弁別特徴(その4)


  [ヤコブソン理論]

 1)普遍性
 弁別特徴は、言語音の弁別に資するものであるから、必然的に相対的なものであり、絶対的には規定できず、言語により異なるものである。ヤコブソンはこれを認めながら、素性から余剰な部分を取り去り本質的な素性にまで絞っていけば、言語間に共通に立てうる普遍的素性に到達できると考える。

 2)二項論
 ヤコブソンは、とりうる値として+と−のいずれかしか認めない。その根拠として、『音と意味についての六章』の第4講義で、1)音素は対立によって存在するもので、二項対立が基本であるとし、さらに、2)音素をその素性の有無によって類別することにより、母音調和などの説明が容易にできる。このほかに、3)情報理論の示す二項論の経済性、4)幼児言語で二項対立が早く習得されることなどをあげ、二項性は言語の本質に根ざすものとした。

 3)素性は調音的か音響的か
 『序説』では、すべての特徴が調音・音響の両面から定義されるが、前述のように特徴がかなり抽象的なため、緊張性対弛緩性の調音面からの規定などはかなり苦しい。また、二項性を貫くので、伝統的な「唇音」「硬口蓋音」といった調音点自体が素性となることは認められない。



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