと言うわけではないが、他人を誉めるのは似合わないのだ。

「しかしナンだね−、よー仕事をするね−」
「あらら、珍しい。センセがスタッフを誉めるなんて、雪だるまが降ってくるかもオ」
「イヤイヤ。このプリンター、パソコンとあんたは寝てんのに。一晩中、仕事しとる」

「ウワー、来たア。スタッフ誉めてんじゃなくて、くっきりイヤミ(語尾上げ)」
「ワシは素直に、プリンターを誉めてるだけよ。素直に」
「何処がどう素直?センセの素直は、千枚通しでブチブチ突き刺す(語尾上げで)」

「あんた、日本語ヘン(語尾下げで)」
「日本語のことで、センセに言われたくないわ。ヘン、なんて」
「んじゃ、ミョー」

「どっちも変わりませんッ」
「しかしナンやね−、今朝の塩鮭。あれってフツー食やろ?検食は」
「鮭が、丸ごと1匹。どどーんと?」

「アホ言え、ワシは熊かッ!」
「野ブタですッ!」
「そうだったんか!塩気たっぷりは、ブタ好みかッ。豚に塩、暖簾に腕押し、んーと」

「センセ、最後まで行きますか?」
「イヤ、もうエエわ。あの塩鮭に追い打ちを掛けて醤油、大根おろしが砂糖より甘い」
「そらセンセのだけ、砂糖だったんでしょ。んでも、そんなに鮭に塩気が?」

「朝っぱらから、しょっぱくて目が覚めるで。直ぐ、腎臓が仕事せなアカンやろ」
「センセの他の部分は仕事してないんだから、腎臓くらい仕事しても」
「あれだけの塩気をシッコで出そうと思ったら、腎臓がフーフー言うで」

「腎臓のどの口が、フーフー?」
「右腎臓出口付近、尿管の直ぐ横。たらこクチビル。あ、毛付きホクロもオネガイ」
「ナンであたしの顔を見ながら、説明するんですウ?」

「感心しとったんよ、何処を見ても誉めるところがないなんて。まさかのDNA。
 凄すぎイって、誉めちぎっちゃう。みたいな」
「1mgも誉めてませんッ!」

 人を誉めるのは難しい団塊の、朝。

<穴の空いた団塊>

 生まれると直ぐに競争させられて、常に競争相手を意識してきた我々。
人のアラを探すのは得意、やる気なさを言い訳するのも得意な団塊。

「センセ、午後はすっごいヒマでしょッ?」
「そうはっきり言われると、ノーコメントと言うことで」
「んじゃ、検診結果の記入たった10名。やっつけましょったら、そうしましょ」

「R君に捕まったら、罠にかかったカモシカみたいなワシじゃから。ヒヒーン」
「それは駄馬じゃないですかア。モモンガも、駄馬もたいして変わらんけど」
「んじゃ、そう言うことで。拙者先を急ぐ旅ゆえ、さらばじゃ。達者で暮らせ」

「ハイハイ、これは旅のお伴。10名分ね」
「拙者、箸より重いモンは・・・」
「大丈夫、お孫さんより軽いですからア」

「ワシ急に持病の・・・んーと、力出したくない病が」
「ICD-10(病名分類)に当てはまらない病名は、却下」
「ICD-2373595」

「勝手に作らないッ」
「んじゃ、そこのゴミ箱の横へ。中でもエエけど」
「ハイ、印鑑。ハイ、クリップ」

「んでさあ、ナンで血圧が書いてなかったり。血糖値が抜けてたり、なんでや?
 もしかして、火であぶると文字が浮かんでくるとか?R君、マッチい」
「外来に放火するつもりですかッ!」

「やる気センな−。穴の空いた海水パンツ履かされて、海に沈められたみたいで」
「どう言うことですウ、ワケワカランですウ」
「あとで見られたら、ちょい恥ずかしい。空いた穴だけは繕ってね、みたいな」

「聞くんじゃなかった」
「穴がボコボコ空いてる、データ。やる気センなー。クダラン検診、止めようや」
「Q担当ナースに言っておきますね、MIHIセンセが穴の空いたパンツで泳いだって」

「ワシを海の放り込んだら凄いで、名字も名前も変わる土左衛門みたいな」
「文句言ってるヒマに、健診結果書けば良いのに」

「ハアー、しかしやる気センなー。いくらここで二人でキレまくっても、穴は塞がらん」
「ハアーやる気無いMIHIセンセを見てると、つくづくやる気出ますわ。反面教師で」
「ハアー、んじゃ多少は役に立ってんの?ワシのやる気無さ。ハアー」

 外来に団塊のため息がこだまする、午後。

<団塊は賞身期限内か?>

「センセ。オネガイがあるんですけど」
「MIHIセンセはキムタク似ですッて、5回言うてくれたら多少なりともご要望に」
「そんな極悪非道、野ブタ畜生、メタボ猪八戒な」

「んで、ナニよ?」
「インフルワクチン、1名なんですけどオ」
「ラジャッ。そんなことなら、キム様のワシでOK」で、すっ飛んで行くと。

「あ、センセ。脳みそと腰軽いイ、もう来ちゃって。大丈夫、ナンのご心配も要りません。
 来るまでに、ちゃんと5万回言っておきましたから。声が枯れちゃって、ケホ」
「あと3回追加は?」
「地球が爆発しても、ダーメ」

「んで、誰に打つ?なんや、あんたか。缶に捨ててある、賞味期限切れのヤツは無いん?
 それで充分やで、10本分瓶の底からかき集めて。1回使った注射器で、チュッでエエ。
 大サービスで\35800になりますけど、宜しかったでしょうかア」

「何処がサービスッ、ボリ過ぎイ。ぼったくりバーより酷いわ、ホントに。
 せめて賞味期限内のヤツで、オネガイします。注射器は、後生ですから未使用で」
「贅沢なやっちゃ。本体は消費期限をとっくに過ぎてるんじゃからお似合いやろ」

「まだ賞味期限内と思ってたのにイ、このピチピチお肌。はたまた、美白、細身」
「看護婦さーん、体温計イ。発熱患者1名、出現しましたア」
「熱はありませんッ、タブン。んでも、ヨン様にはお熱ウみたいな」

「無視無視。しかしナンじゃねー、人間の寿命は即ち賞身期限なんじゃろうか?」
「ワケワカランッ!んでも、健康寿命とフツーの寿命は違うでしょ?」
「金魚のウンチみたいに、細くても良いから長ーく行きたいモンじゃねー」

「んでもあれって、時々プチって短く切れません?」
「んじゃ、何のウンチじゃったらエエんや?あんたのは、どうや?」
「あたしのはコロコロ、ウサギの糞・・・何を言わすんですかッ!」

 今現在の自分は賞身期限ぎれ?の、午後。

<団塊の休の意味>

 団塊世代は、休みの取り方が下手だ。
「あらア−、センセ。居たのオ」
「フエッヘッヘ。すでに貴方は、妄想の世界を彷徨っている」
「何言ってんですか、そんなにはっきりくっきり。メタボ体型が、見えるはず無いッ」

「新型妄想とか、H1N3万型妄想とか?」
「朝っぱらから、アホなこと」
「んじゃ、そう言うことで帰りまする」

「コラコラッ、この予定表の休と言う字は?」
「MIHIセンセは休め、とも読む」
「んじゃなくてエ、意味は?」

「MIHIセンセはグータラして良い、とも取れる?」
「休が無くても、いつもグータラじゃん。わざわざ断らなくてもエエでしょッ。
 そう言う風に、自分の都合の良いように取るのはセンセだけですッ」

「んじゃ、ワシはどうしたら?」
「んで、今日の予定は?」
「回診して、午後だけ代休」

「それならそうと、言えばいいのに」
「ワシって素直だから、物事をカーブとか変化球でしか言えん人」
「新型螺旋素直ですね、センセは」

「そういう言い方もあるが、そうでなければ」
「ただのひねくれモン」
「正解ッ!」

 すっかり読まれた代休の、午後。

<団塊のマスクはヘンタイかッ>

 マスク依存症なんてのが有るそうで。
モゴモゴはっきりしないから、言いたい事言っても喧嘩にならない。
うっかり鼻マスクで「チッ」なんて舌打ちすると、好感度真っ逆さま。
僅かな範囲の顔を隠す布きれなのに、誰も気づかないだろうと勘違い大胆行動。

「おろ、センセ。午前中はマスクしてなかったのに、ナンかのひらい食いで腹壊した?」
「食中毒でマスクは、オカシイやろ」
「イエイエ、センセならゼンゼン。オカシくないけど、笑っちゃう」

「そ、そうか。ホントに、キムタクに見えるか?」
「見えませんッ!どの耳で聞くと、そうなるんですか」
「この可愛い耳2ヶで」

「完全な幻聴ですッ」
「略して、カンチョーなんてな。今日は、一段と冴え渡っとるなー」
「無視、無視。んで、顔が赤いけど」

「顔はほんのり桜色で、色ッぺーやろ?お兄さん寄ってらしてエ、みたいな」
「ま、まさか。ホントに酒飲んでるとか?」
「アホ言え。最近じゃ、アルコール0.001%でもグラングランの泥酔やで」

「やっぱ、飲んでんじゃん」
「ウエットティッシュに染みこんだ消毒アルコールを嗅いで、酔ったみたいな」
「んなアホな。ま、まさかのインフルじゃ・・・ヤダ、インフルが嫌うわよねー」

「久しぶりにしつこくマスクすると、けっこう暖かいもんやなー」
「心がサブイから、丁度良いかもオ」
「あんたのダンナの財布にも、マスクッ!」

「お小遣い、月\1000から¥600にしたのがイケンじゃったかなア」
「そんなことより、今から感染予防講演会じゃったっけ。ナンか、だれるワな」

 会場1番乗りで、最前列に陣取る。
「おろ、あれってMIHIセンセとちゃうか?丸い背脂、年に似合わない赤いソックス。
 マスクしてるけど、変装のつもりじゃないよなー」
「変装って言うのは、姿形を変えるワケよな。あれって、ヘンタイとちゃいますかア」

「メタボで、キレ安くて、ヘンタイじゃあ。マスクして、顔を隠すしかないみたいな」
「ちょ、ちょっと待て聞いたぞ。君たちのパンツのゴム、切ったろか!
 ワシのマスクの、何処がオカシイんや」

「どこもかしこも、ヘン」
「マスクの内側に熱が溜まって、脳みそがボーッとするのが気持ち良くって悪いかッ」
「やっぱ、近寄るの止めよ。ヘンタイじゃ」

「ワシがマスクじゃ悪いかッ!フンッ、ワシから7万3千キロ離れてろッ。ガル、ガルッ」
「マスクの内側に、危ない薬でも塗ってんじゃ?3m以上、離れとこ」

 マスクをしただけでヘンタイにされた、午後。

<団塊の結局ヒマッ>

 常に競争させられてきた我々世代は、、何かしていると安心だった。
空白の時間であるヒマに恐怖感をさえ覚えるのは、いつまで経っても変わらない。
とっくに還暦過ぎても、「ヒマよりは、あー忙しい」の方が気が楽というもの。

「あれまっ、またですかッ!」
「ワシが電話に出ると、腹にタコの絵を描いたブタがカッポレ踊るか?」
「意味ワカランッ。んじゃなくて、インフル3名オネガイします」

「集団感染か?」
「集団予防注射で、ビシッと行っちゃって」
「さっきもワシ呼ばれたんじゃけど、そんなにワシに会いたい?」

「出来ることなら、この世からサクッと消えて。あ、その前にワクチンねッ」
「またですかッ!ワシも、それほどヒマじゃ」
「ゴジャゴジャ言わないッ!とっとと、おいでませ」13分で済ませるチクッ。

「しかしナンじゃネー、ナンで今日は外来担当じゃないワシばっかなん。注射」
「医局の電話を取るからですよ、真っ先にセンセが。通常連絡は、携帯だから」
「癖でな、耳障りの音を消すには受話器を挙げるしかないやろ?」

「まあそうですね、フツーは」
「よーし、覚えとけ」
「ミョーなことを考えちゃ、イケマセンよー」

「ミョーなことを考えてくるかんね」の5分後、医局の電話が騒ぐ。
カチャ・・プツッの13秒後。
「今、受話器を挙げて直ぐ降ろしたでしょッ」

「ただ今、この電話はキムタク似医師専用となっております。これホントっす。
 おかけ直しの上、ブラピ似医師をご指名下さいませ。それとも、プープー」の2秒後。
「コラコラ、電話で遊んでんじゃないッ。メタボMIHIセンセご指名で、注射5名」

「指名料はお一人様、¥50になっていますけど。よろしかったでしょうか」
「ミョーなこと、思いついちゃったんだ。とっとと、カモン」
「ヨー、ウエルカム」

 統計のお勉強で脳みそグジャグジャになった、結局はヒマな午後に再び騒ぐ電話。
「センセ、あと5人」
「スマン、統計の勉強しすぎて耳から脳みそが出始めたんじゃけど」
「耳栓して、おいで下さいませ」

「ここは何処、私は誰?状態ナンじゃけど」
「他のヒマなセンセに頼みますッ!誰でもエエんですけどネ、最初に捕まえたセンセで」
「みんな、ヒマッ!」

 その後は医局へ電話がかかって来ず、ヒマじゃー。結局、体もてあます団塊。

<団塊のセンサー>

 エコだか何だか知らんけど、階段に接近すると照明が付くようになった。
しかも、登りと下りを見分ける技も持ち合わせていて驚く。
赤外線センサーの中にちっちゃいオジサンが入っていて、見張ってる?
その上、我が家はヒートショック対策として夜間はセンサー付き足下暖房。

「おろ?」
「センセ、もしかして透明人間っすかア」
「アホ言え、キムタク似のワシが見えるやろッ!」

「んじゃ、アカンわ。猪八戒しか見えませんッ」
「んじゃ、婦長さん手エ貸して。あとで、脂身付けて返すから」
「どらどら。あー、出るじゃないですか。センサー壊れてませんよ、この水道」

「あー、やっぱ出ん。ヤキ入れたろか、こいつウ」
「んな可哀想な、どらどら。出るじゃないですか、ハイいまのうちに」
「あー、途中で止まったア。どこかに、めん玉が付いとるんちゃうか?」

「この黒いのが・・・」
「それは錆びやろ、この鼻クソみたいなのが目?」
「ゴマじゃないですか、それって」

「何で水道の蛇口に、ゴマが?」
「ごまオニギリ食べたスタッフが、うがいをした?」
「あ、婦長さんの鼻の横にゴマが!」

「これはホクロですッ」
「取れるかも知れんから、千枚通しで突っついてもエエ?」
「そこまですると、立派なパワハラになります」

 取りあえず手を洗って、インフルワクチン3人前を済ませて蛇口の前。
「あー、出るやんか!ワシ、透明人間とちゃいますよー」
「オカシイですねー、なんででしょ?」

「原因は婦長さんじゃ」
「何であたしが、ノリカなんですか。当たってるけど」
「ワシのシッコや」

「どう言うこと?」
「最中に婦長さんの声が聞こえたら、出るモンも出ん。ピタっと止まっちゃうシッコ」
「だからセンセが手を洗おうとした時に、あたしが近づくとちょろっとも出ん蛇口。
 なーる。あたしにビビって、途中で止まっちゃう・・・んなワケ無いしょッ!」

 センサーが混乱する婦長と、そうじゃない団塊のセンサーがあるらしい。
滅多に行かないが、夜中にトイレに行けば足下暖房センサーが稼働する。
人を見るセンサーには、感じてもらえるらしい団塊。

<団塊の鍋とヤカンの黒さ>

「センセ、聞いてよ。Qセンセのこと」
「ワシとどっちが良い男かなんて、聞くだけ無駄。考えるだけ、悪魔。邪魔、ウッセ」
「そのままお返し、ウッセ。Zって患者さんなんですけどオ」

「担当じゃないから、ワカラン。皆目、ゼンゼン、魑魅魍魎」
「聞くだけ聞いて、おくんなまし」
「場末の花魁かッ!んで?」

「Zさんの貧血が進んだのは何故?ってQセンセに聞いたら。血糖が問題や!って」
「言い得てミョー、話せば分かる何事も。さあて、ご用のないお立ち会い」
「本番が始まったら、言って下さいね。耳栓してますから」

「関係があるようで、無いような。因果は巡る走馬燈、風が吹いたら桶屋が屁をこく」
「ハア?」

「血糖が上がると糖尿病が進むわな、するってーと腎臓が弱るわな。さあ、立ち会い。
 腎臓が弱ると造血ホルモンが減る、血イも減る。ここまで来るのは、年単位か?」
「血糖が上がったのは、先月からですよ」

「血糖が上がったのに気がついたのが先月で、ホントは280年前からとか」
「Zさんは、78歳ですッ」
「手相の生命線、薄くて78歳と見た?丸々あんたはメタボ薄命、螺旋根性長命」

「大きなお世話、ムカツク説明。やっぱセンセは、1位やねー」
「皆まで言うな、世辞は無用。おやつはカリントウ。んで、何が1位?」
「質問するのが無駄なセンセ、ダントツ1位」

「んじゃ、質問しなきゃエエやろ」
「近くを通るから、つい声を掛けちゃって。QセンセかGセンセにすれば、エかったと」
「QセンセもGセンセもワシと比べりゃ、黒さで鍋とヤカンが競っとるような」

「ハア??」
「”鍋がヤカンを黒いと言うって台詞。日本じゃ、目くそが鼻くそを笑う」

 英国の決まり文句を駆使して煙に巻く、午後。

<団塊医の年末CD>

 年の瀬に使うBGMと言えば、ベートーベンさんの第九で決まり。
年末の当直夜に医局で独り宴会用BGMに使うCDと言えば、1枚はエバンスだけど。
医局のドクターは時間通りきっちりお帰りになって、明るいうちは70年代の歌謡ポップス。

 ボリュームはマックス一歩手前までグイグイ、スピーカー乗る棚はビリビリ。
誰に遠慮が要るでも無し(遠慮とは縁遠い生活してますけど)、鳴らし放題・歌い放題。
エレキギターの合間に、かすかに聞こえる電話呼び出し音ピリピリ。

「ハイ、医局う」
「T病棟ですけど。こ、これは。センセ、脱走してカラオケルーム?」
「イヤ、カラオケ医局。んで、ナニ?あ、それは経過観察でOKだぜイ。イエェー」

「ハイ、医局う」
「忘年会やってんですかア、医局で?D病棟ですけど」
「あ、それって経過観察でOKよ」

「ハイ、医局う」
「あらまっ、M病棟ですけど。センセ、懐かしいわア。んで、えらく盛り上がって。
 何人で?ヘッ、センセ独り!そのCD持ってらっしゃいません、こちらへ」

「持って行って、どうするん?」
「センセがオムツ替え、あたしまったり。たまには、よろしいじゃございませんか」
「イエ、結構です。その件は、経過観察でOKいッ!」

 一通り病棟からの電話を処理して、腹の底から歌い出すMIHIセンセ。
「ゴンゴン、センセえー。センセえー」
Mr.サマータイムのサビに入って気づく、背後霊。

「な、なんや。襲われるかと思ったで」
「センセ、これって両親の十八番。キャーやだ。あ、管理当直です。よろしく。
 しかしセンセ、結構ジジイなんですねー。こう言うんで、ノリノリになるんじゃ」

 大した事件もなく平々凡々と過ぎて行くと、医者も患者さんも嬉しい年の瀬の当直。
風邪をひいたわけでもないのに、当直が明けると声は例年通りハスキー。

<団塊当直明けの虹>

 明けが休日なのをすっかり忘れて、早朝迷惑回診を始めた途端に声がかかる。
「センセ、今日は祝日ですッ!いつもより6万9千んーと。エエイ。約7万倍、迷惑ッ」
「あ、ワシの誕生日だったっけ。今朝は」

「今朝は関係なく、センセの誕生日なら悪魔の還暦記念日でしょッ」
「またまた、わりい冗談ぶっ飛ばしちゃイカンぜよ。ほんなごつ」
「それって、タヌキ弁でしょ。ナンかで聞いたことあるワ」

「ノブタ寺の、和尚講話で聞いたんやろ」
「あたしは無宗教ですッ」
「んだから、バチと腐ってカビが生えた牛乳にあたったワケよ」

「ハイハイ、ナンでも言って下さいませ。おむつ交換、ご一緒します?」
「すっかり、ご遠慮させていただきます」
病棟徘徊もご遠慮させていただいて、撤収するしかない。

 渡り廊下から見上げれば、夜明けの空に半円の虹がかかっていた。
予期せぬラッキーに素敵な気持ちになった朝、半袖からむき出しの腕に冷気が突き刺さる。
いつも思うのだが、どうして虹の内側は外側より明るいのだろう。

<団塊医の病気の診方>> 問診から診察を経て、考えうる診断に優先順位を付けて検査へ進む。
その優先順位は、多くの場合悲観的なモノが上位を占めることになる。
それを如何に患者さんに悟られないようにしながら、検査を進め診断に至るか。
最小限の検査で最大限の情報を掴むことが出来るかが、腕次第と言うことになる。

 問診で得られ診断に至る情報が、典型的であれば運が良い方で。
運が悪いことの方が圧倒的に多いから、知識と経験のない医者ほど検査が増える。
下手な鉄砲も数打ちゃ当たる式なら、患者の医療費は増え医者は儲かる。

 患者が欲しがれば断ることを知らない医者は、大きめレジ袋一杯の薬を処方し。
感謝の言葉と大枚を残して、持って帰った薬を自己流で間引いて飲む患者。
説明しまくり無駄な薬を出さない医者より、笑顔で処方する医者に患者が集まる世の常。

 これに歯止めを掛けられるのは、フツーの医者でありたいプライドという見えない力。
自分の場合なら、内服方法も薬の量も掟破りであっても自己責任で済ませるのが医者。

 医者自身が病気の場合は、「問診も診察も何時でも何処でも」のドラえもん状態。
常に診断の優先順位は悲観的なモノに溢れ、全知全能を傾けて潰しにかかる診断。
典型的な症状も裏読みするから、患者さんへの楽観的説明で見られる雰囲気は何処へやら。

 だが自分が医者であることを忘れて、いきなりドクターショッピングはあり得ない。
悲観的な診断の先に待っている悲観的末路を、脳に思い描くのは上手いから手に負えない。
悪性疾患を患った医師のエッセイを読むと、いきなり胸に迫ってくるのは私だけではない。

 腰痛は専門外であるだけに、キュブラーロス的な患者心理変化を思い出しつつ。
「あー、腰痛てエー」と呟く午後。
「センセ、腰が痛いんですって?軽い腰」

「あー、腰痛てエー。仕事できない、仕事したくない。ジャズ聞いて、コーヒーしたい」
「やっぱ、何かの祟りっしょ。踏みつぶした、ゴキブリの呪いとか?キャハッ」
「君たちには弱ってる人に優しくするとか労るとか、そう言う気持ちがないやろ?」

「そら、相手によりけりでしょッ。MIHIセンセみたいな人は、ねエ」
「そう来るか、人を呪わば穴2つって。あんたらのためにあるような言葉、知っとる?」
「人を呪うと、ブルドーザーが来て穴を2つも開けちゃうんだ」

「ウウウ・・・。んじゃ、あんたの家の前で30回呪ったろ。そうなったら、凄ッいでー。
 家の周りが、ボコボコ。蜂の巣の中のウサギ小屋・・・んじゃなくてエ」
「もう少し分かりやすくて、馴染めるヤツをオネガイします。3文字熟語みたいな」

「んじゃ。人を見て笑わば、ウリ2つは?」
「キャー。それより、センセの方がもっと恐いイー」
「ナンか、余計に腰に来た感じイー」

 団塊医のビョーキの診方は、人生色々だし医者色々。

<団塊にリモコンをピッ>

「おろッ、紙しか燃やしていないはずなのに。何で黒い煙?」
その3秒後、軽いポンッが2発。黒い煙は落ち着く。

「ネエネエ、お父さん。エアコンのリモコン」
「昨日の晩に使って、触って居らんよ。座敷童が触ったら別やけど」
「いくら探しても、ナインよ」

「んじゃ、今朝は誰がエアコンのスイッチ?」
「それはあたしが・・・」
「んで、何処へ?」

「このテーブルの上」
「別荘へでも遊びに?んなはず無いわな、我が家に別荘ないし」
「もしかして、テーブルから滑り落ちてゴミ箱?あら、ナンも無い」

「ついさっき、家中のゴミ燃やしたけど。そう言えば、黒い煙と2発のポンッ。
 リモコンの外側がもえて黒煙、2本の電池爆発が2回。つじつま合うかもオ」
と言うことで、ネットサーフィンキーワードは「エアコン・汎用リモコン」。

 \3000前後、んなら近所の量販店。
「ハイ、色々取りそろえて」と来たから、「あとで行きます」の電話res。
「んじゃ、あっちの部屋のリモコンはアカンやろか?」ピッと作動。

「んじゃ、TVのリモコンは?やっぱアカンなんじゃ、DVDも・・・ダメかア」
「確かに、温度とか湿度とか無いモンな−。元の画面っちゃ、関係無いわなー。
 エアコンの見た目は変わらんし、チャンネル無いしな−」

 汎用リモコンを買いに走ったけど、我が家のマシンはミスト・ナンタラ機能でダメ。
病棟でこの話をしたら、「そんなんジョーシキ、センセはヒジョーシキ」だと。

「んで、お店に人に聞いたんよ。ナースと介護士専用でエエから、リモコン無いかって」
「そんなモン買って、まさか・・・」
「ごじゃごじゃ言わずに消えろボタンをピッ、みたいな」

「んじゃあたしは、MIHIセンセ専用1個でエエわ。2度と使わないから、使い捨て。
 とっとと消えて3万年出てくるなボタンをピッ、みたいな。キャハ」

 その3日後に焼却炉の灰掻きだし口から、黒こげ電池が顔を覗かせているのを発見。

<団塊の童話>

 童話が書けなくなった。
感性が枯れてしまったか、無邪気さが枯渇したか、夢の欠片さえ何処かへ行ったか。

 高校時代にコーラス部と掛け持ちで、文芸部に出入の2年間で書いた童話は1編だけ。
詩は読み返せないほど恥ずかしい2,3作で、殆ど幽霊部員だった。

 批評会はいっぱしの評論家風を装い、口角泡を飛ばすなんてモンじゃなく。
「おどりゃ、このボクに喧嘩売ってんの?百年、早いっつーの」
主張の熱さは若さの裏返し、後で考えれば他愛のなく振り返るのも恥ずかしい。

 怠惰な大学は、アーチェリー兼料理研究会と文芸部(言いにくいけど、部長)に所属。
上手くなったのは「さしすせそ」の料理の腕だけ、童話など思いも付かず6年が過ぎた。
大学院の頃は「哲学ってなんよ?」に浸かったが、覚えた酒が全てをぶっ飛ばした。

 干支を5回もぐるぐる回れば、リセットして童話を書いてみようと思う。
アンデルセンでも読み込むというか裏を読むと、やたら残酷なのが童話。
60年も色んな経験をしたから、残酷さえ優しさのオブラートで包み込んで書く童話。

 読んだ孫のジイジ良いね!童話を、書きたくなった。

<団塊は孫に痺れる>

「あらセンセ、今日はキレないんですか」
「何のそれしきのことで、キレませんよ」
「あららー、お珍しい。アリンコがくしゃみしても、イラッとするのに」

「んじゃワシは、タコのパシリかッ!」
「ワケワカランッ!」
「んじゃないんよ、Zちゃん。MIHIセンセはねー、パワー使い果たしたわけ」

「ジジイだから、使い古したバッテリーみたいに直ぐ放電する?」
「直に、お孫さんが帰っちゃうんですよネ。ずーっと遊んで貰ってた、初孫」
「ウウ、そうなんよ。ウウウ・・・代わりに、あんたどっかへ行ってもエエよ」

「なんでMIHIジジイのお孫さんの代理で、どっかへ行かねばナランのですか」
「年寄りに対する優しさが、凄ーく欠けてんだよなー。あんたらは、実際」
「意味分からんッ」

 そんな会話を思いだしつつ休日の朝、ハイハイしてソファーににじり寄る孫。
新聞を読む足下に何かを感じふと見れば、小さい手がしっかり掴むズボンの裾。
抱き上げて膝の上に乗せれば、体を揺らしリズムを取って喜ぶのが伝わってくる。

 意味不明の赤ちゃん言葉である喃語を連発し、身を乗り出して窓の外を見る背中。
しばらくそのままだったのに、気づけば私の胸に寄りかかりウトウト。
私の左手中指をしっかり握りしめ、カーテンを通して降りかかる陽を浴びる二人。

 小さなてからはみ出した私の中指は、充血してワイン色が強くなり始めて軽い痺も。
握る力が周期的に変わっても、元の色に戻ることはなく時が過ぎ解放されるまで30分。
孫の全身の力が抜けて私に頼り切っても、わずかに残るジンジン痺れは心地よかった。

<団塊がキレる買い物>

<おっと。あらら、ワシのケツをカートで突っつくんはおばちゃんかいな>
「あら」
<あらじゃねーぜ。押すなってーの、前がつかえてんだから>

「こっちか?」野菜の棚から聞こえるオヤジの声。
「違うでしょッ。同じ値段なら、大きい方に決まってるでしょッ」
<あんたの声と腹の脂身は、小さい方がええんちゃう>

 かごから取り出して、カボチャを入れ替えるご主人らしき初老はMIHIセンセの類。
「あのね、色をちゃんと見なさいよ。固そうな色してるでしょッ」
<んなら、端から自分で選べばエエんじゃネーの>

 リタイアしてすっかり細くなった大黒柱のジジイは、現役時代のパワー無し。
それに逆比例するように、ハラミと態度がズンズン太った奥様に向かう敵無し。
同類項のジジイに<頑張るんよ!>、声なきエールをMIHIセンセから1発。

「あのさ、ソックス買いに行こうや」
「良いわよ、何処?」
「せめて、日本をダメにすると噂のお店」

「3足¥999で良いの?チラシ入ってたから、きっと多いわよ」
「スーパーの3足¥498は、如何なものかと」
「んじゃ、そう言うことで移動」

「しかし、いつも安い上に更に値引きだから。不況じゃ仕方が無いかもオ」
 <デフレスパイラルは、あんがい自分たちで作っているんじゃないの?>

「真っ赤なソックス2足と、地味な紺色ソックス1足。ちょっと不満だけど、これでOKと。
「もしもし、お客様」
<な、なんや。ワシが赤のソックス履いたら、西から陽が上がるか?>ガン飛ばす。

「今日のチラシはお目に入ったでしょうか?」
<んなモン目に入れたら、すっごい痛いやろ。あんたのめん玉に、突っ込んだろか?>
「はア?」

「今日は特別に、4足で\999になってよろしかったでしょうかア」
「んじゃ、1足サービスなワケだ」
「そう言うことになりますけど、よろしかったでしょうかア」

<しゃーない、我慢したろ。しかし、もう1足も赤かねー>
「おろろ、赤地に細い白黒のラインが入ったBDシャツう。しかも\1000値下げエ。
 あー、イカン。手が、手が。ついでに深緑のもオ、\1000値引きイ」

 カゴには買う予定じゃなかったBDシャツ2枚の上に、赤のソックスがトッピング。
こうしてMIHIセンセは、日本をダメにするかもしれないお店でキレながら買い物。
翌日の円高不況デフレ記事に、「ファーア、景気悪いね−」団塊はため息1つ。

<停電には無力の団塊>

「ヘッ、なんであと5分したら停電なん。聞いてないよー、シャー無いパソコンでも」
「センセのパソコンは風力発電方式ですか、それともげんこつ衝撃発電?」
「屁アンモニア発電だったりして。窓全開で、本でも読も」

 いきなり停電を告げられた当直は、雑用書類の山が更に増高して。
寝転がって分厚い文庫本(江戸川乱歩全集)開けば、襲う睡魔。
本と顔の距離が1分で5cmとなり、その5秒後には息苦しくて目を開ける。

 被さった本を避けて、「はーあ、電気まだかいなア」ブツブツ。
コーヒー啜ってトイレ往復数度は覚醒を誘い、病棟を彷徨けば。
自家発電が心電図モニターピコピコさせ、ほの暗い中で怪しく光る。

「あのさ、電気分けてくれんね。医局へ、コード引っ張って」
「ダメですッ!電気の無駄遣いは」
「冷蔵庫の大切なモンが、腐ったらイカンやろ?」

「開けたり閉めたりしなければ、2時間くらい持ちますッ」
「時々チェックせんと、ネズミが咥えていったらイカンやろ」
「何が入ってるんですか?」

「んーと。ミネラルウオーターと、缶コーヒー」
「あとは、センセの脳みそでしょッ」
「時々外して冷やさないと、傷んでウジが湧く。コラコラッ」
「その乗り、中途半端。既に、酸っぱい臭いの脳みそ」

「フムフム、フリーマンさんが短編集「唄う白骨」で使ったって。
 最初に犯行を書いて、探偵が如何に推理して行くかの書き方。
 倒徐探偵小説というワケね。当時は、流行らなかったけど。
 これって、コロンボがパクってんじゃん」

 現代人は停電に対して無力で、諦めて爆睡した団塊の2時間。

<団塊パン拘い(どうでもいい)>

 漢字では「蒸餅」・「麦餅」・「麦麺」・「焙菱餅」・「麺包」らしいパン。
給食が子供をパン好きにして、米の消費量が減り小麦アレルギーが増えたパン。
米アレルギーもあるけど、小麦の比じゃ無い様な気がするほどパワフルなパン。
当直明けの病院米飯には手をつけないけど、わざわざ注文するのは気が引けるパン。

 焼けばフツーの触感なのに、サンドイッチで生なら凄いことになる食パン。
一囓りしてジュースを含むと、数秒以内にとろけて液状現象になる食パン。
焼けばそれなりに存在感があって、強めに焼くと香ばしくて好感が持てる食パン。

 メロンパンが油断出来ないのは、カロリーだけじゃなく食感。
粗目の砂糖をまぶしてあるのは定番で、皮の下がパサパサだとイカン。
だからと言って、フニャフニャのマシュマロ状態でもイカン。

 丁度良い塩梅って難しい、フランスパンの噛み心地。
売れ残って乾燥しきったガリガリ君じゃなく、焼いて固くなったガリガリ君。
表面香ばしく齧り付けると、割れた皮がポロッと落ちて中はやや弾力のフランスパン。

 こし餡じゃないとイケナイ奥様、ボク的にはどっちでもエエよあんパン。
ヘソには白ごまじゃ無くて黒ゴマでありたいでもクルミも捨てがたい、ボク的あんパン。
子供の頃にオヤジがお土産にたまに買ってきた、ノスタルジー的木村屋あんパン。

 団塊のパン生活は拘っているような、どうでも良いような。

<団塊のチチと遅々>

 秋も深まってくると、病院玄関に植えてある2本の松の手入れが始まる。
新年を迎えるための剪定作業で、早朝迷惑回診を済ませてスキマ時間が増え。
庭師の作業を学習させて貰うのが楽しみで、トイレの窓から5分ほど眺める。

 プロの垣根カットは大きな剪定ばさみを、細かく動かしゆっくりと進む。
せっかちな私なら電動トリマーで、一気にガガーッと行けばエエやんかと思うのだが。
匠の技は遠目じゃ分からなくても、近寄ってみると葉っぱや枝の切り口が明らかに違う。

 今朝は松の剪定だから足場も組み、大きなハサミを使うことはない。
いちいち左手で松の枝を摘んでは、手の中に入るほど小さなハサミでちまちまカット。
大きな木が3本だから、3人がかりでもあの速度じゃ1日1本が済みそうもなく。

 しばし匠の技を拝見して、もっと学習エンジョイしたいなと思いつつラウンド。
「センセ、Pさんの褥瘡チェックの日になりますけど。よろしかったでしょうかア」
「マニュアル通りの接遇か?それって」

「ハイ、居酒屋飲んべえのマニュア・・・んじゃなかった。どこかヘン?」
「ヘンじゃないところを探す方が、疲れるね。で、よろしかったでしょうかア」
「やれば、ちゃんと出来るじゃございませぬか」

「これの何処が、ちゃんとじゃッ!」
「まあまあ。直ぐキレない、キレない。大人げないんだから、ホントにイ」
「んで、褥瘡の評価は?」

「親と散歩する、思春期の娘」
「はア?なんですそれ」
「散歩は母とだけ、、チチと進まずみたいな。遅々に引っかけてんじゃけど」

 不出来なナゾ掛けに、ちょいと不満の午後。

<団塊は小酒井博士の探偵小説>

 昨夜の当直ナイトキャップは、残り僅かになった乱歩全集第24巻「悪人志願」。
「乱歩断章;小酒井博士と探偵小説」で、乱歩の圧倒的評価を得た小酒井医学博士。
医学部教授で探偵小説家と言えば、木々高太郎センセしか知らなかったが。
小酒井センセは東大卒で東北大学助教授から教授になると同時に結核が悪化し退職。
その後は名古屋で後進の指導をする傍ら、探偵小説家として活躍し40歳で没。

 乱歩は、探偵小説界の恩人とまで評価する小酒井不木氏の言葉を引用する。
「探偵小説を愛する気持ちは、科学的な推理を愛する気持ちであって、向学心と
 同じ性質を持つものだ。それ故、私のような学問をやっているものには、
 いっそう面白く感じられるのかも知れない」

 スキマ時間に、メルクマニュアル流し読みを済ませ再度飛ばし読みに勤しんでいる。
疾患毎に疫学・症状・診断・治療が羅列してある内科のテキストは、ある意味無味乾燥だが。
病名を見る時に以前に関わった患者さんの顔が浮かび、検査結果・治療経過・転帰に及ぶ。
ただし名前を思い出すのは、余程変わった名前か強烈な印象の方だけだ。

 初診時に雑多で複雑なワケの分からない症状を聞いて、先ず整理し。
診察と検査の後に、診断と治療に行き着くまではまさに探偵小説。
論文にして「症例報告」が出来るような患者さんに出会うことは、滅多にない。

 網を張ると言ったら語弊があるが、アンテナを張り巡らしていないと見過ごしてしまう。
アンテナというか蜘蛛の巣に係った獲物(これも語弊があるが)を、観察して。
どのように調理する(これも語弊があるかも)かは、腕次第と言うことになる。
誠心誠意で治療にあたり多くの方は元気になられ、場合によっては仕上げが症例報告。

 事件が起きて探偵は出動し、臨場の末に捜査会議(独りだが)の資料作りに入る。
現場に残されたものを分析し、犯人の目星が付けば本格的捜査は開始され。
犯人逮捕で事件解決、最後は捜査報告書を提出して事件が幕を下ろすのに似ている。

 プチ小酒井博士になった気分になるMIHI医学博士は、自画自賛のお気楽さにトホホ。
小酒井博士の作品を、アマゾンで注文しようと思う当直明け医局の早朝5時。

<しみじみ団塊の秋>

 闇が訪れると窓を開けた外から聞こえるコオロギの音、肌を刺激する冷気が心地よい。
世の中は目まぐるしく変化し、政権交代で益々ワケの分からなくなった医療業界。
しばしお手並み拝見と言うことになるのか?期待はしてないけど多少ましか?

 価格破壊は進み素材より色や形で選ぶ品、飽きれば処分で耐久性は何処へやら。
価格破壊をするには、素材や労働力を国内に求める手はなく。
発展途上国を経済的植民地化して、ある意味で搾取に近いような。

 白洲次郎が愛したツイードの上着は、着崩れさせてすり切れていてもそれが味。
良い物を大切に長く使う英国精神は、この国ではシーラカンスと同じ運命なのか?

 ネットを通じて、色んな物を注文して購入する人が増えているらしい。
色を確かめたり触ってみたり、ちょっとあててみてサイズを見たりはしなくて良い?
ちょいと写真に興味があると分かるのだが、太陽光ではない明かりは実物の色を出せない。
しかもネットを通じると言うことは、使っているパソコンの画像表現力に左右される。

 団塊の世代は新し物好きで、衝動買いより先ずはパンフ蒐集から入るのが正しい作法。
いったん決めれば余程のことがない限り変更はなく、まっしぐらの我々だったはず。
それでも足腰が弱ってると、「通販で良いや!」でこだわりを捨て去るのか?

 若いスタッフに勧められ借りたCD廻せば、自己満足的で飾りの多いやたらカタカナ歌詞。
一言、「これって、趣味じゃないんよ。何処をどう考えるとこう言うものが・・・」。
艶やかで時にハゲシク時に優しく、時にまろやか時にアンニュイ好みのジャズピアノ旋律。

 ほの暗くなってきた夕暮れ時、トリプル程のウイスキーに大きな氷。
グラスの中でカラカラ言わせるのが、ジャズピアノにはお似合いの合いの手だが。
禁酒して3ヶ月だから、ウイスキーを渋いお茶に変えるのも何だし。
こんな時にノンアルコールビールというのも、如何なものか。

 しみじみの秋を、しみじみ味わいたくなった団塊のオヤジの午後。

団塊の笑うパエリア(1)

「おろ?これって何て言う貝やろ?真っ黒で怪しくデカイし、ドブさらいで出そうな貝」
「そんなのを知らないの、バカ貝って言うんだけどねー。あ、ちょっと失礼」
外科の教授がトイレに消えると、講師のセンセがニタつきながらボソリ。

「嘘やからな、それはムール貝って言うんじゃけど。騙されたフリしとってね。
 それだけで教授は機嫌が良いんだからナ、頼むよ。マニラまで来て、気イ使うなー。
 次期T病院の院長を狙っとるんで、しゃーないか」

「そんなん、オヤジギャグでも何でもないやないですやん。まっ、エエか。
 そうです、それはバカ貝ですッ!でエエんですね?簡単やで。金づるは大切にしなきゃ。
 教授が椅子につくなり、この貝もボクもゼッタイバカですッとでも叫びましょか?」
「そこまでやると、いくら何でも教授も嘘がばれたのに気がつくから。ダメえ」

「イヤイヤ、教授うッ!このバカ貝、美味いッスねえー」
「クッ。そ、そうかね」
「パエリアには、やっぱバカ貝ですよねー」
「クッ。そ、そうかね」

 こんな会話は、30年前のマニラのとあるレストラン。下調べ通り、海岸縁にあって。
沈む夕日を眺めつつ、よく冷えたサンミゲル・ビールをいただくのがお似合い。
内科お気楽大学院生3人と外科教授と講師だから、グダグダしている部屋に電話がかかる。

「あのー、MIHI君達は晩ご飯どうするの?」
「そら、センセに奢っていただけるなら。是非ご一緒させていただきたいと。
 ここの貧乏大学院生一同、意見一致ですウ」
「まあ、物価は安いし。ボクは君らよりは金持ちだし、そうですね奢りましょ」

 観光スポット調査隊長の私は、有名スパニッシュレストランのチェック済み。
タクシーの乗り込めば、直ぐに口から出る何タラスペイン風名。
巻き舌英語の「イエス、なんたら**」、走ること15分。

「さて、何にしますか?先ずはビールと。銘柄は・・・あ、サンミゲルしかない!」
「センセ、パエリアっちゅーモンがあるらしいやないですか。それ行きましょ」
「あ、あれね。良いですよ」

「もしかして、センセは食べたことがあるんですか?赤坂辺りで?」
「イエ、スペインで」
「そらホンマもんですなー、凄いわ。本場とは遠く離れてるけど、マニラで初体験ですわ」

「あとは何にしましょか?」
「適当に見繕って、センセが頼んでいただけません?大学通りの喫茶ならねー。
 ハヤシライスとか、スパゲッティナポリタンとか。ミートソースとか、知ってるけど」

「あれは日本だけでしょ?じゃあ適当に・・・」
外科の教授直々にあれこれ注文してるけど、奢りと思うと気が楽で言いたい放題。

「センセ。なるべくでエエですから、日本じゃ食べられないものをいただきたいですねー。
 ゲジゲジの天ぷらとか、ゾウリムシの躍り食いなんてのはイヤですよ」
「そんな下手物は、ボクもお断りで」

 小瓶だから5人飲み助じゃ一気に10本は直ぐ空になり、追加も5本単位。
15本が空いた頃にお出ましのパエリア5人前は、タライサイズの黒い鉄ナベ?
貝やらエビやらワケワカラン魚介類を、黄色いご飯の上にばらまいて登場。

「センセ、これって。海鮮カレーチャーハンとちゃいますかア?」
「MIHI君、カレーの匂いしないでしょ?」
「あ、ホンマ。漢方薬みたいなクッサイ匂いじゃけど、ビールが有れば我慢出来そう」

 これがボクのパエリア初体験であった。
そして昨夜、MIHIセンセ夫婦は「笑うパエリア」の初体験になったのだ。

団塊の笑うパエリア(2)

 ミニコミ誌に、パエリアの写真を見つけたのが運の尽き?
分かりにくい地図を頼りに、探し求めてやって来た田舎の小さなレストラン。
駐車し放題の空き地に、車を寝転がせて置いても良いような気になりつつ。

 ガラスドア越しに覗くと、中はひっそり開店休業状態「一応やってますウ」。
脳みそを横切ったのは、宮沢賢治の「注文の多いレストラン」。
2時間後の勝手口ゴミ箱に、MIHI夫婦の骨がゴロリとかはゴメンですウ。

 入るのを3秒躊躇していると、中のおばちゃんと目があって踏ん切りがつき侵入。
「何処でもよろしいですよ」と言われても、何処に客が居るのやら?ワシらだけじゃんッ!
手は奥のテーブルを指し、「食べて精算するまでは、ゼッタイ逃げられないかんね!」風。

 お尻に刺激がある固い椅子に腰掛けると、目の前のチラシが気になる。
「クリスマスディナー、30人まで」って言っても、クリスマス後2日目。
「あと30人分残ってますけど、如何ですか?」を訴えそうな目が気になりつつ。

 壁を見れば大きな写真入りで、「冬は熱々のパエリアは如何ですか?」。
思わず「やっぱ、冬はナベ。ナベならパエリアですよねー」、写真に指をさす。
でも初体験は夏の終わりじゃったけど、よろしかったでしょうか?みたいな。

「あらら、懐かしいスパゲッティナポリタンもあったりして」で注文。
生ビールがあるはずもなく、瓶1本ちびちびウグウグしていると。
香ばしさをちょっと通り越した香りが漂ってきて、「もちょっとであの懐かしの・・・」。

「これって注文したヤツですよね、ドライパエリアでしたっけ?」を飲み込んで。
1/2に縮んでしまった色白ムール貝(もしかしたらホントのバカ貝?)は、貝柱は力持ち。
フォークを差し込むと、貝柱が「何すんのオ、嫌がってんじゃん」と力むから。

 フォークに捻りを加えて、ミシミシと貝殻が嘆くのを無視すれば身と殻が泣き別れ。
身の芯から出る汁は異常に熱く、味蕾(舌のブツブツで、味を感じるところ)35個焼死。
取り皿を置きながら、「火傷しないように」って言われても手遅れだぜイ。
舌がピリピリして、もう味がワカランぞッ。

 せっかく出来上がったサフラン色の海鮮チャーハンを、またまた熱したお米の乾燥具合。
当然ナベの底はへばり付いた米ばかり、隙間をびっしり埋めてフォーク攻撃に目一杯抵抗。
意地になってフォークを差し込めば、ガリガリ乾いた音が耳に新鮮かもオ。

 アサリの身は完全に水分を失って、殻の端っこに情け無い姿でへばり付いている。
エビの殻は、厨房火事後に発見された残飯で見ることが出来そうな半焼焦げ焦げ。
何もかもが脱水症か半火傷だから、歯ごたえだけはこの世のモノとは思えない修行状態。

 かりんとう状態になったエビの殻を、ポリポリやってはビールで流し込んでいると。
「お待たせしましたア、ナポリタンでエーす」
「ヲイヲイ、。れって、ハヤシポリタンとちゃうんかいッ!」
薄めのデミグラス色の汁に沈みかけているパスタは、どろ船のカチカチ山タヌキ状態。

「ナポリタンって、こんなだったっけ?」
ブブッと吹き出した奥様に、「ホントにこれナポ」まで言いかけたら。
後ろを指さすサインは、「後ろに、おばちゃん居るわよ!」。

 帰りの車の中は、超ドライ・パエリアとハヤシ・ポリタンで涙が出るほど笑って。
パエリアでこれほど盛り上がる事が出来るレストランは、タダモンではないと思った夜。
あと5分で家と思った途端に歯の間から固い米粒が外た、笑うパアエリア初体験。

<団塊のかの国>

 20年以上使った黒革システム手帳、留め革ベルトの金属ボタンの一部が取れて。
修理に出したけど3週間経っても何の音沙汰も無しに苛つき、一言文句を言いに行けば。
外資系の会社の修理は、「ペンだと3ヶ月以上かかって治ってきた」が言い訳になる。

 国産じゃあり得ないことが、外資系じゃフツーらしい。
確かにかの国のツイードジャケットなど、真新しいものは粋じゃなく。
着古して馴染んできた頃が最高に向かって行く状態だから、穴が開いても捨てない。

 ましてやすり切れるなんて気にしないと言うより、ごく当たり前の着方。
すり切れた肘の部分に鹿皮のパッチを当てるのも、それなりに素敵と思うかの国。

 わが国の衣料メーカーが出店したものの、集客できずに撤退して。
作戦変更で息を吹き返したが、かの国の特性を読み間違えたのか?
気に入った良い物を、穴が開いても使い倒す精神は昔はフツーだった。

 膝や肘に縫い付けられたパッチは、特別な物ではなく日常であった。
垣根代わりのバラ線の間を上手く通り抜けたつもりでも、作ってしまうかぎ裂き。
3人に1人は縫い目のある大小様々のL字をズボンに付けて、一張羅は遠足と学芸会だけ?

 そんな少年時代を過ごしたボクのオヤジだから、物の大切さ特に衣類にこだわった。
穴が開いて繕った物を着た記憶はないが、おかげで最近まで襟や袖がすり切れるまで着た。
まだ新しくても流石に穴が開けば、泣く泣く処分の対象になるが。

 還暦を過ぎれば今までほど行くところも少なく、着るものの数はさほど必要ではない。
ぼつぼつかの国の人々を真似て、旧い物を大事に使う精神を見直そうと思う。

<団塊オヤジマスク>

 フツーの手術用マスクは、鼻にぴったり装着できるとは言ってもすきま風スーカスカ。
せめてもの抵抗でマスクの中に、折りたたんだティシュを挟み込めば人混みの中でOK?
息を吸う度にティッシュが口を塞ぐように向かってくるから、軽い動きもままならぬ。

 それでも家族のため孫のためならエンヤコラ、団塊オヤジはマスク。
これほどインフル騒ぎが大きくなれば、イヤでもこの田舎でもマスク装着率は高まる。
勤労感謝の日、夫婦でスーパーなら当然マスクと言うことになるのだが。

 正面から接近するオヤジマスクを見て、驚いた。
口だけにマスクが覆い被さって鼻丸出しだから、ウイルスを鼻から吸引するパワー増大。
かと思えば試食の度にマスクをずらし下げるのは良いが、マスクにワケワカランシミ。

 いい加減さが災いして、つい試食しようとしたウインナーがマスクに激突したらしい。
「どれでも変わらん。早く、早よせんか!」と奥様を急かす時はマスクが下がる。
その回数はスーパー滞在時間に比例するようだが、反比例するせっかちオヤジも居る。

 入り口の喫煙コーナーでマスクの横からたばこを突っ込んで、スパスパには驚いた。
いっそマスクに穴を開け、そこからたばこを突っ込めば良いじゃんと教えたくなった。

<団塊のインフル統計>

 1施設当たりの受診者がおよそ1人減を報道すれば、自宅じっと我慢人は?と返す。
インフル騒ぎの昨今だから、熱が出れば休日だろうと無かろうと治療を受けるはずだが。
休日診療で風邪も上気道炎もインフルもチャーハンの中、検査で大騒ぎ。
状況証拠を元に、「ハイ、インフル。しかも新型か?。タミフルね」のずる休みかも?

「かも?」が「かも?」を呼ぶ統計処理の中、フツフツと湧く疑問カモン。
じゃったら新型が増えるはずじゃけど、もしかして報道より更に減った?逆にイ増えた?
加熱し過ぎて反省した情報と危機感をあおる情報が錯綜し、ますます昏迷を深める。

 身辺で発生率を考える時、子供さんが熱を出し検査もせずに新型インフルと言われて。
季節性も新型も治療はほぼ同じだから、投薬を受けて3,4日もすれば幸いなことに元気。
親であるスタッフは、季節性インフルのワクチンは受けていたからやっぱ新型やろ!と。

 お役所への報告は新型一辺倒で、うなぎ登りの統計処理となりマスコミへ伝わる。
新型がバンバン増えてまっせーと報道され、季節性は昨年より統計上減ったんか?
厳密なようで曖昧な(と私は勝手に思っている)統計だから、一歩引いて考えねば!

 発熱などの症状出現から検査までの時間差も人それぞれで、一定していないバイアス。
ましてや感受性も人様々で症状にも差があり、感染に気付かないのも人様々のバイアス。
無いと思いたい誤診と誤判断、報告の手抜きや不適当な過剰反応のバイアス。

 B型なら季節性でA型だとPCRはしなくて良いは、確かにそのヒマも金はないけど。
情報操作が入ってんじゃないの?と、ミョーなバイアスを勘ぐるヤツも居るかも?

 曖昧な診断を受けた標本は数だけはやたら多いから、正規分布するはずだが。
元が曖昧な正規分布から統計処理で出された評価は、あくまでもファジーでしょ?
その他にもやたらめったらバイアスがかかって、ワケワカランッ分布になってない?

 それで踊らされた国民は、曖昧なまま有効性に疑問のマスク装着率は劇場型。
これじゃ、純ちゃんの郵便局ぶっ壊し劇場と変わらないような気がするのは私だけ?
流石に田舎のこの地のマスク装着率は田舎率で低いけど、挨拶されると「ハア?誰」。
私なんかスーパーで大きなマスクを装着しても、体型と格好で「あ、MIHIセンセ」だぞ!
しかもマスクをしているのは、男ならジジイ以上ジジイ未満ってどういう事?

 お気楽精神に溢れるメキシコの論文じゃ、成人以上の年齢なら新型にも多少免疫あり?
その上に季節性インフルワクチンも、多少は新型に効果が有る?などのお気楽精神。
多数の死亡者が出て、話題になり始めたのは何処の国だったっけ?

 インフルの統計を聞く度に、団塊に出る「それホンマ?」。

<団塊の統計はカオスだ>

「あのさ。大きいアリンコと小さいゾウを比べると、どっちが重いと思う?」
「そらゾウでしょッ!決まってるわよ、アホな質問しないで下さい」
「アリンコの大きいのは3mって見たことない?手乗りゾウって知ってる?」

「あーやだ、また無駄なセンセにとっ捕まっちゃったワ」
「大きいとか小さいって、気持ちの問題?20kgのあんころ餅は確かにデカイな。
 大小の定義がゼンゼンはっきりセンとこへ、ゴジャゴジャ言うんが統計らしいで」
「辺り構わずゴジャゴジャ言うんが、MIHIセンセ」

 9冊も統計の本にガンを飛ばし分かったつもりでデータを整理しようと、はてさて。
この手の本の表紙に「入門」と書いてあっても、入門のようで入門じゃない。
如何にも厳密なようで曖昧模糊としており、現実感が乏しく具体性も無く言葉が霞む。

 例えば「標本数が大きければ、母集団の分布系にかかわらず、標本平均値の
分布は正規分布に近似的に従う」と、さらりと言ってのける中心極限の定理。

 んじゃ、この「大きい」と言う定義は具体的に幾つからなんや。責任者出てこいッ!
例えば、メチャメチャ大きいは1万以上、結構大きいは7450以上とか。
ゾウ並みに小さいは753以下100Kgまで、ダンゴ虫並に小さいは3g以下みたいな。

「¥1000を大きいと思うか、小さいと思うか」は、比較や気持ちの問題。
私の小銭入れに¥30しかなかったら、¥1000は大きいと思う。
\1万がぎっしり入ってたら(そんなことないけど)、¥1000は小さいアリンコ並。
ナゾがナゾを生む統計はカオスの世界?と思っていたら、次の欄にあるんですね。

「この定理の条件はかなり緩やかで、母集団がどんな分布をしていても、
また、標本数が10-20程度でもなりたちます」と。

 どっちがどうなんじゃいッ!、んならはっきり言いなさいよ。
「標本はせいぜい10は欲しいけど、20なら御の字だあね。あとはテキトーでエエ」と。

 まあ、バクチに勝つ方法を考えているうちに生まれたような統計学。
ディベートに勝つには統計用語を駆使して煙に巻き、相手が混乱しているうちに勝利宣言。
噛めば噛むほど味が出るのがスルメ、読めば読むほど意味が分からなくなるカオスが統計。

<団塊のための茶ラブ哲判決>

「こ、コラッ哲。ゆ、許さんッ。訴えてやるウ」
「ワフッ。んだって、おじちゃん急にバケツを落とすからイカンのよ。
 驚いてチビッた所に、ちょうどおじちゃんの足が」
「ワンニャン裁判で、決着つけてやるかんな。町内会初の、裁判犬5匹参加のヤツ」

「そこまで言うか!んで、検察犬としては散歩禁止16日を主張するワケね」
「弁護犬としては、おじちゃんとバケツがなかったら事件は起きなかった。
 まっ、過失割合を哲が30%でオネガイします」
 と言うことで、粛々と”哲のシッコ引っかけ事件”は審議され4日後に裁判は終わった。

「こちらは遠吠え通信です。ではここで元検事犬ホッターさんにお聞きしましょう。
 検察犬側は禁固16日と言っておりましたが、如何でしょうか。ワウッ?」
「まっ私が現役だった今までなら、求刑は12−14日でしょうねー。私、京東ワン大卒。
 念のため申し添えますが。新しいシステムの、裁判犬裁判ですから」

「4日間の審議の末、禁固15日という判決が下りましたねー」
「そうなんですよ、意外な結果が出ましたねー」
「ああ言う場合、どうなんでしょうか。最初の16日の意味は?」

「そうなんですよ、誰もが初めてのことで。駆け引きはどういう形で?」
「アンカリング効果って、ご存じですか?」
「アンカの丸いヤツは、四角いヤツより暖かいゾ!みたいな?」

「んじゃなくて。例えば、MIHIセンセの今朝の体重をアンケートするのに。
 設定する数字によって答えが変わってくるワケですよ、良いですか。
 80Kgよりどのくらい離れているか?と、60Kgじゃどうか?みたいな」

「んで?」
「きつめの服を着てると太って見えるでしょ?あ、どう見てもデブ!
 ゆったり目の服を着ると、さほど太って見えないし。あ、やっぱデブ!ワウワウッ。
 ああたね、私にインネンぶちかましてるの?」

「たかがセンセの体重ぐらいで、そこまでは・・・」
「設定を80Kgなら答えの平均は、そこまでは無いやろ!9kg引いとこで71Kg。
 もし60Kgなら、違うかもよ。見栄はるんじゃネーよ、もっとデブやろ!
 13Kgじゃ多すぎるから、1桁ギリギリの9Kgほど足したろで答えは69Kgなワケ」

「それと、アンカがどういう風に繋がるんですウ?」
「アンカじゃなくて、アンカーですわ。錨のことでね、何処へ錨を打ち込むか?
 数字の設定が犬の心理に影響を与えると言うのを、アンカリング効果ってんですワ」

「裁判犬の量刑判断に、検察犬が言った16日のアンカリング効果はあったんでしょうか?
 どうせ私らが言う日にち設定より、裁判犬は少なく判定するでしょうから。
 それを想定して2,3日重く言っちゃうゾ!みたいな」

「確かにあるかも知れませんが、それじゃあ悪をくじく正義の味方が泣きますね。ワウ」
「検察犬側も判決が以外に重く判断されたと言ったとか、遠吠え報道があったでしょ。
 もし検察犬側が散歩禁止15日と設定したら、どうなっていたんでしょうね?ワフー」

 こんな他愛の無い会話をしたのも忘れそうな哲5周忌2015年の、夏。

<団塊の1億総無防備化>

 買い物に行くと、色んな物が見えてくる。
価格崩壊の1つかも知れないが、¥980の衣類の生産地は日本ではあり得ない。
じゃあ中国製かと言えば、発売中国・製作東南アジアの国々となっていて。

 世界の工場としての中国では、低賃金を元にした低価格の構図が崩れてきた。
工場は低賃金を求めて移動し、一部の裕福な層が産まれて格差を残し移動し続ける。

 異動先でしばらくすると富裕層と新しい格差を産み、市場原理のあだ花が咲き乱れる。
物作り構造破壊をもたらした、規制緩和と市場原理主義を推し進めた責任の所在は何処?

 区別を差別と混同させて昏迷を深め、昭和の一億総中流現象は死語となった。
裕福度が幸せ判断の物差しになった上に、その目盛りが不揃いで統一性に欠ける。
何もしないことに理由を付けるのは上手だけど、我慢するのは不得意なようだ。

 これだけインフル騒ぎが大きくなっても、混み合うスーパーでマスク装着率は低い。
薄っぺらなマスクを付けている上に、口だけに当て鼻丸出しは目一杯の無防備。
ウエットティッシュ2枚重ねで鼻を押さえ、かすかなアルコール臭で安堵感を得る私。

 1億総無防備化をもたらした犯人は、一体誰なのか?
私の信条「コツコツ地道・お気楽・適当」は、どれも似合わなくなった昨今。
政治ショーに翻弄されて先が見えない時代、せめて自己防衛の備えを十分にしたい。

<団塊の団扇とコタツ>

 昭和45年頃の医学生の下宿は、6畳一間なら良い方で。
一般的には風呂無し、冬場は銭湯回数減。共同トイレは落下式、異臭が思いっきり漂う。
毎夜必ず何処かの部屋で、ワケのワカラン喧々がくがく。

 進む酒量に声は高まり濃厚ツマミ臭の吐息で充満、ブタも逃げ出す場末のゴミため。
電源無視のコタツに掛けられた古毛布は、出所不明のシミやらひび割れた米粒あちこち。
手当たり次第引っ張れば、毛布の一部と共にブシッと音を立ててコタツと泣き別れ。
タバコで焦がした穴は満天の星の如く、温めた手を引っこ抜く時にやたら引っかけ。

「おろ?こんな所に空気抜きってか、お前にしては洒落とるやないか」
「5cm以上大きくなると、風が通ってスースーするから。注意せえよ」
「足の臭い抜きには、大きい方がエエやろ。こうやって・・・ほれ、絶好調う」

 それからおよそ40年、団扇はオブジェでコタツはカラフル長方形。温度環境はエアコン。
住居とはお世辞にも言えない学生時代の環境をすっかり忘れ去って、まさかの綺麗好き。

 休日ともなると雑巾片手に拭き掃除、フロアーに寝転べば気になるホコリ。
使い捨てモップの柄は目一杯伸ばして、ピカピカフロアに描く直径2mの円。
サッシをぬぐう太短い指は、ドラえもんの「何処でもホコリセンサー」。

 自分の家だけに止まらず、医局の机周りはマイ雑巾で拭き拭き掃除。
しょっちゅう模様替えして、その度に3ヶ月以上触れなかったものが消えて行く。
かなり長期間エアコンとコラボでお世話になった扇風機、ホコリを取って冬眠へ。

 ふと見る壁の貼りものパラパラ、縦横揃えて3ヶ月見なかったモノもポイッ。
半袖BDシャツに薄手の綿パンは、冬支度とは言えないけれど。
身の回りだけが、冬支度の始まった団塊の午後。

<団塊は乱歩的に臨床>

 常々、「臨床はサスペンスだ」と思っていたのだが。
昨夜の当直ナイトキャップ(江戸川乱歩全集第24巻、悪人志願)で、やっぱね!となった。

「雑感:169頁」にあるのだが。
「探偵という言葉は実に広い意味を持っている。先ず学問の研究が一種の探偵だ。
推理、演繹、帰納、それらは凡て探偵小説のテクニックである」と。
この「学問の研究」を、「臨床」に置き換えるだけで良い。
名探偵明智小五郎とまでは行かなくても、明智プチ五郎になりたいものだと思う。

 昨年に手に入れた、「メルクマニュアル(内科書)」。
久しぶりに買った赤鉛筆1箱、ナイフで削って頁を走った。
2度目のお復習いも1/3進んで、さほど新しい発見がなかったのが嬉しい。
ペン立ての中の1/4もすり減っていない赤鉛筆が、サボりかけると私の尻を叩く。

 「あ、そうそう」は小さなことを言えば星の数ほどでなく、小川のメダカ程度はあった。
そのメダカが時にフナになり、事件解決の手がかりとして役に立つこともあって。
大枚を叩いたのも無駄ではなかったと思いつつ、ちょっとだけ自画自賛。

 心の師匠である沖中重雄先生は、誤診率5%(たしか)と医師生活を振り返った。
かく言う私も内科医になって30年を軽く超えたが、誤診率など恐くて考えられない。
大過なくやってきたものだと思うのは、大いなる勘違いなのだろうか?

 私の医者生活を振り返るのは未だ早い、もう少し走り続けてからにしようと思う。
乱歩的に臨床を楽しみながら、誰かの役に立てればいいなと思う団塊明智だ。

<団塊のゴールドベルク>

 明けはなったリビングの窓から、爽やかな風がレースのカーテンを揺らして心地よい。
陽に焼けたフローリングを、ちょい高級なハンドクリームで2度塗りすれば人肌復活。
出来具合に満足しつつ庭を眺めると、あちこちが気になり始める庭作業日和。

 小さなオレンジの花を付けてくれるのは良いのだが、やたら遠慮せずはびこって。
ニラ似の葉を持つ球根を土と一緒に引っぱがし決着がつく頃には、腰に来て「イテテ」。
20個ばかり実をつけた梅の枝をカットして、実に風を当て「大きくなってネ」ポロリ。

 色づき始めたサクランボの木に、「ボクのだかんね、食べたら許さんよ」鳥よけネット。
グルグル巻き付ければ、昨年200個だったのに今年は50個は愛おしく。
薔薇の根元の雑草を猪八戒熊手で、一網打尽に削り取り辺りすっきり腰さらに「イテテ」。

 観賞用の野イチゴは地下茎で増えて、可愛いい赤い実が線状に並ぶ。
周りの雑草を引けば、花壇の中で赤色が浮き上がりやたら目立つ。
鳥が見つけて突っつかなきゃ良いのだがと、新しい心配。
明日の焼きいも作業も準備万端、後はホカホカいただくだけ。

 鉢植えに散水する頃には喉が鳴り、家にこもって自分の喉へ散水(ビール)は今は昔。
BGMは久々のバッハ「ゴールドベルク変奏曲」、煌びやかなチェンバロが懐かしいのは今。
CD1枚が終わる頃にはほろ酔い加減。眺める庭も心もすっきりは、禁酒じゃ今は昔。

<団塊ファッション>

「あららー、センセ。いつになくお目出度い色づかい、小銭を拾った?」
「やっと衣替えしたんよ、今日の昼から」
「んで、センセのお洋服は奥様が選ぶんですか?」

「イヤ、殆どワシ。自分で。んでも、奥様チェックが入る。
 なんせ、ワシって地味なんで。お父さんもう少し派手にしたらって良く言われるんよ。
 学生時代のあだ名が、ジミーって知ってた?あ、知らん!」

「無視、無視。そうそう、Kさんのご家族が仰ってましたよ。センセのこと」
「キムタク似ってか?もしかして、ブラピ似?ワシって、日本人離れ(語尾上げで)」
「それって、人間離れ?んじゃなくて、あれが還暦ジジイの服装かって。
 ちょっとだけ、あたしが脚色しましたけど」

「ゼンブ、あんたの脚色じゃねえの?」
「そうそう、Rさんが。何か具合がヘンだから、MIHIセンセの顔が見たいって」
「ラジャッ」で、Rさんの部屋。

「やっぱし、衣替えしたんですね。年に似合わず若風で、よろしゅうございます」
「んで、何?何処がどうなんよ?悪いって」
「MIHIセンセの格好を見ないと、話題に事欠いて体に悪い」

「MIHIセンセ見たら、もっと体に悪かったりして」カーテンの向こうから、ブー2号参入。
「あ、ここに居たんだ。9368号室のZさんも、MIHIセンセが見たいって」
「ここんところ、急に人気モンになった感じイ」

「勘違いの感じイ」
「はあーい、Zさん元気?ワシ担当じゃないけど」
「もうエエ、充分見た。今日も何と若ぶりな。ワシの若い頃そっくりじゃ」

 Zさんを縦横斜めに見つめてそっくり部分を探す団塊の、午後。

<虎とエバンスが団塊に残す>

 生き物はいつか死ぬわけで、世の中から消えて10年もすれば記憶からも消えるのが常道。
その点、音楽家は素晴らしい作品を残せば何時の世になっても瞬時に蘇り。
演奏という形で人々の心を揺さぶり続けるから、音を聞く度に新しい記憶として刻まれる。

 つい最近、2ヶ月前に予約していた我が心の師匠の6枚組CDがやっと手に入った。
恐らく100枚を超すエバンスコレクションに、真打ちとしてラックに並ぶことになる。
生誕80年記念と言うことで、1960年ライブハウスで録音されたものを復刻させた。

 ライナーノーツを見ていると、6枚目の最後の曲は尻切れトンボで終わっているらしい。
熱狂渦巻く中での長時間録音の故に、テープが足りなくなってしまったのが原因だそうで。
この週末に音を出すまで、ひたすら待つことさえも楽しみになってしまう。
エバンス死して素敵な演奏を残したのを、有り難いと思う。

 子供の頃はシュバイツアーと並んで心の師匠だった野口英世センセ。
最近になって知ったのだが、アヤシイ論文を書きつつ偉人伝の人になった。
ひたすら苦労人だったことが幸いして、検証された論文の誤りは少しずつ薄れて行き。
幾度となく恩師から借金した金で、遊び呆けても偉人としての輝きに錆びを付けない。
虎は死して皮を残すように、今のところ野口センセは忘れ去られることはないだろう。

 昨日の午後、代休を利用して臨床研究データを考察するための文献をやっつけた。
医局の机に座って文献を読むのは、何だか落ち着かなくてうまくないことが多い。
そうでなくても集中力がない上に、周りに色んなモノがありすぎて気を散らす。

 「それしか出来ない」と言う状況に自分を追い込んで、40分くらいなら集中が可能。
デパートの地下、ひっそり置いてあるテーブルは絶好の場所だ。
集中力が増してくるとどんなBGMも耳に届かなくなり、山深き山中の修行僧の風。
辛抱が足りないからもって40分、最大でも60分が終了すると一汗かいた気分。

 確証バイアス的に文献を自分の論証につなぎ合わせ、自画自賛の仕上げが待っている。
虎は死して皮を残すと言うが、こんなんじゃMIHI死して恥を残すになりかねない。
残したのが、「よくもまあ、こんなアホなことを研究したモンだ」の驚きでも良いかも?

<団塊オヤジの買い物心得>

 先が短くなったからと言うわけではなかろうが、団塊の世代はせっかちなヤツが多い。
一方で凝り性のヤツが多く、すこぶる付きのこだわりを持っているから始末に負えない。
かく言う私もその中の1人なのだが、物欲にはこだわりを持っている。

 ネット購入みたいに実物を触って見ず物を買うなんて、それ程お人好しではない。
気に入らなかったら返品すれば良いと言うが、交換品が来るまで待つ余裕がない。
買うと決めたら直ぐに手に入れて、一刻も早く手に馴染ませて手名付けたいのが当然。

 お店に行ってから買う物を選ぶのは、よほどの緊急時だけで。
弁当を買う時でさえシミュレーションをして、2,3の候補にまっしぐら。
唯一の分岐点は、「季節限定、スペッシャル、3個限定で残り3個」の時か?

 買い物も1人で行くなら大きな問題はないが、女性が加わると様変わりする。
1人と2人では単純に倍時間がかかるわけではなく、1桁跳ね上がって10倍になる。
女性が3人なら100倍で、買い物を終えた頃にはベビーカーの赤ん坊が老人になる。

「これが良いかしら、それともそれか、あっちかしら?」
この言葉だけは、耳に手を当てても良いから聞こえなかったフリをするに限る。
ひとたび意見を言おうものなら、気に入らなかった時は電気椅子に座る覚悟が必要だ。

 そう言う時は「これッ、これしかないッ!」、迷う前に指さし示すことだ。
出来ることなら商品がへこむくらい強く指を押し当てると、効果があるかも知れない。
そんな勇気がなければ、いきなり認知症風に「出発進行、桜はカバかッ!」と叫ぼう。

 それが出来ない根性無しは、「これで良いわ」が出現する時期をイタコに聞こう。
例えそれが3万年後でも、時が来るまでひたすら沈黙するしかない。
それが、団塊オヤジの買い物心得第9条第5項と言うものだ。

<老いて孫に教えられる団塊医師>

 私の世代でも一部かもしれないが、臨床に関わり始めた頃の師匠は体育会系で。
質問するときはかなり下調べをしてからじゃないと、頭ごなしにどやされたものだ。
「患者さんは先生」を地で行く人だったから、「今日は何を教えてもらったんね?」連発。

 それからおよそ30年、患者さんに教えてもらい続けて来た。
人に教えるのは元来得意じゃなかったのに、一時はパラメディカルの学校の先生をした。
その時も学生さんからいろいろ教えてもらい、大いに反省をすることがあった。
授業中は鼾をかかない、最前席で後ろのヤツと話しをない、音を立てて食べない等々。

 今年2日目の遅い夏休みをいただいて、統計本をパラパラやりながら孫に遊んでもらう。
目線を会わせて寝転がりながら、10月だというのに短パンジジイの私だ。
すねのあたりの違和感を感じてふと見ると、孫がすね毛を引っ張っていたり。

 おもちゃをガチャガチャ言わせていたのに、急な静寂と思ったらすわ地震か?
仰向けで広げた本がゆらゆら揺れるのは、端をつまんだ孫が引っ張っていただけだったり。
いきなり視界がピンク色!と思ったら、私の眼鏡をつかむ孫の手だったり。

 本を置いて同じ目線に会わせ本気で遊ぶ体勢をとると、ステレオラック下のホコリ発見。
フローリングは拭き掃除したはずなのに、拭き忘れ2カ所発見したり切った爪が1かけら。
見上げる棚の上に、地震が起きたらすぐ落ちてきそうなものが目に入ったり。
オリエンテーションでよく使う、「クライアントの目線に会わせろ!」やん。無関係?

 暑がりのジジイの孫だけに扇風機大好きだが、コンセントを繋ぐコードはもっと好き。
力がついてきて思いっきりコードを引っ張れば、10cmは移動する扇風機に危険を感じ。
マットをかぶせるとコードを引っ張らないのは、彼女は見えるもの即ち存在か?

 そう言えば「そんなの見たことがないで。ホンマか?ウソやろ」は常套文句。
ジッちゃん見えるものだけが「存在」と思ったらイカンよ!、老いて孫に教えられ。
まだまだ続く臨床生活に、老いなくても患者さんに教えられまくる団塊医師。

<団塊の弱点は最強点>

「雨の日に、長靴じゃ締まらんし」と言うことで、サーチした靴屋さん。
「あららー、半額セールのワゴン。しかも、サイズぴったし。しかも合成皮革。
 雨雨降れ降れ、ジジイはルンルン傘振り回し。犬はコタツで丸くなるっと」

 ソールが固いのが気に入らなかったけど、崩壊価格と紫がかった紺色がミョーで。
「ジジイ、買ってね」って訴えているような妄想に駆られ、連れて帰ったのは良いけれど。
50m歩くと膝と言わず太ももと言わず、嫌な感じが強くなる罰ゲーム靴みたいな。

 特殊ウレタンフォーム中敷きを挿入すれど、膝の負担は57mに限界が延びただけ。
左膝を痛めて復活したが、弱点であることには変わりなく。微妙な変化に敏感になった。
このワゴンから連れて帰ったスニーカー、右足は何ともないのに左足が嫌う。

 視覚障害者の方が、一般人にはない鋭い聴覚野触覚を持ち合わせていると聞く。
その上、「1病息災の方が元気で長生き」と言われるようになった。
ボクの左足の弱点は、感受性からみれば最強なのかも知れないと思えてきた。

 丸いモノも、モノは考えようで四角にもなれば三角にもなるみたいな。(違った?)
そう思いつつ外来をしていると、Uジッちゃま悩みつつ侵入する。
「センセ、ワシはどうかなったんじゃろうか?」

「鼻も1つじゃし、目は眼帯を外せば2個有ると思うけど。てっぺんの毛も7本。
 鼻毛はほぼ白髪、2cm飛び出しているのだけ金色は2年前から」
「そんなんじゃなくて、汗がやたら出るんじゃ。みんなはサブイって言うのに」

「ホレ見てん、ワシのデコチンじゃって汗グッチョやろ。ホエー、あぢぢ。
 温度計と湿度計を兼ね備えてると思えばエエ」
「ワケ分からんけどなー」

「若い証拠じゃってーのは、ダメ?」
「95じゃで」
「逆立ちすれば、59やろ」

「それもワケ分からんな−」
「ワシなんか逆立ちしたら、メチャメチャ若いッ!」
「センセはエエなー、何でも自分に都合の良いように考えられて」

「それが特技じゃね、逆立ちは出来んけど。多少の強みかな?」
「ったく、センセは悩むことはナインか?」
「悩まないのも強みかも?」

「それが出来るには、どうするんじゃ?」
「分かるまで待とう、お気楽ワシとホトトギス。そこが弱点っつーか。強み」

 団塊の弱点は、最強点。

団塊はクリーンアップの日々

 休日は当直明けで5時起き、机周りをクリーンーアップ。
内科書2回目流し読みパラパラ、コーヒーずるずる啜ると帰宅時間。
座敷童B君が真夜中3時に遊びに来たから、朝の空気を吸い込んで大あくび。

 休日朝もいつもと変わらない時間に起き出して、冷えた空気の中で洗車開始。
額に汗が滲む頃に洗車終了と奥様登場が同時時間、しつこくコーヒー啜ってフルーツ。

 プチハングリー的生活で体脂肪をプチクリーンアップして、高校時代の体重を獲得。
還暦を過ぎてユニクロを卒業しようと思い、衣類のクリーンアップを図ることにした。
肌触り・着心地・色使い重視、今後死ぬまで買い換えないだろうから値段より納得優先。

 襟がすり切れる頃に、着慣れたものと自分自身をクリーンアップの手はずでOK。
エバンスとキャノンボールアダレーのセッションを廻し、久しぶりの物欲フツフツ。
10-22mmショートズームレンズ(キャノン純正)、定価はお気に入りポロ9枚分。

 ついでに、花型レンズフードとレンズプロテクターを奢っちゃったりして。
ちょっと悩んでみつつ、カタログだけでも魅力が十分心を揺さぶりまくり。
気付けばデジイチに装着していた午後、カメラ関係物欲はクリーンアップ不能。

 この世に存在して見えるものは考えないのに限るし、見えない物はワケワカランッ!
物は墓の中まで持って行けないのだから、最後は裸一貫で良い。

 さっぱりと身辺も心もクリーンアップした、休日。

<週末の団塊は雑用日和>

 季節の移り変わりを感じてシャワーを浴びれば、10年前は85Kgまで増量した我が肉体。
禁酒効果で瞬間風速70Kgの大台を割り最終64.5Kg、スポーツドリンクが呼び戻す0.3Kg。
衣替えじゃん!と言うことで、渋めのサスペンダー付きジーンズから短パン。

 洗濯機が綺麗にしたぬいぐるみを天日干しすれば、「あぢぢー、短パン最高ッ!」。
衣替えは11月の風が吹く頃になりそうな予感、本格的な秋は12月にずれ込んでしまいそう。
ボローニャだかエルニーニョだか知らんが、これも異常気象の影響か?嗚呼、短パンの幸。

 スティショナリーショップで、手のひらサイズメモ帳詰め替え用紙5個購入。
このメモ帳は真っ赤な皮表紙でお気に入り、使い込むほど手に馴染んでくる。
直に帰ってくるかも知れない、ファイロファックス黒革手帳と一緒に活躍しそうな予感。

 久しぶりに雑用こなして、まったり乱歩賞受賞作品「脳男」読破。
久々の大どんでん返し2発に、読み終えてため息1つ。「やられた!」の快感。
気になっていた雑用を全て片付けて、良い日だった週末は雑用日和。

 久々登場扇風機、ハゲシク働いてもらいたい週末。

<まご(孫)まご2時間放電>

「大丈夫、30年前に培った経験があるんやから。2時間なんて、あっという間。ワハッ」
この20分後には大いに反省し、30年の月日は霞んで汗だくと共に何処かへぶっ飛んた。
当直を変わってもらい、2時間ほど私と孫と2人だけで留守番日。

「さあて、何して遊ぼうかなーっと」の余裕は、わずか5分しか持たず。
「ヘッ、まだ10分も経ってないの!」に変わり、BGMにエバンスを廻すのが精一杯。
聞き慣れたピアノの旋律に冷静さが戻りつつあったが、それも長くは続かなかった。

 ちょっとカメラを取りに行こうとして目を離すと、ハイハイのスピードが上がって。
ソファーの陰に隠れそうになるし、声をかければ振り向くものの方向転換。
レジ袋をカシャカシャやると一時静止、気になる音がするこちらを覗くのはジジイの常識。

 エバンス2枚目の頃、孫元気に対してまるで睡眠薬3万錠服用した様な眠気来襲ジジイ。
脛の辺りにチクチク、アリンコでも?と見れば。小さな手が、すね毛を引っ張っている。
「ジイは、くすぐったいでおじゃるぞよ」は完全無視、すね毛3本はらりと落ちる。

 箱から色んなオモチャを出しては、気に入らない物は後ろへポイッの繰り返し。
拾って箱の中へポイッはジジイの役目は、賽の河原の石積みじゃないけれど。
展望のない作業は眠気覚ましには丁度良いが、再び襲う睡眠前段階の脳波ピコピコ。

 そのうちぐずりだし、すわオムツ!すわ腹減った!それとも眠い?
だっこしてみれば親指チューチュー、目がトロンは誰が見ても眠い。

 んじゃここで1発、子守歌?大人し目なら、「昭和枯れススキ」?
貧しさにイ、負けたア。いいえ、世間に負けたア・・・。何か、暗いなー。
気分転換に・・・熱海の海岸散歩する、ギい・ギいャ(バイオリンの音)もヘンだしイ。
せなで泣いてる唐獅子ボタあンーってのも、ミョーだしなー。んじゃ、洋風で。
ユビー・ソーナイス・ツー・カムホームツーなんてな・・・おろ?寝てる!
あと1時間、爆睡しておくれ!の願いが叶って、静寂が戻りジジイもウトウト。

 目覚めの泣き声と、女性軍の帰宅が殆ど一致して。
放心状態ジイのまご(孫)まご2時間は、古びたバッテリー放電の如く短時間で過ぎ去る。
いつしかエバンスは演奏を終えアンプの電源ランプだけが光り、放電ジジイはぐったり。

団塊のパラダイス(1)

 団塊のパラダイスと言えば、青春時代は本屋・レコード屋・オーディオショップだろう。
更に加えるとメンズショプだが、サイズ的問題があって私の場合は除外されていた。
当時はデブがマイナーで、痩せがメジャーが通説だったから品揃えも当然それに従った。
メンクラ(メンズクラブと言うファッション雑誌)は、私には無縁だった。

 本屋は街にせいぜい2軒しか無い田舎だったから、はしごをするほどでもなく。
1軒の滞在時間がとても長く、友達を探すなら本屋に1時間も居れば必ず会えた。
オーナー(大抵はおばちゃんで、ご主人は別に仕事を持っていることが多く。
そうでない時は髪結いの亭主風で、謎の多いミョーな余裕さえ感じられた。

 商店街のど真ん中で若い人で賑わうのが、レコード屋だった。
新譜宣伝用のポスターが壁と言わず所狭しと貼られ、入り口のガラス戸を通して見えた。
殆どがレコードで、隅っこにハーモニカとかタンバリンやカスタネットが置いてあった。
誰が買うのか分からない大正琴や三味線は、ホコリをかぶって長い間陳列されていた。
でも時々入れ替わる尺八は、根強いファンが居たようだ。

 購入するレコードは、ドーナッツ絆(裏表で2曲)かEP盤(裏表で4曲とか)であり。
LPは高くて滅多に買えなかったから、保存場所は本棚で十分だから困らなかった。

 レコードの扱いは慎重すぎるほどで、ゴミやホコリは直ぐに音で分かるから。
先ず静電気除去作用を持った、ゴミぶっ飛ばしスプレーを2,3回シュッとかして。
ビロードを貼り付けた専用ブラシを、溝の回転方向に合わせて2,3回くるりと拭き取る。
この儀式を通過しないと、安心して音を楽しめなかった。

 そのレコードを音源に忠実に聴かせてくれる(音源を知らないのに)オーディオ。
専門誌も多く数人の馴染み評論家が、どの雑誌を見ても似たような記事を書ていた。
先ずはJBLとタンノイそしてBOSEを知らなければ、オーディオを語れなかった。

 たいてい喫茶店にはJBLの大きなスピーカーが置いてあり、アンプはマランツだった。
コーヒーサイフォンや水を扱う場所から離れた位置に、湿気を嫌うレコードの棚があって。
LPジャケットから丁寧にレコードの取り出すマスターが、何とはなしに様になっていた。

 高価なスピーカーを持つことは憧れであり、音の出し方にもこだわった。
バスレフだのバックロードフォーンだの、スーパーツイーターだの。
さらにそれをドライブさせる高価なアンプは、一種のステイタスで。

 ホントのお金持ちは防音壁と壁に音を良い具合に反射させる羽を持つ壁まで気を配った。
専門誌には「オーディオルーム自慢」記事が掲載されて、いつかはボクも!と思った。
住宅事情・レコードからCDそしてポータブル器機・ショップの閉店と様変わりハゲシク。
オーディオショップは、パラダイスからまず最初に脱落した。

 団塊の世代の3大パラダイスは、人数が多いだけにターゲットになりやすい。
手始めにVAN真似っこユニクロで帰ってきたとすれば、次は何だろう?

団塊のパラダイス(2)
 外で遊ばない子供が増えて、ポテチを始めカロリーたっぷり食が氾濫し。
一足先に蔓延した「子供のポテトチップ症候群」が、米国で反省され始めた頃。
後を追うようにわが国の子ども達の中で、肥満・高血圧・高脂血症が増殖開始。

 おやつは芋飴と煎餅くらいにしておけば良いものを、甘くてこってりばかり。
私の子供の頃みたいなブロイラー的デブな子が、やたら目立つようになって。
子供の過剰な食欲は元気の元と、「さあ食え、やれ食え」親はハッパをかけまくる。

 既製服のサイズに大きな変化が現れ、VANでさえ昔のLは今のSか?を呈してきた。
こうなるとメンクラでさえ無視出来ず、大きいサイズがしばしば掲載されるようになり。
馴染みのショップから注文して貰えば、2週間もしないうちに本当のLLが届いた。

 晴れてメンクラ掲載商品を、この体型でも身につけることが出来るようになった次第。
それと同時に凝り性が目をさまし、メンクラ定期購読から始まって。
コーディネート・歴史・基本と着崩し方まで、衣服関係単行本を蒐集した。

 赴任していた病院から車で20分のメンズショップ、に殆ど毎週末に通えば。
3ヶ月過ぎる頃には業界用語も分かるようになり、1年を通して完全な模様替えに行き着く。
一通りの衣類が揃う頃にはメンクラを卒業し、基本を抑えつつ自己流を磨くようになった。

 衣服と言わずワードローブなどと呼ぶようになって、凝り性は拍車をかけ。
人はそれほど見ていないのに他人の目を意識して、出かける前には鏡に映し冷や汗をかく。
それもいつしか自然体になって肩の力が抜けると、衣服が馴染んできた。

 凝り性のおしゃれな人は、初めて買ったスーツは着たまま寝て馴染ませて。
ようやくそれを確認して、外出するらしいがホントやろか?
「そんなモン着て寝られるかッ!と言うことで、私はそこまでやれないが。
どこかがすり切れる頃にやっと馴染んできて、泣く泣くゴミ箱行きはしょっちゅうだ。

 ここまでくると密かな楽しみはワゴンセール。
持ち帰るに至るのは、チープな価格とインスピレーションでありショップを選ばない。
お気に入りは何度も着るから、へたって寿命を全うすることが多く。
貧乏性だから高価だと身につける頻度が自然に減って、より長持ちをする。

 こんな時「ものが良い(=高価)だと、良く持つモンだ」などと、
大いなる勘違いをやらかしても他人に言わなきゃ分からない。
身に染みついた「もったいない」精神は、いわゆるタンスの肥やしを増やすだけで。
大掃除中に発見してたまに手を通すと、購入した時期も定かでないことに気がつく団塊。

 ファッションとかには縁遠くても、見た目にも渋く格好いい裕次郎に憧れる団塊である。
と言うことで、「お父さんのためのおしゃれ辞典」を買ってしまったMIHIセンセ。
パラパラしつつ「モデルの団塊オヤジがかっこ良すぎ!」、我が身を嘆く団塊の私。

団塊のパラダイス(3)
 大学生時代はカントリー音楽にのめり込んで、大学院で大橋純子のLPを集めだし。
医者になって暫くすると、ジャズのCDをかき集めるようになって。
それも何時しか500枚を超えて、「やっぱ生がエエなー」などとライブのチャンスを探る日々。

 ミニコミ紙の隅っこに、「ジャズフェスタ」招待券応募の案内。
気に入った宣伝を1つ書いてネ!に、
「シッポまでアンコが入ったたい焼きとバーボンに、ジャズはお似合い」なんて
「たい焼き屋」CMについてワケワカランことを書けば。大当たりの招待券1枚。

 小雨降る中、夫婦でお出かけ。全部聴けばおよそ7時間超とのことで、程々で撤収と決める。
 受付で「ご招待」なんてハンコを押した入場券出せば、受け取る手が止まる。
「こいつ誰?ジャズマンには見えんけど。胡散臭い評論家崩れか?」
 なんて目で見られつつ、半券貰って侵入すれば。

「あらセンセ、相変わらずファンキーな」
 赤チェックBDシャツにリボンベルトにハーフパンツ、白のソックスにスニーカー。
団塊の「トラッドだぜイ」の意気込みは通用しなかったようで。

「あ、どうも。受付のお手伝いですか?」
「ハイ、色んなプロモーションも手がけてますので」
金髪おばちゃん笑顔で迎える。

 先ずはメイン会場で、ワルツフォーデビーなんかを聴きながら足でリズムを取って。
しばし和んで小一時間、ビールが恋しくなって(今は禁酒中)ホールへ。
そこは第2会場で、演奏が終わってまだ物足りないミュージシャンが自由に演奏中。

 トイレでノックしようとした時、開いたドアから現れたのはオカマの牝カッパ。
「あら、ここは男性用?イヤだア」
「こっちの方がイヤだアじゃッ!チビるとこやったやないかッ」

 ホッとしてホールへ戻り「椅子に陣取れば、トリオ交代要員にドラマーが居ない風。
スタッフが作業服のオヤジににじり寄ると、何やらヒソヒソ。
「んじゃ、行ってみるか」で立ち上がる、ヤンマーマークのオヤジ。

 ドラムとシンバルの位置を調整して、スティックをクルクル振り回し。
いきなり軽快にリズムを取りだした途端に、「枯れ葉」なんか行っちゃって。
思わず見合わすMIHI夫妻の顔と顔、「あらまー、お上手」。

 直ぐ近くに座って居た時は、
「今日は雨だし、農作業も一息ついたから。ジャズでも聴くべ、民謡ならもっとエエけど」
会場玄関までトラクターで乗り付けたワケねと、状況分析していたのに意外な展開。
世の中に広さに驚いた、ジャズフェスタのファンキー団塊。

団塊のパラダイス(4)
団塊の映画
 小学校時代には、夏休みの夜校庭か広場にスクリーンを張って映画を見せてもらった。
それもドキュメンタリー風か、しょっちゅうスクリーンに雨が降るチャンバラか。
フツーの日に学校に映画が出張して来た「まぼろし探偵」には、驚き感動した。

 高校まで映画と言えば、「学校推薦」しか見ることが出来なかった団塊の我々。
題名だけ聞くと、どんなにか凄い映画かと思う学校推薦「女体の神秘」であった。
男の子達は「学校推薦だかんな、やーらしい映画じゃないんだかんな。フン、フンッ!」
鼻息荒く映画館に並んだのは、世界的性教育科学映画のハシリと言える。

 何のことはなく終わってみれば、とても詳しい生物の教科書みたいな映画だった。
マイクロカメラかなんかを駆使して、胎児を映し出したり。
精子と卵子が出会って、受精する現場をまざまざと見せてくれた。
確かに神秘だったけど科学的だから、コーフンするタイミングを失った。

 大学に入ると、オールナイトと呼ばれる徹夜出来る映画を知った。
殆どがヤクザ映画というか任侠モノで、そうじゃなければ喜劇映画。
どちらもしこたま飲んでから出陣するから、目的は有り余るエネルギーの発散だ。

 健さんが一番人気で、サラシを巻いて殴り込みの場面はコーフンのルツボ。
相手を切り刻んでも健さんは殆ど切られない。後半でちょっと切られてうずくまる、たじろぐ。
「まだまだ、それじゃ死なんぞオ。行け行け、ぶっ殺せエー」

 あちこちから上がる声援は、聞き覚えのある同級生。
世間の暗闇が白々と明けて来る頃、声をからし肩を左右に揺らしながら撤収する。
出口で出会えば、「おう、お前も見に来とったんか。んじゃあな」。
デイリで戦った任侠モノ同士の別れのシーンを再現する風は、胸を熱くした。

 医者になるとわざわざ映画でもあるまい、レンタルビデオもあるし。
次第に映画とは遠ざかっていたが、夫婦50割引(どちらかが50才以上なら¥1000)。
この恩恵を受けて、団塊のオヤジの映画人生は復活した。

団塊のパラダイス(5)
団塊のTV
 悪友達と暗くなるまで外で遊ぶか本を読む以外に、娯楽はラジオの時代だった団塊。
皇太子(現在の天皇陛下)結婚の節目に、突如出現したモノクロTV。
息を殺して聞き込んでいたのが、「笛吹童子」ラジオ放送だったのに。

 見ない時は薄い緞帳みたいなのが被せられ、チャンネルはガチャガチャ廻し。
小さい画面を大きく見せようと、渦巻きを刻んだプラスチックの板が取り付けられ。
チャンネルの接触が良くないのか、ヘンになったら筐体を叩く癖。
いまだにパソコンでも、同じ行為を繰り返すのは団塊くらいだろう。

 「ラッシー(コリー犬)」とか「スーパーマン」で、外人の日常に触れた。
「名犬リンチンチン(シェパード犬)」が人気になる頃には、大型犬はお金持ちの構図に。
それと同時に、TVヒーローが僕たちの話題の中心になった。
子供週刊誌やメンコには、力士や野球選手と共にヒーロー達が表を飾った。
メンコの他には、お正月だけではなく普通のコマやベーゴマが遊び道具だった。

 スポンサーとヒーローは、強く結びついていていまだに忘れない。
武田薬品なら「月光仮面」・「隠密剣士」。カバヤ製菓は、「7色仮面」。
仁丹は「怪傑ハリマオ」、ナショナルは「ナショナルキッド」。
藤沢薬品(現アステラス製薬)は「伊賀のフジ丸」と言った具合だ。
グリコは「鉄人28号」、丸美屋は「8マン」、森永(タブン)は「鉄腕アトム」と来る。

 スポンサーが思い出せないのもあって。
「行くぞ、シェーン!(シェパード犬)」で、スクーターにまたがる少年探偵。
プルプルプルとのどかに走り去る「スーパージェッター」の後を、ワンワン吠えて追う。
当時は「子供なのに運転免許は?」なんて、少しも考えも及ばなかった。
もう1つダメなのが「まぼろし探偵」で、これも子供ながら空飛ぶ車を運転する凄さ。
ヤツを真似て、黄色い風呂敷を首に巻いて走った子供が多かった。

 東京オリンピックとともに、カラーTVが我が家のモノクロTVを追いやって。
プロレスを見ていたお年寄りが、ショック死したことが報道されたのを思いだす。
今までは真っ赤に染まったマットは、黒くなるだけで実感が湧がなかったのに。
いきなり本物に近い真っ赤に血に染まったレスラーを見れば、動揺すると思う。

 昨今のサスペンスは、いかに血に染まったように見えるか工夫しているようだが。
それを見て失神したりショック死したことが、報道されるのを聞いたことがない。
感性が鈍ったのか、血くらいじゃ驚かないもっと悲惨なことが多すぎるのか。

 携帯電話でTVを見ることが出来るようになって、我が家のTVは大きく様変わりした。
29インチブラウン管TVは液晶50インチ超となり、画面もくっきりはっきり毛穴まで。
子供時代は画面から目を離すことはなかったのに、大人になるといつも「ながらTV」。
これだけは受験勉強時代に培った「ながら(ラジオを聞きながら)族」は、健在だ。

団塊のパラダイス(6)
団塊の贅沢
 戦後まもなくを育った我々は、家族全員に「もったいない精神」が溢れていて。
品物が入っていた箱・梱包用に使われた包み紙・ヒモ・輪ゴムは、分類し保存していた。
それらの多くは出番の無いまま、押し入れや引き出しで眠り続け存在感は次第に薄れ。
その殆どは、大掃除の時の処分の対象になるか迷った挙げ句に元の位置に納まって眠った。

 3−4年先に使われるものならまだマシだが、不必要なモノまで貯まる一方で。
誰かが黙って捨てない限り、処分の対象としてノミネートされるだけで地位は安泰だった。
平成の世の如くモノはそれ程溢れて居らず、使えない時は工夫で補ってきた。

 外食をすることは滅多にないから、何かのイベントかオヤジの気まぐれで決まった外食。
リクエストを求められれば、還暦まで変わらなかった「んじゃ肉!」の一言で腰を上げた。
炭火七輪で焼く肉は芳ばしく、甘辛いタレは記憶の中で鮮明であり数少ない贅沢だった。

 子供心に贅沢とフツーの境界線を引くことは、日常生活の中なら簡単だった。
当時でさえ不人気な脱脂粉乳を、残してバケツに入れるか鼻を摘んで飲み干すか。
これが最もわかりやすい境界線で、何のためらいもなく捨てるのは贅沢だった。
バケツにしっかり貯まった不人気ミルクもどきは、床磨きに使われ使命を全うした。

「食べ物を粗末にすると罰が当たる」は死語となり、ファーストフードと外食が花盛り。
結果、巷には食べ物が増えると同時に肥満児が増えた様な気がする。
TVニュースで外食が減ると米の消費量が減るらしいが、どういう関係なのだろう?と思う。

 外食とはちょっと違うが、内風呂より銭湯が当たり前だった我々。
走り回ってはしゃぐ子供には、必ずうるさいオヤジの一言が待っていて。
一喝で10分の静寂は保てたが、子供が入れ替わる度に一喝オヤジも入れ替わった。

 結婚して内風呂生活に馴染んでしまったので、今の銭湯の入浴料が分からなくなった。
夏の庭作業で一汗も二汗もかいても、シャワーと新しい衣類が待っているのは良い。
洗濯に使った残り湯でさえ適度な温度を保っていて、ちょっとした贅沢を感じる団塊。
こんなちっぽけな団塊の贅沢は、今時の人にはフツー以下に映るかも知れないが。

 頭の先まで湯に沈み込んで静寂を満喫するだけでも、すこぶる付きの幸せを感じる。
栓を抜いて排水口に吸い込まれて行く使い古しのお湯を、何かに使えないか?と思う。
わずかに残った「もったいない精神」は、保存場所に困らないモノの範囲だけで健在だ。

団塊のパラダイス(7)
団塊オヤジに増えたもの
 還暦を迎えた団塊に増えたモノと言えば、体脂肪率とγーGTPが一般的かも知れないが。
ジジイの充実した余生を過ごすための遊び道具である趣味の数は、意識して増やしてきた。
若かりし頃では想像が付かないほどのバリエーションは、驚くほどであり。

 その積極性と努力に自画自賛し、待たされることへにイライラの回数も増えた。
受け身で待つくらいなら手を出しちゃおうと、ちょっと先を見た積もりで動き始める癖。
老い先の短さを感じてか頑なでせっかちになり、他人の意見を聞くフリだけが増えた。

 そうでなくてもこの世界で信じて疑わないのは、いまだに師匠だけで。
自分以外の医者の診断と治療を先ずは疑う性癖は、益々強くなりその機会も増えた。
他の医者からの紹介状は信じるより先ず疑いつつ、患者さんに接することになり。

 僅かな間違いを見つけたり、診断や治療が「ボクのと違うんだナー」だと快感は増し。
その上患者さんや家族から、「前の病院より良くなった」なんて言われようモノなら。
「イエ、これがフツーですから」を発した後に、失いつつある真摯さへの反省も増える。

 10年前までの驕り高ぶりが減った代わりに、自分を棚に上げて増えた呟き。
「何処かに、ちゃんとした指導医が居らんと。若い医者を、野放しにしちゃイカンなー」
口に出さないけど相手の居ないグチというか、ぶつくさ独り言が増え諦めも増える。

「患者さんはパーツの集まりやない、心も体も両方診ねばイカン。君ら、哲学もないで」
知力体力の衰えは、哲学と言うワケワカランもので逃げる術だけは巧みになった。

 それと同時に失いかけた真摯さが、自分の未熟さを気付かせて自分の尻を叩くのが増え。
何時になったら役立つか分からないまま、残りの医者生活のために学習するのも増えた。
内科書を見直して新しい発見が減った分、「ヘッ、そうだったっけ!」への感動も増えた。

 日頃増えたモノは、こんな聞こえの良い物は少なく。
「せっかち」は「キレ」安さの裏返しで、表現形態が違うだけ。
「センセ、最近キレ易くない(語尾上げで)」が増えて、「声が大きいだけエ」も増えた。

 涙腺がゆるみ始めたのか、涙もろくなり何かと言えば目が潤むのも増えた。
孫が生まれると、益々小さいモノに対する無条件の受け入れ態勢が増え。
「小さき者は守るべき者」は増長し、その分だけ同僚を厳しく見るのが増えたのは何故?

団塊のパラダイス(8)
団塊の無くしたくないもの
 青春時代のほろ苦さは、ほのかな甘酢っぱさに味を変えて心の金庫に静かに眠り続ける。
懐かしさは利子が付いて増えるわけでもなく、尖ったところから崩れ始めても気にしない。

 競争を意識したくなくても、時の流れの中で忘れさせるのは数分で長続きしない。
教室にも校庭にも何時だって同世代で溢れ、大勢の中の1人と言う存在感が纏わり付く。

 還暦を過ぎる頃には櫛の歯が欠けるように、ポロポロと去っていった同級生が居る。
年末に舞い込む突然の訃報に、沸き上がる学生時代は3日もすれば脳細胞から消え去る。
辛いことや悲しいことを短期間で忘れ去ることは、穏やかに生きて行く唯一の術なのか。

 ディベートなどは無縁で、悪友とワケも分からず夜を徹して語り合った青春論。
上辺ほども理解していない哲学論を、酔いに任せて口角泡を飛ばした青さ。
まともに新聞を読んでいないのに、吹っかけられればいっぱしの政治評論を始める。

「じゃあ、今度のデモと政治集会に参加するか!」と言われた途端に、トーンダウン。
生活に与える政治情勢に実感が湧くようになったが、政治について語らなくなった。
未熟な青春を過ごし、家庭を持ち仕事に追われるようになると仕方なく突っ走り始める。

 競争は市場原理と言い方を変えて、否が応でも自分の尻を叩き続けるしかなかった。
いつまでこんな生活が続くのか?と思いつつも、負けたくない気持ちは増幅するばかり。
「みんな仲良く、みんな平等」なんてあり得ないのに、俺は平和主義者だ!なんて嘘。

 今の若者は、「恥」は死ぬのと同じくらい辛いことではないのか?といぶかりつつ。
団塊の世代にとって「恥」って何?を、常に反芻する気持ちを無くしたのだろうか。
青さや若さだけでなく、競争への気概だけは意地でも無くしたくないと思う昨今である。
毒とるMIHIの独り言;8/17

団塊のパラダイス(9)
団塊の忘れたもの
 お年寄りが物忘れをしないように、良くメモをするのだが。
メモ帳とペンを探しいざメモを使用としたら、はてさて何をメモしたかったのか?
仮にメモしてもそれを何処へやったか忘れたり、メモをしたことすら忘れたり。
やたら古いことは鮮明に覚えていて、中でも悔しい思いや怒りが強いとなおのこと。

 団塊が還暦を迎える頃になると、多くの場合は中間管理職であり。
立場を意識してミョーなプライドだけは3人前だから、始末に負えない。
加齢によって脳細胞の壊れる数は、通常1日で100万個とも言われているが。
この歳になると、そんなモンじゃゼンゼン追いつかないくらいとろけてる気がする。

 忘れたことを指摘されると瞬間的に身構え、直ぐに反撃しないと突っ込まれるから。
キレるかそのフリをするか、どちらにせよ攻撃は最大の防御を実践に移すだけ。
オヤジがキレ易いのは照れ隠しか防御の裏返しを、自覚しているだけに余計に情け無い。

 それでも還暦を過ぎて来ると、多少は丸くなってきたような錯覚を覚え。
「こうやって、ジジイになって行くのも悪くはないな」などと、余裕を見せてほくそ笑む。
笑顔の皺の間に、「今の若いヤツらに・・・」の闘争心を忘れていないのも団塊だ。

 大学時代は学生運動花盛り、大多数はノンポリと呼ばれる有象無象。
それでも反体制を気取って、アジビラと呼んだ学生運動派閥毎のビラは風に舞い。
メガフォンからがなり立てる声明はひび割れて、自身をハイに向かわせるだけ。

 TV映像で見る限り最近の大学構内は掃除が行き届いて、学生運動の面影の欠片もない。
派閥同士の暴力事件の現場は大抵は学生寮で、捜査の時以外は治外法権状態に近かった。
政治に興味のないヤツは寮からフツーの下宿へ移り、寮は追われる学生運動家の宿泊所に。

 そんな時代に我が悪友達はそれぞれの下宿に集い、安酒をあおった。
適当に勉強して適当に進級し、ほどほどの年月で卒業して医者になって分かれていった。
30年ぶりの同窓会は青春時代を蘇らせるが、30年分の年の流れでたちまち今に引き戻され。

 酔うほどに忘れかけていた恥ずかしい想い出は、その時だけのお約束。
忘れたいことや忘れたくないことが入り交じる、カオスの世界。
雑用を忘れて遊べるのは、深夜ラジオ放送で鍛えたながら族団塊の得意技。

団塊のパラダイス(10)
団塊の減ったもの
 団塊の腹にたまったのは、世の中に対する文句と体脂肪だけじゃない。
還暦を迎える前は多かった、「最近の若い医者はイカンぞ!」のグチ。
そうは言っても、60を境に口数が減ったワケでもなく目立たなくなった。

 余命せいぜい20年弱ともなれば、ちょいと焦って最後の仕上げをどうするか?
先の短さはひたすらせっかちをもたらし、長い待ち時間への我慢が減った。
だからと言って食に関しては、ファーストフードよりはゆっくり出てくる料理。

 脂したたり食べれば口の周りはテカテカでも、食後5時間は胸がもたれても。
翌日になれば、「リターンマッチもエエですよ」の脂肪量の多い料理を好んだ。
それ程食べていないはずなのに増える体重は、減った基礎代謝のせいか?

 鍋の底をまんべんなく塗り込んで、煮込んで甘くなったすき焼き用脂身。
「これ、ワシ食べてエエ?」に、「んじゃ今日は譲るわ」だったけど。
今じゃ僅かな肉の脂身さえ箸で切り離し、口から取り入れる脂肪分が減ったのに。

 いくら石けんで洗い流しても、テカるおでこをアルコール綿往復は何度でも。
減った筋肉量の分だけ増えた脂肪、いくら汗をかいても減らない体重に増えるため息。
運動量が増えたはずがないのに腰膝肩の痛みに、減る持久力と根気に負けず嫌い魂。

 肉体だけじゃなく、色に対する感受性も変わってしまったのか。
若い頃は地味な色を「渋い」と好んで、明るい色を避けていたのに。
やたら増えた赤・黄・オレンジ、さらには調子に乗って朱色まで。

 今や死語になった「ワードローブ」のコレクション、旧い物も減り買い足す量も減った。
唯一、色に関して減ったのは派手な色に対する抵抗と恥じらい。
人混みの中で直ぐ発見される色使いは迷子予防、目立たないことをヨシとする気が減った。

 還暦を迎えてちゃんちゃんこの赤より、色だけこだわってポロを着た団塊。
派手な色に支配されるのが増えた分、視線を気にするのが減った。


団塊のパラダイス(11);讃岐団塊のうどん
 讃岐うどんで育ったから、うどんだけは人3倍こだわりがあって。
太さは割り箸サイズ前後であり、切り口は四角でなければイケナイ。これお約束。
それ以上細ければ素麺だし、それ以上太くて平べったければ棊子麺であり。

 形が違えば既にうどんの分類からはみ出しているから、問題がないはずなのに。
店の都合で「何とかうどん」なんて表示をされちゃ、「オヤジい、フォークだ!」だし。
切り口が丸いうどんを出そうモンなら、「誰がパスタ煮込みを頼んだかッ!」だ。

 うどんと言えば「腰」が命、「ダシ」が命、刻みネギは「裏方」、「丼」は手触りだ。
ここで忘れてはいけないのが醤油力、ぶっかけうどんが基本の讃岐だから。
刻みネギとおろし生姜で醤油の風味を引き立たせて、うどんの喉ごしの良さを増す。

 敢えて言わせて貰えば、うどんは飲み物であって噛んではいけない作法が讃岐風。
とは言っても顎が尖って柔らかいものを好まれる昨今、エラ張り世代限定か?
うどんは箸で摘んでダラーンじゃ、涙も出ないほど悲しくて立腹を通り過ぎる。

 端から5cm辺りを摘んで持ち上げ、直ぐに口に持って行かず眺めなければイケナイ。
垂れ下がり角度は37度までと決まっている(誰が決めたか定かではないが)。
この角度が小さすぎれば舌圧子代わりで「おえエ」だし、90度に近づくほど情けない。

 ぶっかけうどんが西の横綱なら、湯ダメは東の横綱だろう。
小さな風呂桶風器にお湯を張り、湯がいたばかりのうどんを放り込む。
好みにもよるがちょいと濃いめのツユに、1/3だけ漬けて飲み込むのが良い。

 江戸っ子がそばをいただく作法と同じで、麺ツユにどっぷり浸けるのは無粋だ。
うどんはあくまでも粋な飲み物と、心して啜っていただきたいところだ。
飲み物だからお酒と同じで、はしごうどんは当たり前だ。

 讃岐では、年間平均365杯のうどんをいただくという噂があるが。
根っからの讃岐人は3食うどんを出されて、感謝しても文句を言うヤツは居ない(タブン)。
讃岐に5年も住めば「うどんを打ちの技を会得せねば」と言い出し、道具を購入することになる。

<元受験戦士の団塊>

 この世に生まれてたった6ヶ月の孫を見ていると、加速度を付けて知恵がついている。
言葉を理解するわけではないから、誰が教えたのではなく色んなことを自然に会得した。

 好き嫌いもはっきりして、気に入らなかったらむずがれば良いのも知った。
気に入れば笑顔が返すという方法で、自己主張をするようになってきた。
生まれ持った生きて行く知恵が、学習することを容易にさせるようだ。

 還暦を迎えたのをきっかけに、一念発起して3000頁の内科書を読み始め2000頁を超した。
端切れ時間を利用している割には、我ながら良くやったものだと得意の自画自賛。
ふとこの学習の目的は何だったのだろうと、立ち止まった。

 テキストを読み始めて8ヶ月が経過してみると、その成果が何処に現れているのか?
些か不安になりながらも学習することは苦痛ではないし、かと言って楽しいわけでもない。
勢いというか習慣化で惰性に流れそうになったら、迷惑かもしれないが気分転換のラウンド。

 この数ヶ月で、1つだけ実感したことがある。
読書でも論文でも、2つや3つの異なることを平行するのが還暦を迎えるまで可能だった。
還暦を過ぎたのが理由ではないだろうが、1つずつこなして行く方が精神衛生上良い。
脳みその柔軟性というかキャパシティが損なわれて、じっくり攻めろ!と言うことか。

 あと20年は持たないと計算して、学習する気になるのはせいぜい15年あれば良しだろう。
来年の春までに内科書を仕上げれば、統計学に再々チャレンジ(ボロボロの敗者復活)。
次は英語ヒアリングで、1年頑張って医学英語検定受検か?

 更に待ち受けているのは、楽譜苦手が災いしてDTMが1年か2年だろう。
締めは哲学全集読破(理解ではない)で、経済学博士は何処へ行った?(ちょい弱気)
学習し続けることが目的かも知れない団塊は、受験戦士のなれの果て。

<団塊の裏読み謎解き>

 偶然私が見るモノに、我が業界関連が多いのが何故か分からないが。
最近のクイズやサスペンスに医学的な内容が含まれて、かなりマニアックになった。
先日のサスペンスも、「抗リン脂質抗体症候群だった」なんて言う謎解きがあって。
一般に馴染みが非常に薄く、しっかり聞いてないと勘違いするかも知れないと思う。

 これがアメリカ医学サスペンス映画になると、さらに凄まじい内容で。
言葉だけ聞いていると「彼はヴァルか?」と言われても、ナンじゃそれ?
字幕を見て「あ、VHL病なんだ!ネイティブじゃないから、ワケワカランッ!」ブツブツ。

「じゃあ、ナニを疑う?他に?」を連発する指導医に、「もうありません」の研修医。
「君が知ってる全ての病気を言ってみろ!」は、パワハラとしか思えない。
「じゃあ、今から直ぐMRI、髄液検査と、あらゆる染色体検査と感染病原体を探せ」
あの症状でそこまでやったら、医療費がいくらかかっても仕方がないかも。

 あたかもそう思うボクに対して言うように、「君たちは剖検で、診断するつもりか?」
絶句する研修医に与えるヒントでますます回り道を誘い、研修医の脳みそをフル回転させる。
こういう指導方法もあったのか!でも、検査漬けの患者はたまったモンじゃない。
こんな指導方法を実行に移すほど、私は強靱な精神を持ち合わせていない。

 米国人の医学知識はかなりのモノなのか、この映画は結構な知識がないとワケ分からん。
その上、1つの病気で考えられる疾患が脳外科・神経内科ぐらいの範囲ならいざ知らず。
眼科・精神科・婦人科まで広がり、内科はあらゆるジャンルに及び止まるところを知らない。

 こんな映画を3本立て続けに見ちゃうと、ごくありふれた症状を見ても裏読みしまくり。
フツーの発想に基づく診断が出来なくなりそうで恐いのだが、いつか何処かで役に立つ?
いつもの私は我が師匠の教え通り、「先ずは教科書。柔軟な発想を忘れるな!」だ。

 師弟関係と言えない、指導医と研修医の葛藤と言うよりバトルに近いストーリー。
ちょっとだけ体育会系が入ってるところが、私にとっては懐かしい。
医学用語がポンポン出まくるけんか腰のディスカッションは、ボク的にはあり得ない。
こんなあり得ない討論の場に、恐いもの見たさで傍観者なら参加しても良い。

 団塊医にとって裏読み謎解きの非現実的な世界は、映像の中だけだ。

<団塊の弱点>

 靴選びは形や色や履き心地で選ぶが、MIHI的には何はなくともヒール。
とは言ってもハイヒールを履くわけでもないし、上げ底シークレットブーツでもない。
膝に優しいエアクッションだよねーで、次がエアーに近い素材(ある種のジェル)靴底。

 別にマイケルジョーダンがどうの、ビリージョエル好みがどうのではなく。
エアー靴底は個人的弱点の膝に刺激が少なくて、歩いても疲れないエアーも色々。
踏みしめた時に膝に来る衝撃は、長距離歩きには耐え難いもの。
単に弱点に敏感なことが、基準になって敏感になるわけで。
だからと言ってミョーなジェルが入っていると、着地不安定でかえって悪い。

「あら、センセ。広いデコチンに、汗グッチョ。いかにも、本気で仕事をしているような。
「まあ、なんだな。額に汗して仕事をすると言うことは、清々しいモンだねー」
「本気なのは、屁理屈だけエ」

「その点、あんたは努力とか一所懸命とかには縁がないからなー。
 男だけじゃなく縁は皆無って、あんたのためにある言葉やネー。
 かくのは、汗じゃなくて恥じくらいじゃモンなー。あー、やだやだ」

「ナニ、ほざいてんだか。23度の気温で汗をかくのは、センセだけですッ。
 仕事をしてるからじゃなくて、原因は別でしょッ。ふんとに、モー。
 そのメタボ腹、そこまで遠慮無くずーずーしい根性、あーらら気配り無し」

「温度はそうかも知れん。ワシの汗は、温度と湿度とあんたのパワハラが関係してんの。
 敏感肌・敏感ハート・敏感脂肪。どれとっても、敏感すなわちワシじゃろ?」
「ビじゃなくて、ドの方でオネガイしますッ」

 デブとかメタボに過剰反応をしてしまう、団塊の弱点。

<団塊の禁酒後の宴>

「ウソでしょッ、体の2/3はアルコールにどっぷり浸かってるセンセが」
「ワシゃ、解剖前の美しき献体か?」
「まさか、そんなデブ。自分でもイヤでしょ、脂身まみれの解剖実習」

「んと、もう1つ聞いてエエ?」
「あたしのウエストサイズと、へそくりの隠し場所以外なら」
「あんたのへそくりは、どーせ電子レンジの裏側に袋に入れて貼り付けてあるんじゃろ」

「ゲゲッ、見たなア。このストーカー、覗き医者」
「あんたの行動を見ていたら、丸くお見通しだぜイ。んじゃ、ワシの体の1/3は何?
 冷静沈着テキトー明晰な頭脳と、ワイハのような温かい心か?」

「冗談とツカミはそのくらいにしてと。んで、ちょっとくらいは行っちゃって?お酒」
「ゼンゼン」
「コップに半分とか、丼に1/3とか、タライに2/3とか?」

「段々増えとるやないかッ!ゼンゼン」
「肝臓がとろけたとか?脳みそが高野豆腐みたいにスカスカになったとか?」
「こないだの検診は、スマンが絶好調ウ!」

「発泡酒飲むくらいの給料は、貰ってるはずだしイ。セコセコ小銭を貯めてるとか?
 まあ無いわね、大抵のモンもってるからねー。クダランモンまで。んじゃ、撤収」
「んで、お注ぎしましょ。ビールですか?焼酎ですか?メチルアルコールですか?」

「んじゃ、ウーロン」
「困るんですよね−、センセが飲まないと。MIHIセンセでさえ、禁酒してんだからって」
「ワシが禁酒したら、あんたんとこの台所にいるゴキブリが多産するってか?」

「センセって、酔ってても素面でもカワンナイじゃないですか?ゼンゼン。
 空気を吸っても、体の中でアルコールに変えられるんじゃないんですウ?」
「それやったら、エエなー。深呼吸したら、ヘロヘロに酔ったりして。だはは」

「ナンのお話しですか?えらく楽しそうな」
「あ、同じ歳の同士やないですか。イエね、禁酒してるって話」

「ヘッ、あの噂はホントだったんですか。とうとう、来るものが来たって言うか。
 地球滅亡が近いというか、ってことで。ハイ、お注ぎしましょッ!」
「んだからア、禁酒してるって聞こえなかった?幻聴が酷いんじゃ?」

「ゲジゲジが日の丸持って提灯行列しても、センセが禁酒するなんて有り得んでしょ」
「確かに、ゲジゲジは手足が多いから。んじゃなくて、なんでゲジゲジかなア」
「んじゃ、ご返杯」

「んだから、金だらいにウーロン注いでみる?」
「みない」で、やっと撤収した同じ歳のスタッフ。

 禁酒も疲れる初宴、ウーロン3本も飲んじゃったイ。

<若者に団塊涙腺>

 本日届いた医師会の雑誌に掲載された、少し年上の先輩のエッセイにもあった。
映画を見てそれにぴったりの音楽を流された途端に、声を出さずにこみ上げたらしい。
画面がにじみ何が何だか分からない、連れの奥様に悟られないのが精一杯だったとか。

 私はと言えば暫く前に続けて悪友二人を失って号泣したせいか、涙が涸れてしまった。
声を上げて泣くことはなくなったが、どうも歳を取ったせいか涙腺が緩んできたようだ。

 職場で若者達が汗をかきながら、人生の先輩のお世話をしている姿を見ると。
手を出してお手伝いをするわけでもないが、たちまちこみ上げるモノがあって。
声を出さないけど、「日本の将来は安心かも?」で潤みっぱなしの目。

 これが医学生や研修医となると話は別で、自分が出来なかったことにも期待がふくらみ。
実力以上を求める余り、過激になるのを押さえるだけで精一杯の昨今。
「日本の将来の医療は君たちに委ねられているのだから、精進せよ!」じゃ、潤まない目。

 かねてから予定した孫の一時同居は、無条件でジジイの目は潤みっぱなし。
寝返りを初めて打ったのを聞けば、「もしかして孫は寝返りの天才か?」だったり。
ちょとしたことで微笑めば、「きっとこの子の笑顔で、3万人は救えるかも」とか。

 特に特訓をしたとか塾に行かせたわけでもないのに、目の前で初めてのお座り開始。
それまで手足をバタバタさせているのは、聞いていたお座りの準備運動らしい。
ここで手を出したのではジジイの弱さが露呈するから、じっと見守るだけ。

 もうちょっとのところで失敗すると、心が張り裂けそうなほど悲しい。
30分も頑張っている内にコツを覚えたのか、成功の10秒前から息が出来ない瞬間を迎える。
普通のお座りが成功しただけなのに、「カリスマお座り赤ん坊」かも知れんと賞賛の嵐。

「平均より速かったお座りが、大人になったら役に立つかも知れん。イヤ、きっと」
ワケの分からんことを思い、既にその時点で潤む目で脱水症発症寸前。
還暦を過ぎて涙腺の締まりが悪くなったか、何処かに穴が開いたようだ。

団塊オヤジの医学生へのお節介

施設体験実習を終えた医学生諸君へ
 実習レポートを読ませていただき、僭越ながら感想を述べさせて頂きます。諸君の感想で共通していたことは、次の4つでした。
A)食事介助
 私なりに身につけた食事介助のコツは、(1)利き腕を確認すること、(2)あたかも自分が食べるようにスプーンを運ぶ、(3)「美味しいですねー」等となるべく話しかけること、(4)急かさずその人のペースを把握することです。利き腕側に介助者が座り目線を同じ方向にすると、介助がクライアントにとって自然な形になります。
B)コミュニケーション
 クライアントとだけでなく、スタッフとのコミュニケーションも大事です。臨床で必須の問診手法は、コミュニケーションそのものです。コミュニケーションがちゃんと出来なかったら、診断を誤ります。真っ当なコミュニケーションを得るためのクライアントとの目線の高さは、少なくとも水平であるべきです。そうでなくても立場の弱い患者さんに威圧感を与えてはいけません。
C)チームとプロ意識
 スタンドアローンでは、臨床でも研究でも良い仕事は出来ません。チームの大切さを指摘された方が居られましたが、その通りです。またプロ意識を主張された方も、仰るとおりです。諸君が医師になった時に、もう一度このことを思い出して下さい。
D)雰囲気
 施設やスタッフの雰囲気の重要性を指摘された方が居られました。私も毎日やっていることですが、鏡の前で笑顔を作る練習をして下さい。更に言わせてもらえば、小学生ではありませんが挨拶は大きな声でしましょう。現場にいると、これを365日続けるのが大変なことを実感すると思います。患者さんへの笑顔と声掛けは、職種とは無関係に最低限のなすべき事です。臨床の現場で不機嫌な顔で行われる医療行為は、クライアントに良い影響を与えるはずがありません。

 ここからは、先輩からの最後のお節介。
諸君の論理の進め方は簡潔で分かりやすく良いと思います。ただ皆さんにおしなべて言えることは、1つの文章が長すぎます。文章の長さは、息継ぎをしないでゆっくり一息で読めるのが適当な長さと思って下さい。論文も学会発表も同様ですが、1つの文章に主語と述語は1つが基本で句読点をよく考えてください。またアナウンサーが1分間で300文字を読むのと同様に、学会発表などでは諸君達にとっても適当なスピードであることを覚えておくと良いでしょう。初めのうちは緊張して速くなりがちですので、注意しましょう。

 ことある毎に原点に戻ることは大切です。「疑問があったら先ずは教科書!」は私の師匠の決まり文句で、その次に文献検索です。文献はそのまま鵜呑みにせず、「ホント?」といつも疑って読みましょう。「常識」と「非常識」は、時の流れと共にしばしば変わることがあります。最近は多くの疾患にガイドラインが発表されています。それを知らないと、もしもの時に裁判で負ける時代になってきました。ネットという便利なものがありますので、一般の方も情報を簡単に得ることが出来ます。現役である間は、しっかり学習して頂きたいものです。

 私も医師生活33年を過ぎ、原点に返るつもりでメルクマニュアル(第18版、もちろん日本語版)を2度読破しました(殆どの中身は、忘却の彼方へ行ってしまいましたが)。現役の間は、諸君に負けないよう頑張りたいと思います。皆さんの健闘を祈ります。体に気をつけて、素晴らしい医師になって下さい。

日本老年医学会専門医及び委嘱 指導医 毒とるMIHI

<団塊のおひな様>

 娘が二人なので鯉のぼりの経験は無いけど、お祝いで貰った段飾りのおひな様。
娘が小さいウチは毎年皆で箱から出すのが楽しく、いつもしまうのが大変なおひな様。
20年以上前の新聞でくるまれ、虫干しはオリンピック並のおひな様。

 もう何年もオールスターで見たことは無いけど、お盆の上に乗ったようなおひな様。
ずいぶん前に「九州でさげもんを見た」とメールをいただいて???のおひな様。
聞けば段飾りとはほど遠い、ヒモにぶら下がった!?のおひな様。

 取りあえず脳味噌の中でイメージして描いたのが、このさげもんおひな様。
お内裏様がヒモを綱に見立てて、まるでターザンじゃんとなったおひな様。
お内裏様だけじゃ寂しいだろと、子分も女官もぶら下がるおひな様。

 TVのさげもんニュースを見て思い出した、団塊のさげもんおひな様。

<団塊のノンアルコールビール始末記>

 ずいぶん前にノンアルコールビールを、遊び心で試してしまったことがある。
「(間違って)飲んでしまった」と言う表現がまさにぴったりの、情け無さだった。
「なんじゃこりゃ!苦い麦茶のようで、麦茶じゃない。ベンベン」と唸ったあの頃。

 如何にも気の抜けた甘みのないジンジャエール、如何にも注文するんじゃなかった代物。
ノンアルコールビールに懲りて、苦節38年ひたすらホップ100%を好んできた。
ガキじゃあるまいし、コーンスターチを混ぜ込んだビールなんか飲めるかってんだ。

 アメリカの薄いビール風の発泡酒が巷に出回り、「んじゃ、水代わりね」とウグウグ。
余り汗をかかない冬は濃厚なビールを好み、夏はとにかく量でウグウグ喉を鳴らす。
その他の季節は、こだわりも節操も無く黒ビールやハーフアンドハーフもエンジョイした。

 禁酒を始めて1ヶ月が過ぎて、夏はやっぱビールなのだが気を緩めちゃ元の木阿弥。
飲酒運転撲滅月間が毎月騒がれるようになって、とうとう来るものが来た感じで。
大手ビールメーカーが流し始めた、ノンアルコールビールのTVCM。

「ホウホウグラスに注げばそれなりに、サイダー程度の泡ブツブツ言ってくれちゃって。
上層部に白い泡の層なんか出来て、まるでビール。まるで・・・なんだろ?」
口に含めば如何にもビール、如何にも喉ごし、如何にも泡泡、如何にもウグウグ。

 もしかして騙せるか喉ごし、もしかして裏切らないか喉ごし、もしかしては果てしなく。
もしかしてこの麦茶エキス・ソーダ割りに、焼酎20ml注入すればビールになるかも?
んなら端からビールを飲めばいいのだが、心の揺らぎには禁酒のプライドが免震構造役。

 混乱は混乱を呼び、カオスがカオスを呼びつつ、二度と注文するまいと心に誓うあれ。
ビールもどき無アルコール飲料は、喉に昏迷を残して出るのはため息1発「はア」。
嗚呼、カキピー・イカ燻・枝豆・熱々のギョウザだって、ナンもカンもウーロンでエエわ。

 女々しくビールに残した未練を断ち切り、ノンアルコールビールより黒ウーロンだぜイ。
ところが改善好きの我がジャパン、テイストだけじゃ無くクリーミーな泡作りツールも。
ビールの味を忘れた頃に、「このビール風飲料、イケルやん」は騙されやすい団塊医。

<団塊医のババトル>


 朝晩の空気が冷え始める晩夏の外来は、バッちゃんの暑いバトルで幕を開ける。
「あたしはMIHIセンセにかかってんじゃけど、あんたは?」
「あたしだって、MIHIセンセじゃ」

「んで、何番ね?あ、あたしの方が2つ早かったわ。悪いねー」
「イヤ、MIHIセンセとゆっくりお話しして。診察もしてもろうて、血圧も」
「んじゃあたしは、最初と最後で2回測って貰おうかね。いつも違うんじゃ」

「あたしは、MIHIセンセじゃ緊張せんから。いつも同じ」
「んじゃ、1回だけ測ったらお帰りなさんせ」
「イヤイヤ、やっぱしあたしも2回にしよ」

 こんな外来が滞りなく終わり、あんパン囓ってコーヒー啜ればラウンドへ。
おりしも病棟はレクリエーション、風船バレーの真っ最中。
四角く配置されたテーブルの周囲に、車いすやらフツーの椅子やらで陣取り。

 男女混合でも圧倒的に女性軍が多いから、バッちゃん同士の戦いで行き交う風船。
イケメン介護士君がリードすれば、燃え上がるのはバッちゃん達。白けるのは男性群。
自由が利く手で思いっきり風船をはじき返せば、必然的に命中する顔面。

 どんなに強く当たっても少しの痛みも感じないはずだけど、ミョーに悔しいらしい。
ぶつけた相手を狙ってはじき返すけど、ままならない方向へすっ飛んで行きぶち当たる。
これが鉄の玉だったら5分で凄惨な修羅場と化すのだろうが、傍目にはご愛嬌なだけ。
額に汗が滲む頃に風船バレーはお開き、息が上がったバッちゃま達はそれぞれの部屋。

 バッちゃま達のバトルをエンジョイして、次の施設回診。
2mの空間を作って2列に並んだ椅子、今から始まろうとしている体操。
静かに侵入したつもりでも、やたら目立っちゃうのが私のようで。

「あー、MIHIセンセえー」
言いつつ、2ヶ所からバッちゃま視線の先に私。
「体操に集中ウー」は、驚く体操リーダーの声。
仕方なく、両脇に抱えるようにしてご挨拶するしかない。

「元気じゃった?」は、左のバッちゃま。
「ハイ、元気じゃったで」
「あたしの方が、もっと元気じゃった」は、右のバッちゃま。

 一方がMIHIセンセの白衣の袖を引っ張れば、ポッケに手を突っ込む片方。
バッちゃんバトルが始まりかけ、慌てて押しやりながら。
「ハイハイ、二人とも。体操したら、もっと元気になるで。あと50年は行けるナ」

 気を取り直して体操の輪に戻り、静寂が帰ってきて体操リーダーも安堵。
バッちゃんはいつまで経っても闘争心を忘れないのに、ジッちゃんはアカンなー。
灰になるまでバッちゃまは熱く、ジッちゃまはヨレヨレのまま灰になって行く?

 1日で3つのババトル(バッちゃまバトル)をエンジョイした、午後。

<団塊のデパトラ>

 娘の引っ越しで福岡、ある程度作業が済んでお買い物。
流石に大都市のデパートは何でもあるだろうと、かねてから目を付けていた品。
ボールに色んな「タグ」が付いていて、乳児には大人気らしい(タブン)。

 引っ越し準備の途中で、ネット検索を娘に頼み一服。タグ付きオモチャの探索開始。
あっという間の3分間であるわあるわ、色も形も選び放題¥2000前後。
ジジイのお小遣いなら、10個は買える(そんなに欲しくないけど)じゃありませぬか!

 ん!これこれ。んで、何。この本。フムフム、御社の会長が書いた本!
是非とも何をさておいても、読まねば済まぬビジネス書。
大きなデパートは散在するより集中する方が流行る、パチンコ店はジョーシキ。

 会長本を抱えて出立すれば、目当ての品にほど遠いモノばかり。
品揃えは大して変わらず、「アイデンティテイ」の無さに失望する。
こうなりゃデパウオッチングで、3店(I・M・C)比較研究するか!

 店員の平均年齢はIが若く、Mが7−9歳上か?
Iは若い分だけ押し出し強く、エレベーターの直ぐ側や店の前でお辞儀しまくり。
Mはちょい引っ込んで、「用があったらおいで」スタイルだけど視線は鋭い。

 女性軍があちこち彷徨く間は、椅子に座ってビジネス書三昧なのだが。
ここで明らかな差が出た椅子の質、Iは何処へ行ってもプラスチックでケツ痛い。
その点Mは、シートはちょいフンワカ背あてもフンワカでケツ安心。
長年の客扱いの歴史は、休憩する椅子でも物語る。

 ナゼ故にこの違い?と、辺りを見渡して分析すれば。
客の年齢層の違い即ちケツの弾力性の違いは、椅子の素材の違いに。
Iは若者が多いようで座っている時間も短いのに、Mはやたら長い。
Mは団塊の世代以上が多く何事にも疲れ、折りあらば腰を下ろしたい。寝ても良い。
目的を達成したら不必要に彷徨かないから、直ぐに何処かでお茶したがる。

 Mの椅子のおかげで会長本を40分で読破、お礼にサスペンダーを1本買い求める。
しかも本物の讃岐名物「瓦煎餅」を奥様が発見し、MIHIセンセはコーフンのルツボ。
歯が折れそうなくらい固いこいつは、顎が尖ったガキじゃ食えない一品。

 えらが張って歯茎ピンク、歯周りだけ若風の団塊向きだぜい。
そこの若いモン、悔しかったら囓ってみろってんだ。
1枚食べ終わる前に、顎が壊れて顔つき変わっても知らんぞ!
子供の頃を思い出すウ。3回囓ると脳天まで響くこの堅さ、この刺激、この快感。嗚呼!

 帰宅した翌日、当地で唯一のデパートCにお邪魔すれば。
椅子の座り心地も作りもIやMより数十倍良いのに、客は数十分の一のトホホ。
3つのデパートを比較研究して、このままじゃこのデパートはヤバイかも?

 デパートを巡って、会長本のノウハウをどう活かすべきかに思いを馳せ。
デパート・トライアングル(略してデパトラ)研究を総括した。

<団塊と孫目線>

 今の職場に勤めだしてからは、新人オリエンテーションに無縁になってしまった。
医療・介護・看護の全てのシーンで、見下ろされる目線はクライアントに威圧感を与える。
だから判を押したように、「クライアントと目線を水平に保て」が3つある内の1つだった。

 今年初めての有給で、本日一日を何をしてエンジョイしようと思ったら目に入る孫。
しばらくの間、このハイハイ10cmとお座りがをきっかけに孫の目線を体験しようと。
寝そべって床から20cm辺りが目の位置で、殆どが雪崩を打って倒れかかってくる感じ。

 2人の目線を常に水平にすることはなかなか難しく、ついあぐらをかいてしまう。
上目遣いに見上げる孫を見て、直ぐに寝そべるのだが長続きしないのを反省しつつ1時間。
突然お座りをした孫の目線は、10cm上から見下ろす感じで孫でさえほのかな威圧感。

 この状態でお座りが続く間じっと見ていると、7ヶ月にも満たない孫でさえ頼もしく。
介護を受けるクライアントならなおのこと、スタッフを頼りにするしかないと思った。
自分の目線より上にあるものは、その多くが落下という不安を伴うことも分かった。

 孫目線をエンジョイしながら過ごした有給は、のんびりした良い日だった。

<団塊のドライボックスとボディ>

 20年使い続けてきたカメラ関係保存用ドライボックス、乾燥剤を併用しないとただの箱。
通電のままだといくらやっても湿度60%前後、乾燥剤を2個突っ込むとやっと50%。
とうとう痺れを切らして買い換えるのをきっかけに、サイズを倍にアップして。

 分散していたものを1箇所に合体できたけど、ボックスの重量が27.5Kg。動作音は静か。
前に使っていたボックスのサイズがで3倍で、重量は8倍のスンゲーく可愛いヤツ。
設定湿度変更もなく手放しでOKだし、抗菌も(半生乾物を入れるわけでもないけど)。

 変えて良かったと安心したところで、オーナーが変わった当地唯一のデパートへ。
今度ダメになったら市内からデパートが消えるんじゃないかと、ささやかな応援を兼ねて。
2,3週間前に50%オフで、白地に細い赤と黒に紺のチェック柄のBDシャツ。

 襟の長さもロールも教科書通りだから、もしあれば購入しようと思ったけど。
残って居ればよほど売れないわけで困るし、そのうちオーナーが変わるだけなら良いが。
閉店なんて事になったら寂しいと、恐る恐る売り場へ侵入すれば既に売れていて。
嬉しいような、残念なような。残ったシャツに合わせてサイズダウンすれば良いのだが。

 ドライボックスを変えるようにたやすくは行かない、団塊ボディ。

<団塊のジュニクロと政治>

 35年以上前の宇部時代は、専門過程1年生。
シャツを買おうと入った店の奥に、レモンイエローのチェックBDシャツがぶら下がり。
滅多にないサイズのLLだったから、無茶苦茶に喜んで体に合わせて直ぐ購入。

 その時に対応した店主曰く、
「こんなシャツ滅多に入らないから、チャンスですよ。貴方はラッキー、体格もラッキー。
 これって、山口じゃ無いラッキーLL。私が2、3日前に東京で仕入れてきたんです」
 ラッキーBDシャツは5年間堪能するほど着て、袖口と襟がすり切れて処分した。

 ラッキーアイテムオヤジに25年ぶり、ファストファッション・ジュニクロ新装開店の日。
O商事がジュニクロに名前を変え、そのオヤジも責任者として活躍してきたのだろう。
開店から1ヶ月目に立ち寄れば、オヤジの姿は消え失せていた。

 店内は山口にしては珍しいくらいに活気に満ちて、老舗のデパートとは大違い。
2,3年経てば世界ブランドになっていて、色とりどりの商品が店一杯に並び。
休日は、朝から客に溢れていた(通り過ぎても中に入ったことはないけど)。

 下着類は素材に工夫がしてあり愛用しているのだが、パンツやシャツは使い捨て?
さほど愛着も湧かず2,3年も使えば、勿体ない世代の団塊でも何時捨てても良いと思う。
確かに、ワゴンセールはスポーツ感覚でちょいと興奮することもあるので捨てがたい。

 ブランド志向ではないが、ポロを比較すると重量も触感も襟の崩れにくさも違う。
素肌に着る時のポロは、いくら鈍感なボクでも歴然とした差を感じる。

 先日、孫に白い耳が2つついているくすんだ赤の帽子を老舗デパートで購入した。
縁取りも赤白チェックで、素材もちょっとだけ凝っていて触感もなかなか。
ラベル表示の「国産品」が、光っているような気がしてふと思った。

 パソコンだけじゃなく、安い衣類の多くは殆どが中華を含めてアジア製品。
ブランド品でもそうらしいから、国産のこだわりなど無くても良いようなものだが。
衣食住の多くを外国に依存し過ぎた我が国は、物作りの良さや喜びや大切さは何処へ?

 島国の日本をやっつけるのは簡単で、兵器も使わず兵糧攻めで充分。
食べるより捨てる方が多かった時代は、夢物語と化して。
我慢することを忘れた国民は、ひもじさだけで戦闘意欲を失わせるだけだ。

 最近まで気になってみていた、「官僚もの」TVドラマ。
「国民のために官僚は仕事をしている、政治家のためではない」に。
「青いことを言うな」と反論する官僚や政治家、これは古き良き時代の構図か?

 政権交代で脱官僚も良いが、脱国民の政治家ならワゴンセールでも誰も手を出さない。
固くて酸っぱくても、「青い」方が安心出来て頼れて好きになれる団塊。

<団塊の新年早々ハガキ乱れ三昧>

 疑うことを知らなかった65年・・・とは言っても、初めて疑ったのがいつかワカラン。
力めば出るのはクシャミか屁、鼻から飲んだ牛乳が出ないのが耳だし。
屋上から落としたらまず入らない点鼻薬・・・ま、そういうワケで、当たり前の話。

 生まれて初めての経験のような気がしていたけど、実は当たり前じゃなかった。
そんなことが新年早々あったのは、葉書なんです。それも、事あろうに孫への賀状。
兄弟に同時に出したのに、弟に届いて姉に届いていないのが発覚。

 そりゃ「どうしてMちゃんには、ジイジから年賀状が来ないの?」じゃ驚きやねー。
焦るジイジ、PC+ファイル+プリンター全開だぜイ。旧郵政省に、怒り心頭だぜイ。
出し直して孫のジイジ不思議は解消したけれど、んじゃ、今までにも同じような事が?

 届いてないのを気付いてないだけで、ホントは届いていない…ワシって、失礼なヤツ?
65年生きてきて、初めて感じる郵政不審。メールの中に「届いたよ」返信設定。
「ファックスが届いたか?と電話する」みたいな川柳もどきは、シーラカンスだけど。
これだから、メール年賀が増えるんじゃ?受け取り設定・届かなきゃリターンだもの。

 その上、郵政省には関係ないけど。名無し賀状二枚。
そう言うのに限って、全く得られないあっさり系情報葉書だから困っちゃう。
差出人を名簿から推理しようと、あれこれ苦心したけど苦労は実を結ばず。

 ハガキ乱れ三昧の、新年早々。

<師走の当直明けにちょいと想う団塊>

 エアコンが冷え切った早朝の空気を暖め始める頃、ジャズピアノの旋律が馴染んでくる。
あと一週間を残す頃、眼前の蛍光灯にスダレのように貼り付けられていた付箋だったが。
予定が過ぎ去りそれぞれの後に取り外されて行き、とうとう年明け予定の1枚になった。

 信長の時代なら人生を終えてもいい歳だが、まだまだ休むわけには行かず。
あと少し走り続けたいと思うと、日野原先生のように1日1300キロカロリーしかないのか。
煩悩だらけの私でも、結婚まで続いた喫煙の習慣は止められたが禁酒は無理と諦めていた。
初孫の顔を見た瞬間に1つ体に良いことして、成長を見届けたい一心で軽く禁酒が出来た。

 牛の肉も40才を超えて1ポンドまでと決め、多めの野菜で誤魔化せるようになった。
二日酔になるほど飲む機会はなくなり、この6年ネオン街を同僚と彷徨くことはない。
ディベートのお勉強をした成果を、会議で声を荒げて活かすことも減った。

 好々爺まっしぐらを突き進むワケではないが、視線を変えて見ることにした。
喉まで来たことを一度飲み込んで、反芻噛み砕いてから発すれば何かが変わるかも?
忸怩たる思いの時間を幾度となく感じるだろうことは明らかだが、それも良いだろう。

「MIHIセンセ、なんか変わった」と感じさせる楽しみも、良いかも知れない。
何度目かのターニングポイントに、かつて無かったことに挑戦したい。
白々と明け始める窓外の景色をぼんやり眺めながら、現役生活をどう締めくくるか考え。
信条の「地道コツコツ」と「適当お気楽」はやっぱ良いナと、腰砕けになりそうな師走。

 我が業界は浅知恵の研修医対策が変わって、最悪な状況を作り出した猿知恵政治家。。
いっそのこと歴史と伝統に培われた医局制度を復活させた方が、マシかも知れんなー。
現場を知らないヤツばかりがいくら浅知恵を出しても、所詮大したことは出来ない。

 師走の当直明けは休日だから、迷惑早朝回診を取りやめてちょいと想った。

<団塊の無サンタオファー(ウウさみしい)>

 毎年12月を前にして、商店街はクリスマスムード一杯だけど。
病棟のレクリエーションは12月初旬から、あれこれ計画が練られて。
その頃になると、食堂からスタッフの賑やかな声が聞こえ出す。

開いたドアの前の廊下を行ったり来たり、会話が気にならない方がオカシイ。
「んで、出し物は。んーと、歌に踊り。締めは、サンタよねー」
「そらそ、クリスマスと言えばサンタ。サンタと言えば、クリスマス。サン様アー」
「あたし、キムタクがサンタの格好で来て欲しいわアー」と喧々がくがく。

この季節は「サン」一言に、過剰反応。「サンマ」や「サンキュー」。
その他、「サンドイッチ」とか「サンプラザ」に「サントリー」。
聞いた途端に「ヘッ、サンタ!来たか待ってた、サンタオファー」リアクション。

嗚呼それなのに、何故か病棟は静寂。
「サン」も「ヨン」も聞こえてこず、「サンタやりたーい!カモン、ベイベ」。
そう叫ぶのを抑える必死な形相のヤツには、サンタオファーだけはしたくない。

口角上げて笑顔を作る練習もしたけど、サンタの髭に隠れてしまう。
両目ウインクは寝てるだけ?、フツーのウインクは目にゴミ?と言われ。
ダイエット3回に禁酒かいッ、ナンかサンタ腹じゃねーの!みたいな。

サンタのオファーの声がかからない寂しい、午後。

<団塊の良い日>

 待ちに待った、ピーカン晴れの休日。
昨日の雨をすっかり忘れて居た上に、予定がハゲシク変わって。
肥料をたっぷり与えた上に、丸々4週間放置された芝生はメチャメチャふかふかの絨毯に。

 日が射して1時間もすれば良かろうと、芝刈り機を動かしたのは良いけれど。
5m進むにはエラク重たく、何でやろ?と思った瞬間に先っちょから薄煙上がり。
モーターの負担が大きいかもと、いつもの刈り高10mmを15mmにしたところで煙は変わらず。
慌ててスイッチを切り切りくず格納庫に手を突っ込めばじっとりの芝でさらに1時間待ち。

 芝生がおおよそ乾いた頃、愛用マシンを進めればどんどん刈り取りパワーは直ぐダウン。
いつもなら3筋で1回刈り取った芝を袋に入れるのに、今日は1筋毎にこの作業。
小一時間で50L袋で1.5袋とは溜まりに溜まったモノで、抱えるとずっしり重く充実感。
体重0.8Kg減らしてシャワーをすれば、昼食後のお出かけのはずだった。
芝生を引きはがして自己流設計砂利庭に様変わり、既に過去となった走馬燈。

 大正2年モノの県会議会場で、山口出身チェリストを囲む演奏会。
競演の師匠とN協の方は共にプロだから、素敵な音色で禁酒以来の生と言えばライブ。
およそ2時間ほどエンジョイして、奥様がサイン書き込み付きCDを購入して本屋。

 久しぶりの森村誠一は医学犯罪モノ、横山秀夫はお約束の警察モノの文庫本を購入。
読むヒマ無く、デジイチ持参で孫の散歩にお付き合いすれば秋桜の前でハイMちゃん!
40分のお散歩に一汗かいて、ノンアルコールビールとは意気地が無い我慢の3ヶ月超。

 色々とノンアルコールビールを飲み比べてくると、明らかな差がある。
はたまた微妙な違いのやら、いっぱしの批評家になれそうな気がしてきた。
「嗚呼、悲しみのノンアルコールビール」でも書いてみようかと思う夕食。

 今日は良い日だった。

<団塊の若者ウオッチ>

 先日10分間ヒマで、丁度いい具合に目の前に巨大金魚鉢風パン工房。
流石の田舎でもこんな風景は珍しくないから、立ち止まってみている人は居ない。
そのつもりで中の人も動いているようで、私が見つめていても気に止めないと思っていた。

 私の位置からガラス越しにすぐ前にパン焼き器があり、扉の横には色んな計器。
扉を開け焼き器に入れる前に、こねた生地を整形して並んだトレーを置くテーブル。
焼く段になり2つのトレーを持ってきて、初めて1人のギャラリーに気づいたようだ。

 チラッと目をやって、焼きにかかった彼は再び生地をこね出したのは良いが。
作業がオーバーアクションで、移動するのもスキップでもしそうな軽快なフットワーク。
手のひらの粉をパンパンッと聞こえそうな程、ハゲシク大きく叩く若者1人。

 卵の白身を丸まった生地に塗る刷毛の動きは、あくまでも滑らかで塗り重ねはない。
と思っていると行きかけて振り返り様、1個だけ気に入らなかったのか刷毛が踊る。
この時私の視線を跳ね返すように、鋭い視線が斜めに飛んで交差する。

 あたかも匠の技を自画自賛しているように、虚空を見つめる2.5秒。
丸パンの頭を十字に切り込むハサミ使いも、「素人じゃ分かんない、匠の技だかんね」風。
何気なく私の目の前に置かれたトレーには、焼きを入れればてっぺんが花開くのが分かる。

 既にこの時点で私の存在には明らかなのだが、しつこく気づかないふりの彼。
ガラスをドンドン叩いちゃおうかと思った時、視線がぶつかって軽い会釈の彼。
「もしかして何処ぞのパン職人が、あたしの技を盗みに来た?10年早いやね」風の眼力。

 立ち去るフリをして、化粧品売り場のマネキンの陰からストーカー風の怪しいオヤジ。
とうとう消えたギャラリーに気づき、見える背中に緊張感は無くグルリ辺りを見渡す。
その時かの時いきなり現れて目があった照れ隠し、チャパツはみ出す白い帽子を直すフリ。

 そんな若者を見ながら、ギャラリーが多いとやたら試合で発揮する力を見せる2級先輩。
ギャラリーが男2,3人だと全くやる気が失せて、あっという間に負けていたのを思い出す。
次回は彼のためにクラッカーと太鼓を持って、生地をこねる度にどんちゃんパンパンか?

 そんなことを思いつつ立体駐車場3階で待っていると、エレベーターの扉が開く。

「キャッ、車がないッ!確かこの列だったわよね?」
「鍵かけた?」
「と思う。どうしよ?盗難じゃん」

「ここ何階?」
「4階って、壁に」
「階が違うじゃん、しっかりしなさいよ!」

 運転するのも駐車したのも彼女、怒られるのは彼の役割分担。
何がどうでも彼が怒られるシステムは草食系、だから若者ウオッチングは止められない。

<団塊ジジイの意地>

 何処へ入れても痛くない可愛い孫をだっこする時に、怪我でもさせちゃイケナイが勝ち。
その時の腰痛は微塵もなく、抱き上げたり下げたり自由自在なのだが。
翌朝起き抜けの「テテテ・・・」で、孫の笑顔を思い出させる鈍痛とジジイの意地。

 休日当直明けの「テテテ・・・」は、殆ど椅子に座って雑用仕事のせい?
そうなるくらいなら好きでもないお勉強を止めて、2時間ソファーで寝てればいいモノを。
ようやく2/3を越えた内科書読破で、こうなったら意地でも行っちゃうか!になる。

 6時少し前から起きだし、洗顔うがいしながら「テテテ・・・」。
ここを通過しなければ一日は始まらないから、「テテテ・・・」3発で覚醒。
目覚ましの冷水をコップ1杯飲み干して、コーヒー啜り始める頃にはエンジン全開。

 2頁読み進んで、ふと「ナンで勉強してるんやろ?期末試験が有るわけでもないし。
誰かに「勉強せねば、イカンぞ!」と、ピシピシ尻を叩かれたわけでもない。
「まっ、良いか」お気楽が、次の頁をめくらせる。

 団塊の世代は、目一杯合成色料・ワケワカラン洗剤・合成防腐剤アタックを受けている。
今の平均寿命を下回ることはあっても、更新することはないだろうから残りの人生15年か?
そのうちの5年は現役としての学習に使うし、余った10年をどう割り振りするか?

 10年前なら、3つや4つのことを同時進行でもやっつけられたけど。
還暦を過ぎると、血管と同じく脳みその柔軟性が損なわれてくるのだろうか?
1つずつ順番にこなして行かないと、カオスの世界にどっぷりはまってしまう。

 医局の棚には時系列でやっつけるべく、出番を待つ学習ツール。
「あと3ヶ月で、あんたの出番だかんね」で見回せば、お勉強の加速がつく?
直ぐに目に入るちょっとした叱咤激励は、これも還暦ジジイの意地?

 目だけじゃ無く何処に突っ込まれても痛くない孫を、本人の意向を無視しただっこ。
それでも翌朝の「テテテ・・・」は、ゼンゼン我慢出来る。
暑い時期にむずがれば、「ヘッ、だっこして欲しい?」勝手な解釈。
ホカホカ孫と接触している部分はしっとりでも、ちょっと嬉しい団塊ジジイの意地。

<団塊の¥980キーボード>

「おろ、何時からワシはIHIになったんじゃろ?何度打ってもMが・・・」
10年使い込んだキーボードの接点がミョーな具合になって、とうとう走る。
ネットで市場調査、USB対応で¥980から¥1万を超すものまである。

 文字を打つだけで、別にこれを持って結婚式や葬式に出るわけではないから。
キーボードのコストパフォーマンスは、電卓で計算する必要もない。
文字が現れる速度はこちら側の問題だし、格闘技に使うほどの強度も必要ない。

 必要最低限のキーがあれば充分と、店内を見渡せば隅っこに追いやられた¥980。
色もくすんだ白で目立つワケじゃなく、それ程地味でもない品。
ホームポジションで打つわけにも行かないから、最安値が決定打となる。

 それでも気になって店員さんを捕まえ、¥980をおずおず差し出す。
「¥1万でも買えないのがあるでしょ?これとどう違うんね?」
「接点の問題とか、キーの深さや形とか、ワイヤレスとか、カチャカチャ言うとか」

<まさか、キーが2,3個無いとか。夜中になると、首が伸びて行灯の油をなめるとか。
 はたまた、打ち間違うとアホ・バカ・間抜けエーとか言ってくれちゃう?
 ま、まさか。1文字ことに¥980ってのが付いてるとか?>
そんな質問を飲み込んで、「文字が打てれば、良いんですけどオ」。

「それだけなら、これで充分でしょ」
「んじゃ、買い」
 軽々と担いで出勤、医局の古いキーボードを取っ払い¥980君をUSBに刺す。

「あらら、¥980の最安値のヤツ買ったんだ!」、勝手にデバイスドライバ確認。
「フツーに打てるじゃん、ヌメッとした触感もフツーじゃん。Mも出るじゃん」

 ボールペンならこだわって、ボール直径0.5mm黒水性インク¥86のこだわりがあるのに。
職場で使うパソコン関連は、安さが一番・機能は2番・文字が打てるは3番。
それでも家で使うヤツはちょいと奮発して、画像処理とDTMのために欲張るシステム。

 確かに我が家はキーボードもワイアレスだし、ペンタブレットも用意してある。
唯一代わり映えがしないのは、キーで打ち込む速度と文章中身。
「こだわりもなく、進化もなく、反省もなく」、なくなく尽くし。

 キーボードが新しくなっても、ぱしょぱしょ打ちは古いまま。

<団塊の構図っちゃ>

「官民ズルの構図」みたいな、天下りを誤魔化すために官民でバーター。
ばれないと思ったのかね?、バーターの仕方じゃ不公平あるっしょ!
不満分子がいれば、当然あっちゃこっちゃにチクるわね。バレバレね。

 こんなズルシステムに、「構図」なんて言葉を使って欲しくないね。
いえね、いわゆるホントの「構図」のお勉強をしてるんですわ。黄金比、白銀比。
写真の場合は構図ってのが大切で、お勉強もそうだけど先ず押さえなきゃイケナイ基本。

 構図の基本と言えば、黄金比と3分割がキホンと言われるが。
後者の3分割の規則ってえのは、縦横3つに分けて線を引きますわな。
その線が交わったところ(交点)辺りに、テーマのモノを配置すると落ち着くという。

 その構図に加えて斜めとか三角なんてのが加わって、更に応用編があるわけですな。
一通り解説あって、その後でプロのコメントはあくまでも基本は基本。
ちょっと崩すと個性が出るし、新鮮さが生まれ、意外性もと言うことらしい。

 イラストなら配置も自由、要らないモノは描かなきゃ良いのだから構図の制限が少ない。
写真でもデジタルの場合は、色を変えたりぼかしたり、変形も自由。
銀塩でも出来るトリミングは、デジタルなら切り放題捨て放題。

 構図の基本に感性で味付けして、テーマとサブテーマを印象付けることで感動を与える。
まあ私が撮った写真で感動するはずもなく、自画自賛に行く着くかどうかが関の山。

 携帯から送られてきた孫の写真を、構図を意識してイラストにしてみた。
三角構図にアクセントのぬいぐるみとちょいと色を付け、可愛いさも似て自画自賛の構図。

<茶ラブ相手に団塊の禁酒談話>

「そうなんよねー、夏にビスケはねー。そうでなくても、汗腺がないあたしだから。
 当然口でハアハア、おかげで口はカラカラ。そこへ乾いたビスケはねえ。ワフッ。
 濡れ煎餅ってのがあるそうで、濡れビスケも作って欲しいモンだね。ワフうー」

「ホレ、お手にお代わりと。あんまりヨダレを垂らすと、脱水症になるで。良しッ」

「しかしナンですねー、この季節のビスケ。唾を吸い取って、上あごとか歯の根元に。
 あー、ヤダ。舌の先で外そうと思ってもイカンなー。じわじわ溶けるまでエンジョイ?
 そうそう風の噂じゃ禁酒したらしいやないの、初孫記念の禁酒とは。
 軟弱だねー、シオらしいねー、弱気だねー、パワー不足ジジイだねー」

「しかし、お前。風呂入ってないやろ、体触った手が臭いで」

「確か、1日50本吸ってた両切りピースは結婚して止めたよな?今度のきっかけは孫か。
 やってくれるねー、大丈夫かねー、我慢出来るかねー。フムフム、止めるコツがある!
 禁酒を始めたら直ぐに周りに言うと、破ったら恥ずかしいからなんとか続けられる。
 この方法はプライドのないヤツには無理とは、武士道だねー。恥は死ぬより辛い!
 しかし知らんかったわ、MIHIセンセにプライドがあるとは」

「哲は3m離れてもクサイ臭いで分かるで、うちに遊びに来た時に一緒に風呂入るか?
 エエ臭いのするソープとシャンプーにリンス。んでも、どう使い分けたらエエんじゃ?
 何処から頭で、何処からボディか。寸胴の体型」

「ヘッ、あんたに言われたくない!同類寸胴体型ってか」

「んで禁酒して1ヶ月が過ぎたけど、TVのビールCMは?あ、ゼンゼン気にならない。
 そら大したモンだ、焼酎も、ウイスキーも。んじゃ、梅酒は?あ、ゼンゼン。
 皆目!とは見上げたモンだよ、ワフッ。あ、歯の根元にへばり付いたビスケが外れ!」

「んじゃ、またな!次は砂糖をまぶした高野豆腐でも持ってきたろか。
 唾なんか、一気にチュっと吸い込むかもオ。喉渇くでエ、凄ーく」

 茶ラブ哲いたぶり作戦を練りつつ、ラウンドへ。

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<団塊医のカロリン・トラウマ>

「MIHIちゃん。ナンたら言うとこから、この間書いた論文の別冊請求が来てたやろ?」
「ハイ、スエーデンでしたっけ。生意気に書いてあるんですよ、英語の論文送れって。
 ジョーダンじゃないですよねー、ナニ甘えてんだか。ったくもー、日本語で読めって」

「君イ、ナニ言ってんの。日本語を英語にして、論文を書けばエエんじゃないの」
「そらま論文も短いしイ、足は長いけど。論文中身は90%日本語で、抄録だけやっと英語。
 ボクの中身はコテコテ日本人、あだ名は欧米かッ!のジミー」

「君イ、関係ないこと言わなくて良いの。高校時代は、英語の成績良かったって」
「大学に入って、学年が進むと同時に加速がついて英語力低下ですねー。実際。
 そもそも英語は、ボクの体質とかDNAに合わんような気がします」

「まあ、強いて言えば学問が体質に合ってないっしょ!みたいな」
「まあ、そういう言い方も出来ますねー。ヘッヘ」
「体質と先祖の遺言に合ってるのは、酒だけみたいな。んで、その請求の葉書は?」

「切手が珍しいから切り取って、後は証拠隠滅でゴミ箱へポイッ。
 捨てたことを研究所が知って、スエーデンと戦争にでもなったらどうしょ?
 一億火の玉、竹槍を持てエーみたいな」

「君イ、オーベンのワシより年上か?縄文人みたいな感覚やねー」
「英文を読むのは速いんですけど、走るのと英文書くのは遅いんです。何で?」
「そら、足とニューロンが短いんじゃ?」

「世をはかなんで、酒飲みたくなったような。豆大福を、腹一杯食べたくなったような。
 トマト缶ジュースと皿うどんと英語を見ると、胸と腹がいっぱいになるんですウ。
 カロリンスカのトラウマって言うヤツ(語尾上げで)。カリントウならエかったのに」

 こうして団塊医は、かりんとうフリークになった(ワケワカランッ!)。

<団塊が60歳超で悪いんかア!>

 還暦と言われると、大した感激も悔しさもないのだが。
最近、「60代」で一括りされるのが無性に腹が立つ。
アンケート調査で、年代別なら60歳代に「以上」が付いてその上がなかったり。

 コラコラ、70歳代や80歳代は区別センでエエんか?180歳代は無視か?2万3千歳は?
ワシ、本気で怒るで。90歳代の鼻タレと一緒にせんでくれッ!そこで相談なんじゃけど。
ホントはジャスト60歳じゃけど。59歳と451日にしてエエ?みたいな。

 実際、ナメとるよなー。60歳の、何処がどう悪いんか。ワシにはワカラン、ワカラン。
アンケート用紙、ヤギに食わせてエエ?あ、ダメ!イヤホンマ、怒るでワシ。
0で区切るから、気に入らんわけよ。45歳から55歳とか、5で区分けがなんでアカンの?
なんで出来んの?それって、可笑しくない(語尾上げで、きつくオネガイします)?

 自分をヘンなオヤジと呼んでいたのに、還暦を迎え呼び方を変えた「おもろいジジイ」。
「おもろい」という形容詞は奥が深く、良きにつけ悪しきにつけ使い方が難しい。
使いこなせるようになったら、一角の人物として世間に評価されるはずだ(タブン)。

 時々書かされるアンケートの年代は、おもろいジジイ風に50-60-70と勝手に書き込もう。
どれがホントですかと聞かれれば、下らんこと聞くヒマがあったら茶でも出せ!と言おう。
こともあろうに「正確にオネガイします」なんて言いやがったら、用紙を食べてしまおう。

「60歳が悪いんかア、責任者出てこいッ!60が恐くて、豆大福が食えるかア!」
の一吠え(ワケワカランッ)も、追加しちゃうかんな。フンッ!

<団塊オヤジの快感>

 コーヒーでも啜る?の当直明け5時、動悸発作のお電話ピリリ。
2,3質問で心房細動発作とアタリを付けて、発作性上室性頻脈もあるかも・・・。
まあどっちでもエエわ任せなさいで、ステーションで待ち受けるモニター吐き出す心電図。

「やっぱねー、そうだと思ったんよ。察しが良いのが、良いサッシなんちって」
「んで?どうするんですかア」
「んで。あらー、整形外科医は心電図が嫌いなんだ」

 分厚いカルテをひっくり返して、やっと見つけたずいぶん前の心電図。
「今までは、大した不整脈もなかったんだ。んじゃ、今回は発作として。
 そのうち治るかも知れないけど、取りあえず酸素ね」

「んじゃ、モニター付けてみっか。あ、頻拍発作ね」
 自販機で買ったコーヒー啜りつつモニターちらり、さっきより脈が減って。
「センセの顔を見たら、急に楽になった」に、「んじゃ、A3写真でも?」

「センセの写真のデコチンど真ん中に、五寸釘でも打ち込んでみますウ?」
「3日後、あんたの写真に変わって。眼鏡とチョビ髭オマケになりますウ、みたいな」
「んで、Wさんどうね?」無視したナースZ。

「胸の具合なんじゃけど。ヘッ、話を聞いてたらワカランようになった!」
「んじゃ、なーもせんと様子を見ようや」またまた無視してナースZ。
「また2人で、おいでなさい」は弱々しい笑顔のWさん。

 そのまま早朝迷惑ラウンドを続け、午前の外来に突入。
フランスパンにコーヒーで12:15腹ごしらえ、ラウンド2は1時間弱。
医局で読み始めた内科書が枕になりそうで、幾度となく洗顔で覚醒し1日を終えた。

 経済ニュースショーが終われば、後頭部が枕にあたった瞬間に爆睡。
子供の頃から休日の早起きは変わらず、心待ちエバンス6枚組みCD取り出して。
いきなり始まる拍手は、ビレッジバンガードライブ盤。

 雨戸を開けた途端に気に入らない伸び4cmの芝生、見上げた空は薄曇り。
「ゼッタイ芝刈りじゃね、今日は」呟き、段取りを練る頃に朝食。

 教科書的にはお勧め刈り高2cm、まあ週1か2のカットなのだが。
せっかちな性癖と芝刈りと空模様のマッチングが上手く行かず、2週に1回の情けなさ。
豪雨でしっかり伸びた芝を刈れば、1時間で50L袋にたっぷりは2週間ぶりの快感。

 チドメグサとクローバー限定除草剤をまき散らし、散水すれば自身もシャワータイム。
今までならビールが待っていたが、変わった禁酒生活は冷えたスポーツドリンクの快感。
喉ごしの物足りなさを感じつつ、CD2回目を廻せば「やっぱエバンスはエエなー」。

 ながらエンジョイお約束の1枚目、1枚1時間として・・・。
6枚目にたどり着くのはいつになるのやら、エバンスの快感は長い。

 久々のエッジカットも済んで、気になっていた枯れかけアガパンサスもカット。
切り取って2週間後の枯れ枝を山にしたのをチラリ眺めつつ、パソコン雑誌に目を落とし。
TVから流れる「中津川フォークジャンボリー」映像に、見とれ。

 団塊お得意の「あの頃は良かった」は、定番の快感。
引きはがした芝生、自分デザインの砂利庭に満足の快感。
エバンス・エンジョイ生活は、1%も変わらず続く快感。

<団塊にはやっぱ教授>

 教授になれるのは極々ホンの一握りの方達で、なろうと思ってなれるものでもない。
なる資格があってもタイミングや政治力やその他諸々で、一国一城の主となる教授。
何処の世界でもトップは孤独であるように、教授も孤独と思うのだが想像がつかない。

 大学院の時はこのまま大学に残って、運が良ければ講師くらいはなれるかな?と思った。
医局で居る間は教授はいつまでも眩しかったが、臨床の世界に浸かれば眩しさは忘れ去り。
それでも「恩師」として存在し続け、お会いすると自然に居住まいを正すのが教授。

 昨夜のナイトキャップは、杏林大学名誉教授の石川恭三センセのエッセイ。
読み進むうちにあるところまで来て、思わず眠気がぶっ飛んだ。
「私は今でも5時に起きて本を読み、夜が明けて来ると季節の移ろいを感じる」らしい。

 5時起きまでは同じでも、夜が明けるのを見て輝き始める太陽を指さすところが違う。
「杉作、日本の夜明けは近いぞ。見よ、あれが日本の夜明けだ。カッ、カッ」
ワケの分からんことを言いつつ、誰も聞いてなかったね?と窓外チェックするのも違う。

 1936年生まれだから既に70才を超えて、目覚めがいくら早いからと言って。
現役を退いているのかも知れないが、早起きをしてお勉強するところが教授は凄い。
かくある私も当直明けの時だけ同じ行動をするが、毎日はムリムリ。

 それ程勉強好きではなく、出来れば惰眠をむさぼりたい方だから。
お勉強の後はどうするかは書いてなかったけど、気になるところだ。
その点で私の場合分かりやすく、朝飯前の早朝迷惑回診。

「おろ?婦長さん。とうとう家出?脱走?徘徊?」
「ナニ言ってんですか、昨夜はセンセと当直したでしょッ!」
「あんたと添い寝した覚えはないッ!」(教授ならどう返すんだろ?返さない?)

「当たり前でしょ、何が悲しくて。主人でさえ、5m離れて寝てるのに」
「んで、ナニ面白そうなことやってんの?」
「なんなら代わっていただけますウ?勤務表作り」

「じゃあそう言うことで、拙者先を急ぐ旅。さらばでござる、ござるの尻は真っ赤」
「ハイハイ、お達者で。ずーっと放浪のまんま、お帰りにならなくて結構ですから」
「心にもないことを、言ってくれちゃって」(教授ならどう返すんだろ?返さない?)

「本心ですッ!」を聞く教授じゃないフツー団塊医の、早朝。

<団塊は久しぶり新幹線で学会だぜ>

「オヤジい、手ぐらい洗え!」とブツブツが始まりだった、久しぶりの新幹線の旅。
列車に乗り込む前のおトイレタイム、洗面所の鏡に出て行くオヤジが見えた。
ちょい臭いの部屋を出れば、たばこを吸う先ほどのオヤジ佇む。「なーんだか」ね。

 臨時浜っ子を気取り、オレンジシャツ(アメリカ製、ボクでも大きめSの優れもの)。
バミューダショーツ・白のソックス・ナイキのスニーカーで、ハマトラかッ!
今日の学会もだが、外人以外でこの素敵なラフスタイルはワシだけじゃろね?ニタニタ。

 飛行機じゃ時間も短いし揺れもひどいから、キーボードを打つ気になれない。
モバイルパソコン新幹線内キーボード打ち癧10年の私は、お茶を飲みながらパショパショ。

 初孫記念禁酒してなきゃ、当たり前だの缶ビールなのだが今日は麦茶。
ネットブックに変わり持続使用時間Max3.5時間だが、新幹線のスピードアップでOK。
そのうち新幹線内で無線LANが使えるようになる?で、ネットワーク状態チェック。

 あららー、そこの貴方も。あちらの貴方も、そこのオヤジでさえも!ネットケータイ。
接続は各社入り交じって混戦模様が分かっちゃうと、ふつふつとわき出るイタズラ心。
電波状態が濃厚なヤツで進入をはかるけど、「ログオンに必要な証明書は?」。

 もっと知恵のある人なら、そんな携帯に相乗りしたりメールを盗み見たり。
そんなことなどつゆ知らず、個人情報漏れ放題のケータイをいじってる貴方!ご注意。
電光掲示板ニュースは、昔は少なかった禁煙車両が逆転し全車両禁煙を主張する。

 消しても消しても、「んで、ネットワークログオン証明書は?」。何もしてないッ!
とうとう嫌気がさして、キーボード打つのをやめれば弁当。浜っ子なりきり2時間前。
還暦祝いに元町で真っ赤なポロを買うぞオ!と、叫びそうになるのを押しとどめ。

「ちょっと前なら覚えちゃいるが、半年前じゃちとわからねえ。他を当たってくれないか」
こんな台詞だったような、ちょっと違うかも?、相変わらずの適当さ加減。
唇動かす懐かしの歌は、「港のヨーコ。横浜、横須賀アー」宇崎竜童作詞でござる。

 そんなこんなで学会参加、チェック演題を目指して、会場を流浪する短パンオヤジ。
地方会ー全国学会ー国際学会がおきまりのコースだけど、私は逆回りだったから大変。
地方会なんか馬鹿にして、きつい突っ込み質問し放題は大いに反省してる。

 だいたいスーツでビシッと決めて緊張してる人は、デビュー戦のことが多く。
上司に「質問するヤツがいなきゃ良いのに」なんて、悲しいことを言うわけで。
小さな会場はそれなりの人数ですぐ終わると安心してると、厳しい突っ込みをされて。
何をどう答えて良いのやら立ち往生して、上司を捜す目が泳いだりするのもしばしば。

 そんなとき上司が「えー、共同演者ですが」なんて良いながら、出す助け船2,3隻。
「ミョーな突っ込みするんじゃねえゼ」なんて目で、にらみ付けてからしゃべり出す。
必ずと言って良いほど前置きが長く、質問時間いっぱい使い切って後の質問をはね飛ばす。

んで、学会川柳2句。
「突っ込みに 共同演者 眼飛ばす」ドミ庵
「突っ込みに 上司を捜す デビュー戦」ドミ庵

「センセ、質問が無くてえかったア」
「アホ、結果スライド。ワシが教えたヤツ使わんかったろ、飛び離れデータ無視の」
「あら、そうでした?差し替えるの忘れてたんですかねー」
「あれが有る無しで考察が違うんじゃ、座長が変な顔しとったで。質問しようが無くて」

 昔は白い紙にペンとタイプでスライド原稿を書き、自分で写真撮影から現像まで。
ベースがブルーで、黒で書いた部分が白抜きになる懐かしのブルースライド。
出来がはっきりしないときは、条件を変えて同じものを何枚も撮影すれば。
似たようなスライドがザクザク出来て、こんなミスが出るのも珍しいことじゃない。
今ならパワーポイントで1時間もあれば十分だし、書き換えはあっという間の良い時代だ。

<\1000を山分ける団塊>

 ここに¥1000があって、それを貴方ともう1人が貰えるのだが条件があるようだ。
その条件とは、「取り分の金額を決めるのは貴方で、その金額に相手は拒否権がある。
そして、もし相手に拒否されたら2人ともお金を貰えない」と言うもの。
ただし、前提として「両者は、真の経済人であること」。

 彼らは、合理的冷静な判断で、自分の利益を重んじ他人の利益は考えない人らしい。
「さて貴方の設定金額は?」と言うのは、経済学では有名な問題だそうだ。
有名なだけにこれに関する論文が沢山でているらしいが、私は読む気にはなれない。

 著者が経済専攻の学生にアンケートをとったら、最も多かったのが¥500だった。
さて貴方はいくらに?正解は・・・勿体ぶっているわけではないが、書きません。
著者が言う正解を述べてしまうのは、考える楽しみを無くしてしまうので。
貴方が読み始めたサスペンスを横目で見たヤツが、「あ、こいつ犯人」なんてボソッ。
そんなことしたら、次のページをめくる貴方の気を無くす様なモンでしょ?

 ¥1000を¥1万札に変えると、答えが変わる人も居るだろうし。
両者の財布にある金額、両者の関係と言うか親密度、両者の見栄やプライド等々。
正解を考える人が思い描くバックグラウンドの違いで、答えが変わるのは明らか。

 著者が言う正解を見ている内に、既に米国で破綻した「市場原理」が脳みそを横切る。
「こころ」を無視して、お金で世の中を推し量って動かそうとしたら歪みが増幅するはず。
真の経済人なら(こんな輩は”真”じゃなくエセ?)、将来崩壊するのを予想しただろう。

 市場原理や規制緩和とか自由競争に、こころを持ち込むことは無理があるのだろうか。
世界的に経済が低迷している中で鼻息荒いのが、中国やロシアだが。
ここへ「こころ」を持ち込むとどうなるのだろうと考える時、ドバイを思いだすのは酷?

 規制緩和やりたい放題ライオン総理の浅知恵が、規制緩和でもたらした歪みは多い。
規制緩和に歯止めがかかり始まった軌道修正は、与党に軋みと分裂をもたらした。
だからと言って人気野党に任せられるほど彼らに「こころ」があるのか分からない。

 無知で扇動に影響されやすい我々大衆が、¥1000をどのように山分けするか?
どっちに転んでも大差ないだろうと思いつつ、赤い国風改悪だけは止してねと思う。
「ここの国の人って、全員共産党なん?」と聞いて、呆れられた上海。
すぐさま「そんなことあるワケが無い」と返った、馬(マー)さんの苦笑いも懐かしい。
かの国の人ならこの¥1000をどうするか想像もつかないし、邪推さえしたくも無い。

 参考までに、いま読んでいる本をご紹介。(ここに正解?が載っていますが・・・)
行動経済学;経済は「感情」で動いている−友野典男著、光文社新書

<団塊のバナナ幸せにカレー不幸せ>

 夏の定番で赤いモノと言えば、トマトよりスイカだ。
唐辛子や紅ショウガであるはずもなく、背中が寒くなるトマトジュースじゃ無いッ。
真冬でもキリキリ冷えたスイカを喜んで食べるのは、シロクマ君ぐらいだろう。

 子供の頃によく見かけた掟破りのレモンスイカを、今でも覚えている人は少ないはずだ。
レモンとは名ばかりで味は殆どフツーのスイカで、種もフツーの黒ゾロゾロ。
甘さが今ひとつだった記憶と共に、ボクの視界から消えてしまったレモンスイカ。

 その点で黄色くて今なお健在なのは、バナナだろう。
ダイエット効果が評判なのだが、食べれば食べるほど激やせするわけでもないし。
カスミかコンニャクじゃあるまいし、絶対的ローカロリーと言うわけでもない。

 バナナと言えばMIHIセンセ似のキムタク君(世界の端っこでこう叫ぶは私だけ)だ。
TVドラマの影響で、どんな傷んだ脳の活動にも最適と言うわけでもないのに。
他の果物を突き放して、バナナの消費が増えているらしい。

 バナナは茎に付いている部分をポキッと折って、そのまま引き下げて皮をむくが。
はたしてそれでよろしかったでしょうか(んじゃなくて、よろしいでしょうか?)。
青いバナナはそのポキッに若さゆえの抵抗を示し、茎の根元をガリっの作業を要する。

 冷蔵庫で良く冷やしている内に、皮がそばかすだらけになったら食べ頃でしょ?
それ程バナナは親切なのに、子供の頃のバナナは食べ頃そばかすサインを嫌った。
運動会も風邪をひいて食欲が無くても、何はなくとも買ってきて直ぐの青いバナナ。

 剥きにくいバナナを食べやすくしてくれるのは、親の仕事と思っていた。
剥きにくい青いバナナは若さの恥じらいなら、そばかすだらけの速攻バナナは何?
まあ、そんなことに悩むのは私とキムタクぐらいだろうが。

 同じ黄色い食物でもカレーは、バナナと出会うと不幸せを感じるらしい。
フルーツたっぷりのカレーを見かかるが、多くは混入しているのはドライフルーツ。
たまに「ドライなのが嫌いでね」と言うシェフは、生を使うらしい(ホントに?)。

 辛さを和らげるためならジャガイモだろうが、おこちゃまにはバナナだ。
切り口もすっきりとろけて居らず姿形は健在で、テーブルに出す寸前に投入されたはずだ。
「あー、こんなところにバナナ。ここにはミカン」なんて、単純なガキにはもってこいだ。

 ボク的には「甘いか辛いか、どっちやねん!責任者出てこいッ。バナナは好きだけど」。
思わずテーブルをひっくり返すと、カレーが飛び散って服に着くから。
「カレーは服に着くと取れないんよ、困った子だわね」もお決まりだ。

 こうして「バナナ幸せにカレー不幸せ」がボクを襲う。

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<団塊の腹が減る幸せ>

 若い頃は食事をして2,3時間したら空腹感を覚えたのだが、還暦を過ぎると違う。
よほどの軽い食事を取った場合じゃない限り、2,3時間じゃそれ程の空腹感はなくなった。
最も象徴的なのが胃袋に納まる牛の肉で、1Kg超から500g弱になったこと。

 認知症があると食欲のコントロールをする中枢に変調を来してしまう。
やたら食べて吐くところまで到達し、吐いた後に直ぐ食べ始めることもある。
逆に拒食で水さえ受け付けることが無くなって、栄養と水分管理に困り果てる。

 本人は空腹感を実感していないのだから、無理やり口に食べ物を押し込む訳に行かない。
仮に強引に食べ物を口の中へ入れても、吐き出すのが関の山で誤嚥の危険すらある。
こうなってくると栄養と水分管理は、点滴か管を使う可能性が高い。

 時に認知症が絡んでくると、点滴にすれば静脈確保の時に抵抗する。
上手く確保出来ても、点滴路を引き抜くことが多く再度確保で一波乱。
「痛い、ナニをするウ−」に、「ゴメンね」しか言うことが出来ない空しさ。

 経鼻経管栄養(鼻から管を入れて栄養補給をすること)は、せいぜい6週間が限度。
その上に栄養補給中に管を自分で引き抜いて、誤嚥性肺炎のリスクもある。
咽せて誤嚥性肺炎、食事介助の長時間化による業務時間配分の乱れだけでも問題は多い。
こうなって来て、胃に穴を開けて栄養補給をする胃瘻を考えるようになるのは誰のため?

 以前、90才で認知症がある患者さんに血液透析を導入すべきか?で悩んだ頃。
偶然見つけた学会誌の論文に、「高齢認知症患者の透析導入の是非」があった。
結論ははっきり覚えていないが、結局は主治医と家族の中で決めることが多く。
お互いのコミュニケーション能力にも問題があるが、導入したのはおよそ半分。

 私が担当した患者さんは家族の希望で血液透析を導入したが、問題が多発した。
動脈と静脈を繋ぐ手術をし、膨れてきた血管(シャント)に針を刺し透析を行うのだが。
その血管手術が進んだ動脈硬化で直ぐに使えなくなり、再手術で人工血管になったり。

 透析をゆっくり時間も短めにしても、血圧が急に下がったり。
透析終わりかけ1ー2時間前頃に、不整脈が連発したりすることも多く。
この方にとって、透析をすることと高いQOLを維持することは一致しているのか?
何のためにこの方に透析をしているのか?自問自責しながら悩み続けた。

 認知症の方にも、もちろん気持ち良く生きる権利はあるわけで。
どちらも放っておけば死に直結しているから、日干しにするわけには行かないし。
ただの長生きではない安楽な時の流れを、どうすれば患者さんに感じて貰えるのか?
そんなことを思い悩みながら、夕食前の空腹感に幸せを感じたのは余りにも小市民的。

<団塊の「噛みもの」>

 特殊な地域以外は、飲料物は「飲みもの」であり「飲むもの」と言うと舌が滑る。
その法則に則れば(どんな法則だ?)、「噛みもの」であり「噛むもの」と言いたくない。

 うどんは喉ごしを楽しむモノで、ほおばってクシャクシャ噛んではいけない。
我が讃岐ではご先祖(誰の?)からの言い伝えだから、腰砕けのうどんはあり得ない。。
腰が強いから汁に少し浸けても喉をするっと通って、子供でも安心して食べられる。

 粘着質でべちゃっとしてたら、窒息させる凶器にもなり殺人事件が頻発する(タブン)。
うどんは噛むモノではなく飲むものが正しいに賛同する人が、98%以上になるはず。
残りの2%の人は、戒名を用意して腰砕けうどんでも食べて下さい。

 あるメタタレ(メタボタレント)が言う「カレーは飲み物」は、部分的に正しい。
正確に言うなら、「熱いカレーなら飲み物」と言って欲しかった。
冷やしカレーというモノが世の中にあるそうだが、冷えたお粥と同様に納得行かない。

 温度も味のうちと言われるから、温度が感じられないのは味が感じられないようなもの。
ここでハタと困ったのが、「んじゃ、素麺は冷やしてはいけないの?」へのリアクション。
この辺りは深く考えずに、次に進みたい。

 学校の先生から、コッペパンに2品と牛乳の給食が始まる前に言われたものだ。
「牛乳は良く噛んでいただきなさい。消化が良くなって、お腹を壊さないから」

 アルミのお椀に入った脱脂粉乳と呼ばれる、超薄ミルクの絞り上澄みみたいな代物。
味も素っ気もなくて喉ごしなどとは縁遠く、そんなものを噛めと言うのは罰ゲーム?
噛んでると何かしらミョーな臭いが鼻まで上がってくるから、そうなる前に飲み込んだ。

「クチャクチャ、ウグッ」が出来る勇気のあるヤツは0.9%であり。
「ウグッ、クチャクチャ」が80%だ。ヘッ!19.1%はどうしたかって?
バケツに返してフロアーの拭き掃除に使ったが、脱脂じゃつや出しには役立たず。

 ミルクもどき「噛みもの」は、ネコも跨いで通る「ねこ跨ぎミルク」と噂した団塊。
銭湯で定番の腰に手を当てウグウグコーヒー牛乳、噛む度にシャツを汚したのも団塊。
牛乳を噛むことを教えてくれた先生は、ホントは噛んでなかった?と疑うのも団塊。

<団塊の家庭教師>

 勉強が楽しくて仕方がないヤツが居たら、ガン飛ばしたいと思う。
宿題や自習はなかなか取りかかりが遅く、ぐずぐずしていた子供時代は良く言われた。
「早く勉強しなさい」には、必ず「いま勉強しようと思っていたのにイ」。

 還暦を迎える歳になると、「勉強しなさい」と言って注意してくれる人はまずいない。
勉強はそれ程好きじゃないから、なんとかして自分の尻を叩くきっかけを探す。
今回のきっかけは、「白紙状態に戻って、内科学を総ざらえしなくて良いのか?」。

 何か美味いモノを食べられるほどの金額を、版が新しくなった内科書につぎ込んで。
7ヶ月で1300頁を越えたが、確認程度が多いから脳みそに残る内容はさほど多くない。
それでも「あ、そう変わったか!」もあるので、斜め読みは出来そうにない。

 こんな時に家庭教師がいたらイヤでも毎日続くのにと思いつつ、ふと昔に思いを馳せる。
小学5年までの寺子屋は、算数国語に習字にそろばんとチャーハン塾。
6年生になると、算数と何故か英語の初歩を教えてくれる5人まとめた家庭教師に。

 何処かの先生だったようで、実験的に小学生にはフツーじゃない方法で教えてくれた。
お勧め読書も偉人伝とかではなく、ちょっと大人びて「銀の匙」だった。
ツルカメ算もXを使って式を作り、中学で解くような方法を教えた。

 それも引っ越しをきっかけに終了して、静かな日々を迎えるはずだったが。
突然おやじから、「明日から、週一回家庭教師が来る」と言われた。
どんなツテで来るようになったか分からないが、個人的なことをかなり知っていて。

 本人だけでなく、家庭の事情まで知った上での家庭教師であったようだ。
正確かどうかは別として、オヤジ自身の苦学生時代と重ね合わせていたようでもある。
時々「ナンか美味いモノを食べさせて上げなさい」なんて、おふくろに言っていた。

 家庭教師も2年目に入ると、彼が住んでいる学生寮にお邪魔することもあり。
6歳年上の生活を垣間見ることが出来たのは、新鮮と言うより衝撃的だった。
4畳半の畳の部屋に机が1つと本箱が2つは、平均的大学生の部屋だったと思う。

 簡単な作り付けの棚に、喫茶店のマッチ箱が綺麗に並べてあったのが不思議だった。
どうやら学生の間に、喫茶店巡りの証拠のマッチを飾るのが流行っていたようだ。
7年後の私はそれを真似て、スナックのマッチを飾っていたが直ぐに飽きてしまった。

 家庭教師に「学園祭って行ってみたい?」に、興味津々で頷いた2週間後。
東北大学の学園祭は、中学2年までに経験した運動会の100倍以上のスケールを感じた。
法学部の模擬裁判なんてのがあり、先生の知り合いが出演するらしく一緒に聞いた。

 内容はよく分からなかったが、テーマが「酩酊殺人事件」であったのは未だに忘れない。
ボクには真に迫った演技に見えたが、それが知り合いらしくニタニタして見ていた彼。
専門用語が飛び交い、「判決を下す、無罪」の理由など分かるはずもなかったボク。

 どの大学生もキラキラ輝いて見えたのは、個人的理由なのか時代なのかは分からない。

<団塊勉強のご褒美>

 数年前に、エッセイストでもある循環器の先輩が書かれた「心電図学」1200頁を読破。
その時にミスプリ6ヶ所発見して、大手医学出版社に葉書を送り。
最後に「貴社に貢献したご褒美として、図書カードの1枚くらいいただけるかも?」。
この一言が効いて、図書目録と同時に¥3000図書カードをせしめた。
それを使って、著者のエッセイ文庫本2冊が本当のご褒美になった。

 2008年12月25日に手元に来た「MM(有名な内科書の日本語版)」を読み始め。
半年で1130ページまで進み、ミスプリと説明がヘンなところに合計5ヶ所。
「今後の改訂にお役に立てていただければと思います」なんて心にもないことを思いつく。

 「6ヶ所のミスプリ指摘で、ご褒美に某有名医学出版社Nから図書カード。
多くのファンを持つMM故に、ご褒美がN社に負けるとは思っていないMM2冊目のファン」。
ここまで書けば、お礼状だけじゃ沽券に関わるはずとリアクションを待つ。
ご褒美次第では、後半の1600ページが楽しみか苦痛かの分かれ道。
ご褒美次第では、読破に力が入るというもの。勉強する目的が・・・。

 そう言えば高校時代に、受験英語雑誌の懸賞付き添削なんてのがあって。
必死で解答を書き、同じ下宿の英語の先生に先ず添削をして貰って。
毎月出しまくれば、卒業する頃にはノートやらシャープペンが手元に残った。
あれも勉強して(ちょっと卑怯だけど)、ご褒美をいただく快感手初めだったのか?

 カードリーダーの構造的欠陥で、記録写真を保存したカードが読めなくなる災難。
文句かたがた葉書を出せば、「製品に対する愛情溢れるご指摘」の感謝の念。
お詫びに、壊れたカードよりちょいとお高いカードが添えてあって。
送ったカードリーダーの代替え品は来なかったので、諦めて買い換える。

 還暦を迎えた内科医として、総決算の内科書読破計画。
ご褒美は患者さんの笑顔で充分と、あと10年は役に立てる予定の団塊の医者。

<団塊のトマト変化と好み変化>

 トマトは嫌いだ。
イヤ、トマトは好きだ。
やっぱ、トマトは嫌いだ。

 どうしてトマトのことで、これほどまでに悩むのか?
変化するモノで好みが変わるのは、あっても許せることが多いのだが。
ことトマトに関しては、どうしても譲れない。

 生の冷やしトマトが真ん中に位置して、トマトジュースとケチャップは両極にある。
トマトジュースを飲むくらいなら、禁酒している酒を飲む方がましだ。
あの砂粒のような舌触り、舌から鼻に抜ける生臭さ、喉を通過する時のざらつくゾワゾワ。

 ナゼ故に切り刻んだ上にかき混ぜるか、トマトジュース。
ナゼ故にあのザラザラした食感を前面に押し出すのか、トマトジュース。
100歩譲って口に含めば既に感じる背筋が凍り付く冷感、トマトジュース。

 どれを取っても3m以上近寄りたくない気分になるのは、全人類の97%だろう。
私はかつて2度ほど、トマトジュースに挑んだことがある。
その2度とも、背中に3トンの氷柱を押し当てられた気になった。

 だから3度目を挑戦するほど私はアホではないし、物忘れがハゲシクもない。
嗚呼、それなのに。ケチャップと言えば、んもー、タマラン。好きにしてエエんだよ。
血液サラサラ薬を飲んで切腹したみたいな赤い海の中を、ソーセージは泳いでエエんだよ。
甘く切なくさらりの滑らかさ、スパイスで嫌な臭いをぶっ飛ばしてあるのもエエんだよ。

 人の好みは三者三様とは良く言われるが、変化したトマトの好き嫌いも三者三様だ。

<団塊ステーキソースの意地>

 広島県F市に転校した夏、窓から流れ込む硫黄の臭いたっぷりの熱い風。
東北地方からやって来た私は、ここにも鳴子温泉みたいなのがあるんだと確信した。
その2分後、「ハイみんな、暑いけど窓を閉めるッ」の号令とと共に教室はサウナに変身。
風に乗って化学薬品工場から漂ってきたらしいが、いまなら大問題だ。

 夏に漂う鼻をつく臭いと言えば、東京のど真ん中豊島区時代に遡ることになる。
何かが腐ってスエたような酸っぱいような風が、街を覆い熱風の温度をさらに3度上げた。
これがソース工場からの風であることは親から聞いていたが、これもいまなら大問題だ。

 デパ食の食品サンプル棚、そのかなり端っこに鎮座していたソーライス+福神漬け。
熱々のご飯、頂上から3合目あたりまで染み込んでいるソース。
真夏の風に乗ってきた悪臭とはほど遠く、多くの人の食欲をそそった。

 ボクが仙台へ引っ越す前に、それは目立たない存在になっていた。
よほど特殊な地域じゃない限り、見かけるソースは1種類だったような気がする。
つい最近、アメリカ勢が乗っ取りで話題になった有名ソース会社のものだ。

 アメリカには美味しいソースがないと見え、我がモノにしてアメリカ好みにする気?
アメリカの何処のステーキハウスでも見ることの出来るソースを、ネット通販で見かけた。
肉もソースにも、深みもバリエーションも無い画一的なモンしかナインか?

 かの国の牛肉は筋が多くてやや固め、やたらでかいと相場が決まっている。
ロデオ鑑賞しながらのテキサスステーキ会場は、まさに「牛の肉やっつけ会場」。
そう言うのも私は嫌いじゃないが、腹に入るのは1Kgが限度だ。

 牛の顔が違うように肉質も違い、どこそこのサーロインは云々とかがあるはず。
こことあそこじゃゲージュツ的にサシの入り方が違い、脂身に伝統文化を感じるとか。
日本だったらステーキ肉も各種取りそろえ、ソースも星が降るほどある(タブン)。

 醤油ベースのおろしソースを始め、ポン酢ソース、大葉風味ソース(これは私はダメ)。
醤油業界がソース業界に殴り込みをかけ、ついに出来上がった深みのあるソースは良い。
肉の味を損なわずソースはソースで風味を出しているから、最後にパンで拭って仕上げる。

 プレーンなフランスパンで皿を拭う時、ステーキソースの意地を感じる団塊の私だけ。

<団塊のこころ>

 初めの頃のヤツだけ甘い汁を吸い、後に成る程貧乏くじを引かされるのが世の常。
ずいぶん昔からあって今に始まったわけでもなく、如何に人間が学習していないか。
懲りずに同じ過ちを繰り返してきたことは、ちょっと歴史を紐解けば分かることなのに。

 100年に一度の経済危機。ホントかねー。先の見えない恐慌とか、想定外の恐慌とか?
むかし某大学経済学部経営学科で、恐慌が30年周期って授業で習ったような・・・。
発端はサブプライムローンかもしれないが、ミニチュア版は世間じゃ数限りなく。
ちょっと冷静になれば分かるはずなのに、嗚呼、また騙されちゃって。

 揺れ動く中で騙されて、泣きを見るのは大多数の小金持ち達。
確率と統計を知らないのが一般人、騙されて虎の子を無くし泣きを見るのも一般人。
経済活動と言えば聞こえが良いが、汗をかかずに稼ぐなんてネズミ講と大して変わらない。

 海外マネーが入り込んで想定外ばかりの株式は、ある意味イカサマバクチと同様だ。
以前に私が言っていた「株式はバクチだ」に、「胡散臭さプンプンの」を付け加えたい。
小金に目が眩んだ素人やプチセミプロが手を出すと、大やけどをするのがいまの株式だ。

 目先が利くヤツ(詐欺師?)が額に汗をせず稼ぎ抜け、大衆が気づかないうちに雲散霧消。
残ったカスじゃ大して美味しくないのに群がって、挙げ句の果てに財布はすっからかん。
大きな磁石を相手にすればオモチャの磁石じゃ相手にならず、全ての砂鉄は大きい方へ。

 株式マネーの流れは、政治の流れと同じか?一旦下がっても再び上昇、平均への回帰。
大勝した政治集団が、今度は大敗が予想されるシーソーゲームはもう見飽きた。

 本家本元では陰りを見せていた「市場原理」を、劇場的マスコミ操作で正義とした。
演説を聴いて、ヒットラーを彷彿とさせたのは私だけか?
その元首相が叫んだ「ぶっ壊し」は、ジャブのように効いてきて予定通りダウン寸前。

 戦後最悪の総理と思うのだが、その王将が裏に隠れて弱い駒が目立ち始めると。
騙されたことにやっと気づいた世間の鬱憤は、使い捨ての駒に向けられ。
反省しなくちゃいけないのに、調子に乗ったマスコミに葬られるのは明らか。
「いまあの人は?」状態になるのも、時間の問題。何が正義何だか?ワケワカランッ!

 こんなのは市場原理でもなんでもなく、弱肉強食とか長いものに巻かれてるだけ。
真っ当に生きることが難しくなり、詐欺師ばかりが勝って一般市民は泣きを見るだけなのか。
生まれたての赤ん坊から悪者であったはずがないので、何処かで歪んでしまったのだろう。

 経済活動も政治活動も、失うと歪んでしまうのが「こころ」だ。
インディアンを追い払って築きあげた精神から生まれた、エセ経済学の「市場原理」。
そんなネズミ講みたいなモンを、日本人の「こころ」に当てはめて欲しくないと思う。

 騎士としての「新渡戸稲造;武士道」より「山本常朝;葉隠れ武士道」の「こころ」だ。

<団塊のお年寄りウオッチング>

 仕事柄、お年寄りの姿を見ると自然に目が追うのだが。
それは地元とか旅先とは無関係で、鏡に映った自分でさえじっと見つめる(ウソです)。
しっかり歩く方はちょいと見るだけだけど、よろつきでもしようものなら大変。

 ストーカーみたいにゆっくり後をついて歩き、10m安定歩行の確認は定番。
フラッとしそうになると、思わず手をさしのべてしまうのだが。
じっとしている方を見ると、悩みは多くその後の自身の行動判断に迷う。

 先日、横浜の駅構内階段の一番上でじっと俯く年齢(若くなさそう)性別不明の人。
構内を歩く人々は大きめに迂回するだけで、全く関心を持たない。
まるでその人がそこに存在していない風で、都会の微風になりきっている。

 諸君、そんなにせかせか歩いて何処へ行くんだ?
星が瞬くほど時が流れても、その先にあるモノの本質は変わらないよ!
足早に過ぎ去って行く音を聴きながら、嘆いているような呆れているような風。

 学会の3日間を通って、行きがけに3回とも見かけたこの方。
最初に湧いた疑問は「この人、生きてんの?」だったが。
2日目に通った時に、帽子の向きが変わっていて動いた形跡を確認。

 こうなって来ると性別や年齢も気になり出し、かと言って覗き込む勇気は無し。
想像が想像を呼び、どんどん膨らむ妄想は拡大し続けるカオスの宇宙。
とうとう出した結論は、ヤツは名のある哲学者か高僧ではないか?

 あまりにも深い思考であらゆる煩悩は吹き飛び、瞑想は周囲の音を消し去り。
風景も光さえも無の空間で、凡人には思いもつかないところに意識があって。
人通りが一瞬途切れた明け方に、短い時間だけ光の中へ吸い込まれて行き。
増え始める人通りと共に、どこからとも無く現れて階段にじっと座って居るのでは?

 私のような無信心モノには、どちらでも構わないのだが(ゴメンなさい)。
実はその彼(彼女?)は神様か仏様で、人々の善悪を見極め未来を定めているのかも?
その横を仲良く手を繋ぐお年寄り夫婦、彼らを見た途端に現実に引き戻される。
お年寄りウオッチングは奥が深く、見習うべきところも癒されることも多い。

<団塊はいなり寿司の涙>

 メインディッシュがいなり寿司だけの食卓を、貴方は見たことがあるだろうか?
私の大学院時代のいなり寿司は孤独ではなく、添え物としての存在感を見せていた。
焼きそば定食には気まぐれ偶然、うどん定食には必須アイテム、カレーには掟破りの意表。

「MIHIちゃん。ワシ稲荷3個と竹輪1本魚肉ソーセージも1本やな」とか。
「MIHIちゃん。稲荷2個に、カップラーメンにしよか。紅ショウガ大盛りでナ」とか。
「MIHIさん。あたしダイエット中なんで、稲荷2個で押さえとこ」とか。
 医局の会話に、いなり寿司は1日25回は登場するのは珍しいことではなかった。

 時は流れ総菜屋のガラス棚の上、稲荷と巻き寿司が平和条約を結んだのが助六だ。
助六寿司は稲荷に海苔巻きを同居させ、定番はそれぞれ3個ずつだから心穏やかなのだ。
13個と13個じゃ多すぎるし、3万個と2万8千個が並んでいるれば全国助六の日なのだろう。
どちらが多くても少なくても、海苔巻き派といなり寿司派が一悶着を起こすことになる。

 場合によっては、稲荷と巻き寿司の上に血の雨が降り注ぐなんて容易に想像できる。
だからと言って好きな方だけ食べて、残りを捨てるわけでもなくいつかは腹に納まる。
よほどの変わり者じゃない限り、順不同よりは交互に減って行くのが世の常。

 いなり寿司の数もさることながら、サイズにも大きな違いがある。
げんこつくらいの大きいヤツから、1度に3個頬張っても大丈夫なおちょぼサイズ。
「あたし、お上品なお口ざましょ。切手サイズじゃないと・・・」なんて会話はざらだ。

 具と言えば、ニンジン、椎茸、小エビ、ぎんなん、高野豆腐、ごま、小芋等々。
中の具がなんにもない酢飯から豪華絢爛ウナギの刻んだヤツまで、世間とデコチンは広い。
具を数え上げたらきりがないのに、いちいちチェックする人は少ないのは怠慢だ。

「ホオ、秋のいなり寿司だから。やっぱぎんなんを欠かしちゃ、お天道様に申し訳ない」
「高野豆腐は、濃い口醤油で甘辛く煮込んで欲しいモンだ。それだけでも、酒に合う」
「干した小エビは味が凝縮してるから、取り出して最後まで取っておくのが通だね」
「干し椎茸は、濃い口醤油で煮込んだ方がエエんだよ。大丈夫、色は変わらんから」
「ニンジンが入ってないと、地味でイカン。行楽も運動会も、稲荷はやっぱ賑やかに」
「ゴマってのは、なんだね。酢飯に合うし、前歯の間でプチッと潰れると香りが良い」

 1つの食べ物を囲んでこれほど会話がはずむのは、いなり寿司以外に思いつかない。
こんな時「んじゃ、五目飯の立場がないんじゃないの?」なんて、それは野暮ですよ。

 食べ方だってそうだ、巻き寿司ならガブリ3回とか大口一気とか。
例え具を全部外して皿の上に疎開させても、具の種類が変わるわけではない。
具を酒のツマミにしながら、最後に残った酢飯がへばり付いた黒帯状海苔をシメにする。
フィナーレを一口で行くにしても、丸めていただくのと端っこから啜るのかで違う。

 シメに至るまで混沌を極め、まっ適当でイイヤ!と食いついた端から溢れる酢飯1粒。
「最後だけは思いっきり大胆に、潔く食べて欲しかったウウ」と流す、いなり寿司の涙?

<団塊の妄想と虚実>

 タイトルをみて江戸川乱歩の「わが夢と真実」を思い起こした貴方は、マニア。
数少ない乱歩のエッセイ中、自分の生い立ちを著しているのは珍しい。
それによれば、彼の作家生活に入るまでに数多くの職業に就いたようで。
その経験が彼の作品に活かされて、バラエティに富んだモノになっているのか。

 その点では私なんぞ下宿の大家さんとこの家庭教師くらいで、あとは医者しかない。
見るも聞くのも医療業界のことばかりで、この世界にどっぷり浸かってしまった。
外の世界も医療業界の目を通してしか見られない、半端モン。

 同級生の中には、学生時代から信じられない体験をしたヤツが居るモンで。
町外れに移転した母校付近の下宿屋から、自転車で温泉街までほぼ毎夜通う。
行き先は温泉街ではちょっと名の知れたキャバレー、その呼び込みのバイト。

 もともと陽気で人なつこくて、声も大きくて良く通るから適任ではあるのだが。
ヤツが仕事を始めて2割客が増えたことで、スカウトしようと思ったらしい支配人。
彼が医者の卵じゃなかったら次期支配人確実だったから、残念がっていたそうだ。

 同窓会の時にその話を向けると、「もうちょっとで、危ないとこやった」。
「オネーちゃんのお小遣いに、余りモンのフルーツやろ。ワシ酒飲まんけど」。
関西で開業しても陽気さも人なつこさも変わらず、患者さんには嫌われることはない。
見た目にも「儲かってる医者」ムンムン、首・腕に金の鎖で時計も金色ジャラジャラ輝く。

「まだ勤務医やってんかいな、開業はエエデ。イヤ、ホンマ」
「ふーん、そう」

「あっちの方も奥さんだけ?あ、イカンなー。ワシなんか、直ぐばれるけど。エエで」
「ふーん、そう」

「この間、ばれてしもうて。子供の塾送り迎え用に外車買わされたんや、嫁はんに」
「ふーん、そう」

「なんせ、塾の出口に一番近いとこにはでっかいベンツ。それも、お抱え運転手付きイ。
 値段の順みたいに、外車がずらーっと並ぶんや。国産じゃ肩身が狭い、アリンコ」
「ふーん、そう」

「んで、うちなんか塾の入り口から500mはあるわナ、なっさけないこっちゃ」
「ふーん、そう」

「小ベンツになって、3m入り口に近づいたけどナ。嫁はん、うるそーてカナワン。
 あんたの往診車は軽でエエけど、あたしんはもっと高いんがエエって言うやろ」
「ふーん、そう」

「ピシピシ、ケツ叩かれて。夜も寝んと、昼寝して。稼ぎまくり競走馬やで。
 いやホンマ、クリニックの前で呼び込みしたいくらいや。カッカッ」
「ふーん、そう」

 彼の患者寄せ上手は、呼び込み体験から?と思う。

<団塊ペアの当直明け>

 せっかち性格そのままに雑用を仕上げ、久しぶりにヒマが出来た当直の夜。
22時を回り病棟の静寂を確認して、文庫本持参で当直室へ引きこもる。
手に持つのは「江戸川乱歩の推理試験」、ごく短編が試験問題でそれなりの解答付き。

 ササッと読めば5−6分で読み終えるストーリー1つ、さて犯人は?そのトリックは?
5問中3問正解、後の2問は「ちょっとルール違反とちゃいますかア」。
半分眠くて半分コーフンの、チャーハン的脳みそバトル状態。
電話をかけている主人公が殺されかけて、ホントの電話が鳴りちょい病棟にお呼ばれ。

 ササッと済ませて廊下ですれ違う当直婦長さんは、同じ歳の団塊の世代。
「あ、お休みなさあーい」
「あたし今から、遊ぶんです」

「この時刻じゃったら、丑の刻参りとか?雨乞い踊りとか?」
「バカなことを言わないで下さいまし。教育計画とかですッ!」
「やっぱ、悪魔の?あ、女は魔女か!」

「それを言うなら、お姫様か女王とお呼びッ!」
「ワシ急に眠くなってきたような、アホらしいような」
「じゃあ、そう言うことでお休みなさいませ」

 続きの3問をやっつけて、ちょいコーフン状態で寝たからか。
睡眠リズムの浅くなる1.5-2時間間隔で、座敷童君A・B・Cがやって来た。
最後のC君に起こされたのが4時半で、ドロドロ半覚醒で1時間寝返り打つあっちこっち。

 えいやっと6時に着替え、トイレの前で団塊婦長と鉢合わせ。
「眠そうじゃん。そーとー、夜遊びしたね」
「イエ、若いですから。チイとも、ゼンゼン」
「めん玉が、浜に打ち上げられて日干しになったトドみたいやで」

「センセと違いますッ!それより4時半頃トイレへ入ったでしょ?
 あたしの部屋の前を通って、スリッパをペタペタさせながら」
「あ、あれってワシじゃない。座敷童C君が帰ったんじゃろ」

「ヘッ、そんなモン飼ってるんですか?」
「飼ってるんじゃなくて、遊びに来るだけ。今度、婦長さんに紹介するわ。
 真夜中に遊びに行かすわ、AとBも時間差で」

「止めて下さい、そう言うの。聞いただけでゾクゾク、ぞわぞわ」
「武者ぶるいみたいな、勝負したるでエーみたいな?チビったらアカンで」
「凄く目が覚めてきましたから、申し送りして帰ろっと」

 団塊ペアの当直が明けた、朝。

<団塊当直にマンション

「へ、中川さんですかア。存じませんねエ。用件を聞いて貰えますウ。
 直ぐ切れたら、礼儀知らずの怪しいマンション屋っすねー」
1分後、「センセ、フルネームで中川りょうすけさんってご存じですか?患者さんとか」。
「そう言う方は、存じませんねー。ヘンドリックス・中川・ゴンの丞さんなら・・・」
「センセは外人とお知り合いなんですか、流石ですねー」で夜警さんに撃退して貰った。

 以前は暇な時に遊んであげたけど雑用が増えて、そうそうお付き合いも出来なくなり。
みょーに明るく一方的な、「あ、センセですかア。**のPですう。ゴジャゴジャ」
夜警チェックをすり抜けたミョーな電話も、第一声の分かり易さ。
「ハイッ」の後に声を出さないのが一番、2,3分ほど放っておくと。
「クソッ」で切れるか、「センセ、出ないなんて酷いじゃないですかーウウ」泣き落とし。
「根性のないやっちゃ、あと5時間喋ったら出ようと思っていたのにイ」ニタニタ。

何事もなかった当直日誌に、書き込むのは。
マンション販売電話とトラブルについて
 当直医にかかってくるマンション販売電話は、次第に手が込んできました。
大学関係者や開業医を装うのは、日常茶飯事です。
最近は消防署の関係者を装ったり実習看護学生指導の先生を装ったりする者や、
実在の医師を装う不届き者もおります。
また患者の家族と偽って病棟へ繋がせ、医局へ回ってくるものもあります。
これは、明らかに業務妨害です。

 こう手が込んでくると夜間当直は虚実の区別がつかなくて、
やむを得ず医局へ繋げてしまう結果になります。
先日は事情の知らない事務の中に、「いちいち繋がないように」
と夜警さんに注意された方が居られるようです。明らかに、これは筋違いです。
彼らなりに怪しい電話を撃退はされているようですが、限度はあります。
病院が行うべきリスク管理を、夜間当直に押しつけるのは如何なものでしょうか。

 我が家でもたちの悪いマンション販売の電話がかかってきますが、
「ナンバーディスプレイ」で電話番号のブラックリストを作っております。
これにより判明した悪質なマンション販売の電話には出ないようにしております。
1ヶ月は我慢して一度受けた電話から、ブラックリストを作り。
その電話に出ないようにします。その様な電話は多くても10も無いでしょう。
致命的なトラブルに巻き込まれないようにすることを考えるべきです。
ウソと思った電話が緊急性のある事実である可能性を考えると、
後になってトラブルに巻き込まれたら取り返しが付きません。
人の命を扱うだけに、ケチらずお金は使う時にはきちっと使い。
考え得る対処法で、トラブル回避をしては如何でしょうか?
僅かな支出とトラブル回避を天秤にかけて、思案する必要もないと思います。

 速攻で、ナンバーディスプレイを付けてネ。
以上                   当直医 MIHI

<団塊の善人志願>

 タイトルの「善人志願」から、江戸川乱歩の「悪人志願」を想起した方。
はっきり言います、おめでとうございます。あなたは、乱歩マニアです。

 彼はどうやって陰険にかつ無残に殺人をするか考えるのが、好きだったようで。
もちろん頭の中だけで、実行に移すことはなかったと思いますが(タブン)。
誰も思いつかないトリックを仕上げると、最高の喜びだったらしい。

 それが出来るのは、自分が善人だからであって、ホントに悪人なら最後まで行くはずと。
稀代まれなトリックを思いついたのは自分だけ!、喜び勇んで投稿しても採用されない。
暫くして自分より前に似たトリックを使った文献を発見、世界の広さを実感したそうだ。

 根っからの悪人が居ないように、根っからの善人も居ないはず。
何処かにターニングポイントがあって、程度の差はあってもどちらかに振り分けられ。
他人の評価に出会うわけだが、これまた他人の評価なんて曖昧なモノで。

 見える部分と隠された部分に、大いなるギャップが存在するのが世の常。
「このやろッ、許せねエ。ぶっ飛ばしてやるぞ!」と思っても、顔は笑顔ニタニタ。
「センセは大人しい、人格者ですねー」には、心の中で握ったコブシを緩めるしかない。

 我慢のストレスと発散を天秤にかければ、つい弱気になるのは何故?
気持ちの底に「善く見られたい」願望があるのが幸いして、波風を立てまいと思う。
これでストレスが蓄積されるのだが、思いっきり発散した後で反省するも良い。

 人生の折り返し地点を過ぎて赤が似合う歳になれば、善人で居ようと思う。

<団塊快挙>

「フエー。おとなっちゃ、こんなモン吸うとんか。わややノー」
「ホンマや、もうちょっとで死ぬかと思った」
 この会話が交わされたのが高校の卒業式の日、母校の直ぐ側にあるお城のてっぺん。

 飲酒は御法度とは思わないマジメな私は、高校生活の中で1度も喫煙はしなかった。
悪友と二人で「卒業まで吸わない」の約束を果たして、行動を開始した。
卒業証書を持って立ち寄るタバコ屋、看板おばちゃんは学生服をチェックして。

「あら、あんたら高校生じゃ?」
「大丈夫、さっき卒業してきたから」
「じゃあエエな。ナニにするんかな?」
「一番美味しいヤツ1個」
「じゃあ、これやね」で渡されたショートピース1箱¥50。マッチ¥5。

 濃紺の中にハトの絵が眩しく、開封すると銀紙が飛び出しそれを取り去る。
両切りだから箱にポンポン当てて、葉っぱを圧縮するのは近所のオヤジをみて知っていた。
悪友も真似て、準備万端。「んじゃ、行くか?」「ああ」。

 火がついた硫黄の臭いが心を騒がせ、二人とも思いっきり吸い込んだから。
タバコの先は真っ赤に燃えて、たき火の煙とはほど遠い煙が肺に一気に侵入した。
あの時は座っていたから、倒れて怪我をすることはなかったが。
二人とも後ろへ仰け反って、草むらへ倒れ込んだ。これが喫煙所体験のお城のてっぺん。

 喫煙することが大人の仲間入りをしたような気になった、大学時代。
大学院になって「両切りピースは、やっぱ体に悪いかも?」とフィルター付きピースに。
「お前が、そんなきついのを吸うと。貰えんやろ、軽いのにせーや」で、チェリーに。

 そうこうしているうちに、人並みに結婚すれば家じゃ吸えない。
研究室だけの喫煙が、「これなら止められそう」に変わって13年目の快挙で今日まで来た。
「酒は17才から馴染んでるから、止められん」と言い続けていたのに・・・。

 <ウッ、何か胸騒ぎ>で、循環器医の端くれだから脈を取り不整脈を確認。
同時に脳みその中で心電図モニターの波形が流れるから、普通の人以上に気になる。
こうして、続けば42年目の快挙となる事件が勃発した。(んな、オーバーな!)

「マジッスか!体が受け付けなくなった、ワケ無いし」
「まあね。17才から始まった飲酒歴42年にして、大いに反省したワケよ」
「1週間も飲まないと、禁断症状出んですか?」

「酒のない世界でも、ワシ生きて行けそうな気がするわ」
「ボク、ゼッタイ有り得んです」
「まあ、ワシ結婚してタバコ止めたし。っつーことで、孫が産まれて酒止めたワケ」

「センセ。そんなことして貰ったら、病棟が迷惑します。ビールだけでも」
「ワシの酒と病棟と・・・どういうこと?」
「酒飲んで、憂さを晴らして。6回キレるところを1回にして貰わんと」

「そんなことより、アルコールが抜けたら体壊すでしょ?そんなムチャしたらイカン」
 話を聞いていた同じ歳の事務長さん、いきなり参入。
「ほんでも、禁酒1週間。絶好調なんじゃから、アルコールは体に毒やでエ」

「んでも、カシスとかブルーベリーよりクランベリーが焼酎に合うって。
 1:1で合わせて氷をぶち込むと、下手なワインより美味いって言うとったでしょ。
 あ、焼酎でじんま疹が出て止めた。そら、焼酎の祟りかも」

「だからウイスキーに変えたバッかじゃったのにイ、それも止めた」
「アルコールが拒否反応起こしてるんちゃういますかア?フツーと逆で」介護士P。
「そらセンセ、スタッフに嫌われるくらいだから。アルコールに嫌われるかも」ナースQ。

「体からアルコールを抜いて、不浄な体を清めなさいって。お告げでしょッ」ナースZ。
「ワシって汚れじゃったんじゃ。ヤなお告げじゃねー、イヤミだね−。
 しかし、大きなお節介だねー。んでも、いま現在高校3年生なんよ」ケリをつけたのに。

「知能程度がですかア?あ、精神年齢か!」
「ちゃうちゃう、1日分アルコール300キロカロリーとして。1週間で2100キロカロリー。
 止めた分ダイエット効果で、1Kg減の絶好調。このまま行くと、夏の人気モンやね」
「どんどん減って、幼稚園児並みになれば良いのに」

「おばちゃん、飴食べたいッ!アイスも」
「精神年齢は、既に幼稚園児ですわ。孫も生まれたことだし、これからは細く長く。
 邪魔にナランように、ひっそり生きて。真っ当な人生を歩みなさいませ、ナムう」
「拙僧、修行に励みまする」

 MIHIセンセは修行を積んだ有り難い僧侶として生きて行くかも知れないのだ。
ナム、はんにゃーメン。こうして、粛々と4快挙は続いている。

<団塊のユアペース>

 田舎だからと言うわけでもないし、若者が居ないというわけでもない風景。
チェーン店でもない小さなコンビニの入り口の階段に、3人バッちゃま腰かけて。
「こんな日は、冷やいモンもエエのー」とか言いつつ、アイス最中を頬張り。

「あんたいくつになったか?」「あたしゃあんたより3つ上」。
「んじゃあ、87か?」「イヤ、83」
「んじゃあ、年下じゃったかい?」「そうかも知れん」

 こんな会話をしてのどかに過ごしているのかも?バッチャン達のペース。
昼食後に入ったスーパー、買い物カートに籠を載せて奥様に小判鮫。
必死の形相で小走りにこちらに近づいてくる、私と同年齢程のオヤジ1人が視野に入る。
はて知り合いだったっけ?と、思いを巡らしても出てこない名前も素性も。

 2mまで来てようやく何かに気付き、ササッとUターンし入り口へ急ぐ。
名前を思い出せない知り合いじゃなくて良かったと、安堵して店内を彷徨き始めると。
5分後に再び接近してきたそのオヤジ、やっぱ知り合い?んなはずないしイ悩み始める。

 再び2mまで来て前方を凝視しながら私をかわし、直ぐに背中を見せる。
腹でも壊して店の外にあるトイレに駆け込んだのか?見送る姿に2カ所の変化。
握りしめる財布と背中の汗、引きつる目はお疲れ気味。

「あんた財布は?ヘッ、車の中!直ぐとってらっしゃいよ」「よっしゃ!」かな?
団塊のオヤジはその時、次のオーダー前に想定し直ぐやっつけちゃうせっかち。
始動し始めるとすっかり周囲が見えなくなって、目的に向かってまっしぐら突き進む。

 ただでも速度が増すと、視野が狭くなるのに。
滅多に走らないから、視野は殆ど10cm幅に近い(ウソです)。
コウモリみたいに、前方に超音波を発信しているワケじゃないけど。

 このまま突っ走ったら、何かか誰かにぶち当たる位は分かる。
ペース修正を図り、取りあえずこなしたタスクがユアペースを取り戻させる。

 ほんの数時間の間に、色んな方のペースの風景をエンジョイした休日。

<団塊の音>

 全盲のピアニスト辻井さんが、世界的な評価を得てコンクールで優勝した。
ずいぶん前に、TVのドキュメント番組で何度か紹介されていたのを思い出す。
つい最近聞いた話で「風の音も音楽になる」と聞くと、想像を絶する凄さだ。

 とにかくピアノを弾くのが楽しく、指導して貰う先生の演奏をテープに録音して覚える。
何度も聞くうちに弾けるようになるそうで、彼の周辺のあらゆる音は音楽になるのか。
演奏後の聴衆の拍手や歓声を聞くだけで、感動の表情まで分かってしまうのだろう。

 そんな彼の感性とは雲泥の差がある私の聴診技術は、口にするのも恥ずかしいくらいだ。
30年以上呼吸音と心音を聞いてきたが、未だにちょっと油断すると聞き落とす情けなさ。
プロはかすかな音も聞き逃さず診断に繋げるはずだから、「プロだ」と言うのを止めよう。
「聴診のセミプロ」くらいに落とせば、気恥ずかしさも減り言い訳も効きそうな気がする。

 聴力は歳と共に衰えると言われるから、還暦を迎えた私は肩の力を抜いて行こう。
「昔は聞き逃さなかったんだけどなー、もう歳だから」を唯一の言い訳にするのは止めて。
「若い人にはどのように聞こえますか?」から始めようと思う。

 よほど根性がないと、先輩の所見と違うことを言えなかった団塊医師の駆け出し時代。
時の流れの中で還暦を直に迎えるところまで来たから、風の音に耳を澄ませるのも良い。
出来るなら周りの音を音楽に変換し、質素に音を楽しむ余裕を持ちたい。

<団塊のホタル川柳>

 昨夜は、夜遊び夫婦で夕食兼ホタル見物としゃれ込みました。
昨年までは我が家の近くの小川で、6月前後になると蛍が飛び交うのが見られたけど。
どこもかしこも川縁にコンクリを貼って、蛍が住みにくくなったようでなりを潜め。
仕方なくホタル保護地域での見物と、相成ったわけで。

 夕闇が迫るのが20時前後になった昨今、時間調整が大変で。
しかもエンジョイ出来る期間は、梅雨入りの雨で幼虫が流される前となると。
運が良くて2週間、そうじゃなかったら1週間少々もあり得るわけで。
その上に個人的に当直を外せば、思い立ったが吉日となる。

 夕食前に大きな文具店に行って、自作千社札作成のためのシール用紙を購入。
講演会の出席記帳、封筒の封印みたいなシール、その他諸々と用途は広い。
久しぶりの釜飯なら注文して運ばれてくるのに、最低20分は時間つぶしが出来る。
ウグウグしながら、落語家風に枝豆なんかをヒュッと吸い込んで更に時間が過ぎる。

 早めに駐車場を確保するため、ほの暗くなる前に到着して。
学生時代からある喫茶店はホタル保護区の直ぐ側、これまた懐かしのフルポン注文。
メロン・バナナ・リンゴ・缶詰ミカンに、緑色のソーダ水に2ヶの氷。

 奥様以外の女性とデート経験ゼロの私、悪友となら数えられないくらいのコーヒー歴。
前にエンジョイしたフルポンの日は、忘却の彼方で思い出せないほど。
そんなことを思いつつ、ストローでバナナに穴を開けたりソーダを吸ったり40分。

 日が落ち始めて辺りがほの暗くなると、せっかちなホタルはチカチカ始める。
10分も彷徨けば、やっとエンジンがかかったホタルたちが活気を見せ出す。
さらに10分徘徊して、詠んだ川柳2句。

 なんでホタルの写真撮る時に、フラッシュ焚くかなー。と言うことで。
「ホタル飛び フラッシュ焚けば ただの虫」どみ庵

 「取るな、触るな、見るだけよ!」の看板あちこちで、ホタルも安心して飛び交い。
時たま、小さな蛾がホタルの演舞の中を紛れて飛ぶんですね。
街路灯に一瞬照らされて「あらっ、ホタル?」、で詠みました。
「尻(ケツ)ライト 紛れて飛べば 蛾もホタル」ドミ庵
確かに尻に小さな懐中電灯でもつけて、ホタルに紛れて飛べば蛾も・・・。

<団塊の雑用>

 取りあえず切羽詰まった作業は、栄養サポートチーム(NST)チェック。
色んな文献を元に勝手に作ったスコアリング、「これっては結構使えるじゃん!」呟く。

 およそ30例を一気に仕上げて、オリジナル寝たきりの方のQOLスコアチェック。
このスコアは、誰に命令されたワケじゃないのに基礎研究から論文へ。

 さらに勝手に「栄養評価とQOLはリンクするか?」を、スコアで検討しちゃおうと。
なにせお相手が超高齢で寝たきりの方13名だから、途中で肺炎や心不全、転院が鬼門。
9ヶ月経過して6例が存命で、ちょっとデータ数に問題が生じ。

 基礎研究という名目でものを言えば、確定的なことを言わなければ許してくれるやろ。
相変わらずのお気楽かまし、さてデータのばらつきを検討するにも無理があり。
そうなるとノンパラメトリックな統計処理しか選べないから、益々昏迷を深め。

 忘れかけた統計学は頭が割れそうだけど、遠くへ追いやっていたテキストを引き寄せる。
どうも勢いがつかないので、BGMに1961年ビレッジバンガード・ライブアルバム3枚組。
エバンス師匠にお出まし願って、それだけじゃ足りなくてコーヒー入れて気を散らす。

 今年書き殴った2扁の論文別冊と、ちょいとお手紙は芝生同好会みたいな教授宛。
封をするのに使うのは、似顔絵入りオリジナルシール2枚。
ここに気づいて貰えるやろか。5枚奮発した方が?と、ちょいと心配になる。

 独りエアコン・シロクマ状態の医局、ドアをノックするのが聞こえなかったからか。
「センセえ−、コラあ。音が大きいッ!」顔を出す主任さん。
「み、見逃しチくれー」

「んじゃなくて、ヒマしょ?このパソコン治して貰えません?やたらエラーが出る」
「何やそんなこと、エラーバッかはワシみたいと。あんた思ってるやろ。置いてお帰り」
「じゃあ、明日までにヨロピクう」

 立ち上げて、エラーチェックと修復かけたら治っちゃって。
「楽勝やんか。ワシにもエラーチェックをかけたら、エラーが出んようになるかも」
ブツブツ呟く、休日当直の午後。

 更に暇つぶしは、娘から送ってきたベビー体操中の孫の写真を見ながらのイラスト描き。
15分で仕上げて眺めつつ、「なんか段々上手くなってきたんちゃう」の自画自賛。

<団塊のケーキと講演会>

 滅多に行かない講演会には、滅多に食べない(ダイエット中で食べられない)ケーキ。
貧相な交流会は脱走する手はずで、行きがけに既に3個のケーキを手に入れ。
講演会場のホテル受け付けに頼んで、カードと引き替えに冷蔵保存オネガイ。

 不整脈のお勉強なのに後半は「行動経済学」とは、興味津々で1時間はあっという間。
4つのポイントも参考にさせていただいて、拍手と共に「センセ、懇親会が」を振り切る。
チャイムの10秒後ドアが開いた途端、「こんなモンを」に「あららー」。

 コーヒー啜りつつ半分こして、2つの味を楽しめば風呂上がり。
不整脈講演を反芻しつつ眠りにつけば、週末なのに6:45お目々ぱっちり。
ネットでちょいと調べ物小一時間、階段を下りてくる音が次第に大きくなると朝食。

 ビルエバンス廻しながら新聞開いて、買いたい本をメモする。
1冊は昨夜の講演のセンセが書いた不整脈の本、次は行動経済学入門書。
お好み焼きとウグウグノンアル絶好調、さっそく庭仕事。

 腰痛予防に、「作業時間は15分、引っ込んで30分エバンス」のローテーション。
休憩中に読み始めるはずだった行動経済学入門書、つい買ったパソコン雑誌に追いやられ。
結局雑草が減った庭と、読み終えたパソコン雑誌で日が暮れた待ったりした休日。

 担当ではないけど昨日関わった突然徐脈のバッちゃま、電話で情報を得る。
なんせいきなり脈がいつも80が40になっちゃって、あれこれ除外診断しつつ指示。
心電図で処方した薬が想定以上に効き目があって、ちょいと意外ながらも嬉しい知らせ。

 ケーキを餌に自分磨きせねば!と思った、休日の午後。

<団塊のGL(ガイドライン)>

 昨今、どの病気にもガイドライン作りが大流行で。
ちょい専門領域の循環器・呼吸器・老年医学にも、ガイドラインが花盛り。
先日、ある不整脈のガイドラインの作成に携わったセンセの講演会に出席。

 ガイドライン通りにやらなかったら間違いではないが「お勧め」だと念を押す。
その不整脈に関するガイドラインはA4でおよそ100ページで、2度目の読破が目前。
お勧めの根拠としての研究対象が100例であったり、1000例を超したり様々。

 今まではOKだった治療が、ガイドラインを境にどんでん返し無意味になって。
循環器以外の先生によほど周知していないと、ガイドラインがお勧めとして活きてこない。
と言うことはもしかすると、専門外で馴染んでいないガイドラインが山のようにあって。
何を何処まで勉強して良いのやら、ワケワカランッ!状態になりかねない。

 そんなことを思いつつ、カルテを書くステーション。
ナースPの蔭が、MIHIセンセの背中に忍び寄る。

「センセのサマリーに書いてある、なんたらガイドラインって何?」
「まっ。簡単に言えば、ゼッタイじゃないけどお勧めって事らしい」

「ハイハイ、皆まで言わずともOK]
「あ、流石やねー。分かりが早いねー、早とちりかもねー」
「例えばア、フレンチのお店で良くあるじゃないですか。本日のお勧め、みたいな」

「ちょっと緩すぎるけど。まあ、そういう感じかなー」
「気まぐれってーゆーか。我が儘ってゆーかー」
「気まぐれとか我が儘か、ガイドラインが」

「本日のお勧めは、オーナーの気まぐれ素麺風味パスタみたいな感じイ。
 それとも、シェフの我が儘お好みピッツア無国籍風みたいな」
「ワシ。ガイドラインが、だんだんワカランようになって来た」

 ガイドラインの見方が変わった午後。

<団塊は夫婦でポンッ!>

 2001年4月。7:55朝食を焦っていただいて出発。
O観光事務前には既にバスが到着し、チェックを受けて乗り込む新車バス。
「おはようございます!」にこやかな添乗員が喋り始めると、
プシュっと、かねてから用意していた缶ビールはもう経験することは無いねー。

「えーと、おつまみはポテチね。」も、懐かしい禁酒前。
まだ8時5分だっちゅーのに、宴会気分のMIHIセンセ。
「ウグウグ、パリ。シャカシャカ」は止まらない。

 1つ前の席には、金髪若者カップル。二人とも、でっかいのなんのって。
何を食えばあそこまで遠慮無しに大きくなれるのか、二人に聞きたいほどじゃった。
手足の爪は鮮やか、真っ赤っか!
その彼女は、パンパンにふくらんだ大きなスーパーの袋を前に掛けて清涼飲料水をグビ。
その飲みっぷりに、「うーん、ただ者でない雰囲気!」
添乗員の話も、移り変わる景色も関係ない。
ただひたすら、食べまくりの飲みまくり。
脱ぎ捨てられた厚底ハイヒールつっかけが、足元であっち向いてホイとこっち向いてドテ。
二つの袋菓子をやっつけて、安心してはいられない。
朝の腹ごしらえに?サンドイッチを取り出した。
ここまでが、40分。ハウステンボスまで、あと3時間20分残っているんです。

 下関のインターでトイレ休憩。
売店をうろついて、面白いモノを発見したMIHIセンセ。
「え、サブリミナル効果を利用した肥満解消法のCDって?」
¥1500は、ちょっともったいなくて・・・。
気になるCDのジャケットには、6曲の題名が並んでいるだけ。
それ以上のことは、企業秘密なのか記載がないので分からない。

 バスに帰った頃には、ほろ酔いで良い気持ち。
それにしても、さっきのCDが気になりだしたMIHIセンセ。
サブリミナル効果・・・肥満解消法・・・。
こうなったら、自分で作ってみるしかないわけでして。

 音楽は、インド風のヤツで決まり。シタールかなんかが、ビヨーン・・・ビロリーンなんてね。
問題はサブリミナル効果ですわ。どうやるか?

例えば、音楽の合間に< >が小さな声で入っているとか?
ビヨーン<こりゃ!そんなに食べたら、ブタブタ>
ビロリーン<あんたのその腹、みっともないねエ>
ビーイーン<夏は暑いよ、汗もだって人の3倍じゃ!>
リンリンリン<エエ加減、口も休ませてやらにゃ!>
ビローン、ビンビン<鏡を見たことあるんか?>
ピンピーン<あーあ、そんなに早死にしたいわけやね>

 こんなクダランことを考えてちょっと油断したら、金髪オネーサンは3つ目の袋に手を掛けたんです。
肩幅もおにーさんと良い勝負じゃから、こんな袋は一気にパリッと開封ですね。
勢い良すぎて、2,3個チョコが飛び出しても気にしないところが立派。

 おや?その二つ前の席は、初老の息子とそのオヤジ。
新聞を広げて口論開始!スポーツ欄らしい。
どうやら、ごひいきの野球チームが違うらしい。
紙面を指差しながら、なんだかんだらしい。

 お隣は、おばちゃん二人。
さっきの休憩で買ってきたモノは、飲み物も食べ物も双子状態。
でも顔と体格は、まったくアカの他人状態ですけどネ。
先の思いやられるバスツアーは、まだ1/4です。

 朝っぱらからのビールに、うとうとしていたら金立のSA。
ボーコーをすっきりさせて、目もすっきり覚めたMIHIセンセ。
自分の座席に座った時に、前を見て顎がはずれそうになったんです。
金髪オネーサンは、左手にうどんのカップは良いとして。
右手にクレープみたいなアイスクリームを持って、箸をくわえているじゃないですか!
どっちも金髪オニーさんのモノじゃないことは、
「食べちゃダメよ!」で、了解!!

 3分でうどんを啜ると、
「ハイ、ありがと。」
アイスクリームの着物(くるんでいる紙)を、素早くビリビリと破いたんですネ。
クリームが溶けてしたたる前に、お腹にすっかり納まってハウステンボス到着。

「数年前に来たときは、レストランが混み合ってまして。2時頃にはゆっくり召し上がれます。
それまで、あちこち見て歩いて。すっかりお腹を空かせると、何でも美味しいです。」
ガイドさんから、こんなアドバイスを受けて駆け込むハウステンボス。12:00ジャスト。

 取りあえず参考書にありました、チーズフォンデュ&ビールのお店へまっしぐら。
入って2階へ、トントントン。静かな雰囲気に、「?」。
何やの、空いてるじゃん。それでも椅子に座って待つこと5分。
「お客様、こちらへどうぞ。」
で、テーブルに着いたとき。待ち椅子に、ぞろぞろ座っている客を発見。
「ほんの5分の違いで、あんなになっちゃって。」
太い指をさすMIHIセンセに。
「危なかったわねー。」と言いながら、ビールをグビーの夫婦です。

 半分くらい食べた頃に、後ろの席で声がするんです。
「ちょっと、ちょっと。」
ささっと近づくスタッフは、
「ハイ、ご注文でしょうか?」
「違うわよ!いつまで待たせるの?あの客と、あっちの客はあたし達よりあとから入ってきたのよ。
あ、今お金払ってるのは。えーと、一緒に入った人。どうなってんのよ!?」
テーブルにひじを着けて、怒る気もないおばちゃん2人。
腕を組んで、顔を赤くして怒鳴ってるおばちゃん1人。
「ファーア」欠伸をしているおばちゃん1人。
合計4人は、腹を空かせてカンカンになってるワケで。

「料理によって、順番が後先になることもございまして。」
「何言ってんのよ。あそこの客が食べている料理は、何よ。知ってるわよ。
あたし達が頼んだヤツと同じよ!あたしは、ずーっと見てたのよ。」
「申し訳ございません。伝票に、オーダー時間が書いてありますので調べて参ります。」
「んもー、あたしを信用しないワケね。分かりましたッ。
そんなことしなくても良いから、さっさと料理を持ってきなさいよ!」
「ご注文は・・・。」
「えーと、あたしは・・・。」肘着きおばちゃんが言いかけたとき。
「あれと同じヤツを4つ!で、良いでしょ?」
怒りながら、仕切りまくるカンカンおばちゃん。

 MIHIセンセ夫婦は、昼間のビールに既にルンルンして。
怒るおばちゃん達の横を通り過ぎたのです。
その時、後ろで聞こえたのは。
「あの人達、あたし達より絶対あとに入ってきたわよね。」
思わず、「そーです。私たちは、絶対に後から入ったモンねー。」
と言いそうになっちゃったMIHIセンセです。

 満腹、ほろ酔い、上機嫌で茶色い石畳をうろつく二人。
勢いが着くほど、ビールを飲んではいないけど。
勢いをつけて、入り口でもらった地図を上にしたり斜めにしたり。
挙句のはてにくるっと回したりして、
「えーと、これがあれだから・・・。」
「ネエあれって、バス停?」
「そうじゃ、きっと。」
時刻表を見ていたら、バスが止まったんで。
「あのー、これってパレス・ハウステンボス(注:オランダ王室の宮殿を再現したモノ)に行きますか?」
「ハイ、どうぞ!」
「えーと、200円ね。」
昔の外国のバスって感じの、おんぼろバスに乗り込む二人。
前のほうに、4人家族が座っているんです。

「ネックスト・イズ。えー、ホテル・デンハーグ。」
「レフトサイド、ミュージック・シアター。ユ、ノー。」
「イエス。」
オイオイ、このバスはいつからNOVAになったんじゃ?
バス通学・・・バス留学・・・バスガス爆発・・・なんのこっちゃ。
「イフ、アイワー・・・アメリカン・・・違うっチュ−の!」

 4人組はどう見ても日本人家族なんじゃけど・・・
突然、父ちゃんが母ちゃんに向かって、
「カサムニ、ハンギョク(みたいなカンジ)・・・スミダ。」
で、すぐに了解しましたネ。

 終点で降りて、パレス・ハウステンボスへ向かうMIHI夫婦。
「ホウホウ。結婚式があったような。」
「あ、ホント。新婚さん。」
 ドーナッツ状になったチューリップの植えこみの、空洞部分に入りこんで記念写真を撮っていたんです。
MIHIセンセも調子に乗って、「あそこで撮ろうヤ。」指さすチュ−リップのドーナッツの穴。
奥様はフツーに撮ったのに、MIHIセンセは座り込んで花びらに埋もれたアルプスのハイジ風(?)。

 その後ろの建物の正面に行くには・・・とりあえず、建物を突っ切ったほうが手っ取り早い。
入り口でカードを購入して、木の階段をぐるぐる回って上がったり下がったりしているうちに玄関へ。
見下ろす庭は、植木と砂利でできているんですけど。
植えこみの模様が、トランプの背中の模様状態でして。
綺麗なような、不自然なような。

 銅像の前に立つMIHIセンセは、記念写真は銅像の真似をするのを忘れない。
「んー、もう。」と奥様に笑われても止めない、筋がね入りの「本家お調子乗り」でして。
結構写真を撮って、「ハイ次ぎ!」。
ハウステンボス早回りツアーは忙しいのなんのって。
一箇所で、じっくり見ようなんて言う気にならないんです。
時間との勝負みたいな。「ハイ次ぎ!」が合言葉。

「なんか、刺激が無いねー。」ってことで。
先ずは「大航海体験」の刺激を堪能しまして。
こいつの画面は、波の揺れと浸水がメインだけに。
鉛のトンカチ状態のMIHIセンセは
「オイラ、泳げないんじゃー!浮き輪をおくれー・・・。」
こう言うヤツの場合は前後の席は揺れが大きいから、酔っ払いには特にお勧めです。
胃袋の中で、アルコールが撹拌されて酔いが回るのなんのって。
「昔のドヤ街の酒飲みは、ウイスキーを注射して全力疾走したらしい。
こいつをやると、たった10mlでグデングデンになるとか。」
会場から出てきた時に、そんなことを思い出しながら「ウップ」のMIHIセンセです。

 「んーと、次ぎの刺激は・・・。」で、列に並ぶMHIセンセ夫婦。
「ノアの劇場」は、空を飛ぶやつでして。
でんぐり返ったり、クルクル旋回したり。
思わず「TOKIOッ!TOKIOは空を飛ぶッ!」で、ジュリー状態。
前から2番目の席に陣取っていたMIHIセンセは、ヨロッとしながらもホットして広場へテクテク。
今日は良く歩いたもんだ、3時間で約3万歩!
でも、ビールはやたら飲んじゃうしソフトは食べるし。
体重計が怖いわいワイ!(実は・・・1,5Kgも増えていたんです・・ウウ・・・)

 広場では、3人の似顔絵描きがお仕事をしていました。
「あれにしようか?」
サンプルを見ながら、雰囲気のいいヤツに決めたんです。

 筆でも、毛筆で描く仕事士の前に座る二人。
「時間はどのくらいかかりますか?」
「15分くらいです。」
「二人で¥3000ですね。消費税は無しでよろしく。」
ソフトを食べながら、あっち見たり似顔絵描きと眼を合わせたり。

 ジーっと見たり、チラッと見たりしながら仕上げてゆくんです。
男の人にこれだけ見つめられたのは、生まれて初めてでして・・・。
MIHIセンセの分が終わって、奥様に移った瞬間にセンセは立ちあがるんです。
カメラを構えて、途中の似顔絵と絵描きの後頭部と奥様のトライアングルを激写。
満足して椅子に座り込むMIHIセンセ。

「奥さん、美人ですねー。」
「そうじゃろ!あんた、良いこと言うねー。」
(どうやら、彼は韓国人らしい。儒教の国の方は正直で良いや!)
ここでお調子乗りのMIHIセンセ。言わなきゃ良いのに。
「じゃあ、ボクは?」
「え!?んーっと。おニーさんは・・・。」
(おじさんって言わないってエことは、お世辞のひとつも言うだろうね。きっと。)
「まあ、フツーです。」
(メチャ、儒教精神じゃん!消費税分払うから,オ・ネ・ガ・イ・ッ。なんか、どっか誉めるとこがあるでしょ?
例えば、お腹の出具合がとっても上品とか。つぶらな瞳の上に生えている眉毛の艶が、なんとも言えないとか。
大サービスで、ふやけたもみじ饅頭みたいな指が、カ・ワ・イ・ッとか。)

 むかっ腹立てていたら、
「出来ました。ハイ、どうぞ!¥3000です。アリガト、ございました。」
オレンジ色の袋に入れてもらって、広場を撤収。
出口のみやげ物屋さんに直行する二人です。

 「チーズはいかがですか?」さすがに、いろんなチーズが言うだけあって。
全ての試食をするには、力が入ります。1、5周の試食に成功したMIHIセンセ。
「あとは、ビールだけじゃね!」
出口のお店で、缶ビールを一本。このとき、バス出発5分前。
トイレ休憩以外は熟睡のお客さんばっかりになった、今回のハウステンボスバスツアー。
山口に着く頃に、眼が覚めた。

 ここを狙っていたのか?添乗員は、小柳トムのオヤジ風。
「またの機会にお会いしたいモンです。イヤ、先日は敬老会のツアーだったんです。
 体だけは大事にしてくださいね。そう言い、ヨーク考えると平均年齢80歳ちょっと前。
 あたしゃ、言いました。命があったら、次ぎにお会いしましょうね。
 でもね。人間、明日は何があるか分からないから・・・。
 せめて、旅行の間にだけは死なないでね!って。」

 ギャグも、夜風も寒かったツアー。一時間遅れで、21:00に山口に到着。
そのまま、エスニック料理のアジアン・キッチン「API・API」へ。
早速テーブルへつき、オネーさん!ビールを2本を持っておいで。
ハウステンボス・バスツアーの締めくくりは、栓抜き使って「夫婦でポンッ!」だが。
その後は、ノンアルビールの夫婦でポンッとなった次第。

<団塊の、オヤジとの関係>

 小中学生の頃のオヤジは、怒鳴ったり暴力を振るうわけじゃないのに恐かった。
物心が付く高校生になる頃には、ワケもなく反発し始めても恐かった。
「あんなオヤジにはなりたくない」なんて言いつつ、鼻息が荒かったのは何故だろう。

 還暦を通り越す頃には、「あ、そう言えばこんなことオヤジもしてた」に気付く。
ちょっと痰が絡んだような、「ウエッヘン」みたいな咳払いがそれだ。
若い頃は喫煙の習慣があって、結婚する頃に禁煙をしたのも親子で似ている。

 歳を取ってくると、オヤジは食事中の口の周りが気になって。
小さなタオルで一口ごとに、大して汚れていないのに拭き取る。
食事毎にタオルを変えるから、小さなタオルは沢山あっただろう。

 そう言う私も、食事中にティッシュかおしぼりを手放さなくなった。
一口食べては、汚れていなくても気がつくと口の周りを拭き取っている。
1回の食事に、ティッシュなら少なくとも10枚は使うだろう。

 歳をとってから読む本に、やたら難しい本を選ぶのも似ているようで。
私がいま「西田幾多郎全集」で四苦八苦しているのも、そうかも知れない。

 ただ一つ分からないのが、酒だ。
オヤジもボクも酒を飲むのだが、二人で酔っぱらうまで飲んだ記憶がない。
同じように飲めば圧倒的にオヤジの方が強いから、倍の酒を注いでも勝てない。
だからオヤジが酒を飲んで、酔いつぶれるのを見たことが無く禁酒生活。

 オヤジが肺癌を患って入院して、「あとはお前に任せる」と言った。
どんな治療にも文句も質問もなく、黙って処置を受け黙って死んでいった。
主治医と患者であるオヤジとの力関係は、亡くなるまで変わらなかった。

 医学には素人のオヤジだが上だったのは、ボクのオヤジだからだ。

団塊の音

 団塊の世代にとって心が躍るモノと言えば、1つは少なくとも音だろう。
テープレコーダーと言えば、テープむき出しのオープンリールテープレコーダーが常識。
放送音源はAMラジオからFMラジオに変わり、音質の良さに驚いたのなんのって。

 レコード全盛時代は、知ったかぶりでプレーヤーの針と音楽の相性まで決めた。
ターンテーブルを廻すなら、ベルトじゃなくてダイレクトドライブじゃなければとか。
コンポステレオは憧れであり、ウオークマンを手に入れるより輝かしく遠い存在。

 田舎に住む私には、音へのこだわりはステレオ関係の雑誌の批評から得て増幅し。
手に取ってみて音を確かめる手段がないから、情報源はこれが全てだ。
この手の雑誌は殆どの人が予約だから、そうじゃなければ発売日にしか手に入らない。

 その記事の中でワケが全く分からなかったのが、真空管アンプの暖かさだった。
確かにスイッチを入れてフィラメントが赤く染まり、音が出るまでには3分以上かかった。
赤くなった真空管は熱をゆっくりと放出し、触れると火傷も事実。

 レコードからCDに変わったとき、意固地になってミョーなこだわりを主張した。
針を降ろす緊張感や、針を降ろして音が出るまでの溝を擦る音が良いとか。
音とは関係ないことも、無理矢理に音に結びつけて当たり前のように語れられた。

 ゴミと湿気に加えカビだけでなく手の脂にきを配る癖は、CDもレコードも同じ。
聴きたい曲だけダウンロードする昨今、米国のCD業界は低迷した時もこだわりを見せた。
アルバム選曲における哲学は、ダウンロードじゃ分からんとミョーなことを言い出す始末。

 こうして多くの団塊の世代は、「やっぱ真空管とレコードの絶妙な関係は良いねえ」。
AMラジオで、「100万人のポピュラーリクエスト」なんてのをチェックしながら。
ビートルズやディンマーチン、プレスリーの歌詞を、カタカナで覚えて得意になっていた。
歌詞の意味を理解したのは、「懐かしのあの曲」で聴いた頃だった。

 生まれて初めて買ったレコードは、カスケーズの「悲しき雨音」。
梅雨の時期に、いまだにこの曲が放送されることがあり懐かしい。
ほのかなノスタルジーを感じさせるこの曲に出会う季節到来が近い、団塊の世代。

<団塊久しぶり>

 買い換えた不調のディスプレイ、やはり気になっていたアスペクト比(縦横の比率)。
調べればPCのグラッフィクボードに問題があるらしいから、ショップに出向く。

「このマシンに、16:9表示できるグラフィックボードはある?」
「お客さん、パソコン大事に使っていただいてるのは良いんですが。6年も使われて」
「まあ、10年は使えるけど。OSに対応するソフトが無くなって、泣く泣く処分やねー」
 前のノートPCなんか、やっぱ10年じゃったね。まだ3年は使えたかも」
「そう言う方ばかりだと、ウチ潰れます。お客さんの機種に合うボードは、ありません」
「んじゃ、あと3,4年使い倒してから新しいのを買うわ。メンテがエエから、サクサク」
「買い換えを、お待ちしてます」

 久しぶりに周辺器機を買おうと思ったけど頓挫して、かねてから計画していたうどん屋。
このお店は我が高校の直ぐ近くにある製麺所が、チェーン化して出したらしい。
ゆで上がるのが間近に見られなかなか良い太さに、うどんは喉ごし命だから喉が鳴る。
うどんの味を見るなら、湯がいたうどんにたまり醤油をかけただけのが讃岐じゃ常識で。
せいぜいその上にトッピングするなら、すり下ろした生姜と刻んだネギなのだが。

 ざるうどんで、汁チェック。薄塩で甘くなく(ややこくが・・・)、先ずは合格。
ちょい芯があるが十分な長さと腰はイケる、久しぶりのうまい讃岐うどん¥280。
平べったくて箸で摘んでブツブツ千切れるのは、うどんじゃない。
そんなモンを讃岐うどんですなんて言い張る時は、テーブルひっくり返すかんね!

 30年前に新装なった「讃岐うどん」店のレジで、「讃岐の何処ね?」に。
「讃岐とか、何処ですかって言われても。愛媛県ですか?よく知らないんで」
食べたうどんが口から出そうになりながら、「ワシ讃岐男なんよ、狸男じゃなく」。
確かに、そこのうどんは腰砕けの麺じゃったのを久しぶりに思いだす。

 いつかは似顔絵を上手く!も、取りあえずなんとか形になって後は練習あるのみ。
統計のお勉強はたった10ページしか進まなかった分、コナンドイル全集を1冊仕上げた。
ビルエバンス連日3日、朝から晩まで聞き込んだのも久しぶり。

 お出かけは明るいチェックのBDシャツに白のソックス、青春だねー。
細いブルーのストライプのバミューダショーツ(今はハーフパンツ)に、リボンベルト。
40年ぶりに昔を気取ったスタイルは、ホントに久しぶりの青さを思いだす。
あの頃はサイズに問題があって、身に合うVAN製品はなかったけれど。
メタボなヤツが増えて建前サイズが変わり、久しぶり自分流VAN完成じゃん?

 今夜はMIHIセンセの主食牛の肉!魚は体に良いのは分かってても。
力一杯ちょい久しぶり、体に染みこむ牛はやっぱ嬉しイね。

<団塊の外食>

 芝生の中の雑草が殆ど抜き去られて、すっきりすると外食がしたくなったのは今は昔。
外食とは言ってもお店で食事をではなく、庭に設置されたガーデンテーブル食事も以前。
その前に小一時間で梅と紅葉の枝をはらい一汗かけば、後はビールも過去の出来事。

 夕食の一足先に喉を鳴らし、「来週あたり、芝刈りをしなくちゃ!」は初孫年齢前。
先ずのBGMは渡辺貞夫で始まって、気だるいけど軽快なリズムを刻む初孫年齢前。
日が陰ってくる頃は、エバンスのパリコンサートライブで今日を振り返る初孫年齢前。

 今日は珍しく本屋に行かなかったけど、大きな文具屋さんで充実した小物購入内容。
台紙に写真などを4カ所でとめて貼り付けるコーナーを、400個(100枚分)。
黒の漫画用ペン(芯が0.5mmとか0.3mmとかの油性ペンのこと)を2本。

 ケント紙にB3シャープペンで下書きをして、このペンで仕上げて鉛筆の部分を消す。
あまり大きいものは使わないので、B5サイズを半分に分割して描き上げればファイル。
手に入れた「コーナー」で、スケッチブックに貼り付ければ3冊目が終わろうとしている。

 義母から貰った72色の色鉛筆の横に、4冊のスケッチブック。
ペン立てに24色はあるマーカーが刺してあり、B3とB6の芯を納めたシャープペン2本。
似顔絵ノウハウ本4冊と、ネットで手に入れた資料A4で100ページ以上。

 増えた趣味「似顔絵描き」をモノにするため、腕前は別として揃えたツールは十分。
何にでも形から入る癖は健在で、投げ出さないための手枷足枷のつもりでちょい奮発。
これを手助けするのが、デジイチに交換レンズ5,6本の構成も腕前を考えればちょい贅沢。
人物を描くには、その中でも大奮発ショートズーム撮影がお気に入りもちょい分不相応。

 ほろ酔いながらの外食、次の趣味を何にするか?考えるのも楽しかったけど。
ノンアルビールはいつもと変わらぬ脳みそ回転で、発想も変わらないのも良いじゃないか。
見上げた空にコウモリが飛び、気付けばエバンスのCDが止まっていても良いじゃないか。

<ロートル団塊の危機管理>

 20年履き続けたロートルのためのロートルパンツが2本、ダメになってきて。
いつでも履き替えることができるように、次を探してショップを彷徨く。
サイズに問題があって、なかなかしっくりくるものが見つからない。

 近未来の末路を見据えて、昔からあるメーカーでとりあえず2本押さえた。
孫に会う度に、ジジイがユニクロばっかじゃイカンやろと。
普段着の5,6倍の価格に些かたじろぎつつ、20年履き続ける前に墓の中やん!でOK。
着るものへの危機管理で、たとえ10年履いても1年¥1500計算ならエエんちゃう?

 そうこうしていると、6年使い続けたパソコンの音が出なくなり。
あらら6歳と若いのにもう限界?と言いたいところだが、犬と同様ロートルらしい。
接続していたスピーカーと本体が絶縁状態になり、永遠の無言の行。
タッチをミスってもエラーが出まくっても、ひたすら静寂が続くだけ。
仕方なく行う危機管理はデータを全て外付けHDDに保存、それでも飽きたらずCDに焼く。

 いつ壊れてもアドレス・URLはトリプル保存、パソコンも2番手3番手が控えてあるから。
いつお釈迦になっても、パソコンだけは危機管理の危機管理はOKだから。
こんな事ぐらいで、仕事と趣味に差し支えることはない。
壊れた後釜を探すヒマは十分あり、カタログ集めと雑誌やネットで情報収集怠りなく。
 ロートルパソコンの危機管理も済めば、後に残ったのはロートルMIHIの危機管理?

<ロートル>とは?
 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
日本では、昭和30年代頃まで会話で俗語・隠語としてよく使われた。
単に老人を指すというより、話者が自嘲を込めて使う語と云う傾向があった。
文章で用いる時には、通常はカタカナで表記された。
日本では否定的ニュアンスで用いられることの多かった「ロートル」だが、
本来の中国語では、罵倒表現の「老頭子」などに比べると老人への親しみを込めた表現。
例えば老頭子を「じじい」に対して、ロートルは「じいさん」といった感じ。


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