弁別特徴(その2)


  [ヤコブソンの弁別特徴](前編)

 「序説」では全ての言語に普遍のものとして12の弁別特徴(固有素性)が立てられ音素はそれぞれの特徴の有無を+と−で記述されるとした。各特徴は調音の側面と音響的、知覚的側面の両方から規定されている。

1)母音性-非母音性
2)子音性-非子音性
 母音性はa)音響面からは、明瞭に定義されうる一定のフォルマント構造を持つこと。b)調音面からは、口むろに何の障碍も存在しないことと定義される(したがって必ずしも有声であることを要しない)。
 子音性はa)音響的には、第1フォルマントに(母音に特徴的であるような)特別な低さが見られず、結果として、全体的に音の強さを欠くこと。b)調音的には、声道に障碍があることとして定義されている。

3)急変性-持続性
 急変性は音の前後の無音状態から、あるいは無音状態への移行が急激であるのに対し、持続性はそれが緩やかである。調音的には、急変性は音の通路が急に開放または閉鎖されるのに対し、持続性ではそれがない。

4)抑止性-非抑止性
 調音的には、空気の流れが声門の圧縮または閉鎖によって抑止されるか否かとして定義され、放出音、入破音、吸着音に適用される。この特徴では放出音、入破音、吸着音のいずれか2つに対立がある言語では、その区別ができないという問題がある。

5)粗擦性-円熟性
 音響的にはスペクトログラム上での波形の規則的分布の有(円熟性)無(粗擦性)として調音的には、調音点における空気の流れの阻害が複雑(粗擦性)か否(円熟性)かとして定義される。

6)有声性-無声性
 音響的には低い周波数での一定の音成分の有無、調音的には、声帯の周期的振動の有無として定義される。閉鎖音における有声、無声に関しては、その閉鎖の開放と声帯振動の開始のタイミングが問題である。



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