帰ってきた弁別特徴


 チョムスキーとハレの弁別特徴

チョムスキーとハレが推進者となった生成音韻論はヤコブソンの弁別特徴理論を基礎にしている。しかし彼らが用いる特徴は音声学の用語で記されており、より現実的で、それだけ抽象性に欠けている。
ヤコブソンにおける子音性と母音性に対して、チョムスキーとハレにおいては3つの特徴[子音性][音節性][鳴音性]がとって代わるが、これら3つの特徴のほうが、音の音声的現実と音節形成機能とをよりよく映し出すのである。

噪音子音 l,r 音節主音的l,r j,w 母音
+子音性
−音節性
−鳴音性
+子音性
−音節性
+鳴音性
+子音性
+音節性
+鳴音性
−子音性
−音節性
+鳴音性
−子音性
+音節性
+鳴音性

[−鳴音性]の特徴は噪音子音を他のすべての調音から区別し、[+音節性]の特徴は、母音、およびいくつかの言語では[l]や[r]のような音節主音的鳴音が果たす音節の頂きの役割を表す。
チョムスキーとハレはわたり音[j][w]を、母音と同様に[−子音性]として、また子音と同様に[−音節性]として記述している。
ヤコブソンは狭母音を「−集約性]として唇音および歯音と同じグループにまとめていたが、チョムスキーとハレは狭母音を[+高舌性]として硬口蓋音と同じグループにまとめる。

ヤコブソンチョムスキー=ハレ
[−集約性] [+集約性][+高舌性][−高舌性]
狭母音
子音:
 唇音
 歯音
非狭母音
子音:
 硬口蓋音
 軟口蓋音
狭母音
子音:
 硬口蓋音
 軟口蓋音
非狭母音
子音:
 唇音
 歯音


参考文献:「音韻論」ジャン=ルイ・デュシェ著



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