3.対象を表す
目的や対象
「を」
・太鼓をたたく(動作は直接太鼓に及ぶ)
・タコ焼を食べる(動作はタコ焼に及ぶが、やがてなくなる)
・マドンナを聞く(マドンナの歌自体には何の影響も及ぼさない)
・紙飛行機を作る(材料に動作を及ぼした結果存在するようにする)
・穴を掘る(材料すら存在しない)
・森林浴を楽しむ(心の中の動き)
「が」
好き嫌いの対象は「を」ではなく、「が」で表す。
・私は海外旅行が好きです。
・夫は海外旅行がきらいです。
話し言葉では、特に1人称の場合はじめの「〜は」のところがしばしば脱落する。
・小渕首相が好きです。
「好きだ・きらいだ」のほか、「じょうずだ・へただ」「得意だ・苦手だ」なども、対象になるものは「が」で表す。
また、「ほしい」「〜たい」も同じようになる。
物体など名詞で表すものを望むときは、「ほしい」で表し、動作行為の方は、「動詞+たい」で表す。
・わたしは単位がほしい。
・この次はフランス料理が食べたい。
「ほしい」は、「を」ではなく「が」を必要とする。
「動詞+たい」で、その動作や行為に対象があるときは、「が」で表すのが一般的である。
しかし、「たい」文での「を」と「が」の使い分けは「ほしい」文よりゆるやかである。
・この次はフランス料理を食べたい。
4.差異の不思議
助詞「を」は、動作や目的の対象を表すだけでなく、「通る」「行く」「歩く」などの移動を表し、
本来目的語なしで使う動詞の文で、移動の行われる領域や、経過する一点を表す。
・公園を散歩する。
・公園で散歩する。 ←不自然?
「を」は動作の及ぶ面、「で」はある出来事が起こる具体的な場所。
「から」は、ある点とある点との間の具体的な移動の動作を指し示し、具体的にその動作が行われる場所を指す。
・大学を出る。
・大学から出る。 ←卒業の意味にはなりにくい。具体的な動き。
「へ」と「に」
・ユーゴへ行った。
・ユーゴに行った。
「に」と「へ」は文章では併存している。
しかし、現在会話の中では「へ」よりも「に」の方が優位のようである。
「へ」でなければならないこともある。
・カナダへの手紙
・あなたへの質問
送り先をはっきりさせるために「へ」を使う。
・ちまきやへ宝クジを買いに行った。
・映画館へ『恋におちたシェイクスピア』を観に行った。
「に」だけが動詞の連用形のあとにつき、「へ」は「ちまきやへ」「映画館へ」のように移動の行き先(場所)を示す。
「から」は動作の起点を表す。
・わたしはサンタさんからプレゼントをもらいました。
・わたしはサンタさんにプレゼントをもらいました。 ←「に」でもよい。
「直してもらう」のような表現では「に」を使う。
・わたしは、先生に文章を直してもらった。
・わたしは、先生から文章を直してもらった。 ←???
物や具体物の移動では、「から」「に」どちらでもかまわないが、
「〜にしてもらう」のときは実際に行動する人(直す人)を指すために「に」を使う。
移動の動作で経過する場所では、「から」の方が「を」より具体的な場所を示す。
「へ」と「に」では、「へ」の方がより具象的に動作の方向を示す。
「に」と「から」では、「から」のほうが具体性を帯びている。
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