弁別特徴 distinctive feature(その1)


 言語に用いられる音声の調音上、音響上の諸特徴のうちその有無またはその値の違いが弁別的であるもの。弁別的素性、関与的特徴、示差的特徴ともいう。

 継起的(同時に2つ以上が現れることがない)単位としては音韻論上の最少単位である音素も、さらにいくつかの共起する弁別特徴の束として分析されるので、弁別特徴は音韻論で考え得る最少の単位ということができる。

 トルベツコイの「音韻的有意味な諸特徴の総体」という音素の定義や、プラーグ学派の相関の定義案に現れる「音の特定の性質の有無による対立」などには、弁別特徴の概念の萌芽が見られる。

 ヤコブソン、ファント、ハレの「音声分析序説」は相関だけでなく、全ての音素の対立を弁別特徴の有無により解釈する点で画期的である。なお、ブルームフィールド学派も「弁別特徴」の語を用いるが、これは1音素の諸異音間に共通な(すなわちその音素にとって本質的と見なしうる)音の特徴を言うものでヤコブソンらの理論とは、目標が異なる。


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